本明細書で提供されるのは、タイヤトレッド組成物に有用な、シラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーに基いたポリオレフィン添加物を含んでいるエラストマー組成物である。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、プロピレンと、エチレンおよび/またはC4~C20α-オレフィン由来単位の少なくとも1つと、1種以上のジエン、たとえばエチリデンノルボルネンと、を重合させることによって調製される。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーとしては、2%~40重量%のエチレン、1.0%~21重量%のジエンを含んでいるプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーが挙げられる。ポリオレフィン添加物は、トレッドコンパウンド中の不混和相を形成し、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマー、酸化防止剤およびシランカップリング剤を含んでいる。タイヤトレッド組成物をコンパウンドにする場合に、ポリオレフィン添加物はカーボンブラックおよび酸化防止剤を官能化ポリオレフィンとともにポリオレフィンドメイン中に濃縮させて、摩耗抵抗、硬化状態およびUV安定性を改善する。
タイヤトレッド組成物は、摩耗、トラクションおよび転がり抵抗を決定付ける、タイヤにおける重要な様相である。良好なトレッド摩耗を提供しながら、同時に優れたトラクションおよび低い転がり抵抗を達成することは技術的な課題である。この課題は湿潤トラクションと転がり抵抗/トレッド摩耗との間の二律背反の問題になる。組成物のTgを上げることは良好な湿潤トラクションを提供するだろうが、それと同時に、転がり抵抗およびトレッド摩耗を増加させる。本明細書に記載された様相は、転がり抵抗およびトレッド摩耗を損なわずに、湿潤トラクションの目標を達成することができるトレッドコンパウンド添加物を提供する。
その課題は、コンパウンド全体のTgを変えることなく、湿潤トラクション領域(0℃)でのヒステリシスを増加させ、転がり抵抗領域(60℃)でのヒステリシスを低下させる添加物であるポリプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーを開発することによる解決方法が検討された。
添加物をコンパウンドにするステップは、カーボンブラックおよび酸化防止剤をポリオレフィンドメイン中に濃縮させて、摩耗抵抗、硬化状態およびUV安定性を改善することによって、スチレンブタジエンゴム/ポリブタジエンゴム/天然ゴム(SBR/PBD/NR)組成物を含んでいるポリオレフィンブレンドの知られている欠点に対処する。これらの欠点としては、溶解度パラメーターの好ましくない違いの故に、硬化剤およびフィラーがポリオレフィンから移動して離れるために、加硫が不十分であり十分に強化されていないポリオレフィンドメインが挙げられる。本明細書に記載されたポリオレフィン添加物およびタイヤトレッド組成物の上記の様相は、これらの欠点の1つ以上を解決する。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマー
本発明で使用される「プロピレン-エチレン-ジエンターポリマー」は、プロピレンおよび他のコモノマーを含んでいる任意のポリマーであってよい。用語「ポリマー」は、1種以上の異なるモノマー由来の繰り返し単位を有する任意の炭素含有化合物を指す。本発明で使用される用語「ターポリマー」は、3種の異なるモノマーから合成されたポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ターポリマーは、(1)全ての3種のモノマーが同時に混合されることによって、または(2)異なるコモノマーの順次的な導入によって製造されてもよい。コモノマーの混合は、直列および/または並列の1基、2基または場合により3基の異なるリアクターで行われてもよい。好ましくは、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、(i)プロピレン由来単位、(ii)αオレフィン由来単位および(iii)ジエン由来単位を含んでいる。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、(i)プロピレンと、(ii)エチレンおよびC4~C20αオレフィンの少なくとも1種と、(iii)1種以上のジエンとを重合することによって調製されてもよい。
コモノマーは直鎖状または分枝状であってもよい。直鎖状のコモノマーとしては、エチレンまたはC4~C8αオレフィン、より好ましくはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテン、さらにより好ましくはエチレンまたは1-ブテンが挙げられる。分枝状コモノマーとしては、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンまたは3,5,5-トリメチル-1-ヘキセンが挙げられる。1つの様相では、コモノマーとしては、スチレンが挙げられることができる。
ジエンは共役または非共役ジエンであってもよい。好ましくは、ジエンは非共役ジエンである。実例となるジエンとしては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB);1,4-ヘキサジエン;5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB); 1,6-オクタジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;1,3-シクロペンタジエン;1,4-シクロヘキサジエン;ビニルノルボルネン(VNB);ジシクロペンタジエン(DCPD); およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ジエンはENBまたはVNBである。好ましくは、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、ターポリマーの重量に基いて0.5重量%~5重量%、または1重量%~5重量%、または2重量%~4重量%のENB含有量を有する。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、ポリマーの重量に基いて60重量%~95重量%、または65重量%~95重量%、または70重量%~95重量%、または75重量%~95重量%、または80重量%~95重量%、または83重量%~95重量%、または84重量%~95重量%、または84重量%~94重量%、または75重量%~90重量%のプロピレン量を有してもよい。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの残余は、エチレンおよびC4~C20αオレフィンの少なくとも1種、および任意的に1種以上のジエンを含んでいる。αオレフィンはエチレン、ブテン、ヘキサンまたはオクテンであってもよい。ポリマー中に2種以上のαオレフィンが存在する場合には、エチレンと、ブテン、ヘキセンまたはオクテンの少なくとも1種とがしばしば使用される。
本明細書に提示されるように、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは2~40重量%のエチレン(C2)および/またはC4~C20αオレフィンを含んでいる。エチレンおよびC4~C20αオレフィンの2種以上のオレフィンが存在する場合には、ポリマー中のこれらのオレフィンを合わせた量は、少なくとも5重量%であり、本明細書に記載された範囲に入る。エチレンおよび/または1種以上のαオレフィンの量の他の範囲としては、2重量%~35重量%、2重量%~30重量%、2重量%~25重量%、2重量%~20重量%、2重量%~17重量%、2重量%~16重量%および5重量%~16重量%が挙げられ、各範囲はプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの重量に基いている。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、ジエンをターポリマーの全重量の0.2重量%~21重量%、0.2重量%~12重量%、0.5重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%または0.7重量%~5重量%の量で含んでいる。ジエン含有量の他の範囲としては、0.2重量%~10重量%、0.2重量%~5重量%、0.2重量%~4重量%、0.2重量%~3.5重量%、0.2重量%~3.0重量%および0.2重量%~2.5重量%が挙げられ、各範囲はプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの重量に基いている。1つの様相では、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、5-エチリデン-2-ノルボルネンを0.5重量%~10重量%、0.5重量%~4重量%、0.5重量%~2.5重量%または0.5重量%~2.0重量%の量で含んでいることができる。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、ASTM D-1238によって測定された0.2g/10分以上のメルトフローレート(MFR、230℃で2.16kg荷重)を有する。MFR(230℃で2.16kg荷重)は約0.2g/10分~約10g/10分、約0.5g/10分~約100g/10分、約2g/10分~約30g/10分、約5g/10分~約30g/10分、約10g/10分~約30g/10分または約10g/10分~約25g/10分であることができる。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、本明細書に記載されたDSC測定方法によって測定された融解熱(Hf)を有することができ、それは1グラム当たり0ジュール(J/g)以上であり、かつ80J/g以下、75J/g以下、70J/g以下、60J/g以下、50J/g以下または35J/g以下である。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは1J/g以上または5J/g以上である融解熱を有することができる。本発明のプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは1.0J/g、1.5J/g、3.0J/g、4.0J/g、6.0J/gまたは7.0J/gの下限からの範囲の融解熱を有することができる。本発明のプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは30J/g、35J/g、40J/g、50J/g、60J/g、70J/g、75J/gまたは80J/gの上限までの範囲の融解熱を有することができる。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの結晶化度は、本明細書に記載されたDSC測定方法によって測定された結晶化のパーセント(すなわち、結晶化度%)で表されることができる。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは0%~40%、1%~30%または5%~25%の結晶化度パーセント(%)を有することができる。1つの様相では、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは40%未満、0.25%~25%、0.5%~22%または0.5%~20%の結晶化度を有することができる。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは単一の幅広い融解転移を有することができる。しかし、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、主ピークに隣接する二次融解ピークを示すことがある。本明細書に提示されるように、そのような二次融解ピークはまとめて単一の融点と見なされ、これらのピークの中で(本明細書に記載されるベースラインに対して)最も高いものがプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの融点とされる。
示差走査熱量(DSC)測定方法は、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの融解熱および融解温度を測定するために使用されてもよい。この方法は以下のとおりである:およそ6mgの材料がマイクロリットルアルミニウムサンプル皿に取られる。サンプルは示差走査熱量計(Perkin Elmer社製Pyris1型熱分析システム)に入れられ、-80℃に冷却される。サンプルは10℃/分で加熱され、120℃の最終温度に達する。サンプルはこの操作を2回繰り返される。サンプルの融解ピークの下の面積として記録された熱出力が融解熱の測定値であり、ポリマー1グラム当たりのジュール単位で表現されてもよく、Perkin Elmer社システムによって自動的に計算される。融点は、温度の関数として増加するポリマーの熱容量についてのベースライン測定値に対する、サンプルの融解の範囲内の最大の熱吸収の温度として記録される。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、75%以上、80%以上、82%以上、85%以上または90%以上の13C NMRによって測定された3個のプロピレン単位のトリアド立体規則性を有することができる。他の範囲としては、75%~99%、80%~99%および85%~99%が挙げられる。トリアド立体規則性は米国特許出願公開第2004/0236042号に記載された方法によって測定される。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、離散型のランダムプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーのブレンドが本明細書に記載されたプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの特性を有する限り、その離散型のランダムプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーのブレンドであることができる。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーのブレンド数は、3つ以下または2つ以下であることができる。1つ以上の様相では、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、オレフィン含有量、ジエン含有量または両方において異なる、2つのプロピレン-エチレン-ジエンターポリマーのブレンドを含んでいることができる。そのようなポリマーブレンドの調製は米国特許出願公開第2004/0024146号および第2006/0183861号に見出されることができる。
シラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、本明細書に記載されたシランカップリング剤を用いて、かつ本実施例に記載された方法に従って調製されることができる。
本発明のエラストマー組成物は、シラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーを約5phr~約30phr、または約5phr~約25phr、または約6phr~約9phrの量で含んでいる。本発明のエラストマー組成物は、シラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーを組成物の重量に基いて30重量%~95重量%の量で含んでいる。エラストマー組成物は少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%または少なくとも75重量%のシラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーを有する。エラストマー組成物は、シラン官能化プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーの最大量を、組成物の重量に基いて80重量%、85重量%、90重量%または95重量%の量で含んでいる。
エラストマー
エラストマー組成物はまた、エラストマーも含んでいる。phrを単位として、エラストマー組成物は100phrのエラストマーを含んでいる。エラストマーの範囲は、エラストマー組成物の5~75重量%である。好適なエラストマーとしては、たとえばジエンエラストマーが挙げられる。
「ジエンエラストマー」とは、ジエンモノマー(2個の炭素-炭素2重結合を、それらが共役か否かにかかわらず有するモノマー)から少なくともその一部(ホモポリマーまたはコポリマー)が得られるエラストマーを意味する。ジエンエラストマーは、共役ジエンモノマーから得られる「高度に不飽和の」ものであることができ、それは単位の50モル%超の含有量を占める。
1つの様相では、-75℃~0℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、スチレンブタジエンコポリマー、天然ポリイソプレン、95%超のシス-1,4結合の含有量を有する合成ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン/イソプレンターポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物から成る群から選ばれ、-110℃~-75℃または-100℃~-80℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、90%超のシス-1,4結合の含有量を有するポリブタジエンおよび50%以上の量のブタジエン単位を含んでいるイソプレン/ブタジエンコポリマーから成る群から選ばれる。
別の様相では、-75℃~-40℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、天然ポリイソプレンおよび95%超のシス-1,4結合の含有量を有する合成ポリイソプレンから成る群から選ばれ、-110℃~-75℃のTgを有する各ジエンエラストマーは、90%超または95%超のシス-1,4結合の含有量を有するポリブタジエンである。
1つの様相では、組成物は、90%超のシス-1,4結合の含有量を有するポリブタジエンの少なくとも1種と(95%超のシス-1,4結合の含有量を有する)天然または合成ポリイソプレンの少なくとも1種とのブレンドを含んでいる。
別の様相では、組成物は、90%超のシス-1,4結合の含有量を有するポリブタジエンの少なくとも1種とスチレン、イソプレンおよびブタジエンのターポリマーの少なくとも1種とのブレンドを含んでいる。
ジエンエラストマーは、「本質的に不飽和の」および「本質的に飽和の」2つのカテゴリーに分類されることができる。用語「本質的に不飽和の」とは、15モルパーセント(モル%)超のジエン源(共役ジエン)の単位のレベルを有する共役ジエンモノマーから少なくともその一部が得られるエラストマーを意味する。したがって、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとアルファオレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、本質的に不飽和ではなくて、「本質的に飽和の」ジエンエラストマー(低いまたは非常に低いレベルのジエン源の単位であって、常に15%未満のもの)であると類型化されることができる。用語「高度に不飽和の」ジエンエラストマーとは、50%超であるジエン源(共役ジエン)の単位のレベルを有するジエンエラストマーを意味する。
ジエンエラストマーは以下のとおりのものであることできる:
(a)4~12の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られた任意のホモポリマー;
(b)1種以上の共役ジエンが、互いに、または8~20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と、共重合することによって得られた任意のコポリマー;
(c)エチレンと、3~6個の炭素原子を有するアルファオレフィンと、6~12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られた3元コポリマー;および
(d)イソブテンとイソプレンとのコポリマー(ブチルゴム)。
ハロゲン化ジエンエラストマーは塩素化または臭素化されたものであることができる。1つの様相では、上記のタイプの非共役ジエンモノマーを有するエチレンおよびプロピレンのエラストマーは、非共役ジエンモノマーが1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンであることができる。
好適な共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1~C5アルキル)-1,3-ブタジエン、たとえば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエンまたは2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび2,4-ヘキサジエンが挙げられるが、これらに限定されない。以下のものはビニル芳香族化合物として適している:スチレン、オルト-、メタ-またはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」商業的混合物、パラ-(ターシャリーブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
上記のコポリマーは、99重量%~20重量%のジエン単位および1重量%~80重量%のビニル芳香族化合物を含んでいることができる。上記のエラストマーは、使用される重合条件に、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在に、ならびに使用される変性剤および/またはランダム化剤の量に、依存する任意のミクロ構造を有する。エラストマーは、たとえばブロック状、ランダム状、連続状またはミクロ連続状のエラストマーであることができ、また分散状態または溶解状態で調製されることができ、また、エラストマーは、カップリングされおよび/または星状分枝状にされ、またはカップリング剤および/もしくは星状分枝剤または官能化剤で官能化されることもできる。C-Sn結合を含んでいる官能基の、またはたとえばベンゾフェノンのようなアミノ化官能基の、たとえばカーボンブラックへのカップリングのために;たとえばシラノールまたはシラノール末端基を有するポリシロキサン官能基、アルコキシシラン基、カルボキシル基またはポリエーテル基の、シリカのような強化用無機質フィラーへのカップリングのために、エラストマーは官能化されることができる。
適当なポリブタジエンは以下のものである:4%~80%の1,2-単位の含有量(モル%)を有するポリブタジエンまたは80%超のシス-1,4単位の含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;0℃~-70℃、より特には-10℃~-60℃のTg(標準ASTM D3418によって測定されたガラス転移温度)、5重量%~60重量%、より特には20重量%~50重量%のスチレン含有量、4%~75%のブタジエン部分の1,2-結合の含有量(モル%)、10%~80%のトランス-1,4結合の含有量(モル%)を有するブタジエン/スチレンコポリマーおよびポリブタジエン;およびブタジエン/イソプレンコポリマー。適当なポリブタジエンは、5重量%~90重量%のイソプレン含有量および-40℃~-80℃のTgを有することができ、または適当なイソプレン/スチレンコポリマーは、特に5重量%~50重量%のスチレン含有量および-25℃~-50℃のTgを有するものである。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合には、5重量%~50重量%、より特には10重量%~40重量%のスチレン含有量、15重量%~60重量%、より特には20重量%~50重量%のイソプレン含有量、5重量%~50重量%、より特には20重量%~40重量%のブタジエン含有量、4%~85%のブタジエン部分の1,2-単位の含有量(モル%)、6%~80%のブタジエン部分のトランス-1,4単位の含有量(モル%)、5%~70%のイソプレン部分の1,2-プラス3,4-単位の含有量(モル%)、および10%~50%のイソプレン部分のトランス1,4-単位の含有量(モル%)を有するもの、ならびに、より一般には、-20℃~-70℃のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(「BR」と略される。)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物から成る、高度に不飽和のジエンエラストマーの群から選ばれることができる。コポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)から成る群から選ばれることができる。
1つの様相では、ジエンエラストマーは主に(すなわち、50重量%超の含有量で)SBRであり、SBRはエマルション重合で調製されたもの(「ESBR」)か、あるいは溶液重合で調製されたもの(「SSBR」)であり、またはSBR/BR、SBR/NR(またはSBR/IR)、BR/NR(またはBR/IR)またはさらにSBR/BR/NR(またはSBR/BR/IR)のブレンド(混合物)である。SBR(ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合には、中程度のスチレン含有量、たとえば20重量%~35重量%またはより高いスチレン含有量、たとえば35重量%~45重量%のスチレン含有量、15%~70%のブタジエン部分のビニル結合の含有量、15%~75%のトランス-1,4結合の含有量(モル%)および-10℃~-55℃のTgを有するSBRが特に使用され、そのようなSBRは、90%超(モル%)のシス-1,4結合を有するBRとの混合物として有利に使用されることができる。
用語「イソプレンエラストマー」とは、イソプレンのホモポリマーまたはコポリマーを指す。たとえば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンとこれらのエラストマーの混合物とのコポリマー、たとえばイソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴムIM)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)から成る群から選ばれたジエンエラストマーである。イソプレンエラストマーは天然ゴムまたは合成シス-1,4ポリイソプレンであることができ、これらの合成ポリイソプレンの中で、90%超または98%超のシス-1,4結合のレベル(モル%)を有する合成ポリイソプレンが使用される。
1つの様相では、エラストマー組成物は、-70℃~0℃のTgを示す「高いTg」の(1つ以上の)ジエンエラストマーと、-110℃~-80℃または-100℃~-90℃の範囲のTgを有する「低いTg」の(1つ以上の)ジエンエラストマーとのブレンドを含んでいることができる。高いTgのエラストマーは、S-SBR、E-SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(95%超のシス-1,4構造のレベル(モル%)を示すもの)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらのエラストマーの混合物であることができる。低いTgのエラストマーは、少なくとも70%に等しいレベル(モル%)のブタジエン単位を含んでおり、それは、90%超のシス-1,4構造のレベル(モル%)を示すポリブタジエン(BR)を含んでいることができる。
1つの様相では、エラストマー組成物は、たとえば30~100phr(全エラストマー100部当たりの重量部)、特に50~100phrの高いTgのエラストマーを、0~70phr、または0~50phrの低いTgのエラストマーとのブレンドとして含んでいる。別の例によれば、エラストマー組成物は、100phrの全体について、溶液状態で調製された1種以上のSBRを含んでいる。
1つの様相では、本発明のエラストマー組成物のジエンエラストマーは、(低いTgのエラストマーとして)90%超のシス-1,4構造のレベル(モル%)を示すBRと、(高いTgのエラストマーとして)1種以上のS-SBRまたはE-SBRとのブレンドを含んでいる。
エラストマー組成物は、単一のジエンエラストマーまたはいくつかのジエンエラストマーの混合物を含んでいることができる。ジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと、またエラストマー以外のポリマーとさえ、たとえば熱可塑性ポリマーと組み合わされて使用されることができる。
エラストマー組成物は、5重量%または10重量%の下限から15重量%、20重量%または25重量%の上限までのプロピレン-エチレン-ジエンターポリマー(本明細書では「プロピレン-α-オレフィンエラストマー」とも呼ばれる。)を含んでいることができる。
任意のスチレンコポリマーが使用されることができるけれども、タイヤ組成物に高頻度で使用されるのはスチレン-ブタジエンブロックコポリマー「ゴム」である。そのようなゴムは、ブロックコポリマーの10重量%、15重量%または20重量%の下限から30重量%、35重量%または40重量%の上限までのスチレン由来単位、および30重量%、40重量%または45重量%の下限から55重量%、60重量%または65重量%の上限までの範囲内のビニル基を有する。
有用なエラストマー組成物はまた、以下のものも含んでいることをできる:15重量%の下限から50重量%または60重量%の上限までのスチレンコポリマー;5重量%~60重量%のポリブタジエンポリマー;0~60重量%の天然ゴムまたは合成ポリイソプレン;15重量%の下限から50重量%または60重量%の上限までの官能化スチレンコポリマー;5重量%~60重量%の官能化極性ポリブタジエンポリマー;0重量%または5重量%の下限から50重量%または60重量%の上限までの天然ゴムまたは官能化合成ポリイソプレン;0重量%または5重量%の下限から20重量%または40重量%の上限までのプロセス油;30重量%~80重量%のフィラー、たとえば本明細書に記載されたシリカに基いたフィラーまたは炭素に基いたフィラー;硬化剤;および0重量%または5重量%の下限から40重量%の上限までの炭化水素樹脂。この段落に記載された重量パーセントのそれぞれは、エラストマー組成物の全重量に基く。
無機質フィラー
本明細書に使用される用語「フィラー」とは、エラストマー組成物の、物理的特性を強化しまたは変性し、特定の加工処理特性を付与し、またはコストを下げるために使用される任意の材料を指す。
フィラーの例としては、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ、ケイ酸塩、タルク、二酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、でんぷん、木粉、カーボンブラックまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。フィラーは任意のサイズおよびサイズ範囲であってもよく、たとえばタイヤ産業においては0.0001μm~100μmである。
本明細書で使用される用語「シリカ」とは、溶液、焼成等の方法によって処理された、任意のタイプまたは粒子サイズのシリカ、または別のケイ酸誘導体またはケイ酸を指すことが意図されており、たとえば未処理の沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ等が挙げられる。沈降シリカは、従来型シリカ、半高度に分散性のシリカまたは高度分散性シリカであることができる。別のフィラーはZeosil(商標)Z1165の商品名でRhodia社によって市販され入手可能である。
タイヤの製造に使用されることができるゴム組成物を強化する能力で知られている任意のタイプの強化用フィラーが使用されてもよく、たとえば有機フィラー、例としてカーボンブラック、強化用無機質フィラー、たとえばシリカ、またはこれらの2つのタイプのフィラーのブレンド、特にカーボンブラックとシリカとのブレンドが挙げられる。
従来からタイヤに使用されている、全てのカーボンブラック、特にHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック(「タイヤグレード」のブラック)がカーボンブラックとして適している。より特には、後者の中で、100、200または300シリーズ(ASTMグレード)、たとえばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375のブラック等の強化用カーボンブラック、またはさらに、目標とされる用途に応じて、より高いシリーズ(たとえばN660、N683またはN772)のブラックが挙げられるだろう。カーボンブラックは、たとえばマスターバッチの形態でイソプレンエラストマーに前もって組み入れられていてもよい(たとえば、国際公開第WO97/36724号または第WO99/16600号を見よ)。
本特許出願では、用語「強化用無機質フィラー」とは、定義により、その色およびその源(天然かまたは合成か)がどのようなものでも、タイヤの製造用に意図されたゴム組成物を、介在するカップリング剤以外の手段なしでそれ単独で強化することができる、言い換えれば、その強化の役割において従来のタイヤグレードのカーボンブラックを置き換えることができる、任意の無機または鉱物フィラーを、また、「白色フィラー」、「透明フィラー」として、またはカーボンブラックとの対比で「非黒色フィラー」として知られているものさえも、意味すると理解されるべきである。そのようなフィラーは一般に、その表面にある水酸(-OH)基の存在によって既知の方法で特性付けられる。
強化用無機質フィラーが提供される物理的な状態は重要ではなく、それが粉体、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適当な高密度化された形態であってもよい。もちろん、強化用無機質フィラーの用語はまた、異なる強化用無機質フィラーの混合物も意味すると理解され、特に、下に記載されるような高分散性のシリカおよび/またはアルミナフィラーの混合物も意味すると理解される。
シリカタイプの鉱物フィラー、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナタイプの無機質フィラー、特にアルミナ(Al2O3)は、強化用無機質フィラーとして特に適している。使用されるシリカは、当業者に知られている任意の強化用シリカ、特にBET表面積およびCTAB比表面積が両方ともそれぞれ450m2/g未満および30~400m2/gを示す任意の沈降シリカまたは焼成シリカであることができる。高分散性(「HDS」)沈降シリカとしては、たとえばDegussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ;Rhodia社からのZeosil 1165MP、C5MPおよび1115MPシリカ;PPG社からのHi-Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745および8755シリカ;および高い比表面積を有するシリカが挙げられる。使用されることができる無機質フィラーの他の例は、強化用アルミニウム(酸化物)、水酸化物、酸化チタンまたは炭化ケイ素である(たとえば、国際公開第WO02/053634号または米国特許出願公開第2004/0030017号を見よ)。
低い転がり抵抗を有するタイヤトレッド組成物の場合には、シリカフィラーは、45~400m2/gまたは60~300m2/gのBET表面積を有する。
タイヤトレッド組成物中のフィラー(「強化用フィラー」とも呼ばれる。)の量は、20phr~200phrまたは30phr~150phrの範囲である。フィラーの量は、目標とされる特定の用途および要求される強化のレベルに依存する。たとえば、長時間持続して高速で走行することができるタイヤ、たとえばオートバイのタイヤまたは乗用車用のタイヤまたは大型商用車両、たとえばトラックのためのタイヤの中のフィラーの量は、自転車タイヤ中のフィラーの量とは異なるだろう。
カップリング剤
本明細書に使用される用語「カップリング剤」とは、カップリング剤がなければ相互作用しない2種の化学種の間、たとえばフィラーとジエンエラストマーとの間の安定した化学的および/または物理的な相互作用を促進することができる任意の化学物質を指すことが意図されている。カップリング剤は、シリカにゴムを強化する効果を与える。そのようなカップリング剤は、シリカ粒子と予備混合されまたは予備反応されてもよく、またはゴム/シリカの加工処理中に、すなわち混合の段階中に、ゴム混合物に添加されてもよい。カップリング剤およびシリカが、ゴム/シリカの混合中に、すなわち加工処理の段階中にゴム混合物に別途に添加されるならば、カップリング剤はそれからその場で(in situ)シリカと結合すると考えられる。
1つの様相では、カップリング剤はシランカップリング剤である。シランカップリング剤の非限定的な例としては、オルガノシランまたはポリオルガノシランが挙げられる。本発明のターポリマーおよびタイヤトレッド組成物に使用される特定のシランとしては、以下の構造のシランが挙げられる:
ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(TESPT)、
ビス[3-メチルジエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(BMDE)、
ビス[3-(オクチルジエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(BODE)、
ビス[3-(ジエトキシオクチロキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(BDEO)、
ビス[3-(エトキシジオクチロキシシリル)プロピル]ポリスルフィド(BEDO)、
ビス[8-(トリエトキシシリル)オクチル]ポリスルフィド(BTEO)、および
ビス[8-(メチルジエトキシシリル)オクチルポリスルフィド(BMDEO)。
上記のシランの構造式のそれぞれは、その構造式の後に関連する識別子名が付され、その識別子名が以下の実施例で使用される。
適当なシランカップリング剤の他の例としては、シランポリスルフィドが挙げられ、その特定の構造に応じて「対称の」または「非対称の」と呼ばれる。
シランポリスルフィドは、化学式(V):
Z-A-Sx-A-Z(V)、
によって表され、
この式で、xは2~8(好ましくは2~5)の整数であり;2個のA記号は同一または異なっており、2価の炭化水素基(好ましくはC
1~C
18アルキレン基、またはC
6~C
12アリーレン基、より特にはC
1~C
10、特にC
1~C
4アルキレン、とりわけプロピレン)を表し;2個のZ記号は同一または異なっており、3種の化学式(VI)の1種に相当し:
この式で、3個のR
1基は、置換または非置換であり、互いに同一または異なっており、C
1~C
18アルキル、C
5~C
18シクロアルキルまたはC
6~C
18アリール基(すなわち、C
1~C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC
1~C
4アルキル基、より特にはメチルおよび/またはエチル)を表し;6個のR
2基は、置換または非置換であり、互いに同一または異なっており、C
1~C
18アルコキシまたはC
5~C
18シクロアルコキシ基(すなわち、C
1~C
8アルコキシおよびC
5~C
8シクロアルコキシから選ばれた基、さらにC
1~C
4アルコキシから選ばれた基、特にはメトキシおよびエトキシ)を表す。
シランポリスルフィドの非限定的な例としては、ビス((C1~C4)アルコキシ(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、たとえばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。さらなる例としては、化学式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のTESPTと略されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドまたは[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のTESPDと略されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが挙げられる。他の例としては、ビス(モノ(C1~C4)アルコキシジ(C1~C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より特にはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
シランカップリング剤はまた、2官能性のPOS(ポリオルガノシロキサン)、ヒドロキシシランポリスルフィド、シランまたはPOS含有アゾジカルボニル官能基であることもできる。カップリング剤としてはまた、他のシランスルフィド、たとえば少なくとも1個のチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと呼ばれる。)および/または少なくとも1個のマスクされたチオール官能基を有するシランが挙げられることができる。
シランカップリング剤としてはまた、1種以上のカップリング剤、たとえば本明細書に記載されたもの、またはそうでなくても当該技術分野で知られたものの組み合わせも挙げられることができる。カップリング剤は、アルコキシシランまたはポリ硫化されたアルコキシシランを含んでいることができる。ポリ硫化されたアルコキシシランは、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドであり、これはX50S(商標)の商品名でDegussa社から市販され入手可能である。
カップリング剤としてはまた、1種以上のカップリング剤、たとえば本明細書に記載されたもの、またはそうでなくても当該技術分野で知られたものの組み合わせも挙げられることができる。たとえば、カップリング剤としては、イオウに基いたカップリング剤、有機過酸化物に基いたカップリング剤、無機カップリング剤、ポリアミンカップリング剤、樹脂カップリング剤、イオウ化合物に基いたカップリング剤、オキシム-ニトロソアミンに基いたカップリング剤およびイオウが挙げられることができる。これらの中で、タイヤ用ゴムコンパウンドとしては、イオウに基いたカップリング剤が挙げられる。
可塑剤
本明細書で使用される用語「可塑剤」(プロセス油とも呼ばれる。)とは、石油由来のプロセス油および合成可塑剤を指す。そのような油は、組成物の加工性を改善するために主として使用される。適当な可塑剤としては、脂肪酸エステルまたは炭化水素の可塑剤油、たとえばパラフィン油、芳香族油、ナフテン系石油およびポリブテン油が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい可塑剤はナフテン油であり、これはNytex(商標)4700の商品名でNynas社から市販され入手可能である。
MES油およびTDAE油は、「環境への影響が少ない安全なタイヤ用のプロセス油」の標題でKGK(Kautschuk Gummi Kunstoffe)誌、52年度、12/99号、799~805頁に記載されている。MES油(「抽出油」または「水素化処理油」)およびTDAE油の例は、ExxonMobil社によってFlexon(商標)の名称で、H&R European社によってVivatec(商標)200またはVivatec(商標)500の名称で、Total社によってPlaxolene(商標)MSの名称で、またはShell社によってCatenex(商標)SNRの名称で販売されている。
「トリエステル」および「脂肪酸」とは、それぞれ、トリエステルの混合物または脂肪酸の混合物を指す。脂肪酸は、主に(50重量%超、またはより具体的には80重量%超の)不飽和C18脂肪酸から構成されている。たとえば、脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの混合物を含んでいる。脂肪酸は、合成由来か天然由来かにかかわらず、50重量%超または80重量%超のオレイン酸から構成されている。
さらに、オレイン酸およびグリセロールに由来するトリオレイン酸グリセロールが使用されることができる。トリオレイン酸グリセロールの例としては、高いオレイン酸含有量(50%超または80重量%超)を有する植物油であるひまわり油または菜種油が挙げられる。
グリセロールトリエステルは、5~80phr、より好ましくは10~50phr、特に15~30phrの範囲内、の好ましい量で、特に本発明のトレッドが乗用タイプの乗り物用に意図されている場合に使用される。本明細書の記載に照らして、当業者は、本発明の実施形態の特定の条件、特に使用される無機質フィラーの量、の関数としてエステルのこの量を調節することができるだろう。
C5留分/ビニル芳香族コポリマーから、特にC5留分/スチレンコポリマーまたはC5留分/C9留分コポリマーから形成された樹脂は、接着剤および塗料用の粘着性付与剤として使用されることができるが、タイヤトレッド組成物の加工助剤としても有用である。
C5留分/ビニル芳香族コポリマーは、ビニル芳香族モノマーとC5留分とのコポリマーであることがターシャリーブチルできる。たとえば、スチレン、アルファメチルスチレン、オルト-、メタ-またはパラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(ターシャリーブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびC9留分(または、より一般にC8~C10留分)から得られる任意のビニル芳香族モノマーは、ビニル芳香族モノマーとして適している。ビニル芳香族化合物は、スチレンまたはC9留分(または、より一般にC8~C10留分)から得られるビニル芳香族モノマーである。
用語「C5留分(または、たとえばC9留分)」とは、それぞれ、石油化学または石油の精製に起因するプロセスから得られる任意の留分、すなわち、それぞれ、5個の、またはC9留分の場合には9個の、炭素原子を有する化合物を主に含んでいる任意の蒸留留分を意味する。例として、C5留分は、以下の化合物を含んでいることができ、それらの相対的な割合は、それらが得られるプロセスによって変わる場合がある:1,3-ブタジエン、1-ブテン、2-ブテン、1,2-ブタジエン、3-メチル-1-ブテン、1,4-ペンタジエン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-ペンテン、イソプレン、シクロペンタジエン(そのジシクロペンタジエンダイマーの形で存在することができる。)、ピペリレン、シクロペンテン、1-メチルシクロペンテン、1-ヘキセン、メチルシクロペンタジエンまたはシクロヘキセン。これらの留分は、石油産業および石油化学で知られている化学プロセスによって得られることができる。ナフサのスチームクラッキングプロセスまたはガソリンの流動接触分解プロセスは、水素化および脱水素化を含むがこれらに限定されない化学的処理、と組み合わされてこれらの留分を変換することができる。
可塑剤用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPD)またはジシクロペンタジエン(DCPD)のホモポリマーまたはコポリマー、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー、C5カットのホモポリマーまたはコポリマーおよびこれらの混合物であることができる。そのようなコポリマー可塑剤用炭化水素樹脂としては、たとえば(D)CPD/ビニル芳香族のコポリマー、(D)CPD/テルペンのコポリマー、(D)CPD/C5カットのコポリマー、テルペン/ビニル芳香族のコポリマー、C5カット/ビニル芳香族のコポリマーおよびこれらの混合物、から構成された樹脂が挙げられる。
テルペンホモポリマーおよびコポリマー樹脂に有用なテルペンモノマーとしては、アルファピネン、ベータピネンおよびリモネン、および3種の異性体、すなわちL-リモネン(左旋性対掌体);D-リモネン(右旋性対掌体);およびジペンテン、右旋性および左旋性対掌体のラセミ混合物、を含んでいるリモネンモノマーのポリマーが挙げられる。
ビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、アルファメチルスチレン、オルト-、メタ-、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-ターシャリーブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、C9カット(または、より一般にC8~C10カット)に由来する任意のビニル芳香族モノマー、たとえばビニル芳香族コポリマーであって、コポリマー中にモル分率で表されて少数派のモノマーにビニル芳香族を含んでいるビニル芳香族コポリマーが挙げられる。
可塑剤用炭化水素樹脂としては、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/(D)CPDコポリマー樹脂、C5カット/スチレンコポリマー樹脂、C5カット/C9カットコポリマー樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。
酸化防止剤
本明細書に使用される用語「酸化防止剤」とは、酸化的分解反応に対抗する化学薬品を指す。適当な酸化防止剤としては、ジフェニル-p-フェニレンジアミンおよびThe Vanderbilt Rubber Handbook、(1978年)、344~346頁に開示されたものが挙げられる。有用な酸化防止剤はパラフェニレンジアミンであり、これはSantoflex(商標)6PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン)の商品名でEastman社から市販され入手可能である。
架橋剤、硬化剤、硬化剤パッケージおよび硬化プロセス
エラストマー組成物およびそれらの組成物から作られる物品は一般に、少なくとも1種の硬化剤パッケージ、少なくとも1種の硬化剤、少なくとも1種の架橋剤の助けを借りて製造され、および/またはエラストマー組成物を硬化するプロセスを経る。本明細書で使用される「少なくとも1種の硬化剤パッケージ」とは、当該産業において一般に理解されるように、硬化された特性をゴムに与えることができる任意の材料または方法を指す。有用な架橋剤はイオウである。
加工処理
本発明のエラストマー組成物は、当業者に知られている任意の慣用手段によってコンパウンドにされる(混合される)ことができる。混合は、単一のステップでまたは複数の段階で行われることができる。たとえば、成分は、少なくとも2つの段階、すなわち少なくとも1つの非生産的な段階およびそれに引き続く生産的な混合段階で混合される。用語「非生産的な」および「生産的な」混合段階とは、ゴム混合技術分野の当業者には周知である。エラストマー、ポリマー添加物、シリカおよびシリカカプラーおよびカーボンブラックは、使用される場合には、一般に1つ以上の非生産的な混合段階で混合される。ポリマーが最初に30秒間~2分間、110℃~130℃で混合され、引き続いてシリカ、シリカカプラーおよび他の成分が添加され、これらの一緒にされたものが、さらに30秒間から3分間または4分間混合されて温度が140℃~170℃まで上昇する。シリカは小分けされて、すなわち最初に半分、次に後の半分が混合されることができる。最終硬化剤は、生産的な混合段階で混合される。生産的な混合段階では、混合は、その前の非生産的な混合段階の混合温度より低い温度、すなわち最終温度で行われる。
本発明のエラストマー組成物は多くの望ましい特性を有する。硬化されたタイヤトレッド組成物の非混和性ポリオレフィンドメインの最大エネルギー損失(そこで傾きが0となるタンジェントデルタ)は、-30~10℃の間に生じる。最終的に、他の成分のポリマーマトリクス中に相溶化剤を含んでいるドメインは、20ミクロン未満、10ミクロン未満または5ミクロン未満であるサイズを有し、多くの場合に1.0~5ミクロンまたは10~20ミクロンの範囲内にある。
プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーについて本明細書に開示された様々な記載された要素および数値範囲、プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーを作るために使用された反応物、およびタイヤトレッド組成物へのそれらの使用は、本発明を記載するための他の記載された要素および数値範囲と組み合わされることができ、さらに、所与の要素について、本明細書に記載された任意の数値の上限が任意の数値の下限と組み合わされることができる。本発明の特徴が、以下の非限定的な実施例に記載される。
2種のプロピレン-エチレン-ジエンターポリマー(PEDM)添加物(表1)が、以下の実施例のタイヤトレッド配合物に使用された。
非晶質のプロピレンに基いたコポリマーの調製
触媒系:触媒前駆体は、ビス((4-トリエチルシリル)フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-ターシャリーブチル-フルオレン-9-イル)ハフニウムジメチルであった。しかし、良好なジエン取り込み性およびMW能力を備えた他のメタロセン前駆体も使用され得る。
活性化剤は、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであったが、ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロナフチル)ボレートおよび他の非配位性アニオンタイプの活性化剤またはMAOも使用され得る。
重合実験は、米国、ペンシルベニア州、Erie、Auotoclave Engineers社によって作られた連続撹拌槽反応器(CSTR)で行なわれた。リアクターは、2000バール(30kpsi)および225℃の、それぞれ、最大圧力および最大温度で操作されるように設計されていた。もっとも、本実験では、名目上のリアクター圧力はそれよりも低く、1600~1700psig(11.0MPa-g~11.7MPa-g)であった。名目上のリアクター容積は150mLであった。有効容積は、撹拌器のためにそれよりも小さく、およそ120mLであった。リアクターは磁気的に結合された外部撹拌器(Magnedrive)を装備していた。圧力変換器がリアクター内の圧力を測定した。リアクター温度は、タイプKの熱電対を使用して測定された。リアクターの側面に配置された埋め込み型の破裂板が、破局的な圧力障害からの保護を提供した。全ての製品ラインは、約120℃に加熱されて汚れることが防止された。リアクターは、プログラム可能論理制御装置(「PLC」)によって制御された電気加熱帯を備えていた。環境への熱損失の他には、リアクターは冷却手段を備えていなかった(半断熱操作)。
リアクターにおける転化率は、供給原料および流出物の両方をサンプル採取するオンラインガスクロマトグラフ(GC)によって監視された。GCの分析は、内部標準としてプロピレン供給原料中に存在するプロパン不純物を利用した。リアクター温度およびリアクター壁表裏の温度差は、リアクター加熱器出力(表面温度)および触媒供給速度を調節することによって一定に維持された。目標リアクター温度は、供給原料中に0.5~3モルppmの触媒濃度に維持された。このような低い触媒濃度では、不純物の制御が、制御され安定した状態の反応条件を達成する上で最も重要な要因であった。供給原料精製トラップが、モノマー供給原料によって運ばれた不純物を抑制するために使用された。精製トラップは、供給原料ポンプの直前に置かれ、以下の直列2基の別々の床で構成されていた:O2除去用の活性化銅(225℃および1バール(100kPa)のH2流中で還元されたもの)およびそれに引き続く水除去用のモレキュラーシーブ(5A、270℃のN2流中で活性化されたもの)。
プロピレンは、リアクターへ液体を送るためのディップレグを備えた低圧シリンダーから供給された。加熱ブランケット(Ace社製)がプロピレンシリンダー上部圧力を17バール(1.7MPa)(約250psig)に増加させるために使用された。この増加された上部圧力は、モノマーがモノマー供給ポンプヘッドにポンプでのその沸点より上の圧力で供給されることを可能にした。低圧モノマー供給原料はまた、10℃の冷水を使用してポンプヘッドを冷却することによって気泡形成からも安定化された。精製されたモノマー供給原料は、双胴型連続式ISCOポンプ(モデル500D)によって供給された。モノマー流量は、ポンプのモーター速度を調節することによって調節され、コリオリ式質量流量計(PROline Promass 80モデル、Endress and Hauser社製)で測定された。
触媒供給原料溶液は、アルゴンで満たされたドライボックス(Vacuum Atmospheres社製)の内部で調製された。グローブボックス内の大気は<1ppmのO2および<1ppmの水を維持するように精製された。全てのガラス器は110℃で最低限4時間オーブン乾燥され、ドライボックスの予備室へ熱いまま移された。触媒前駆体および活性化剤の貯蔵溶液が、ドライボックスの内部の褐色瓶に貯蔵された精製トルエンを使用して調製された。一定分量が取られて、新たに活性化された触媒溶液が調製された。活性化された触媒溶液が、アルゴンで満たされたドライボックスの内部の厚肉ガラス容器(米国、ニュージャージー州、Vineyard、Ace Glass社製)に仕込まれ、アルゴンで5psig(34kPa-g)に加圧された。活性化された触媒溶液は、注文仕様の双胴型連続式高圧シリンジポンプ(PDC Machines社製)によって反応装置に送られた。
HPLCグレードのヘキサン(95%n-ヘキサン、J.T.Baker社)が溶媒として使用された。それは最低限4時間アルゴンでパージされ、活性化塩基性アルミナ上で一度ろ過された。ろ過されたヘキサンは、アルゴンで満たされたドライボックスの内部の4リットルガラス容器(米国、ニュージャージー州、Vineyard、Ace Glass社製)に貯蔵された。ヘキサンは、ろ過されたヘキサンの4リットル容器に1.5mL(1.05g)のトリオクチルアルミニウム(Aldrich社、#38,655-3)を加えることによってさらに精製された。アルゴンの5~10psig(34~69kPa-g)の上部圧力がガラス容器にかけられ、この捕捉剤溶液が金属製供給原料容器に送られ、そこからヘキサンが双胴型連続式ISCOポンプ(500Dモデル)によってリアクターに送られた。
エチリデンノルボルネン(「ENB」)が、活性化塩基性アルミナを通してろ過されることによって精製された。ろ過されたENBは、アルゴンで満たされたドライボックスの内部の4リットルのガラス容器(米国、ニュージャージー州、Vineyard、Ace Glass社製)に貯蔵された。アルゴンの5~10psig(34~69kPa-g)の上部圧力がガラス容器にかけられ、ENBが500mLの単胴型ISCOポンプに送られ、次にそれがジエンをリアクターに供給した。
重合グレードのエチレンが、Fluitron社製A%-200圧縮機によって圧縮され、質量流量計によって計量されリアクターに入れられた。
重合実験の際、リアクターは所望の反応温度よりも約10~15℃下まで予熱された。リアクターが予熱温度に達したら、溶媒ポンプが始動され、ヘキサン/トリオクチルアルミニウム捕捉剤溶液が4リットルの捕捉剤溶液供給容器からリアクターに送られた。捕捉剤/溶媒溶液のこの流れは、ポリマーが撹拌器駆動部を汚さないようにするために、撹拌器組み立て体よりも上部のポートを通してリアクターに入れられた。リアクターへの溶媒の流れが、供給原料容器から抜き出された溶媒量を監視することによって検証された後に、モノマー供給原料が供給開始された。モノマーは側面のポートを通してリアクターに供給された。各弁をわずかに開くことによって圧力が約100バール(約1.5kpsi)(約10MPa)まで増加したときに、リアクターがパージされた。この操作は、リアクター内の圧力を下げて、リアクターの全てのポートが作動可能であることを検証した。全ての弁がテストし終わり、リアクターが所望の反応圧力に達した後で、活性化された触媒溶液を含んでいるシリンジポンプが加圧された。シリンジポンプ圧力がリアクター圧力を27バール(約400psi)(2.7MPa)だけ超えたときに、空気作動電磁弁が開かれて、触媒溶液をリアクターよりも上流を流れる溶媒流と混合させた。リアクターへの触媒の到着は、発熱を伴う重合反応によって引き起こされる反応温度の上昇によって示された。ラインアウト期間に、触媒供給量は、目標反応温度および転化率に到達して維持されるように調節された。製品は、70℃で一晩減圧乾燥された後に収集され秤量された。製品の一定分量が、全製品収得物を均質化することなく、特性解析に使用された。
ENB含有量は、ASTM D6047-99に従ってOmnic 7.1ソフトウェアを備えたNicole 6700 FTIRを使用して測定された。
ポリマーのメルトインデックス(「MI」)は、ASTM D1238-13およびISO 1133-1:2011方法に従って、Dynisco社製KayenessPolymer Test Systems Series 4003装置を使用することによって測定された。測定手順は、Series 4000、メルトインデクサー操作マニュアル、方法Bに記載されている。
C2含有量は、ASTM D3900-17に記載された既存の方法の拡張であるフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を使用することによって測定された。エチレン含有量は、1155cm-1~1166cm-1の間に中心があるプロピレンメチルの面外変角振動バンドおよび722cm-1~732cm-1の間に中心があるメチレンの面内変角振動バンドの赤外線吸光度の面積を測定することによって決定される。プロピレンのベース点は、1245cm-1とプロピレンピークとの間および1110cm-1とプロピレンピークとの間の最小吸光度値を見つけることによって決定される。最小値が見つからない場合は、1245または1110cm-1の終点が使用される。エチレンのベース点は、785cm-1とエチレンピークとの間および675cm-1とエチレンピークとの間の最小吸光度値を見つけることによって決定される。最小値が見つからない場合は、785または675cm-1の終点が使用される。
これらの面積の比(Aプロピル/Aエチル)=ARが計算され、次にこの計器測定値が十分に特性付けられたプロピレン-エチレンコポリマー標準物を用いて較正されることによってエチレンの質量分率に相関付けられる。
この方法の展開の際に、実験データのベストフィットが、上記の比から得られる式[AR/(AR+1)]を使用し、二次最小二乗回帰によって標準物のエチレン含有量と相関付けることによって得られた。
コンパウンドのサンプル調製
添加物の混合:添加物1~6コンパウンドの組成は表2によるものであり、表2では表1のPEDMターポリマーが使用されて、対応するPEDMコンパウンドが製造される。全ての成分は、phr単位で、すなわちポリマー100部当たりの部単位で示される。これらのコンパウンドは、適当なミキサー中で、当業者に周知の少なくとも2つの逐次的な通しを用いて混合された。混合温度は110℃~210℃の範囲である。個々の混合ステップのそれぞれの混合時間は、所望の特性に応じて1~30分間である。
* CHIMASSORB (商標) 2020 (高分子量ヒンダードアミン光安定剤、BASF社から入手可能); AKRO-ZINC (商標) BAR 85 (フランスプロセス酸化亜鉛のナフテン油中分散液、Akrochem社から入手可能); N330カーボンブラック(Cabot社から入手可能なVulcan(商標) 3); シランSi (商標) 69 (Evonik社から入手可能なシランカップリング剤)、Si 69は以下の構造式を有する:
*合計ターポリマー100部当たりの重量部
シリカトレッドコンパウンド
対照例および実施例についてのトレッドコンパウンド配合物が表3に列挙される。全ての成分は、phr単位で、すなわちポリマー100部当たりの部単位で示される。これらのコンパウンドは、適当なミキサー中で、当業者に周知の少なくとも2つの逐次的な通しを用いて混合された。非生産的な通し(架橋系なしでの混合)は、110℃~190℃の高温度での混合を有する。非生産的な通しに引き続く生産的な通しでは、架橋系が加えられる。この混合の温度は、典型的には110℃未満である。
* NIPOL (商標) NS 116R (21%の結合スチレンを有するスチレン-ブタジエンゴム、日本ゼオン社から入手可能); BUNA (商標) CB 24 (ネオジムブタジエンゴム、Arlanxeo社から入手可能); SMR (商標) 10 (シスポリイソプレンの天然ポリマー、Herman Webber社から入手可能); ZEOSIL (商標) 1165MP (無定形沈降シリカ、Rhodia社から入手可能); NYTEX (商標) 4700 (高粘度ナフテンブラック油、Nynas AB社から入手可能); SANTOFLEX (商標) 6PPD (N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、Eastman Chemical社から入手可能); X 50S (商標) (カーボンブラック入りビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik Industries社から入手可能); AKRO-ZINC (商標) BAR 85 (フランスプロセス酸化亜鉛のナフテン油中分散液、Akrochem社から入手可能
*合計ゴム(NIPOL (商標) NS 116R+BUNA (商標) CB 24+SMR (商標) 10)100部当たりの部
損失タンジェントの測定
表3に列挙されたコンパウンドが、圧縮成形され硬化されパッドにされた。その後、長方形の試験片(幅12mmおよび長さ30mm)が、硬化されたパッドから切り出され、ARES G2(Advanced Rheometric Expansion System、TA Instruments社製)に搭載され、ねじり長方形状での動的機械的試験に供された。試験片の厚さは約1.8mmであったけれども、試験片の厚さは変動しており、各試験について手で測定された。最初に、室温で5.5%までのひずみおよび10Hzでひずみ掃引が行われ、引き続いて4%ひずみおよび10Hzで-38℃から100℃まで2℃/分の昇温速度で温度掃引が行われた。貯蔵および損失弾性率が、損失タンジェント値とともに測定された。より良好な湿潤トラクションのためには、0℃未満の温度でより高い損失タンジェント値を有することが好ましいのに対して、より良好な転がり抵抗のためには、損失タンジェントが40℃または60℃で、より低いことが好ましい。
表4は、表2のPEDMコンパウンドを使用するタイヤトレッド配合物の損失タンジェント測定値を提示し、また、表5は同じ測定値ではあるが、対照例のタイヤトレッド配合物TT-1に対するパーセントとして提示する。
ひずみ/応力測定
5つの試験片がASTM D4482ダイを用いて切り出され、試験の前に試験室で16時間条件調整された。
試験片は、長移動機械式伸び計を備えたインストロン5565機で試験された。
ロードセルおよび伸び計は、ゲージ長として20mmを用いて各試験日の前に較正される。
サンプル情報、試験者名、日付、試験室温度および湿度がすべて記録された。
試験片厚さは、試験をする領域内の3つの場所で測定され、プログラムから指示されたときに平均値が入力された。試験室の温度および湿度が測定された。
試験片はグリップに注意深く装着されて、グリップが試験片を対称的に固定することを確実にした。次に、伸び計のグリップが試験をする領域内のサンプルに取り付けられた。
試験が、プログラムから指示を受けて開始された。0.1Nの前荷重がかけられた。クロスヘッドが20インチ/分(51cm/分)で移動することで試験が開始され、破断が検知されるまで行われた。
各サンプルから5つの試験片が試験され、中央値が報告された。
表6は、表2のPEDMコンパウンドを使用するタイヤトレッド配合物の応力/ひずみ測定値を提示する。
第1のコポリマー成分、未反応モノマーおよび溶媒を含んでいる第1のリアクターからの流出物が、追加のモノマーとともに第2のリアクターに供給され、そこで重合が、異なるプロセス条件の下で続けられて、第2のコポリマー成分が製造された。重合は溶媒としてイソヘキサンを使用して溶液で行われた。重合プロセスの間、水素の添加および温度の調節が、所望のメルトフローレートを達成するために使用された。リアクターの外部で活性化された触媒が、必要により目標重合温度を維持するのに有効な量で加えられた。PEDMターポリマーは、直列に接続された2基の連続撹拌槽リアクターで合成された。
第1のリアクターで、第1のコポリマー成分が、エチレン、プロピレンおよび触媒の存在下で製造され、触媒はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとう(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジ-p-トリエチルシランフェニルメタン]ハフニウムジメチルとの反応生成物であった。
第2のリアクターで、第2のコポリマー成分が、エチレン、プロピレンおよび触媒の存在下で製造され、触媒はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと[シクロペンタジエニル(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジ-p-トリエチルシランフェニルメタン]ハフニウムジメチルとの反応生成物であった。
第2のリアクターから出てくる混合されたコポリマー溶液は、急冷され、次に従来から知られた揮発成分除去方法、たとえばフラッシングまたは液相分離を使用して、最初にイソヘキサンの大部分を除去することによって濃縮された溶液を調製し、そして次に揮発成分除去機を使用して無水の状態の溶媒の残りを、0.5重量%未満の溶媒および他の揮発成分を含有する融解されたポリマー組成物が得られるようにストリッピングすることによって、揮発成分除去された。プロピレン-エチレン-ジエンターポリマーは、ASTM D-1238-13によって測定された0.2g/10分以上のメルトフローレート(MFR、230℃で2.16kg荷重)を有することができる。融解されたポリマー組成物は、スクリューによってペレタイザーまで押し進められ、そこでポリマー組成物ぺレットが水中に沈降され、固体になるまで冷却された。
コンパウンドのサンプル調製
添加物7~10コンパウンドの組成は表8によるものであり、表8では表7のPEDMターポリマーが使用されて、対応するPEDMコンパウンドが製造される。全ての成分はphr単位で、すなわちポリマー100部当たりの部単位で示される。これらのコンパウンドは、適当なミキサー中で、当業者に周知の少なくとも2つの逐次的な通しを用いて混合された。混合温度は110℃~210℃の範囲である。個々の混合ステップのそれぞれの混合時間は、所望の特性に応じて1~30分間である。
シリカトレッドコンパウンド
対照例および実施例についてのトレッドコンパウンド配合物が表9に列挙される。全ての成分はphr単位で、すなわちポリマー100部当たりの部単位で示される。これらのコンパウンドは、適当なミキサー中で、当業者に周知の少なくとも2つの逐次的な通しを用いて混合された。非生産的な通し(架橋系なしでの混合)は、110℃~190℃の高温度での混合を有する。非生産的な通しに引き続く生産的な通しでは、架橋系が加えられる。この混合の温度は、典型的には110℃未満である。
* NIPOL (商標) NS 116R (21%の結合スチレンを有するスチレン-ブタジエンゴム、日本ゼオン社から入手可能); BUNA (商標) CB 24 (ネオジムブタジエンゴム、Arlanxeo社から入手可能); CV60 (シスポリイソプレンの天然ポリマー、Herman Webber社から入手可能); ZEOSIL (商標) 1165MP (無定形沈降シリカ、Rhodia社から入手可能); NYTEX (商標) 4700 (高粘度ナフテンブラック油、Nynas AB社から入手可能); SANTOFLEX (商標) 6PPD (N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、Eastman Chemical社から入手可能); X 50S (商標) (カーボンブラック入りビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik Industries社から入手可能); AKRO-ZINC (商標) BAR 85 (フランスプロセス酸化亜鉛ナフテン油中分散液、Akrochem社から入手可能; シランは信越化学社から受け取ったままで使用された。
*合計ゴム(NIPOL (商標) NS 116R+BUNA (商標) CB 24+CV60)100部当たりの部
損失タンジェント測定
表9に列挙されたコンパウンドが、圧縮成形され硬化されパッドにされた。その後、長方形の試験片(幅12mmおよび長さ30mm)が、硬化されたパッドから切り出され、ARES G2(Advanced Rheometric Expansion System、TA Instruments社製)に搭載され、ねじり長方形状での動的機械的試験に供された。試験片の厚さは約1.8mmであったけれども、試験片の厚さは変動しており、各試験について手で測定された。最初に、室温で5.5%までのひずみおよび10Hzでひずみ掃引が行われ、引き続いて4%ひずみおよび10Hzで-38℃から100℃まで2℃/分の昇温速度で温度掃引が行われた。貯蔵および損失弾性率が、損失タンジェント値とともに測定された。より良好な湿潤トラクションのためには、0℃未満の温度でより高い損失タンジェント値を有することが好ましいのに対して、より良好な転がり抵抗のためには、損失タンジェントが40℃または60℃で、より低いことが好ましい。
表10は、表8のPEDMコンパウンドを使用するタイヤトレッド配合物の損失タンジェント測定値を提示し、また、表11は同じ測定値ではあるが、対照例タイヤトレッド配合物TT-7に対するパーセントとして提示する。
明細書および特許請求の範囲の中で、用語「を含む(including)」および「を含んでいる(comprising)」は無制限の用語であり、「・・・を包含するが、それに限定されない」を意味すると解釈されるべきである。これらの用語は、より限定的な用語「から本質的に成る」および「から成る」を包含する。
本明細書および添付された特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、単数形「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形の参照をも含むことが留意されなければならない。同様に、用語「1つの(aまたはan)」、「1つ以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」は、本明細書では互換的に使用されることができる。また、用語「を含んでいる(comprising)」「を含む(including)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」および「を有する(having)」も、互換的に使用されることができることに留意されるべきである。
表12に列挙されたシランは、受け取ったままで使用され、それぞれの任意量が小量のCDCl3(Sigma-Aldrich社製、製品#151823-100G)に溶解された。サンプルは、Bruker社製Avance III HD 500MHz分光計で1HNMRによって分析され、その後、様々な時間、周囲条件下の室温で寝かされた。スペクトルがこのような寝かし時間後に定期的に取得され、下の図1~6に報告された。
アルコキシシランのケイ素原子のまわりの置換基パターンは、加水分解の速度、したがってシランカップリング剤の相対的な安定性を支配する。表12に含まれる構造のものは、最も一般的なシランであるTESPT(表12)からの以下の3種の変形物を特徴としている:プロピル連結基のオクチル連結基による置換;1個のアルコキシ基のメチル基による置換;およびエトキシ基のオクチロキシ基による置換。図1はTESPTの分解を示し、3日間未満後に既に3.72ppmに遊離のEtOHが出現することによって証拠付けられるように、この材料は測定可能な分解を示す。分解は、10日間にわたって継続して、最終的に(合計エトキシ含有量の割合として)約25%の遊離のEtOHに達する。ケイ素原子とイオウ原子との間のプロピル連結基をオクチル鎖で置き換えると、およそ2倍の分解速度がもたらされ、約45%の遊離のEtOHに至る(図2)。ケイ素原子上の1個のエトキシ基をメチル基で交換すると、分解速度がわずかに増加して、30%の遊離のシランに帰着する(図3)。これらの変化を合わせると、化合物BMDEOの分解速度はBTEOのそれとTESPTのそれとのほぼ中間に相当する(図4)。ここで、これらの結果は半定量的なものであり、当業者が微妙な差異を識別することを可能にするために必要な反復実験を含んでいないことに留意すべきである。TESPTのエトキシ基のうちの1個(BDEO、図5)または2個(BEDO、図6)をオクチロキシ基に交換すると、はるかにより劇的な効果が生じる、すなわち溶液中で27日間にわたって、観察できるような分解は生じない。この観察結果は、ランダムにコイル状に巻かれたアルキル基鎖によってケイ素原子が立体遮蔽されることと整合している。BDEOおよびBEDOは、TESPTを異なる比率のオクタノールでアルコール分解することによって調製されており、シランの調製にコストがかかる。しかし、追加された安定性は、表8の最終的なポリマー添加物配合物の追加された保存安定性に実質的な価値を提供することができ得る。