JP7076096B2 - シリコン系薄膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱電変換素子に好適なシリコン系薄膜及びその製造方法に関する。
熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な素子として熱電変換素子が知られている。この熱電変換素子は、p型及びn型の二種類の熱電変換材料(熱電材料)を用いて構成されており、この二種類の熱電材料を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電変換素子は、両端子間に電圧を印加すれば、正孔の移動及び電子の移動が起こり、両面間に温度差が発生する(ペルチェ効果)。また、この熱電変換素子は、両面間に温度差を与えれば、やはり正孔の移動及び電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する(ゼーベック効果)。
このため、熱電変換材料は、ペルチェ効果を利用したパーソナルコンピュータのCPU、冷蔵庫、カーエアコン等の冷却用の素子としての検討や、ゼーベック効果を利用したごみ焼却炉等から生ずる廃熱を利用した発電装置用の素子としての検討が進められている。特に、自動車のエンジンの廃熱量は無視できないほど多量であるため、エンジンの廃熱を利用して発電することも検討されており、その温度域は数百度と言われている。
従来、熱電変換素子を構成する熱電材料として、BiTeが主に実用化されており、Bi-Te系の材料で例えば、n型の熱電材料を形成する際には一般にSeが添加される。しかし、これらの熱電材料を構成する元素のBi、Te及びSeは毒性が強いため、環境汚染のおそれがある。そのため、環境負荷の少ない、即ち毒性を有しない熱電材料が望まれている。また、Bi-Te系の材料は100℃程度での利用が主であり、自動車の排熱利用に対しては適していない。さらには、自動車の廃熱回収に使用するには軽量で資源的に豊富な材料が望まれている。その中でも、ケイ素化合物は資源的に豊富であり、毒性も低いことから熱電材料として注目されている。
その中でも高性能のn型の中温用熱電材料としてMgSiが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、他のケイ素化合物として、BaSiを用いた熱電素子用材料が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、導電性に関するデータのみでゼーベック係数や熱伝導率などの熱電特性は明らかとなっておらず、一般的な考え方としては、導電性を高くするほどゼーベック係数が小さく、熱伝導率が大きくなるため、単純に導電率だけを制御しても高い熱電特性は得られない。また、シリサイドを母相とし、シリコンを添加した系も提案されているが(例えば、特許文献3参照)、このような構造ではZTは0.4程度と低く、実用には耐えない。また、Ba―Si系クラスレート化合物も提案されており(例えば、特許文献4参照)、これは、Ba:Si=4.6:33.5at%のクラスレート化合物であり、かつn型半導体であることを示しているが、その特性は不明であり、有用であるか判断できない。現在、Ba-Si系材料において、どのような結晶相、どのような組成、どのような組織が熱電特性に対し有用であるかは明確となっていない。
特開2002-368291号公報 特開2015-160997号公報 特開2015-225951号公報 特開2001-335309号公報
本発明の目的は、シリコンを主原料とした、熱電特性の高い熱電変換素子用に好適な新規なシリコン系薄膜を及びそれを効率よく製造する方法を提供することにある。
上記の背景に鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、Ba-Siの組成を特定化し、かつベースとなる結晶相を特定化し、さらに組織を特定の構造とすることで高いゼーベック係数を有する熱電変換素子材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
(1)構成元素としてバリウムとシリコンを含む多結晶薄膜であって、結晶シリコン粒子とそれとは異なる相の粒子とから構成され、X線回折における最も高いピークの結晶相がシリコンであることを特徴とするシリコン系薄膜。
(2)結晶シリコン粒子の平均結晶粒子径が3nm以上1μm以下である上記(1)の薄膜。
(3)結晶シリコン粒子とは異なる相の粒子の平均粒子径が1nm以上10nm以下である上記(1)又は(2)の薄膜。
(4)結晶シリコン粒子とは異なる相の粒子が非結晶相である上記(1)ないし(3)のいずれかの薄膜。
(5)薄膜を構成するバリウムとシリコンの原子比が、各々の含有量をそれぞれBa及びSiとしたときに、下記の関係を満たす上記(1)ないし(4)のいずれかの薄膜。
0.1at%≦Ba/(Ba+Si)≦12at%
(6)構成元素として含有する酸素量が20at%以下である上記(1)ないし(5)のいずれかの薄膜。
(7)結晶シリコン粒子に対する、それとは異なる相の粒子の酸素の濃度比が下記の関係を満たす上記(1)ないし(6)のいずれかの薄膜。
1<酸素(異なる相の粒子)/酸素(結晶シリコン粒子)≦5
(8)上記(1)ないし(7)のいずれかの薄膜の製造方法であって、BaSiを主な結晶相とするスパッタリングターゲットを用いて、ターゲット-基板間距離を100mm以上とし、400℃以上700℃以下で成膜することを特徴とする製造方法。
(9)成膜した後に、不活性ガス雰囲気中、350℃以上800℃以下で熱処理を行う上記(8)に記載の薄膜の製造方法
(10)上記(1)ないし(7)のいずれかの薄膜を用いる熱電変換素子。
本発明によれば、シリコンを主原料とした、熱電特性の高い熱電変換素子に好適なシリコン系材料の薄膜、及びこれを効率よく製造するための製造方法が提供される。
実施例6で得られた薄膜についての性能指数-測定温度のプロットである。 実施例3で得られた薄膜の基板と並行方向に切断した面のTEM像である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明は、構成元素としてバリウムとシリコンを含む多結晶薄膜であって、結晶シリコン相(以下、「主相」ということもある。)粒子と、それとは異なる相(以下、別相という。)粒子とから構成され、X線回折における最も高いピークの結晶相がシリコンであることを特徴とする薄膜材料にある。
ここでの薄膜とは、厚みが0.1mm以下である自立性を有するもの、若しくは自立せずに基体または基板などに製膜された膜を指し、その厚みは均一であることが好ましい。
ここでいう、最も高いピークとは、基体または基板起因のピークを除いた、薄膜起因によるピークのうち、最も高いピークを指す。
高い熱電変換性能を持つ材料を考える上で、高いゼーベック係数を維持しつつ、電気伝導率と低い熱伝導率を両立することは極めて重要である。本発明の薄膜では、それを実現するに当たり、特にバリウムとシリコンを有するが、バリウムは原子量約137の重元素であり、原子量が大きいほど熱伝導を司るフォノンの伝達が低下するため熱伝導率が減少する。一方、シリコンは半導体に最もよく使われている元素であり、元素添加により導電性付与が比較的容易である。
高い電気伝導率を示すためには、シリコンが結晶化していることが必要である。結晶化することで、より高い電気伝導度を実現することが可能となる。また、その電気伝導を発現するためにはドーパントが含有されていることが好ましいが、フォノンの伝達を抑制し、かつ電気伝導度を高めるため、バリウムがシリコン結晶内に特定量存在することが好ましい。さらに、薄膜は多結晶薄膜であることを特徴とする。単結晶では別相が点在することが困難であり、熱電素子として必要な特性を実現することは困難である。
本発明の薄膜が有する結晶相は、X線回折測定により確認することができる。例えば、Cuを線源とするX線回折測定(以下、XRDという。)において検出される回折ピークを、それぞれの結晶相に対応するJCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)のカードデータと照合することで確認可能である。
ここで、シリコンが結晶化しているとは、薄膜のXRDパターンにおいて、シリコン相に起因する回折ピークが確認でき、かつ、その回折ピーク群における最大強度を示す回折ピークがシリコン相に起因するピークであることを示す。例えば、XRD測定においてJCPDSカードを用いて結晶相の同定を行う場合、例えばカードNo.Si:01-077-2110における(220)面、回折角47.313°における回折ピークを、シリコンの回折ピークとする。
また、本発明は、結晶シリコンとは別の相の粒子が存在することを特徴とする。別相は主に熱伝導を阻害するために必要であり、シリコンとは別の相である必要がある。本発明において、別相は、XRD測定によりハローが観察される非晶質体、またはBaSi若しくはBaSi等のBaSi系合金を例示できる。前記非晶質体はシリコンまたはバリウムの少なくともいずれかを含んでいればよい。
シリコン結晶の平均粒子径は3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがさらに好ましい。3nmより小さい場合、粒界の部分が相対的に多くなり、全体の結晶性が低下し、結果として電気伝導度が低下してしまう。さらに、上記平均粒子径は1μm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、さらに50nm以下であることが好ましく、最も好ましくは20nm以下である。上記の平均粒子径とすることで、第2成分である別相による熱伝導低下効果を効果的に示すことが可能となり、熱起電力も高い数値を示すことが可能となる。
別相の平均粒子径は1nm以上10nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上5nm以下、さらに好ましくは2nm以上4nm以下である。上記の範囲とすることで電気伝導を阻害せずに熱伝導を低く抑え、高いゼーベック係数を示すことが可能となる。
ここで、シリコン結晶及び別相のいずれの平均粒子径も、中央値、いわゆるメディアン径(D50)を表す。粒子径は電子顕微鏡観察により得られた画像における計測により算出できる。
上記の別相はシリコン結晶相以外の様々な相が考えられるが、非結晶質であることが好ましい。非結晶質とすることで、特に熱伝導率の抑制、並びに高いゼーベック係数を維持することが可能となる。
本発明の薄膜は、それを構成するバリウムとシリコンの原子比が、各々の含有量を、それぞれ、Ba、及びSiとしたときに、Ba/(Ba+Si)が、0.1at%以上が好ましく、0.3at%以上がより好ましく、さらに、0.5at%以上が好ましい。
上記Ba/(Ba+Si)が0.1at%以上とすることで、バリウムが結晶シリコン中に固溶しつつ、別相を析出させることが可能となり、電気伝導度の向上、熱伝導率の低減、ゼーベック係数の向上を可能とする。これに対して、Ba/(Ba+Si)が0.1at%より小さい場合、それらの効果が低下する。
一方、Ba/(Ba+Si)は、12at%以下が好ましく、8at%以下がより好ましく、6at%以下がさらに好ましく、4at%以下が最も好ましい。
上記Ba/(Ba+Si)が12at%以上になると別相の割合が増加し、電気伝導度が低下することや、シリコンではない別の結晶相となるため、所望する膜構造を得ることができない。
薄膜は、構成元素として含有する酸素含有量が20at%以下であることが好ましく、より好ましくは15at%以下である。そうすることで、高い結晶性のシリコン結晶を維持することができる。また、酸素含有量は5at%以上であることが好ましく、より好ましくは8at%以上である。それだけの酸素を含有することで、微結晶となっても結晶性を維持することが可能であり、また、別相においても、酸素を多く含有することで、結晶が崩れて非晶質となり、より熱伝導を阻害することが可能となる。
本発明の薄膜は、シリコンの多結晶相粒子に対し、別相の粒子にBaが偏析した構造を有し、シリコンの多結晶相(主相)と別相のBa濃度比(Ba(別相)/Ba(主相))が、1より大きく、30以下であるのが好ましく、5以上、20以下であるのがより好ましく、7以上、15以下であるのがさらに好ましい。
上記のように、必要最小限のBaをシリコン多結晶層に存在させ、別相にBaを偏析させることで、別相を酸化しやすい構造とすることができる。別相を意図的に結晶として不安定なBa-Si-O相とすることで非晶質化させ、かつシリコン結晶層の結晶性は向上させることが可能となる。
また、本発明の薄膜は、シリコンの多結晶相粒子に対する、別相の粒子の酸素の濃度比(酸素(別相)/酸素(主相))が、1より大きく、5以下であるのが好ましく、1より大きく、3以下であるのがより好ましく、1より大きく、2以下であるのがさらに好ましい。
上記のように酸素濃度に差をつけることで、シリコンの結晶性を維持しつつ、別相を非晶質とし、熱電特性を向上させることが可能となる。
シリコンの多結晶相のピークの中で最も高いピークと2番目に高いピークとの強度比が5以上であることが好ましく。より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは20以上である。そうすることで、結晶の方位が揃った薄膜を得ることができ、電気伝導性を向上させることが可能となる。ここでのピーク強度は、下記の式により求めた。
ピーク強度=(最大ピーク値-(測定域のバックグラウンド平均値))
本発明の薄膜では、シリコンの多結晶相のピークの中で、最も高いピークが(220)面であることが好ましい。特に(220)面に配向させることで、より導電性を向上させることが可能となる。
本発明の薄膜は、基体上に成膜されていることが好ましい。基体は板状の基板であっても、その他複雑形状物であってもよい。基体の材質は特に限定されないが、ガラス基板、サファイア基板、石英基板、シリコン基板などが好ましい。
本発明の薄膜の厚みは10nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。そうすることで、より熱電特性を発揮できるようになる。また、厚みは500μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。
本発明の薄膜は、上記の構造を満たすことで電気伝導度として1×10S/cm以上2×10S/cm以下を示し、高い熱電特性を示す。
また、その出力因子(パワーファクター、PF)は下記の式で表され、室温から700℃まで変化させた際に、最大で0.05×10-3W/mK以上を示す。なお、式中、Sはゼーベック係数であり、σ:は電気伝導度((W/mK)である。
PF=S×σ
さらに、性能指数(ZT)は下記の式で表され、室温から700℃まで変化させた際に、最大で0.02以上を示す良好な熱電特性を示す薄膜が得られる。なお、式中、Sはゼーベック係数であり、σは電気伝導度((W/mK)であり、κは熱伝導率(無次元)である。
ZT=S×σ/κ
次に、本発明の薄膜の製造方法について説明する。ここではその一例を示すが、必ずしもその方法による必要はない。
本発明の薄膜の製造方法としては、蒸着法、塗布法等様々あるが、その中でもスパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。
本発明の薄膜を得るためには、成膜温度を400℃以上700℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以上650℃以下である。そうすることで、結晶化はするが、結晶成長が小さいため、シリコンの微結晶を発生させることが可能となる。さらに、成膜時に結晶成長させることで、配向性の高い膜を得ることが可能となる。高温で成膜することで個々の微結晶の結晶性が向上し、電気伝導度が向上する。さらに、添加物であるバリウムが安定的に存在しやすくなる。
本発明の薄膜は、成膜後に、熱処理を行うことが好ましい。かかる熱処理を行うことで、結晶粒子径を変化させずに、添加元素であるバリウムを偏析させることが可能となる。その熱処理の温度は350℃以上800℃以下であることが好ましく、より好ましくは450℃以上800℃以下、さらに好ましくは600℃以上800℃以下である。上記の温度範囲とすることで、粒子径を好ましい範囲にした上でバリウム偏析を促進し、シリコンの結晶性も向上させることが可能となる。
熱処理の雰囲気は過剰に酸素を入れないため、不活性雰囲気中、例えば1vol%以下の酸素を含む不活性ガス(He、Ar、N等)雰囲気中で熱処理することが好ましい。
スパッタリングで用いるターゲットは特に限定されないが、バリウム-シリコン系化合物が好ましい。そうすることで、均一な組成の膜を得ることが可能となる。様々なバリウム-シリコン化合物が考えられるが、比較的安定的なBaSiを用いることが好ましい。
さらに、スパッタリングでは、意図的に酸素を導入することが好ましい。そのため、スパッタガスとして酸素を用いることなどが挙げられるが、スパッタリングターゲット中に一定量の酸素を含むことが好ましい。その酸素量は1at%以上20at%以下であることが好ましく、より好ましくは3at%以上15at%以下、さらに好ましくは10at%以上14at%以下である。
また、ターゲットと基板の角度を50°~70°とすることが好ましい。そうすることで、バリウム-シリコン系において、微細構造を持つ膜が成長しやすくなる。
スパッタリング装置内において、基板は台座中央部または台座の端部のいずれに設置してもよい。台座に対する基板の設置位置により、BaSiのスパッタ時の元素飛散状態が変化し、Ba/Si比に違いを生じる。このため、基板は、好ましくは台座中央部に設置される。
スパッタガス圧は低ガス圧であることが好ましく、1.5Pa以下であることが好ましく、より好ましくは0.5Pa以下であり、さらに好ましくは0.3Pa以下である。ガス圧を低下させることで、スパッタ粒子のエネルギーを基板まで到達しやすくし、より高い結晶性、配向性の膜とすることが可能となる。上記ガス圧は0.05Pa以上が好ましく、さらに好ましくは0.1Pa以上である。その範囲とすることで安定的に放電が可能となる。
スパッタリングで、用いるガスは不活性ガスならば特に規定しないが、Ar、Ne、窒素などが好ましく、より好ましくはArである。
放電電力は1W/cm以上であることが好ましく、より好ましくは2W/cm以上である。そうすることで安定的にバリウムと珪素がスパッタされ、均一な膜が形成される。上限としては20W/cm以下が好ましい。そうすることでターゲットの強度が低くても割れることなく放電が可能となる。
スパッタリングで用いるターゲットはバリウムとシリコンを含有するものならば特に限定しないが、バリウムは大気中で酸化されやすいなど不安定な性質であるため、均一に合金化されていることが好ましい。その中でも比較的酸化に強く、安定的な構造を持たせるため、Si/Baが2以上の合金相を持つことが好ましく、中でもBaSiのピークを持つことが好ましい。その際のSi/Ba原子量比は1.9以上2.1以下が好ましい。
なお、BaSiターゲットを用いると、好ましい含有量に対して、膜中のBa量が多くなり、求める構造の膜を得ることが困難となるけため、Baを少なくする方法が必要となる。そこで、BaとSiの原子量の違い(Ba:137.33、Si:28.09)から、スパッタリングによる原子放出時のエネルギーの違いを利用し、Ba量を調整した本発明の薄膜を作製することが可能となった。
そのためには、ターゲット-基板間の距離を調整することが必要である。その距離は100mm以上であることが好ましく、より好ましくは120mm、さらに好ましくは150mm以上である。ターゲット-基板間距離を長くとることで、Baが基板まで届き難くなり、Ba量を調整することが可能となる。
さらに、スパッタガス圧を調整することで、さらにBa量の調整が可能となる。ガス圧が低いほどArが空間中に少なくなり、Siが基板に到達し易くなるためである。
スパッタリングにおける到達真空度は1×10-3Pa以上1×10-4Pa以下であることが好ましい。この範囲とすることで、膜中に適度に装置内に残留する酸素が導入され、高い熱電特性を持つ膜を得ることが可能となる。
以下、実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(各金属組成、純度)
FIB(集束イオンビーム加工観察装置)を用いて薄膜を切断後、断面方向からTEM(透過型電子顕微鏡)-EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いて、組成比はバリウム、シリコンの合計量に対する各元素の比率として算出した。純度は検出された全金属元素中のバリウム、シリコンを合計した量が占める割合(at%)とした。
局所的な組成についてはFIBを用いて薄膜を表面と並行方向に切断後、イオンミリング法にて薄膜中心部分を剥片化し、TEM-EDSを利用して、TEMにて結晶シリコン相、別相の粒子を特定し、その粒子毎の組成比(at%)を算出した。
バリウム量=Ba/(Ba+Si)
(含有酸素量)
薄膜全体の酸素量はRBS(ラザフォード後方散乱分光法)測定により、合金中の酸素、バリウム、シリコンを合計した量に対する割合(at%)とした。
酸素量=O/(O+Ba+Si)
局所的な酸素含有量については、金属組成の測定の際と同様、EDSにより測定した。
焼結体中の酸素量は測定物を熱分解させ、酸素・窒素・水素分析装置(Leco社製)を用いて酸素量を熱伝導度法により測定し、合金中のバリウム、シリコンを合計した量に対する割合(at%)とした。
(ゼーベック係数)
被測定物を必要な形状に加工し、熱電特性評価装置(アルバック社製:ZEM-3)を用いてJIS R 1650-1に準じて室温から700℃までのゼーベック係数の測定を行った。測定雰囲気は減圧He下で実施した。
(熱伝導率測定)
ピコサーモ社製薄膜用熱伝導率測定装置(ピコ秒サーモリフレクタンス法による薄膜熱物性測定装置(PicoTR))を用い、表層に反射膜として約100nmのモリブデンを成膜後、パルス光加熱サーモリフレクタンス法の表面加熱/表面測温(FF)により、薄膜断面方向の熱浸透を計測した。得られた温度履歴曲線(位相信号)をシミュレーション計算にてフィッティングを行い、対象薄膜の熱伝導率および層間の界面熱抵抗を算出した。比熱容量は結晶シリコンを仮定し、文献値を使用した。
(X線回折測定)
一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用いた。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 2θ/θスキャン
測定間隔 : 0.01°
発散スリット: 0.5deg
散乱スリット: 0.5deg
受光スリット: 0.3mm
計測時間 : 1.0秒
測定範囲 : 2θ=20°~80°
同定する結晶相は、下記のJCPDSカードを参考に同定した。
Si:01-077-2110
BaSi:01-071-2327
BaSi:01-079-5227
(電気伝導度)
被測定物を必要な形状に加工し、熱電特性評価装置(アルバック社製:ZEM-3)を用いて、室温から700℃までの抵抗率測定を行った。測定雰囲気は減圧He下で実施した。
(出力因子、性能指数)
出力因子、性能指数は、下記の計算により求めた
出力因子(PF)=S×σ (W/mK
(S:ゼーベック係数(V/K) σ:電気伝導度(S/cm))
性能指数(ZT)=S×σ×T/κ
(T:温度(K) κ:熱伝導率(W/mK))
(平均粒子径)
局所的な組成については、FIBを用いて薄膜を表面と並行方向に切断後、イオンミリング法にて薄膜中心部分を剥片化し、TEM(透過型電子顕微鏡)により性状を観察し、シリコン多結晶相と別相の粒子径を少なくとも50個以上測定し、その中央値(D50)を算出した。
実施例1~7
スパッタリングターゲットは、50mmφBaSiターゲットを用いた。ターゲット中のBa/Si原子量比は1:2.0であった。また、含有する酸素量は5at%であり、純度は98%であった。
スパッタ条件は、表1に示した通りである。基板は回転させずに行った。その結果、薄膜の物性は表2の通りとなり、所望の特性を示す薄膜が得られた。また、得られた薄膜の熱物性を表3に示す。
実施例6で得られた薄膜に関して、ZTの温度依存性を図1に示す。また、実施例3で得られた薄膜の基板と並行方向のTEM像を図2に示す。
比較例1~2
スパッタリングターゲットは、75mmφBaSiターゲットを用いた。ターゲット中のBa/Si原子量比は1:2.0であった。また、含有する酸素量は5at%であり、純度は98%であった。
スパッタ条件は、表1に示した通りである。基板は回転させずに行った。
その結果、薄膜の物性は表2の通りとなり、所望の特性の薄膜が得られなかった。
比較例3
スパッタリングターゲットは、50mmφ多結晶シリコンを用いた。シリコンの純度は99,999%であった。
スパッタ条件は、表1に示した通りである。基板は回転させずに行った。その結果、薄膜の物性は表2の通りとなり、所望の特性の薄膜が得られなかった。
本発明のシリコン系薄膜は、熱電変換素子として好適に使用することができる。
Figure 0007076096000001
Figure 0007076096000002
Figure 0007076096000003
Figure 0007076096000004

Claims (9)

  1. 構成元素としてバリウムとシリコンを含む多結晶薄膜であって、結晶シリコン粒子とそれとは異なる相の粒子とから構成され、X線回折における最も高いピークの結晶相がシリコンであり、かつ、結晶シリコン粒子に対する、前記異なる相の粒子の酸素の濃度比(酸素(異なる相の粒子)/酸素(結晶シリコン粒子))が下記の関係を満たすことを特徴とするシリコン系薄膜。
    1<酸素(異なる相の粒子)/酸素(結晶シリコン粒子)≦5
  2. 結晶シリコン粒子の平均粒子径が3nm以上1μm以下である請求項1に記載の薄膜。
  3. 結晶シリコン粒子とは異なる相の粒子の平均粒子径が1nm以上10nm以下である請求項1又は2に記載の薄膜。
  4. 結晶シリコン粒子とは異なる相の粒子が非結晶相である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の薄膜。
  5. 薄膜を構成するバリウムとシリコンの原子比が、各々の含有量をそれぞれBa及びSiとしたときに、下記の関係を満たす請求項1ないし4のいずれか一項に記載の薄膜。
    0.1at%≦Ba/(Ba+Si)≦12at%
  6. 構成元素として含有する酸素含有量が20at%以下である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の薄膜。
  7. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の薄膜の製造方法であって、
    BaSiを主な結晶相とするスパッタリングターゲットを用いて、ターゲット-基板間距離を100mm以上とし、かつ400℃以上700℃以下で成膜することを特徴とする製造方法。
  8. 成膜した後に、不活性ガス雰囲気中、350℃以上800℃以下で熱処理を行う請求項に記載の薄膜の製造方法。
  9. 請求項1ないしのいずれか一項に記載の薄膜を用いる熱電変換素子。
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