[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係る光受信装置の製造方法は、偏光方向が互いに直交する二つの偏光成分を含む信号光を入力する信号光入力ポートと、信号光を二つの偏光成分に分ける偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタを通過した二つの偏光成分のそれぞれから電気信号を生成する信号生成部と、偏光ビームスプリッタと信号生成部との間の第1の光路上に設けられる光学部品と、信号光入力ポートと偏光ビームスプリッタとの間の第2の光路上に設けられ、第2の光路と交差する方向に移動するシャッタを有する可変光減衰器とを備える光受信装置を製造する方法であって、偏光ビームスプリッタおよび光学部品を配置する第1配置工程と、シャッタの移動方向が第1方向に沿うように可変光減衰器を配置する第2配置工程と、信号光入力ポートから入力される調整光の一部をシャッタにより遮った状態で、信号生成部から得られる二つの電気信号の大きさの差を検出する第1検出工程と、大きさの差が閾値を超えた場合に、シャッタの移動方向が第1方向と交差する第2方向に沿うように可変光減衰器を配置し直す第3配置工程と、可変光減衰器を固定する工程とを含む。
本発明者の知見によれば、可変光減衰器に起因する各偏光成分の光強度の不均一の程度は、シャッタの移動方向に依存する。すなわち、シャッタの移動方向が第1方向に沿うときに各偏光成分の光強度が著しく不均一となる場合、シャッタの移動方向を第2方向に沿うようにすれば、各偏光成分の光強度は均一に近づく。逆に、シャッタの移動方向が第2方向に沿うときに各偏光成分の光強度が著しく不均一となる場合、シャッタの移動方向を第1方向に沿うようにすれば、各偏光成分の光強度は均一に近づく。このような知見に鑑み、上述した光受信装置の製造方法では、まず、シャッタの移動方向が第1方向に沿うように可変光減衰器を配置したのち、信号光の一部をシャッタにより遮った状態で、信号生成部から得られる二つの電気信号の大きさの差を検出する。このとき、大きさの差が閾値よりも小さい場合には、各偏光成分の光強度が均一に近いと判断して、可変光減衰器を固定する。また、大きさの差が閾値を超える場合には、各偏光成分の光強度が著しく不均一であると判断して、シャッタの移動方向が第2方向に沿うように可変光減衰器を配置し直したのち、可変光減衰器を固定する。この製造方法によれば、可変光減衰器に起因する各偏光成分の光強度の不均一を低減することができる。
上記の製造方法は、第3配置工程の後に、調整光の一部をシャッタにより遮った状態で、信号生成部から得られる二つの電気信号の大きさの差を検出する第2検出工程を更に含み、大きさの差が閾値を超えた場合には、当該光受信装置の製造を中止してもよい。これにより、シャッタの移動方向が第1方向に沿う場合、及びシャッタの移動方向が第2方向に沿う場合の双方において各偏光成分の光強度が著しく不均一である光受信装置を排除することができる。従って、可変光減衰器に起因する各偏光成分の光強度の不均一を更に低減することができる。
上記の製造方法において、第1方向は、偏光ビームスプリッタ、信号生成部、及び可変光減衰器を搭載する底面を有する筐体の底面と交差する軸線に沿っており、第2方向は底面に平行な軸線に沿っていてもよい。多くの場合、可変光減衰器に起因する各偏光成分の光強度の不均一は、偏光ビームスプリッタ等の光学部品の位置がその搭載面(すなわち筐体の底面)に沿った方向にずれることが主な原因である。その場合、シャッタの移動方向を筐体の底面と交差する方向とすれば、光学部品の位置ずれが各偏光成分の光強度の均一性に及ぼす影響は軽微であり、各偏光成分の光強度の不均一を抑制することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光受信装置の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る製造方法の対象である光受信装置としてのコヒーレントレシーバ1の内部構成を示す斜視図である。また、図2は、図1に示されたコヒーレントレシーバ1の平面図である。コヒーレントレシーバ1は、局発光(Local Beam:局発光)と信号光(Signal Beam:信号光)とを干渉させ、位相変調された信号光に含まれる情報を復調する装置である。復調された情報は電気信号に変換されてコヒーレントレシーバ1の外部に出力される。コヒーレントレシーバ1は、局発光、信号光それぞれに対する光学系と、二つの多モード干渉器(Multi-Mode Interference:MMI)40,50とを備える。更に、コヒーレントレシーバ1は、これらの光学系とMMI40,50とを収容する筐体2を備える。光学系及びMMI40,50は、ベース4を介して筐体2の底面2c上に搭載されている。ベース4は、アルミナ(Al2O3)若しくは窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料によって構成される。また、底面2c上には、復調された情報を処理する回路を搭載する回路基板46,56が搭載されている。
二つのMMI40,50それぞれは、本実施形態における信号生成部の一例である。二つのMMI40,50は半導体MMIであり、たとえばInP製である。MMI40は、局発光導入口41及び信号光導入口42を有し、局発光導入口41に入力された局発光と、信号光導入口42に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。同様に、MMI50は、局発光導入口51及び信号光導入口52を有し、局発光導入口51に入力された局発光と、信号光導入口52に入力された信号光とを干渉させることにより、信号光の位相情報を復調する。なお、本実施形態では二つのMMI40,50が互いに独立して設けられているが、これらは一体に集積化されていてもよい。
筐体2は、前壁2aを有する。以下の説明において、前壁2a側を前方、反対側を後方と呼ぶ。但し、これら前方/後方はあくまでも説明のためだけであり、本発明の範囲を制限するものではない。前壁2aには、局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6が、たとえばレーザ溶接により固定されている。局発光入力ポート5には偏波保持ファイバ35を介して局発光L0が提供され、信号光入力ポート6には単一モードファイバ36を介して信号光N0が提供される。入力ポート5,6は、それぞれコリメートレンズを有しており、偏波保持ファイバ35、単一モードファイバ36から出射された局発光L0、信号光N0(それぞれのファイバから出射された状態では発散光)をそれぞれコリメート光に変更して筐体2内に導く。
局発光用光学系は、局発光入力ポート5から提供された局発光をMMI40,50の局発光導入口41,51に導く。具体的には、局発光用光学系は、偏光子(polarizer)11、光分波器(Beam Splitter:BS)12、反射器13、二つのレンズ群14,15、及びスキュー調整素子16を含む。なお、スキュー調整素子16は、必要でなければ省かれてもよい。
偏光子11は局発光入力ポート5に光結合し、局発光入力ポート5から提供された局発光L0の偏波方向を整える。局発光L0の光源は、極めて扁平な楕円偏光を出力する。また、局発光L0の光源が直線偏光を出力したとしても、光源からこのコヒーレントレシーバ1に至る光経路に挿入された光部品の実装精度などにより、局発光入力ポート5から入力される局発光L0が所望の方向に沿った直線偏光を有しているわけではない。偏光子11は、局発光入力ポート5から入力された局発光L0を、所望の偏光方向(たとえば筐体2の底面2cに平行な方向)を有する直線偏光に変換する。
BS12は、偏光子11から出力される局発光L0を二分岐する。分岐比は50:50である。分岐された一方の局発光L1はBS12を直進してMMI40に向かう。他方の局発光L0は、BS12によりその光軸を90°変換され、さらに、反射器13により再度その光軸を90°変換されてMMI50に向かう。
レンズ群14は、BS12とMMI40との間の光路上に配置され、BS12によって分岐された一方の局発光L1を、MMI40の局発光導入口41に集光する。レンズ群15は、反射器13とMMI50との間の光路上に配置され、BS12によって分岐され反射器13において反射した他方の局発光L2を、MMI50の局発光導入口51に集光する。レンズ群14,15は、それぞれMMI40,50に相対的に近接配置されレンズ14b,15b、及び相対的にMMI40,50から離間して配置されたレンズ14a,15aを有する。このように、レンズ14b,15bとレンズ14a,15aとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI40,50の小さな局発光導入口41,51に対する局発光L1,L2の光結合効率を高めることができる。
スキュー調整素子16は、BS12とレンズ群14との間の光路上に配置され、BS12によって分岐された二つの局発光L1,L2の、BS12から各局発光導入口41,51に至る光路長の差を補正する。すなわち、局発光L2の光路長は、BS12から反射器13に至る光路長の分だけ局発光L1の光路長よりも長い。スキュー調整素子16は、この光路長差、換言すると各局発光導入口41,51に至るまでの局発光L1,L2の時間差を補償する。スキュー調整素子16はシリコン製であり、また、局発光L1,L2に対する透過率は99%程度と、局発光L1,L2の波長に対しては実質透明な材料で構成される。
信号光用光学系は、偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS)21、反射器22、二つのレンズ群23,24、半波長(λ/2)板25、及びスキュー調整素子26といった光学部品を含む。反射器22、レンズ群23,24、λ/2板25、及びスキュー調整素子26は、PBS21とMMI40,50との間の光路(第1の光路)上に設けられる光学部品である。なお、スキュー調整素子26は、必要でなければ省かれてもよい。
PBS21は、信号光入力ポート6に光結合し、単一モードファイバ36から信号光入力ポート6を介して提供された信号光N0の二つの偏光成分を分岐する。分岐比は例えば50:50である。単一モードファイバ36が提供する信号光N0は、偏光方向が互いに直交する二つの偏光成分を含む。PBS21は、信号光N0の二つの偏光成分を相互に分離する。たとえば、PBS21は、信号光N0のうち、筐体2の底面2cに平行な偏光成分を透過して信号光N1とし、底面2cに垂直な偏光成分を反射して信号光N2とする。
PBS21を透過した信号光N1は、スキュー調整素子26を透過した後、レンズ群23によりMMI50の信号光導入口52に光結合する。スキュー調整素子26は、PBS21とレンズ群23との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐された二つの信号光N1,N2の、PBS21から各信号光導入口42,52に至る光路長の差を補正する。すなわち、信号光N2の光路長は、PBS21から反射器22に至る光路長の分だけ信号光N1の光路長よりも長い。スキュー調整素子26は、この光路長差、換言すると各信号光導入口42,52に至るまでの信号光N1,N2の時間差を補償する。スキュー調整素子26は、スキュー調整素子16と同様の材料により構成される。
PBS21により反射された他方の信号光N2は、λ/2板25を通過する間にその偏光方向が90°回転される。分岐直後の信号光N1,N2の偏光は互いに直交している。信号光N2についてλ/2板25を通過させることで、信号光N2の偏光方向は90°回転され、他方の信号光N1と同様となる。そして、信号光N2は反射器22によりその光軸が90°変換され、MMI40の信号光導入口42にレンズ群24を介して光結合される。
レンズ群23は、PBS21とMMI50との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐された一方の信号光N1を、MMI50の信号光導入口52に集光する。レンズ群24は、反射器22とMMI40との間の光路上に配置され、PBS21によって分岐され反射器22において反射した他方の信号光N2を、MMI40の信号光導入口42に集光する。レンズ群23,24は、それぞれMMI50,40に相対的に近接配置されたレンズ23b,24b、及び相対的にMMI50,40から離間して配置されたレンズ23a,24aを有する。このように、レンズ23b,24bとレンズ23a,24aとを組み合わせて集光レンズとすることによって、MMI50,40の小さな信号光導入口52,42に対する信号光N1,N2の光結合効率を高めることができる。
MMI40は、マルチモード干渉導波路(MMI導波路)と、この導波路に光結合したフォトダイオード(PD)とを含む。MMI導波路は、たとえばInP基板上に形成された導波路であり、局発光導入口41に入力された局発光L1と、信号光導入口42に入力された信号光N2とを干渉させて、信号光N2に含まれている情報を、局発光L1の位相に一致する位相成分と、局発光L1の位相と90°異なる位相成分とに分離して復調する。すなわち、MMI40は、信号光N2について二つの独立した情報を復調する。同様に、MMI50は、MMI導波路と、この導波路に光結合したPDとを含む。MMI導波路はInP基板上に形成された導波路であり、局発光導入口51に入力された局発光L2と、信号光導入口52に入力された信号光N1とを干渉させて、二つの互いに独立した情報を復調する。
筐体2は、前壁2aとは反対側に後壁2bを有する。また、筐体2は、前壁2aと後壁2bとを接続する二つの側壁から後壁2bにわたって連続して設けられたフィードスルー61を有する。後壁2bのフィードスルー61には複数の信号出力端子65が設けられ、MMI40,50によって復調された4つの独立情報は、集積回路43,53において信号処理された後、これらの信号出力端子65を介してコヒーレントレシーバ1の外部に導かれる。集積回路43,53には、アンプが実装されている。また、二つの側壁には別の端子66,67が設けられている。端子66,67は、MMI40,50を駆動するための信号、各光部品を駆動するための信号といったDCあるいは低周波の信号を筐体2内部に提供する。集積回路43,53それぞれは、MMI40,50を取り囲む回路基板46,56それぞれの上に実装されている。さらに、これらの回路基板46,56上には、抵抗素子、容量素子、また必要に応じてDC/DC変換器が実装される。
コヒーレントレシーバ1は、可変光減衰器(VOA)31、BS32、及びモニタ用PD33を更に備える。VOA31及びBS32は、PBS21と信号光入力ポート6との間の信号光N0の光路(第2の光路)上に配置されている。BS32は、信号光入力ポート6から入力された信号光N0の一部を分離する。分離された一部の信号光N0は、モニタ用PD33に入力される。モニタ用PD33は、該一部の信号光N0の強度に応じた電気信号を生成する。
VOA31は、BS32を通過した信号光N0を必要に応じて減衰する。減衰度は、コヒーレントレシーバ1の外部からの電気信号によって制御される。例えば、上述したモニタ用PD33からの電気信号に基づいて過入力状態が検知された場合には、VOA31の減衰度を大きくして、MMI40,50に向かう信号光N1,N2の強度を小さくする。BS32、VOA31、及びモニタ用PD33は、筐体2の底面2cに搭載されたVOAキャリア30上に固定される。VOAキャリア30は、段差を形成する上下二つの面にこれらの光部品を搭載する。具体的には、一方の面にBS32及びモニタ用PD33を搭載し、他方の面にVOA31を搭載する。
図3の(a)及び(b)は、VOA31を示す斜視図である。VOA31は、略長方形状の板状の本体31aと、本体31aの板面上に設けられた一対の端子31b,31cと、本体31aに形成された開口31d内に配置されたシャッタ31eとを有する。シャッタ31eの平面形状は、例えば円形である。シャッタ31eの直径は、例えば信号光N0の光径に対して1倍以上2倍以下である。本体31aの板面は、方向A1及び方向A2に沿って規定される平面に沿っている。方向A1及び方向A2は、信号光N0の光路と交差(例えば直交)し、且つ互いに交差(例えば直交)する。本体31aの互いに平行な一対の辺31f,31gは方向A1に沿っており、辺31f,31gに対して直角を成す他の一対の辺31h,31iは方向A2に沿っている。VOA31は、開口31d内を信号光N0が通過するように配置される。一対の端子31b,31cに印加される電圧に応じて発生する静電気力により、開口31d内でのシャッタ31eの位置が方向A2に沿って移動する。図3の(a)は、シャッタ31eの位置が信号光N0の光路上にない状態を示し、図3の(b)は、シャッタ31eの位置が信号光N0の光路上にある状態を示す。図3の(a)に示された状態では、信号光N0は減衰されることなくVOA31を通過する。図3の(b)に示された状態では、信号光N0は完全に遮蔽され、減衰量は100%となる。シャッタ31eの位置は、図3の(a)及び(b)に示された各位置の間で、所望の減衰量に応じて調節される。
ここで、本実施形態のコヒーレントレシーバ1の製造方法について説明する。図4は、コヒーレントレシーバ1を製造する際の各工程を示すフローチャートである。まず、フィードスルー61を備える筐体2を準備する(工程S1)。次に、MMI40,50と、集積回路43,53が実装された回路基板46,56とを筐体2の底面2c上の所定の位置に配置し、固定する(工程S2)。具体的には、MMI40,50を、板状のキャリア上に配置する。このとき、MMI40,50のアライメントは、目印を基準とする目視によって行われる。次に、MMI40を囲むように回路基板46を該キャリア上に配置し、MMI50を囲むように回路基板56を該キャリア上に配置する。続いて、上記キャリアを筐体2の底面2c上に搭載することにより、底面2c上にMMI40,50等を配置する。また、キャリアとともにVOAキャリア30を筐体2の底面2c上に搭載する。底面2cへのキャリア及びVOAキャリア30の固定は、例えば半田を用いて行われる。
続いて、集積回路43,53を回路基板46,56上に実装する。集積回路43,53の実装は、たとえば銀ペースト等の導電性樹脂を使用して行う。その後、集積回路43,53の上面の電極パッドと、筐体2の後方側の端子65とをワイヤリングにより電気的に接続する。なお、このワイヤリングにより、次工程以降における各光部品のアクティブ調芯、すなわちMMI40,50に調整光を入力し、MMI40,50に内蔵されているPDの出力信号強度が最大となる位置に各光部品を配置することが可能となる。
続いて、各光部品を筐体2内に配置する(工程S3、第1配置工程)。まず、モニタ用PD33をVOAキャリア30上に搭載する。また、PBS21、スキュー調整素子16,26、λ/2板25、偏光子11、及びBS12を筐体2内の所定の位置にそれぞれ配置する。これらの光部品は、調芯作業を実施しない光部品であって、その光入射面の方向のみが調整されたのち固定される。
続いて、上述の各光部品とは別の光部品、すなわちMMI40,50に対する光結合トレランスが上記の各光部品よりも小さい故に調芯を必要とする反射器13,22、及び各レンズ群14,15,23,24を筐体2内に配置する。その準備として、二つの模擬ポートを筐体2の前壁2aに配置する。これらの模擬ポートは、それぞれ局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6を模擬する。これらの模擬ポートからは、当該別の光部品の調芯に用いられる調整光が入力される。特に、信号光入力ポート6の模擬ポートからは、偏光方向が互いに直交する2つの光が合波されてなる調整光が入力される。
その後、調芯を要する各光部品を模擬ポートとMMI40,50との間の光路上に配置し、MMI40,50に内蔵されるPDで検出される調整光の強度を参照し、これらの光部品の調芯を行う。更に、これらの光部品を筐体2内に固定する。なお、これらの光部品の調芯及び固定の順序は以下の説明に限られるものではなく、任意の順序で行うことができる。
具体的には、まず、BS32の調芯及び固定を行う。BS32の角度(光軸方向)を調整したのち、BS32の向きを維持したまま、VOAキャリア30上にBS32を移動する。そして、VOAキャリア30上で、BS32を信号光の光軸に沿って移動させ、モニタ用PD33の受光強度が最大となるBS32の搭載位置を決定する。その後、接着樹脂を用いてBS32をVOAキャリア30に固定する。
次に、反射器13,22の調芯及び固定を行う。反射器13,22の角度(光軸方向)を調整したのち、反射器13,22の角度を維持しつつ、模擬ポートからの各調整光をPBS21,BS12にそれぞれ入射させる。このとき、PBS21,BS12によって各調整光が二分岐され、分岐された一方の調整光が反射器13,22により反射され、MMI40,50に入射するので、その光強度をMMI40,50の内蔵PDにより検出する。そして、反射器13,22を二つの模擬ポートの光軸に垂直な方向に僅かに移動しながら、内蔵PDの検出強度が最大となる位置を決定する。
続いて、4つのレンズ群14,15,23,及び24の調芯、及び固定を行う。まず、第1レンズ14b,15b,23b,24b(すなわちMMI40,50寄りのレンズ)の調芯及び固定を行う。これらのレンズ14b,15b,23b,24bを所定の搭載位置に配置し、各模擬ポートからの各調整光を入射する。模擬ポートからの調整光は、PBS21によって二分岐され、それぞれレンズ23b,24bを通過してMMI50,40に入力される。模擬ポートからの調整光は、BS12によって二分岐され、それぞれレンズ14b,15bを通過してMMI40,50に入力される。こうしてMMI40,50に入力された調整光の強度を、MMI40,50の内蔵PDにより検出する。そして、レンズ14b,15b,23b,24bの位置及び角度を僅かに変化させ、内蔵PDの受光強度が最大となる位置及び角度を決定する。位置及び角度の決定後、紫外線硬化樹脂を用いてレンズ14b,15b,23b,24bを固定する。続いて、第2レンズ14a,15a,23a,24aの調芯及び固定を行う。これらの調芯及び固定の方法は、上述した第1レンズ14b,15b,23b,24bの調芯及び固定の方法と同様である。
続いて、VOA31をVOAキャリア30上に搭載する(工程S4)。この工程では、VOA31をマニピュレータにより把持し、VOA31を調整光の光路上に配置する。具体的には、VOAキャリア30上に予め紫外線硬化樹脂を所定厚さ(例えば100μm以上)塗布しておき、VOA31をVOAキャリア30の表面から所定距離(例えば100μm)離れた状態で保持する。そして、バイアス電源から提供されるバイアスを、0~5Vの間で繰り返し(例えば1秒程度の周期)VOA31に印加する。同時に、筐体2の底面2cに平行で且つ光軸に垂直な方向にVOA31を移動させ、VOA31による減衰後の調整光の分岐後の強度を、MMI40,50にある複数の内蔵PDにより検出する。その後、調整光の分岐後の減衰度の差が許容範囲内に収まる位置にてVOA31を固定する。このとき、複数の内蔵PDを同時に測定することができるため、MMI40,50の内蔵PDの出力差を、調整光の分岐後の減衰度の差と見なしてもよい。なお、VOA31は、調整光の光軸に対して所定角度(例えば7°)傾けて搭載される。反射光を信号光入力ポート6に回帰させないためである。
続いて、筐体2を塞ぐリッドをシームシールにより取り付け、筐体2の内部を気密封止する(工程S5)。そして、模擬ポートを本来の局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6に置き換え、局発光入力ポート5及び信号光入力ポート6の調芯及び固定を行う(工程S6)。具体的には、信号光入力ポート6から模擬信号光を導入し、該信号光の強度をMMI40の内蔵PDにより検出する。そして、検出される信号光の強度を参照し信号光入力ポート6の位置を変化させ、内蔵PDでの受光強度が最大となる位置を決定する。局発光入力ポート5についても同様に、実際に局発光を導入し、局発光の強度をMMI40,50の内蔵PDにより検出する。検出される局発光の強度を参照しつつ局発光入力ポート5の位置を変化させ、内蔵PDでの受光強度が最大となる位置を決定する。決定後、信号光入力ポート6及び局発光入力ポート5を筐体2に固定する。固定はYAG溶接を採用することができる。
ここで、VOA31を配置する工程S4について、更に説明する。図5は、工程S4に含まれる各工程を示すフローチャートである。また、図6の(a)及び(b)は、VOA31の正面図である。なお、図6には互いに交差(例えば直交)するX軸及びY軸が示されている。Y軸は筐体2の底面2cと交差する(例えば垂直な)軸線であり、Y軸に沿った方向(以下、Y軸方向)は本実施形態における第1方向である。X軸は底面2cに沿った(例えば平行な)軸線であり、X軸に沿った方向(以下、X軸方向)は本実施形態における第2方向である。工程S4では、図6の(a)に示されるように、まず、第2配置工程S41として、シャッタ31eの移動方向A2がY軸に沿うようにVOA31の光路周りの回転角度を調整したのち、VOAキャリア30上にVOA31を配置する。既に述べたように、VOA31は略長方形状の板状の本体31aを有する。そして、本体31aの一辺31fはシャッタ31eの移動方向A2と交差(例えば直交)しており、本体31aの他の辺31hはシャッタ31eの移動方向A2に沿っている。シャッタ31eの移動方向A2をY軸に沿わせるためには、例えば、本体31aの一辺31fを筐体2の底面2cと対向させた状態でVOAキャリア30上にVOA31を配置するとよい。
次に、第1検出工程S42として、調整光の一部をシャッタ31eにより遮った状態で、MMI40,50から得られる二つの電気信号の大きさの差(偏光依存損失:Polarization Dependent Loss:PDL)を検出する。具体的には、VOA31の一対の端子31b,31c(図3を参照)に所定の電圧を印加することにより、シャッタ31eを移動方向A2に沿って所定距離だけ変位させる。これにより、調整光の一部がシャッタ31eにより遮られ、残部がPBS21により分岐され、その一方がMMI40に入力され、他方がMMI50に入力される。MMI40に内蔵されたPDは、一方の調整光の光強度に応じた電気信号を生成する。MMI50に内蔵されたPDは、他方の調整光の光強度に応じた電気信号を生成する。これらの電気信号は、集積回路43,53に内蔵されたアンプによって増幅された後、端子65を介して筐体2の外部へ出力される。この工程では、端子65から出力される増幅後の電気信号(例えば電圧信号)の大きさを検出し、それらの差を求めることにより、MMI40,50から得られる二つの電気信号の大きさの差を検出する。
続いて、工程S43として、第1検出工程S42において検出された電気信号の大きさの差(PDL)が所定の閾値th1を超えるか否かを判断する。PDLが閾値th1を超えない場合(S43:NO)、シャッタ31eの移動方向A2がY軸に沿った状態でVOA31をVOAキャリア30に固定する(工程S48)。また、PDLが閾値th1を超えた場合(S43:YES)、第3配置工程S44として、図6の(b)に示されるように、シャッタ31eの移動方向A2がX軸方向に沿うようにVOA31の光路周りの回転角度を調整したのち、VOAキャリア30上にVOA31を配置し直す。シャッタ31eの移動方向A2をX軸に沿わせるためには、例えば、本体31aの一辺31hを筐体2の底面2cと対向させた状態でVOAキャリア30上にVOA31を配置するとよい。
続いて、第2検出工程S45として、調整光の一部をシャッタ31eにより遮った状態で、MMI40,50から得られる二つの電気信号の大きさの差(PDL)を再び検出する。なお、第2検出工程S45の具体的な内容は前述した第1検出工程S42と同様なので、詳細な説明を省略する。
続いて、工程S46として、第2検出工程S45において検出された電気信号の大きさの差(PDL)が所定の閾値th2を超えるか否かを判断する。なお、閾値th2は、閾値th1と等しくてもよいし、異なってもよい。PDLが閾値th2を超えない場合(S46:NO)、シャッタ31eの移動方向A2がX軸に沿った状態でVOA31をVOAキャリア30に固定する(工程S48)。また、PDLが閾値th2を超えた場合(S46:YES)、当該コヒーレントレシーバ1の製造を中止する。なお、製造を中止するとは、製造途中のコヒーレントレシーバ1を不良品と判断し、そのコヒーレントレシーバ1の製造を取り止めて廃棄することをいう。
以上に説明した、本実施形態に係るコヒーレントレシーバ1の製造方法によって得られる効果について、従来の製造方法が抱える課題と共に説明する。コヒーレントレシーバを製造する際には、レンズ群14,15,23,24などの種々の光学部品を、光結合効率が最も高くなる位置及び角度で固定する。しかしながら、従来の製造方法においては、MMI50に入射する信号光N1の光強度と、MMI40に入射する信号光N2の光強度とが互いに等しくなるように各光学部品の位置及び角度を調整した場合であっても、VOA31において信号光N0を減衰させると(すなわち信号光N0の一部をシャッタ31eにより遮ると)、これらの光強度が互いに等しくなくなるといった現象が生じることがあった。このような場合、信号光N0を減衰した状態では信号光N1,N2の光強度が不均一となり、受信精度が偏光成分毎に異なってしまうおそれがある。
図7及び図8は、そのような課題を理解するためのグラフである。図7及び図8の(a)は、VOA31に印加される電圧と減衰量との関係を模式的に示している。図7及び図8の(a)において、横軸はVOA31に印加される電圧を表し、縦軸はVOA31による減衰量を表す。グラフG11は信号光N1の減衰量を示し、グラフG12は信号光N2の減衰量を示す。また、図7及び図8の(b)は、それぞれ図7及び図8の(a)に示されたグラフのPDL(すなわちグラフG11とグラフG12との差)を示す。図7及び図8の(b)において、横軸はVOA31に印加される電圧を表し、縦軸はPDLを表す。
図7に示されるグラフでは、印加電圧によらず信号光N1の減衰量と信号光N1の減衰量とがほぼ等しく、PDLは或る範囲Aに収まっている。これに対し、図8に示されるグラフでは、印加電圧が大きくなるほど信号光N1の減衰量と信号光N1の減衰量とが乖離し、或る印加電圧を超えた時点でPDLは範囲Aから外れてしまう。図7に示される特性を有するコヒーレントレシーバ1は良品と判断され、図8に示される特性を有するコヒーレントレシーバ1は不良品と判断される。
図9の(a)及び(b)は、VOA31に起因する信号光N1,N2の光強度の不均一の原因を説明するための図である。図9の(a)には、PBS21と、反射器22と、レンズ群23,24とが平面視にて示されている。信号光N0は、PBS21において二分岐され、一方の信号光N1はPBS21を透過して直進し、レンズ群23によって集光されつつMMI50に入射する。また、他方の信号光N2は、PBS21及び反射器22において反射されたのち、レンズ群24によって集光されつつMMI40に入射する。ここで、反射器22を設置する際の誤差等により、反射器22の位置が図の二点鎖線の位置にずれたと仮定する。その場合、MMI40の信号光導入口42と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸は図の破線Bとなり、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸との間にX方向のずれ(ΔX)が生じることとなる。なお、このようなX方向のずれは、反射器22に限らず様々な光学部品の設置誤差により生じる。
また、図9の(b)には、MMI40,50と、MMI40,50それぞれを搭載するキャリア44,54とが側面視にて示されている。同図に示されるように、例えばキャリア44の高さの製造誤差に起因して、筐体2の底面2cを基準とするMMI40の高さが設計上の高さから距離ΔYだけずれたと仮定する。これは、底面2cを基準とするMMI40の信号光導入口42の光軸がY方向に距離ΔYだけずれることを意味する。従って、MMI40の信号光導入口42と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸と、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸との間にY方向のずれ(ΔY)が生じることとなる。なお、このようなY方向のずれは、MMI40,50に限らず様々な光学部品の高さの誤差により生じる。
図10及び図11は、MMI40の信号光導入口42と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸AXを原点とするXY座標系と、信号光N2と、シャッタ31eとの位置関係を示す図である。図10,図11の(a)は、光軸AXと信号光N2の中心Oとが一致している場合を示す。図10の(b)は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれている場合(図9の(a)を参照)を示し、図11の(b)は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれている場合(図9の(b)を参照)を示す。シャッタ31eの移動方向A2はY軸方向に沿っているものとする。
図10の(a)及び(b)を比較すると、シャッタ31eの移動方向A2がY軸方向に沿っている場合、光軸AXと信号光N2の中心Oとが一致している場合における信号光N2の遮蔽部分C1の面積と、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれている場合における信号光N2の遮蔽部分C2の面積とは、互いにほぼ等しくなる。言い換えると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれても、MMI40に入射する信号光N2の光量は殆ど変動しない。従って、MMI40への信号光N2の入射光量と、MMI50への信号光N1の入射光量との間に差(PDL)は殆ど生じない。なお、この例では、MMI40の信号光導入口42と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸AXと、信号光N2の中心Oとが互いにずれた場合を例示して説明したが、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸と信号光N1の中心とが互いにX軸方向にずれた場合においても同様である。
これに対し、図11の(a)及び(b)を比較すると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれている場合には、遮蔽部分C1の面積と遮蔽部分C2の面積とが互いに相違する。言い換えると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれると、MMI40に入射する信号光N2の光量が変動し、PDLが生じる。なお、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸と信号光N1の中心とが互いにY軸方向にずれた場合においても、同様の問題が生じる。
図12及び図13は、上記の考察を裏付ける実験結果を示すグラフである。これらの図において、横軸は減衰量(単位:dB)を表し、縦軸はPDL(単位:dB)を表す。図12は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれた場合を示し、図13は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれた場合を示す。図12に示されるように、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれた場合には、そのずれ量にかかわらずPDLは或る範囲D内に収まる。これに対し、図13に示されるように、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれた場合には、そのずれ量が大きいほど、PDLは範囲Dから大きく外れる。これらのグラフから、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向(すなわちシャッタ31eの移動方向A2と交差する方向)にずれてもPDLは低く抑えられるが、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向(すなわちシャッタ31eの移動方向A2に沿った方向)にずれると、PDLは顕著に増大することがわかる。
図14及び図15は、光軸AXを原点とするXY座標系と、信号光N2と、シャッタ31eとの位置関係を示す図である。図14及び図15の(a)は、光軸AXと信号光N2の中心Oとが一致している場合を示す。図14の(b)は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれている場合(図9の(b)を参照)を示し、図15の(b)は、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれている場合(図9の(a)を参照)を示す。シャッタ31eの移動方向A2はX軸方向に沿っているものとする。
図14の(a)及び(b)を比較すると、シャッタ31eの移動方向A2がX軸方向に沿っている場合、光軸AXと信号光N2の中心Oとが一致している場合における信号光N2の遮蔽部分C1の面積と、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれている場合における信号光N2の遮蔽部分C2の面積とは、互いにほぼ等しくなる。言い換えると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してY軸方向にずれても、MMI40に入射する信号光N2の光量は殆ど変動しない。従って、MMI40への信号光N2の入射光量と、MMI50への信号光N1の入射光量との間に差(PDL)は殆ど生じない。なお、この例では、MMI40の信号光導入口42と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸AXと、信号光N2の中心Oとが互いにずれた場合を例示して説明したが、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸と信号光N1の中心とが互いにY軸方向にずれた場合においても同様である。
これに対し、図15の(a)及び(b)を比較すると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれている場合には、遮蔽部分C1の面積と遮蔽部分C2の面積とが互いに相違する。言い換えると、光軸AXが信号光N2の中心Oに対してX軸方向にずれると、MMI40に入射する信号光N2の光量が変動し、PDLが生じる。なお、MMI50の信号光導入口52と信号光入力ポート6とを結ぶ光軸と信号光N1の中心とが互いにX軸方向にずれた場合においても、同様の問題が生じる。
このように、VOA31に起因する信号光N1,N2の光強度の不均一の程度は、シャッタ31eの移動方向A2に依存する。すなわち、シャッタ31eの移動方向A2がY軸方向に沿うときに、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度が著しく不均一となる場合、シャッタ31eの移動方向A2をX軸方向に沿うようにすれば、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度は均一に近づく。逆に、シャッタ31eの移動方向A2がX軸方向に沿うときに、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度が著しく不均一となる場合、シャッタ31eの移動方向A2をY軸方向に沿うようにすれば、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度は均一に近づく。このような知見に鑑み、本実施形態のコヒーレントレシーバ1の製造方法では、まず、第2配置工程S41においてシャッタ31eの移動方向A2がY軸方向に沿うようにVOA31を配置する。そして、第1検出工程S42において、調整光の一部をシャッタ31eにより遮った状態で、MMI40,50から得られる二つの電気信号のPDLを検出する。このとき、PDLが閾値th1よりも小さい場合には、各偏光成分の光強度が均一に近いと判断し、工程S48においてVOA31を固定する。また、PDLが閾値th1を超える場合には、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度が著しく不均一であると判断し、第3配置工程S44においてシャッタ31eの移動方向A2がX軸方向に沿うようにVOA31を配置し直したのち、工程S48においてVOA31を固定する。従って、本実施形態の製造方法によれば、VOA31に起因する各偏光成分の光強度の不均一を低減することができる。
また、本実施形態のように、第3配置工程S44の後に、調整光の一部をシャッタ31eにより遮った状態で、MMI40,50から得られる二つの電気信号のPDLを検出する第2検出工程S45を更に行い、PDLが閾値th2を超えた場合には、当該コヒーレントレシーバ1の製造を中止(工程S47)してもよい。これにより、シャッタ31eの移動方向A2がY軸方向に沿う場合、及びシャッタ31eの移動方向A2がX軸方向に沿う場合の双方において、MMI50,40に入射する信号光N1,N2の光強度が著しく不均一であるコヒーレントレシーバ1を排除することができる。従って、VOA31に起因する各偏光成分の光強度の不均一を更に低減することができる。
また、本実施形態のように、Y軸方向は筐体2の底面2cと交差し、X軸方向は底面2cに平行であってもよい。多くの場合、VOA31に起因する信号光N1,N2の光強度の不均一は、図9の(a)に示されたように、反射器22等の光学部品の位置がその搭載面(すなわち筐体2の底面2c)に沿った方向にずれることが主な原因である。その場合、シャッタ31eの移動方向A2を底面2cと交差するY軸方向とすれば、光学部品の位置ずれが各偏光成分の光強度の均一性に及ぼす影響は軽微であり、各偏光成分の光強度の不均一を抑制することができる。
本発明による光受信装置の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では光受信装置の例としてコヒーレントレシーバを挙げているが、これに限らず偏光ビームスプリッタを通過した各偏光成分から電気信号を生成する光受信装置であれば、本発明を適用できる。また、上記実施形態では、第1配置工程S41においてシャッタ31eの移動方向A2がY軸方向に沿う様にVOA31を配置し、第2配置工程S44において移動方向A2がX軸方向に沿う様にVOA31を配置しているが、第1配置工程S41において移動方向A2がX軸方向に沿う様にVOA31を配置し、第2配置工程S44において移動方向A2がY軸方向に沿う様にVOA31を配置してもよい。