JP7081576B2 - 皮膚組織における色素濃度の推定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚組織における色素濃度の推定方法に関する。
皮膚が光伝搬状態の異なる9層の組織で形成されているという層状モデルを用い、モンテカルロ法を用いて皮膚組織内の色素濃度を推定する方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、層状モデルの層ごとに5種の光学パラメータ(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメータ、屈折率、層の厚み)を設定し、光伝搬解析を行い、分光反射率曲線をシミュレーションする。この場合、吸収係数=吸光係数・色素濃度であることにより色素濃度を変化させて吸収係数を変化させ、その他の光学パラメータも順次変化させる。そして、シミュレーションした分光反射率曲線を実測の分光反射率曲線に対してフィッティングし、そのときの光学パラメータを用いて層状モデルの各層のメラニン及びヘモグロビンの色素濃度を求める。
特開2011-87907号公報
特許文献1に記載の方法によれば、層状モデルの各層の色素濃度を求めるために、シミュレーションによる分光反射率曲線と実測の分光反射率曲線とのフィッティングを、層状モデルの各層で5種の光学パラメータを順次調整していくという多段階で行う必要があり、煩雑である。
また、特許文献1に記載の方法を、被験者の分光反射率を測定した肌画像に適用すると、陰影の影響による推定誤差が生じやすいという問題もあった。
これに対し、皮膚組織を形成する、深さが異なる層ごとの色素濃度を簡便な方法で、より精確に推定できるようにすることを課題とする。
本発明者は、皮膚の吸光度スペクトルが、皮膚組織の層状モデルの色素含有層の吸収係数の多項式で表されるとした吸光度関数Z(λ)を設定し、この吸光度関数Z(λ)と、皮膚組織の層状モデルに対して光伝搬のシミュレーションをすることにより得た分光反射率Rs(λ)とをフィッティングさせることにより吸光度関数Z(λ)の係数を得ておくと、被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)を測定することにより吸光度関数Z(λ)を用いて皮膚組織の各層に含まれる色素濃度を推定することができ、5種の光学パラメータを順次変化させてフィッティングすることが不要となって推定方法が簡便化され、推定精度を向上させることも可能となることを想到し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、皮膚組織を形成する所定の深さの層における色素濃度の推定方法であって、
皮膚組織の層状モデルに対して光伝搬のシミュレーションを行うことにより皮膚組織の分光反射率Rs(λ)を算出し、
一方、皮膚組織の吸光度を、皮膚組織の層状モデルの色素含有層内の色素による吸収係数の多項式で表した吸光度関数Z(λ)を設定し、
吸光度関数Z(λ)を分光反射率Rs(λ)に、吸光度スペクトル又は反射率スペクトルとしてフィッティングすることにより吸光度関数Z(λ)の各項の係数を定め、
被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)を測定し、
分光反射率Rm(λ)と係数を定めた吸光度関数Z(λ)とを、吸光度スペクトル又は反射率スペクトルとして比較することで、層状モデルの所定の色素含有層に対応した深さの層の色素濃度を推定する方法を提供する。
本発明によれば、吸光度関数Z(λ)を使用するので、特許文献1に記載のように光学パラメータを順次変化させることなく、皮膚組織の層状モデルの色素含有層に対応する被験者の皮膚の深さでの色素の種類と濃度を簡便に推定することができる。したがって、皮膚の所定の深さにおけるオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度を簡便に推定することができ、これによりヘモグロビンの酸素飽和度がわかり、皮膚における酸素の消費状態や血行状態などを推定することも可能となる。
また、本発明によれば、分光反射率を撮影した被験者の皮膚画像から、皮膚組織の層状モデルの色素含有層に対応する皮膚の深さの色素濃度画像を形成することもできる。色素濃度画像を形成できることで、皮膚を表面から観察したときの見え方と、皮膚中の色素濃度との関係がわかるようになる。また、化粧料を適用した皮膚について、本発明の方法で、例えばメラニン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンの各濃度の経時的変化を調べることにより、化粧料の有効性の評価を行うことが可能となる。
さらに、本発明によれば、吸光度関数Z(λ)と分光反射率Rs(λ)をフィッテフィングする際に相対吸収スペクトルを使用し、色素濃度に依存しない定数項を相殺することで、色素濃度画像から散乱等の影響を排除することができる。
図1は、本発明の一態様の色素濃度の推定方法のフローの説明図である。 図2は、皮膚組織の7層モデルの説明図である。 図3は、皮膚組織の分光反射率Rs(λ)のスペクトルである。 図4は、皮膚組織の分光反射率Rs(λ)から変換した吸光度スペクトルAs(λ)である。 図5は、吸光度スペクトルAs(λ)から基準スペクトルを差し引いた相対吸収スペクトルである。 図6は、実施例における温浴又は炭酸浴と撮影タイミングの説明図である。 図7は、実施例における、温浴後の第4層の血液濃度の計測画像である。 図8は、実施例における、炭酸浴後の第4層の血液濃度の計測画像である。 図9は、実施例における、温浴後の第2層のメラニン濃度、第4層の血液濃度及び第6層の血液濃度の経時変化を示すグラフである。 図10は、実施例における、炭酸浴後の第2層のメラニン濃度、第4層の血液濃度及び第6層の血液濃度の経時変化を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
(色素濃度の推定方法の概要)
図1は、本発明の一態様の色素濃度の推定方法のフローの説明図である。この方法では、概略、皮膚組織に所定の層数で層状モデルを設定し(STEP 1-1)、皮膚の吸光度スペクトルが、層状モデルにおける複数の色素含有層(即ち、層状モデルを構成する層であって色素が含有されている層)の吸収係数の多項式で表されるとして吸光度関数Z(λ)を設定する(STEP 1-2)。そして、その多項式の係数を求めるために、まず、皮膚組織に対して種々の色素濃度で光伝搬のシミュレーションを行うことにより皮膚組織の分光反射率Rs(λ)を算出する(STEP 1-3)。次に、分光反射率Rs(λ)を吸光度As(λ)に変換し、その吸光度As(λ)に吸光度関数Z(λ)をフィッティングさせることにより吸光度関数Z(λ)の多項式の係数を求める(STEP 1-4)。
一方、被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)を測定する(STEP 2-1)。そして、分光反射率Rm(λ)を吸光度Am(λ)に変換し、その吸光度Am(λ)と、係数を定めた吸光度関数Z(λ)とを比較することで、吸光度関数Z(λ)から所定の色素含有層の色素濃度を求める(STEP 2-2)。こうして求めた色素濃度を、層状モデルの所定の色素含有層に対応する深さの、被験者の皮膚組織の色素濃度と推定する。
(STEP 1-1)皮膚組織の層状モデル
図2に示すように、皮膚組織は複雑な層構造になっていることが知られており、同図に示すように皮膚組織を第1層の上皮角質層、第2層の表皮層、第3層の真皮乳頭層、第4層の乳頭下血管網、第5層の真皮血管層、第6層の皮下血管網、第7層の皮下組織の7層に区分した7層モデル、これを更に細分化した9層モデル、あるいは反対に皮膚組織を表皮、真皮、皮下組織の3層に区分した3層モデルなどが皮膚組織の解析の目的などに応じて使用されている。たとえば、7層モデルでは、第2層の表皮層にはメラニン、カロチン等の色素、第4層の乳頭下血管網と第6層の皮下血管網には血液由来のオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、ビリルビン、カロチン等の色素、第7層には皮下脂肪組織に沈着したカロチン等の色素が存在し得る。そこで、本発明の一態様としてはこれらの色素の皮膚の深さ方向の存在位置を正確に特定すると共に、光伝搬のシミュレーションをできる限り簡単にする点から7層モデルを採用し、皮膚組織における典型的な色素分布の例として、第2層の表皮層のメラニンと、第4層の乳頭下血管網及び第6層の皮下血管網のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンを考える。
これに対し、例えば、3層モデルを設定してメラニンとオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの濃度を推定しようとすると、3層モデルにおいてオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンが存在する第2層の層厚は厚くなることから、7層モデルのときのオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの濃度よりも低く推定される。
また、本発明で濃度を推定する皮膚組織の色素は、メラニン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンに限定されず、ビリルビン、カロチン、最終糖化生成物(advanced glycation end-products;AGEs)等も対象とすることができる。
(STEP 1-2)吸光度関数Z(λ)
吸光度関数Z(λ)は、皮膚組織の層状モデルの色素含有層ごとに色素の種類と濃度を推定するために本発明者が設定した関数であって、皮膚の吸光度スペクトルが、色素含有層内の色素による吸収係数の多項式で表されるとしたものである。この多項式は色素含有層ごとの吸収係数の多項式としてもよく、各色素含有層に含まれる色素ごとの吸収係数の多項式としてもよい。例えば、第2層の表皮層にメラニンが存在し、第4層の乳頭下血管網と第6層の皮下血管網にオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンが存在するとして色素含有層ごとの吸収係数の3次の多項式を考える場合、吸光度関数Z(λ)は次式(1)で表される。
Z(λ)=c1(λ)・Mel3+c2(λ)・Mel2・Der4(λ)+c3(λ)・Mel2・Der6(λ)+c4(λ)・Der4(λ)3+c5(λ)・Der4(λ)2・Mel+c6(λ)・Der4(λ)2・Der6(λ)+c7(λ)・Der6(λ)3+c8(λ)・Der6(λ)2・Mel+c9(λ)・Der6(λ)2・Der4(λ)+c10(λ)・Mel・Der4(λ)・Der6(λ)+c11(λ)・Mel2+c12(λ)・Mel・Der4(λ)+c13(λ)・Mel・Der6(λ)+c14(λ)・Mel・Der4(λ)2+c15(λ)・Der4(λ)・Der6(λ)+c16(λ)・Der6(λ)2+c17(λ)・Mel+c18(λ)・Der4(λ)+c19(λ)・Der6(λ)+c20(λ)
式(1)
式中、c1、・・・c20は係数である。
また、Melはメラニンによる第2層の吸収係数、Der4(λ)はオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンによる第4層の吸収係数、Der6(λ)はオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンによる第6層の吸収係数で、それぞれ次式で表される。
Mel=μaM・[Mel]
Der4(λ)=μaOhb・[Ohb4]+μaHb・[Hb4]
Der6(λ)=μaOhb・[Ohb6]+μaHb・[Hb6]
式中、μaMはメラニンの吸光係数
μaOhbはオキシヘモグロビンの吸光係数
μaHbはデオキシヘモグロビンの吸光係数
[Mel]はメラニンの濃度(g/L)
[Ohb4]は第4層におけるオキシヘモグロビン濃度(g/L)
[Hb4]は第4層におけるデオキシヘモグロビン濃度(g/L)
[Ohb6]は第6層におけるオキシヘモグロビン濃度(g/L)
[Hb6]は第6層におけるデオキシヘモグロビン濃度(g/L)
μaM、μaOhb、μaHbは既知の数値を使用する。
また、吸光度関数Z(λ)を分光反射率Rs(λ)とフィッティングさせるにあたり、[Mel]、[Ohb4]、[Hb4]、[Ohb6]、[Hb6]には設定値を使用する。
なお、吸光度関数Z(λ)を色素含有層ごとの吸光係数の多項式とする場合に、2次の多項式とすると色素濃度の推定精度が劣り、3次の多項式と4次の多項式では推定精度に差異がないことから、吸光度関数Z(λ)は3次の多項式が好ましい。
(STEP 1-3)分光反射率Rs(λ)
皮膚組織の分光反射率Rs(λ)は、種々の色素濃度で光伝搬のシミュレーションを行うことにより算出する。光伝搬のシミュレーションの手法としては、モンテカルロ法、クベルカムンク法、光伝搬の解析的手法(輸送方程式の解析解や拡散近似の解析解)等を使用することができる。
後述する実施例では、このシミュレーションをモンテカルロ法により行い、7層モデルの第2層の表皮層のメラニン濃度を、該第2層の表皮層の体積に対するメラニンの体積の割合として8~16%の範囲で5段階に変化させ、第4層の乳頭下血管網の血液濃度(酸素飽和度は0.7で固定)を、該第4層の乳頭下血管網の体積に対するオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの合計の体積の割合として10~30%の範囲で9段階に変化させ、第6層の皮下血管網のヘモグロビン(酸素飽和度は0.7で固定)を該第6層の皮下血管網の体積に対するオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの合計の体積の割合として1~15%の範囲で15段階に変化させ、合計675通りの色素濃度でシミュレーションした。なお、メラニン等の色素濃度を変化させる幅囲は、皮膚濃度を推定する被験者の肌色の人種による差異を考慮して変えることができえる。
分光反射率Rs(λ)をシミュレーションするにあたり、7層モデルの各層の厚みなどの設定値は表1の通りとし、波長は400~900nmの範囲で10nm毎に変化させた。その結果、図3に示す675通りの分光反射率Rs(λ)のスペクトルを得た。
このように7層モデルを考える場合に、光学パラメータのうち屈折率、散乱係数、非等方性パラメータをそれぞれ第1層~第7層で共通の一定値とし、第1層~第7層の層厚を固定し、変化させる光学パラメータの数を減らすことにより、吸光度関数Z(λ)と分光反射率R(λ)のフィッティングが容易となる。
Figure 0007081576000001
(STEP 1-4)吸光度関数Z(λ)と分光反射率R(λ)のフィッティング
一般に拡散反射スペクトルA(λ)は透過スペクトルR(λ)と等価であるとされ、拡散反射スペクトルと吸光度スペクトルは次式により変換できる。
A(λ)=-logR(λ)
そこで、図3に示した分光反射率Rs(λ)のスペクトルから図4に示した吸光度スペクトルAs(λ)を得ることができる。
したがって、吸光度関数Z(λ)を分光反射率Rs(λ)とフィッティングさせる場合、分光反射率Rs(λ)を吸光度スペクトルAs(λ)に変換し、吸光度関数Z(λ)と吸光度スペクトルAs(λ)とをフィッティングさせることができ、また、吸光度関数Z(λ)を反射率スペクトルRs’(λ)に変換し、反射率スペクトルRs’(λ)と分光反射率Rs(λ)とをフィッティングさせることもできる。ただし、フィッティングを線形関係で議論し、推定精度を上げる点から、分光反射率Rs(λ)を吸光度スペクトルAs(λ)に変換し、吸光度関数Z(λ)と吸光度スペクトルAs(λ)とをフィッティングさせることが好ましい。
吸光度関数Z(λ)と分光反射率Rs(λ)とのフィッティングでは、吸光度関数Z(λ)と、分光反射率Rs(λ)から変換した吸光度スペクトルAs(λ)との次式の誤差関数RSSが最小となるように吸光度関数Z(λ)の係数を定める。
Figure 0007081576000002
あるいは、吸光度関数Z(λ)を反射率の関数に変換したexp{-Z(λ)}を用いた次式の誤差関数RSSRが最小となるように関数ZR(λ)の係数を定める。
Figure 0007081576000003
吸光度関数Z(λ)と分光反射率R(λ)のフィッティングの手法としては、上述のRSSの他、MAE(Mean Absolute Error、平均絶対誤差)、RMSPE(Root Mean Square Percentage Error、平均平方二乗誤差率)が最小になるようにしてもよい。
なお、上述の例では分光反射率Rs(λ)を波長400~900nmの範囲で10nm毎に算出し、吸光度関数Z(λ)とフィッティングしたが、フィッティングに使用する波長の好ましいバンド数は、濃度を推定する色素の種類の数や吸光度関数の次数に応じて変えることができる。例えば、濃度を推定する色素の種類を7層モデルの第2層のメラニン、第4層の総ヘモグロビン、及び第6層の総ヘモグロビンの3種とする場合には、散乱の影響を鑑みて4バンド以上とすることが好ましく、6バンド以上とすることがより好ましい。
(STEP 2-1)被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)の測定
被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)の測定は、分光カメラを用いて行うことができる。分光カメラの波長分解能は1~10nm、空間分解能は0.01~0.5mm/画素が好ましい。また、照明光は可視から近赤外(950nm程度まで)を含む光源が好ましく、例えば、人工太陽灯を使用することができる。
皮膚測定部位は特に制限はなく、顔、腕等とすることができ、好ましくは影が映りにくい平坦な部分がよい。
(STEP 2-2)被験者の皮膚の色素濃度の推定
(STEP 1-4)で係数を求めた吸光度関数Z(λ)と、(STEP 2-1)で求めた被験者の分光反射率Rm(λ)を変換して得られる吸光度スペクトルAm(λ)とを比較することにより、あるいは、吸光度関数Z(λ)を変換して得られる反射率の関数と被験者の分光反射率Rm(λ)とを比較することにより、吸光度関数Z(λ)が吸光度スペクトルAm(λ)と等価となるときの吸光度関数Z(λ)中の色素含有層の濃度を求める。この場合も、推定精度を向上させる点及び計算が簡易になる点から吸光度関数Z(λ)と吸光度スペクトルAm(λ)を比較することが好ましい。また、好ましくは4バンド以上、より好ましくは6バンド以上で比較することが好ましい。
こうして得られた色素濃度は、層状モデルにおける所定の色素含有層の色素濃度に対応するから、所定の色素含有層に対応する深さの被験者の皮膚組織の色素濃度が得られることになる。
よって、本発明によれば被験者の皮膚の所定の深さにおける色素濃度を精度よく推定することが可能となる。また、この色素濃度は、分光カメラを用いて得る被験者の皮膚画像の画素ごとに得られるので、本発明によれば、皮膚組織の層状モデルの色素含有層に対応する皮膚の深さでの色素濃度画像を形成することも可能となる。
(色素濃度に依存しない散乱等の影響の除去)
皮膚組織に対して種々の色素濃度で光伝搬のシミュレーションを行うことにより算出した分光反射率Rs(λ)を変換して得られる吸光度スペクトルAs(λ)には図4に示したようにスペクトルの形状にばらつきの幅が存在する。これに対し、本発明者はこれらのスペクトルを、スペクトル相互の相対スペクトルとするとばらつきの幅が収束すると予想し、次式(2a)で表される平均スペクトルを基準スペクトルとし、
Figure 0007081576000004
吸光度スペクトルAs(λ)を基準スペクトルAs_avで規格化すること、即ち、
相対吸光度=As(λ)-As_av
を求めることにより図5に示した相対吸収スペクトルを得た。
式(2a)で表される基準スペクトルAs_avは波長に依存せず、角質層内の散乱等が影響していると考えられる。
なお、分光反射率Rs(λ)に対する同様の基準スペクトルは次式(2b)で得ることができる。
Figure 0007081576000005
図5に示した相対吸光度(As(λ)-As_av)にフィッティングさせる吸光度関数Z(λ)としては、前述の式(1)の係数c1~c20を求めた吸光度関数とは別個に、規格化した分光反射率Rs'(λ)を用いて係数をフィッティングにより求めた相対吸光度関数Z’(λ)を得ておく。
また、相対吸光度関数Z'(λ)と、被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)を変換した吸光度スペクトルAm(λ)とを比較して被験者の色素濃度を求める場合、被験者の吸光度スペクトルAm(λ)の平均スペクトルAm_avを求め、被験者の吸光度スペクトルAm(λ)から平均スペクトルAm_avを差し引いた
相対吸光度=Am(λ)-Am_av
と相対吸光度関数Z'(λ)とを比較すればよい。
このように相対吸光度を用いることにより、色素濃度の推定精度を更に向上させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
(1)吸光度関数Z(λ)の取得
表1に示したパラメータで波長を400~900nmの範囲で10nm毎に変化させてシミュレーションすることにより得た分光反射率Rs(λ)を吸光度スペクトルAs(λ)に変換し、その吸光度スペクトルAs(λ)に式(1)の吸光度関数Z(λ)をフィッティングさせることにより吸光度関数Z(λ)の係数c1、・・・c20を定め、係数c1、・・・c20が定まった吸光度関数Z(λ)を得た。
(2)皮膚の分光反射率Rm(λ)の測定
分光反射率Rm(λ)を測定する皮膚の測定部位を前腕の背側とし、手及び前腕を温浴又は炭酸浴中に浸漬し、その後放置した。図6に示すタイミングで分光反射率Rm(λ)を6回測定した。
この場合、室温は23℃、温浴と炭酸浴の浴温はそれぞれ40~42℃とし、炭酸浴には入浴剤(バブ(登録商標)、花王株式会社)で炭酸を発生させた。
分光反射率Rm(λ)の測定は、暗室において人工太陽灯(SOLAX(登録商標) XC-500、セリック株式会社)で偏光板を通して測定部位を照明し、前面に偏光板を備えた分光カメラ(ImSpector(登録商標)、JFE テクノリサーチ株式会社)(波長分解能2.8mm、空間分解能0.1mm)で、表面反射光が受光されないように測定部位を撮影することにより行い、30×30画素の領域の反射率を波長400~900nmの範囲で測定し、式(1)の吸光度関数Z(λ)を用いて、温浴後及び炭酸浴後のそれぞれの第2層のメラニン濃度、第4層の血液濃度及び第6層の血液濃度を計測した。ここで、血液濃度としては、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの合計の総ヘモグロビンの濃度を計測した。温浴後の第4層の血液濃度の計測画像を図7に示し、炭酸浴後の第4層の血液濃度の計測画像を図8に示す。図7及び図8において、血液濃度の単位(%)は、第4層の体積に対する総ヘモグロビンが占める体積の割合(体積%)である。
また、温浴後の第2層のメラニン濃度、第4層の血液濃度及び第6層の血液濃度の経時変化を図9に示し、炭酸浴後の第2層のメラニン濃度、第4層の血液濃度及び第6層の血液濃度の経時変化を図10に示す。図9及び図10において縦軸は体積分率である。
図7から、第4層の血液濃度は温浴で急激に上昇し、10分後には温浴前に戻っていることがわかる。これに対し、図8から、第4層の血液濃度は、炭酸浴で急激に上昇するが、その後の血液濃度の低下は温浴の場合よりも緩やかであり、血液濃度の上昇効果が持続することがわかる。
また、図9及び図10から、メラニン濃度は、温浴によっても炭酸浴によっても変化が見られず、第4層の血液濃度は、炭酸浴が温浴に比べて上昇率が高く、上昇した血液濃度の持続時間も長いこと、第6層の血液濃度は、温浴では上昇しないが、炭酸浴では上昇することがわかる。

Claims (5)

  1. 皮膚組織を形成する所定の深さの層における色素濃度の推定方法であって、
    皮膚組織の層状モデルに対して色素濃度を変えて光伝搬のシミュレーションを行うことにより色素濃度が異なる複数の分光反射率Rs(λ)を算出し、
    色素濃度が異なる複数の分光反射率Rs(λ)から、分光反射率の平均スペクトルRs_ av 又は吸光度の平均スペクトルAs_ av を求め、一方、皮膚組織の吸光度を、皮膚組織の層状モデルの色素含有層内の色素による吸収係数の多項式で表した吸光度関数Z(λ)を設定し、
    吸光度関数Z(λ)を、吸光度の相対スペクトル又は反射率の相対スペクトルとフィッティングすることにより吸光度関数Z(λ)の各項の係数を定めた相対吸光度関数Z’(λ)を得、ここで吸光度の相対スペクトルは吸光度スペクトルから吸光度の平均スペクトルAs_ av を差し引いたものであり、反射率の相対スペクトルは分光反射率Rs(λ)から分光反射率の平均スペクトルRs_ av を差し引いたものであり、
    被験者の皮膚の分光反射率Rm(λ)を測定し、
    分光反射率Rm(λ)と相対吸光度関数Z(λ)とを、吸光度スペクトル又は反射率スペクトルとして比較することで、層状モデルの所定の色素含有層に対応した深さの層の色素濃度を推定する方法。
  2. 被験者の分光反射率Rm(λ)と相対吸光度関数Z’(λ)とを比較する場合に、被験者の分光反射率Rm(λ)を吸光度スペクトルAm(λ)に変換し、被験者の吸光度スペクトルAm(λ)の平均スペクトルAm_ av を求め、被験者の吸光度スペクトルAm(λ)から平均スペクトルをAm_ av を差し引いた被験者の相対吸光度と相対吸光度関数Z’(λ)とを比較する請求項1記載の推定方法。
  3. 皮膚組織の層状モデルとして、メラニンを含む一つの層と、ヘモグロビンを含む深さの異なる2つの層を含む層状モデルを使用し、光伝搬のシミュレーションにおいてメラニンと深さの異なるヘモグロビンの色素濃度を変える請求項1又は2記載の推定方法。
  4. 皮膚組織の層状モデルを、第1層:上皮角質層、第2層:表皮層、第3層:真皮乳頭層、第4層:乳頭下血管網、第5層:真皮網状層、第6層:皮下血管網、第7層:皮下組織の7層モデルとし、光伝搬のシミュレーションにおいて、光学パラメータのうち屈折率、散乱係数、非等方性パラメータをそれぞれ第1層~第7層で共通の一定値とし、第1層~第7層の層厚を固定し、第2層にメラニンが含まれ、第4層と第6層にオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンが含まれるとして、第2層のメラニン濃度、第4層のオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度、第6層のオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度を変化させ、第4層と第6層の酸素飽和度を一定値に設定する請求項1~3のいずれかに記載の推定方法。
  5. 吸光度関数Z(λ)を第2層のメラニンの吸収係数と第4層のヘモグロビンの吸収係数と第6層のヘモグロビンの吸収係数の3次の多項式とする請求項4記載の推定方法。
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