図1には、本発明の実施形態に係る電力変換装置100の構成が示されている。電力変換装置100は、電力を供給する設備である電力系統10に接続されている。電力系統10には、例えば商用電源システムがある。電力変換装置100はバッテリ14を備えており、電力系統10とバッテリ14との間の電力伝送を行う。また、電力変換装置100には、電気自動車24が着脱自在となっている。電力系統10、バッテリ14および電気自動車24のそれぞれは、電力変換装置100の動作に応じて電力変換装置100に電力を出力し、あるいは、電力変換装置100から電力を取得する。なお、電力変換装置100には、電気自動車の他、ハイブリッド自動車が接続されてもよい。また、電力変換装置100には、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載される車載バッテリが接続されてもよい。
電力変換装置100は、交流スイッチング回路12、トランス16、直流スイッチング回路22、およびバッテリ14を備えている。交流スイッチング回路12は、電力系統10に接続されている。トランス16は、磁気的に結合するプライマリ巻線18とセカンダリ巻線20を備えている。プライマリ巻線18の両端は交流スイッチング回路12に接続され、セカンダリ巻線20の両端は直流スイッチング回路22に接続されている。バッテリ14は、セカンダリ巻線20の中途点端子(タップ)に接続されている。
電力変換装置100は、次の(1)~(5)に示される機能を有している。
(1)電力系統10から取得した電力をバッテリ14に供給し、バッテリ14を充電する機能(2)バッテリ14から取得した電力を電力系統10に供給する機能(3)電力系統10から取得した電力を電気自動車24に供給し、電気自動車24に搭載された車載バッテリを充電する機能(4)バッテリ14から取得した電力を電気自動車24に供給し、車載バッテリを充電する機能(5)車載バッテリから取得した電力を電力系統10に供給する機能(V2Gに用いられる機能)
なお、電力変換装置100は、上記の(3)および(4)を組み合わせて、電力系統10から取得した電力と、バッテリ14から取得した電力を電気自動車24に供給し、車載バッテリを充電してもよい。また、電力変換装置100は、車載バッテリから取得した電力をバッテリ14に供給してもよい。
図2には、本発明の実施形態に係る電力変換装置100の回路構成が示されている。電力系統10は、R相線10R、S相線10SおよびT相線10Tを備え、これら3相の電力伝送線に電力変換装置100が接続されている。交流スイッチング回路12は、3相の単相スイッチング回路としてR相スイッチング回路12R、S相スイッチング回路12SおよびT相スイッチング回路12Tを備えている。
R相スイッチング回路12Rは、並列接続された2つのハーフブリッジR1およびR2を備えている。ハーフブリッジR1は、直列接続された双方向スイッチRW1およびRW2を備え、ハーフブリッジR2は、直列接続された双方向スイッチRW3およびRW4を備えている。双方向スイッチRW1およびRW2の接続点a(交流接続点a)は、直列に接続されたR相インダクタ26RおよびR相接続線28Rを介して電力系統10のR相線10Rに接続されている。
S相スイッチング回路12Sは、並列接続された2つのハーフブリッジS1およびS2を備えている。ハーフブリッジS1は、直列接続された双方向スイッチSW1およびSW2を備え、ハーフブリッジS2は、直列接続された双方向スイッチSW3およびSW4を備えている。双方向スイッチSW1およびSW2の接続点(交流接続点a)は、直列に接続されたS相インダクタ26SおよびS相接続線を介して電力系統10のS相線10Sに接続されている。
T相スイッチング回路12Tは、並列接続された2つのハーフブリッジT1およびT2を備えている。ハーフブリッジT1は、直列接続された双方向スイッチTW1およびTW2を備え、ハーフブリッジT2は、直列接続された双方向スイッチTW3およびTW4を備えている。双方向スイッチTW1と双方向スイッチTW2との接続点(交流接続点a)は、直列に接続されたT相インダクタ26TおよびT相接続線28Tを介して電力系統10のT相線10Tに接続されている。
R相スイッチング回路12Rが備える双方向スイッチRW3と双方向スイッチRW4との接続点(中性接続点b)、S相スイッチング回路12Sが備える双方向スイッチSW3と双方向スイッチSW4との接続点(中性接続点b)、および、T相スイッチング回路12Tが備える双方向スイッチTW3と双方向スイッチTW4との接続点(中性接続点b)は、中性点Nで共通に接続されている。
R相スイッチング回路12R、S相スイッチング回路12SおよびT相スイッチング回路12Tのそれぞれが備える双方向スイッチは、例えば、図3に示されている2つのMOSFET1およびMOSFET2によって構成される。MOSFET1のソース端子は、MOSFET2のドレイン端子に接続されている。MOSFET1およびMOSFET2のそれぞれのソース端子とドレイン端子との間には、ソース端子の側をアノード端子として、ダイオードDが接続されている。2つのMOSFETの代わりに、その他の半導体スイッチング素子が用いられてもよい。半導体スイッチング素子としてバイポーラトランジスタが用いられた場合、MOSFETのドレイン端子、ソース端子およびゲート端子が、それぞれ、コレクタ端子、エミッタ端子およびベース端子に対応する。
図2に戻って電力変換装置100の回路構成について説明する。プライマリ巻線18は、個別に導線が巻かれた3つの部分プライマリ巻線として、R相部分プライマリ巻線18R、S相部分プライマリ巻線18SおよびT相部分プライマリ巻線18Tを備えている。R相スイッチング回路12RにおけるハーフブリッジR1およびR2の両端は、R相部分プライマリ巻線18Rの両端に接続されている。S相スイッチング回路12SにおけるハーフブリッジS1およびS2の両端は、S相部分プライマリ巻線18Sの両端に接続され、T相スイッチング回路12TにおけるハーフブリッジT1およびT2の両端は、T相部分プライマリ巻線18Tの両端に接続されている。
直流スイッチング回路22は、並列接続された2つのハーフブリッジα1およびα2を備えている。ハーフブリッジα1は、直列接続されたスイッチング素子αW1およびαW2を備え、ハーフブリッジα2は、直列接続されたスイッチング素子αW3およびαW4を備えている。図2に示されている例では、各スイッチング素子にMOSFETが用いられている。すなわち、スイッチング素子αW1としてのMOSFETのソース端子にスイッチング素子αW2としてのMOSFETのドレイン端子が接続されている。同様に、スイッチング素子αW3としてのMOSFETのソース端子にスイッチング素子αW4としてのMOSFETのドレイン端子が接続されている。
スイッチング素子αW1およびαW2の接続点と、スイッチング素子αW3およびαW4の接続点との間には、セカンダリ巻線20が接続されている。ハーフブリッジα1およびα2の両端には、コンデンサ30が接続されている。また、ハーフブリッジα1およびα2のそれぞれの上側の接続点は、正極端子34に至る正極線32に接続され、ハーフブリッジα1およびα2のそれぞれの下側の接続点は、負極端子38に至る負極線36に接続されている。セカンダリ巻線20には、導線が巻かれた途中の接続点である中途点端子が設けられている。中途点端子は、セカンダリ巻線20を形成する導線の中点に設けられた端子、すなわち、センタータップであってもよい。セカンダリ巻線20の中途点端子にはバッテリ14の正極が接続され、バッテリ14の負極は負極線36に接続されている。
図4には、電力変換装置100を制御する制御装置60の構成が示されている。制御装置60は、総合制御部62、直流側制御部64および交流側制御部66を備えている。また、図5には直流側制御部64の構成が、図7には交流側制御部66の構成がそれぞれ示されている。これらの制御部は、プログラムを実行することで各機能が実行されるプロセッサ等の演算デバイスによって構成されてもよい。また、これらの制御部の総てまたは全部は、ハードウエアとしてのディジタル回路によって個別に構成されてもよい。図4、図5および図7に併せて図2を参照しながら、制御装置60の構成および動作について説明する。
直流側制御部64は、直流スイッチング回路22を制御し、交流側制御部66は、交流スイッチング回路12を制御する。総合制御部62は、電力変換装置100を全体的に制御するための信号を直流側制御部64および交流側制御部66に出力する。交流側制御部66は、R相制御部66R、S相制御部66SおよびT相制御部66Tを備えている。R相制御部66R、S相制御部66SおよびT相制御部66Tは、それぞれ、R相スイッチング回路12R、S相スイッチング回路12SおよびT相スイッチング回路12Tを制御する。
図5には、直流側制御部64の構成が示されている。直流側制御部64が図2の直流スイッチング回路22を制御するに際しては、正極端子34と負極端子38との間の電圧の計測値である直流電圧計測値Vem、バッテリ14に流れる電流の計測値であるバッテリ電流計測値Ibmが用いられる。電力変換装置100には、これらを計測するためのセンサ(図示せず)が設けられている。各センサによる計測値は、直流側制御部64に入力されている。
総合制御部62から直流側制御部64には、正極端子34と負極端子38との間の電圧に対する指令値である直流電圧指令値Ve*、バッテリ14から出力される電力に対する指令値であるバッテリ出力指令値Pb*、およびキャリア信号Crが出力される。キャリア信号Crの時間波形は、例えば、正負対称の三角波形である。直流側制御部64は、図5に示される各構成要素が実行する次のような演算によって、スイッチング素子αW1~αW4に対するゲート信号G1~G4を生成する。
減算器68は、直流電圧指令値Ve*から直流電圧計測値Vemを減算して第1誤差を求め、第1PI制御部70に出力する。第1PI制御部70は、比例積分制御による第1制御値を求め、加算器72に出力する。加算器72は、第1制御値にバッテリ出力指令値Pb*を加算して第2誤差を求め、第2PI制御部74に出力する。第2PI制御部74は、比例積分制御による第2制御値を求め、減算器76に出力する。減算器76は、第2制御値からバッテリ電流計測値Ibmを減算して第3誤差を求め、ゲート信号生成部78に出力する。
ゲート信号生成部78は、第3誤差に基づいて第1比較値C1を求める。そして、キャリア信号Crの値が比較値C1以上である期間にハイとなり、キャリア信号Crの値が比較値C1値未満である期間にローとなるゲート信号G1を生成する。ゲート信号生成部78は、さらに、ゲート信号G1のハイおよびローを反転したゲート信号G2を生成する。
また、ゲート信号生成部78は、第3誤差に基づいて第2比較値C2を求める。そして、キャリア信号Crの値が比較値C2以上である期間にハイとなり、キャリア信号Crの値が比較値C2未満である期間にローとなるゲート信号G3を生成する。ゲート信号生成部78は、さらに、ゲート信号G3のハイおよびローを反転したゲート信号G4を生成する。
直流側制御部64は、ゲート信号G1~G4によって、それぞれ、スイッチング素子αW1~αW4をオンオフ制御する。すなわち、ゲート信号Gi(i=1~4)がハイであるときに、そのゲート信号Giの制御対象のスイッチング素子αWiをオンにし、ゲート信号Giがローであるときにスイッチング素子αWiをオフにする。
図6(a)には、キャリア信号Cr、第1比較値C1、および第2比較値C2の例が示されている。また、図6(b)には、上記の処理によって直流側制御部64が生成するゲート信号G1~G4が示されている。さらに、図6(c)には、セカンダリ巻線20の端子間電圧V2が示されている。図6(a)~(c)の横軸は時間を示し、縦軸は各信号値または電圧を示す。
スイッチング素子αW1およびαW3が共にオンまたはオフであり、スイッチング素子αW2およびαW4が共にオフまたはオンであるとき、セカンダリ巻線20の端子間電圧V2は0となる。スイッチング素子αW1およびαW4が共にオンであり、スイッチング素子αW2およびαW3が共にオフであるとき、セカンダリ巻線20の端子間電圧V2はVeとなる。ただし、Veは、正極端子34と負極端子38との間の電圧、すなわち、コンデンサ30の端子間電圧である。スイッチング素子αW1およびαW4が共にオフであり、スイッチング素子αW2およびαW3が共にオンであるとき、セカンダリ巻線20の端子間電圧V2は-Veとなる。
また、ゲート信号生成部78は、ゲート信号G1~G4に加えて、キャリア信号Crに同期した同期信号Synを生成する。図6(d)には同期信号Synが示されている。横軸は時間を示し縦軸は信号値を示す。同期信号Synは、キャリア信号Crが負値から正値となるゼロクロスタイミングで立ち上がり、正値から負値となるゼロクロスタイミングで立ち上がる矩形波信号である。
ゲート信号G2がハイからローに切り替わり、ゲート信号G1がローからハイに切り替わったときには、バッテリ14の出力電圧が昇圧されて、コンデンサ30に印加される。すなわち、図2のスイッチング素子αW2がオンからオフに切り替わることで、バッテリ14からセカンダリ巻線20を通ってスイッチング素子αW2を流れる電流が遮断され、セカンダリ巻線20の中途点端子より上側の部分に誘導起電力が発生する。そして、バッテリ14の出力電圧に誘導起電力が加えられた昇圧電圧が、スイッチング素子αW1またはそれに接続されたダイオードを介してコンデンサ30に印加される。昇圧電圧が、コンデンサ30の端子間電圧よりも大きいときは、ダイオードを介してコンデンサ30が充電され、昇圧電圧がコンデンサ30の端子間電圧よりも小さいときは、スイッチング素子αW1を介してコンデンサ30が放電される。
同様に、ゲート信号G4がハイからローに切り替わり、ゲート信号G3がローからハイに切り替わったときにも、バッテリ14の出力電圧が昇圧されて、コンデンサ30に印加される。
正極端子34および負極端子38の端子間電圧Veと、バッテリ14の出力電圧Vbには次のような関係がある。
(数1)Ve=Vb/(1-Duty)
ただし、Dutyは、オンオフの1周期に対する、スイッチング素子αW2およびαW4がオンになる時間長の比率を示すデューティ比である。
正極端子34および負極端子38には電気自動車が着脱自在となっており、正極端子34および負極端子38に電気自動車が接続されている場合には、バッテリ14の出力電圧が昇圧された端子間電圧Veが電気自動車に印加される。
このように、直流スイッチング回路22は、バッテリ14から出力される電圧を昇圧し、直流スイッチング回路22の正極端子34および負極端子38に接続された隣接回路に昇圧後の電圧を出力する。
図7には、R相スイッチング回路12R、S相スイッチング回路12SおよびT相スイッチング回路12Tをそれぞれ制御するR相制御部66R、S相制御部66SおよびT相制御部66Tの構成が示されている。これらの制御部が実行する処理は同様であるため、ここではR相制御部66Rについて説明する。
R相制御部66RがR相スイッチング回路12Rを制御するに際しては、R相インダクタ26RおよびR相接続線28を流れる電流の計測値であるR相電流計測値IRmが用いられる。電力変換装置100には、R相電流計測値IRmを計測するためのセンサ(図示せず)が設けられおり、このセンサによる計測値はR相制御部66Rに入力されている。
総合制御部62からR相制御部66Rには、電力系統10から電力変換装置100に供給される電力に対する指令値である系統電力指令値Pg*、およびR相キャリア信号CrRが出力されている。R相キャリア信号CrRの時間波形は、例えば、正負対称の三角波形である。さらに、キャリア信号CrRの周期は、キャリア信号Crの周期と異なる。直流側制御部64からR相制御部66Rには同期信号Synが出力されている。R相制御部66Rは、図7に示される各構成要素が実行する次のような演算によって、スイッチング素子RW1~RW4に対するゲート信号gr1~gr4を生成する。
電流演算部80は、系統電力指令値Pg*を3で割ることで、1相当たりの単相電力指令値を求め、中性点電位を基準とした電力系統10の相電圧で単相電力指令値を割ることで、単相電流値を求める。減算器82は、単相電流値からR相電流計測値IRmを減算することで単相電流誤差を求め、単相PI制御部84に出力する。単相PI制御部84は、比例積分制御による単相制御値を求め、単相・制御量演算部86に出力する。
単相・制御量演算部86は、単相制御値に基づいて第3比較値C3を求める。第3比較値C3は、例えば、電力系統10におけるR相電圧の正の半周期での値に比例した値である。単相・制御量演算部86は、キャリア信号CrRが第3比較値C3以上である期間にハイとなり、キャリア信号CrRが第3比較値C3未満である期間にローとなる中間信号Ms1を生成し、単相ゲート信号生成部88に出力する。
また、単相・制御量演算部86は、単相制御値に基づいて第4比較値C4を求める。第4比較値C4は、例えば、電力系統10におけるR相電圧の負の半周期での値に比例した値である。単相・制御量演算部86は、キャリア信号CrRが第4比較値C4以上である期間にハイとなり、キャリア信号CrRが第4比較値C4未満である期間にローとなる中間信号Ms2を生成し、単相ゲート信号生成部88に出力する。
単相ゲート信号生成部88には、同期信号Synが入力されている。単相ゲート信号生成部88は、中間信号Ms1がハイであるときに同期信号Synをそのままの値とし、中間信号Ms1がローであるときに同期信号Synのハイおよびローを反転させたゲート信号gr1を生成する。すなわち、単相ゲート信号生成部88は、中間信号Ms1と同期信号Synとの否定排他的論理和(XNOR)をゲート信号gr1とする。単相ゲート信号生成部88は、さらに、ゲート信号gr1のハイおよびローを反転したゲート信号gr2を生成する。
また、単相ゲート信号生成部88は、中間信号Ms2がハイであるときに同期信号Synをそのままの値とし、中間信号Ms2がローであるときに同期信号Synのハイおよびローを反転させたゲート信号gr3を生成する。すなわち、単相ゲート信号生成部88は、中間信号Ms2と同期信号Synとの否定排他的論理和(XNOR)をゲート信号gr3とする。単相ゲート信号生成部88は、さらに、ゲート信号gr3のハイおよびローを反転したゲート信号gr4を生成する。
R相制御部66Rは、ゲート信gr1~gr4によって、それぞれ、スイッチング素子RW1~RW4をオンオフ制御する。すなわち、ゲート信号gri(i=1~4)がハイであるときに、そのゲート信号griの制御対象のスイッチング素子RWiをオンにし、ゲート信号griがローであるときにスイッチング素子RWiをオフにする。
図8(a)には、キャリア信号CrR、第3比較値C3、および第4比較値C4の例が示されている。また、図8(b)には、同期信号Syn、および上記の処理によってR相制御部66Rが生成する中間信号Ms1およびMs2が示されている。さらに、図8(c)には、上記の処理によってR相制御部66Rが生成するゲート信号gr1~gr4が示されている。
図9には、R相スイッチング回路12Rにおける双方向スイッチSW1およびSW2の接続点(交流接続点a)と、双方向スイッチSW3およびSW4の接続点(中性接続点b)との間の電圧Vrが示されている。電圧Vrは、中性点Nの電圧を基準とした、R相インダクタ26RとハーフブリッジR1との接続点の電圧であるともいえる。また、R相接続線28RおよびR相インダクタ26Rに流れる電流IRが電圧Vrに重ねて示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電圧Vrまたは電流IRを示す。
R相インダクタ26Rに流れる電流は、R相スイッチング回路12Rによってスイッチングされている。R相インダクタ26Rが電流の変化を抑制するという作用によって、電流IRの時間波形および位相は、電力系統10のR相線10Rの相電圧の時間波形および位相に近付けられる。
S相スイッチング回路12Sにおける交流接続点aおよび中性接続点bとの間の電圧Vsは、図9に示される電圧Vrに対し位相が120°遅れた電圧となり、T相スイッチング回路における交流接続点aおよび中性接続点bとの間の電圧Vtは、図9に示される電圧Vrに対し位相が240°遅れた電圧となる。また、S相接続線28SおよびS相インダクタ26Sに流れる電流ISは、図9に示される電流IRに対し位相が120°遅れた電流となり、T相接続線28TおよびT相インダクタ26Tに流れる電流ITは、図9に示される電流IRに対し位相が240°遅れた電流となる。
図7に示されるS相制御部66SおよびT相制御部66Tは、R相制御部66Rと同様の構成を有している。
S相制御部66SがS相スイッチング回路12Sを制御するに際しては、S相接続線28Sを流れる電流の計測値であるS相電流計測値ISmが用いられる。電力変換装置100には、S相電流計測値ISmを計測するためのセンサ(図示せず)が設けられおり、このセンサによる計測値はS相制御部66Sに入力されている。
総合制御部62からS相制御部66Sには、電力系統10から電力変換装置100に供給される電力に対する指令値である系統電力指令値Pg*、およびS相キャリア信号CrSが出力されている。直流側制御部64からS相制御部66Sには同期信号Synが出力されている。S相制御部66Sは、R相制御部66Rが実行する演算と同様の演算によって、スイッチング素子SW1~SW4に対するゲート信号gs1~gs4を生成する。
T相制御部66TがT相スイッチング回路12Tを制御するに際しては、T相接続線28Tを流れる電流の計測値であるT相電流計測値ITmが用いられる。電力変換装置100には、T相電流計測値ITmを計測するためのセンサ(図示せず)が設けられおり、このセンサによる計測値はT相制御部66Tに入力されている。
総合制御部62からT相制御部66Tには、電力系統10から電力変換装置100に供給される電力に対する指令値である系統電力指令値Pg*、およびT相キャリア信号CrTが出力されている。直流側制御部64からT相制御部66Tには同期信号Synが出力されている。T相制御部66Tは、R相制御部66Rが実行する演算と同様の演算によって、スイッチング素子TW1~TW4に対するゲート信号gt1~gt4を生成する。
なお、S相キャリア信号CrSおよびT相キャリア信号CrTは、時間波形がR相キャリア信号CrRと同一の波形である。ただし、R相キャリア信号CrR、S相キャリア信号CrSおよびT相キャリア信号CrTには相互に120°の位相差がある。
このような制御によって、交流スイッチング回路12は、電力系統10から電力変換装置100に入力される電力(交流入力電力)、または、電力変換装置100から電力系統10に出力される電力(交流出力電力)を調整する。これによって、R相接続線28R、S相接続線28SおよびT相接続線28Tのそれぞれに流れる電流の時間波形および位相が、電力系統10の各相電圧の時間波形および位相に近付けられる。したがって、電力系統10から電力変換装置100に入力される電力、電力変換装置100から電力系統10に出力される電力の力率が向上する。
図10には、電力変換装置100の電力伝送状態が示されている。電力伝送状態(i)および(ii)は、正極端子34および負極端子38に電気自動車が接続されていないときの状態である。電力伝送状態(i)では系統電力指令値Pg*が正に設定され、バッテリ出力指令値Pb*が負に設定されている。これによって、電力系統10からバッテリ14に電力が伝送され、バッテリ14が充電される。電力伝送状態(ii)は、系統電力指令値Pg*が負に設定され、バッテリ出力指令値Pb*が正に設定されている。これによって、バッテリ14から電力系統10に電力が伝送される。
電力伝送状態(iii)~(v)は、正極端子34および負極端子38に電気自動車が接続されているときの状態である。これらの電力伝送状態では、直流電圧指令値Ve*は所定の正の値に設定されている。電力伝送状態(iii)では、系統電力指令値Pg*が正に設定され、バッテリ出力指令値Pb*が0に設定されている。これによって、電力系統10から電気自動車に電力が伝送され、電気自動車の車載バッテリが充電される。電力伝送状態(iv)では、系統電力指令値Pg*が0に設定され、バッテリ出力指令値Pb*が正に設定されている。これによって、バッテリ14から電気自動車に電力が伝送され、電気自動車の車載バッテリが充電される。電力伝送状態(v)では、系統電力指令値Pg*およびバッテリ出力指令値Pb*が正に設定されている。これによって、電力系統10およびバッテリ14から電気自動車に電力が伝送され、電気自動車の車載バッテリが充電される。
本実施形態に係る電力変換装置100は、各指令値の設定によって、次の第1電力伝送動作~第3電力動作のうちいずれかの動作をする。すなわち、電力変換装置100は、各相の交流スイッチング回路(12R、12S,12T)から各相のプライマリ巻線(18R,18S,18T)およびセカンダリ巻線20を介して供給される電力に対するスイッチングによってバッテリ14または電気自動車(隣接回路)に電力を伝送する第1電力伝送動作、隣接回路またはバッテリ14から、セカンダリ巻線20および各相のプライマリ巻線を介して各相の交流スイッチング回路に電力を供給する第2電力伝送動作、または、隣接回路とバッテリ14との間で電力を授受させる第3電力伝送動作のうちいずれかの動作をする。
また、電力変換装置100では、セカンダリ巻線20に直接接続されたバッテリ14が設けられている。直流スイッチング回路22およびセカンダリ巻線20は、各相の交流スイッチング回路およびプライマリ巻線18と共に、電力系統10、バッテリ14および電気自動車の相互間での電力伝送をするという機能に加えて、バッテリ14の出力電圧を昇圧するという機能を併せ持っている。セカンダリ巻線20は、交流スイッチング回路12と直流スイッチング回路22との間で電力伝送をするトランス16を構成する他、バッテリ14の出力電圧を昇圧するための昇圧リアクトルとして用いられる。したがって、電力変換装置100では、バッテリ14の出力電圧を昇圧するための回路構成が簡単になる。
図11には、第1応用例に係る電力変換装置101が示されている。この電力変換装置101は、図2に示されている電力変換装置100のセカンダリ巻線20を2つのセカンダリ巻線20Aおよび20Bに置き換え、セカンダリ巻線20Aに直流スイッチング回路22を接続し、セカンダリ巻線20Bに直流スイッチング回路40を接続したものである。図2に示された構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
プライマリ巻線18、セカンダリ巻線20A、およびセカンダリ巻線20Bはトランス50を構成する。セカンダリ巻線20Aおよび20Bのそれぞれは、プライマリ巻線18が備えるR相部分プライマリ巻線18R、S相部分プライマリ巻線18S、およびT相部分プライマリ巻線18Tのそれぞれに磁気的に結合している。
直流スイッチング回路40は、直流スイッチング回路22と同様の構成を有している。すなわち、直流スイッチング回路40は、ハーフブリッジβ1およびβ2、ならびに、コンデンサ44を備えている。ハーフブリッジβ1およびβ2、ならびに、コンデンサ44は、それぞれ、直流スイッチング回路22が備えるハーフブリッジα1およびα2、ならびに、コンデンサ30に対応する。
ハーフブリッジβ1を構成するスイッチング素子βW1およびβW2は、それぞれ、ハーフブリッジα1を構成するスイッチング素子αW1およびαW2に対応する。ハーフブリッジβ2を構成するスイッチング素子βW3およびβW4は、それぞれ、ハーフブリッジα2を構成するスイッチング素子αW3およびαW4に対応する。
直流スイッチング回路40における正極線46および負極線48は、それぞれ直流スイッチング回路22における正極線32および負極線36に対応し、それぞれ、正極線32および負極線36に接続されている。これによって、直流スイッチング回路22および40は、正極端子34および負極端子38を共有する。
直流スイッチング回路22および40はバッテリ14を共有する。バッテリ14の正極は、セカンダリ巻線20Aおよび20Bのそれぞれのタップに接続され、バッテリ14の負極は、直流スイッチング回路40の負極線48に接続されている。
直流スイッチング回路22および40のスイッチングタイミングは同期している。すなわち、スイッチング素子αW1~αW4は、それぞれ、スイッチング素子βW1~βW4と同一のタイミングでオンからオフになり、またはオフからオンになる。
このように、本実施形態に係る電力変換装置101は、複数のセカンダリ巻線(セカンダリ巻線20Aおよび20B)と、複数のセカンダリ巻線に対応して設けられ、共通のバッテリ14が接続された複数の直流スイッチング回路(直流スイッチング回路22および40)とを備えている。複数の直流スイッチング回路は、共通の隣接回路としての電気自動車に接続され、電気自動車との間で電力を授受する。また、電力変換装置101では、各セカンダリ巻線(20A,20B)の両端に、各セカンダリ巻線に対応する直流スイッチング回路(22,40)が接続されており、各セカンダリ巻線の中途点(中途接続点)に、共通のバッテリ14が接続されている。
このような構成によれば、図2に示されている電力変換装置100と同一の電力を、トランス50から正極端子34および負極端子38に伝送し、あるいは、正極端子34および負極端子38からトランス50に伝送する場合には、電力変換装置100に比べて、各スイッチング素子に流れる電流が小さくなる。したがって、各スイッチング素子には、図2に示されている各スイッチング素子に比べて、許容電流が小さいものを用いてもよい。
図12(a)には、電力変換装置101について、各電圧の計算結果が示されている。すなわち、R相スイッチング回路12Rにおける交流接続点aと中性接続点bとの間の電圧Vr、S相スイッチング回路12Sにおける交流接続点aと中性接続点bとの間の電圧Vs、およびT相スイッチング回路12Tにおける交流接続点aと中性接続点bとの間の電圧Vtが示されている。横軸は時間を示し縦軸は電圧を示す。電圧Vsは電圧Vrに対し位相が120°遅れた電圧であり、電圧Vtは、電圧Vsに対し位相が120°遅れた電圧である。すなわち、電圧Vr、電圧Vsおよび電圧Vtの相互の位相差は、120°である。
図12(b)には、電力変換装置101について、R相インダクタ26Rの右側の一端とS相インダクタ26Sの右側の一端との間の相間電圧Vrs、およびR相接続線28Rから流入または流出し、S相接続線28Sから流出または流入する電流IRSが示されている。横軸は時間を示し、縦軸は電圧または電流を示す。相間電圧Vrsは、S相スイッチング回路12Sの交流接続点aを基準としたR相スイッチング回路12Rの交流接続点aの電圧であるともいえる。相間電圧Vrsは、図12(a)に示された電圧Vrから電圧Vsを減じた電圧である。電流IRSは、電力変換装置101によって、その時間波形および位相が電力系統10の相間電圧(R相線とS相線との間のRS相間電圧)の時間波形および位相に近付けられたものである。電流IRSの時間波形および位相がRS相間電圧の電圧波形および位相に近付けられ、他の相間についても同様の処理が行われることで、電力系統10から電力変換装置101に供給される電力の力率が向上する。
図13には、第2応用例に係る電力変換システム102の構成が示されている。この電力換システムは、3台の電力変換装置101-1~101-3を備えている。各電力変換装置は、図11に示された電力変換装置101と同様の構成を有している。電力変換装置101-1~101-3の交流スイッチング回路12は、次のように直列接続されている。
電力変換装置101-1のR相スイッチング回路12Rにおける交流接続点a(図2)は、インダクタ26RおよびR相接続線28Rを介して、電力系統10のR相線10Rに接続されている。電力変換装置101-1のR相スイッチング回路12Rにおける中性接続点b(図2)は、電力変換装置101-2のR相スイッチング回路12Rにおける交流接続点aに接続されている。電力変換装置101-2のR相スイッチング回路12Rにおける中性接続点bは、電力変換装置101-3のR相スイッチング回路12Rにおける交流接続点aに接続されている。
電力変換装置101-1のS相スイッチング回路12Sにおける交流接続点aは、インダクタ26SおよびS相接続線28Sを介して、電力系統10のS相線10Sに接続されている。電力変換装置101-1のS相スイッチング回路12Sにおける中性接続点bは、電力変換装置101-2のS相スイッチング回路12Sにおける交流接続点aに接続されている。電力変換装置101-2のS相スイッチング回路12Sにおける中性接続点bは、電力変換装置101-3のS相スイッチング回路12Sにおける交流接続点aに接続されている。
電力変換装置101-1のT相スイッチング回路における交流接続点aは、インダクタ26TおよびT相接続線28Tを介して、電力系統10のT相線10Tに接続されている。電力変換装置101-1のT相スイッチング回路12Tにおける中性接続点bは、電力変換装置101-2のT相スイッチング回路12Tにおける交流接続点aに接続されている。電力変換装置101-2のT相スイッチング回路12Tにおける中性接続点bは、電力変換装置101-3のT相スイッチング回路12Tにおける交流接続点aに接続されている。
電力変換装置101-1~101-3のそれぞれのT相スイッチング回路12Tにおける中性接続点bは、中性点Nで共通に接続されている。
電力変換装置101-1~101-3のそれぞれにおける交流スイッチング回路12のスイッチングタイミングは同期している。また、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれにおける直流スイッチング回路22および40のスイッチングタイミングは同期している。電力変換装置101-j(j=1~3)におけるR相部分プライマリ巻線18Rの端子間電圧をVrj、S相部分プライマリ巻線18Sの端子間電圧をVsj、そして、T相部分プライマリ巻線18Tの端子間電圧をVtjとした場合、R相およびS相の相間電圧Vrs、S相およびT相の相間電圧Vst、ならびに、T相およびR相の相関電圧については、次の関係が成立する。
(数2)Vrs=Vr1+Vr2+Vr3+Vs3+Vs2+Vs1
(数3)Vst=Vs1+Vs2+Vs3+Vt3+Vt2+Vt1
(数4)Vtr=Vt1+Vt2+Vt3+Vr3+Vr2+Vr1
R相部分プライマリ巻線18R、S相部分プライマリ巻線18SおよびT相部分プライマリ巻線18Tの巻き数が同一である場合、各相間電圧は、各部分プライマリ巻線の端子間電圧の6倍である。
本実施形態に係る電力変換システム102は、複数の負荷装置としての複数の電気自動車に対応して設けられた複数の電力変換装置101-1~101-3(複数の電力変換モジュール)を備えている。電力変換装置101-1~101-3のそれぞれは、自らに対応する電気自動車との間で電力を授受する。
電力変換システム102では、電力系統10の3つの相電圧のそれぞれについて、電力変換装置101-1~101-3における単相スイッチング回路が直列接続されている。すなわち、R相についてはR相単相スイッチング回路12Rが直列接続され、S相についてはS相単相スイッチング回路12Sが直列接続され、T相についてはT相単相スイッチング回路12Tが直列接続されている。この直列接続は、各単相スイッチング回路の交流接続点a(一方の接続端)を前端とし、中性接続点b(他方の接続端)を後端としたときに、初段の電力変換装置101-1が備える単相スイッチング回路の前端に、複数の相電圧のうちの対応する1相の相電圧が印加され、前段の電力変換装置101-1が備える単相スイッチング回路の後端が、次段の電力変換装置101-2が備える単相スイッチング回路の前端に接続され、最終段の電力変換装置101-3が備える単相スイッチング回路の後端が、中性点Nに接続される接続態様である。すなわち、各単相スイッチング回路の後端は、中性点か、中性点Nに至る経路に接続されている。中性点Nに至る経路は、1つまたは複数の後段の単相スイッチング回路であり、最終段の単相スイッチング回路の後端は中性点Nに接続されている。
このような構成によれば、図2に示されている電力変換装置100に比べて、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれの交流スイッチング回路12が備える双方向スイッチに印加される電圧は小さくなる。したがって、電力変換装置100に比べて、各双方向スイッチに用いられるスイッチング素子の耐電圧を小さくしてもよい。
図14(a)~(f)には、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれに電気自動車が接続された場合における電力変換システム102についてのシミュレーション結果が示されている。図14に併せて図13を参照しながらシミュレーション結果について説明する。図14(a)には、電力系統10から電力変換システム102に供給される電力Pg、および、電力変換装置101-1~101-3のバッテリ14が出力する電力の合計値ΣPbが示されている。図14(b)には、電力変換装置101-1~101-3の各バッテリ14が出力する電力Pb1~Pb3が示されている。図14(c)には、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれから電気自動車に出力される電力Pe1~Pe3が示されている。図14(d)には、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれの正極端子34および負極端子38の端子間電圧Ve1~Ve3が示されている。図14(e)には、電力変換装置101-1における相間電圧Vrsが、電力系統10のR相線10RおよびS相線10SのRS相間電圧VRSと共に示されている。図14(f)には、R相接続線28Rに流れる電流IR、S相接続線28Sに流れる電流ISおよびT相接続線28Tに流れる電流ITが示されている。図14(a)~(f)の横軸は時間を示し、縦軸は電力、電圧または電流を示す。
時間τ1~時間τeまでの間、電力変換装置101-1ではバッテリ14から電気自動車に電力Pb1が供給されている。時間τ2以降の時間において、電力変換装置101-3ではバッテリ14から電気自動車に電力Pb3が供給されている。ただし、時間τ2~時間τeの間の時間τf以降は、それより前に比べて電気自動車に供給される電力Pb3が小さくなる。時間τ3~時間τeまでの間、電力変換装置101-2ではバッテリ14から電気自動車に電力Pb2が供給されている。
時間τ4より前では、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれにおける交流スイッチング回路12のスイッチングが停止している。そのため、電力変換装置101-1における相間電圧Vrsは0である。時間τ4以降は、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれにおける交流スイッチング回路12のスイッチングが開始され、相間電圧Vrsが現れると共に、R相接続線28R、S相接続線28SおよびT相接続線28Tに、それぞれ、電流IR、電流ISおよび電流ITが流れる。これによって、時間τ4以降は、電力系統10から各電気自動車に電力が供給される。すなわち、図14(e)に示されているように、時間τ4の前後において電力系統10のR相線10RおよびS相線10Sから電力変換システムには正弦波が印加されている。一方、相間電圧Vrsは時間τ4より前では0であるものの、時間τ4以降では電力変換装置101-1~101-3のスイッチングに応じた時間波形となっている。
図15(a)~(f)には、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれに電気自動車が接続されていない場合における電力変換システムについてのシミュレーション結果が示されている。図15に併せて図13を参照しながらシミュレーション結果について説明する。電力変換装置101-1~101-3のいずれにも電気自動車が接続されていないため、図15(c)に示されているように、電力変換システムと各電気自動車との間で授受される電力Pe1~Pe3は0である。また、図15(d)に示されているように、電力変換装置101-1~101-3における正極端子34および負極端子38の端子間電圧Ve1~Ve3は一定である。図15(e)に示されているように、電力系統10のR相線およびS相線から電力変換システムには正弦波が印加され、電力変換装置101-1の相間電圧Vrsは、電力変換装置101-1~101-3のスイッチングに応じた時間波形となっている。
図15(b)に示されているように、時間τ5~時間τ6の間、電力変換装置101-1~101-3の各バッテリ14が出力する電力Pb1~Pb3は同一の負の値である。また、図15(a)に示されているように、時間τ5~時間τ6の間、電力系統10から電力変換システム102に供給される電力Pgは正であり、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれのバッテリ14が出力する電力の合計値ΣPbは負である。すなわち、時間τ5~時間τ6の間、電力系統10から各バッテリ14に同一の電力が供給され、各バッテリ14は同一の電力で充電されている。図15(f)に示されているように、電流IR、電流ISおよび電流ITは、電力系統10から各バッテリ14に供給される電力に応じた値となる。
図15(b)に示されているように、時間τ7~時間τ8の間、電力変換装置101-1~101-3の各バッテリ14が出力する電力Pb1~Pb3は同一の正の値である。また、図15(a)に示されているように、時間τ7~時間τ8の間、電力系統10から電力変換システム102に供給される電力Pgは負であり、電力変換装置101-1~101-3のそれぞれのバッテリ14が出力する電力の合計値ΣPbは正である。すなわち、時間τ7~時間τ8の間、各バッテリ14から電力系統10に同一の電力が供給され、各バッテリ14は同一の電力で放電している。図15(f)に示されているように、電流IR、電流ISおよび電流ITは、各バッテリから電力系統10に供給される電力に応じた値となる。