以下、本発明の車両の制御装置の実施形態について説明する。
まず、図1は、本実施形態に係る車両の制御装置10が搭載された車両1の構成を概略的に示す制御システム図である。車両1は、車内カメラ21、加速度センサ22、操作スイッチ23、アクセルペダル24、ブレーキペダル25、ステアリングセンサ26、警報音発生器31、ハザードフラッシャー32、運転支援装置33、コントロールユニット40を備える。
撮像部および後傾角検出部としての車内カメラ21は、車両1の車室内の例えば助手席側のフロントピラーに、車内カメラ21の光軸が車両1の運転者用シートを向くように取り付けられる。車内カメラ21は、車両1の運転者を側方から撮像する。車内カメラ21は、撮像した画像データをコントロールユニット40に出力する。
なお、車内カメラ21は、車両1の車室内の運転者用シートの側方の天井に、車内カメラ21の光軸が車両1の運転者用シートを向くように取り付けられてもよい。また、複数のカメラが助手席側のフロントピラー、車両1の室内の天井等に、各々の光軸が車両1の運転者用シートを向くように取り付けられてもよい。
加速度センサ22は、車両の加速度を検出する。加速度センサ22は、検出した車両の加速度をコントロールユニット40に出力する。操作スイッチ23は、作動している警報音発生器31を停止させるためのもので、運転者により操作される。アクセルペダル24は、アクセル開度を調整するもので、運転者の足により操作される。ブレーキペダル25は、ブレーキを作動させるためのもので、運転者の足により操作される。ステアリングセンサ26は、ステアリングホイールに配置され、運転者によりステアリングホイールに加えられるトルクを検出する。
車外カメラ27は、例えば、車両1のウィンドシールドに取り付けられ、自車両の走行路における白線、先行車両、および、障害物等を撮像する。車外カメラ27は、撮像した画像データをコントロールユニット40に出力する。
警報音発生器31は、例えばブザーやベルを含み、運転者に対する警報音を発生する。ハザードフラッシャー32は、橙色の全ての方向指示灯を一斉に点滅させる。運転支援装置33は、運転者による車両の運転を支援する。運転支援装置33は、自動的にブレーキを作動させて車両1を減速または停止させる機能を有してもよい。運転支援装置33は、ステアリングホイールを制御することにより車両に車線を維持させる機能を有してもよい。
コントロールユニット40は、車両の全体の動作を制御する。コントロールユニット40は、CPU41、記憶部42その他の周辺回路を含む。記憶部42は、例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスク、または他の記憶素子で構成される。記憶部42は、プログラムを保持するメモリデータを一時的に保存するメモリ等を含む。なお、記憶部42は、プログラムを保存する領域、データを一時的に保存する領域を備えた単一のメモリで構成されていてもよい。
また、記憶部42は、後述する所定分岐角度θ0、第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、所定後傾変化角としての所定トルソー変化角θ2、および、所定頭部ピッチ変化角θ3をプログラムの一部として保存している。
所定分岐角度θ0は、意識消失後に前傾あるいは後傾となる境である初期トルソー角θtの分岐角となる角度である。
第2の所定頭部ピッチ変化角θ1は、初期トルソー角が所定分岐角度θ0未満の場合(意識消失後に前傾となる場合)における、意識消失前後の運転者の運転姿勢の変化量の異常状態を判定するための閾値となる角度である。
所定トルソー変化角θ2は、初期トルソー角が所定分岐角度θ0未満の場合(意識消失後に前傾となる場合)における、意識消失前後の運転者の運転姿勢の変化量の異常状態を判定するための閾値となる角度である。
所定頭部ピッチ変化角θ3は、初期トルソー角が所定分岐角度θ0以上の場合(意識消失後に後傾となる場合)における、意識消失前後の運転者の運転姿勢の変化量の異常状態を判定するための閾値となる角度である。
なお、本実施形態において、所定分岐角度θ0、第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、所定トルソー変化角θ2、および、所定頭部ピッチ変化角θ3は、後述するシミュレーションによって算出した。
CPU41は、記憶部42に保存されているプログラムにしたがって動作することにより、姿勢測定部43、異常判定部44、計時部45、車両挙動判定部46、異常レベル判定部47、運転制御部48として機能する。
姿勢測定部43は、車内カメラ21によって撮像された画像データから、運転者の初期トルソー角θtと、初期姿勢からのトルソー角の変化量であるトルソー変化角Δθt、および、初期姿勢からの頭部ピッチ角の変化量である頭部ピッチ変化角Δθpを計測する。
ここで、トルソー角θtおよび頭部ピッチ角θpについて図2、図3を用いて説明する。図2、図3では、運転者用シート11に着座し、ステアリングホイール12を握って車両を運転している運転者13を側方から見た状態が示されている。
図2に示すように、トルソー角θtは、胴体の鉛直方向に対する傾斜角である。具体的には、トルソー角θtは、腰の下端14と首の付け根15とを結んだ直線16の鉛直線17に対する傾斜角である。
図3に示すように、ピッチ角θpは、首の付け根15と頭頂部18とを結んだ直線19の鉛直線20に対する傾斜角である。
姿勢測定部43は、テンプレートマッチング等によって抽出した運転者の腰の下端14と、首の付け根15とを検出して、トルソー角θtおよびピッチ角θpを測定する。
本実施形態では、図2に示されるように腰の下端14に対して首の付け根15が前方に水平な場合に(-90度)とし、腰の下端14に対して首の付け根15が後方に水平な場合に(+90度)としている。すなわち、本実施形態では、運転者が前傾姿勢の場合にトルソー角θtを負の値に設定し、後傾姿勢の場合に正の値に設定している。運転者が正常に運転しているときは、通常、図2に示されるように、トルソー角θtは正の値になっている。
また、図3に示されるように首の付け根15に対して頭頂部18が前方に水平な場合に(-90度)とし、首の付け根15に対して頭頂部18が後方に水平な場合に(+90度)としている。すなわち、本実施形態では、頭頂部18が首の付け根15に対して前倒れの場合に頭部ピッチ角θpを負の値に設定し、後倒れの場合に正の値に設定している。運転者が正常に運転しているときは、通常、図3に示されるように、頭部ピッチ角θpは負の値になっている。
図1にもどって、異常判定部44は、姿勢測定部43により測定された運転者の初期トルソー角θtと、記憶部42に保存されている所定分岐角度θ0を用いて、運転者が意識消失後に前方側に倒れるのか、後方側に倒れるのかを判定する。
異常判定部44は、初期トルソー角θtが、所定分岐角度θ0未満であれば、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1(例えば、55deg)以上か否かを判定する。異常判定部44は、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上であれば、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2(例えば、15deg)以上かを判定する。トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上の状態が所定時間T(本実施形態では、例えばT=1秒)以上継続すると、異常判定部44は、運転者が異常状態になっていると確定する。なお、計時部45は、ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上、かつ、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上と判定された時点から継続時間をカウントする。
異常判定部44は、計時部45によって所定時間が経過するまでに、運転者の反応がない場合は、異常レベル判定部47によって運転者の異常レベルを判定する。運転制御部48は、異常レベル判定部47によって判定された異常レベルに応じて、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを設定するとともに、該待機時間tが経過するまでに、運転者の反応がない場合は、運転支援モードに移行する。
一方、異常判定部44は、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満かつ、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上で、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2未満であれば、車両挙動判定部46によって車両挙動に異常がないかを判定する。
なお、車両挙動の異常状態を判定するパラメータとして、例えば、急加減速度、車線逸脱度、衝突余裕時間を用いる。ここで、車両の異常判定方法について簡単に説明する。
急加減速をパラメータとした場合において、車両挙動判定部46は、加速度センサにより、自車両の加速度を取得し、急加速や急減速等が発生していないかを判定する。あるいは、予め記憶部42に記憶されたペダル操作モデルから、アクセルペダルおよびブレーキペダル操作が逸脱していないかを判定する。
車線逸脱度をパラメータとした場合、車両挙動判定部46は、車線逸脱判定において、車外カメラ27等によって撮像される車線から、自車両が車線を逸脱していないかを判定する。例えば、車両の車外カメラ27の画像に基づいて、自車両の中心から車線までの距離と、自車両の中心から車体側部までの距離との差が、0m以下かどうかを判定する。また、自車両の走行路が曲線である場合においては、車外カメラ27等によって撮像される車線の曲率と、自車両のステアリングの操舵角および車速から算出される自車両の将来走行軌跡とに基づいて、自車両が車線を逸脱しないかを判定する。
衝突余裕時間をパラメータとした場合、車両挙動判定部46は、車外カメラ27等によって撮像される自車両周辺の環境の画像から、自車両と自車両周辺の先行車両や障害物とが急接近していないかを判定する。例えば、車外カメラ27の画像に基づいて、自車両から先行車両までの距離を先行車両に対する自車両の相対速度によって除算した時間である衝突余裕時間が、所定の閾値(例えば2.0秒)以下となるタイミングかどうかを判定する。この所定の閾値には、自車両が先行車両に衝突する可能性があるような衝突余裕時間が適用される。なお、本実施形態においては、自車両と先行車量との距離および相対速度を車外カメラ27の画像に基づいて判定しているが、車外カメラ27に代えてミリ波レーダ等を用いてもよい。
そして、上述の車両挙動判定部46によって判定される車両挙動の異常のうち、少なくとも1つに該当する場合、車両挙動が異常と判定され、その旨を運転者に車両挙動の異常を警報等で注意喚起する。
そして、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上、かつ、車両挙動の異常状態が所定時間T(本実施形態では、例えばT=1秒)以上継続すると、異常判定部44は、運転者が異常状態になっていると確定する。なお、計時部45は、ピッチ変化角Δθpが前第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上、かつ、車両挙動が異常状態と判定された時点から継続時間をカウントする。
異常判定部44は、計時部45によって所定時間が経過するまでに、運転者の反応がない場合は、異常レベル判定部47によって運転者の異常レベルを判定する。運転制御部48は、異常レベル判定部47によって判定された異常レベルに応じて、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを設定するとともに、該待機時間tが経過するまでに、運転者の反応がない場合は、運転支援モードに移行する。
一方、異常判定部44は、初期トルソー角θtが、所定分岐角度θ0以上であれば、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3(例えば、45deg)以上か否かを判定する。異常判定部44は、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3未満であれば、異常ではないと判定する。
また、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であれば、異常判定部44は、頭部ピッチ角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上の状態が所定時間T(本実施形態では、例えばT=1秒)以上継続すると、運転者が異常状態と確定する。なお、計時部45は、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上と判定された時点から継続時間をカウントする。
異常判定部44は、計時部45によって所定時間が経過するまでに、運転者の反応がない場合は、異常レベル判定部47によって運転者の異常レベルを判定する。運転制御部48は、異常レベル判定部47によって判定された異常レベルに応じて、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを設定するとともに、該待機時間tが経過するまでに、運転者の反応がない場合は、運転支援モードに移行する。
ここで、前述の所定分岐角θ0、第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、所定トルソー変化角θ2、および、所定頭部ピッチ変化角θ3のシミュレーションによる算出方法を説明する。
まず、本件出願人は、運転者の運転姿勢は、意識消失状態において、前方側に倒れ込む場合と、後方側に倒れ込む場合があることに着目し、シミュレーションを行った。
まず、図4を参照しながら、所定分岐角度θ0について説明する。図4には、初期トルソー角θtに対する、意識消失直後のトルソー角および頭部ピッチ角の初期姿勢からの変化角であるトルソー変化角Δθtおよび頭部ピッチ変化角Δθpが示されている。なお、シミュレーションでは、各変化角Δθt、Δθpとして、初期姿勢から姿勢変化が始まって500ms後の変化角度を用いた。
シミュレーション結果によれば、初期トルソー角θtが後傾側になるにつれて、トルソー変化角Δθtが小さくなる傾向にあることがわかる。特に、初期トルソー角θtが25degと40degとの間では、トルソー変化角Δθtが20degから5degへと大きく変化している。
上述のシミュレーション結果より、運転者が前方側に倒れ込むか、後方側に倒れ込むかの倒れ込み方向の分岐角となる初期トルソー角(初期後傾角)が、所定分岐角度θ0(例えば、35deg~40degの間の所定角)であること算出した。
さらに、本願出願人は、上述の算出された所定分岐角度θ0を境に、前方側に倒れ込む場合と、後方側に倒れ込む場合とにおいて、意識消失後の運転者の姿勢における特徴が異なるものであるのではないかと考え、仮説の下、シミュレーションを行った。
図5は、そのシミュレーション結果を示すもので、(a)(b)初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満と、(c)(d)初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上の場合とにおける、運転者の正常時と意識消失後の状態の運転姿勢を比較したものである。
これによると、意識消失後の状態において前方側に倒れ込む場合(初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満の場合)、トルソー角および頭部ピッチ角は、共に初期姿勢から大きく前傾し、トルソー変化角Δθt1および頭部ピッチ変化角Δθp1がそれぞれ所定角以上であった。
一方、意識消失後の状態において後方側に倒れ込む場合(初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上の場合)、トルソー変化角Δθt2が明確に取れなくなること、および、頭部ピッチ変化角Δθpが、初期トルソー角θtが所定分岐角θ0未満の場合に比して前傾度合いが小さくなるという第2の知見を得た。
具体的には、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満の場合、図5(a)および(b)に示すように、意識消失前(a)のトルソー角θt11は、鉛直方向から後傾側となるのに対し、意識消失後(b)のトルソー角θt12は、鉛直方向から前方側に変化する。トルソー変化角Δθt1=θt11+θt12で変化している。
また、意識消失前(a)の頭部ピッチ角θp11は、鉛直方向から前傾側になり、意識消失後(b)の頭部ピッチ角θp12は、意識消失前の頭部ピッチ角θp11よりもさらに前傾側に変化する。頭部ピッチ変化角Δθp1=θP12-θp11で変化している。
一方、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上の場合、図5(c)および(d)に示すように、意識消失前(a)のトルソー角θt21は、鉛直方向から後傾側であり、意識消失後(b)のトルソー角θt22も、鉛直方向から後傾側に変化する。その結果、トルソー変化角Δθt2=θt22-θt21で変化するため、図5(d)のΔθt2に示すように、トルソー変化角Δθt2が明確に取れていない。
また、意識消失前(a)の頭部ピッチ角θp21は、鉛直方向から前傾側になり、意識消失後(b)の頭部ピッチ角θp22は、意識消失前の頭部ピッチ角θp21よりもさらに前傾側に変化する。したがって、頭部ピッチ変化角Δθp2=θP22-θp21で変化するが、トルソー変化角Δθt2が小さいことに伴って、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満の場合に比して、頭部ピッチ変化角Δθpが小さくなっている。
なお、上述の知見は、トルソー角を用いたが、シートバック等の運転者のトルソー角に反映される運転者の胴体の後傾角を用いても、同様な傾向が得られる。
次に、図6を参照しながら、第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、所定トルソー変化角θ2、および、所定頭部ピッチ変化角θ3の設定方法について説明する。
本願出願人は、周知の通り、前方側の加速度が発生する場合、運転者は後方側(シートバック側)に押し付けられるため、意識消失前後の姿勢変化においても前傾側の変化が抑制されると考え、前述の所定変化角θ1、θ2、θ3に前後加速度の影響を加味した閾値とすることとした。そのため、前後加速度を与えた場合の意識消失前後における運転者の姿勢変化をシミュレーションによって算出したので説明する。なお、本実施形態では、以下のシミュレーション結果で得られた値を記憶部42に予め記憶される所定の変化角θ1、θ2、θ3として用いている。
シミュレーションのモデルとして、運転者を標準トルソー角(例えば、25deg)で座らせ、前後加速度を与えた場合における、運転者の意識消失前後の姿勢変化のパラメータとしてトルソー変化角および頭部ピッチ変化角を算出した。
このシミュレーションによると、図6(a)に示すように、前後加速度0Gにおけるトルソー変化角Δθtは、25degであるのに対し、前後加速度+0.1Gにおけるトルソー変化角Δθtは、20degを下回り、図6(b)に示すように、前後加速度0Gにおける頭部ピッチ変化角Δθpは、75degであるのに対し、前後加速度+0.1Gにおける頭部ピッチ変化角Δθpは、60degであることを確認した。
以上の結果から、異常状態を判定するための閾値としての所定変化角θ1、θ2に、前後加速度0Gのトルソー変化角(25deg)および頭部ピッチ変化角(75deg)を用いた場合、前後加速度+0.1Gにおける異常状態を正常であると誤判定する可能性があることがわかる。
したがって、本実施形態では、前後加速度0.0Gの場合の閾値よりも小さい値となる、前後加速度0.1Gにおける異常状態のトルソー変化角および頭部ピッチ変化角を加味するために、第2の所定頭部ピッチ変化角θ1を55degとし、所定トルソー変化角θ2を15degに設定することとした。
また、前述のように、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上の場合(意識消失後に後方側に倒れ込む場合)においては、意識消失前後のトルソー角の変化が見られず、これに伴いピッチ角の変化も小さくなる。したがって、所定頭部ピッチ変化角θ3は、前述の第2の所定頭部ピッチ変化角θ1(55deg)よりも小さい所定角度(例えば45deg)とした。
次に、コントロールユニット40による運転者の異常レベル判定動作を図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、図7のフローチャートのステップS101で、車内カメラ21からの運転者の画像から運転者のトルソー角θtを検出し、トルソー角θtを判定する。
ステップS102において、姿勢測定部43は、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0(例えば、35deg~40degの間の所定角度)以上か否かを判定する。
異常判定部44は、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満であれば、処理をステップS103に進める。一方、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上であれば、処理をステップS104に進める。
ステップS103において、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1(例えば55deg)以上かどうかを判定する。頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1未満の場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。
一方、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1以上の場合は、ステップS105に進み、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上かどうかを判定する。トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2未満の場合は、ステップSS106に進める。
ステップS106では、車両挙動判定部46によって、上述した車両挙動判定方法(急加減速度、車線逸脱度、衝突余裕時間)に基づいて運転者の車両挙動が異常かどうかを判定する。車両挙動が異常状態でない場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。一方、車両挙動が異常状態である場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態であると判定し、ステップS107に進める。
また、ステップS105で、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上の場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態であると判定し、ステップS107に進める。
ステップS102において、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上である場合は、ステップS104に進める。ステップS104において、異常判定部44は、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であるか否かを判定する。頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であれば、異常判定部44は、処理をステップS107に進める。一方、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3未満であれば、異常判定部44は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。
ステップS107において、計時部45は、経過時間をカウントする。この経過時間は、異常判定部44が運転者が異常状態であると判定された時点からの経過時間である。具体的には、ステップS105でトルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上であると判定された時点、ステップS106で車両挙動が異常状態であると判定された時点、および、ステップS104で頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であると判定された時点からの経過時間である。
ステップS107において、計時部45は、カウントしてる経過時間が所定時間T(例えば、1秒)に達したか否かを判定する。経過時間が所定時間に達していれば、計時部45は、処理をステップS108に進める。一方、経過時間が所定時間に達していなければ、計時部45は、処理をステップS109に戻す。
ステップS108において、異常判定部44は、運転者が異常状態であると確定するし、処理をステップS109に進める。
ステップS109において、異常レベル判定部47は、運転者の姿勢の変化速度に基づいて、異常レベルを判定する。
ここで、異常レベルを判定するための姿勢の変化速度について、シミュレーションを行ったので説明する。
図8に示すように、本願出願人は、上述の運転者の異常状態の程度によって、運転者の運転姿勢が変化する変化速度が変化することに着目し、シミュレーションを実施した。
なお、シミュレーションでは、意識消失状態ではないときの運転者のトルソー角の変化と、緊急度が高い急な意識消失が発生したときの運転者のトルソー角の変化を算出した。運転姿勢の変化速度として、運転者のトルソー角が、通常の運転姿勢のトルソー角の範囲から逸脱し、所定のトルソー角に至るまでの時間を変化時間として算出した。
図8(a)には、意識消失状態ではない場合において、運転者の運転姿勢が、通常姿勢のトルソー角の範囲θt0から逸脱した時点t1と、所定のトルソー角θt1に至った時点t2とから、運転者の運転姿勢の変化速度として、変化時間Δt1を算出した結果が示されている。
一方、図8(b)には、緊急度が高い急な意識消失が発生した場合において、運転者の運転姿勢が、通常姿勢のトルソー角の範囲θt0から逸脱した時点t11と、異常状態と判定されるトルソー角θt1に至った時点t12とから、運転者の運転姿勢の変化速度として、変化時間Δt2を算出した結果が示されている。
図8の(a)、(b)におけるトルソー角の変化時間Δt1、Δt2を比較すると、緊急度の高い急な意識消失状態が発生した場合の方が、変化時間が短く、通常姿勢から1秒以内に運転姿勢が所定のトルソー角θt1まで変化していることがシミュレーションにより確認された。なお、シミュレーション結果は、トルソー角を用いているが、頭部ピッチ角においても同様の結果が得られる。
図7のフローチャートにもどって、上述のシミュレーション結果に基づいて、ステップS109において、変化時間Δtが2秒よりも小さい場合は、異常レベル判定部47は、処理をステップS110に進めるとともに異常レベルをレベル1と判定し、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを3秒とする。
ステップS109において、変化時間Δtが1秒以上2秒未満の場合は、異常レベル判定部47は、処理をステップS111に進めるとともに異常レベルをレベル2と判定し、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを2秒とする。
ステップS109において、変化時間Δtが1秒未満の場合は、異常レベル判定部47は、処理をステップS112に進めるとともに異常レベルをレベル3と判定し、運転支援モードに移行するまでの待機時間tを0秒とする。
なお、この待機時間の間、警報音発生器31およびハザードフラッシャー32によって、運転者および車外へ注意喚起を促す。
図9には、異常レベルに対するトルソー角の変化時間と、頭部ピッチ角の変化時間と、運転支援モード移行までの待機時間の一例を示している。
続くステップS113において、運転者の反応の有無を確認する。具体的には、異常レベルに応じた待機時間tが経過するまでの間に、運転者の反応があり、例えば、警報音を解除するための操作スイッチ23の操作があった場合は、異常判定を解除するとともに、処理を終了する。
一方、ステップS113において、異常レベルに応じた待機時間tが経過するまでの間に運転者の反応がない場合は、異常判定部44は処理をステップS114に進める。ステップS114において、運転制御部48は、運転支援装置33を作動させる。その後動作は終了する。
本実施形態では、運転者の後傾角度として、トルソー角を用いたが、トルソー角に代えてシートバック角度を用いてもよい。例えば、シートバックに対して、ヒップポイントは前へ出るため、後傾角度は、シートバック角度よりもトルソー角の方が大きな値となる。
(第2実施形態)
次に、図1、図10、および、図11を参照しながら第2実施形態における車両の制御装置について説明する。なお、図1に示す第1実施形態と同様の構成については、図10および図11において同一の符号を用いるとともに、説明を省略する。
この実施形態では、異常レベル判定動作が、第1実施形態と異なる。具体的には、第1実施形態の異常レベルを判定するための運転姿勢の変化速度に代えて、運転姿勢の変化量を用いている。なお、その他の部分は、上述の実施形態と同様の構成であり、第1実施形態同様の効果が得られる。
ここで、第2実施形態の異常レベルを判定するための運転姿勢の変化量について、シミュレーションを行ったので説明する。
本願出願人は、上述の運転姿勢の異常状態の程度によって、運転者の運転姿勢の変化量が変化することに着目し、シミュレーションを実施した。なお、シミュレーションでは、運転者の運転姿勢の変化量として、頭部ピッチ変化角およびトルソー変化角を用いて計測した。
図10には、(a)運転者の前傾側の姿勢変化、および、(b)運転者の後傾側の姿勢変化におけるシミュレーション結果が示されている。
図10(a)では、異常レベルの比較的低い安全確認による前傾姿勢では、トルソー変化角が15deg以上となることが確認された(異常レベル1)。また、前述の安全確認の姿勢(異常レベル1)よりも異常レベルの高い状態である眠気やスマホ操作による運転姿勢では、頭部ピッチ変化角が55deg以上となることが確認された(異常レベル2)。そして、意識消失に至るさらに異常レベルの高い状態では、頭部ピッチ変化角が55deg以上であるとともに、トルソー変化角が15deg以上であることが確認された(異常レベル3)。
図10(b)では、異常レベルの比較的低い後部座席やセンターコンソールの物入れ等から物を取るような動作では、トルソー変化角が20deg以上となることが確認された(異常レベル1)。また、前述の異常レベル1よりも異常レベルの高い状態である眠気やスマホ操作による運転姿勢では、頭部ピッチ変化角が45deg以上となることが確認された(異常レベル2)。そして、意識消失に至るさらに異常レベルの高い状態では、頭部ピッチ変化角が45deg以上であるとともに、トルソー変化角が20deg以上であることが確認された(異常レベル3)。
第2実施形態においては、上述のシミュレーション結果に基づいて、異常レベルが設定されている。
コントロールユニット40による運転者の異常レベル判定動作を図11のフローチャートを用いて説明する。
まず、図11のフローチャートのステップS201で、車内カメラ21からの運転者の画像から運転者のトルソー角を検出し、トルソー角を判定する。
ステップS202において、姿勢測定部43は、トルソー角θtが所定分岐角度θ0(例えば、35deg~40degの間の所定角度)以上か否かを判定する。
異常判定部44は、トルソー角θtが所定分岐角度θ0未満であれば、処理をステップS203に進める。一方、トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上であれば、処理をステップS204に進める。
ステップS203において、頭部ピッチ変化角Δθpが前側所定頭部ピッチ変化角θ1(例えば55deg)以上かどうかを判定する。頭部ピッチ変化角Δθpが前側所定頭部ピッチ変化角θ1未満の場合は、異常判定部44は、ステップS205に進み、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上かどうかを判定する。ステップS205においてトルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2未満である場合は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。一方、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上である場合は、上述のシミュレーション結果に基づいて、ステップS206に進み、異常レベル1と判定されるとともに運転支援モードへの移行の待機時間tを3秒に設定される。
一方、ステップS203において、頭部ピッチ変化角Δθpが前側所定頭部ピッチ変化角θ1以上の場合は、ステップS207に進み、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2(例えば15deg)以上かどうかを判定する。トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2未満の場合は、ステップS208に進める。
ステップS208では、車両挙動判定部46によって、上述した車両挙動判定方法(急加減速度、車線逸脱度、衝突余裕時間)に基づいて運転者の車両挙動が異常かどうかを判定する。車両挙動が異常状態でない場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。一方、車両挙動が異常状態である場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態であると判定し、ステップS209に進める。
また、ステップS207で、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上の場合は、異常判定部44は、運転者が異常状態であると判定し、ステップS209に進める。
ステップS202において、初期トルソー角θtが所定分岐角度θ0以上である場合は、ステップS204に進める。ステップS204において、異常判定部44は、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3(例えば45deg)以上であるか否かを判定する。頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であれば、異常判定部44は、処理をステップS209に進める。一方、頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3未満であれば、異常判定部44は、ステップS210に進み、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ4(例えば、20deg)以上かどうかを判定する。ステップS210においてトルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ4未満である場合は、運転者が異常状態ではないと判定し、処理を終了する。一方、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ4以上である場合は、上述のシミュレーション結果に基づいて、ステップS211に進み、異常レベル1と判定されるとともに運転支援モードへの移行の待機時間tを3秒に設定される。
ステップS209において、計時部45は、経過時間をカウントする。この経過時間は、異常判定部44が運転者が異常状態であると判定された時点からの経過時間である。具体的には、ステップS207でトルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上であると判定された時点、ステップS208で車両挙動が異常状態であると判定された時点、および、ステップS204で頭部ピッチ変化角Δθpが所定頭部ピッチ変化角θ3以上であると判定された時点からの経過時間である。
ステップS209において、計時部45は、カウントしている経過時間が所定時間T(例えば、1秒)に達したか否かを判定する。経過時間が所定時間に達していれば、計時部45は、処理をステップS212に進める。一方、経過時間が所定時間に達していなければ、計時部45は、処理をステップS201に戻す。
ステップS212において、異常判定部44は、運転者が異常状態であると確定し、処理をステップS213に進める。
ステップS213において、異常レベル判定部47は、上述のシミュレーション結果に基づいて、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、θ3以上かどうか、および、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上かどうかを判定する。
ステップS213において、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、θ3以上、かつ、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2未満である場合は、ステップS214に進み、異常レベルをレベル2と判定し、運転支援モードに移行する迄の待機時間tを2秒とする。
ステップS213において、頭部ピッチ変化角Δθpが第2の所定頭部ピッチ変化角θ1、θ3以上、かつ、トルソー変化角Δθtが所定トルソー変化角θ2以上である場合は、ステップS215に進み、異常レベルをレベル3と判定し、運転支援モードに移行する迄の待機時間tを0秒とする。
なお、ステップS206、S211、S214、S215で設定された待機時間の間、警報音発生器31およびハザードフラッシャー32によって、運転者および車外へ注意喚起を促す。
続くステップS216において、運転者の反応の有無を確認する。具体的には、異常レベルに応じた待機時間tが経過するまでの間に、運転者の反応があり、例えば、警報音を解除するための操作スイッチ23の操作があった場合は、異常判定を解除するとともに、処理を終了する。
一方、ステップS216において、異常レベルに応じた待機時間tが経過するまでの間に運転者の反応がない場合は、異常判定部44は処理をステップS217に進める。ステップS217において、運転制御部48は、運転支援装置33を作動させる。その後動作は終了する。