JP7077821B2 - 構造体の解体方法 - Google Patents
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Description
変圧器を設置現場で解体する方法として、特許文献1には、トレイとフードを用いて変圧器を取り囲む隔離室を形成し、当該隔離室の中で変圧器を解体する技術が開示されている。
防音タンクの解体作業に特許文献1の技術を適用することにより、アスベストの飛散を抑制しつつ防音タンクを解体できる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、解体に使用する設備を簡素化すること、及び解体作業に必要なスペースを小さくすることにある。
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(A)は、原設置位置のコンクリート基礎CF1に設置された変圧器1の全体構成を説明する斜視図である。図1に例示する変圧器1は、変換前の交流が入力される高圧ブッシング2と、高圧ブッシング2と電気的に接続され、高圧ブッシング2から入力された交流の電圧を下げる油入式の変圧器本体3(被収容物)と、変圧器本体3と電気的に接続され、変圧器本体3が降圧した交流を出力する低圧ブッシング4と、変圧器本体3の収容空間SPを区画するとともに、高圧ブッシング2及び低圧ブッシング4が取り付けられた防音タンク5(構造体)と、変圧器本体3とラジエータ用配管6を介して接続され、変圧器本体3から流入した高温の油を冷却し、冷却後の油を変圧器本体3へ送出するラジエータ7と、を有している。
変圧器1は、コンクリート基礎CF1(原設置位置)に設置されている。従って、変圧器本体3、防音タンク5、及びラジエータ7は、アンカーボルト及びナットの組8等を用いて、コンクリート基礎CF1に固定されている。
本実施形態において、防音タンク5が区画する変圧器本体3の収容空間SPは、平面視が長方形の直方体形状をなしている。図1(B)の部分拡大図にも示すように、収容空間SPの内壁には、変圧器本体3から発生する音を抑制するため、吸音材としてアスベスト層11(除去対象物)を設けている。アスベスト層11は、例えば、アスベストを防音タンク5の内壁に吹き付けることによって設ける。
図1(A)に示すように、防音タンク5は、収容空間SPの側面を区画する板状の側面部材12(第1の区画部材)と、収容空間SPの天井面を区画する板状の蓋部材13(第2の区画部材)とを有する。側面部材12は、周縁にフランジ12a、12b(継手)を備えた板材であり、平面視で長方形の長辺側に位置する一対の第1側面部材12A、12Aと、平面視で長方形の短辺側に位置する一対の第2側面部材12B、12Bと、を有する。蓋部材13は、長方形状をした板状部材によって作製されており、蓋部材13の周縁部13aは、側面部材12のフランジ12aと対向する継手である。
また、第1側面部材12A及び第2側面部材12Bの下端に設けたフランジ12bは、アンカーボルト及びナットの組8によってコンクリート基礎CF1に締結されている。
ラジエータ7と対向する第1側面部材12Aには、第1側面部材12Aの厚さ方向を貫通し、ラジエータ用配管6が挿入される配管用開口部15を設けている。具体的には、上側のラジエータ用配管6Aが挿入される上側の配管用開口部15Aと、下側のラジエータ用配管6Bが挿入される下側の配管用開口部15Bとを設けている。
第2側面部材12Bの一方には、作業者用の出入口16と、当該出入口16を開閉する扉17とを設けている。従って、作業者は、出入口16を通じて防音タンク5の内外を行き来することができる。
既設の変圧器1は、新たな変圧器の設置に伴って解体、及び除却される。既設の変圧器1の解体に伴って、当該変圧器1が備える防音タンク5も解体される。防音タンク5を解体する場合には、防音タンク5に設けたアスベスト層11からアスベストが飛散する不都合を抑制する必要がある。
本実施形態は、防音タンク5の解体時において、防音タンク5そのものをアスベストの隔離室として利用し、アスベストの飛散を抑制している点に特徴を有している。すなわち、本実施形態における防音タンク5の解体方法は、変圧器本体3(被収容物)をコンクリート基礎CF1(原設置位置)に残したまま、防音タンク5(構造体)だけを移設先のコンクリート基礎CF2(他所)に移設する移設工程と、移設工程によって移設した防音タンク5からアスベスト(除去対象物)を除去する除去工程と、除去工程を行った後の防音タンク5を複数の側面部材12及び蓋部材13に解体する解体工程と、を有することを特徴とする。
防音タンク5の解体は、変圧器1の解体に伴って行われる。従って、変圧器1の解体を説明することにより、防音タンク5の解体についても説明する。
変圧器1の解体にあたり、図1(A)に示す変圧器本体3、及びラジエータ7から、冷却用の油を排出する。油の排出は、例えば、変圧器本体3の底部、及びラジエータ7の底部のそれぞれに設けたドレーン管と、各ドレーン管の途中に設けたドレーンバルブとを用いて行う。具体的には、閉状態とされていたドレーンバルブを開放することにより、変圧器本体3やラジエータ7に貯留された油を、ドレーン管を通じて外部に排出する。
次に、変圧器1から、高圧ブッシング2、低圧ブッシング4、ラジエータ7、及びラジエータ用配管6を取り外す。これにより、図2に示すように、変圧器本体3と、この変圧器本体3を収容している防音タンク5とがコンクリート基礎CF1の上に残る。なお、取り外した高圧ブッシング2、低圧ブッシング4、ラジエータ7、及びラジエータ用配管6については、除却される。
図3に示すように、取り外した蓋部材13は、仮置き場に仮置きする。仮置き場は、防音タンク5の移設先であるコンクリート基礎CF2(図4参照)とは異なる場所に設けられる。図1(B)の拡大図で説明したように、蓋部材13における収容空間SPの内壁にはアスベスト層11を設けていることから、蓋部材13を養生シート18の上に仮置きするなどして、アスベスト層11からアスベストが飛散しないようにする。また、蓋部材13が備える高圧ブッシング2用の開口部13b、及び低圧ブッシング4用の開口部13cには、アスベスト層11とは反対側の表面からシート19(例えば、プラスチックシート)を目張りして、各開口部13b、13cを塞いでおく。
図4に示すように、取り外した第1側面部材12Aは、移設先のコンクリート基礎CF2(他所)に運搬し、コンクリート基礎CF2の上において仮支えする。なお、コンクリート基礎CF2の表面には、第1側面部材12Aを移動するよりも前にビニールシートVSを敷設しておく。
仮支えに使用する支え部材21は、第1側面部材12Aを仮支えできれば制限はないが、梯子や脚立など、作業者が登れるものが好ましい。これは、後述する蓋部材13の取り付け時において、作業が容易になるためである。
次に、図5に示すように、防音タンク5から第2側面部材12Bを取り外してコンクリート基礎CF2へ移動する。第2側面部材12Bは、コンクリート基礎CF2の上において支え部材21によって仮支えをし、先に移動した第1側面部材12Aに組み付ける。本実施形態では、ボルトとナットの組14によって第1側面部材12Aのフランジ12aと第2側面部材12Bのフランジ12aとを締結する。
各側面部材12A、12Bをコンクリート基礎CF2に移設することにより、コンクリート基礎CF1の上には変圧器本体3が残置される。変圧器本体3は、コンクリート基礎CF1の上で解体された後に搬出される。なお、変圧器本体3は、解体することなく搬出してもよい。
以上の作業を行うことにより、移設先のコンクリート基礎CF2において防音タンク5の組み立てが完了する。
次に、図9に示すように、防音タンク5の扉17(出入口16)に連通するクリーンルーム25を防音タンク5の外側空間に設置する(クリーンルーム設置工程)。クリーンルーム25は、前室、洗浄室、及び更衣室を備えており、アスベストの外側空間への飛散を抑制する。
アスベスト層11を取り除いた後、解体工程を行う。解体工程では、アスベスト層11を取り除いた防音タンク5(構造体)を、複数の側面部材12及び蓋部材13(区画部材)に解体する。解体工程は、上述した手順と逆の手順で行う。簡単に説明すると、最初にクリーンルーム25を撤去し、その後、負圧集塵装置23及びダクト24を防音タンク5から搬出する。次に、防音タンク5から蓋部材13を取り外し、側面部材12を分解する。これらの蓋部材13及び側面部材12は除却する。
前述の実施形態では、コンクリート基礎CF1に設置された防音タンク5を解体し、コンクリート基礎CF2(他所)において組み立てたが、この方法に限定されるものではない。
例えば、大型クレーンで吊り下げ可能な大きさの防音タンクであれば、解体せずに移設してもよい。例えば、図11に示すように、高圧ブッシング、低圧ブッシングなどを防音タンク5’から取り外した後の移設工程において、大型クレーンCRを使用して防音タンク5’をワイヤWで吊り下げ、コンクリート基礎CF2(他所)に移設してもよい。
なお、変形例の方法においても、コンクリート基礎CF1には変圧器本体3’が残置される。残置された変圧器本体3’は、解体することなく搬出してもよいし、コンクリート基礎CF1にて解体した後に搬出してもよい。
前述の実施形態では、防音タンク5を構成する蓋部材13と側面部材12とが、ボルトとナットの組14(締結部材)によって着脱可能に締結されていたが、この構成に限定されるものではない。蓋部材13と側面部材12とは、リベットで組み付けてもよいし、溶接にて接合されていてもよい。
前述の実施形態では、防音タンク5が、1つの蓋部材13と、4つの側面部材12とによって構成されていたが、蓋部材13及び側面部材12の数は、実施形態の例に限られない。
前述の実施形態では、除去対象物がアスベストであったため、防音タンク5の出入口16に連通してクリーンルーム25を設置したが、除去対象物の種類によってはクリーンルーム25を設置しなくてもよい。
前述の実施形態では、除去対象物がアスベストであったため、防音タンク5の収容空間SP内に負圧集塵装置23とダクト24とを設置したが、除去対象物の種類によっては負圧集塵装置23等を設置しなくてもよい。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
請求項1に係る本発明は、原設置位置において、内壁の少なくとも一部に除去対象物(アスベスト)を有する収容空間(収容空間SP)内に被収容物(変圧器本体3)を収容した構造体(防音タンク5)の解体方法であって、構造体だけを他所に移設する移設工程と、他所において構造体から除去対象物を除去する除去工程と、除去工程を行った後の構造体を解体する解体工程と、を有することを特徴とする。
請求項1に係る本発明によれば、構造体を除去対象物の隔離室として利用しているので、構造体を覆う部材(フードやトレイ等)が不要となり、構造体の解体に必要な設備の低減を図ることができる。また、解体作業の省スペース化を図ることができる。
請求項2に係る本発明によれば、全体をクレーンで吊り下げることが困難な大型の構造体であっても解体することができる。
請求項3に係る本発明によれば、締結部材の着脱によって構造体を容易に解体したり、容易に組み立てたりすることができ、移設時解体工程、組立工程、及び解体工程の作業性を向上させることができる。
請求項4に係る本発明によれば、クリーンルーム設置工程によってクリーンルームを設置することにより、除去工程において除去対象物が外側空間に漏れ出す不都合を抑制できる。
請求項5に係る本発明によれば、設置工程によって収容空間内に集塵装置を設置することにより、除去工程において除去対象物が外側空間に漏れ出す不都合を抑制できる。
請求項6に係る本発明によれば、変圧器本体と、変圧器本体を収容する防音タンクとを備える変圧器の解体において、解体に必要な設備の低減を図ることができる。また、解体作業の省スペース化を図ることができる。
Claims (6)
- 原設置位置において、内壁の少なくとも一部に除去対象物を有する収容空間内に被収容物を収容した構造体の解体方法であって、
前記構造体だけを他所に移設する移設工程と、
前記他所において前記構造体から前記除去対象物を除去する除去工程と、
前記除去工程を行った後の前記構造体を解体する解体工程と、
を有することを特徴とする構造体の解体方法。 - 前記構造体は、複数の区画部材を有し、前記区画部材同士を組み付けることによって前記収容空間を区画するものであり、
前記移設工程は、
前記構造体を複数の前記区画部材に解体する移設時解体工程と、
前記移設時解体工程によって得た複数の前記区画部材を前記他所において組み立てる組立工程と、を有し、
前記解体工程では、前記構造体を複数の前記区画部材に解体することを特徴とする請求項1に記載の構造体の解体方法。 - 前記区画部材は、周縁に継手を備えた板材であり、
一の区画部材が備える前記継手と、当該一の区画部材に隣接する他の区画部材が備える前記継手とを、着脱可能な締結部材によって締結することを特徴とする請求項2に記載の構造体の解体方法。 - 前記構造体は、側面に作業者用の出入口と、当該出入口を開閉する扉と、を備えており、
前記移設工程よりも後であって前記除去工程よりも前に、前記出入口に連通するクリーンルームを当該出入口の外側空間に設置するクリーンルーム設置工程を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の構造体の解体方法。 - 前記構造体には、当該構造体の厚さ方向を貫通する開口部が形成されており、
前記移設工程よりも後であって前記除去工程よりも前に、前記移設工程によって移設した前記構造体の前記収容空間内に集塵装置を設置するとともに、当該集塵装置から延びる排気ダクトを前記構造体の前記開口部に接続する設置工程を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の構造体の解体方法。 - 前記被収容物は、交流の電圧を変換する変圧器本体であり、
前記構造体は、前記変圧器本体から生じる音を抑制する防音タンクであり、
前記除去対象物は、アスベストであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の構造体の解体方法。
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