以下に、図1~図33を参照しながら、本発明に係る距離測定装置、移動体、距離測定方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
[第1の実施形態]
(距離測定装置の全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る距離測定装置の全体構成の一例を示す図である。図1を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100の全体構成について説明する。
本実施形態に係る距離測定装置100は、例えば、移動体としての車両に搭載され、レーザ光を投光(射出)し、物体(例えば、先行車両、停車車両、障害物または歩行者等の対象物)で反射(散乱)された光(反射光)を受光して当該物体の有無、および、当該物体までの距離等の物体に関する情報を出力する走査型レーザレーダである。距離測定装置100は、例えば、搭載された車両のバッテリ(蓄電池)から電力の供給を受ける。
図1に示すように、距離測定装置100は、LD(Laser Diode)10と、LD駆動部12と、投光光学系20と、受光光学系30と、検出系40と、時間計測部45と、制御部46と、物体認識部47と、記憶部48と、通信部49と、同期系50と、を備えている。
LD10は、端面発光レーザとも呼ばれ、LD駆動部12により駆動されてレーザ光を発光する半導体レーザである。なお、LD10は、LDの他、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)、有機EL(Electro-Luminescence)素子、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の他の発光素子を用いてもよい。
LD駆動部12は、制御部46から出力されるLD駆動信号(矩形パルス信号)を用いてLD10を点灯(発光)させる装置である。LD駆動部12は、例えば、LD10に電流を供給可能に接続されたコンデンサ、当該コンデンサとLD10との間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタ、および、当該コンデンサを充電可能な充電手段等を含む。LD駆動信号がLD駆動部12に入力されると、LD駆動部12からLD10に駆動電流が印加され、LD10からレーザ光が発光される。
なお、LD10の安全性および耐久性の観点から、LD10の発光のデューティ比が制限されるため、レーザ光のパルスはパルス幅が狭い方が望ましく、該パルス幅は、一般に数[ns]~数十[ns]程度に設定される。また、レーザ光のパルス間隔は、一般に数十[μs]程度である。
投光光学系20は、LD10から発光されたレーザ光を距離測定装置100外に射出させ、当該レーザ光を偏向させて走査する光学系である。投光光学系20の詳細については、図2で後述する。
受光光学系30は、投光光学系20から射出されたレーザ光が物体で反射された反射光を距離測定装置100内に取り込んで結像させる光学系である。受光光学系30の詳細については、図3で後述する。
検出系40は、レーザ光が物体で反射され、受光光学系30により受光された反射光を電圧として検出する部品群である。検出系40は、反射検出用PD(Photo Diode)42と、検出回路44と、を有する。
反射検出用PD42は、受光光学系30が受光した反射光を検出し、当該反射光の強度に基づく電流(光電流)を出力するダイオードである。検出回路44は、反射検出用PD42により検出された反射光の強度に基づく電流を、電圧信号(検出信号)として出力する回路である。
時間計測部45は、検出回路44からの検出信号に基づいて反射検出用PD42での反射光の受光タイミングを求め、当該受光タイミングと、制御部46からのLD駆動信号の立上りタイミングとに基づいて、物体(対象物)までの往復時間を計測する装置である。時間計測部45は、時間の計測結果を示す計測データを制御部46へ出力する。
制御部46は、距離測定装置100の動作全体を制御する制御装置である。制御部46は、例えば、時間計測部45から受信した計測データに基づいて、対象物までの距離を算出し、距離データとして物体認識部47へ出力する。また、制御部46は、物体認識部47から受信した物体認識データを、通信部49を介して、自動車の動作制御を行うECU(Electronic Control Unit)200へ出力する。また、制御部46は、同期系50から出力される同期信号に基づいて、LD10を発光させるためのLD駆動信号をLD駆動部12および時間計測部45へ出力する。ここで、LD駆動信号とは、同期信号に対して遅延した発光制御信号(周期的なパルス信号)である。同期信号およびLD駆動信号については、図5で後述する。さらに、制御部46は、ECU200から、通信部49を介して受信した制御信号(測定開始信号および測定停止信号等)に従って、距離測定の開始および停止を行う。
物体認識部47は、制御部46から複数のレーザ光の走査により取得した複数の距離データを受信し、当該距離データに基づいて、物体の位置、当該物体の形状および大きさの推定、当該物体の種類の推定等の処理を行い、その処理結果(認識結果)を示す物体認識データを、制御部46へ出力する装置である。物体認識データは、上述のように、制御部46によってECU200へ出力され、危険回避動作等に利用される。なお、図1に示す例では、物体認識部47は、距離測定装置100に含まれるものとしているが、これに限定されるものではなく、距離測定装置100の外部に設置されるものとしてもよく、または、ECU200の動作を担う装置として、ECU200に含まれるものとしてもよい。
記憶部48は、制御部46が制御する上で必要な情報を記憶する記憶装置である。記憶部48は、例えば、制御部46により算出された距離データ等を記憶する。記憶部48は、記憶する情報に応じて、揮発性記憶装置としてもよく、または、不揮発性記憶創装置であってもよい。
通信部49は、ECU200とデータ通信を行うための通信I/Fである。通信部49は、例えば、Ethernet(登録商標)インターフェース、または、CAN(Controller Area Network)インターフェース等である。
同期系50は、LD10から発光されたレーザ光を投光光学系20によって特定のタイミングで検出し、同期信号を制御部46へ出力する部品群である。同期系50は、図1に示すように、同期レンズ52と、同期検出用PD54と、二値化回路56と、を有する。
同期レンズ52は、特定のタイミングで投光光学系20から反射されたレーザ光を同期検出用PD54に集光させるレンズである。同期検出用PD54は、同期レンズ52により集光されたレーザ光を検出し、当該レーザ光の強度の基づく電流(光電流)を出力するダイオードである。二値化回路56は、同期検出用PD54により検出されたレーザ光の強度に基づく電流を、電圧信号として検出し、当該電圧信号を、閾値電圧を基準にして二値化する回路である。二値化回路56は、二値化した信号(デジタル信号)を同期信号として、制御部46へ出力する。
なお、同期系50は、必ずしも同期レンズ52を有する必要はなく、また、他の光学素子(例えば、集光ミラー等)を有するものとしてもよい。
また、上述の反射検出用PD42および同期検出用PD54は、PDの他、APD(Avalanche Photo Diode)、または、ガイガーモードのAPDであるSPAD(Single Photo Avalanche Diode)等を用いることも可能である。APDおよびSPADは、PDに対して感度が高いため、検出精度の点で有利である。
ECU200は、距離測定装置100から受信した物体認識データに基づいて、例えば、自動車の操舵制御(オートステアリング等)、および速度制御(例えば、オートブレーキ)等を行う制御装置である。具体的には、ECU200は、受信した物体認識データに基づいて、危険有りと判断した場合には、アラーム等の警報を発して自動車(移動体)の操縦者に注意を促したり、ハンドルを切って危険を回避する指令を自動車の操舵制御部に出力したりする。
なお、図1に示す距離測定装置100の構成は一例を示すものであり、図1に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。例えば、物体認識部47は、上述のように、距離測定装置100の外部に設置されるものとしてもよい。また、図1に示す構成のうち、例えば、光学系部分および当該光学系部分のLDおよび検出用PD等は、距離測定装置100とは別体の装置として構成されてもよい。
(光学系等の構成および動作)
図2は、第1の実施形態に係る投光光学系および同期系の概略構成および動作を説明する図である。図2を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100の投光光学系20および同期系50の概略構成および動作について説明する。以下、図2に示すZ軸方向を鉛直方向とするXYZの3次元直行座標系を適宜用いて説明する。
図2に示すように、投光光学系20は、カップリングレンズ22と、反射ミラー24と、回転ミラー26と、を含む。
カップリングレンズ22は、LD10から発光されたレーザ光の光路上に配置され、当該レーザ光を所定のビームプロファイルに整形するレンズである。
反射ミラー24は、カップリングレンズ22を透過したレーザ光の光路上に配置され、回転ミラー26へ向けて当該レーザ光を反射させるミラーである。
回転ミラー26は、反射ミラー24により反射されたレーザ光の光路上に配置され、当該レーザ光をZ軸周りに偏向させるミラーである。回転ミラー26によりZ軸周りの所定の偏向範囲に偏向されたレーザ光が、投光光学系20から射出された光、すなわち、距離測定装置100から射出された光(射出光)である。回転ミラー26は、回転軸(Z軸)周りに複数の反射面を有し、回転軸周りに回転しながら、反射ミラー24からのレーザ光を反射(偏向)することで、上述の偏向範囲に対応する有効走査領域(図2に示す左走査端から右走査端までの範囲)を、水平な1軸方向(図2の例では、Y軸方向)に、左走査端から右走査端まで1次元走査する。
なお、回転ミラー26は、図2に示すように、反射面を2面(対向する2つの面)有しているが、これに限定されるものではなく、1面であっても、3面以上であってもよい。また、回転ミラー26に少なくとも2つの反射面を設け、回転軸に対してそれぞれ異なった角度で傾けて配置して、有効走査領域をZ軸方向に切り替えることも可能である。
また、レーザ光の偏向器として、回転ミラー26の代わりに、例えば、ポリゴンミラー(回転多面鏡)、ガルバノミラー、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等の他のミラーを用いるものとしてもよい。
投光光学系20は、上述のように、カップリングレンズ22と回転ミラー26との間の光路上に反射ミラー24を設けて光路を折り返していることによって、距離測定装置100の小型化に寄与している。
投光光学系20が格納されている筐体(距離測定装置100の筐体)には、投光光学系20からの射出光の光路上に開口部が形成され、当該開口部は、図2に示す投光ウィンドウ61によって塞がれている。投光ウィンドウ61は、例えば、ガラスまたは樹脂等の光透過部材により形成されている。
反射ミラー24は、上述の偏向範囲に対して、回転ミラー26の回転方向の上流側に配置され、回転ミラー26で当該偏向範囲の上流側に偏向されたレーザ光が入射する。そして、回転ミラー26で偏向され、反射ミラー24で反射されたレーザ光は、同期系50に入射し、同期レンズ52を介して同期検出用PD54へ入射する。そして、回転する回転ミラー26の反射面で反射されたレーザ光が、同期検出用PD54で検出される度に、同期検出用PD54から二値化回路56へ光電流が出力される。この結果、二値化回路56から所定の間隔で同期信号が制御部46へ出力される。
なお、反射ミラー24は、上述の偏向範囲に対して、回転ミラー26の回転方向の下流側に配置されてもよい。
(受光系の構成および動作)
図3は、第1の実施形態に係る受光光学系の概略構成および動作を説明する図である。図4は、第1の実施形態に係る投光光学系および受光光学系をY方向から見た図である。図3および図4を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100の受光光学系30の概略構成および動作を中心に説明する。以下、図3および図4に示すZ軸方向を鉛直方向とするXYZの3次元直行座標系を適宜用いて説明する。
図3に示すように、受光光学系30は、回転ミラー26と、反射ミラー24と、結像光学系32と、を含む。
回転ミラー26は、投光光学系20から射出され、有効走査領域内にある物体で反射された反射光を、回転しながら反射する。反射ミラー24は、回転ミラー26により反射された反射光を、結像光学系32へ向けて反射させる。
結像光学系32は、反射ミラー24により反射された反射光の光路上に配置され、当該反射光を反射検出用PD42に結像させる光学系である。なお、結像光学系32は、図2に示す例では、2枚のレンズで構成されているが、これに限定されるものではなく、1枚のレンズで構成されてもよく、または、3枚以上のレンズで構成されてもよい。
受光光学系30は、上述のように、回転ミラー26と結像光学系32との間の光路上に反射ミラー24を設けて光路を折り返していることによって、距離測定装置100の小型化に寄与している。
受光光学系30が格納されている筐体(距離測定装置100の筐体)には、受光光学系30が受光する反射光の光路上に開口部が形成され、当該開口部は、図3に示す受光ウィンドウ62によって塞がれている。受光ウィンドウ62は、例えば、ガラスまたは樹脂等の光透過部材により形成されている。
図4では、LD10から反射ミラー24までの光路と、反射ミラー24から反射検出用PD42までの光路とが示されている。図4に示すように、投光光学系20および受光光学系30は、Z軸方向に重なるように配置されており、反射ミラー24および回転ミラー26は、投光光学系20と受光光学系30とで共通となっている。これによって、物体上におけるLD10からのレーザ光の照射範囲と、反射検出用PD42による反射光の受光可能範囲との相対的な位置ずれを小さくでき、安定した物体検出を実現できる。
(同期信号およびLD駆動信号)
図5は、第1の実施形態に係る距離測定装置での同期信号およびLD駆動信号を説明する図である。図5を参照しながら、同期信号およびLD駆動信号について説明する。
上述のように、回転ミラー26の反射面で反射されたレーザ光が同期検出用PD54で検出される度に、同期検出用PD54から当該レーザ光の強度に基づく光電流が二値化回路56に出力される。そして、二値化回路56は、同期検出用PD54から出力された光電流を、電圧信号として検出し、当該電圧信号を、閾値電圧を基準にして二値化した信号を同期信号として、図5に示すように、制御部46へ所定の間隔(同期検知間隔)で出力する。
以上のように、二値化回路56から所定の間隔で同期信号が出力されることによって、当該同期信号の出力タイミングから、回転ミラー26の回転タイミングを得ることができる。したがって、二値化回路56から同期信号が出力されてから(LD10から発光された同期のためのレーザ光が同期検出用PD54で検出されてから)、所定時間経過後に、制御部46は、LD駆動部12に対して、LD10からレーザ光のパルス(以下、「射出光パルス」と称する場合がある)を出力させるためのLD駆動信号(矩形パルス信号)を所定間隔Tで出力することで、有効走査領域を光走査することができる。すなわち、二値化回路56から同期信号が出力されるタイミング間で、LD10から射出光パルスが発光することで有効走査領域を光走査することができる。
(射出光パルスおよび反射光パルス)
図6は、射出光パルスおよび反射光パルスを説明する図である。図6を参照しながら、射出光パルスおよび反射光パルスについて説明する。
LD駆動部12は、回転ミラー26により有効走査領域が走査されるとき、LD10を駆動して、図6(a)に示すような、射出光パルスを射出(発光)させる。そして、LD10から射出された射出光パルスは、物体(対象物)で反射または散乱され、反射または散乱されたパルス光(以下、「反射光パルス」と称する場合がある)が反射検出用PD42で検出される。このとき、LD10が射出光パルスを射出してから、反射検出用PD42で反射光パルスを検出するまでの時間tを計測することによて、物体(対象物)までの距離を算出することができる。
なお、時間の計測に関しては、例えば、図6(b)に示すように、射出光パルスをPD等の受光素子で二値化した矩形パルスとし、反射光パルスを検出回路44で二値化した矩形パルスとし、双方の矩形パルスの立上りタイミングの時間差tを計測するものとしてもよい。また、射出光パルスおよび反射光パルスの波形をA/D変換してデジタルデータに変換し、LD10の出力信号と、反射検出用PD42の出力信号とを相関演算することによって、時間tを計測することも可能である。
以上のような物体(対象物)までの距離を算出する測距方式における検知可能距離としては、100[m]オーダーのものが求められており、一般的に100[m]先の物体から反射されて返ってくる反射光の強度(光量)は、数[nW]~数十[nW]程度である。つまり、検出系40としては、数[nW]の反射光パルスをエラーなく検出できることが求められる。数[nW]程度の微弱光についての反射光信号の信号強度は小さいため、ランダムノイズの影響を受けやすく、測距精度および物体検出の信頼性に影響が出る。
上述のランダムノイズとしては、大きく分けて回路ノイズと、ショットノイズとがあり、特に問題となるのはショットノイズである。回路ノイズは、抵抗から生じる熱雑音および基板が放射ノイズを拾うことによって生じるノイズであり、通常は数[mV]程度である。
これに対して、ショットノイズは、光量計測に伴う白色雑音であり、その大きさは光量の時間平均の平方根に比例する。したがって、計測器の感度が高い、または、外乱光が強い場合には、数十[mV]以上の大きさになり得るため、回路ノイズよりも問題になりやすい。また、ショットノイズの大きさが光量の時間平均の平方根に比例することからわかるように、ショットノイズは、強度が一定の光を検出する際にも白色雑音として生じる。以下の図7においてショットノイズの問題について、さらに詳細を説明する。
(ショットノイズについて)
図7は、太陽光を受光した場合のショットノイズの一例を説明する図である。図7を参照しながら、太陽光を受光した場合のショットノイズについて説明する。図7では、太陽光が入る場合と入らない場合とについて、検出系40が検出した検出信号(電圧信号)波形を示している。
図7(a)および図7(b)に示すように、太陽光が入らない場合に比べて、太陽光が入る場合には、DC成分が増大するだけでなく、ショットノイズも増大する。DC成分については、ハイパスフィルタ等で除去できるが、図7(c)に示すように、ハイパスフィルタ等ではショットノイズは除去できない。
実際の車両の走行環境において、車両の窓ガラスまたはボンネット等の高反射物体により太陽光が反射し、強い太陽光が受光素子(本実施形態での反射検出用PD42)で受光されると、図7(d)に示されるように、ショットノイズが増大して、反射光パルスを判別するための閾値を超えてしまう。この場合、物体からの反射光パルスと、ノイズとの判別ができず、誤検出となってしまう。さらに、高反射物体が近距離にあるときの方が、受光素子に入る太陽光が強くなるため、ショットノイズも大きくなり、ショットノイズが閾値を超える現象が発生しやすくなり、誤検出も多くなることが懸念される。
このような問題に対処するための従来の閾値を基準に受光信号を検出する方式では、ショットノイズによる誤検出を防ぐために、通常はショットノイズに比べて閾値(電圧)を十分高く設定する必要があるため、基本的に閾値はショットノイズが最大となる状況を想定して決定される。そのため、ショットノイズが比較的小さい場合では、閾値が過剰に大きく設定されてしまい、検知可能距離が必要以上に小さくなってしまうことになる。検出距離を大きくするために、閾値は誤検出の起こらない範囲で最小に設定することが望ましい。このような問題点を解決するための本実施形態に係る距離測定装置100の詳細について、図8~図18で説明する。
(距離測定装置の機能ブロックの構成)
図8は、第1の実施形態に係る距離測定装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図8を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100の機能ブロックの構成について説明する。
図8に示すように、本実施形態に係る距離測定装置100は、投光部101と、光検出部102と、判定部103と、計測部104と、制御部110と、記憶部121と、通信部122と、を有する。
投光部101は、制御部110から出力されるLD駆動信号に従って、レーザ光(射出光パルス)を射出(投光)する機能部である。投光部101は、図1に示す投光光学系20、LD10およびLD駆動部12によって実現される。
光検出部102は、投光部101から射出された射出光パルスが物体で反射された反射光、および、それ以外の光(太陽光等の外乱、ノイズ)を受光することによって検出パルス(検出信号)として検出する機能部である。光検出部102は、図1に示す受光光学系30および検出系40(反射検出用PD42および検出回路44)によって実現される。
判定部103は、光検出部102により検出された検出信号の大きさ(例えば、電圧)が所定の閾値を超えたか否かを判定する機能部である。判定部103は、図1に示す時間計測部45によって実現される。
計測部104は、光検出部102からの検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号の受光タイミングを求め、当該受光タイミングと、制御部110からのLD駆動信号の立上りタイミングとに基づいて、物体(対象物)までの往復時間を計測する機能部である。計測部104は、時間の計測結果を示す計測データを制御部110へ出力する。計測部104は、図1に示す時間計測部45によって実現される。
制御部110は、距離測定装置100の動作全体を制御する機能部である。制御部110は、図8に示すように、距離算出部111(第1算出部)と、信号情報取得部112(第1取得部)と、測定回数決定部113(決定部)と、カウント部114と、特定部115と、最終距離算出部116(第2算出部)と、を有する。制御部110は、図1に示す制御部46によって実現される。
距離算出部111は、計測部104から受け取った時間についての計測データを距離(時間に基づく値の一例)に換算する(距離を算出する)機能部である。すなわち、距離は計測した時間に基づく値である。ここで、距離算出部111によって求められた距離を、測距の対象物である物体までの最終的な距離とはしない。後述するように、信号情報取得部112、測定回数決定部113、カウント部114、特定部115および最終距離算出部116の機能により、最終的に対象物までの距離が算出される。なお、距離算出部111は、計測部104から受け取った時間についての計測データを距離に換算するものとしているが、当該時間は当該距離と一対一の関係にあるので、時間そのもの(時間に基づく値の一例)を算出結果として出力するものとしてもよい。
信号情報取得部112は、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)のピーク値(検出パルスに関する情報の一例)を抽出して取得する機能部である。ここで、ピーク値とは、例えば、検出パルスのピーク部分の電圧値、または検出パルスの閾値の電圧レベルからピーク部分の電圧レベルの高さ等である。
測定回数決定部113は、投光部101から射出光パルスが射出されてから、次に射出光パルスが射出されるまでに光検出部102により検出される1以上の検出パルスに対して実行される一連の処理を1測定とし、信号情報取得部112により取得されたピーク値に基づいて、測定回数を決定する機能部である。
カウント部114は、後述する図14に示すように任意の距離間隔でのヒストグラムを作成するため区切られた距離についての階級に対して、測定回数決定部113により決定された測定回数分の各測定において、閾値を超えたと判定された検出パルス(検出信号)の個数を、それぞれの階級ごとにカウントする機能部である。
特定部115は、カウント部114によってカウントされた階級ごとカウント値の各測定での合計値(合計個数)が最大の階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定する機能部である。
最終距離算出部116は、特定部115により特定された対象物からの各反射光信号(反射光パルス)について、距離算出部111により算出された各距離の平均値を、対象物からの距離として算出する機能部である。このように、特定部115により特定された反射光信号に対応する各距離の平均値を求めるので、反射光パルスが含まれる階級にノイズが含まれていてもその影響を小さくすることができる。
上述の距離算出部111、信号情報取得部112、測定回数決定部113、カウント部114、特定部115および最終距離算出部116は、例えば、制御部110が記憶部121に記憶されたソフトウェアであるプログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、距離算出部111、信号情報取得部112、測定回数決定部113、カウント部114、特定部115および最終距離算出部116の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路によって実現されてもよい。
記憶部121は、制御部110の動作に必要な情報を記憶する機能部である。記憶部121は、例えば、光検出部102により検出された検出信号、計測部104により計測された計測データ、距離算出部111により算出された距離データ、信号情報取得部112により取得されたピーク値、測定回数決定部113により決定された測定回数、カウント部114によりカウントされた各測定における階級ごとのカウント値、および最終距離算出部116により算出された対象物からの距離のうち少なくともいずれかを記憶する。記憶部121は、例えば、図1に示す記憶部48によって実現される。
通信部122は、ECU200とデータ通信するための機能部である。通信部122は、例えば、制御部110(最終距離算出部116)により算出された対象物からの距離のデータを物体認識データに含めて、ECU200へ送信する。通信部122は、図1に示す通信部49によって実現される。
なお、図8に示す距離測定装置100の、投光部101、光検出部102、判定部103、計測部104、制御部110(距離算出部111、信号情報取得部112、測定回数決定部113、カウント部114、特定部115および最終距離算出部116)、記憶部121および通信部122は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図8に示す距離測定装置100で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図8に示す距離測定装置100で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
また、図8では、距離測定装置100が有する主要な機能部が示されているものであり、距離測定装置100が有する機能は、これらに限定されるものではない。
(反射光パルスとノイズとの対比)
図9は、物体との距離が近い場合の反射光パルスと、ショットノイズとの対比を説明する図である。図10は、物体との距離が遠い場合の反射光パルスと、ショットノイズとの対比を説明する図である。図9および図10を参照しながら、反射光パルスとショットノイズとの対比について説明する。
図9に示すように、例えば、周囲の照度が非常に明るい場合ショットノイズの強度(電圧)は大きくなるものの、物体(対象物)との距離が近い(例えば、10[m]、20[m]、30[m]、40[m])、または、物体(対象物)の反射率が大きい場合は、ショットノイズとの判別がつきやすく、対象物の反射光パルスのピークを検出するための閾値(電圧)の設定も容易となる。
一方、図10に示すように、物体(対象物)との距離が遠い(例えば、50[m]、60[m]、70[m])、または、物体(対象物)の反射率が大きい場合は、対象物の反射光パルスのピークが非常に小さくなり、ショットノイズとの判別は困難となる。
(物体までの実距離と、ピーク値およびショットノイズとの関係)
図11は、物体までの実距離と、反射光パルスのピーク値およびショットノイズとの関係の一例を示す図である。図11を参照しながら、物体(対象物)までの実距離と、反射光パルスのピーク値(電圧)およびショットノイズとの関係について説明する。なお、図11では、ショットノイズは、強い西日を受光した場合の最大のショットノイズを想定しており、ショットノイズは、0[mV]からのエラーバー300によって示している。
図11に示すように、物体(対象物)の反射光パルスのピーク値(電圧)は、近距離理(10~25[m])において飽和している。また、ショットノイズに起因する誤検出を回避するための閾値を設定する場合、図11に示すように、例えば、400[mV]に閾値を設定した場合、50[m]以上の遠距離の測距では、ピーク値が閾値を下回るため対象物の測距ができなくなる。すなわち、より遠い距離まで対象物の測距を行うためには、閾値を小さく設定しつつ、ショットノイズと反射光パルスとを分離する技術が必要となる。
(物体からの反射光パルスを誤検出するその他の要因)
図12は、雨による検出パルスと、物体からの反射光パルスとの対比を説明する図である。図12を参照しながら、物体からの反射光パルスを誤検出する要因の一例として、雨による検出パルスについて説明する。
物体(対象物)からの反射光パルスを誤検出するその他の要因として、雨および霧等がある。この場合もショットノイズと同様に、物体からの反射光パルス(反射光信号)の検出のための閾値を超える可能性が大きくなり、この場合も、どの信号が物体からの反射光パルスであるのかの判別が困難となる。
図12では、時間0のとき射出光パルスが発光されたタイミング(発光タイミング)であるとして、3つの雨(1)~雨(3)からの反射による検出パルス、および、1つの物体(対象物)からの反射による反射光パルスを示している。反射光パルスを検出するための閾値を、図12に示す破線レベルに設定したとすると、雨(1)~雨(3)の検出パルスと、対象物の反射光パルスとが、閾値を超えた検出パルスとして検出される。雨については危険とは認識せずに、物体については危険であるという認識をしたいところ、4つの検出パルスを見ても、通常は、どれが雨のもので、どれが物体のものか判別が困難である。そのため、危険と認識すべき物体の位置がどこかを判別することができないことになる。
(距離階級ごとに閾値を超えた検出パルスをカウントする動作)
図13は、閾値を超えた信号を、分類されたヒストグラム階級ごとにカウントすることを説明する図である。図14は、閾値を超えた信号を、分類されたヒストグラム階級ごとにカウントすることによって対象物からの反射光を特定することを説明する図である。図15は、閾値を超えた信号を、分類されたヒストグラム階級ごとにカウントすることによって対象物からの反射光を特定するにおける改善すべき点を示す図である。図13~図15を参照しながら、距離階級ごとに閾値を超えた検出パルスをカウントする動作について説明する。
本実施形態に係る距離測定装置100は、雨またはショットノイズ等のノイズ(以下、説明を関係にするために「ショットノイズ」として説明する)を含めて、閾値を超えた検出パルスの個数をカウントし、それらの検出パルスに対応する距離等を記憶部121に記憶させる方式を採用している。
図13に示すように、例えば、物体(対象物)に対して閾値(図13の例では、100[mV]に設定)を超えたショットノイズおよび反射光の検出パルスについての記録を行うという測定を複数回行うものとする。次に、カウント部114は、所定の距離ごとにヒストグラム階級(以下、単に「階級」と称する)に区分けし、複数回の測定の各測定で、閾値を超えたと判定された検出パルスの個数を、区分けした階級ごとにカウントする。このような方法を取ることで、複数回の測定を行っても、対象物からの検出パルス(反射光パルス)は安定して同じ階級内に検出されるのに対して、閾値を超えるショットノイズに基づく検出パルスが検出される階級は測定ごとにランダムであることを利用し、対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定することが可能となる。
ここで、図14に、2[m]ごとに階級を区分けして、測定回数を5回として、検出パルスを各階級でカウントした例を示す。まず、1回目の測定で、20~22[m]の階級に検出パルスがカウントされ、30~32[m]の階級で同様に検出パルスがカウントされる。次に、2回目の測定で、24~26[m]の階級に検出パルスがカウントされ、30~32[m]の階級で同様に検出パルスがカウントされる。このようなカウント動作を5回の各測定で行った結果、ショットノイズの検出パルスがカウントされる階級はランダムであるので、各階級には測定を重ねても少ない個数しか入らないのに対し、対象物からの反射光パルスは、対象物が位置する距離に対応する検出パルスなので、基本的に当該距離に対応する階級でカウントされる。すなわち、30~32[m]の階級には、5回の測定毎にカウントされており、この階級にカウントされた検出パルスが、対象物からの反射光パルスであると推定できる。この推定に基づいて、この階級に対応する検出パルスの距離だけの平均値(図14の例では、31.1[m])を算出すれば、対象物までの距離が求められることになる。上述の図13および図14で説明した複数回の測定により対象物までの距離を導出する処理を、便宜上「フレーム間処理」と称するものとする。
しかし、上述のフレーム間処理には、階級の間隔を狭くした場合、およびフレーム数(測定回数)を少なくした場合において改善すべき点がある。階級の間隔を狭くした場合、算出された距離が階級の区切り付近で分散しているとき、隣の階級でカウントされてしまう可能性がある。また、測定回数を少なくした場合、他の階級で偶然、ショットノイズの検出パルスのカウント数が、反射光パルスのカウント数と同数となってしまう可能性があり、この場合、ショットノイズと反射光パルスとの判別ができなくなる。
例えば、図15に、1[m]ごとに階級を区分けして、測定回数を3回として、検出パルスを各階級でカウントした例を示す。1回目の測定では、27~28[m]の階級にショットノイズの検出パルスがカウントされ、31~32[m]の階級で反射光の検出パルス(反射光パルス)がカウントされる。ところが、2回目の測定では、1回目の測定と同様に27~28[m]の階級にショットノイズの検出パルスがカウントされ、さらに、階級幅が狭いために、反射光の検出パルス(反射光パルス)が31~32[m]の階級ではなく、30~31[m]の階級でカウントされている。この結果、27~28[m]の階級に検出パルスが合計2回カウントされ、31~32[m]の階級に検出パルスも合計2回カウントされた結果となる。そのため、これら2つの階級に対応する検出パルスの距離のそれぞれの平均値27.5[m]および31.1[m]は、いずれが真の対象物の距離であるかの判別ができない。
これらを鑑みて、本実施形態に係る距離測定装置100は、下記の図16~図18で説明する回数設定フレーム間処理を行う。
(距離測定装置の回数設定フレーム間処理)
図16は、高い測距成功率が担保される場合の、反射光パルスのピーク値と測定回数との関係の一例を示す図である。図17は、測定回数によって測定間隔が相違することを説明する図である。図16および図17を参照しながら、反射光パルスのピーク値と測定回数との関係について説明する。
図16に示すグラフは、上述のフレーム間処理において、ショットノイズが120[mV]、閾値が170[mV]としたときに、測距成功率が90[%]以上となる反射光パルスのピーク値と、測定回数との関係を示すグラフである。ここで、測距成功率とは、例えば、40[m]に対象物を設置し、当該対象物の距離として算出された値が40[m]程度であれば測距成功とし、閾値を超えたショットノイズを当該対象物からの反射光パルスと誤検出した場合、および、閾値よりもピーク値が小さい等により測距できなかった場合を測距失敗として、全体の測距回数に対する測距成功の回数の割合を算出したものである。
図16のグラフでは、例えば、対象物からの反射光パルスのピーク値が600[mV]の場合、測距成功率が90[%]以上を担保しながら、ショットノイズと区別するためには測定回数が5回必要であることを示している。
上述の図14および図15で説明した従来の処理(フレーム間処理)では、測定回数が一意に決まっており(図14では5回、図15では3回)、投光光学系は、図1に示す投光光学系20と同じであり、回転ミラーの回転数を500[rpm]としている。この場合、1回の測定に係る時間は60[ms]であり、測定回数が5回ならば300[ms]での測定を、どの環境下でも繰り返し行うことになる。このようなフレーム間処理は、上述のような改善すべき点もあるが、さらに、距離測定装置100から見た対象物が相対的に移動している場合においても改善すべき点がある。以下、図17を参照しながら、その改善すべき点を説明する。
例えば、図17に示すように、距離測定装置100に60[km/h]で近づく移動物体(対象物)との距離が10[m]地点で1度目の測距処理(フレーム間処理)が行われたとする。図17(a)は、1度の測距処理に対して、測定回数を5回とした場合の例である。この場合、1回の測定にかかる時間は60[ms]で、1回の測定あたり1[m]だけ対象物が動く(相対的に距離測定装置100に近づく)ため、5[m]間隔でしか対象物との距離を出力できない。一方、図17(b)は、1度の測距処理に対して、測定回数を2回とした場合の例である。この場合、2[m]間隔で対象物との距離を出力することができる。
以上から明らかなように、図17で想定されるような、対象物が近距離(図17では10[m])に存在する移動物体等である場合、対象物が近距離に存在することを速く察知するには、少ない測定回数で繰り返し距離出力を行い、距離情報を更新することが要求される。
そこで、本実施形態では、上述した図16に示す反射光パルスのピーク値と測定回数との相関を利用する。図16に示すグラフから、一定量以上の測距成功率が担保可能なピーク値には、測定回数に差があり、それぞれ最適または好適な測定回数があることを示している。このような反射光パルスのピーク値と測定回数との相関に基づいて、検出パルスのピーク値から測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。
図16に示すように、ピーク値が1200[mV]のとき、測距成功率は測定回数が2回でも90[%]以上となり、この場合、測定回数が2回、すなわち、2[m]ごとに距離出力が可能となる。上述の値を基準にして、例えば、ピーク値が1200[mV]以上であれば測定回数を2回とし、1050~1200[mV]であれば測定回数を3回とし、850~1050[mV]であれば測定回数を4回とし、600~850[mV]であれば測定回数を5回とし、600[mV]未満であれば測定回数5回以上の測定回数であるとして、適宜設定する。本実施形態における、以上のような、反射光パルスのピーク値に応じて測定回数を適宜設定して測距処理を行う回数設定フレーム間処理の流れを、以下の図18で説明する。
図18は、第1の実施形態に係る距離測定装置の回数設定フレーム間処理の一例を示すフローチャートである。図18を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100の回数設定フレーム間処理の流れについて説明する。
<ステップS11>
距離測定装置100の投光部101は、制御部110から出力されるLD駆動信号に従って、レーザ光(射出光パルス)を射出(投光)する。距離測定装置100の光検出部102は、投光部101から射出された射出光パルスが物体で反射された反射光、および、それ以外の光(ノイズ等)を受光することによって検出パルス(検出信号)として検出する。光検出部102は、検出した検出パルス(検出信号)を制御部110および判定部103へ出力する。そして、ステップS12へ移行する。
<ステップS12>
距離測定装置100の判定部103は、光検出部102により検出された検出信号の大きさ(例えば、電圧)が所定の閾値を超えたか否かを判定する。閾値を超えた場合(ステップS12:Yes)、ステップS13へ移行し、閾値を超えていない場合(ステップS12:No)、ステップS21へ移行する。
<ステップS13>
距離測定装置100の測定回数決定部113によって、測定回数が決定(設定)済みの場合(ステップS13:Yes)、距離測定装置100の計測部104は、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号の受光タイミングを求め、当該受光タイミングと、制御部110からのLD駆動信号の立上りタイミングとに基づいて、物体(対象物)等の往復時間を計測する。計測部104は、時間の計測結果を示す計測データを制御部110へ出力する。そして、ステップS16へ移行する。
一方、距離測定装置100の測定回数決定部113によって、測定回数が決定(設定)済みではない場合(ステップS13:No)、ステップS14へ移行する。
<ステップS14>
距離測定装置100の信号情報取得部112は、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)のピーク値を抽出して取得する。なお、信号情報取得部112によるピーク値の抽出の対象となる検出パルスは、例えば、投光部101から射出光パルスが射出されてから、次に射出光パルスが射出されるまでに光検出部102により検出される1以上の検出パルスのうち、閾値を超えた最もピーク値が高い検出パルスとすればよい。そして、ステップS15へ移行する。
<ステップS15>
距離測定装置100の測定回数決定部113は、投光部101から射出光パルスが射出されてから、次に射出光パルスが射出されるまでに光検出部102により検出される1以上の検出パルスに対して実行される一連の処理を1測定とし、ヒストグラムを作成するために、信号情報取得部112により取得されたピーク値に基づいて、測定回数を決定(設定)する。この場合、測定回数決定部113は、例えば、上述の図16に示すようなピーク値と測定回数との相関に基づいて、ピーク値から測定回数を決定する。そして、ステップS16へ移行する。
<ステップS16>
距離測定装置100の距離算出部111は、計測部104から受け取った時間についての計測データに基づいて、距離に換算する(距離を算出する)。そして、ステップS17へ移行する。
<ステップS17>
距離測定装置100のカウント部114は、任意の距離間隔でのヒストグラムを作成するため区切られた距離についての階級に対して、閾値を超えたと判定された検出パルス(検出信号)の個数を、それぞれの階級ごとにカウントする。そして、ステップS18へ移行する。
<ステップS18>
測定回数決定部113により決定された測定回数分だけ、距離算出部111による距離の算出、およびカウント部114によるカウント処理の処理が実行された場合(ステップS18:Yes)、ステップS19へ移行し、実行されていない場合(ステップS18:No)、ステップS11へ戻る。
<ステップS19>
距離測定装置100の特定部115は、カウント部114によってカウントされた階級ごとカウント値の各測定での合計値(合計個数)が最大の階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定する。また、測定回数決定部113は、決定した測定回数をリセットする。そして、ステップS20へ移行する。
<ステップS20>
距離測定装置100の最終距離算出部116は、特定部115により特定された対象物からの各反射光信号(反射光パルス)について、距離算出部111により算出された各距離の平均値を、対象物からの距離として算出する。最終距離算出部116は、算出した対象物からの距離についての距離データを、例えば、通信部122を介して、物体認識データに含めて、ECU200へ送信する。そして、回数設定フレーム間処理が終了する。
<ステップS21>
距離測定装置100の制御部110は、判定部103によって、光検出部102により検出された検出信号の大きさが閾値を超えていない場合、対象物がない、または、他の物体等による衝突等の危険性がないと判断する。そして、ステップS22へ移行する。
<ステップS22>
制御部110は、光検出部102から受け取った検出パルスの情報を破棄する。そして、ステップS11へ戻る。
以上のステップS11~S22によって、回数設定フレーム間処理が実行され、物体(対象物)までの距離が算出される。
以上のように、本実施形態に係る距離測定装置100は、一定量以上の測距成功率が担保可能なピーク値には、測定回数に差があり、それぞれ最適または好適な測定回数があることを利用し、このような反射光パルスのピーク値と測定回数との相関に基づいて、検出パルスのピーク値から測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。すなわち、ピーク値に応じて決定(設定)して測定回数分の各測定において、距離についての階級ごとに閾値を超えた検出パルスをカウントし、各測定での合計値が最大の階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定して、特定された対象物からの各反射光信号(反射光パルス)について、距離算出部111により算出された各距離の平均値を、対象物からの距離として算出する。これによって、ピーク値に応じた最適または好適な測定回数により、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
また、長距離下における対象物の測距、反射率が低い対象物に対する測距、または西日等の外乱光が強い環境下での対象物の測距のように、対象物からの反射光パルスの大きさに対してノイズの大きさが無視できない程度に大きい状況において、状況に応じた測定回数を設定するので、反射光パルスを検出するための閾値を低く設定しても、ノイズと反射光パルスとを高い精度で判別することができる。
(変形例1)
図19は、第1の実施形態の変形例1においてピーク値と相関のある信号波形幅を説明する図である。図20は、第1の実施形態の変形例1での信号波形幅とピーク値との関係を示す図である。図19および図20を参照しながら、本実施形態の変形例1の信号波形幅とピーク値との相関を利用した処理について説明する。
図19では、閾値(第1閾値)を超えた検出信号の立上りの時間(立上り時間tr)と、立下りの時間(立下り時間tf)との時間幅である信号波形幅Δtの大きさを示している。そして、図20は、閾値が170[mV]としたときに、信号波形幅Δtと、検出信号(検出パルス)のピーク値との関係の一例を示したグラフである。図20に示すグラフから、信号波形幅Δtが大きくなるにつれてピーク値も大きくなっていることがわかる。
以上のことから、本変形例では、図20に示すような信号波形幅Δtとピーク値との相関、および、上述の図16に示した反射光パルスのピーク値と測定回数との相関を利用し、信号波形幅Δtから測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。例えば、信号波形幅Δtが55[ns]以上であれば、ピーク値が1200[mV]以上となり、測定回数を2回に決定(設定)する。同様に、信号波形幅Δtが45~55[ns]であれば、測定回数を3回、信号波形幅Δtが40~45[ns]であれば、測定回数を4回、信号波形幅Δtが40[ns]未満であれば、測定回数を5回以上というように適宜決定(設定)する。
具体的には、信号情報取得部112は、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)の信号波形幅Δt(第2波形幅、検出パルスに関する情報の一例)を抽出して取得する。そして、測定回数決定部113は、信号波形幅Δtからピーク値を求め、当該ピーク値に基づいて、測定回数を決定(設定)する。なお、信号波形幅Δtからピーク値を求めるのは、測定回数決定部113ではなく、信号情報取得部112が行うものとしてもよい。
なお、図19では、閾値を超えた検出信号について、閾値におけるパルス幅を信号波形幅Δtとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、閾値から所定値だけ上側または下側の位置におけるパルス幅を信号波形幅Δtとしてもよい。
以上のように、検出信号のパルス幅(信号波形幅Δt)に応じて測定回数を決定して、回数設定フレーム間処理を行うものとしてもよい。これによって、検出信号のパルス幅(信号波形幅Δt)に応じた最適または好適な測定回数により、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
(変形例2)
図21は、第1の実施形態の変形例2において検出信号が複数の閾値のうちどの閾値を超えたかについて説明する図である。図21を参照しながら、本実施形態の変形例2の検出パルスがどの閾値を超えたかによって測定回数を決定する処理について説明する。
図21では、検出信号(検出パルス)に対する閾値判定のために、例えば、4つの閾値Vth1~Vth4を設けた例を示している。このように、複数の閾値を設け、検出信号がどの閾値を超えたかを判定することによって、ピーク値を見積もることができ、その判定結果によって測定回数を決定(設定)することができる。そして、その決定(設定)した測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。
例えば、図21において、4つの閾値Vth1~Vth4を、それぞれ170[mV]、850[mV]、1050[mV]、1200[mV]とすると、以下の(表1)に示すように、検出信号がどの閾値を超えたかによって測定回数を決定することができる。
図21および(表1)に示すように、超えた閾値が閾値Vth3である場合、ピーク値は閾値Vth3の1050[mV]から閾値Vth4の1200[mV]の間にピークが存在するので、一定以上の測距成功率を担保するための測定回数は3回であると判断することができる。
具体的には、信号情報取得部112は、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値(例えば、閾値Vth1)を超えたと判定された検出信号(検出パルス)について、どの閾値を超えたかの情報(検出パルスに関する情報の一例)を取得する。そして、測定回数決定部113は、検出信号がどの閾値を超えたかの情報に基づいて、測定回数を決定(設定)する。
以上のように、検出信号が複数の閾値のうちどの閾値を超えたかに応じて測定回数を決定して、回数設定フレーム間処理を行うものとしてもよい。これによって、検出信号が複数の閾値のうちどの閾値を超えたかに応じた最適または好適な測定回数により、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。なお、図21および(表1)は、変形例での一例であり、閾値の個数は4つに限定されるものではなく、また、各閾値の値は上述の値とは異なる値であってもよい。
なお、図21に示した例では複数の閾値のうちどの閾値を超えたかによってピーク値を見積もる動作について説明したが、閾値を超えた個数に応じてピーク値を見積もることも可能である。この場合、当該個数に応じて、測定回数を決定することができる。
(変形例3)
図22は、第1の実施形態の変形例3においてピーク値と相関のある2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きを説明する図である。図23は、第1の実施形態の変形例3での2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きと、ピーク値との関係を示す図である。図22および図23を参照しながら、本実施形態の変形例3における2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きと、ピーク値との相関を利用した処理について説明する。
図22では、閾値170[mV]、350[mV]を超えたそれぞれの検出信号の立上り時間(立上り時間tr1、tr2)の2点の傾きを示している。そして、図23は、閾値170[mV]、350[mV]の2つの閾値を超えた際の、2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きと、ピーク値との関係の一例を示したグラフである。図23に示すグラフから、2つの時点の傾きが大きくなるにつれてピーク値も大きくなっていることがわかる。
以上のことから、本変形例では、図23に示すような2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きと、ピーク値との相関、および、上述の図16に示した反射光パルスのピーク値と測定回数との相関を利用し、2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きから測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。例えば、傾きが5.3[mV/ns]以上であれば、ピーク値が1200[mV]以上となり、測定回数を2回に決定(設定)する。同様に、傾きが5.0~5.3[mV/ns]であれば測定回数を4回、傾きが3.5~5.0[mV/ns]であれば測定回数を5回、傾きが3.5[mV/ns]未満であれば測定回数を5回以上というように適宜決定(設定)する。
具体的には、信号情報取得部112は、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)について、2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾き(検出パルスに関する情報の一例)を求めて取得する。そして、測定回数決定部113は、2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きからピーク値を求め、当該ピーク値に基づいて、測定回数を決定(設定)する。なお、2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きからピーク値を求めるのは、測定回数決定部113ではなく、信号情報取得部112が行うものとしてもよい。
なお、判定部103が用いる閾値は、信号情報取得部112が用いる2つの閾値のうちいずれかと一致するものとしてもよく、2つの閾値とは異なる閾値であってもよい。
以上のように、検出信号の2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きに応じて測定回数を決定して、回数設定フレーム間処理を行うものとしてもよい。これによって、検出信号の2つの閾値をそれぞれ超えた2つの時点の傾きに応じた最適または好適な測定回数により、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
(変形例4)
図24は、第1の実施形態の変形例4においてピーク値と相関のある2つの閾値での信号波形幅の差を説明する図である。図25は、第1の実施形態の変形例4での2つの閾値での信号波形幅の差と、ピーク値との関係を示す図である。図24および図25を参照しながら、本実施形態の変形例4における2つの閾値におけるそれぞれの信号波形幅の差と、ピーク値との相関を利用した処理について説明する。
図24では、2つの閾値170[mV]、350[mV]をそれぞれ超えた検出信号において、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2を示している。そして、図25は、2つの閾値170[mV]、350[mV]をそれぞれ超えた検出信号における2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差と、ピーク値との関係の一例を示したグラフである。図25に示すグラフから、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差が大きくなるにつれてピーク値が小さくなるなっていることがわかる。
以上のことから、本変形例では、図25に示すような2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差と、ピーク値との相関、および、上述の図16に示した反射光パルスのピーク値と測定回数との相関を利用し、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差から測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。例えば、2つの信号波形幅の差が5.0[ns]未満であれば、ピーク値が1200[mV]以上となり、測定回数を2回に決定する。同様に、2つの信号波形幅の差が5.0~6.9[ns]であれば測定回数を3回、6.9~8.3[ns]であれば測定回数を4回、8.3[ns]以上であれば測定回数を5回以上というように適宜決定(設定)する。
具体的には、信号情報取得部112は、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)について、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差(検出パルスに関する情報の一例)を求めて取得する。そして、測定回数決定部113は、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差からピーク値を求め、当該ピーク値に基づいて、測定回数を決定(設定)する。なお、2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差からピーク値を求めるのは、測定回数決定部113ではなく、信号情報取得部112が行うものとしてもよい。
なお、判定部103が用いる閾値は、信号情報取得部112が用いる2つの閾値のうちいずれかと一致するものとしてもよく、2つの閾値とは異なる閾値であってもよい。
以上のように、検出信号の2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差に応じて測定回数を決定して、回数設定フレーム間処理を行うものとしてもよい。これによって、検出信号の2つの閾値それぞれでの信号波形幅Δt1、Δt2の差に応じた最適または好適な測定回数により、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
(変形例5)
図26は、第1の実施形態の変形例5において走査画角ごとに測定回数を設定することを説明する図である。図26を参照しながら、本実施形態の変形例5における走査画角ごとに測定回数を決定(設定)する処理について説明する。
図26においては、図2で上述した有効走査領域で規定される走査画角の範囲(図26の例では、0~140度)内で、物体の距離が検出可能な空間範囲を「検出範囲」として示している。図26の例では、この検出範囲内に距離測定装置100との距離がそれぞれ異なる2つの対象物A、Bが存在しているものとする。対象物Aについては、走査画角が55度の方向に存在し、対象物Bについては、対象物Aが存在する方向とは異なる走査画角80度の方向に存在しているものとする。そして、対象物Aからの反射光パルス(検出パルス)のピーク値が1100[mV]であり、対象物Bからの反射光パルス(検出パルス)のピーク値が700[mV]であったものとする。この場合、走査画角55度に存在する対象物Aについては、ピーク値が850~1050[mV]の範囲に存在するので、上述の図16の関係から測定回数を4回と決定(設定)し、走査画角80度に存在する対象物Bについては、ピーク値が600~850[mV]の範囲に存在するので、測定回数を5回に決定(設定)する。
具体的には、信号情報取得部112は、光検出部102から検出信号(検出パルス)の走査画角の情報をさらに受信し、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)のピーク値を抽出して取得する。この場合、信号情報取得部112は、抽出した検出信号のピーク値を、当該検出信号の走査画角に対応付ける。そして、測定回数決定部113は、信号情報取得部112により取得されたピーク値に基づいて、当該ピーク値に対応する走査画角に関連付けて測定回数を決定(設定)する。すなわち、本変形例では、検出信号の走査画角ごとに測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理を行う。
以上のように、検出信号の走査画角ごとに測定回数を決定して、回数設定フレーム間処理を行うものとしてもよい。これによって、検出信号の走査画角ごとに決定した最適または好適な測定回数により、それぞれの走査画角ごとに、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
なお、本変形例のような検出信号の走査画角ごとに測定回数を決定する処理は、上述の変形例1~4のそれぞれに適用することも可能である。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る距離測定装置について、第1の実施形態に係る距離測定装置100と相違する点を中心に説明する。第1の実施形態では、反射光パルスのピーク値と測定回数との相関に基づいて、検出パルスのピーク値から測定回数を決定(設定)して、その測定回数により測距処理を行う回数設定フレーム間処理について説明した。本実施形態では、所定の測定回数の各測定において検出された検出パルスのパルス幅の標準偏差に基づいて、対象物からの反射光パルスを特定する処理について説明する。なお、本実施形態に係る距離測定装置の全体構成、投光光学系、受光光学系および同期系の概略構成は、第1の実施形態で説明した構成と同様である。
(距離測定装置の機能ブロックの構成)
図27は、第2の実施形態に係る距離測定装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図27を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100aの機能ブロックの構成について説明する。
図27に示すように、本実施形態に係る距離測定装置100aは、投光部101と、光検出部102と、判定部103と、計測部104と、制御部110aと、記憶部121と、通信部122と、を有する。なお、図27に示す投光部101、光検出部102、判定部103、計測部104、記憶部121および通信部122の機能は、それぞれ第1の実施形態で説明した機能と同様である。
制御部110aは、距離測定装置100aの動作全体を制御する機能部である。制御部110aは、図27に示すように、距離算出部111(第1算出部)と、信号情報取得部112a(第2取得部)と、カウント部114と、標準偏差算出部117(第3算出部)と、特定部115aと、最終距離算出部116(第2算出部)と、を有する。制御部110aは、図1に示す制御部46によって実現される。なお、距離算出部111、カウント部114および最終距離算出部116の機能は、それぞれ第1の実施形態で説明した機能と同様である。
信号情報取得部112aは、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)のパルス幅(第1波形幅)を抽出して取得する機能部である。ここで、パルス幅とは、例えば、上述の図13に示すように、閾値を超えた検出信号(検出パルス)における当該閾値における幅(図13に示す例では、ショットノイズに係る検出パルスのパルス幅を「ショットノイズ幅」と示し、対象物の反射光パルスのパルス幅を「ターゲットピーク幅」と示している)とする。なお、図13では、閾値を超えた検出信号について、閾値における検出パルスの幅をパルス幅としているが、これに限定されるものではなく、例えば、閾値から所定値だけ上側または下側の位置における検出パルスの幅をパルス幅としてもよい。
標準偏差算出部117は、カウント部114によってカウントされた階級ごとのカウント値の各測定での合計値(合計個数)が最も多いすべての階級に対応するパルス幅の標準偏差(ばらつきを示す値の一例)をそれぞれ算出する機能部である。
特定部115aは、カウント部114によってカウントされた階級ごとのカウント値の各測定での合計値(合計個数)が最も多い階級のうち、標準偏差が所定値(例えば、「1」)以下であり、かつ、各標準偏差のうち最も小さい階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定する機能部である。
上述の距離算出部111、信号情報取得部112a、カウント部114、標準偏差算出部117、特定部115aおよび最終距離算出部116は、例えば、制御部110aが記憶部121に記憶されたソフトウェアであるプログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、距離算出部111、信号情報取得部112a、カウント部114、標準偏差算出部117、特定部115aおよび最終距離算出部116の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGAまたはASIC等のハードウェア回路によって実現されてもよい。
なお、図27に示す距離測定装置100aの、投光部101、光検出部102、判定部103、計測部104、制御部110a(距離算出部111、信号情報取得部112a、カウント部114、標準偏差算出部117、特定部115aおよび最終距離算出部116)、記憶部121および通信部122は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図27に示す距離測定装置100aで独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図27に示す距離測定装置100aで1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
また、図27では、距離測定装置100aが有する主要な機能部が示されているものであり、距離測定装置100aが有する機能は、これらに限定されるものではない。
(物体までの実距離と、ピーク値およびショットノイズとの関係)
図28は、物体までの実距離と、反射光パルスのピーク値およびショットノイズとの関係の一例を示し、閾値の大小による測距性能の相違を説明する図である。図28を参照しながら、物体(対象物)までの実距離と、反射光パルスのピーク値(電圧)およびショットノイズとの関係について説明する。
図28では、1[m]四方の反射率10[%]の黒幕を対象物として、距離をそれぞれ変えて距離を実測した結果を示す。このとき、射出パルスから15[μs]遅延した場所でのショットノイズをオシロスコープにて計測し、西日の正面からの入射という厳しい条件を想定して人工太陽灯を距離測定装置の正面に設置してショットノイズの標準偏差が100[mV]になるように調整した。ショットノイズの標準偏差が100[mV]になる場合、ショットノイズの最大値の平均は300[mV]であった。このショットノイズの最大値の平均を、0[mV]からのエラーバー300aによって示している。また、対象物から反射光パルスをオシロスコープにて観察すると、上述の図9および図10で示したように距離が遠くになるにしたがってピーク値は小さくなる。図28は、それらのピーク値と、ショットノイズの最大値の平均との関係、および、それらに対する閾値100[mV]、200[mV]、300[mV]、400[mV]との関係を示している。
図28に示すように、閾値400[mV]では、ほぼショットノイズが閾値を超えることはないが、対象物までの実距離が50[m]以降で、ピーク値が閾値を下回るため測距ができなくなることがわかる。また、閾値300[mV]は、ショットノイズの最大値の平均の位置であり、ある一定の割合でショットノイズが閾値を超えてくることが予測される。さらに、閾値100[mV]および200[mV]では、測距できる距離は伸びることがわかるが、閾値を超えるショットノイズがかなりの割合になるため、ショットノイズと反射光パルスとを分離かつ判別できる技術がなければ測距は困難であることがわかる。
また、図15で上述したように、ショットノイズと反射光パルスとを分離かつ判別する問題では、フレーム間処理では、階級の間隔を狭くした場合、およびフレーム数(測定回数)を少なくした場合、他の階級で偶然、ショットノイズの検出パルスのカウント数が、反射光パルスのカウント数と同数となってしまう可能性があり、この場合、ショットノイズと反射光パルスとの判別ができなくなる。
以上の点を鑑みて、本実施形態に係る距離測定装置100aは、下記の図29および図30で説明するパルス幅検閲フレーム間処理を行う。
(距離測定装置のパルス幅検閲フレーム間処理)
図29は、閾値を超えた信号を、分類されたヒストグラム階級ごとにカウントして、さらに、パルス幅の標準偏差を求めることによって対象物からの反射光を特定することを説明する図である。図30は、第2の実施形態に係る距離測定装置のパルス幅検閲フレーム間処理の一例を示すフローチャートである。図29および図30を参照しながら、本実施形態に係る距離測定装置100aのパルス幅検閲フレーム間処理について説明する。
図30に示す例では、上述の図15と同様に、1[m]ごとに階級を区分けして、測定回数を3回として、検出パルスを各階級でカウントした例を示す。図30では、さらに、閾値を超えた検出パルスの当該閾値でのパルス幅を集計し、その標準偏差σを算出し、当該標準偏差σをもって真の対象物の距離を判別する。
ショットノイズは、ランダムな大きさで閾値を超えるため、当該閾値におけるパルス幅の標準偏差σは大きく、一方、対象物の反射光パルスのパルス幅は安定しているためその標準偏差σは小さいと想定される。したがって、本実施形態に係るパルス幅検閲フレーム間処理では、パルス幅の標準偏差σが最も小さい値に対応する階級を、対象物からの反射光パルスが含まれる階級として特定する。また、図30の例では、対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するために、パルス幅の標準偏差σが1.0以下である階級を対象としている。このような処理方式(パルス幅検閲フレーム間処理)によれば、反射光パルスが検出されず、ショットノイズだけが複数の階級で検出されたとしても、パルス幅の標準偏差σの値が大きければ、ショットノイズであると判別できるので、誤測距の検知にも利用できる。
なお、対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するために、閾値を超えた検出パルスの当該閾値でのパルス幅を集計して、その標準偏差σを算出するものとしたが、これに限定されるものではなく、パルス幅の分散(ばらつきを示す値の一例)を算出するものとしてもよい。ショットノイズは、ランダムな大きさで閾値を超えるため、当該閾値におけるパルス幅の分散は大きいはずであり、一方、対象物の反射光パルスのパルス幅は安定しているためその分散は小さいと想定される。
本実施形態における、以上のような、パルス幅の標準偏差σを求めて、当該標準偏差σの大きさに基づいて対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するパルス幅検閲フレーム間処理の流れを、図30を参照しながら説明する。なお、図30に示すパルス幅検閲フレーム間処理の例では、測定回数を所定の回数(例えば、3回等)であるものとして説明する。
<ステップS31>
距離測定装置100aの投光部101は、制御部110aから出力されるLD駆動信号に従って、レーザ光(射出光パルス)を射出(投光)する。距離測定装置100aの光検出部102は、投光部101から射出された射出光パルスが物体で反射された反射光、および、それ以外の光(ノイズ等)を受光することによって検出パルス(検出信号)として検出する。光検出部102は、検出した検出パルス(検出信号)を制御部110aおよび判定部103へ出力する。そして、ステップS32へ移行する。
<ステップS32>
距離測定装置100aの判定部103は、光検出部102により検出された検出信号の大きさ(例えば、電圧)が所定の閾値を超えたか否かを判定する。閾値を超えた場合(ステップS32:Yes)、距離測定装置100aの計測部104は、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号の受光タイミングを求め、当該受光タイミングと、制御部110aからのLD駆動信号の立上りタイミングとに基づいて、物体(対象物)等の往復時間を計測する。計測部104は、時間の計測結果を示す計測データを制御部110aへ出力する。そして、ステップS33へ移行する。
一方、閾値を超えていない場合(ステップS32:No)、ステップS44へ移行する。
<ステップS33>
距離測定装置100aの距離算出部111は、計測部104から受け取った時間についての計測データに基づいて、距離に換算する(距離を算出する)。そして、ステップS34へ移行する。
<ステップS34>
距離測定装置100aの信号情報取得部112aは、光検出部102により検出された検出信号のうち、判定部103により閾値を超えたと判定された検出信号(検出パルス)のパルス幅を抽出して取得する。そして、ステップS35へ移行する。
<ステップS35>
距離測定装置100aのカウント部114は、任意の距離間隔でのヒストグラムを作成するため区切られた距離についての階級に対して、閾値を超えたと判定された検出パルス(検出信号)の個数を、それぞれの階級ごとにカウントする。そして、ステップS36へ移行する。
<ステップS36>
所定の測定回数分だけ、距離算出部111による距離の算出、およびカウント部114によるカウント処理の処理が実行された場合(ステップS36:Yes)、ステップS37へ移行し、実行されていない場合(ステップS36:No)、ステップS31へ戻る。
<ステップS37>
距離測定装置100aの標準偏差算出部117は、カウント部114によってカウントされた階級ごとカウント値の各測定での合計値(合計個数)が2以上の階級があるか否かを判定する。ここで、標準偏差算出部117により合計値(合計個数)が2以上の階級があるか否かが判定されるのは、2以上のパルス幅のデータがないと当該パルス幅の標準偏差を求めることができないためである。合計値が2以上の階級がある場合(ステップS37:Yes)、ステップS38へ移行し、合計値が2以上の階級がない場合(ステップS37:No)、ステップS46へ移行する。
<ステップS38>
距離測定装置100aの標準偏差算出部117は、カウント部114によってカウントされた階級ごとカウント値の各測定での合計値(合計個数)が最も多いすべての階級に対応するパルス幅の標準偏差をそれぞれ算出する。そして、ステップS39へ移行する。
<ステップS39>
標準偏差算出部117により算出された標準偏差が1以下の階級が1以上ある場合(ステップS39:Yes)、ステップS40へ移行し、標準偏差が1以下の階級が1以上ない場合(ステップS39:No)、ステップS46へ移行する。
<ステップS40>
標準偏差が1以下の階級が1のみ存在する場合(ステップS40:Yes)、ステップS41へ移行し、標準偏差が1以下の階級が2以上存在する場合(ステップS40:No)、ステップS42へ移行する。
<ステップS41>
距離測定装置100aの特定部115aは、標準偏差算出部117により算出された標準偏差が1以下の階級が1つのみ存在する場合、当該階級を対象物に係る階級として特定する。すなわち、特定部115aは、当該階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定する。そして、ステップS43へ移行する。
<ステップS42>
距離測定装置100aの特定部115aは、標準偏差算出部117により算出された標準偏差が1以下の階級が2以上存在する場合、当該階級のうち標準偏差が最も小さい階級を、対象物に係る階級として特定する。すなわち、特定部115aは、当該階級に属する検出信号(検出パルス)を、対象物からの反射光信号(反射光パルス)として特定する。そして、ステップS43へ移行する。
<ステップS43>
距離測定装置100aの最終距離算出部116は、特定部115aにより特定された対象物からの各反射光信号(反射光パルス)について、距離算出部111により算出された各距離の平均値を、対象物からの距離として算出する。最終距離算出部116は、算出した対象物からの距離についての距離データを、例えば、通信部122を介して、物体認識データに含めて、ECU200へ送信する。そして、パルス幅検閲フレーム間処理が終了する。
<ステップS44>
距離測定装置100aの制御部110aは、判定部103によって、光検出部102により検出された検出信号の大きさが閾値を超えていない場合、対象物がない、または、他の物体等による衝突等の危険性がないと判断する。そして、ステップS45へ移行する。
<ステップS45>
制御部110aは、光検出部102から受け取った検出パルスの情報を破棄する。そして、ステップS31へ戻る。
<ステップS46>
制御部110aは、標準偏差算出部117によって、カウント部114によりカウントされた階級ごとカウント値の各測定での合計値(合計個数)が2以上の階級がないと判定された場合、および、標準偏差算出部117により算出された標準偏差が1以下の階級が1以上ない場合、測距が不可であると判断する。そして、パルス幅検閲フレーム間処理が終了する。
以上のステップS31~S46によって、パルス幅検閲フレーム間処理が実行され、物体(対象物)までの距離が算出される。
なお、図30のステップS39~S42では、標準偏差が1以下の階級であって、標準偏差が最も小さい階級を、対象物に係る階級として特定するものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、単に、ステップS38で算出された標準偏差のうち最も小さい標準偏差に対応する階級を対象物に係る階級として特定するものとしてよい。また、ステップS39において標準偏差が1以下の階級について判定されているが、標準偏差が1以外の値に基づいて判定されるものとしてもよい。
以上のように、本実施形態に係る距離測定装置100aは、閾値を超えた検出パルスの当該閾値でのパルス幅を集計し、その標準偏差を算出し、標準偏差が最も小さい値に対応する階級を、対象物からの反射光パルスが含まれる階級として特定するパルス幅検閲フレーム間処理を行う。すなわち、ショットノイズは、ランダムな大きさで閾値を超えるため、当該閾値におけるパルス幅の標準偏差は大きく、一方、対象物の反射光パルスのパルス幅は安定しているためその標準偏差は小さいと想定されるので、標準偏差が最も小さい値に対応する階級を、対象物からの反射光パルスが含まれる階級として特定する。これによって、対象物からの反射光の検出信号と、ノイズとを精度よく区別して、対象物までの距離の測定の精度を向上させることができる。
また、対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するために、パルス幅の標準偏差が所定値(例えば、1等)以下である階級を対象としている。これによって、反射光パルスが検出されず、ショットノイズだけが複数の階級で検出されたとしても、パルス幅の標準偏差の値が大きければ、ショットノイズであると判別できるので、誤測距を検知することができる。
また、長距離下における対象物の測距、反射率が低い対象物に対する測距、または西日等の外乱光が強い環境下での対象物の測距のように、対象物からの反射光パルスの大きさに対してノイズの大きさが無視できない程度に大きい状況において、パルス幅のばらつきを示す標準偏差に基づいて対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するので、反射光パルスを検出するための閾値を低く設定しても、ノイズと反射光パルスとを高い精度で判別することができる。また、最低でも測定回数が2回あれば標準偏差を算出できるので、最低でも2回の測定によりパルス幅検閲フレーム間処理が可能であり、ノイズと反射光パルスとの判別が可能となる。
(パルス幅検閲フレーム間処理と、フレーム間処理および単一フレーム処理との比較)
図31は、第2の実施形態に係るパルス幅検閲フレーム間処理を行う場合における閾値の違いによる測距成功率の変動を説明する図である。図32は、フレーム間処理を行う場合における閾値の違いによる測距成功率の変動を説明する図である。図33は、単一フレーム処理を行う場合における閾値の違いによる測距成功率の変動を説明する図である。図31~図33を参照しながら、本実施形態に係るパルス幅検閲フレーム間処理と、フレーム間処理および単一フレーム処理との比較結果について説明する。ここで、単一フレーム間処理とは、測定回数を複数とせず1回(すなわち、単一のフレーム)とし、通常の閾値判定のみよる測距の処理を示すものとする。
図31~図33に示すパルス幅検閲フレーム間処理、フレーム間処理および単一フレーム間処理では、閾値(電圧)を100、200、300および400[mV]にそれぞれ設定し、各処理において対象物までの実距離に応じて測距成功率がどのように推移するかについて検証した。使用したオシロスコープにおいては、サンプリングレートを4[GSa/S]、横軸を2[μs/div]としてショットノイズを算出した。各処理について、10~100[m]の範囲で10[m]間隔で行い、パルス幅検閲フレーム間処理およびフレーム間処理での測定回数を3回とした。また、パルス幅検閲フレーム間処理では、パルス幅の標準偏差σが1.0以下である階級を対象に、対象物からの反射光パルスが含まれる階級を特定するものとした。また、パルス幅の標準偏差σが1.0以下の階級が2以上ある場合には、標準偏差σが最も小さい階級を対象物からの反射光パルスが含まれる階級として特定するものとした。また、ヒストグラムの階級の間隔を1[m]とし、測距成功率を算出するためのN数を100回とした。
図31に示すパルス幅検閲フレーム間処理の結果では、西日を想定した大きなショットノイズの環境下でも、ショットノイズに埋もれてしまう閾値100[mV]および200[mV]において、80[%]以上の測距成功率を示した。また、このように閾値100[mV]および200[mV]のような低い閾値の設定が可能になると、測距可能な距離が延び、特に、閾値が100[mV]の場合、100[m]までの測距について50[%]以上の測距成功率となっていることがわかる。
図32に示すフレーム間処理の結果では、西日を想定した大きなショットノイズの環境下でも、ショットノイズに埋もれてしまう閾値100[mV]および200[mV]において、50[%]以上の測距成功率を示し、このように閾値100[mV]および200[mV]のような低い閾値の設定が可能になると、測距可能な距離が延びることがわかる。ただし、図31に示すパルス幅検閲フレーム間処理の方が、高い測距成功率が得られている。
図33に示す単一フレーム処理の結果では、ショットノイズよりも十分に高い閾値に設定すると、近距離での測距成功率は、図31および図32と比較してほとんど違わないが、遠距離の場合、急激に測距成功率が下がり測距をすることができないことがわかる。また、遠距離を測距するために閾値を下げると、ショットノイズと反射光パルスとの区別ができなくなり、極端に測距成功率が下がることとなった。
なお、第1の実施形態に係る回数設定フレーム間処理と、および第2の実施形態に係るパルス幅検閲フレーム間処理とを組み合わせた処理とすることも可能である。すなわち、ピーク値に基づいて測定回数を決定し、その決定した測定回数において、パルス幅を抽出して、当該パルス幅の標準偏差を算出し、当該標準偏差に基づいて対象物からの反射光パルスが含まれる階級として特定するものとしてもよい。
また、上述の各実施形態および各変形例に係る距離測定装置100(100a)は、自動車、自動車以外の車両、航空機、船舶およびロボット等の移動体に搭載されるものとしてよい。これによって、対象物までの距離の測定の精度を向上させた距離測定装置100、100aにより、安全性に優れた移動体を得ることができる。
また、上述の各実施形態および各変形例において、距離測定装置100(100a)のの各機能部の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の各実施形態および各変形例に係る距離測定装置100(100a)で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態および各変形例に係る距離測定装置100(100a)で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態および各変形例に係る距離測定装置100(100a)で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の各実施形態および各変形例の距離測定装置100(100a)で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては制御部46が上述の記憶装置(例えば、記憶部48)からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。