以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
本実施形態において、走行支援装置を搭載する車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。操舵部4は、例えば、ダッシュボード25から突出したステアリングホイールであり、加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルであり、制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルであり、変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で手指等により操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード25の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12(図3参照)が設けられている。表示装置12は、例えば、ダッシュボード25の計器盤部26(図1参照)に設けられ、計器盤部26の略中央で、速度表示部と回転数表示部との間に位置されている。表示装置12の画面の大きさは、表示装置8の画面の大きさよりも小さい。この表示装置12には、主として車両1の走行支援に関する情報を示す画像が表示されうる。表示装置12で表示される情報量は、表示装置8で表示される情報量より少なくてもよい。表示装置12は、例えば、LCDや、OELD等である。なお、表示装置8に、表示装置12で表示される情報が表示されてもよい。
また、図1、図2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。図3に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(electronic control unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、電動パワーステアリングシステムや、SBW(steer by wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
また、図1、図2に例示されるように、車体2の例えば、後側の端部2eである、リヤトランクのドア2hの下方の壁部には撮像部15が設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°~220°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1の後方における移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の後方周辺の後方画像を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。なお、他の実施形態では、撮像部15が複数設けられてもよい。例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側に設けられて車両1の前方画像を取得してもよい。また、撮像部15は、例えば、車体2の右側の端部や左側の端部のうち例えば左右のドアミラーにーに設けられて、車両1の左右の側方画像を取得してもよい。撮像部15が車体2の後側の端部に設けられる場合、例えば車両1が後退走行する場合に、後方の安全確認等を行うための後方画像を表示装置8を介して提供可能である。また、撮像部15が車体2の前側端部や側方端部に設けられる場合、それぞれの方向の安全確認等を行うための画像が提供可能である。また、ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりしてもよい。
また、図1、図2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a~16dと、八つの測距部17a~17hとが設けられている。測距部16,17は、音波の一例として、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されうる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられうる。
さらに、本実施形態の場合、例えば、測距部17は、車両1の進行方向における路面が凍結路面であるか否かを判定するための情報を取得するセンサとしても利用されうる。凍結路面の場合、路面の表面の凹凸が凍結によって非凍結路面より滑らかになり、超音波の反射性(反響性)が向上する場合がある。また、超音波を含む音波は、空気中を伝搬するため、温度が低い方が伝搬時の損失が少なくなる。本実施形態の走行支援装置は、この特徴の違いを利用して、凍結路面の有無判定を行う。凍結路面の有無判定の詳細は後述する。
また、図3に例示されるように、走行支援システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、舵角センサ19、アクセルセンサ20、駆動システム21、車輪速センサ22、シフトセンサ23等が、電気通信回線としての車内ネットワーク24を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク24は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク24を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18、駆動システム21等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク24を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16,17、アクセルセンサ20、シフトセンサ23、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
ECU14は、例えば、CPU14a(central processing unit)や、ROM14b(read only memory)、RAM14c(random access memory)、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD14f(solid state drive、フラッシュメモリ)等を有している。CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、走行支援を実行する際の車両1の進行方向の凍結路面の有無判定、路面状態に応じた接触回避制御(例えば制動制御等)、凍結路面の発見時の警報出力等、各種の演算処理および制御を実行することができる。
CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がOFFされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(anti-lock brake system)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:electronic stability control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(brake by wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。舵角センサ19は、角度センサの一例である。
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
駆動システム21は、駆動源としての内燃機関(エンジン)システムやモータシステムである。駆動システム21は、アクセルセンサ20により検出された運転者(利用者)の要求操作量(例えばアクセルペダルの踏み込み量)にしたがいエンジンの燃料噴射量や吸気量の制御やモータの出力値を制御する。また、利用者の操作に拘わらず、車両1の走行状態に応じて、操舵システム13やブレーキシステム18の制御と協働してエンジンやモータの出力値を制御しうる。
車輪速センサ22は、各車輪3に設けられ各車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサであり、検出した回転数を示す車輪速パルス数を検出値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。CPU14aは、車輪速センサ22から取得した検出値に基づき、車両1の車速や移動量などを演算し、各種制御を実行する。CPU14aは、各車輪3の車輪速センサ22の検出値に基づいて車両1の車速を算出する場合、4輪のうち最も小さな検出値の車輪3の速度に基づき車両1の車速を決定し、各種制御を実行する。また、CPU14aは、4輪の中で他の車輪3に比べて検出値が大きな車輪3が存在する場合、例えば、他の車輪3に比べて単位期間(単位時間や単位距離)の回転数が所定数以上多い車輪3が存在する場合、その車輪3はスリップ状態(空転状態)であると見なし、各種制御を実行する。車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、CPU14aは、車輪速センサ22の検出結果をブレーキシステム18を介して取得する。
シフトセンサ23は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ23は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ23は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
図4は、実施形態の走行支援システム100のCPU14aで実現される走行支援装置28の構成の例示的なブロック図である。CPU14aは、ROM14b等の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、それを実行することで走行支援装置28として実現される各種モジュールを備える。CPU14aにおいて実現される走行支援装置28は、例えば、音波制御部30、情報取得部32、車速算出部34、閾値決定部36、判定部38、距離算出部40、減速開始位置算出部42、制動制御部44、警報処理部46等を備える。
音波制御部30は、送波制御部30aおよび受波制御部30bを備える。本実施形態の場合、車両1の進行方向における凍結路面の有無判定を行うため、音波の送波方向が車両1の進行方向となっている測距部17を利用することができる。従来、車両1の周囲に存在する物体の検出用に備えられた測距部17を利用して、凍結路面の有無判定を行うことで、部品コスト等の増加を伴うことなく、新たな付加機能の実現が可能になる。図5は、車両1が路面48を後退走行する場合、車両1の後方に設けられた測距部17(17a~17d)を用いて、凍結路面の有無判定を行う場合の模式図である。上述したように、測距部17は、一例として、超音波ソナーを利用するものとする。測距部17は、超音波振動子(図示省略)を備える。送波制御部30aは一定周期で測距部17の超音波振動子を振動させる駆動信号を出力して測距部17の振動面から超音波Wを送波させる。超音波Wは音源である超音波振動子を中心として円錐状に広がりながら媒体中(本実施形態の場合、空気中)を伝搬していく。測距部17は、送波制御部30aの制御により送波された超音波Wが、車両1の周囲に存在する例えば、対象物体50で反射して戻ってきた反射波が重ねあわされた状態で受波する。受波制御部30bは、重ねあわされた信号を受波信号として取得する。超音波Wは、通常環境下で空気中を伝搬する場合、伝搬距離の増加に伴い減衰する。したがって、超音波Wを反射する対象物体50が測距部17から遠いほど、受波制御部30bで取得できる信号強度は低くなる。なお、この場合の「通常環境」とは、対象物体50以外で超音波Wの反射が起こりにくい環境であり、例えば、車両1(測距部17)が存在する路面48が平坦な硬質状態でない場合である。一般的な路面48である舗装路面(アスファルト路面)や未舗装路面、雪路面等は、表面に細かい凹凸が存在し、超音波Wを乱反射させたり、吸収したりする。その結果、超音波Wは、主として対象物体50で反射して、対象物体50の有無や位置を検出可能となる。なお、測距部17から送波される超音波Wは、例えば、車両1の進行方向と略平行に送波されるように設定されている。つまり、車両進行方向のより遠方まで測距部17から送波される超音波Wによる測距が可能であるとともに、主として路面48に向けられて、路面48や路面48上に存在する小形物等で過剰に反射してしまうことを抑制し、路面48や小形物等を障害物として誤検出してしまうことを抑制している。
ところで、車両1の進行方向の路面48が凍結している場合、車両1(測距部17)から遠い位置からの強い反射波を測距部17が受波できる場合がある。例えば、路面48が凍結する場合、路面48の表面の細かい凹凸が氷で覆われ、滑らかな硬質平面に近い状態になる。その結果、測距部17から送波された超音波Wが凍結した路面48に当たった場合に乱反射することなく車両1の進行方向(車両1の後方)に進み、そこに存在する対象物体50に当たる。つまり、測距部17から送波された直接波と、凍結した路面48で一度反射した間接波とが対象物体50で反射され、重ねあわされた結果が測距部17で受波される。一方、路面48が凍結していない場合、路面48に当たった超音波は、路面48の表面の細かい凹凸により乱反射し、対象物体50に向う間接波が凍結路面の場合より少なくなる。その結果、路面48が凍結している場合、非凍結の場合より、測距部17から離れた位置からの反射波の受波強度(信号強度)が高くなる。
また、路面48が凍結する場合、路面48の周囲すなわち車両1の周囲の温度(気温)が、非凍結時に比べて低い。音波(超音波W)の伝搬のし易さは、一般的に媒体(この場合、空気)の温度と湿度で決定される伝搬時の減衰量に影響され、低温環境(例えば、10℃以下)では温度が低いほど減衰量も小さくなる。したがって、路面48が凍結しているような周囲環境(低温環境)の場合、測距部17から離れた位置で反射した超音波Wは、少ない減衰で伝搬する。つまり、路面48が凍結している可能性がある場合、測距部17(受波制御部30b)は、非凍結の場合より遠い位置から強い受波強度(信号強度)の反射波を取得することができる。
なお、図5において、路面48と対象物体50との接触位置P付近からの反射波の受波強度(信号強度)が高いことが知られている。これは、接触位置Pの周辺で超音波Wの重ね合わせが、他の部分、例えば、対象物体50において接触位置Pから遠い位置(路面48から遠い位置)に比べて強く生じるためである。さらに、路面48が凍結している場合、前述したように超音波Wの伝搬時の減衰が少なく、接触位置P付近からの反射波の受波強度(信号強度)が高くなる。また、接触位置P付近の路面48で反射した超音波W(間接波)の重ね合わせ効果も加算され、接触位置P付近からの反射波の受波強度(信号強度)がさらに高くなる。
図6~図8は、路面48の状態を変化させた場合に、受波制御部30bが取得する受波強度(信号強度)に基づく、波高値(反射波の強度)と検知距離(対象物体50までの距離)の関係(受波傾向)を示す例示的なグラフである。なお、グラフにおけるプロット点は、あるタイミングで測距部17が送波した超音波Wに対する反射波を受波した場合の信号強度(波高値)であり、例えば、超音波Wの送波は、毎秒5回行われるものとする。また、測距部17の通常環境下(非凍結路面の環境下)での対象物体50の認識範囲は、測距部17から例えば3000mm以内とし、受波制御部30bは、測距部17から3000mm以内に対象物体50が存在すれば、高い信号強度(高い波高値)の反射波を安定的に取得できて、対象物体50の存在および対象物体50までの距離を認識できるものとする。なお、受波制御部30bは、3000mm以上の場合でも、距離精度は落ちるものの、何らかの物体が存在することを示すデータの取得は可能である。
図6は、路面48が、非凍結のアスファルト路面である場合の受波制御部30bが取得する受波傾向である。車両1の周囲の温度は、路面凍結には至らない例えば10℃である。図6に示されるように、車両1(測距部17)が対象物体50に接近する場合、車両1(測距部17)と対象物体50との相対距離が、例えば3000mm以内の場合、対象物体50で反射した強い反射波が受波可能で、受波強度の高い(波高値が高い)信号が得られる。つまり、受波制御部30bは、路面48に凍結が生じていない環境下で、信号強度に基づく対象物体50の有無判定、および送波から受波までの時間と測定時の音速に基づき対象物体50の存在位置(相対距離)の算出が可能な情報の取得ができる。なお、車両1の後部には、複数の測距部17(17a~17d)が配置され、同様に車両1の後方領域に対して超音波Wの送受波を行っている。したがって、少なくとも二つの測距部17の検出結果を用いることにより、三角測量が可能になり、対象物体50のより正確な位置検出を行うことができる。
一方、前述したように、車両1(測距部17)と対象物体50との相対距離が、測距部17の認識範囲である3000mm以上になると、受波制御部30bが取得する反射波の信号強度は、超音波Wの伝搬中の減衰により低下する。つまり、受波制御部30bは、測距部17の認識範囲に進入した対象物体50の識別が可能な受波傾向を得ることができる。
図7は、路面48が、凍結路面である場合の受波制御部30bが取得する受波傾向である。なお、図7の場合、路面48は、図6の場合と同様のアスファルト路面の上に雪や霜が積もった、または雨が降った後、雪や霜が一度溶けた後の水または雨水等がアスファルト路面上で凍った状態である。例えば、「アイスバーン」と呼ばれる状態も含まれている。また、車両1の周囲の温度は、路面凍結に至る例えば「0℃」以下、例えば-10℃である。
図7に示されるように、路面48が凍結路面である場合も、図6の非凍結路面の場合と同様に、車両1(測距部17)が対象物体50に接近する場合、車両1(測距部17)と対象物体50との相対距離が、例えば3000mm以内の場合、対象物体50で反射した強い反射波が受波可能で、受波強度の高い(波高値が高い)信号が得られる。つまり、受波制御部30bは、路面48に凍結の有無に拘わらず、信号強度に基づく対象物体50の有無判定、および送波から受波までの時間と測定時の音速に基づき対象物体50の存在位置(相対距離)の算出が可能な情報の取得ができる。この場合も、複数の測距部17(17a~17d)を利用した三角測量により、対象物体50のより正確な位置検出を行うことができる。
また、対象物体50が車両1の進行方向に存在し、路面48が凍結路面の場合、前述したように、媒体の温度の低下による超音波Wの減衰量の減少と、凍結路面で反射した後に対象物体50で反射する間接的な反射波の重ね合わせが同時に発生する。その結果、受波制御部30bは、本来であれば路面48のノイズと区別できない低い(弱い)波高値しか得られないような遠い位置に存在する対象物体50からも強い反射波が受波可能で、受波強度の高い(波高値が高い)信号が得られるような受波傾向を得ることができる。例えば、図7に示されるように、図6では、高い波高値の反射波が得られなかった例えば3000mm以上の検知距離の領域Eに、高い波高値の反射波が得られている。換言すれば、走行支援装置28は、所定温度未満の場合に、反射波の情報に基づいて、所定距離以上から所定値以上の信号強度の反射波を測距部17が受信したと判定した場合に、車両1の進行方向の路面が凍結路面である可能性があると判定することができる。なお、この場合は、反射波は、重ね合わせが成されて信号強度が増大されているだけである。したがって、遠い位置からの反射波は、信号強度に基づく対象物体50の有無判定、および送波から受波までの時間と測定時の音速に基づき対象物体50の存在位置(相対距離)の算出が可能な情報を示すデータでもある。また、複数の測距部17(17a~17d)を利用した三角測量により、対象物体50のより正確な位置検出を行うことができる。
図8は、路面48が、非凍結の雪路面である場合の受波制御部30bが取得する受波傾向である。雪路面と凍結路面とでは、車両1が走行する場合の路面μが異なる。特に、車両1が低速時の制動特性が異なるため区別する必要がある。なお、車両1の周囲の温度は、雪路面が維持されるような例えば0℃未満、例えば-10℃である。図6、図7の場合と同様に、車両1(測距部17)が対象物体50に接近する場合、車両1(測距部17)と対象物体50との相対距離が、例えば3000mm以内の場合、対象物体50で反射した強い反射波が受波可能で、受波強度の高い(波高値が高い)信号が得られる。つまり、受波制御部30bは、路面48に凍結の有無に拘わらず、信号強度に基づく対象物体50の有無判定、および送波から受波までの時間と測定時の音速に基づき対象物体50の存在位置(相対距離)の算出が可能な情報の取得ができる。この場合も、複数の測距部17(17a~17d)を利用した三角測量により、対象物体50のより正確な位置検出を行うことができる。
一方、車両1(測距部17)と対象物体50との相対距離が、測距部17の認識範囲である例えば3000mm以上になると、受波制御部30bが取得する反射波の信号強度は、超音波Wの伝搬中の減衰により低下する。雪は音波の振動を吸収する性質がある。また、雪の結晶は、降雪表面に細かい凹凸を形成しやすい。その結果、周囲温度が低いにも拘わらず、路面48における超音波Wの反射が発生し難く、間接波が対象物体50まで到達する可能性が低くなる。その結果、雪路面では、図6に示すような非凍結のアスファルト路面と同様に、遠距離からの反射波の信号強度が低い受波傾向を示す。
なお、図6~図8において、凍結路面の判定をより効率的かつ明確に行えるように、例えば、波高値が低い領域では、ノイズとの区別が難しくなるためフィルタをかけて、除外または区別することで、所定距離以上から所定値以上の信号強度の反射波が取得されるか否かを確認するようにしてもよい。
図9は、シーンが異なる場合の超音波の送受の様子を例示的に示す表である。一例として、路面48の凍結の有無および対象物体50の有無でシーンを場合分けしている。路面48が凍結路面の場合で、対象物体50が車両1の周囲に存在しない場合、測距部17から送波された超音波Wは、凍結路面で反射するものの、対象物体50が存在しないため、測距部17(車両1)に戻らない(受波制御部30bは反射波の信号を取得しない)。路面48が雪路面で対象物体50が車両1の周囲に存在しない場合も同様である。この場合、車両1が対象物体50等の障害物に接触する可能性は低い(ない)ため、車両1の制動制御において、路面48の凍結有無の判定は不要と見なすことができる。
路面48が凍結路面の場合で、対象物体50が車両1の周囲に存在する場合、測距部17から送波された超音波Wは、凍結路面で反射し測距部17(車両1)に戻る。図9の場合、測距部17から送波された超音波Wが対象物体50で反射して、その反射波がさらに凍結路面(路面48)で反射して測距部17に戻る例が示されている。別の例では、測距部17から送波された超音波Wが凍結路面(路面48)で反射し、その反射波が対象物体50でさらに反射し、測距部17に戻り受波される場合もある。つまり、測距部17は、凍結路面(路面48)等で反射しない直接波と、送受波の過程で、凍結路面(路面48)で反射した間接波とが重ねあわされた強い反射波の受波が可能になる。一方、路面48が非凍結路面(雪路面)の場合で、対象物体50が車両1の周囲に存在する場合、測距部17から送波された超音波Wのうち、対象物体50で反射して雪路面(路面48)に向かう反射波は、雪路面で乱反射または吸収され、測距部17(車両1)に戻りにくい。また、測距部17から送波された超音波Wの一部は雪路面(路面48)に向かうが、この場合も雪路面で乱反射または吸収されて、対象物体50に向かう間接波は極僅かである。そのため、測距部17は、凍結路面(路面48)等で反射しない直接波のみを主に受波することになり、路面48が凍結路面である場合に比べて反射波の受波強度は低下する。なお、雪路面の場合、乾燥路面より路面摩擦係数が低下するため、制動等を行う場合、配慮する必要がある。この場合、例えば、撮像部15が取得する撮像画像データに画像処理等を施すことにより雪路面か乾燥路面かの判定が可能になる。したがって、雪路面の場合は、本実施形態の凍結路面の判定とは別の判定処理の結果を用いて、制動制御を実施することができる。
なお、非凍結時の降雨路面の場合、雨水によってアスファルト路面の表面の凹凸を覆うことはないので、超音波Wは、乱反射等する結果となり、図6と同様な受波傾向を示す。また、非舗装路面においても路面の表面の凹凸により超音波Wは、乱反射等する結果となり、図6と同様な受波傾向を示す。また、これらの状況においても、車両1の進行方向に対象物体50が存在しない場合は、受波制御部30bは顕著な反射波を受波することはない。
図4に戻り、情報取得部32は、車両1の周囲の温度情報を取得する。例えば、車両1の空気調和装置に設けられた外気温測定用の温度センサからの情報や、測距部16や測距部17に設けられた温度センサ(温度による音速の補正用のセンサ)からの情報を取得する。また、別の実施形態では、インターネットや電話回線等の通信手段を用いて外部の情報センターが提供する、車両1の存在する位置の温度情報を取得してもよい。温度情報の取得方法は、これらに限定されず、車両1の周囲の温度情報が取得できれば、適宜利用可能である。また、凍結路面の判定用に専用の温度センサを設けてもよい。なお、外気温度と路面温度とに差異が生じている場合がある。このような場合、取得した外気温度と過去のデータとに基づき、路面温度を推定し、凍結路面の有無判定の判定条件(後述する温度閾値A)としてもよく、より正確な判定に寄与することができる。
車速算出部34は、車輪速センサ22から出力される検出結果に基づき、車両1の車速を算出する。また、閾値決定部36は、車速算出部34が算出した車両1の車速に基づき、路面48が凍結路面であると判定する際に用いる判定閾値(後述する判定閾値D)を決定する。判定閾値は、予め実験等に基づき決定することが可能で、ROM14b等に記憶されている。判定部38は、受波制御部30bが取得した例えば受波傾向を参照して路面48が凍結路面であるか否かを判定する。前述したように、路面48が凍結路面である場合、測距部17の認識範囲外である、測距部17から遠い検知距離である領域E(図7参照)において、非凍結路面の同じ領域E(図6参照)に比べて、強い信号強度の信号が複数受波できる。すなわち、領域Eに複数の反射波の波高値がプロットされる。判定部38は、例えば、領域Eのプロット数と閾値決定部36が決定した判定閾値(判定プロット数)とを比較し、プロット数が判定閾値以上の場合、つまり、所定値以上の信号強度の反射波の受波頻度が所定回数以上の場合に、車両1の進行方向の路面が凍結路面であると判定する。
ところで、車両1が走行して対象物体50に対して移動している場合に、所定周期で送波制御部30aから送波される超音波Wのうち対象物体50で反射する反射波の単位期間当たりの受波数は車両1の車速によって変化する。例えば、図10に示されるように、車両1の車速が高いほど単位期間(例えば1秒間)当たりで受波できる反射波の数、すなわち、図6~図8における単位期間当たりにプロットされる測定点の数が減る。したがって、予め凍結路面における車両1の各車速(例えば、1km/hごと)と受波できる反射波の数(プロット数)との関係を取得しておく。例えば、車速が5km/hの場合、領域Eにおいて、5以上の反射波を受波できている場合、判定部38は、路面48が凍結路面であると判定する。この場合、閾値決定部36は、車速5km/hに対する閾値を「5」として決定する。
距離算出部40は、測距部17が超音波Wを送波して、その超音波Wが対象物体50で反射し測距部17で受波されるまでの時間と、超音波Wの送受波時の音速(温度に対応する音速)に基づき、測距部17(車両1)から対象物体50までの距離を算出する。なお、前述したように、車両1の後方側の端部2eには複数(例えば4個)の測距部17(17a~17d)が備えられている。これらの測距部17a~17dは、車両1の後方に存在する対象物体50に対してそれぞれ超音波Wの送波および反射波の受波を行うことができる。この場合、測距部17の配置された位置によって同一の対象物体50を臨む角度が異なり、送受波経路に差異が生じる。したがって、距離算出部40は、いずれか二つの測距部17の送受波の結果を用いて対象物体50の位置を三角測量により、より正確に算出するようにしてもよい。
減速開始位置算出部42は、判定部38の判定結果に基づき、路面48が非凍結路面であると判定された場合、現在の車両1の車速で非凍結路面で制動を行う場合の非凍結時必要制動距離を算出する。同様に、減速開始位置算出部42は、判定部38の判定結果に基づき、路面48が凍結路面であると判定された場合、現在の車両1の車速で凍結路面で制動を行う場合の凍結時必要制動距離を算出する。そして、減速開始位置算出部42は、距離算出部40が算出した対象物体50までの距離を参照し、対象物体50と接触することなく車両1が停止できるために、制動(減速)を開始すべき「減速開始位置」を算出する。なお、非凍結時および凍結時の必要制動距離は、予め試験により車速ごとに決定しておき、ROM14b等の記憶部に例えばマップとして保存しておくことができる。なお、非凍結時の必要制動距離は、例えば、路面乾燥時用、降雨時用、降雪時用等のように、天候状態等によってさらに細かく設定してもよい。
制動制御部44は、減速開始位置算出部42が算出した減速開始位置に車両1の後方側の端部2eが到達したと見なせる場合に、路面48の状態に応じた制動力を自動的に発生するようにブレーキシステム18を制御する。例えば、路面48が凍結路面であると判定された場合、制動制御部44は、車両1と対象物体50とが接触を回避し得る非凍結時の第一の制動距離より長い第二の制動距離の位置から制動制御を実行する。
警報処理部46は、判定部38により路面48が凍結路面であると判定された場合に、例えば、「路面が凍結しています。注意してください。」等の警報メッセージや警報音、警報灯等を用いた警報処理を実行する。警報メッセージや警報灯は、例えば表示装置8や表示装置12に表示することができる。また、警報音は、音声出力装置9を介して出力することができる。また、警報処理部46は、対象物体50に対する接近の程度に応じたメッセージや音声等による警報を出力してもよい。なお、路面48が非凍結路面の場合は、路面状態に関する警報は省略し、対象物体50に対する接近警報のみを出力するようにしてもよい。
以上のように構成される走行支援装置28の動作について、図11のフローチャートを用いて説明する。なお、車両1の電源がONの場合、測距部17は常時、超音波Wの送受波を行い、車両1の周辺における対象物体50の有無や対象物体50までの距離を計測しているものとする。そして、走行支援装置28の動作により、凍結路面の有無判定が実行される。また、走行支援装置28は、対象物体50に接触しないための自動制動制御を実行する。
まず、走行支援装置28は、操作入力部10等を用いた利用者からの走行支援開始の要求があるか否かを常時確認し(S100)、要求がない場合(S100のNo)、一旦このフローを終了する。一方、利用者が操作入力部10等を操作して、走行支援開始の要求を行った場合(S100のYes)、判定部38は、受波制御部30bが取得した反射波のデータが、路面48の凍結を示すデータであるか否かを複数の条件(例えば、第1条件~第4条件)に基づいて判別する。そして、各条件を満たすデータの数が所定の閾値(第5条件)以上の場合に、路面48が凍結路面であると判定する。そこで、判定部38は、まず、路面48が凍結路面であるかを判定するために、RAM14c等の記憶部に一時的に記憶された凍結判定カウンタ値の初期化を行う(S102)。そして、走行支援装置28は、ブレーキシステム18の制御状態を参照し、運転者による制動操作部6(ブレーキペダル)の操作やブレーキシステム18自身による自動制動等による回避動作が実行されているか否かを判定する(S104)。回避動作が実行されていない場合(S104のNo)、情報取得部32は、例えば、空気調和装置や測距部17等に設けられた温度センサから車両1の周辺温度を取得する(S106)。
判定部38は、まず、周辺温度が温度閾値A(第1条件、例えば、「0℃」)未満の場合(S108のYes)、受波制御部30bが取得した超音波Wの反射波の信号強度(波高値)が第2条件としての所定の値(波高閾値B)以上か否かを判定する(S110)。すなわち、周辺温度が「0℃」未満の場合、受波した反射波のデータ(図7等におけるプロット点)が、路面48の凍結を示すデータである可能性があると判定し、第1条件が満たされたとする。また、取得した反射波が、例えば波高値が波高閾値B以上の場合(強い反射波が戻った場合)、凍結路面で反射した間接波が重ねあわせられて強い反射波のデータ(プロット点)になった可能性があると見なし、反射波のデータが路面48の凍結を示すデータである可能性があると判定し、第2条件が満たされたとする。なお、反射波は、伝搬距離が長くなるほど減衰する。つまり、凍結の可能性を示す反射波であっても、測距部17から遠い位置で反射した反射波の波高値は、近い位置で反射した波高値に比べ低くなる。前述したように、超音波Wの送受時間と現在の温度における音速に基づき反射の原因となる対象物体50までの距離が算出できる。したがって、第2条件である波高閾値Bは、対象物体50の位置(超音波Wが反射する原因となる物体)に応じて変化させてもよい。この場合、例えば、凍結路面における対象物体50までの距離と波高値との関係を予め波高値マップとして作成して、ROM14b等に記憶させておき、S110の判定の際に対象物体50までの距離にしたがい、その距離に応じた波高閾値Bを読み出してもよい。この場合、図7において、例えば、6000mmの距離にある対象物体50からの反射波が、低い場合でも路面48の凍結を示すデータであると判定する場合があり、判定精度を向上に寄与できる。
S110において、波高値≧波高閾値Bの場合(S110のYes)、次に判定部38は、第3条件として、対象物体50との距離を距離閾値Cと比較する(S112)。前述したように、測距部17から対象物体50までの距離が近い場合、路面48の凍結の有無に拘わらず、所定値以上の強い反射波が戻ってくる。また、本実施形態における走行支援装置28は、例えば、駐車等のための低速(例えば、10km/h以下)で後退走行を行いつつ制動制御を行う場合、凍結路面であることを事前に判定(検出)するとともに、凍結路面での制動距離の増加を見越して早めに制動動作(接触回避動作)を開始する。そのため、測距部17から所定距離以上からの反射波を凍結路面の判定に利用するデータとする必要がある。そこで、第3条件として、例えば、凍結路面における低速後退時の必要制動距離を参照して、例えば距離閾値C=3000mmとする。そして、対象物体50との距離≧距離閾値C(3000mm)の場合(S112のYes)、判定部38は、現在の車両1の車速を車輪速センサ22の検出値に基づき取得する(S114)。判定部38は、取得した車速を用いて、第4条件として、車両1が対象物体50に接近しているか否かの判定を行う(S116)。つまり、車両1の現在の走行状態が、対象物体50から遠ざかっている場合、すなわち、車両1が前進走行している場合、対象物体50に対する接触回避動作を行う必要がなく、車両1の後方路面の状態を判定する必要性は少ない。車両1が対象物体50に接近しているか遠ざかっているかは、例えば、対象物体50と車両1との接近速度と車両1の自車速度との比較により判定することができる。例えば、接近速度≧車両1の自車速度の場合(S116のYes)、車両1は対象物体50に接近中であると判定できる。つまり、反射波のデータは、温度が所定温度(温度閾値A)未満の場合に、所定距離(距離閾値C)以上から所定値以上の信号強度(波高閾値B)である、と判定できる。この場合、判定部38は、受波制御部30bが取得した反射波のデータが、路面48の凍結を示すデータであると判定し、凍結判定カウンタ値を「+1」更新する(S118)。一方、S116において、接近速度≧車両1の自車速度でない場合(S116のNo)、つまり、車両1が対象物体50から遠ざかっている場合、車両1の後方に関する凍結路面の検出は不要であると判定し、凍結判定カウンタ値を初期化する(S120)。
続いて、判定部38は、凍結判定カウンタ値の初期化から所定期間経過しているか否か確認する(S122)。本実施形態の場合、図7等で説明したように、所定温度未満の場合に、所定距離以上から所定値以上の信号強度の反射波が、例えば所定回数以上取得された場合に、車両1の進行方向の路面48が凍結路面であると判定する。したがって、実際に反射波が受波できるか否かに拘わらず、一定期間、反射波の収集処理が必要になる。凍結判定カウンタ値の初期化から所定期間経過していない場合(S122のNo)、S104の処理に戻り、判定部38は、受波制御部30bが取得した反射波のデータが、路面48の凍結を示すデータであるか否かを判定して、凍結判定カウンタ値の更新または初期化の処理を繰り返す。
なお、S112において、対象物体50との距離≧距離閾値Cではない場合(S112のNo)、つまり、取得した反射波のデータが、測距部17に近い距離からの反射波に基づくデータである場合である。この場合、波高値が波高閾値B以上で、強い反射波が取得されたとしても凍結路面での反射に起因するか否か判別不能となる。したがって、判定部38は、凍結判定カウンタ値に関する処理は行わず、反射波のデータをRAM14cに記憶し、S122の処理に移行する。この場合、取得した反射波のデータは、対象物体50との距離等を示すデータとして利用される。また、S110において、波高値≧波高閾値Bではない場合(S110のNo)、つまり、反射波が低い(弱い)場合である。この場合、周囲温度が温度閾値A未満であったとしても、路面48が非凍結状態、例えば、雪路面等である場合がある。そのため、判定部38は、凍結判定カウンタ値に関する処理は行わず、反射波のデータをRAM14cに記憶し、S122の処理に移行する。この場合、取得した反射波のデータは、対象物体50との距離等を示すデータとして利用される。また、S108において、周辺温度が温度閾値A以上の場合、路面48は凍結していない可能性が高い。したがって、この場合、判定部38は、凍結判定カウンタ値に関する処理は行わず、反射波のデータをRAM14cに記憶し、S122の処理に移行する。この場合も、取得した反射波のデータは、対象物体50との距離等を示すデータとして利用される。また、S104において、現在、車両1が回避動作を実行している場合(S104のYes)、既に路面48の状態を判別する必要性は低いと判定し、判定部38は、凍結判定カウンタ値を初期化し(S124)、S122の処理に移行する。この場合も、取得した反射波のデータは、対象物体50との距離等を示すデータとして利用される。
S122において、凍結判定カウンタ値の初期化から所定期間経過している場合(S122のYes)、つまり、一定期間、反射波の収集処理が完了した場合、路面48が凍結路面であるか否かを判定する際に参照する判定閾値Dを決定する(S126)。判定閾値Dは前述したように、現在の車両1の車速によって、取得できる反射波のデータ数が変動するため、例えば、S114で取得した車両1の車速に基づき、図10のマップを参照し決定することができる。そして、判定部38は、S118において、更新された凍結判定カウンタ値とS126で決定した判定閾値Dとの比較を行う(S128)。そして、判定部38は、凍結判定カウンタ値≧判定閾値Dである場合(S128のYes)、例えば、図7に示すように、領域Eに判定閾値D以上のプロット点が存在する場合、判定部38は、路面48の状態が「凍結」であると判定する(S130)。そして、警報処理部46は、表示装置8や音声出力装置9を用いて、路面48が凍結路面であることを利用者に報知する警報処理を実行する(S132)。一方、S128において、凍結判定カウンタ値≧判定閾値Dではない場合(S128のNo)、例えば、図6に示すように、領域Eに判定閾値D以上のプロット点が存在しない場合、判定部38は、路面48の状態が「非凍結」であると判定する(S134)。
路面48の状態が「凍結」であると判定された場合(S136のYes)、減速開始位置算出部42は、制動距離を延長する(S138)。例えば、凍結時必要制動距離を、同じ車速で非凍結時に必要となる非凍結時必要制動距離の、例えば1.5倍とする。そして、減速開始位置算出部42は、路面48が凍結路面である場合に、現在の車両1の車速を参照し、対象物体50との接触を回避し、かつスムーズに停止できる減速開始位置を算出する(S140)。なお、S136において、路面48の状態が凍結路面でないと判定された場合(S136のNo)、S138の処理をスキップして、S140の処理で、非凍結路面時の制動距離、つまり、通常の制動距離を用いて、減速開始位置を算出する(S140)。
制動制御部44は、距離算出部40が算出する対象物体50に対する距離を参照し、対象物体50に対する車両1の現在の位置が、減速開始位置算出部42が算出した減速開始位置に到達した場合(S142のYes)、制動制御を開始する(S144)。例えば、ブレーキシステム18を用いて自動制動を開始する。また、S142において、減速開始位置に到達していない場合、走行支援装置28は、S104の処理に移行し、凍結路面であるか否かの判定を継続して実施するために反射波の取得処理および凍結判定カウンタ値に関する処理を繰り返し実施する。
このように、本実施形態の走行支援装置28によれば、対象物体50の存在の有無や対象物体50までの距離を検出する測距部17を流用して、車両1の進行方向の路面48の状態が凍結状態であるか否か予め取得(または推定)できる。その結果、1の進行方向の路面48が凍結路面である場合には、凍結路面による滑りを考慮して減速開始位置を非凍結路面の場合より手前に変更し、対象物体50との接触回避を確実に行えるようにすることができる。また、制動動作を余裕を持って実行することができるので、スムーズな減速、停止を実現することができる。
なお、上述した実施形態では、車両1が低速で後退走行している状態で、進行方向の路面48が凍結路面であるか否かを判定する例を説明した。別の実施形態では、車両1が低速で前進走行している状態で、進行方向の路面48が凍結路面であるか否かを判定することも可能で、同様の効果を得ることができる。この場合は、車両1の前方に設けられた測距部17e~17hが利用される。また、路面48が凍結路面であるか否かを判定する場合に、車両1の後方側の測距部17a~17dを用いるか、車両1の前方側の測距部17e~17hを用いるかは、例えば、走行支援装置28が走行支援開始要求を取得したときに、シフトセンサ23から取得できる、変速操作部7の位置(R位置またはD位置)に基づいて、前進状態であるか後進状態であるかを取得し判定することができる。
また、上述した実施形態では、車両1の進行方向の路面48が凍結路面であると判定された場合、制動距離を延ばすことにより、対象物体50と接触することなく車両1を制動させる例を示した。別の実施形態では、凍結路面であると判定され、実際に制動制御を実施している間に、周知の技術を用いて路面μを取得し、制動力の調整を行ってもよい。この場合、よりスムーズな制動が実現できる。
本実施形態において、車両1の進行方向の路面48が凍結路面であるか否かを判定する場合に、超音波を用いる例を示したが、可聴音を用いても同様な効果を得ることができる。また、本実施形態において、車両1の進行方向の路面48が凍結路面であるか否かを判定する場合に、音波(例えば、超音波)を用いている。音波(例えば、超音波)を用いる場合、周囲の明るさの影響を受けない。したがって、例えば、夜間やトンネル内等においても、凍結路面であるか否かの判定を、例えば、映像に基づいて判定する場合よりも高精度に行うことができる。
本実施形態のCPU14aで実行される走行支援プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
さらに、走行支援プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行される走行支援プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。