JP7065563B2 - 難燃材料 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性無機粒子と繊維との複合体を用いた難燃材料に関する。
繊維は、その表面の官能基などに基づいて種々の特性を発揮するが、用途によっては表面を改質する必要が生じる場合もあり、これまで、繊維を表面改質する技術が開発されてきている。
例えば、セルロース繊維などの繊維上に無機粒子を析出させる技術について、特許文献1には、結晶質の炭酸カルシウムが繊維上に機械的に結合した複合体が記載されている。また、特許文献2には、パルプ懸濁液中で炭酸ガス法により炭酸カルシウムを析出させることによって、パルプと炭酸カルシウムの複合体を製造する技術が記載されている。特許文献3には、紙と板紙用として多量の填料を繊維に加えて古紙繊維の白色度と清浄度を向上させる方法であって、古紙パルプのスラリーを気体-液体接触装置に送って、流れに逆らってアルカリ塩のスラリーを流れの方向にパルプを接解領域において接解させると共に適当な反応性ガスを送り沈降性填料と混ぜることによって繊維表面に填料を付着させる技術が記載されている。
また、特許文献4・5には、繊維ウェブ(湿紙)を形成させる工程において炭酸カルシウムを析出させることによって、炭酸カルシウムが効率的に取り込まれた繊維ウェブを製造する技術が開示されている。
特開平06-158585号公報 米国特許第5679220号 米国特許第5665205号 特表2013-521417号公報 米国特許公開第2011/0000633号
本発明の課題は、無機粒子と繊維との複合体を用いた難燃材料を提供することである。
本発明の発明者らは、難燃性無機粒子と繊維との複合体を用いることによって優れた難燃材料を開発することに成功し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、これに制限されるものでないが、以下の発明を包含する。
(1) 難燃性無機粒子と繊維との複合体を含む難燃材。
(2) 前記繊維がセルロース繊維である、(1)に記載の難燃材。
(3) 難燃性無機粒子が、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトからなる群より選択される、(1)または(2)に記載の難燃材。
(4) シートの形態である、(1)~(3)のいずれかに記載の難燃材。
(5) 難燃性無機粒子と繊維との複合体シートを積層させた、(1)~(4)のいずれかに記載の難燃材。
(6) 難燃性無機粒子と繊維との複合体シートを基材に貼り合わせた、(1)~(5)のいずれかに記載の難燃材。
(7) 難燃性無機粒子の平均一次粒子径が1.5μm以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の難燃材。
(8) 難燃性無機粒子と繊維の重量比が5/95~95/5である、(1)~(7)のいずれかに記載の難燃材。
本発明によれば、難燃性無機粒子によってその表面が被覆された繊維を用いて難燃材料を提供することができる。
本発明においては無機粒子と繊維の複合体を使用するところ、このような複合体は、繊維と無機粒子の双方の特徴を持ち合わせており、本発明によれば、優れた難燃性を備えた難燃材料を得ることが可能になる。また、無機粒子が繊維に付着している複合体を用いるため、難燃材の製造も容易であり、無機粒子の歩留り(灰分歩留り)も良好である。
図1は、サンプル1の合成に用いた反応装置の模式図である(P:ポンプ)。 図2は、サンプル2の合成に用いた反応装置の模式図である(P:ポンプ)。 図3は、試験装置の模式図である。 図4は、燃焼試験後のサンプルの外観写真である(上段左から、パルプシート、シート1、シート2、下段左から、シート3、シート4)。 図5は、サンプル3-3の合成に用いた反応装置の模式図である(左図、P:ポンプ)。図5右は、ウルトラファインバブル発生部を拡大した模式図である。 図6Aは、燃焼試験後のサンプルAの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Bは、燃焼試験後のサンプルBの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Cは、燃焼試験後のサンプルCの外観写真である(左:燃焼面拡大、右:燃焼面)。 図6Dは、燃焼試験後のサンプルDの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Eは、燃焼試験後のサンプルEの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Fは、燃焼試験後のサンプルFの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Gは、燃焼試験後のサンプルGの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Hは、燃焼試験後のサンプルHの外観写真である。 図6Iは、燃焼試験後のサンプルIの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。 図6Jは、燃焼試験後のサンプルJの外観写真である(左:燃焼面、右:裏面)。
本発明は、無機粒子と繊維の複合体を用いた難燃材料に関する。
繊維
本発明においては、セルロース繊維やアラミド繊維などの繊維と無機粒子とを複合体化する。複合体を構成する繊維は、セルロース繊維であることが好ましいが、例えば、天然のセルロース繊維はもちろん、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)や合成繊維などを制限なく使用することができる。セルロース繊維の原料としては、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、セルロースナノファイバー、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、藻類などが例示され、木材パルプは、木材原料をパルプ化して製造すればよい。木材原料としては、アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ベニマツ、カラマツ、モミ、ツガ、スギ、ヒノキ、カラマツ、シラベ、トウヒ、ヒバ、ダグラスファー、ヘムロック、ホワイトファー、スプルース、バルサムファー、シーダ、パイン、メルクシマツ、ラジアータパイン等の針葉樹、及びこれらの混合材、ブナ、カバ、ハンノキ、ナラ、タブ、シイ、シラカバ、ハコヤナギ、ポプラ、タモ、ドロヤナギ、ユーカリ、マングローブ、ラワン、アカシア等の広葉樹及びこれらの混合材が例示される。
木材原料(木質原料)などの天然材料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
非木材由来のパルプとしては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、楮(こうぞ)、みつまた等が例示される。
パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、複合体シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。これにより、シート強度の向上並びに無機粒子の定着促進が期待できる。
合成繊維とセルロース繊維との複合繊維も本発明において使用することができ、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、各種金属繊維などとセルロース繊維との複合繊維も使用することができる。
また、これらセルロース原料はさらに処理を施すことで粉末セルロース、酸化セルロースなどの化学変性セルロース、およびセルロースナノファイバー:CNF(ミクロフィブリル化セルロース:MFC、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、機械粉砕CNFなど)として使用することもできる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙製)、セオラス(旭化成ケミカルズ製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100~1500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70~90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは1μm以上100μm以下である。本発明で用いる酸化セルロースは、例えばN-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することで得ることができる。セルロースナノファイバーとしては、上記セルロース原料を解繊する方法が用いられる。解繊方法としては、例えばセルロースや酸化セルロース等の化学変性セルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。上記方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。製造したセルロースナノファイバーの繊維径は電子顕微鏡観察などで確認することができ、例えば5nm~1000nm、好ましくは5nm~500nm、より好ましくは5nm~300nmの範囲にある。このセルロースナノファイバーを製造する際、セルロースを解繊及び/又は微細化する前及び/又は後に、任意の化合物をさらに添加してセルロースナノファイバーと反応させ、水酸基が修飾されたものにすることもできる。修飾する官能基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ホルミル基、ベンゾイル基、アセタール、ヘミアセタール、オキシム、イソニトリル、アレン、チオール基、ウレア基、シアノ基、ニトロ基、アゾ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミド基、イミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2-ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、オキシル基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの置換基の中の水素が水酸基、カルボキシ基等の官能基で置換されても構わない。また、アルキル基の一部が不飽和結合になっていても構わない。これらの官能基を導入するために使用する化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物、アルキル基を有する化合物、アミン由来の基を有する化合物等が挙げられる。リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸などトリカルボン酸化合物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。また、化学的に結合させなくても、修飾する化合物がセルロースナノファイバーに物理的に吸着する形でセルロースナノファイバーを修飾してもよい。物理的に吸着する化合物としては界面活性剤等が挙げられ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれを用いてもよい。セルロースを解繊及び/又は粉砕する前に上記の修飾を行った場合、解繊及び/又は粉砕後にこれらの官能基を脱離させ、元の水酸基に戻すこともできる。以上のような修飾を施すことで、セルロースナノファイバーの解繊を促進したり、セルロースナノファイバーを使用する際に種々の物質と混合しやすくしたりすることができる。
以上に示した繊維は単独で用いても良いし、複数を混合しても良い。中でも、木材パルプを含むか、若しくは、木材パルプと非木材パルプ及び/又は合成繊維との組み合わせを含むことが好ましく、木材パルプのみであることがより好ましい。
好ましい態様において、本発明の複合体を構成する繊維はパルプ繊維である。また、例えば、製紙工場の排水から回収された繊維状物質を本発明の炭酸化反応に供給してもよい。このような物質を反応槽に供給することにより、種々の複合粒子を合成することができ、また、形状的にも繊維状粒子などを合成することができる。
本発明においては、繊維の他にも、生成物である無機粒子に取り込まれて複合粒子を生成するような物質を用いることができる。本発明にいては、パルプ繊維を始めとする繊維を使用するが、それ以外にも無機粒子、有機粒子、ポリマーなどを含む溶液中で無機粒子を合成することによって、さらにこれらの物質が取り込まれた複合粒子を製造することが可能である。
複合化する繊維の繊維長は特に制限されないが、例えば、平均繊維長が0.1μm~15mm程度とすることができ、1μm~12mm、100μm~10mm、500μm~8mmなどとしてもよい。
複合化する繊維は、繊維表面の15%以上が無機粒子で被覆されるような量で使用することが好ましいが、例えば、繊維と無機粒子の重量比を、5/95~95/5とすることができ、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40としてもよい。
本発明に係る複合体は、繊維表面の15%以上が難燃性無機粒子で被覆されており、このような面積率でセルロース繊維表面が被覆されていると難燃性が大きくなる一方、繊維表面に起因する特徴が小さくなる。
難燃性無機粒子
本発明においては、難燃性の無機粒子と繊維を複合化した複合体を用いて難燃材料とする。難燃性無機粒子としては、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカが挙げられるが、特に好ましくは、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ハイドロタルサイトなどである。
(炭酸マグネシウム)
好ましい態様において本発明は、炭酸マグネシウムと繊維との複合体を難燃材料として用いる。本発明に係る複合体を構成する炭酸マグネシウム微粒子の平均粒径は好適には50μm未満であるが、平均粒径が30μm以下の炭酸マグネシウムとすることもできる。また、好ましい態様において、炭酸マグネシウム微粒子の平均一次粒子径は10nm~3μm程度とすることも可能である。
また、本発明で得られる炭酸マグネシウムは、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明において炭酸マグネシウムは、例えば、酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、ハンタイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ブルサイトおよびこれらの混合物からなる群より選択される原料から合成することができる。好ましい態様において、本発明の炭酸マグネシウムは、水酸化マグネシウムから合成される。
本発明に係る複合体は、例えば、繊維を含む溶液において炭酸マグネシウムを合成すればよい。酸化マグネシウム等に代表される水酸化マグネシム前駆体から水酸化マグネシムを得る時点で反応溶液中に繊維を分散させておくことができる。また、水酸化マグネシウムから炭酸マグネシウムを得る工程で繊維を分散させておくこともできる。いずれの場合においても、反応溶液がアルカリ性であるため、反応液に浸漬することで繊維を膨潤させ、効率よく炭酸マグネシウムと繊維の複合体を得ることができる。繊維を分散させた後、すぐに炭酸化反応を開始することもできるし、15分以上撹拌することでより繊維の膨潤を促してから炭酸化反応を開始することもできる。例えば、水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって炭酸マグネシウムを合成してもよい。後述するが、水酸化マグネシウムの水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で炭酸マグネシウムを合成することが好ましい態様である。
本発明においては、繊維を含む溶液中で炭酸マグネシウム微粒子を合成するが、炭酸マグネシウムの合成方法は、公知の方法によることができる。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスから重炭酸マグネシウムを合成し、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムを経て塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。炭酸マグネシウムは合成方法によって重炭酸マグネシウム、正炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどを得ることができるが、本発明の複合体に係る炭酸マグネシウムは、塩基性炭酸マグネシムにすることが特に好ましい。なぜならば、重炭酸マグネシウムは安定性が比較的低く、柱状(針状)結晶である正炭酸マグネシウムは繊維へ定着しにくい場合があるためである。一方、繊維の存在下で塩基性炭酸マグネシウムにまで化学反応させることで、繊維表面をうろこ状などに被覆した炭酸マグネシウムと繊維の複合体を得ることができる。
本発明は、好ましい態様において、繊維表面の15%以上が炭酸マグネシウムによって被覆されている。好ましい態様において本発明の複合体は、炭酸マグネシウムによる繊維の被覆率(面積率)が25%以上であり、より好ましくは40%以上であるが、本発明によれば被覆率が60%以上や80%以上の複合体を製造することも可能である。
本発明によって炭酸マグネシウムと繊維を複合体化しておくと、単に炭酸マグネシウムを繊維と混合した場合と比較して、炭酸マグネシウムが製品に歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。すなわち、本発明によれば、炭酸マグネシウムと繊維の複合体の製品への歩留り(投入した炭酸マグネシウムが製品中に残る重量割合)を60%以上とすることが可能であり、70%以上や90%以上とすることもできる。
本発明においては、炭酸マグネシウムを合成する際に、キャビテーション気泡を存在させることが好ましい。この場合、炭酸マグネシウムの合成ルートのすべてにおいてキャビテーション気泡を存在させる必要はなく、少なくとも1つの段階でキャビテーション気泡を存在させればよい。
例えば、塩基性炭酸マグネシウムを製造する場合、マグネシウム源として酸化マグネシウムMgOを使用し、酸化マグネシウムから得られた水酸化マグネシウムMg(OH)に炭酸ガスCOを吹き込んで重炭酸マグネシウムMg(HCOを得て、重炭酸マグネシウムから正炭酸マグネシウムMgCO・3HOを経て塩基性炭酸マグネシウムが得られる。炭酸マグネシウムを合成する際、繊維を存在させておくことによって、繊維上に塩基性炭酸マグネシウムを合成することができる。好ましい態様においては炭酸マグネシウムを合成する際にキャビテーション気泡を存在させてもよいが、本発明においては、炭酸マグネシウムのいずれかの合成段階でキャビテーション気泡を存在させておくとよい。好ましい態様においては、水酸化マグネシウムから重炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。また別の態様においては、重炭酸マグネシウムや正炭酸マグネシウムから塩基性炭酸マグネシウムを合成する段階においてキャビテーション気泡を存在させることができる。さらに別の態様においては、塩基性炭酸マグネシムを合成後、熟成させるときに存在させることができる。
一般に、炭酸マグネシウムを製造する際の反応容器として、ガス吹き込み型の装置と機械攪拌型の装置が知られている。ガス吹き込み型では、水酸化マグネシウムを入れた反応槽に炭酸ガスを吹き込み反応させるが、単純に炭酸ガスを吹き込むだけでは気泡の大きさを均一かつ微細に制御することが難しく、反応効率の点からは制限がある。一方、機械攪拌型の装置では、装置内部に攪拌機を設け、その攪拌機の近くに炭酸ガスを導入することによって、炭酸ガスを細かな気泡とし、炭酸ガスとの反応効率を向上させる。
しかし、機械攪拌型のように、反応槽内部に設けた攪拌機で攪拌を行う場合、反応液の濃度が高かったり炭酸化反応が進むと反応液の抵抗が大きく十分な攪拌が困難になるため炭酸化反応を的確に制御することが難しかったり、十分な攪拌を行うには攪拌機に相当な負荷がかかりエネルギー的に不利となることがあった。また、ガスの吹込口が反応槽の下部にあり、攪拌をよくするために攪拌機の羽根が反応槽底部の近くに設置されている場合、溶解性が低い成分が底部に滞留し、ガス吹込口を塞いだり、攪拌機のバランスを崩したりする。さらに、従来の方法では、反応槽に加えて、攪拌機や、炭酸ガスを反応槽に導入するための設備が必要であり、設備面でもコストがかかるものであった。そして、機械攪拌型の装置では、攪拌機の近くに供給した炭酸ガスを攪拌機によって細かくすることによって反応効率を向上させるものの、反応液の濃度が高い場合などは十分に炭酸ガスを微細化できず、炭酸化反応の面でも、生成する無機粒子の形態等を正確に制御することが難しいことがあった。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成することによって、効率的に炭酸化反応を進行させ、均一な炭酸マグネシウム微粒子を繊維上に製造することが可能になる。特に噴流キャビテーションを用いることで、羽根などの機械的な攪拌機なしに、十分な攪拌を行うことができる。本発明においては、従来からの公知の反応容器を用いることができ、もちろん、上述したようなガス吹き込み型や機械攪拌型の装置を問題なく使用することができ、これらの容器にノズルなどを用いた噴流キャビテーションを組合せても良い。
本発明によって炭酸マグネシウムを合成する場合、水酸化マグネシウムの水性懸濁液の固形分濃度は、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%程度である。固形分濃度が低いと反応効率が低く、製造コストが高くなり、固形分濃度が高すぎると流動性が悪くなり、反応効率が落ちる。本発明においては、キャビテーション気泡の存在下で炭酸マグネシウムを合成するため、固形分濃度の高い懸濁液(スラリー)を用いても、反応液と炭酸ガスを好適に混合することができる。
水酸化マグネシウムを含む水性懸濁液としては、一般に用いられるものを使用でき、例えば、水酸化マグネシウムを水に混合して調製したり、酸化マグネシウムを水に添加して調製することができる。酸化マグネシウムから水酸化マグネシウムのスラリーを調製する際の条件は特に制限されないが、例えば、MgOの濃度は0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、温度は20~100℃、好ましくは30~100℃として、例えば、5分~5時間(好ましくは2時間以内)の間、処理することが好ましい。装置はバッチ式であっても連続式であってもよい。なお、本発明においては水酸化マグネシウムスラリーの調製と炭酸化反応は、別々の装置を用いてもよく、また、1つの反応槽で行ってもよい。
(硫酸バリウム)
本発明において、セルロース繊維などの繊維と硫酸バリウムの複合体を用いる場合、公知の方法で合成することができる。硫酸バリウムとは、BaSOで表されるバリウムイオンと硫酸イオンからなるイオン結晶性の化合物であり、板状あるいは柱状の形態であることが多く、水には難溶性である。純粋な硫酸バリウムは無色の結晶であるが、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウムなどの不純物を含むと黄褐色または黒灰色を呈し、半透明となる。天然の鉱物としても得られるが、化学反応によって合成することもできる。特に、化学反応による合成品は医薬用(X線造影剤)に用いられるほか、化学的に安定な性質を応用して塗料、プラスチック、蓄電池等に広く使用されている。
本発明においては、繊維の存在下で、溶液中で硫酸バリウムを合成することによって、硫酸バリウムと繊維の複合体を製造することができる。例えば、酸(硫酸など)と塩基を中和によって反応させたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸もしくは硫酸アルミニウムを反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸塩の含まれる水溶液中に塩化バリウムを加えて硫酸バリウムを沈殿させることができる。
(水酸化アルミニウム)
好ましい態様において本発明は、水酸化アルミニウムと繊維との複合体を難燃材料として用いることができる。水酸化アルミニウムの合成法は種々あり、アルミニウム塩が含まれる物質にアルカリ溶液を添加することで合成できる。例えば、硫酸アルミニウムに水酸化ナトリウムを添加することで得ることができる。また、上記硫酸バリウムを合成する際の原料として硫酸アルミニウムを用いると、硫酸バリウムだけでなく水酸化アルミニウムも同時に合成することが可能である。
(ハイドロタルサイト)
一般に、ハイドロタルサイトは、[M2+ 1-x3+ (OH)][An- x/n・mH2O](式中、M2+は2価の金属イオンを、M3+は3価の金属イオンを表し、An- x/nは層間陰イオンを表す。また0<x<1であり、nはAの価数、0≦m<1である)という一般式で示される。ここで、2価の金属イオンであるM2+は、例えば、Mg2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+など、3価の金属イオンであるM3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+など、層間陰イオンであるAn-は、例えば、OH、Cl、CO 、SO などのn価の陰イオンを挙げることができ、xは一般に0.2~0.33の範囲である。結晶構造は、正の電荷をもつ正八面体のbrucite単位が並んだ二次元基本層と負の電荷を持つ中間層からなる積層構造をとっている。
ハイドロタルサイトは、その陰イオン交換機能を生かした様々な用途への展開、例えば、イオン交換材、吸着剤、脱臭剤等の用途に使用されてきた。また、その他、構成する金属イオンの組み合わせを生かし、各構成金属イオンが良好な混合状態にあるハイドロタルサイトを加熱脱水し、または、さらに加熱焼成することにより、均一な組成の複合酸化物を容易に得られ、触媒用途等に使用する例なども見られる。
本発明の複合体中に占めるハイドロタルサイトの比率は、10%以上とすることが可能であり、20%以上とすることもでき、好ましくは40%以上とすることもできる。ハイドロタルサイトと繊維との複合体の灰分は、JIS P 8251:2003に従って測定することができる。本発明において、ハイドロタルサイトと繊維との複合体の分灰分は10%以上とすることが可能であり、20%以上とすることもでき、好ましくは40%以上とすることができる。また、本発明のハイドロタルサイトと繊維との複合体は、灰分中、マグネシウムまたは亜鉛を10%以上含むことが好ましく、40%以上含むことがより好ましい。灰分中のマグネシウムまたは亜鉛の含有量は、蛍光X線分析により定量することができる。
本発明は、好ましい態様において、繊維表面の15%以上がハイドロタルサイトによって被覆されている。好ましい態様において本発明の複合体は、ハイドロタルサイトによる繊維の被覆率(面積率)が25%以上であり、より好ましくは40%以上であるが、本発明によれば被覆率が60%以上や80%以上の複合体を製造することも可能である。また、本発明に係るハイドロタルサイトと繊維の複合体は、好ましい態様において、ハイドロタルサイトが繊維の外表面やルーメンの内側に定着するだけでなく、ミクロフィブリルの内側にも生成することが電子顕微鏡観察の結果から明らかとなっている。
本発明によってハイドロタルサイトと繊維を複合体化しておくと、単にハイドロタルサイトを繊維と混合した場合と比較して、ハイドロタルサイトが製品に歩留り易いだけでなく、凝集せずに均一に分散した製品を得ることができる。すなわち、本発明によれば、ハイドロタルサイトと繊維の複合体の製品への歩留り(投入したハイドロタルサイトが製品中に残る重量割合)を65%以上とすることが可能であり、70%以上や85%以上とすることもできる。
本発明においては、繊維の存在下で溶液中においてハイドロタルサイトを合成することによって、ハイドロタルサイトと繊維の複合体を製造することができる。
ハイドロタルサイトの合成方法は公知の方法によることができる。例えば、反応容器内に中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウムなど)に繊維を浸漬し、次いで、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンとを含む金属塩水溶液)を添加し、温度、pHなどを制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成する。また、反応容器内において、酸溶液(基本層を構成する二価金属イオン及び三価金属イオンを含む金属塩水溶液)に繊維を浸漬し、次いで、中間層を構成する炭酸イオンを含む炭酸塩水溶液とアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)を滴下し、温度、pH等を制御して共沈反応により、ハイドロタルサイトを合成することもできる。常圧での反応が一般的ではるが、それ以外にも、オートクレーブなどを使用しての水熱反応により得る方法もある(特開昭60-6619号公報)。
本発明においては、基本層を構成する二価金属イオンの供給源として、マグネシウム、亜鉛、バリウム、カルシウム、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガンの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。また、基本層を構成する三価金属イオンの供給源として、アルミニウム、鉄、クロム、ガリウムの各種塩化物、硫化物、硝酸化物、硫酸化物を用いることができる。
本発明においては、懸濁液の調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、製造工程中に得られる水を好適に用いることできる。
本発明においては、層間陰イオンとして陰イオンとして炭酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどを用いることができる。炭酸イオンを層間陰イオンとする場合、炭酸ナトリウムが供給源として使用される。ただし炭酸ナトリウムは、二酸化炭素(炭酸ガス)を含む気体で代替可能で、実質的に純粋な二酸化炭素ガスや、他のガスとの混合物であってもよい。例えば、製紙工場の焼却炉、石炭ボイラー、重油ボイラーなどから排出される排ガスを二酸化炭素含有気体として好適に用いることができる。その他にも、石灰焼成工程から発生する二酸化炭素を用いて炭酸化反応を行うこともできる。
(複合体の合成)
本発明の複合体は、一つの好ましい態様において、セルロース繊維などの繊維の存在下で無機粒子を合成することによって得ることができる。繊維表面が、無機粒子の析出における好適な場となるため、繊維と無機粒子の複合体を合成しやすいためである。
一つの好ましい態様として、本発明の複合体における無機粒子の平均一次粒子径を、例えば、1.5μm以下とすることができるが、平均一次粒子径を1200nm以下や900nm以下にすることもでき、さらには平均一次粒子径が200nm以下や150nm以下にすることもできる。また、無機粒子の平均一次粒子径は10nm以上とすることも可能である。なお、平均一次粒子径は電子顕微鏡写真で測定することができる。
また、本発明の複合体における無機粒子は、微細な一次粒子が凝集した二次粒子の形態を取ることもあり、熟成工程によって用途に応じた二次粒子を生成させることができるし、粉砕によって凝集塊を細かくすることもできる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、種々の形状で用いることができ、例えば、粉体、ペレット、モールド、水性懸濁液、ペースト、シート、その他の形状にして用いることができる。また、複合体を主成分として他の材料と共にモールドや粒子・ペレットなどの成形体にすることもできる。乾燥して紛体にする場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によって得られた複合体は、その難燃特性を活かして種々の用途に用いることができ、例えば、紙、繊維、セルロース系複合材料、フィルター材料、塗料、プラスチックやその他の樹脂、ゴム、エラストマー、セラミック、ガラス、タイヤ、建築材料(アスファルト、アスベスト、セメント、ボード、コンクリート、れんが、タイル、合板、繊維板、壁材、天井材、パーティションボード、壁紙など)、各種担体(触媒担体、医薬担体、農薬担体、微生物担体など)、吸着剤(不純物除去、消臭、除湿など)、しわ防止剤、粘土、研磨材、改質剤、補修材、断熱材、耐熱材、放熱材、防湿材、撥水材、耐水材、遮光材、シーラント、シールド材、防虫剤、接着剤、インキ、化粧料、医用材料、ペースト材料、変色防止剤、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、濾過助材、精油材、油処理剤、油改質剤、電波吸収材、絶縁材、遮音材、防振材、半導体封止材、放射線遮断材、化粧品、肥料、飼料、香料、塗料・接着剤用添加剤、衛生用品(使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド、母乳パッドなど)などに広く使用することができる。また、前記用途における各種充填剤、コーティング剤などに用いることができる。これらの中でも、難燃性能と物質の吸脱着性能に優れるという点から、特に建築材料(壁材、天井材、パーティションボード、壁紙など)に好適に用いることができる。
また、本発明によって得られる複合体を使用する際には、一般に無機填料及び有機填料と呼ばれる粒子や、各種繊維を併用することができる。例えば、無機填料として、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー(カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン)、タルク、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、二酸化チタン、ケイ酸ナトリウムと鉱酸から製造されるシリカ(ホワイトカーボン、シリカ/炭酸カルシウム複合体、シリカ/二酸化チタン複合体)、白土、ベントナイト、珪藻土、硫酸カルシウム、ゼオライト、脱墨工程から得られる灰分を再生して利用する無機填料および再生する過程でシリカや炭酸カルシウムと複合体を形成した無機填料などが挙げられる。炭酸カルシウム-シリカ複合物としては、炭酸カルシウムおよび/または軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物以外に、ホワイトカーボンのような非晶質シリカを併用しても良い。有機填料としては、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子、アクリルアミド複合体、木材由来の物質(微細繊維、ミクロフィブリル繊維、粉体ケナフ)、変性不溶化デンプン、未糊化デンプンなどが挙げられる。繊維としては、セルロースなどの天然繊維はもちろん、石油などの原料から人工的に合成される合成繊維、さらには、レーヨンやリヨセルなどの再生繊維(半合成繊維)、さらには無機繊維などを制限なく使用することができる。
本発明の複合体を構成する無機粒子の平均粒子径や形状等は、電子顕微鏡による観察により確認することができる。さらに、無機粒子の合成条件などを調整することによって、種々の大きさや形状を有する無機粒子を繊維と複合化することができる。
本発明に係る複合体の製造方法は、繊維を含む溶液において無機粒子を合成することを必須とするものである。以下に、一例として硫酸バリウムと繊維の複合体の合成について述べるが、硫酸バリウムが他の無機粒子であっても良い。硫酸バリウムと繊維との複合体を用いる場合、例えば、水酸化バリウムに代表されるアルカリ性の硫酸バリウム前駆体を原料に用いる場合、あらかじめ繊維を硫酸バリウム前駆体の溶液に分散させておくことで繊維を膨潤させることができるため、効率よく無機粒子と繊維の複合体を得ることができる。これらを混合後15分以上撹拌することで繊維の膨潤を促進してから反応を開始することもできるが、混合後すぐに反応を開始してもよい。本複合体を得る上での反応槽の形態や撹拌条件に特に制限はなく、例えば、繊維と硫酸バリウムの前駆体を含む溶液を開放型の反応槽中で撹拌、混合して複合体を合成しても良いし、繊維と硫酸バリウムの前駆体を含む水性懸濁液を反応容器内に噴射することによって合成してもよい。後述するが、硫酸バリウムの前駆体の水性懸濁液を反応容器内に噴射する際に、キャビテーション気泡を発生させ、その存在下で硫酸バリウムを合成してもよい。
本発明においては、反応容器内にキャビテーション気泡を生じさせるような条件で液体を噴射してもよいし、キャビテーション気泡を生じさせないような条件で噴射してもよい。また、反応容器はいずれの場合においても圧力容器であることが好ましい。なお、本発明における圧力容器とは0.005MPa以上の圧力をかけることのできる容器のことである。キャビテーション気泡を生じさせないような条件の場合、圧力容器内の圧力は、静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。
(キャビテーション気泡)
本発明に係る複合体を合成する場合、キャビテーション気泡の存在下で硫酸バリウムを析出させることができる。本発明においてキャビテーションとは、流体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象であり、空洞現象とも言われる。キャビテーションによって生じる気泡(キャビテーション気泡)は、流体の中で圧力がごく短時間だけ飽和蒸気圧より低くなったとき、液体中に存在する100ミクロン以下のごく微小な「気泡核」を核として生じる。
本発明においてキャビテーション気泡は、公知の方法によって反応容器内に発生させることができる。例えば、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させること、流体内で高速で攪拌することによってキャビテーションを発生させること、流体内で爆発を生じさせることによってキャビテーションを発生させること、超音波振動子によってキャビテーションを発生させること(バイブトラリー・キャビテーション)などが考えられる。
特に本発明においては、キャビテーション気泡の発生と制御が容易なため、流体を高圧で噴射することによってキャビテーション気泡を発生させることが好ましい。この態様では、ポンプなどを用いて噴射液体を圧縮し高速でノズルなどを介して噴射することによって、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による液体自体の膨張と同時にキャビテーション気泡が発生する。流体噴流による方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡を発生させることができる。本発明においては、硫酸バリウムを合成する際に制御されたキャビテーション気泡を存在させるものであって、流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーション気泡と明らかに異なる。
本発明においては、原料などの反応溶液をそのまま噴射液体として用いてキャビテーションを発生させることもできるし、反応容器内に何らかの流体を噴射してキャビテーション気泡を発生させることもできる。液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、炭酸ガスなど、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機粒子の原料スラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上15MPa以下がより好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.005MPa以上0.9MPa以下が好ましい。
また、容器内の圧力と噴射液の圧力との比は0.001~0.5の範囲が好ましい。
本発明において、キャビテーション気泡が発生しないような条件で噴射液を噴射して無機粒子を合成することもできる。具体的には、噴射液の圧力(上流側圧力)を2MPa以下、好ましくは1MPa以下とし、噴射液の圧力(下流側圧力)を開放し、0.05MPa以下とすることがより好ましい。
噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション発生場所は、無機粒子を析出させる反応容器内に発生させればよい。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することもできる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための液体の噴射は、大気開放の容器の中でなされても良いが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴射によってキャビテーションを発生させる場合、反応溶液の固形分濃度は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましい。このような濃度であると、キャビテーション気泡を反応系に均一に作用させやすくなるためである。また、反応溶液である消石灰の水性懸濁液は、反応効率の点から、固形分濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。
本発明において複合体を合成する場合、反応液のpHが反応の進行にしたがって変化するようであれば、反応液のpHをモニターすることによって反応を制御することができる。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生させることができる。また、反応容器内の圧力を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力を大きくすることができる。反応温度は0℃以上90℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水性溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも、2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
本発明の一つの態様において、繊維を含む溶液中で無機粒子を合成することによって複合体を合成することができるが、無機粒子の合成方法は、公知の方法によることができる。
本発明においては、懸濁液の調製などに水を使用するが、この水としては、通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水などを用いることができる他、イオン交換水や蒸留水、超純水、工業廃水、反応液を分離・脱水する際に得られる水を好適に用いることできる。
また本発明においては、反応槽の反応液を循環させて使用することができる。このように反応液を循環させて、溶液の撹拌を促すことにより、反応効率を上げ、所望の複合体を得ることが容易になる。
本発明の複合体を製造する際には、さらに公知の各種助剤を添加することができる。例えば、キレート剤を添加することができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などのポリヒドロキシカルボン酸、シュウ酸などのジカルボン酸、グルコン酸などの糖酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸などのポリリン酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリルなどのケトン類、ショ糖などの糖類、ソルビトールなどのポリオールが挙げられる。また、表面処理剤としてパルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、アビエチン酸等の樹脂酸、それらの塩やエステルおよびエーテル、アルコール系活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、アミノカルボン酸、ホスホン酸、多価カルボン酸、縮合リン酸などを添加することができる。また、必要に応じ分散剤を用いることもできる。この分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アクリル酸-マレイン酸共重合体アンモニウム塩、メタクリル酸-ナフトキシポリエチレングリコールアクリレート共重合体、メタクリル酸-ポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体アンモニウム塩、ポリエチレングリコールモノアクリレートなどがある。これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。また、添加のタイミングは合成反応の前でも後でも良い。このような添加剤は、無機粒子に対して、好ましくは0.001~20%、より好ましくは0.1~10%の量で添加することができる。
本発明において複合体を合成する場合、反応条件は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、合成反応の温度は0~90℃とすることができ、10~70℃とすることが好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な無機粒子が多くなる傾向がある。
また、本発明において反応はバッチ反応とすることもでき、連続反応とすることもできる。一般に、反応後の残存物を排出する便利さから、バッチ反応工程を行うことが好ましい。反応のスケールは特に制限されないが、100L以下のスケールで反応させてもよいし、100L超のスケールで反応させてもよい。反応容器の大きさは、例えば、10L~100L程度とすることもできるし、100L~1000L程度としてもよい。
また、反応液の電導度や反応時間によって反応を制御することができ、具体的には、反応物が反応槽に滞留する時間を調整して制御することができる。その他、本発明においては、反応槽の反応液を攪拌したり、反応を多段反応とすることによって反応を制御することもできる。
本発明においては、反応生成物である複合体が懸濁液として得られるため、必要に応じて、貯蔵タンクに貯蔵したり、濃縮、脱水、粉砕、分級、熟成、分散などの処理を行うことができる。これらは公知の工程によることができ、用途やエネルギー効率などを考慮して適宜決定すればよい。例えば濃縮・脱水処理は、遠心脱水機、沈降濃縮機などを用いて行われる。この遠心脱水機の例としては、デカンター、スクリューデカンターなどが挙げられる。濾過機や脱水機を用いる場合についてもその種類に特に制限はなく、一般的なものを使用することができるが、例えば、フィルタープレス、ドラムフィルター、ベルトプレス、チューブプレス等の加圧型脱水機、オリバーフィルター等の真空ドラム脱水機などを好適に用いて炭酸カルシウムケーキとすることができる。粉砕の方法としては、ボールミル、サンドグラインダーミル、インパクトミル、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ダイノーミル、超音波ミル、カンダグラインダ、アトライタ、石臼型ミル、振動ミル、カッターミル、ジェットミル、離解機、叩解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。分級の方法としては、メッシュ等の篩、アウトワード型もしくはインワード型のスリットもしくは丸穴スクリーン、振動スクリーン、重量異物クリーナー、軽量異物クリーナー、リバースクリーナー、篩分け試験機等が挙げられる。分散の方法としては、高速ディスパーザー、低速ニーダーなどが挙げられる。
本発明によって得られた複合体は、完全に脱水せずに懸濁液の状態で填料や顔料に配合することもできるが、乾燥して粉体とすることもできる。この場合の乾燥機についても特に制限はないが、例えば、気流乾燥機、バンド乾燥機、噴霧乾燥機などを好適に使用することができる。
本発明によって得られる複合体は、公知の方法によって改質することが可能である。例えば、ある態様においては、その表面を疎水化し、樹脂などとの混和性を高めたりすることが可能である。
複合体を用いた難燃材
本発明においては、上述の複合体を用いて難燃材料を構成させる。例えば、本発明によって得られた複合体をシート化すると、高灰分のシートを容易に製造することができ、これを難燃材として使用することができる。また、得られたシートを貼り合せて積層体(多層シートや多層ボード)を難燃材料とすることもできる。シート製造に用いる抄紙機(抄造機)としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの機器の抄紙方式を組合せた公知の抄造機などが挙げられる。抄紙機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性や複合体シートの性能に支障を来さない範囲内で定めることができる。また、形成されたシートに対して含浸や塗布により澱粉や各種ポリマー、顔料およびそれらの混合物を付与しても良い。
シート化の際には湿潤および/または乾燥紙力剤(紙力増強剤)を添加することができる。これにより、複合体シートの強度を向上させることができる。紙力剤としては例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン樹脂、植物性ガム、ラテックス、ポリエチレンイミン、グリオキサール、ガム、マンノガラクタンポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール等の樹脂;上記樹脂から選ばれる2種以上からなる複合ポリマー又は共重合ポリマー;澱粉及び加工澱粉;カルボキシメチルセルロース、グアーガム、尿素樹脂等が挙げられる。紙力剤の添加量は特に限定されない。
また、填料の繊維への定着を促したり、填料や繊維の歩留を向上させるために、高分子ポリマーや無機物を添加することもできる。例えば凝結剤として、ポリエチレンイミンおよび第三級および/または四級アンモニウム基を含む改質ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ジシアンジアミドポリマー、ポリアミン、ポリアミン/エピクロヒドリン重合体、並びにジアルキルジアリル第四級アンモニウムモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド及びジアルキルアミノアルキルメタクリルアミドとアクリルアミドの重合体、モノアミン類とエピハロヒドリンからなる重合体、ポリビニルアミン及びビニルアミン部を持つ重合体やこれらの混合物などのカチオン性のポリマーに加え、前記ポリマーの分子内にカルボキシル基やスルホン基などのアニオン基を共重合したカチオンリッチな両イオン性ポリマー、カチオン性ポリマーとアニオン性または両イオン性ポリマーとの混合物などを用いることができる。また歩留剤として、カチオン性またはアニオン性、両性ポリアクリルアミド系物質を用いることができる。また、これらに加えて少なくとも一種以上のカチオンやアニオン性のポリマーを併用する、いわゆるデュアルポリマーと呼ばれる歩留りシステムを適用することもでき、少なくとも一種類以上のアニオン性のベントナイトやコロイダルシリカ、ポリ珪酸、ポリ珪酸もしくはポリ珪酸塩ミクロゲルおよびこれらのアルミニウム改質物などの無機微粒子や、アクリルアミドが架橋重合したいわゆるマイクロポリマーといわれる粒径100μm以下の有機系の微粒子を一種以上併用する多成分歩留りシステムであってもよい。特に単独または組合せで使用するポリアクリルアミド系物質が、極限粘度法による重量平均分子量が200万ダルトン以上である場合、良好な歩留りを得ることができ、好ましくは、500万ダルトン以上であり、更に好ましくは1000万ダルトン以上3000万ダルトン未満の上記アクリルアミド系物質である場合に非常に高い歩留りを得ることが出来る。このポリアクリルアミド系物質の形態はエマルジョン型でも溶液型であっても構わない。この具体的な組成としては、該物質中にアクリルアミドモノマーユニットを構造単位として含むものであれば特に限定はないが、例えば、アクリル酸エステルの4級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合物、あるいはアクリルアミドとアクリル酸エステルを共重合させた後、4級化したアンモニウム塩が挙げられる。該カチオン性ポリアクリルアミド系物質のカチオン電荷密度は特には限定されない。
その他、目的に応じて、濾水性向上剤、内添サイズ剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、嵩高剤、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカなどの無機粒子(いわゆる填料)等が挙げられる。各添加材の使用量は特に限定されない。
シートの坪量は、目的に応じて適宜調整できるが、40~1200g/mとすると難燃効果が高く、また、製造時の乾燥負荷が低いため良好である。また、シートの坪量は、は60~1000g/mとすることもでき、100~600g/mとすることもできる。
シート化以外の成形法を用いることも可能であり、例えば、パルプモールドと呼ばれるように鋳型に原料を流し込んで吸引脱水・乾燥させる方法や、樹脂や金属などの成形物の表面に塗り広げて乾燥後、基材から剥離する方法などによって、種々の形状を有する成形物を得ることができる。また、樹脂を混ぜてプラスチック様に成形することもできるし、シリカやアルミナ等の鉱物を添加し、焼成することでセラミック様に成形することもできる。以上に示した配合・乾燥・成形において、1種類の複合体のみを用いることもできるし、2種類以上の複合体を混合して用いることもできる。2種類以上の複合体を用いる場合は、予めそれらを混合したものを用いることもできるし、それぞれを配合・乾燥・成形したものを後から混合することもできる。 また、複合体シートを積層して用いる場合は、例えば、2~20枚のシートを用いることができ、3~15枚のシートを用いることが好ましく、4~10枚のシートを用いることがさらに好ましい。このように複合体シートを重ねた積層体(多層シートや多層ボード)とすることによって、難燃性が大きく向上する。シートを積層する際は、適宜、バインダーなどを使用すればよい。
さらに、複合体シートを基材の片面または両面に貼り合わせて、難燃性を備えた複合ボードとすることもできる。貼り合わせる複合体シートは1枚であっても複数であってもよいが、複数の複合体シートを貼り合わせる場合は、例えば、2~20枚のシートを用いることができ、3~15枚のシートを用いることが好ましく、4~10枚のシートを用いることがさらに好ましい。基材は特に制限されないが、木材や紙、不織布などの各種板材を好適に使用することができる。
また、複合体の成形物に後からポリマーなどの各種有機物や顔料などの各種無機物を付与しても良い。例えば、シート化したもの(積層したものやボード状のものも含む)に塗工(塗布)することによって所望の物質を表面に積層することが可能である。例えば、澱粉やPVAなどのバインダー、サイズ剤などの疎水化剤、有機もしくは無機の難燃剤などを塗工することができる。さらに、種々の物質をシート(積層したものやボード状のものも含む)に含浸することで、より機能を高めることも可能である。
これらのシート、積層物およびボードはさらに加工してハニカム構造などの立体構造にすることも可能である。
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実験1:複合体シートの製造と難燃性の評価
(1)複合体の合成
以下に示す手順により、炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体(サンプル1-1~1-3)およびハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体(サンプル2)を合成した。
(サンプル1-1:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体)
水酸化マグネシウム350g(宇部マテリアルズ、UD653)とクラフトパルプ350g(LBKP/NBKP=1/1、CSF:370ml、平均繊維長:0.9mm)を水中に添加して水性懸濁液を準備した。
図1に示すように、この水性懸濁液35Lをキャビテーション装置(45L容)に入れ、反応溶液を循環させながら、反応容器中に炭酸ガスを吹き込んで炭酸ガス法によって炭酸マグネシウム微粒子と繊維との複合体を合成した。反応開始温度は約40℃、炭酸ガスは市販の液化ガスを供給源とし、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとした。反応液のpHが約7.8になった段階でCOの導入を停止し(反応前のpHは10.3)、その後30分間、キャビテーションの発生と装置内でのスラリーの循環を続け、炭酸マグネシウム微粒子とパルプ繊維の複合体を得た(サンプル1-1、無機粒子の平均一次粒径:0.8μm)。
複合体の合成においては、反応溶液を循環させて反応容器内に噴射することよって、反応容器内にキャビテーション気泡を発生させた。具体的には、ノズル(ノズル径:1.5mm)を介して高圧で反応溶液を噴射してキャビテーション気泡を発生させたが、噴流速度は約70m/sであり、入口圧力(上流圧)は7MPa、出口圧力(下流圧)は0.3MPaだった。
得られた複合体について、繊維:無機粒子の重量比を測定したところ、50:50であった(灰分:50%)。重量比(灰分)は、ろ紙を用いて複合体スラリー(固形分換算で3g)を吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、さらに525℃で有機分を燃焼させ、燃焼前後の重量から算出した。
(サンプル1-2:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体)
水酸化マグネシウムの仕込み量を1200g、用いるクラフトパルプの種類をLBKP(CSF=490mL、平均繊維長=0.75mm)、パルプの仕込み量を300g、水性懸濁液の総量を30Lとした以外は、サンプル1-1と同様にして複合体を合成した(無機粒子の平均一次粒径:0.8μm)。得られた複合体の灰分は70%であった。
(サンプル1-3:炭酸マグネシウムとパルプ繊維の複合体)
反応時の装置の入口圧力を2MPa、出口圧力を0.2MPaとした以外は、サンプル1-1と同様に複合体を合成した(無機粒子の平均一次粒径:1μm)。得られた複合体の灰分は49%だった。
(サンプル2:ハイドロタルサイトとパルプ繊維の複合体)
ハイドロタルサイト(HT)としてMgAl(OH)16CO・4HOを合成するため、アルカリ溶液(A溶液)として、NaCO(和光純薬)およびNaOH(和光純薬)の混合水溶液、酸溶液(B溶液)として、MgCl(和光純薬)およびAlCl(和光純薬)の混合水溶液を調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、NaCO濃度:0.05M、NaOH濃度:0.8M)
・酸溶液(B溶液、Mg系、MgCl濃度:0.3M、AlCl濃度:0.1M)
複合化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、日本製紙製)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製)を8:2の重量比で含み、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を390mlに調整したパルプ繊維を用いた(平均繊維長0.8mm)。
アルカリ溶液にパルプ繊維を添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した(パルプ繊維濃度:1.56%、pH:約12.4)。この水性懸濁液(パルプ固形分30g)を10L容の反応容器に入れ、水性懸濁液を撹拌しながら、酸溶液(Mg系)を滴下してハイドロタルサイト微粒子と繊維との複合体を合成した。図2に示すような装置を用いて、反応温度は60℃、滴下速度は15ml/minであり、反応液のpHが約7になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、30分間、反応液を撹拌し、10倍量の水を用いて水洗して塩を除去することで、サンプル2を得た(無機粒子の平均一次粒径:20nm)。サンプル2の灰分は47%だった。
(2)手抄きシートの製造
製造した複合体を以下の手順によりシート化した。また、参考のため、LBKP(CSF:370ml)を用いて、手抄きシートを製造した。各シートの坪量はJIS P 8124:1998、灰分はJIS P 8251:2003に基づいて測定した。
(シート1~シート3)
複合体(サンプル1-1~1-3)の水性スラリー(約0.5%)に、カチオン性歩留剤(ND300、ハイモ社製)を100ppm、アニオン性歩留剤(FA230、ハイモ社製)を100ppm添加し、500rpmにて撹拌して懸濁液を調成した。得られた懸濁液からJIS P 8222に基づいて角形手抄き器にて坪量が90~200g/mの複合体シートを製造した。
(シート4)
複合体(サンプル2)の水性スラリーを0.5%に調成し、歩留剤を添加せずに、JIS P 8222に基づいて角形手抄き器にて坪量が450g/mの複合体シートを製造した。
(パルプシート:比較例)
LBKP(CSF:370ml)を用いて、坪量が約130g/mのシートを製造した。
(3)シートの難燃性評価
シートの燃焼性を、JIS A 1322(JIS Z 2150)を基にして、以下の手順により評価した。
一定の大きさに切り出したシート(シート1~3:25cm×25cm、シート4:20cm×30cm)を50℃で48時間乾燥した後,乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に24時間放置し、燃焼試験(加熱試験)のサンプルとした。
サンプルを支持枠(25cm×16cm)に取り付けて、たるみのないように加熱試験装置に装着し、ガスバーナーに点火後、シート4は30秒間、その他は10秒間、サンプルを加熱し、炭化長、残炎時間、残じん時間を測定した(図3)。
なお、燃焼試験には、45°燃焼性試験器(スガ試験機社製、FL-45M)を用いた。加熱には、メッケルバーナー(高さ160mm、内径20mm)を用い、1次空気を混入しないでガスだけを送入して燃焼させた。燃料は液化石油ガス5号(ブタンおよびブチレンを主体とするもの、JIS K 2240)を用い、サンプルを取り付けない状態で、炎の長さが65mmになるように調整した。
・炭化長:試験体の加熱面の炭化部分(炭化して明らかに強度が変化)している部分について支持枠の長手方向の最大長さを測定する。
・残炎時間:加熱終了時から試験体が炎をあげて燃え続ける時間を測定する。
・残じん:加熱終了時から無炎燃焼している状態をいう。
なお、JIS A 1322(JIS Z 2150)には、難燃性に関する防火等級が下記のように定められている。
・防火1級:炭化長5cm以下、残炎なし、残じんが1分後に存しない
・防火2級:炭化長10cm以下、残炎なし、残じんが1分後に存しない
・防火3級:炭化長15cm以下、残炎なし、残じんが1分後に存しない
Figure 0007065563000001
表1および図4に、ガスバーナーで一定時間加熱した結果を示す。結果から明らかなように、シート1~シート3(炭酸マグネシウムと繊維の複合体からなるシート)は、着火後の炎の延焼がパルプシート(LBKPからなるシート、図4の上段左)に比べて少ないことが確認できた。特にシート2(サンプル1-2のシート、図4の上段右)やシート3(サンプル1-3のシート、図4の下段左)については、炎がほとんど燃え広がらず、防炎1級相当の難燃性を有することが確認できた。また、シート4(サンプル2のシート、図4の下段右)は、燃焼時間30秒において防炎2級相当の難燃性を有していることが明らかとなった。
実験2:複合体ボードの製造と難燃性の評価
(1)複合体の合成
(サンプル3-1:炭酸マグネシウムと繊維の複合体)
サンプル1-3と同様にして、炭酸マグネシウムと繊維の複合体を合成した(灰分:49%、無機粒子の平均一次粒径:1μm)。
(サンプル3-2:炭酸マグネシウムと繊維の複合体)
水酸化マグネシウムの仕込み量を5250gとし、用いるクラフトパルプの種類をLBKP(CSF=500mL、平均繊維長=0.76mm)とし、パルプの仕込み量を3500gとし、水性懸濁液の総量を170Lとした以外はサンプル1-1と同様に合成した。得られた複合体の灰分は55%、無機粒子の平均一次粒径は0.8μmであった。
(サンプル3-3:炭酸カルシウムと繊維の複合体)
図5左に示すような反応装置を用いて、炭酸カルシウムと繊維の複合体を炭酸ガス法によって合成した。水酸化カルシウム(奥多摩工業、タマエースU)15kgとLBKP(CSF=500mL、平均繊維長=0.76mm)15kgの水性懸濁液1500Lに対し、ウルトラファインバブル発生装置(UFB発生装置、YJ-9、エンバイロビジョン社、図5右)を用いてポンプ流量80L/minで反応液を循環させた(ノズルからの噴射速度:125L/min・cm)。ウルトラファインバブル発生装置の給気口から炭酸ガスを吹き込むことによって、炭酸ガスを含む大量の微細気泡(直径1μm以下、平均粒子径:137nm)を反応液中に発生させ、パルプ繊維上に炭酸カルシウム粒子を合成した。反応温度は20℃、炭酸ガスの吹き込み量は20L/minとして反応を行い、反応液のpHが約7になった段階で反応を停止し、サンプル3-3を得た(反応前のpHは約13)。得られた炭酸カルシウムとパルプ繊維の複合体の灰分は57%、無機粒子の平均一次粒径は50nmだった。
(サンプル3-4:硫酸バリウムおよび水酸化アルミニウムと繊維の複合体)
容器(マシンチェスト、容積:4m)に2%のパルプスラリー(LBKP/NBKP=8/2、CSF=390mL、平均繊維長:約1.3mm、固形分25kg)と水酸化バリウム八水和物(日本化学工業、75kg)を投入して混合後、ペリスターポンプを用いて硫酸アルミニウム(硫酸バンド、98kg)を約500g/minで滴下した。滴下終了後、そのまま30分間撹拌を継続して複合体を得た。得られた複合体の灰分は75%、無機粒子の平均一時粒径は約100nmであった。
(2)複合体シートの製造
(シート3-1)
実験1と同様にして、複合体(サンプル3-1)から手抄きにてシートを製造した(シート3-1A:坪量600g/m、シート3-1B:750g/m)。
(シート3-2)
サンプル3-2のスラリーを濃度約1%に調整後、カチオン性の歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性の歩留剤(FA230、ハイモ)を対固形分で100ppmずつ添加して紙料スラリーを調製した。次いで、長網抄紙機を用いて、抄速10m/minの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した(坪量:約150g/m、灰分:約46%)。
(シート3-3:炭酸カルシウム複合体)
シート3-2と同様にして、長網抄紙機を用いてサンプル3-3をシート化した(坪量:約150g/m、灰分:約45%)。
(シート3-4:LBKPのみ)
シート3-2と同様にして、長網抄紙機を用いてLBKP(CSF=500mL、平均繊維長=0.76mm)をシート化し、LBKPのみからなるシートを得た(坪量:約150g/m、灰分:0%)。
(シート3-5)
サンプル3-4(濃度:1%)に、カチオン性の歩留剤(ND300、ハイモ)とアニオン性の歩留剤(FA230、ハイモ)を対固形分で100ppmずつ添加して紙料スラリーを調製した。次いで、長網抄紙機を用いて、抄速10m/minの条件でこの紙料スラリーからシートを製造した。得られたシートの坪量は180g/m、灰分は約67%だった。
(シート3-6)
坪量を約190g/mとした以外は、シート3-2と同様にして、サンプル3-2からシートを製造した(坪量:約190g/m、灰分:約46%)。
(3)複合ボードの作製
(複合ボードA、坪量:約1700g/m、図6A)
耐水性基紙(日本製紙製、坪量500g/m、厚さ0.76mm、灰分11%)の表裏に、酢酸ビニル系バインダーを用いてシート3-1Aを1枚ずつ貼り合せた後、プレス機にて1回プレス(4.8MPa)して複合ボードを作製した。
(複合ボードB、坪量:約2000g/m、図6B)
シート3-1Aに代えてシート3-1Bを用いた以外は、複合ボードAと同様にして複合ボードを作製した。
(複合ボードC、坪量:約1250g/m、図6C)
耐水性基紙の片側のみにシート3-1Bを貼り合せた以外は、複合ボードBと同様にして複合ボードを作製した。
(複合ボードD、坪量:約2000g/m、図6D)
シート3-2を片面につき5枚ずつ使用した以外は、複合ボードAと同様にして複合ボードを作製した。
(複合ボードE、坪量:約2180g/m、図6E)
2枚の耐水性基紙(日本製紙製、坪量190g/m、厚さ0.28mm、灰分11%)の間にシート3-2を2枚貼り合せ、さらに、耐水性基紙の外側にシート3-2を5枚ずつ貼り合わせて複合ボードを作製した。
(複合ボードF、坪量:約2000g/m、図6F)
シート3-2に代えてシート3-3を用いた以外は、複合ボードDと同様にして複合ボードを作製した。
(複合ボードG、坪量:約2000g/m、図6G)
シート3-2に代えてシート3-4を用いた以外は、複合ボードDと同様にして複合ボードを作製した。
(複合ボードH、坪量:約2250g/m、図6H)
3枚の耐水性基紙(日本製紙製、坪量750g/m、厚さ1mm、灰分11%)を貼り合せて、貼り合せボードを作製した。
(複合ボードI、坪量:約1800g/m、図6I)
シート3-5を10枚、酢酸ビニル系バインダーで貼り合せて、複合ボードを作製した。
(複合ボードJ、坪量:約2560g/m、図6J)
複合ボードIの表裏に、シート3-6を2枚ずつ貼り合せて、複合ボードを作製した。
Figure 0007065563000002
複合ボードを作製後、105℃のオーブン中で1晩以上乾燥させてから、実験1と同様の条件にて加熱実験を行った。ただし、本実験では、炭化長に代えて炭化面積を測定し、加熱時間は2分間とした。炭化面積は、試験体の加熱面の炭化部分(炭化して明らかに強度が変化)している部分について最大長と最大幅を測定し、それらを掛け合わせて算出した。
加熱試験の結果を表に示す。また、加熱試験後のサンプルの外観写真を図6に示す。実験結果から明らかなように、炭酸マグネシウム複合体シートを耐水性基紙の表裏に貼り合せた複合ボード(A、B、D、E)は、炭化面積、残炎時間、残じん時間が小さく、難燃性が優れていた。同じ炭酸マグネシウム複合体シートを使用した複合ボードBとCを比較すると、炭化面積と残炎時間は同等になったものの、炭酸マグネシウムシートを片面にしか貼り合せなかった複合ボードCは残じん時間が長くなった。
一方、複合ボードF(炭酸カルシウム)、複合ボードG(LBKP)は、いずれも残じん時間が5分以上と長く、また、耐水性基紙のみで作成した複合ボードHは、残炎および残じん時間が20分以上と長く、難燃性が低かった。
さらに、複合ボードIは、残炎時間が20秒であったものの、残じんもなく、炭化面積も比較的小さかった。炭酸マグネシウムシートを表裏に貼り合せた複合ボードJは、残炎時間が10秒以下、残じん時間が30秒以下、炭化面積が50cm以下であり、防炎物品(合板)に求められる基準を満たしていた(消防庁「防炎の知識と実際」)。

Claims (5)

  1. 難燃性無機粒子がセルロース繊維表面に定着した複合体を含む難燃材であって、
    前記複合体は、セルロース繊維表面の80%以上が難燃性無機粒子によって被覆されたものであり、難燃性無機粒子の平均一次粒子径が900nm以下であり、難燃性無機粒子が、炭酸マグネシウムおよびハイドロタルサイトからなる群より選択される、上記難燃材。
  2. シートの形態である、請求項に記載の難燃材。
  3. 難燃性無機粒子と繊維との複合体シートを積層させた、請求項1または2に記載の難燃材。
  4. 難燃性無機粒子と繊維との複合体シートを基材に貼り合わせた、請求項1~のいずれかに記載の難燃材。
  5. 難燃性無機粒子と繊維の重量比が5/95~95/5である、請求項1~のいずれかに記載の難燃材。
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