JP7085383B2 - 炭素繊維強化樹脂組成物及びその成形物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン系樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化樹脂組成物に関し、特に剛性、曲げ特性や耐衝撃性等の物性が向上した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を得ることができる炭素繊維強化樹脂組成物に関する。
近年、FRPの中でも炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は比弾性率や比強度が鉄等と比して大きく軽量構造材料として注目されている。特に、自動車材料や電子材料の分野においては、CFRPが金属材料やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の代替材料として検討されている。
CFRPは用いるプラスチックの種類で大きく2つに分類することができる。1つは熱硬化性樹脂を用いたCFRTSで、他は熱可塑性樹脂を用いたCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)である。
CFRTPは一般的に短時間での成形が可能なことや2次加工性を有することも含めた良成形性といった特徴を活かし、主に不連続炭素繊維との組合せにより比較的低コストで生産数が多くかつ複雑形状が要求される部材としての適性がある。特に、ポリプロピレン系のマトリックス樹脂を用いたCFRPが、高速成形が可能でリサイクルも行い易いという理由から、注目され始めている。
一般に、ポリプロピレン(PP)に代表されるポリオレフィンは充填剤との密着性に乏しい。そこで、例えば、無水マレイン酸等でグラフト変性した酸変性PPを用いて、ポリオレフィンと充填剤の密着性を向上させる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、この方法はガラス繊維(GF)に対しては有効な手段だが、表面にシラノール基を持たない炭素繊維に対しては十分に有効とは言えないものであった。
ポリオレフィン樹脂と炭素繊維との界面接着性を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂を添加する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、耐衝撃性を含めた実用特性を満足するには更なる改善が求められていた。
一方、特許文献3にはある特定の範囲のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の芳香族ビニル化合物と共役ジエンとから得られるブロック共重合体熱可塑性エラストマーを用いた繊維強化樹脂組成物が開示されている。この技術では、耐衝撃性は向上する一方、弾性率が低く、炭素繊維を用いるメリットである高剛性を損なうものであった。加えて耐熱性も低く実用特性を満足するには更なる改善が求められていた。
国際公開2010/119480号 特開2005-256206号公報 特開2014-105285号公報
本発明はこのような現状を鑑みてなされたものであり、良成形性を維持しつつ剛性、曲げ特性や耐衝撃性等の物性が向上したCFRP(成形物)を得ることができる炭素繊維強化樹脂組成物を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、CFRPの物性向上にはCFと樹脂の密着向上が不可欠だが、密着性を上げただけでは強度は向上するが耐衝撃性が不足すること、耐衝撃性を向上するにはゴム等を添加することが知られているが、ゴムを添加すると確かに耐衝撃性は上がるが、CFRPの特徴である剛性が損なわれる上、加えて密着向上剤の効果を阻害してしまうせいか強度も低下することを見出すと同時に、ある特定の耐衝撃性向上剤と密着向上剤と組み合わせて用いることで剛性・強度と耐衝撃性を両立できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤を必須成分とする炭素繊維強化樹脂組成物であって、上記オレフィン系軟質樹脂成分が、下記条件、
(1)230℃、21.18Nにおけるメルトマスフローレイト(MFR)が5~150g/10minであること及び
(2)上記ポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を連続相とし、オレフィン系軟質樹脂成分を分散相とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1~10μmであること、を満足し、
上記炭素繊維の配合率が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤の合計に対し、10~50質量%であることを特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物である。
上記密着性付与剤としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていること及びエポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有されている樹脂が適する。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマーが適するものとしてある。
上記オレフィン系軟質成分は、23℃での曲げ弾性率が100~1600MPaであることがよい。
そして、エチレン-プロピレンブロックコポリマー及び/又は酸変性ポリプロピレンが適するものとしてある。
上記ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤を、それぞれ(A)、(B)及び(C)とするとき、それぞれの配合率が、(A)、(B)及び(C)の合計に対し、(A)0.1~97.5質量%、(B)2~75質量%及び(C)0.5~70質量%であることがよく、(A)、(B)及び(C)の合計に対し、(A)40~90質量%、(B)2~49質量%及び(C)1~20質量%であることがより好ましい。
また、本発明は上記の炭素繊維強化樹脂組成物の成形物である。
本発明によれば、特に剛性、曲げ特性や耐衝撃性等の物性が向上したCFRPを得ることができる炭素繊維強化樹脂組成物を得ることができる。そのため本発明の炭素繊維強化樹脂組成物から得られる成形物は、自動車部品、二輪・自転車部品等、特に剛性や耐衝撃性の要求される部品等に好適に用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分の混合物のモルフォロジーを模式的に表した図である。 ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分の混合物のAFM画像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂を(A)成分と、オレフィン系軟質樹脂成分を(B)成分と、密着性付与剤を(C)成分と、炭素繊維を(D)成分ともいう。(A)、(B)及び(C)成分を含み、(D)成分を含まない混合物をポリオレフィン系樹脂組成物ともいい、さらに(D)を加えた(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を炭素繊維強化樹脂組成物ともいう。
(A)、(B)、(C)及び(D)成分の順に説明する。なお、以下は煩雑な多数の例示を避けて代表的化合物のみ記載するものであり、本発明は、これら化合物又は材料に限定して解釈されるものではない。
まず、(A)成分のポリオレフィン系樹脂について説明する。
ポリオレフィン系樹脂は単純なエチレンやプロピレン等のオレフィンを含むモノマーから得られる樹脂であり、酸変性等の変性や異相共重合等の反応が行われていない未変性タイプのものが適する。
モノマーとしてのオレフィンの具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、1-オクテン等を挙げることができる。
これらのオレフィンを1種類だけ重合させた単独重合体(ホモポリマー)でもよいし、2種類以上を共重合させた共重合体(コポリマー)でもよい。共重合体の例としては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ペンテン共重合体、プロピレン-ヘキセン共重合体、プロピレン-オクテン共重合体のような二元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ヘキセン共重合体のような三元共重合体等が挙げられる。この中でもプロピレンの単独重合体であるプロピレンホモポリマーが特に好ましい。
プロピレンホモポリマーは、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物が適切な流動性を保ち良好な成形性を示し、ポリオレフィン系樹脂組成物を成形物としたときの剛性の指標である曲げ弾性率が高いという効果がある。
プロピレンホモポリマーは、重合触媒を用いてプロピレン等をスラリー重合、気相重合又は液相塊状重合することにより製造でき、このようなプロピレン重合体を製造する重合方式としては、バッチ重合、連続重合のいずれの方式も使用することができる。
なお、プロピレンホモポリマーを得るために用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒が使用できる。この中でチーグラー・ナッタ触媒が好ましい。
チーグラー・ナッタ触媒を使用することでポリマーに高い立体規則性を持たせることができ、なおかつ比較的高分子量のものが得られる。そのため、構造材料用途として必要な剛性、耐熱性(融点)、強度といった点で好適なプロピレンホモポリマーが得られる。
このようなプロピレンホモポリマーは、市販品を適宜選択して使用することができる。市販品としては、プライムポリプロJ105G、J106G、J106MG、J108M、J-700GP(株式会社プライムポリマー製)や、ノバテックMA3 MA3H MA1B、SA08(日本ポリプロ株式会社製)や、PM600A、PM600D、PM801A、PM802A、PM900A、PM900C、PL400A、PL500A、PL801C、PLA00A、PLB00A、PS412M、VS200A、PC412A、PC600A、PC600S、PF600R、HPA03A(サンアロマー株式会社製)等が挙げられる。
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂のMFRの範囲は特に限定されるものではないが、5~150g/10minの範囲が好ましい。MFRが5g/10minより低すぎると流動性が悪く成形加工性を損なうだけでなく、流動性が悪いと例えば、炭素繊維とのコンパウンド時に繊維に過度な応力が加わることで繊維の折損を招き、炭素繊維強化複合材料としたときの物性低下の恐れがある。一方、MFRが150g/minより高すぎると流動性が良すぎるため溶融加工時に樹脂ダレが発生して外観が悪化する恐れがあるだけでなく、例えば、炭素繊維とのコンパウンド時に繊維濃度が一定に保てずに強度がバラつく原因となる恐れがある。
本明細書においてMFRの測定条件は特に断らない限り、(B)成分の測定条件と同じである。
次に、(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分について説明する。オレフィン系軟質樹脂成分は、耐衝撃性向上剤として機能する。
オレフィン系軟質樹脂成分は、オレフィン類を主成分として含むモノマーを重合して得られる樹脂であり、それを構成するモノマー単位中にオレフィン類の単位を含む。ここで、軟質とはガラスや炭素といった無機系材料よりも延性が高く、軟らかく弾性を有する性質のことをいう。そして、(A)成分より軟質又は耐衝撃性であることが好ましい。
オレフィン系軟質樹脂成分を構成するオレフィンの具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、1-オクテン等を挙げることができる。
これらの化合物を1種類だけ重合させた単独重合体でもよいし、2種類以上を組み合わせて重合させた共重合体でもよいが、酸変性等の変性や異相共重合等の反応を行った変性タイプのものが適する。そして、少なくともプロピレンをモノマー単位に含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。なお、異相共重合とはポリオレフィン系樹脂の製造過程で多段の反応槽を使って製造される特殊な共重合のことを指し、これにより製造された異相共重合体は通常の共重合体とは異なるものとして扱う。例えば、エチレン-プロピレンブロックコポリマー(ブロックPP)は異相共重合体(異相コポリマー)であり、通常のエチレン-プロピレン共重合体(コポリマー)とは異なる共重合体として扱う。ブロックPPは(B)成分となり、通常のコポリマーは(A)成分となる。
プロピレンをモノマー単位に含まない場合は、ポリオレフィン系樹脂組成物としたときにポリオレフィン系樹脂との相溶性が低下し、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物として、これに負荷をかけた際に、後述する連続相と分散相との界面が容易に破壊され強度等の物性が低下する恐れがあるとか、あるいは密着性付与剤との相溶性が良すぎるものとなって密着性付与剤の機能発現を妨げて、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物としたときの強度等の物性が不足する恐れがある。一方、プロピレンをモノマー単位に含む場合は、ポリオレフィン系樹脂とも密着性付与剤とも適度な相溶性又は非相溶性を保つことができる。
また、オレフィン系軟質樹脂成分は熱を加えることで容易に塑性変形を生じる熱可塑性樹脂であることが好ましい。例えば、熱可塑性の乏しいネットワークポリマー等だと、流動性が不足し成形加工性が悪くなり生産効率が低下する。
さらに、オレフィン系軟質樹脂成分は、ブロックPP及び/又は酸変性PPであることが好ましい。これらの樹脂成分は上記の他成分との相溶性の程度が適するだけでなく、剛性等の力学特性や耐衝撃性を比較的高いレベルで両立できる。
酸変性PPの場合は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリプロピレンであることがよく、ポリプロピレン中にカルボキシル基や無水カルボン酸基を有するものである。不飽和カルボン酸で変性させる場合は、その不飽和結合がポリプロピレンと反応することにより、ポリプロピレンにカルボキシル基や無水カルボン酸基が結合した酸変性PPとなる。
ポリプロピレンを酸変性するために用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物等があり、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
オレフィン系軟質樹脂成分は23℃での曲げ弾性率が100~1600MPaである。曲げ弾性率が100MPaより低すぎると、ポリオレフィン系樹脂組成物としたとき、炭素繊維強化複合材料及びその成形物としたときの高温時の寸法安定性が低下する恐れがあり、一方1600MPaより高すぎるとこれらの耐衝撃性が不足する恐れがある。耐衝撃性が不足するメカニズムは定かではないが硬脆い性質を有するため衝撃負荷を加えた際にオレフィン系軟質樹脂成分が塑性変形することでエネルギーを吸収する機能が低下するためと考えられる。
オレフィン系軟質樹脂成分は230℃、21.18N(2.16kg)で測定した場合のMFRが5~150g/10minである。好ましい範囲は5.5~120g/10minである。5g/10minより低すぎると混練性が乏しいためポリオレフィン系樹脂組成物とした際に組成物内にムラができやすく、その結果成形品とした際の品質安定性が低下する恐れがある。一方でMFRが150g/minより高すぎると流動性が良いため成型加工性は良いものの、分子量が低いことに起因し成形物の強度等が低下する恐れがある。
(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分は、(A)成分のポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を海とし、オレフィン系軟質樹脂成分を島とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1~10μmである。
この海島構造とは、ポリオレフィン系樹脂からなる相が連続相をなし、オレフィン系軟樹脂質成分からなる相が連続相中に分散して分散相となっている構造を意味する。海島構造となることは、両者は完全には相溶しないことを意味する。
ここでモルフォロジーとは樹脂の微細構造のことを指し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡や、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等により、ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分を溶融混合した組成物の断面を観察することで確認することができる。具体的な方法は、ミクロトームを使って樹脂組成物の表面を平滑化する面出しを行った後、BrukerAXS製Dimension Icon型SPM装置を用いて、プローブには先端曲率半径が10nm、ばね定数42N/mのBruker製TESPA NCHVをセットしタッピングモードでスキャンして観察することができる。なお、海島構造の確認は、実施例に記載の方法による。
分散相の2次元形状は特に限定されないが、代表的な例を挙げると円状、だ円状、雫状、棒状、紐状、針状、角状、不定形状、が挙げられる。この中では特に円状乃至楕円状といった尖った部分を有さない形状で分散しているものが好ましい。好ましい理由は、局所的に過度に応力が集中することなく比較的等方的に分散するためである。
分散相の平均長さは上記方法により観察して得られた位相差イメージをそのまま、又は位相差のコントラストを強調したイメージから読み取ることができる。オレフィン系軟質樹脂成分からなる分散相の平均長さは、100個以上の分散相長さを測定し、その分散相長さを算術平均して算出される。なお本発明では、ある1個の分散相の最大長さと最小長さの合計を2で割った値をその分散相の分散相長さと定義する。なお、分散相の最大長さ、最小長さとは、例えば、図1中の符号121、122でそれぞれ表した距離のことである。
また、オレフィン系軟質樹脂成分からなる分散相の平均長さは0.1~10μmである。平均長さが0.1μmよりも小さいとポリオレフィン系樹脂組成物が破壊される過程で発生、進展するクラック端部の大きさと比較して小さすぎるため、破壊に対する抵抗が発揮されずに耐衝撃性等の物性が発現できなくなる恐れがある。一方10μmより大きいとポリオレフィン系樹脂組成物、ならびに炭素繊維強化複合材料及びその成形物としたときの剛性が低下する恐れがある。
オレフィン系軟質樹脂成分は、メカニズムは定かではないが、下記のような機構により本発明の効果を発現すると思われる。すなわち、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に負荷が加わった際にオレフィン系軟質樹脂成分自体が塑性変形に伴いエネルギーを吸収、又はオレフィン系軟質樹脂成分とポリオレフィン系樹脂との界面を起点に発生するクレイズを誘発する現象を経る過程でエネルギーを吸収することで耐衝撃性等の物性を発現するものと思われる。加えてポリオレフィン系樹脂との相溶性のバランスが適度な範囲に制御されたモルフォロジーを形成することでポリオレフィン系樹脂組成物とした際に、剛性等の力学特性を損なうことを極力抑制することができる。
このようなオレフィン系軟質樹脂成分としては、市販品から適宜選択することができる。かかる市販品としては、ノバテックBC6C、BC4BSW、BC3AD、BC3L、BC2E、BC03C、BC03B、BC03GS、BC05B、BC06C、BC08F、BC10HRF(日本ポリプロ株式会社製)や、プライムTPO R110MP、R110E、T310E、M142E(株式会社プライムポリマー製)や、プライムポリプロBJS-MU、J704LB、J704UG、J705UG、J715M、J707G、J707EG、J830HV、J708UG、J709QG(株式会社プライムポリマー製)や、PM472W、PM671A、PM761A、PM854X、PM870A、PM870Z、PM970A、PM970W、PM972Z、PMA60Z、PMB60W、PMB60W、VMD81M、PB170A、PB270A、VB170A、VB370A、W、PC480A、PC684S(サンアロマー株式会社製)等のブロックPPや、モディックP502、P553A、P565、P555、P664V(三菱ケミカル株式会社製)や、OREVAC G 18720、18722、18725、18729、18732、18732P、18750、18751、CA100(アルケマ株式会社製)や、トーヨータックPMA-H1000P、PMA-H1100P、PMA-F2、M-100、M-300、M-213(東洋紡株式会社製)や、リケエイドREO-070-1、MG-250P、MG-400P(理研ビタミン株式会社製)や、ユーメックス100TS、110TS、1001、1010(三洋化成工業株式会社製)等の酸変性PPがある。
次に、(C)成分の密着性付与剤について説明する。
密着性付与剤は、樹脂と繊維の密着性を改善する作用を有する。したがって、ポリオレフィン系樹脂と相溶性を有する単位と、繊維との接着性を高める単位、好ましくは水酸基のような極性基含有単位とを有するものであればよい。しかし、(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分であることはない。
好適には、密着性付与剤は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を有する骨格と、密着作用を有するエポキシ樹脂単位との両方を、1分子中に含む構造のものである。このため、通常は相溶性が低いといわれる非極性ポリオレフィン系樹脂中に対して、エポキシ樹脂成分を分散性良く配置することができるので樹脂組成物に均一性を与える。その結果、応力集中による局部的な破壊を軽減することができ、安定して高い機械強度を発現することに寄与する。
より好ましくは、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていて、しかもエポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有される樹脂である。
かかる樹脂は、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂から得ることができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の好ましい変性内容は上記の酸変性PPに対するものと同様であり、無水マレイン酸が特に好ましい。
一方の原料であるエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、エポキシ基を2個以上含有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、2級水酸基を有する2官能エポキシ樹脂が特に好ましい。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。なお、上記エポキシ樹脂には、いわゆるフェノキシ樹脂と称する高分子量エポキシ樹脂も含まれる。また、フェノキシ樹脂の骨格は特に制限はなく、様々な構造が使用できるが、ビスフェノールA骨格の構造が好ましい。
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性メラミン樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位は、エステル構造で結合されており、エポキシ樹脂単位中に上記2級水酸基を含有する。エステル構造は、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基又は酸無水物基と、エポキシ樹脂のエポキシ基又はヒドロキシ基から生じる結合単位であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位は結合単位に係る部分を除いた単位であると理解される。なお、エポキシ樹脂は、エステル構造を形成する際、エポキシ基が開環するが、開環で生成した部位で、エステル構造に関与しない部位は、エポキシ樹脂単位に含まれる。
反応生成物のエステル結合の存在は、IR吸収スペクトル測定によって、その有無を確認することができる。反応生成物を溶解する溶媒は通常無いため、IR吸収スペクトルの測定は、フィルム状にした後、反射法によって行われる。そのため、吸収スペクトルのピークの定量性はないが、エステル結合のピークの有無は確認可能であるので、エステル構造の存在はこれにより判定される。
エステル結合は、IR吸収スペクトルを測定することで、C=O伸縮による吸収が1735~1750cm-1に観測できることで確認できる。
エポキシ樹脂単位中に含まれる2級水酸基の有無は、IR吸収スペクトルを測定することで、O-H伸縮による吸収が3200~3600cm-1にブロードなピークとして観測できることで確認できる。
密着性付与剤は、上記構造単位を有し、これらがエステル構造で結合し、エポキシ樹脂構造単位中に2級水酸基の構造を有しているものであることが好ましいが、これはどのような製法で得られたものでも良い。例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との付加反応で得ることができるが、この方法に限定されない。
次に(D)成分の炭素繊維について説明する。
炭素繊維は、従来公知の種々の炭素繊維を使用することができ、市販のものを好適に用いることできる。例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維及びこれらの黒鉛化繊維が挙げられる。なお、PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維であり、セルロース系炭素繊維は、ビスコースレーヨンや酢酸セルロース等を原料とする炭素繊維であり、気相成長系炭素繊維は、炭化水素等を原料とする炭素繊維である。本発明で使用する炭素繊維の種類は、特に制限はない。また、この炭素繊維は単独で使用するのみならず、複数の種類のものを混合して使用しても良い。
炭素繊維の形態は特に限定するものではなく、種々の形態等を好適に用いることができる。単繊維が収束されてなるトウの形態、繊維束が任意の長さに切断されたチョップドの形態、チョップドよりも更に細かく分断されたミルドの形態、繊維束を編み織物状としたクロスの形態、トウを開繊し一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、短繊維状の炭素繊維をマット又は不織布状に加工した形態等が挙げられる。樹脂組成物と複合化し炭素繊維強化樹脂組成物とする際の加工性の観点からは、その加工法により好適な形態の炭素繊維原料が種々用いられる。一方で、炭素繊維強化樹脂組成物を成形し、成形物とした際の強度発現の観点からは、繊維長が長い原料であることが好ましく、特にトウの形態が好ましい。
炭素繊維の繊維直径は、特に限定するものではないが、通常市販されている直径のものであれば好適に用いることができる。通常市販されている炭素繊維の直径はPAN系炭素繊維であれはポリアクリロニトリル、ピッチ系炭素繊維であればメゾフェーズピッチといった原糸の直径に大きく依存する。繊維直径の好適な範囲は3~30μm程度であり、好ましくは5~20μmである。繊維径が小さすぎると、炭素繊維の製造の際に破損しやすく製造が困難となる恐れや炭素繊維が破損しやすいため、強化繊維束の生産性が低下する恐れがある。また、ペレットを連続製造するときに、炭素繊維を多数本束ねなければならなくなり、繊維束をつなぐ煩雑な手間が必要となり、生産性が低下する恐れがある。また、繊維径が大きすぎると、炭素繊維強化樹脂組成物を成形し成形物とした際の炭素繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維直径)が低下することとなり、補強効果が充分発揮されなくなる恐れがある。
ここで、繊維直径とは、繊維束を構成するモノフィラメント数で平均化した平均直径のことをいう。モノフィラメント直径とは、モノフィラメントを繊維軸方向と垂直方向にカットした際に得られる断面の長手方向と短手方向の平均値とする。
また、炭素繊維の円周方向の断面形状は特に限定するものではない。真円でもよく、楕円でもよく、これらが2つ合わさった様な格好のいわゆるキドニー断面形状であってもよい。また円周部に凹凸が有る波状形状でも構わない。凹凸はモノフィラメント直径に対して10%以内程度であればよい。このような円周方向の表面に凹凸形状が有る炭素繊維としては、例えば、TR50S(三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
炭素繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、基本的には成形した際の成形物の強度発現の観点からなるべく長いことが好ましく、例えば、0.1mm以上の繊維長であることが好ましい。しかしながら一方で、炭素繊維強化樹脂組成物の寸法を大きく上回る長さのモノフィラメント又は炭素繊維束が炭素繊維強化樹脂組成物中に曲りくねった形で存在していた場合は、成形等の二次加工が難しくなる恐れがあり好ましくない。従って、炭素繊維強化樹脂組成物の寸法の内、最も長い距離の2倍以内の長さであることが繊維長上限値の一つの目安であるが、これは特に上限値を設定するものではない。
ここで、繊維長とは、炭素繊維強化樹脂組成物に含まれる繊維を任意に100本以上抽出して長さを測定し、その平均繊維長のこととする。炭素繊維強化樹脂組成物の寸法は、これがペレット状である場合は、ペレットの寸法をいう。
炭素繊維のアスペクト比は特に制限を設けるものではないが、5~6000程度が好ましい。アスペクト比が小さすぎると強度が低下し、大きすぎると成形性が低下する恐れがある。
炭素繊維の表面は、酸化エッチングや被覆等で表面処理を行ったものが好ましい。酸化エッチング処理としては、空気酸化処理、酸素処理、酸化性ガスによる処理、オゾンによる処理、コロナ処理、火炎処理、(大気圧)プラズマ処理、酸化性液体(硝酸、次亜塩素酸アルカリ金属塩の水溶液、重クロム酸カリウム-硫酸、過マンガン酸カリウム-硫酸)等が挙げられる。炭素繊維を被覆する物質としては、炭素(グラフェン等)、炭化珪素、二酸化珪素、珪素、プラズマモノマー、フェロセン、三塩化鉄等が挙げられる。
一方、被覆等の表面処理としては、いわゆるサイジング処理が挙げられる。接着性や収束性、濡れ性の向上を目的として、後述する種々のエポキシ化合物等を1種類又は2種類以上を組み合わせることで処理しても良い。また、必要に応じてウレタン系、オレフィン系、アクリル系、ナイロン系、ブタジエン系又はエポキシ系等の収束剤を使用してもよい。
次に、必須成分である(A)~(C)成分の合計に対する各成分の配合率、すなわちポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤の配合率について説明する。
ポリオレフィン系樹脂の配合率は、0.1~97.5質量%であることが好ましく、好ましくは5~95質量%であり、さらに好ましくは10~90質量%である。ポリオレフィン系樹脂は汎用の市販品が使用可能であるので、配合率が高いほどコスト的に有利であり、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上、有利には60質量%以上であることがさらに好ましい。しかし、オレフィン系軟質樹脂成分や密着性付与剤の配合率が少ないと、本発明の効果を好適に得ることができなくなる。
オレフィン系軟質樹脂成分の配合率は2~75質量%であることが好ましく、より好ましくは5~70質量%であり、さらに好ましくは10~65質量%、最も好ましくは2~49質量%である。2質量%未満だとポリオレフィン系樹脂組成物中での分散相の存在頻度が低すぎ、局所的に負荷をかけたときに負担がかかる場所に分散相が存在する確率が安定せず、結果として成形物としたときの力学特性の評価結果がバラつく原因となる恐れがあるため好ましくない。一方、75質量%より多いと成形物としたときの剛性低下を招く恐れがある。
密着性付与剤の配合率は0.5~70質量%であることが好ましく、より好ましくは1~50質量%であり、さらに好ましくは1~20質量%、あるいは2~30質量%である。0.5質量%未満だと炭素繊維強化複合材料としたときの炭素繊維とポリオレフィン系樹脂組成物の強固な密着が担保できず強度等の力学特性を満足することができない恐れがある。一方、70質量%より多いと炭素繊維との相互作用が強すぎ、例えば、炭素繊維強化複合材料の成形物を成形する際の成形物中の良好な炭素繊維の分散性を阻害する可能性が考えられる。
また、コスト的には(A)成分を主成分とし、(B)成分を50質量%未満、好ましくは2質量%以上、30質量%未満とし、(C)成分を10質量%未満、好ましくは2質量%以上、10質量%未満とすることが有利である。
なお、ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分からなるポリマーブレンドが相分離し、かつ海島構造を形成する条件は、ポリオレフィン系樹脂の種類や、オレフィン系軟質樹脂成分の種類及びその組み合わせによって異なるため、オレフィン系軟質樹脂成分が上記条件(3)を満たさない場合であっても、実際の配合時に条件(3)を満たせば、本発明の効果は得られる。
(D)成分、すなわち炭素繊維の配合率は、(A)~(D)成分の合計に対し、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~45質量%であり、さらに好ましくは20~40質量%である。10質量%未満だと炭素繊維による樹脂の強化効果が現れず、50質量%を超えると、靭性が失われる恐れがある。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物は、樹脂分(ポリオレフィン系樹脂組成物)と炭素繊維とに分けて考えることができる。
ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは特に限定するものではないが、50~100g/10minが好ましい。50g/minより低すぎると、ポリオレフィン系樹脂組成物自体の成形加工性が悪化し、例えば、成形体としたときにショートショットや、ウェルド強度の低下に繋がる恐れがある。加えて炭素繊維強化複合材料とする際に、炭素繊維への樹脂の含浸性が低すぎるため製造方法や製造条件が著しく限定されてしまう。一方で100g/minより高すぎると例えば、成形体としたときにバリが生じ、外観品質の悪化に繋がる恐れがある。
ポリオレフィン系樹脂組成物には、必須成分の他に用途に応じて様々な熱可塑性樹脂や添加剤、例えば、分散剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤(増核剤)、発泡剤、架橋剤、抗菌剤等の改質用添加剤、顔料、染料等の着色剤、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、アゾ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の粒子状充填剤、ワラストナイト等の短繊維状充填剤、チタン酸カリウム等のウィスカー等を添加することができる。これらの添加剤は、ペレット製造時に添加してペレット中に含有させるか、ペレットから成形体を製造するときに添加してもよい。
また、炭素繊維強化複合材料及びその成形体とする場合には、組成割合を調整するために、ポリオレフィン系樹脂組成物と同じポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる希釈剤を配合することができる。希釈剤との配合は、ドライブレンド方式を用いることができる。組成物中の繊維長を保持し、より高い剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果を得るために、ドライブレンド方式は、成形体を製造する際に適用する方が好ましい。
次に、本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法については、特に限定するものではないが、従来公知の方法を好適に用いることができる。単繊維が収束されてなるトウの形態、繊維束が任意の長さに切断されたチョップドの形態、チョップドよりも更に細かく分断されたミルドの形態等の炭素繊維に樹脂分を含浸させ複合化させることにより、押出・射出成形が可能ないわゆる炭素繊維強化ペレットとする製造方法や、繊維束を編み織物状としたクロスの形態、トウを開繊し一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、短繊維状の炭素繊維をマット又は不織布状に加工した形態等の炭素繊維に樹脂を含浸させ複合化させることにより、プレス成型が可能ないわゆるプリプレグシート・スタンパブルシートとする製造方法等が挙げられる。成形加工性と強度発現の両立の観点から炭素繊維強化ペレットが好ましく、特にトウを用い炭素繊維強化ペレットとしたいわゆる長繊維強化ペレットが特に好ましい。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を、短繊維強化樹脂ペレットとして得る場合は、押出し機等に上記(A)~(D)成分の一部又は全部を溶融混練して製造することができ、長繊維強化樹脂ペレットである場合は、引き抜き法等公知の方法で製造することができる。上記(A)~(D)成分の一部を別途溶融混練した後、混合(ブレンド)してもよい。
繊維強化樹脂ペレットの変形としては、パウダー状、フレーク状でも構わない。
長繊維強化樹脂ペレットは、組成物中の繊維のアスペクト比が大きくなり、強度が高い組成物を得やすいため、より顕著な効果が得られる。長繊維強化樹脂ペレットのペレット長は通常2~200mmであり、10~30mm程度のものが市販されており、これらを好適に用いることができる。ペレット長が長いほど、ペレットに含まれる繊維長が長いため強度発現の観点からは好ましい。長すぎると成形が困難となる場合があるが、成形性が担保される成形方法であればよく特に上限は設ける必要はない。ペレット長が短すぎると、剛性、耐熱性及び機械特性の改良効果が低く、反り変形も大きくなる恐れがある。ペレット長は特に限定しないが、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上、更に好ましくは15mm以上である。ペレット中の炭素繊維はペレットの長手方向に対し水平な方向に互いにほぼ平行な状態で配列していることがより繊維長が長いため好ましい。
長繊維強化樹脂ペレットは、数千本からなる強化繊維のロービングを含浸ダイスに導き、フィラメント間に溶融樹脂を均一に含浸させた後、必要な長さ(例えば、2~200mm)に切断することにより容易に得ることができる。例えば、押出機先端に設けられた含浸ダイス中に、押出機から上記(A)~(C)成分を含む溶融樹脂を供給する一方、連続状繊維束を通過させ、この繊維束に溶融樹脂を含浸させたのちノズルを通して引抜き、必要な長さにペレタイズする。(A)~(C)成分をドライブレンドして押出機のホッパーに投入し、溶融混合又は変性も同時に行いながら供給する方法も取り得る。
溶融樹脂を炭素繊維に含浸させるための方法としては、特に制限はなく、強化繊維ロービングを樹脂粉体流動床に通した後、樹脂の融点以上に加熱する方法(特公昭52-3985号公報)、クロスヘッドダイを用いて強化繊維のロービングに溶融樹脂を含浸させる方法(特開昭62-60625号公報、特開昭63-132036号公報、特開昭63-264326号公報、特開平1-208118号公報)、樹脂繊維と強化繊維のロービングとを混繊した後、樹脂の融点以上に加熱して樹脂を含浸させる方法(特開昭61-118235号公報)、ダイ内部に複数のロッドを配置し、これにロービングをジグザグ状に巻き掛けて開繊させ、溶融樹脂を含浸させる方法(特開平10-264152号公報)、開繊ピンの間をピンに接触せずに通過させる方法(WO97/19805号公報)等、何れの方法も用いることができる。
樹脂を溶融する過程において、2以上のフィード部を持つ押出機を使用し、トップフィードから、樹脂と有機過酸化物等の樹脂の分解剤等の添加剤を、サイドフィードから別の樹脂を投入してもよい。樹脂分解剤の添加によって、ポリオレフィン系樹脂を若干分解し分子量を小さくして、含浸性を高めることができる。
また、2台以上の押出機(押出し部)を使用し、そのうち1台以上の押出機には樹脂と樹脂の分解剤を投入してもよい。更に、押出機の少なくとも1箇所に樹脂と樹脂の分解剤を投入してもよい。
短繊維強化樹脂ペレットは、各成分を所定の割合にてロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー等でよく混練分散して製造することができる。タンブラー式ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等でドライブレンドしてもよい。一軸押出機、二軸押出機等で混練してペレット状の成形材料とする。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物を成形することによって成形物を得ることができる。
本発明の成形物を成形する方法としては、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガス注入射出成形法、発泡射出成形法等の公知の成形法をなんら制限なく適用できる。特に射出成形法、圧縮成形法及び射出圧縮成形法が好ましい。成形温度は、通常、好ましくは150~250℃、より好ましくは160℃~220℃の範囲で行うことができる。そのため、樹脂成分は、こうした成形温度域において適切な溶融粘度を示す材料が選定される。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物である繊維強化樹脂ペレットには、組成割合を調整するために、繊維強化樹脂ペレットと同じポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる希釈剤を配合することができる。希釈剤との配合は、ドライブレンド方式を用いることができる。組成物中の繊維長を保持し、より高い剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果を得るために、ドライブレンド後は、押出機を通さず、直接射出成形機等の成形機に供する方が好ましい。希釈剤の配合比率については、繊維強化樹脂組ペレットの強化繊維含有量と、最終成形品に求められる強化繊維含有量とによって決まるが、剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果の点から、通常は10~40質量%の範囲が好ましい。
成形後に存在する炭素繊維の平均繊維長は、短すぎると剛性、強度、耐衝撃性等の改良効果が得られにくくなるため好ましくなく、0.1mm以上が好ましい。強度発現の観点からは長ければ長いほど好ましい。しかしながら、成形物の寸法を大きく上回る長さの炭素繊維が成形物中に曲りくねった形や無数に交錯した形で存在する場合、炭素繊維同士の間に空隙ができ易く、成形物中に樹脂が未含浸となる空隙領域、いわゆるボイドが発生する確率が高まり、強度低下を招く恐れがある。従って、成形物の寸法の内、最も長い距離の2倍以内の長さであることが繊維長上限値の一つの目安であるが、これは特に上限値を設定するものではない。
次に本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法について説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではないが、2種類以上の重合体を化学結合させブレンドポリマーを作成するいわゆるポリマーアロイの製造方法を好適に用いることができる。特に、各成分を均一に混合反応させる方法が好ましい。例えば、単軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー又はミキシングロール等、公知の溶融混練機を用いることができる。
混合温度は特に限定しないが、150~250℃であり、好ましくは160~240℃、より好ましくは165~235℃である。ポリオレフィン系樹脂の融点より15~20℃高い温度が特に好ましい。混合温度が150℃未満の場合、ポリオレフィン系樹脂が融解しないため均一に溶融混合できない恐れがある。また、混合温度が250℃を越える場合、分子鎖の切断による分子量低下が生じ、成形物としたときの強度低下を招く恐れがある。
混合時間は特に限定しないが、通常の溶融混錬の場合は1~30分間程度であればよい。混合温度にもよるが短すぎる場合は各成分が溶解又は溶融してからの時間が短すぎるため系内が均一な状態に達していない可能性があることから、ポリオレフィン系樹脂組成物が不均一となる恐れがある。一方、混合温度にもよるが長すぎる場合は各成分が分解等の劣化を生じる恐れがある。分子量が低下することにより、成形物とした際の機械強度が低下する恐れや、副生成物が生成することで分子鎖構造に架橋点が増えることにより、成形物とした際に耐疲労特性の悪化を招いたりする恐れがある。
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、断りがない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。また、各種物性は、それぞれ以下の方法により測定した。
(1)MFR:
JIS K 7210-1999に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)引張降伏強さ、引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪:
万能材料試験機(インストロン社製、5582型)を使用した。室温にて、掴み部を含めた全長215mm、幅10mm、厚み4mmの寸法のダンベル試験片を、チャック間114mm、速度50mm/min.で引張試験を行い、得られた応力-歪線図から引張降伏強さ、引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪を求めた。
(3)曲げ強さ、曲げ弾性率:
全自動曲げ試験機(株式会社東洋精機製作所製、ベンドグラフ試験機)を使用した。室温にて、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの寸法の棒状試験片を速度2mm/min.で3点曲げ試験を行い、得られた応力-歪線図から曲げ強さ、曲げ弾性率を求めた。
(4)衝撃強さ:
シャルピー衝撃試験機(株式会社安田精機製作所製、No.258PC-S)を使用した。室温にて、試験片長手方向をMD方向とし、板厚を貫通する深さ2mmのVノッチを有した、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの衝撃試験片でシャルピー衝撃試験を行った。試験片の破壊前後でのハンマー位置エネルギーの差から吸収エネルギーを求め、シャルピー衝撃値とした。
(5)吸収エネルギー:
面衝撃試験機(JTトーシ製、IITM-18)を使用した。室温にて板厚およそ2.5mm、縦横寸法が70mmの試験片で行った。直径40mmの有孔支持台に板状試験片を載置し、孔部中心の直上1mの高さから先端のRが20mmのストライカを落下させた。ストライカが板状試験片を貫通するときの荷重-時間曲線からJIS K 7211-2に記載された計算式で荷重-変位曲線に換算した後、荷重を変位の全区間で積分した値を、試験片の破壊に要する吸収エネルギーとして評価した。
(6)荷重たわみ温度:
荷重たわみ温度試験機(株式会社安田精機製作所製、No.148-HDPC-3)を使用した。長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの多目的試験片に対し、スパン64mmで曲げ応力を与えた状態で油槽の温度を120℃/min.の速度で昇温し、規定のたわみ量(0.34mm)に達した時の温度を荷重たわみ温度とした。
使用した材料の略号と物性値を以下に示す。
(ポリオレフィン系樹脂)
A-1:ポリプロピレンホモポリマー(日本ポリプロ株式会社製、SA08、MFR85g/10min)
(オレフィン系軟質樹脂成分)
B-1:ブロックPP(日本ポリプロ株式会社製、BC10HRF、曲げ弾性率1100MPa、MFR111g/10min)
B-2:無水マレイン酸変性PP(三菱ケミカル株式会社製、モディックP565、曲げ弾性率600MPa、MFR5.7g/10min)
B-3:無水マレイン酸変性PP(三菱ケミカル株式会社製、モディックP555、曲げ弾性率1200MPa、MFR6.2g/10min)
B-4:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成株式会社製、タフテックH1062、曲げ弾性率26MPa、MFR4.5g/10min)
(その他)
PMA-H1000P:無水マレイン酸変性PP(東洋紡株式会社製、PMA-H1000P曲げ弾性率1400MPa、MFR200g/10min以上)
YP-70:BPA/BPF共重合型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、フェノトートYP-70)
2E4MZ-A:イミダゾール系触媒(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ-A)
(モルフォロジー)
オレフィン系軟質樹脂成分(B-1~B-4)20部とポリオレフィン系樹脂A―1 80部とをそれぞれドライブレンドした混合物を、2軸混錬押出成形機(日本製鋼所製、TEM26SS)に投入した後、200℃での溶融混合を行った。バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷してオレフィン系軟質樹脂成分とポリオレフィン系樹脂の混合物のペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J180AD)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃で射出成型して成形物を得た。得られた成形物の表面を、ミクロトームを使って平滑化する面出しを行って、モルフォロジー観察用及び分散相長さ測定用の試験片を得た。得られた試験片をBrukerAXS製Dimension Icon型SPM装置を用いて、23℃にて観察を行った。なお、プローブには先端曲率半径が10nm、ばね定数42N/mのBruker製TESPA NCHVをセットしタッピングモードでスキャンして観察した。観察の結果得られた位相イメージから100個の分散相長さを測定し、各分散相長さを算術平均して平均長さを算出した。その結果を表1に示した。
ここで、モルフォロジーを模式的に表した図1で説明する。100が海島構造であり、110が連続相を、120が分散相を表している。また、分散相の最大長さ及び最小長さとは、121及び122でそれぞれ表した距離のことである。
Figure 0007085383000001
合成例1
PMA-H1000Pを70部、YP-70を30部、2E4MZ-Aを1部ドライブレンドして混合物を得た後、その混合物を予めバレル内を170~200℃に予備加熱しておいた2軸混錬押出成形機(上記)に投入して溶融混合を行った。溶融混合終了後、バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却したあと、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷して、密着性付与剤C-1を得た。得られた密着性付与剤のエステル結合に由来するピーク及び密着性付与剤の原料であるエポキシ樹脂の2級水酸基に由来するピークが有ることをFT-IRで確認した。
参考例1
ポリオレフィン系樹脂としてA-1 72部、オレフィン系軟質樹脂成分としてB-1 23部、密着性付与剤としてC-1 5部をドライブレンドして混合物を得た後、その混合物を用いて、合成例1と同様な装置に、同様な操作を行い、組成物P1を得た。
参考例2~10
表2に示した配合比に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、組成物P2~P10を得た。
比較参考例1~6
表3に示した配合比に変更した以外は参考例1と同様な操作を行い、組成物HP1~HP6を得た。
Figure 0007085383000002
Figure 0007085383000003
実施例1
予めバレル内を170~230℃に予備加熱しておいた2軸混錬押出成形機(上記)に、メーンホッパーからポリオレフィン系樹脂組成物として組成物P1を70部供給し、次いでその下流のサイドホッパーから炭素繊維(三菱ケミカル株式会社製、チョップドファイバー、φ7μm、3mm長)を30部となるよう供給し、溶融混合を行った。バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却したあと、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷して、炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(上記)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、背圧15MPaで射出成型することで成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表4に示した。
実施例2~10
表4に示した組成物に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表4に示した。
比較例1~6
表5に示した組成物に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表5に示した。
Figure 0007085383000004
Figure 0007085383000005
参考例11~13及び比較参考例7
表6に示した配合比に変更した以外は参考例1と同様な操作を行い、組成物P11~P13及びHP7を得た。
Figure 0007085383000006
実施例11
予めバレル内を170~230℃に予備加熱しておいた2軸混錬押出成形機(上記)に、メーンホッパーからポリオレフィン系樹脂組成物として組成物P11を60部供給し、次いでその下流のサイドホッパーから炭素繊維(三菱ケミカル製、チョップドファイバー、φ7μm、6mm長)を40部となるよう供給し、溶融混合を行った。バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却したあと、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷して、炭素繊維強化樹脂組成物のペレットCP11を得た。
比較例7~8
ポリオレフィン系樹脂組成物として比較参考例1及び7で得られたHP1及びHP7を用いた以外は実施例11と同様な操作を行い、炭素繊維強化樹脂組成物のペレットHCP1及びHCP7を得た。
実施例12
実施例11で得られたペレットCP11 75部と、参考例12で得られた組成物P12 25部とをドライブレンドして炭素繊維の含有率が30質量部となるような混合物を得た後、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J220AD)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、背圧3MPaで射出成型することで成形物を得た。成形後の(A)~(C)の組成比と機械物性を表7に示した。
実施例13
組成物を参考例13で得られた組成物P13に替えた以外は、実施例12と同様の操作を行い、成形物を得た。成形後の(A)~(C)の組成比と機械物性を表7に示した。
比較例9~10
ペレットを比較例7及び8で得られたHCP1及びHCP7に、組成物を比較参考例1で得られた組成物HP1に替えた以外は、実施例12と同様の操作を行い、成形物を得た。成形後の(A)~(C)の組成比と機械物性を表7に示した。
Figure 0007085383000007
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した炭素繊維強化ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物は、比較例のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した場合よりも曲げ特性や耐衝撃性等の機械物性が高いレベルで両立できていることがわかる。
100 海島構造
110 連続相
120 分散相

Claims (5)

  1. 炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤を必須成分とする炭素繊維強化樹脂組成物であって、
    上記密着性付与剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていること及びエポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有されている樹脂であり、サイジング剤として炭素繊維を表面処理するものではなく、
    上記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマーであり、
    上記オレフィン系軟質樹脂成分が、エチレン-プロピレンブロックコポリマー及び/又は酸変性ポリプロピレンであり、かつ、下記条件
    (1)230℃、21.18Nにおけるメルトマスフローレイトが5~150g/10minであること、及び
    (2)上記ポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を連続相とし、オレフィン系軟質樹脂成分を分散相とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1~10μmであること、
    を満足し、上記炭素繊維の配合率が、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤の合計に対し、10~50質量%であることを特徴とする炭素繊維強化樹脂組成物。
  2. 上記オレフィン系軟質成分の23℃での曲げ弾性率が100~1600MPaである請求項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物
  3. 上記ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分及び密着性付与剤を、それぞれ(A)、(B)及び(C)とするとき、それぞれの配合率が、(A)、(B)及び(C)の合計に対し、(A)0.1~97.5質量%、(B)2~75質量%及び(C)0.5~70質量%である請求項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  4. 上記配合率が、(A)、(B)及び(C)の合計に対し、(A)40~90質量%、(B)2~49質量%及び(C)1~20質量%である請求項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂組成物の成形物。
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