以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係る燃料プールの側断面図である。図2は、本実施形態に係る燃料プールの平面図である。
燃料プール2は、原子力発電プラントにおいて原子炉にて使用された使用済みの燃料集合体や、未使用の燃料集合体を収納した核燃料貯蔵用ラック1を、水中に配置することで燃料集合体を貯蔵する核燃料貯蔵設備である。また、燃料プール2は、原子力発電プラントにおいて原子炉にて使用された使用済みの燃料集合体を搬送するためのキャスク(図示せず)に対し、水中で燃料集合体を収容するための設備としても適用される。燃料集合体は、複数の燃料棒である核燃料が束ねられた集合体である。したがって、燃料集合体は、いわゆる核燃料である。即ち、燃料プール2は、水中で核燃料を取り扱うための設備である。
燃料プール2は、上述したように、水中で核燃料を取り扱うため、床面2aおよび四方の縦壁面2bで囲まれている矩形状で上部が開放された中に水Wを貯留する。核燃料貯蔵設備の場合、この燃料プール2において、床面2aに核燃料貯蔵用ラック1が配置される。核燃料貯蔵用ラック1は、上部が開放されて格子状に区画された複数の燃料収納部1aが設けられている。または、核燃料貯蔵用ラック1は、上部が開放されて格子状に区画された複数の燃料収納部1aに、筒型のセル(図示せず)が挿入される場合もある。そして、燃料プール2は、内部に水Wが貯留された状態で、核燃料貯蔵用ラック1の各燃料収納部1a(または各セル)に燃料集合体が立てられた状態で収納されて貯蔵される。
核燃料貯蔵用ラック1は、各燃料収納部1aを有するラック本体1bの底面に支持脚1cが設けられており、核燃料貯蔵用ラック1は、複数(例えば、核燃料貯蔵用ラック1の四隅)設けられた支持脚1cによりラック本体1bが床面2aに自立して支持されている。本実施形態では、支持脚1cは、床面2aに対して摺動することが可能に設けられていることで、床面2aに対して相対移動が可能とされており、核燃料貯蔵用ラック1は、いわゆるフリースタンディング方式のラックである。そして、核燃料貯蔵用ラック1は、ラック本体1bが直方体形状の外形をなし、燃料プール2において周りを矩形状に囲む4面の縦壁面2bから距離Lを隔てた状態で床面2aに複数(図2では12個)が矩形状に整列して配置されている。また、各核燃料貯蔵用ラック1は、互いのラック本体1bが所定間隔を空けて設けられている。このフリースタンディング方式の核燃料貯蔵用ラック1は、地震発生時に作用する水平力を水Wの流体負荷減衰効果と共に核燃料貯蔵用ラック1の摺動抵抗によって吸収することで高い耐震性を有する。
図3は、本実施形態に係る燃料プールの要部を示す拡大断面図である。
図3に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、を備える。
プール本体21は、燃料プール2の床面2aに沿うように水平に配置されたコンクリート面21aと、燃料プール2の4面の縦壁面2bに沿うように縦方向に配置された4面のコンクリート面21aと、を有する。図3では、床面2aに沿うコンクリート面21aと、縦壁面2bに沿うコンクリート面21aとを共に示している。
ライニング22は、厚さ4mm~6mm程度のオーステナイト系ステンレス鋼からなる板体である。ライニング22は、プール本体21のコンクリート面21aを覆うことで、貯留した水Wがコンクリート面21aに染み出ないようにし、コンクリート面21aを保護する。ライニング22は、燃料プール2の床面2aまたは縦壁面2bをなす。
内側シール層23は、撥水性を有するもので、主に樹脂材からなり、例えば、三次元ポリマーからなるシリコーンレジン、ウレタンレジン、エポキシレジン、アクリルレジン、α-オレフィンレジン、エチレンレジン、ビニルレジン、塗料、にかわ、うるし、釉薬、松脂や、ワックスや、蝋や、溶射材の溶射などを適用することができる。なお、溶射に用いる溶射材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはアルミマグネシウム合金などの金属や、セラミックスや、プラスチックや、サーメットなどを適用することができる。
図3に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けてコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、を含む。
内側シール層23を塗布する工程は、ライニング22の一方の面(コンクリート面21aに向く面)に内側シール層23をなす溶液を塗布する。また、ライニング22を配置する工程は、コンクリート面21aに予め設けられた当金(図示せず)に対してライニング22を溶接などにより接合することでライニング22をコンクリート面21aに沿って配置する。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程を含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
図4は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図4に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、内側シール層23とコンクリート面21aとの間に配置された内側保護層24と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、については、上述したとおりであり説明を省略する。ライニング22は、燃料プール2の床面2aまたは縦壁面2bをなす。
内側保護層24は、保護機能を有するもので、主に内側シール層23よりも厚いシートからなり、例えば、シリコーンレジンからなるシートや、常温収縮し得る樹脂シートや、ポリスチレンや、天然ゴム又は合成ゴムや、天然粘土又は合成粘土や、アスファルトや、室温で硬化する液状ゴムであって放射線を遮蔽する機能を有するシリコーンゴムシートを適用することができる。なお、これらの材料は、発泡させて使用してもよい。アスファルトを使用する際は、シリコンコーティング又は塗料などで、アスファルトの表面を被膜で覆う。
図4に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けて内側保護層24を介してコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、を含む。
内側シール層23を塗布する工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
内側保護層24を配置する工程は、内側保護層24をコンクリート面21aに仮止めする。ライニング22を配置する工程は、内側シール層23を塗布したライニング22により内側シール層23とコンクリート面21aとの間に内側保護層24を挟むようにして、コンクリート面21aに予め設けられた当金(図示せず)に対してライニング22を溶接などにより接合することでライニング22をコンクリート面21aに沿って配置する。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に内側保護層24により内側シール層23を保護する。また、内側保護層24が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程を含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに打設時などの凹凸が生じていても、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置することで、ライニング22に塗布した内側シール層23をコンクリート面21aの凹凸で傷つけることを防止して内側シール層23を保護することができる。
図5は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図5に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側シール層25と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、については、上述したとおりであり説明を省略する。
外側シール層25は、内側シール層23と同様であり、撥水性を有するもので、主に樹脂材からなり、例えば、三次元ポリマーからなるシリコーンレジン、ウレタンレジン、エポキシレジン、アクリルレジン、α-オレフィンレジン、エチレンレジン、ビニルレジン、塗料、にかわ、うるし、釉薬、松脂や、ワックスや、蝋や、溶射材の溶射などを適用することができる。外側シール層25は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。なお、溶射に用いる溶射材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはアルミマグネシウム合金などの金属や、セラミックスや、プラスチックや、サーメットなどを適用することができる。
図5に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けてコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面に外側シール層25を塗布する工程と、を含む。
内側シール層23を塗布する工程、およびライニング22を配置する工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
外側シール層25を塗布する工程は、内側シール層23を塗布する工程と同様であり、ライニング22の他方の面(コンクリート面21aとは相反する面)に外側シール層25をなす溶液を塗布する。この外側シール層25を塗布する工程は、ライニング22を配置する工程の後に行う。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23および外側シール層25が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に外側シール層25を塗布する工程とを含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
図6は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図6に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、内側シール層23とコンクリート面21aとの間に配置された内側保護層24と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側シール層25と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、内側保護層24と、外側シール層25と、については、上述したとおりであり説明を省略する。外側シール層25は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。
図6に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けて内側保護層24を介してコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面に外側シール層25を塗布する工程と、を含む。
これらの工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23および外側シール層25が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に内側保護層24により内側シール層23を保護する。また、内側保護層24が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に外側シール層25を塗布する工程とを含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに打設時などの凹凸が生じていても、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置することで、ライニング22に塗布した内側シール層23をコンクリート面21aの凹凸で傷つけることを防止して内側シール層23を保護することができる。
図7は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図7に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側シール層25と、外側シール層25のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側保護層26と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、外側シール層25と、については、上述したとおりであり説明を省略する。
外側保護層26は、内側保護層24と同様であり、保護機能を有するもので、主に内側シール層23および外側シール層25よりも厚いシートからなり、例えば、シリコーンレジンからなるシートや、常温収縮し得る樹脂シートや、ポリスチレンや、天然ゴム又は合成ゴムや、天然粘土又は合成粘土や、アスファルトや、室温で硬化する液状ゴムであって放射線を遮蔽する機能を有するシリコーンゴムシートを適用することができる。外側保護層26は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。これらの材料は、発泡させて使用してもよい。アスファルトを使用する際は、シリコンコーティング又は塗料などで、アスファルトの表面を被膜で覆う。
図7に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けてコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面に外側シール層25を塗布する工程と、外側シール層25を配置する工程の後に、外側シール層25を覆うように外側保護層26を配置する工程と、を含む。
内側シール層23を塗布する工程、ライニング22を配置する工程、および外側シール層25を塗布する工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
外側保護層26を配置する工程は、外側保護層26を外側シール層25の外側に貼り付ける。外側シール層25は、外側保護層26を貼り付ける接着層を兼ねる。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23および外側シール層25が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に外側保護層26により内側シール層23および外側シール層25を保護する。また、外側保護層26が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に外側シール層25を塗布する工程とを含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
図8は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図8に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、内側シール層23とコンクリート面21aとの間に配置された内側保護層24と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側シール層25と、外側シール層25のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側保護層26と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、内側保護層24と、外側シール層25と、外側保護層26と、については、上述したとおりであり説明を省略する。外側保護層26は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。
図8に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けて内側保護層24を介してコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面に外側シール層25を塗布する工程と、外側シール層25を配置する工程の後に、外側シール層25を覆うように外側保護層26を配置する工程と、を含む。
これらの工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23および外側シール層25が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に内側保護層24および外側保護層26により内側シール層23および外側シール層25を保護する。また、内側保護層24または外側保護層26が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に外側シール層25を塗布する工程とを含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに打設時などの凹凸が生じていても、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置することで、ライニング22に塗布した内側シール層23をコンクリート面21aの凹凸で傷つけることを防止して内側シール層23を保護することができる。
図9は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図9に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側保護層26と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、外側保護層26と、については、上述したとおりであり説明を省略する。外側保護層26は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。
図9に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けてコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22を配置する工程の後に、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面を覆うように外側保護層26を配置する工程と、を含む。
内側シール層23を塗布する工程、およびライニング22を配置する工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
外側保護層26を配置する工程は、ライニング22の他方の面(コンクリート面21aとは相反する面)に外側保護層26を貼り付ける。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に外側保護層26により内側シール層23を保護する。また、外側保護層26が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程を含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
図10は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図10に示す燃料プール2は、水Wを貯留するように上部が開放されたコンクリートからなるプール本体21と、プール本体21のコンクリート面21aを覆って配置されるライニング22と、ライニング22とコンクリート面21aとの間に配置された内側シール層23と、内側シール層23とコンクリート面21aとの間に配置された内側保護層24と、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された外側保護層26と、を備える。
プール本体21と、ライニング22と、内側シール層23と、内側保護層24と、外側保護層26と、については、上述したとおりであり説明を省略する。外側保護層26は、燃料プール2の縦壁面2bをなす。
図10に示す構成を施工するには、ライニング22の一方の面に内側シール層23を塗布する工程と、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置する工程と、内側シール層23をコンクリート面21aに向けて内側保護層24を介してコンクリート面21aを覆うようにライニング22を配置する工程と、ライニング22を配置する工程の後に、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する他方の面を覆うように外側保護層26を配置する工程と、を含む。
これらの工程は、上述したとおりであり説明を省略する。
このように構成された燃料プール2によれば、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、当該ピンホールや割れを内側シール層23が閉塞することで、燃料プール2に貯留されている水Wがコンクリート面21aに到達する事態を防ぎ、コンクリートが侵食されることを防止する。このように、本実施形態の燃料プール2は、防水性能を向上することができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2によれば、ライニング22に衝撃が加わった場合に内側保護層24および外側保護層26により内側シール層23を保護する。また、内側保護層24または外側保護層26が放射線を遮蔽する機能を有する場合、ライニング22にピンホールや割れなどが発生しても、放射線を遮蔽してプール本体21のコンクリート側への放射線の照射を防止する。
また、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに設置する前のライニング22に対し、ライニング22のコンクリート面21aに向く面に内側シール層23を塗布する工程を含み、複雑な工程を含むことなく容易に本実施形態の燃料プール2を得ることができる。
しかも、本実施形態の燃料プール2のライニング施工方法によれば、コンクリート面21aに打設時などの凹凸が生じていても、コンクリート面21aを覆うように内側保護層24を配置することで、ライニング22に塗布した内側シール層23をコンクリート面21aの凹凸で傷つけることを防止して内側シール層23を保護することができる。
図11は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図11に示す燃料プール2は、図5に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側シール層25のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27は、例えば、6mm以上好ましくは10mm以上のオーステナイト系ステンレス鋼からなる。
板材27を設けることで、ライニング22に塗布した外側シール層25を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図11に示す燃料プール2は、図5に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
図12は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図12に示す燃料プール2は、図6に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側シール層25のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27を設けることで、ライニング22に塗布した外側シール層25を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図12に示す燃料プール2は、図6に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
図13は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図13に示す燃料プール2は、図7に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側保護層26のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27を設けることで、外側保護層26を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図13に示す燃料プール2は、図7に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
図14は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図14に示す燃料プール2は、図8に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側保護層26のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27を設けることで、外側保護層26を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図14に示す燃料プール2は、図8に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
図15は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図15に示す燃料プール2は、図9に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側保護層26のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27を設けることで、外側保護層26を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図15に示す燃料プール2は、図9に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
図16は、本実施形態に係る燃料プールの要部の他の例を示す拡大断面図である。
図16に示す燃料プール2は、図10に示す燃料プール2をプール本体21の床に適用する場合に、外側保護層26のコンクリート面21aとは相反する面に床面2aをなす板材27をさらに備える。
板材27を設けることで、外側保護層26を保護しつつ板材27の表面が核燃料貯蔵用ラック1を載置する床面2aとなる。したがって、図16に示す燃料プール2は、図10に示す構成をプール本体21の床に適用することができる。
ところで、図15または図16に示す燃料プール2は、外側保護層26を緩衝材29に変えることができる。
即ち、図15または図16に示す燃料プール2は、図3または図4に示す形態を適用したプール本体21の床において、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された緩衝材29と、緩衝材29を覆って床面2aをなす板材27と、を備える。
緩衝材29は、衝撃を吸収ためのもので、床面2aに沿って配置されている。緩衝材29は、例えば、コイルばねにより構成できる。コイルばねは、線状の材料を螺旋状に巻いたもので、本実施形態では、床面2aに沿って配置された複数個の圧縮コイルばねを使用する。適宜な数のコイルばねを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。コイルばねは、複数巻としてもよい。コイルばねの材料は、ステンレス鋼が推奨される。
緩衝材29は、例えば、皿ばねにより構成できる。皿ばねは、底のない皿のような形状にしたもので、円錐状の上側部分と下側部分に荷重を加え、高さを低くする方向にたわませることでばね作用が得られる。皿ばねは、形状の寸法比(径や高さ)を変えることで様々なばね特性が得られる。複数の皿ばねを積層して組み合せることにより、さらに様々なばね特性を得ることができ、全体の高さも変えることもできる。適宜な数の皿ばねを床のライニング22と板材27の間に敷設する。皿ばねの材料は、ステンレス鋼が推奨される。
緩衝材29は、例えば、板バネにより構成できる。板ばねは、板の曲げ変形を利用する板材を用いるもので、適切な個数の板ばねを積層して組み合せることにより、様々なばね特性を得ることができ、全体の高さも変えることもできる。適宜な数の板ばねを床のライニング22と板材27の間に敷設する。板ばねの形状、重ね枚数、天地方向、両端部形状、および設置個数は適宜である。板ばねの材料は、ステンレス鋼が推奨される。
緩衝材29は、例えば、メッシュばねにより構成できる、メッシュばねは、細い線材を帯状にメリヤス編みにて編み込んだもので、メッシュスプリングとも言う。メッシュばねは、ばね特性が大きなヒステリシスを持っていることから振動吸収の性能をもつ。適宜な数のメッシュばねを床のライニング22と板材27の間に敷設する。メッシュばねの材料は、ステンレス鋼または銅合金が推奨される。
緩衝材29は、例えば、竹の子ばねにより構成できる。竹の子ばねは、長方形断面の板を円錐状に巻いた竹の子のような形状をしたもので、バンブースプリングとも言う。竹の子ばねは、自身の占める空間容積に対して大きな荷重、吸収エネルギーを得ることができる。本実施形態では、床面2aに沿って配置された複数個の竹の子ばねを使用する。適宜な数の竹の子ばねを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。竹の子ばねの材料は、ステンレス鋼が推奨される。
緩衝材29は、例えば、円錐ばねにより構成できる。円錐ばねは、線状の材料を円錐状に巻いたものである。本実施形態では、床面2aに沿って配置された複数個の円錐ばねを使用する。適宜な数の円錐ばねを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。円錐ばねの材料は、ステンレス鋼が推奨される。
緩衝材29は、例えば、非金属ばねにより構成できる。非金属ばねは、プラスチックやゴムなどの高分子材料を、ばね材料として利用するもので、発砲させずに、自ら持っている弾力を利用する方法と、発泡させた発泡体として用いる方法がある。発泡は、連泡と短泡の2種類が考えられる。好ましくは連泡とする。プラスチック材料としては、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)が用いられる。繊維強化プラスチックは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass-Fiber-Reinforced Plastics)と炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon-Fiber-Reinforced Plastics)を用いる。炭素繊維強化プラスチックは、板ばねとして構成することもできる。板ばねとして利用する際は、好ましくは重ね板ばねとする。無機材料のセラミックスもばねとして利用できる。適宜な数の非金属ばねを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、鉄鋼または非鉄金属からなる蛇腹様に板ばねが重ね折りされたばね、あるいは、筒状の周りが軸方向で重ね折りされたベローズ様のばねにより構成できる。かかるばねを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、発泡金属により構成できる。発泡金属は、金属をガスで発泡させたものである。適宜な数の発泡金属を床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、発泡セラミックにより構成できる。発泡セラミックは、セラミックを発泡させたものである。適宜な厚さの発泡セラミックを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、気泡コンクリートにより構成できる。気泡コンクリートは、コンクリートを練り混ぜるときに、セメント、砂、砂利、水のほかに発泡剤を入れることでコンクリートの中に小さな気泡を混入させ、内部に多数の気泡を閉じこめ、多孔質化させたものである。適宜な厚さの気泡コンクリートを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、ポーラスコンクリートにより構成できる。ポーラスコンクリートは、コンクリートの細骨材量を減らして多孔質化させたものである。適宜な厚さのポーラスコンクリートを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、グラスウールマットにより構成できる。グラスウールマットは、ガラス繊維でできた、綿状の素材を用いてマット状に成形したものである。適宜な厚さのグラスウールマットを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、ゴムクッションにより構成できる。ゴムクッションは、天然ゴムまたはシリコンラバーなどの有機系材料をマット状に成形したもので、ラバークッションとも言う。適宜な厚さまたは数のゴムクッションを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、流動性のある有機系材料により構成できる。有機系材料は、例えば、シリコンコンパウンドからなり、これを床のライニング22の上に流し込んで固めたのち、板材27を敷設する。有機系材料は、発泡させずに用いる方法と、発泡体させて用いる方法が考えられる。
緩衝材29は、例えば、コルク材などの木材により構成できる。木材は、コルクまたはバルサなどの柔らかな木材をチップ状、ペレット状又はマット状に成形したもので、適宜な厚さまたは数の木材クッションを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
緩衝材29は、例えば、粘土により構成できる。粘土は、ペレット状又はマット状に成形したもので、適宜な厚さまたは数の粘土クッションを床面2aに沿って配置し、床のライニング22と板材27の間に敷設する。
ここで、フリースタンディング方式の核燃料貯蔵用ラック1は、高い耐震性を有するが、地震動を受けて摺動する際、移動方向となる一端側が変位せず、反対の他端側が一端側を中心に回転するように傾斜して浮き上がるロッキング事象が発生する。ロッキング事象が発生すると、浮き上がった他端側が床面2aに着底する際に床側に大きな衝撃力を付与するため、床面2aや核燃料貯蔵用ラック1が損傷するおそれがある。
本実施形態によれば、ロッキング事象が発生して浮き上がった核燃料貯蔵用ラック1が床面2aに着底する際の衝撃力を板材27および緩衝材29により吸収することができ、床面2aや核燃料貯蔵用ラック1が損傷する事態を防ぐことができる。
また、本実施形態では、図15または図16に示す燃料プール2において外側保護層26を緩衝材29に変えた上記構成に追加し、図には明示しないが、図3または図4に示す形態を適用したプール本体21の縦壁において、図15または図16に参照するように、ライニング22のコンクリート面21aとは相反する面に配置された緩衝材29と、緩衝材29を覆って縦壁面2bをなす板材27と、を備えてもよい。この場合、プール本体21の縦壁において、床面2aから少なくとも核燃料貯蔵用ラック1の高さT(図1参照)に至りライニング22の外側に上述した緩衝材29が配置され、緩衝材29を覆う板材27が配置されて縦壁面2bが構成される。
したがって、本実施形態によれば、ロッキング事象が発生して浮き上がった核燃料貯蔵用ラック1が縦壁面2bに衝突する際の衝撃力を板材27および緩衝材29により吸収することができ、縦壁面2bや核燃料貯蔵用ラック1が損傷する事態を防ぐことができる。
また、本実施形態では、少なくとも板材27および緩衝材29を配置した部分のライニング22について、厚さを厚く構成する。ライニング22の厚さは、6mmから10mm程度とすることが好ましいが、これよりも厚くしても差し支えない。
したがって、本実施形態によれば、少なくとも板材27および緩衝材29を配置した部分のライニング22について、厚さを厚く構成することで、核燃料貯蔵用ラック1が衝突する際の衝撃力をより吸収することができ、ライニング22自体や、床面2aや、縦壁面2bが損傷する事態を防ぐことができる。