JP7067856B2 - スタンドアップパウチ用多層構造体 - Google Patents
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Description
さらに、スタンドアップパウチにおいて、特許文献2記載のEVOH層を有する多層構造体を用いた場合、輸送により屈曲を受けた後のガスバリア性低下問題は改善されるものの、落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合、多層構造体に亀裂が生じたり、場合によっては多層構造体が割れ、スタンドアップパウチの内容物が漏れたりする恐れがあった。
(1)基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層を有し、前記ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)が、熱可塑性エラストマーを含有し、かつ前記ヒートシール樹脂(D)層における前記熱可塑性エラストマーの濃度が、基材フィルム(A)側に対して反対側表面層が基材フィルム(A)側表面層よりも低濃度であることを特徴とするスタンドアップパウチ用多層構造体。
(2)前記ヒートシール樹脂(D)層における前記熱可塑性エラストマーの、前記基材フィルム(A)側表面層の濃度と前記基材フィルム(A)側に対して反対側表面層の濃度の差が、3質量%以上である前記(1)に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(3)前記ヒートシール樹脂(D)層における前記基材フィルム(A)側とは反対側表面層における前記熱可塑性エラストマーの濃度が、1~50質量%である前記(1)又は(2)に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(4)前記樹脂組成物(d)中の前記熱可塑性エラストマーの含有量が、1~90質量%であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(5)前記熱可塑性エラストマーの密度が、0.85~0.96g/cm3であることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(6)前記熱可塑性エラストマーの23℃、50%RHにおける曲げ弾性率が150MPa未満であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(7)前記熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)が、210℃、荷重2160gの条件下で、0.01~150g/10分であることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(8)前記樹脂組成物(d)がポリオレフィン系樹脂を含有し、該ポリオレフィン系樹脂の含有量が10~99質量%であることを特徴とする前記(1)~(7)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(9)前記ヒートシール樹脂(D)層の厚みと、スタンドアップパウチ用多層構造体の全厚みの比が、ヒートシール樹脂(D)層の厚み/全厚みにて、0.2~0.8であることを特徴とする前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(10)前記ヒートシール樹脂(D)層が、2層以上の樹脂層からなることを特徴とする前記(1)~(9)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(11)前記基材フィルム(A)と前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層との間に、ポリアミド系樹脂(B)層を有することを特徴とする前記(1)~(10)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(12)前記ポリアミド系樹脂(B)層の厚みが1~100μmであることを特徴とする前記(11)に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(13)前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚みが1~35μmであることを特徴とする前記(1)~(12)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(14)前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚み(Tc)と前記ポリアミド系樹脂(B)層の厚み(Tb)との比(Tc/Tb)が、0.02~10であることを特徴とする前記(11)~(13)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(15)前記基材フィルム(A)が、ポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする前記(1)~(14)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(16)熱水殺菌処理を施すスタンドアップパウチに用いることを特徴とする前記(1)~(15)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(17)前記(1)~(16)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体を含むことを特徴とするスタンドアップパウチ。
ものであり、これらの内容に特定されるものではない。
また、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」等の語は、図面の方向に対応する便宜的なものである。
また、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい、「シート」とは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体は、基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層を有するものである。
より具体的に、図1に示すように、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体10は、基材フィルム(A)1と多層材20とで構成され、該多層材20が少なくともエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層3とヒートシール樹脂(D)層4を含み、ヒートシール樹脂(D)層4が基材フィルム(A)1側とは反対側に位置するようにして、多層材20が基材フィルム(A)1と積層されて構成される。
以下、各層について説明する。
本発明で用いる基材フィルム(A)としては、これが、本発明に係るスタンドアップパウチを構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等において優れた強度を有し、更に、耐突き刺し性、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、透明性等に優れた樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。
本発明においては、上記のような理由から、基材フィルム(A)の厚みは、5~100μmであることが好ましく、特には10~50μmが好ましい。
エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層はEVOHからなるものであってもよく、EVOH以外の任意の成分が含まれたEVOH樹脂組成物からなる層であってもよい。
該ポリアミド系樹脂としては、公知のものを用いることができる。例えば、後述するポリアミド系樹脂(B)と同様のものを用いることができる。
本発明で用いるヒートシール樹脂(D)層は、熱によって溶融し相互に融着し得る層である。特に本発明では、ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)が、熱可塑性エラストマーを含有し、かつヒートシール樹脂(D)層における前記熱可塑性エラストマーの含有濃度が、多層構造体の厚さ方向における基材フィルム(A)側に対して反対側表面層が基材フィルム(A)側表面層よりも低濃度であることが重要である。
本発明にいう、熱可塑性エラストマーとは、例えば、サーモランやタフマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、ラバロンやタフテック等のスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストラン等のウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、樹脂組成物(d)における分散性が優れる点で、好ましくはオレフィン系熱可塑性エラストマーである。
特にオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、炭素-炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマーであるオレフィンを主モノマーとし、通常、数平均分子量1万以上の高分子で、主鎖が炭素結合のみで構成される親油性ポリマーをいう。
中でも、スタンドアップパウチに十分な自立性を付与するという観点から、フィルム自体に靱性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もしくはポリプロピレンが好ましい。さらには、比較的高温(120℃以上)での熱水殺菌処理後の溶出を抑制する観点から、ポリプロピレンが特に好ましい。
このようにヒートシール樹脂(D)層における上記熱可塑性エラストマーの含有濃度を変化させる方法としては、例えば、上記熱可塑性エラストマーの含有濃度が異なる複数の樹脂組成物(d)を調製し、図1に示したように、熱可塑性エラストマーの含有濃度が高い樹脂組成物(d)により得られる熱可塑性エラストマー高濃度ヒートシール樹脂層4aを基材フィルム(A)側に、熱可塑性エラストマーの含有濃度が低い樹脂組成物(d)により得られる熱可塑性エラストマー低濃度ヒートシール樹脂層4bを基材フィルム(A)側とは反対側に位置させて、ヒートシール樹脂(D)層4を形成する方法が挙げられる。なお、ヒートシール樹脂(D)層を2種の樹脂組成物(d)で形成する場合は、基材フィルム(A)側に熱可塑性エラストマーの含有濃度の高い樹脂組成物(d)を位置させてヒートシール樹脂(D)層を形成し、ヒートシール樹脂(D)層を3種以上の樹脂組成物(d)で形成する場合は、基材フィルム(A)側表面層を形成する樹脂組成物(d)中の熱可塑性エラストマーの濃度が基材フィルム(A)とは反対側表面層を形成する樹脂組成物(d)中の熱可塑性エラストマーの濃度よりも高くなれば、中間に位置する層の熱可塑性エラストマーの含有濃度は基材フィルム(A)側表面層の濃度よりも高くても低くてもよい。
上記の様に、本発明におけるヒートシール樹脂(D)層は、単層ないし多層で構成することができる。ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの含有濃度の調整が容易であるという観点から、多層構造であることが好ましい。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体には、さらにポリアミド系樹脂(B)層を有することが好ましい。ポリアミド系樹脂(B)層を有することで、熱水処理により殺菌する殺菌処理後のガスバリア性回復を早めることができる。図2に示すように、ポリアミド系樹脂(B)層2は、例えば、基材フィルム(A)1とエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層3との間に設けることができる。
ポリアミド系樹脂(B)層の厚みが薄すぎると、レトルト処理後のガスバリア性の回復速度が遅くなる傾向があり、厚すぎると、結果的にスタンドアップパウチ全体の厚みが厚くなってしまうことで、剛性が大きくなり、スタンドアップパウチに実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体には、上記基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層以外にさらに、他の樹脂層を有していてもよく、また、他の樹脂層が積層される位置は任意である。
接着樹脂層は、各層の接着強度を高めるために設けられる。接着樹脂層が適切に配置されていない場合、わずかな力で各層が剥離してしまい、スタンドアップパウチとしての使用に耐えられなくなる傾向がある。当該接着樹脂層は、任意の位置に設けられる。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体における層構成は、上記の様に基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層を有する。通常、スタンドアップパウチは複数のシートの任意の面をシールして作成するため、かかる構成とすることにより、スタンドアップパウチを作製する際にヒートシール樹脂(D)層を対向させてシールすることが可能となるため、得られるスタンドアップパウチの接着強度が向上する傾向がある。
また、ポリアミド系樹脂(B)層は、EVOH(C)層の外側、すなわち、基材フィルム(A)とEVOH(C)層の間に配置することが、殺菌処理後のガスバリア性の回復速度が速くなるので、好ましい。
上記層構成において接着樹脂層は任意に有することが可能である。
本発明の効果を効率的に得られる点で好ましくは基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ヒートシール樹脂(D)層であり、特に好ましくは基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂(D)層である。
但し、本発明では、該ポリアミド系樹脂(B)層の両面に、該EVOH(C)層が隣接してなる構成を除く。
本発明において、基材フィルムを含むスタンドアップパウチ用多層構造体の全厚は、11~600μmが好ましく、更に好ましくは50~300μm、特に好ましくは70~280μm、更には80~260μmが好ましい。全厚が薄すぎると、自立性を保持するための剛性が得られない傾向がある。また、厚すぎると、剛性が大き過ぎて、スタンドアップパウチに実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。本発明における開口性とは、被包装物の充填において包装袋口への空気等のガス吹き付けに対して容易に開口し、自動包装に対応できる特性をいう。
ポリアミド系樹脂(B)層を複数有する場合、EVOH(C)層の厚み(Tc)とポリアミド系樹脂(B)層の厚み総和(Tbt)との比(Tc/Tbt)としては、0.01~8であることが好ましく、より好ましくは0.05~4、特に好ましくは0.1~1.5である。
かかる厚み比が小さすぎると、ガスバリア性が低下する傾向があり、大きすぎるとレトルト後のガスバリア性回復が遅くなる傾向がある。
なお、EVOH(C)層が複数層の場合は、該層厚みの和が、上記範囲であればよい。
さらに、ヒートシール樹脂(D)層の厚みと、EVOH(C)層の厚み(Tc)の厚み比は、EVOH(C)層の厚み(Tc)/ヒートシール樹脂(D)層の厚みにて、通常0.05~0.8、好ましくは0.1~0.5であり、特に好ましくは0.2~0.4である。かかる厚みが上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
また、ヒートシール樹脂(D)層の厚みと、基材フィルム(A)の厚みの厚み比は、基材フィルム(A)の厚み/ヒートシール樹脂(D)層の厚みにて、通常0.05~0.5、好ましくは0.1~0.4であり、特に好ましくは0.15~0.3である。かかる厚みが上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
なお、ヒートシール樹脂(D)層が2層以上の樹脂層からなる場合はその合計厚みにて考えるものとする。
次に、上記基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、EVOH(C)層、ヒートシール樹脂(D)層を有する多層構造体の製造方法について説明する。
本発明で用いるEVOH(C)層を含む多層材の積層は、溶融成形法、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等で行うことができる。中でも、溶剤を使用しないという環境面、別工程でラミネートを実施する必要がないというコスト面から溶融成形法が好ましい。かかる溶融成形方法としては、公知の手法が採用可能である。例えば、押出成形法(T-ダイ押出、チューブラーフィルム押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150~300℃の範囲から、適宜選択される。
上記基材フィルム(A)と上記多層材を積層する方法としては、通常の包装材料を製造するときに使用する積層法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等で行うことができる。
而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、その積層する基材の表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を任意に施すことができる。
また、上記において、押出ラミネートするときには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等を溶融押出ラミネート用樹脂として使用することができる。
本発明のスタンドアップパウチは、上記本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体により形成される。スタンドアップパウチは、胴部及び胴部に対して垂直方向に設けられた底部を有し、内容物を充填した際に自立出来る剛性を有する。
図3は、本発明のスタンドアップパウチの一例を示す全体斜視図である。本発明のスタンドアップパウチ5は、表裏二枚の胴部シート6,6と底部シート7からなっている。胴部シート6および底部シート7は、可撓性を有したシートであり、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を所望の大きさに切り取ったものである。本発明の多層構造体は、多層材側が内側に位置するように、すなわち基材フィルム(A)1側が外側に位置するように配置される。
二枚の胴部シート6,6の下部の間に底部シート7が折り畳まれた状態で挿入され、胴部シート6,6の下部縁部と底部シート7の周縁部がシールされることにより底部シール部8が形成され、重ねられた胴部シート6,6の左右の縁部がシールされることによりサイドシール部9が形成される。これにより、内容物が充填された状態で、底部シート7が拡開しスタンドアップパウチになる。
スタンドアップパウチの寸法としては、継ぎ口等を含まない多層構造体部分の寸法にて、例えば、幅Wが50~1000mm、好ましくは100~500mm、特に好ましくは100~200mm、高さHが50~1000mm、好ましくは100~500mmであり、特に好ましくは150~300mm、底部の奥行きDが10~500mm、好ましくは20~300mm、特に好ましくは30~100mmである。高さHと幅Wの比(H/W)が例えば0.2~5であり、好ましくは1~3であり、特に好ましくは1より大きく1.5以下である。かかる範囲にある場合、スタンドアップパウチの視認性や陳列効率が良くなる傾向がある。前記寸法は、スタンドアップパウチを構成する胴部シート6及び底部シート7のサイズを調整することにより所望の寸法とすることができる。なお、自立式のパウチとするために底部シートは折り畳まれた状態で挿入されるが、パウチの自立状態で、底部シートは折り畳まれた状態から開いた状態となる。シート7自体は長方形であるが、スタンドアップパウチの底部の奥行きDを上記範囲とするために、底部シート7はヒートシール部位を調整することにより略楕円形状に形成され、かかる底部シート7が形成する略楕円形のサイズは、長径を胴部シート6の幅と同じサイズとし、短径は10~500mm、好ましくは20~300mm、特に好ましくは30~100mmとすることが好ましい。かかる短径は通常上記底部奥行Dの1~1.5倍である。
基材フィルム(A)の片面に、例えば、ウレタン系樹脂をバインダーとしたグラビアインキを用いてグラビア印刷を行うことが可能である。このとき、上記基材フィルム(A)の印刷面に、上記多層材を、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法にて貼り合わせを行う。この場合、接着剤は、印刷面の全面に塗布され貼り合わせることによって、多層構造体を形成する。形成した多層構造体は、基材フィルム/印刷層/多層材になる。
なお、本発明のスタンドアップパウチは、上記胴部シート、底部シートの少なくとも1部に本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を用いることにより得られる。本発明の効果をより効果的に得られる点で、上記胴部シート、底部シートの全てにおいて本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を用いた、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体からなるスタンドアップパウチが最も好ましい。
なお、本発明によって得られるスタンドアップパウチは、熱水処理による殺菌処理に供するものである。かかる熱水処理とは、レトルト処理、ボイル処理、スチーム処理等の公知の水存在下で行われる加熱殺菌技術を意味する。その条件はパウチに充填する内容物により選択することが可能であるが、通常60~150℃にて、通常1~150分処理するものである。
特に、EVOH層を有する多層構造体を用い、内容物が充填されたスタンドアップパウチに熱水殺菌処理を行う場合、得られるスタンドアップパウチの耐落袋性が低下する傾向がある。したがって、本発明を、熱水殺菌処理を施すスタンドアップパウチに適用する場合、本発明の効果がより効率的に得られる傾向がある。さらには、高温加圧条件下であるレトルト処理に供する場合に、本発明の効果がより効率的に得られる傾向がある。かかるレトルト処理とは、水存在下にて通常100~140℃、好ましくは105~135℃で通常1~120分間、好ましくは2~90分間処理するものである。
本発明にかかる熱水殺菌処理用スタンドアップパウチを構成する包装用袋内に充填包装する内容物としては、例えば、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体スープ、調味料、飲料水、その他等の各種の飲食品、具体的には、例えば、カレー、シチュー、スープ、ミートソース、ハンバーグ、ミートボール、しゅうまい、おでん、お粥等の流動食品、ゼリー状食品、調味料、水、その他等の各種の飲食品等を挙げることができる。特に本発明においては、内容物が液体を含む場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
尚、例中「部」とあるのは、質量基準を意味する。
以下の材料を用いて、多層構造体を作製した。
・基材フィルム(A):延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、フタムラ化学株式会社製、グレード:FE2001A、厚み:12μm
・ポリアミド系樹脂(B):ナイロン6-66、DSM社製「ノバミッド」、グレード:2430J
・EVOH(C):エチレン含有量:29.4モル%、ケン化度:99.7モル%、MFR:5.2g/10分(230℃、荷重2160g)のEVOH
・ヒートシール樹脂(D):ポリプロピレン、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP」、グレード:BC6DRF
・熱可塑性エラストマー:三井化学株式会社製「タフマー」、グレード:A4085S、下記物性を有するエチレン-ブテンランダム共重合体
密度 :0.89g/cm3
曲げ弾性率 :30MPa
MFR(210℃、2160g荷重):5.2g/10min
・接着樹脂:三菱化学株式会社製「モディック」、グレード:P553A
ヒートシール樹脂(D)層1:ヒートシール樹脂(D)80質量部に対し、熱可塑性エラストマーを20質量部添加した。
ヒートシール樹脂(D)層2:ヒートシール樹脂(D)90質量部に対し、熱可塑性エラストマーを10質量部添加した。
(熱可塑性エラストマーの添加方法)
Tダイ法による製膜時、事前に、ヒートシール樹脂(D)に、所定量の熱可塑性エラストマーをドライブレンドすることにより添加した。
まず、多層材を製造し、該多層材と基材フィルム(A)を積層することにより、多層構造体を製造した。
Tダイ法による製膜をし、ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/EVOH(C)層(20μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層1(45μm)/ヒートシール樹脂(D)層2(10μm)の多層材を得た。
基材フィルム(A)と上記で得られた多層材を、ドライラミネート用接着剤(主剤:東洋モートン社製「TM-242A」、硬化剤:東洋モートン社製「CAT-RT37L」、上記主剤:上記硬化剤:酢酸エチル=17:1.5:19.2)を用いて、ドライラミネートすることによって、多層構造体を作製した。
ラミネート条件:20℃の環境下で貼り合わせ、40℃にて48時間エージング
かかる多層構造体のヒートシール樹脂(D)層全体における、基材フィルム(A)側とは反対側表面層を構成する樹脂組成物(d)における熱可塑性エラストマーの含有量は、10質量%であり、基材フィルム(A)側表面層を構成する樹脂組成物(d)における熱可塑性エラストマーの含有量は、20質量%であった。また、かかる多層構造体のヒートシール樹脂(D)層全体における樹脂組成物(d)の熱可塑性エラストマーの含有濃度は、各層の濃度に各層の厚み比をかけた値にて18.2質量%であった。
ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの添加量を下記の通りに変更する以外は、実施例1と同様に多層材および多層構造体を作製した。
〔熱可塑性エラストマーの添加量〕
ヒートシール樹脂(D)層1:ヒートシール樹脂(D)60質量部に対し、熱可塑性エラストマーを40質量部添加した。
ヒートシール樹脂(D)層2:ヒートシール樹脂(D)90質量部に対し、熱可塑性エラストマーを10質量部添加した。
かかる多層構造体のヒートシール樹脂(D)層全体における、基材フィルム(A)側とは反対側表面層を構成する樹脂組成物(d)における熱可塑性エラストマーの含有量は、10質量%であり、基材フィルム(A)側表面層を構成する樹脂組成物(d)における熱可塑性エラストマーの含有量は、40質量%であった。また、かかる多層構造体のヒートシール樹脂(D)層全体における樹脂組成物(d)の熱可塑性エラストマーの含有濃度は、各層の濃度に各層の厚み比をかけた値にて34.5質量%であった。
以下の材料を用いて、多層構造体を作製した。
・基材フィルム(A):延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、フタムラ化学株式会社製、グレード:FE2001A、厚み:12μm
・ポリアミド系樹脂(B):ナイロン6、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」、グレード:1020
・EVOH(C):エチレン含有量:29.4モル%、ケン化度:99.7モル%、MFR:5.2g/10分(230℃、荷重2160g)のEVOH
・ヒートシール樹脂(D):ポリプロピレン、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP」、グレード:BC6DRF
・接着樹脂:ポリプロピレン系接着樹脂、三菱化学株式会社製「モディック」、グレード:614V
まず、多層材を製造し、該多層材と基材フィルムを積層することにより、多層構造体を製造した。
Tダイ法による製膜をし、ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/EVOH(C)層(20μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層(55μm)の多層材を得た。
〔製膜条件〕
・ポリアミド系樹脂層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・EVOH層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:230℃)
・接着樹脂層:32mmφ単軸押出機(バレル温度:200℃)
・ヒートシール樹脂層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:210℃)
・ダイ:フィードブロックダイ(ダイ温度:230℃)
・冷却ロール温度:50℃
基材フィルム(A)と上記で得られた多層材を、ドライラミネート用接着剤(主剤:東洋モートン社製「TM-242A」、硬化剤:東洋モートン社製「CAT-RT37L」、上記主剤:上記硬化剤:酢酸エチル=17:1.5:19.2)を用いて、ドライラミネートすることによって、多層構造体を作製した。
ラミネート条件:20℃の環境下で貼り合わせ、40℃にて48時間エージング
実施例1、実施例2、比較例1にて得られた多層構造体を下記のように評価した。
各構成の多層構造体によりスタンドアップパウチ(幅140mm×高さ180mm×底部の短径60mm、底部の奥行き58mm)を3個作製した。得られた各パウチに、水300ccを入れ、上辺をヒートシールした。次に、水の入ったパウチを、1mの高さからパウチの底部が床(コンクリートの上に、厚さ2.0mmのビニール素材を接着剤を介して構成した床)と並行になる状態で自由落下させ、20回以内の落下で水漏れが生じるパウチの個数をカウントした。
結果を表1に示す。
各構成の多層構造体によりスタンドアップパウチ(幅140mm×高さ180mm×底部の短径60mm、底部の奥行き58mm)を3個作製した。得られた各パウチに、水300ccを入れ、上辺をヒートシールした。次に、水の入ったパウチを、浸漬式熱水処理装置(株式会社日阪製作所製)を用いて、120℃で30分間熱水処理を実施した後、熱水処理装置より取り出して、23℃、50%RH環境下で7日間静置した。その後、水の入ったパウチを、1mの高さからパウチの底部が床(コンクリートの上に、厚さ2.0mmのビニール素材を接着剤を介して構成した床)と並行になる状態で自由落下させ、パウチの水漏れまでの平均落下回数を算出した。
結果を表1に示す。
表1の結果より、比較例1のEVOHパウチには、耐落袋性に改善の余地があることがわかる。これに対し、EVOH層に熱可塑性エラストマーを含有させると共に、EVOH層における熱可塑性エラストマーの濃度を基材フィルム側に位置する方を高くすることで、耐落袋性が熱水処理前、処理後共に向上したことがわかった(実施例1、2)。
そこで、発明者らはヒートシール層に、熱可塑性エラストマーを配合し、かつその濃度が厚さ方向における基材フィルム側に対して反対側表面が基材フィルム側表面よりも低濃度である構成とすることにより(実施例1、2)、スタンドアップパウチとしての自立性を保ちながらも、落下時の衝撃を緩和させることができることがわかった。
2 ポリアミド系樹脂(B)層
3 EVOH(C)層
4 ヒートシール樹脂(D)層
4a 熱可塑性エラストマー高濃度ヒートシール樹脂層
4b 熱可塑性エラストマー低濃度ヒートシール樹脂層
5 スタンドアップパウチ
6 胴部シート
7 底部シート
8 底部シール部
9 サイドシール部
10 スタンドアップパウチ用多層構造体
20 多層材
Claims (13)
- 二枚の胴部シートと底部シートからなるスタンドアップパウチを構成するための多層構造体であって、
基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層を有し、
前記ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)が、熱可塑性エラストマーを含有し、
前記ヒートシール樹脂(D)層が、2層以上の樹脂層からなり、かつ
前記ヒートシール樹脂(D)層における前記熱可塑性エラストマーの濃度が、基材フィルム(A)側に対して反対側表面層が基材フィルム(A)側表面層よりも低濃度である(ただし、前記2層以上の樹脂層における前記基材フィルム(A)側の樹脂層中の熱可塑性エラストマーの含有量が30質量%以上である場合を除く。)ことを特徴とするスタンドアップパウチ用多層構造体。 - 前記熱可塑性エラストマーの密度が、0.85~0.96g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記熱可塑性エラストマーの23℃、50%RHにおける曲げ弾性率が150MPa未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)が、210℃、荷重2160gの条件下で、0.01~150g/10分であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記ヒートシール樹脂(D)層の厚みと、スタンドアップパウチ用多層構造体の全厚みの比が、ヒートシール樹脂(D)層の厚み/全厚みにて、0.2~0.8であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記ヒートシール樹脂(D)層の厚みと、前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚み(Tc)の比が、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚み(Tc)/ヒートシール樹脂(D)層の厚みにて、0.05~0.8であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記基材フィルム(A)と前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層との間に、ポリアミド系樹脂(B)層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記ポリアミド系樹脂(B)層の厚みが1~100μmであることを特徴とする請求項7に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚みが1~35μmであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層の厚み(Tc)と前記ポリアミド系樹脂(B)層の厚み(Tb)との比(Tc/Tb)が、0.02~10であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 前記基材フィルム(A)が、ポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 熱水殺菌処理を施すスタンドアップパウチに用いることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
- 二枚の胴部シートと底部シートからなるスタンドアップパウチであって、
請求項1~12のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体を含むことを特徴とするスタンドアップパウチ。
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