JP7063169B2 - 熱間鍛造用継目無鋼管 - Google Patents

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Description

本開示は、継目無鋼管に関し、さらに詳しくは、熱間鍛造により蓄圧器等の圧力容器に加工される、熱間鍛造用継目無鋼管に関する。
蓄圧器に代表される圧力容器は、継目無鋼管を用いて製造される場合がある。継目無鋼管を用いて圧力容器を製造する場合、次の工程が実施される。初めに、継目無鋼管に対して熱間鍛造を実施して、継目無鋼管の形状を、圧力容器の形状に成型した中間品を製造する。その後、製造された中間品に対して熱処理を実施して、中間品の強度及び硬さを調整したり、熱間鍛造により中間品に導入された局所的なひずみを低減して、機械特性を均一化したりする。以上の製造工程により、継目無鋼管から圧力容器が製造される。
従来の圧力容器では、熱間鍛造に次いで実施される熱処理後の継目無鋼管において、高い強度と、高い硬さとが求められていた。
ところで、最近、圧力容器の寒冷地での使用の要望がある。圧力容器を寒冷地で使用する場合、高い強度、高い硬さとともに、優れた低温靱性も要求されることが予想される。
鋼管において、強度と加工性とを両立させる技術は、特開平11-80899号公報(特許文献1)、特開2000-96143号公報(特許文献2)、及び、特開2000-94009号公報(特許文献3)に提案されている。
特許文献1に開示された高強度鋼管は、重量%で、C:0.30超~0.70%、Si:0.01~2.0%、Mn:0.01~2.0%、Al:0.001~0.10%を含有し、残部がFe及び不回避的不純物からなる組成を有する。この鋼管の組織はフェライト及び面積率で30%超のフェライト以外の第2相からなり、鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径が2μm以下である。特許文献1では、平均結晶粒径を2μm以下に微細化することにより、引張強さが600MPa以上であっても加工性に優れた高強度鋼管が得られる、と記載されている。
特許文献2に開示された鋼管の製造方法は、重量%で、C:0.005~0.70%、Si:0.01~3.0%、Mn:0.01~4.0%、Al:0.001~0.10%を含有する鋼管を、Ac3変態点~400℃に加熱又は均熱する。その後、Ac3変態点~400℃で累積縮径率20%以上の絞り圧延を実施する。絞り圧延後、温度θ(℃)×時間τ(min)が1200以上となるように保温した後、冷却する。特許文献2では、この製造工程により、強度及び延性のバランスに優れ、これらの機械特性のばらつきが小さい鋼管が得られる、と記載されている。
特許文献3に開示された鋼管の製造方法は、重量%で、C:0.005~0.70%、Si:0.01~3.0%、Mn:0.01~4.0%、Al:0.001~0.10%を含有する鋼管を、Ac3変態点~400℃に加熱又は均熱する。その後、Ac3変態点~400℃で累積縮径率20%以上の絞り圧延を実施する。絞り圧延後、冷却速度1.5℃/s以上で常温まで急冷する。特許文献3では、この製造工程により、圧延後の結晶粒粗大化を有利に抑制でき、延性及び強度のバランスに優れる鋼管が得られる、と記載されている。
特開平11-80899号公報 特開2000-96143号公報 特開2000-94009号公報
しかしながら、上述の特許文献1~特許文献3に開示された鋼管は、低温靱性に関する検討がなく、圧力容器用途に関する検討もされていない。特許文献1~特許文献3に開示された鋼管はさらに、製造された鋼管に対して、その後、熱間鍛造が実施されることを想定していない。特許文献1~特許文献3に開示された鋼管は、鋼管自体の結晶粒を微細化する等により、鋼管自体の強度及び延性の両立を目的としている。これに対して、圧力容器等に用いられる熱間鍛造用継目無鋼管では、熱間鍛造に次いで実施される熱処理後の(つまり、最終製品での)機械特性が重要となる。
このように、後工程として熱間鍛造が実施される、熱間鍛造用継目無鋼管において、熱間鍛造に次いで実施される熱処理後において、強度、硬さ及び低温靱性の3つの特性に着目した検討例は従前にはない。
熱間鍛造後において、たとえば、熱処理として焼入れ及び焼戻しを実施すれば、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性が得られる可能性がある。しかしながら、焼入れ及び焼戻しを実施する場合、熱処理を2工程(焼入れ工程、焼戻し工程)実施することになり、製造コストが高くなる。したがって、熱間鍛造工程後の熱処理は、焼準処理工程等、1つの熱処理で抑えることができる方が好ましい。つまり、熱間鍛造用継目無鋼管において、仮に、熱間鍛造後の熱処理が、焼準処理であったとしても、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性が得られる方が好ましい。
本開示の目的は、焼準処理後において、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性も得られる、熱間鍛造用継目無鋼管を提供することである。
本開示による熱間鍛造用継目無鋼管は、質量%で、C:0.25~0.33%、Si:0.01~0.35%、Mn:1.20~1.60%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:0.11~0.30%、Cr:0.01~0.30%、V:0.01~0.08%、Ti:0~0.005%、B:0~0.0010%、Al:0.01~0.10%、N:0.0080%以下、Mo:0~0.05%、Nb:0~0.010%、及び、残部:Fe及び不純物、からなり、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60~0.68である。
硬さ低温靱性指数=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示による熱間鍛造用継目無鋼管は、焼準処理後において、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性も得られる。具体的には、860℃で焼準処理を実施した後において、ASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaとなり、ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた、肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上となり、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験により得られた、-20℃における衝撃値が48J/cm以上となる。
図1は、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管を用いて製造される圧力容器の一例を示す縦断面図である。
本発明者らは、熱間鍛造に次いで焼準処理が実施された場合であっても、焼準処理後において、高い強度及び高い硬さとともに、優れた低温靱性も得られる熱間鍛造用継目無鋼管について検討を行った。
従来の熱間鍛造用継目無鋼管では、低温靱性が要求されていなかった。つまり、従来の熱間鍛造用継目無鋼管では、高い強度及び高い硬さが要求されており、優れた低温靱性については特段要求されていなかった。寒冷地での使用要求が大きくなかったためである。そのため、従来の熱間鍛造用継目無鋼管では、高い強度及び高い硬さを確保するため、C含有量を0.35%以上含有していた。
そこで、本発明者らは初めに、従来のC含有量が0.35%以上の熱間鍛造用継目無鋼管に対して、860℃での焼準処理を実施した後、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験を実施して、-20℃における衝撃値を求めた。その結果、従来のC含有量が0.35%以上の熱間鍛造用継目無鋼管の場合、焼準処理後において-20℃での衝撃値が48J/cm未満となり、十分な低温靱性が得られないことが判明した。
そこで、本発明者らは、従来の熱間鍛造用継目無鋼管とは異なる、低温靱性に優れた熱間鍛造用継目無鋼管について検討を行った。熱間鍛造用継目無鋼管は、上述のとおり、圧力容器に適用される場合、熱間鍛造及び、熱間鍛造後の熱処理(焼準処理)が施される。したがって、熱間鍛造用継目無鋼管の結晶粒度等のミクロ組織、又は、炭化物等の析出物を制御したとしても、その後の製造工程(熱間鍛造及び熱処理)により、継目無鋼管のミクロ組織及び析出物形態は変化してしまう。そのため、本発明者らは、強度、硬さ、及び低温靱性に対して、ミクロ組織や析出物形態の影響を受けない化学組成での制御を試みた。
上述のとおり、C含有量が0.35%以上の従来の熱間鍛造用継目無鋼管では、十分な低温靱性が得られない。そこで、本発明者らは、熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成において、C含有量を0.25~0.33%とし、さらに、低温靱性を高める元素であるNi含有量を0.11~0.30%とすることを試みた。具体的には、質量%で、C:0.25~0.33%、Si:0.01~0.35%、Mn:1.20~1.60%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:0.11~0.30%、Cr:0.01~0.30%、V:0.01~0.08%、Ti:0~0.005%、B:0~0.0010%、Al:0.01~0.10%、N:0.0080%以下、Mo:0~0.05%、Nb:0~0.010%、及び、残部:Fe及び不純物、からなる化学組成を有する熱間鍛造用継目無鋼管であれば、高い強度及び高い硬さだけでなく、優れた低温靱性も得られる可能性があると考えた。
しかしながら、上述の化学組成の範囲内の熱間鍛造用継目無鋼管であっても、十分な低温靱性が得られない場合があったり、肉厚中央位置において十分な硬さが得られなかったりする場合が生じた。そこで、本発明者らがさらに検討した結果、上述の化学組成のうち、硬さ及び低温靱性に影響する元素であるC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びVに関するパラメータ式であり、以下の式(1)で定義される硬さ低温靱性指数を0.60~0.68の範囲内とすれば、熱間鍛造用継目無鋼管を860℃の焼準処理した後においてASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaとなり、熱間鍛造用継目無鋼管を860℃の焼準処理した後においてASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上となり、熱間鍛造用継目無鋼管を860℃の焼準処理した後においてASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験により得られた-20℃における衝撃値が48J/cm以上となることを見出した。
硬さ低温靱性指数=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管は上述の知見に基づいて完成したものである。本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管は、質量%で、C:0.25~0.33%、Si:0.01~0.35%、Mn:1.20~1.60%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:0.11~0.30%、Cr:0.01~0.30%、V:0.01~0.08%、Ti:0~0.005%、B:0~0.0010%、Al:0.01~0.10%、N:0.0080%以下、Mo:0~0.05%、Nb:0~0.010%、及び、残部:Fe及び不純物、からなり、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60~0.68である。
硬さ低温靱性指数=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上述の熱間鍛造用継目無鋼管は、860℃の焼準処理後において、ASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaであり、ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた、肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上であり、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験により得られた、-20℃における衝撃値が48J/cm以上である。
以下、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[熱間鍛造用途について]
本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管は、後工程において熱間鍛造される。つまり、熱間鍛造用途の継目無鋼管である。たとえば、熱間鍛造用継目無鋼管は、熱間鍛造を施され、熱間鍛造後に焼準処理を施されて、圧力容器となる。圧力容器は内部に高圧流体が貯蔵される容器である。圧力容器はたとえば、蓄圧器、ポンプ及び圧縮機に係る容器、ショックアブソーバーその他の緩衝装置に係る容器、自動車用エアバックガス発生器に係る容器、蓄電池に係る容器、等である。
図1は圧力容器の一例の縦断面図である。図1を参照して、圧力容器1は、胴部2と、一対の鏡部3A、3Bとを備える。胴部2は、筒状の部材である。胴部2には高圧流体(ガス等)が貯蔵される。胴部2は、円筒形状であり、胴部の軸方向に垂直な断面は円環状である。一対の鏡部3A及び3Bは、胴部2の両端部に配置され、胴部2の両端部とつながっており、胴部2を密閉する。なお、圧力容器1は、鏡部3A又は3Bに、図示しない口金を備えてもよい。圧力容器1の形状は図1に限定されない。しかしながら、圧力容器1は通常、胴部2と一対の鏡部3A、3Bとを備える。
熱間鍛造用継目無鋼管を用いて、圧力容器を製造する場合、初めに、熱間鍛造用継目無鋼管を熱間鍛造して、継目無鋼管を、胴部2及び鏡部3A、3Bを含む圧力容器1の形状に成型する。熱間鍛造後の継目無鋼管は局所的にひずみを蓄積している。そのため、局所的なひずみを低減して、機械特性を均一化することを目的として、熱間鍛造後の継目無鋼管に対して熱処理(たとえば焼準処理等)を実施する。以上の製造工程により、圧力容器が製造される。
なお、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管は、圧力容器用途に限定されず、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管を熱間鍛造して成型される部品の用途であれば、特に限定されない。
以下、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管について、詳述する。
[化学組成]
本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.25~0.33%
炭素(C)は、鋼材の強度及び硬さを高める。C含有量が0.25%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な引張強度が得られなかったり、十分な引張強度が得られても、10~40mmの肉厚の継目無鋼管の肉厚中央部で十分な硬さが得られなかったりする。一方、C含有量が0.33%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。したがって、C含有量は0.25~0.33%である。C含有量の好ましい下限は0.26%であり、さらに好ましくは0.28%であり、さらに好ましくは0.30%である。C含有量の好ましい上限は0.32%である。
Si:0.01~0.35%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸し、さらに、鋼材の強度及び硬さを高める。Si含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な引張強度が得られなかったり、十分な引張強度が得られても、肉厚中央部で十分な硬さが得られなかったりする。一方、Si含有量が0.35%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。したがって、Si含有量は0.01~0.35%である。Si含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Mn:1.20~1.60%
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼材の強度及び硬さを高める。Mn含有量が1.20%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な引張強度が得られなかったり、十分な引張強度が得られても、肉厚中央部で十分な硬さが得られなかったりする。一方、Mn含有量が1.60%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。したがって、Mn含有量は1.20~1.60%である。Mn含有量の好ましい下限は1.25%であり、さらに好ましくは1.30%であり、さらに好ましくは1.35%である。
P:0.020%以下
燐(P)は不可避に含有される不純物である。すなわち、P含有量は0%超である。Pは、粒界に偏析して、焼準処理後の低温靱性を低下する。したがって、P含有量は、0.020%以下である。P含有量の好ましい上限は0.018%であり、より好ましくは0.015%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、P含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.001%である。
S:0.010%以下
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。すなわち、S含有量は0%超である。Sは、粒界に偏析して、焼準処理後の低温靱性を低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。S含有量の好ましい上限は0.005%であり、より好ましくは0.003%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、S含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は、0.0001%であり、さらに好ましくは0.001%である。
Ni:0.11~0.30%
ニッケル(Ni)は、焼準処理後の鋼材の低温靱性を高める。Niはさらに、焼準処理後の鋼材の強度及び硬さを高める。Ni含有量が0.11%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。一方、Ni含有量が0.30%を超えれば、その効果が飽和する。なお、Ni含有量が0.30%を超えれば、熱間鍛造用継目無鋼管は炭素鋼から合金鋼のカテゴリとなるため、性能面とは別の理由(材質規格等)により客先要望を満たさなくなる恐れがある。したがって、Ni含有量は0.11~0.30%である。Ni含有量の好ましい下限は0.12%であり、さらに好ましくは0.13%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.17%であり、さらに好ましくは0.20%である。Ni含有量の好ましい上限は0.29%であり、さらに好ましくは0.28%であり、さらに好ましくは0.26%であり、さらに好ましくは0.25%である。
Cr:0.01~0.30%
クロム(Cr)は、焼準処理後の鋼材の強度及び硬さを高める。Cr含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な引張強度が得られなかったり、十分な引張強度が得られても、肉厚中央部で十分な硬さが得られなかったりする。一方、Cr含有量が0.30%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。したがって、Cr含有量は0.01~0.30%である。Cr含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Cr含有量の好ましい上限は0.28%であり、さらに好ましくは0.26%であり、さらに好ましくは0.25%である。
V:0.01~0.08%
バナジウム(V)は炭素(C)及び/又は窒素(N)と結合して炭化物、窒化物又は炭窒化物(以下、「炭窒化物等」という)を形成する。これらの炭窒化物等の析出強化により、焼準処理後の鋼材の強度及び硬さが高まる。V含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な引張強度が得られなかったり、十分な引張強度が得られても、肉厚中央部で十分な硬さが得られなかったりする。一方、V含有量が0.08%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において、十分な低温靱性が得られない。したがって、V含有量は0.01~0.08%である。V含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Ti:0~0.005%
チタン(Ti)は本実施形態では、不純物である。Tiは鋼中のNと結合して粗大な窒化物を形成し、焼準処理後の鋼材の低温靱性を低下する。Ti含有量が0.005%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において十分な低温靱性が得られない。したがって、Ti含有量は0~0.005%である。なお、Ti含有量はなるべく低い方が好ましい。したがって、Ti含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.002%である。Ti含有量は0%であってもよい。
B:0~0.0010%
ボロン(B)は本実施形態では、不純物である。Bを含有する場合、有効固溶Bを確保するために、Tiを含有しなければならない。上述のとおり、Tiは本実施形態において不純物である。そのため、本実施形態において、B含有量はなるべく低い方が好ましい。したがって、B含有量は0~0.0010%である。B含有量の好ましい上限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0003%である。B含有量は0%であってもよい。
Al:0.01~0.10%
Alは、鋼を脱酸する。Al含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、この効果が得られない場合がある。一方、Al含有量が0.10%を超えれば、Al系酸化物が過剰に生成して、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋳片等の素材に地疵が発生しやすくなる。したがって、Al含有量は0.01~0.10%である。Al含有量の好ましい下限は、0.02%であり、さらに好ましくは0.025%である。Al含有量の好ましい上限は0.08%であり、さらに好ましくは0.06%であり、さらに好ましくは0.055%である。なお、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成において、Al含有量とは、酸可溶Al(いわゆる「sol.Al」)での含有量を意味する。
N:0.0080%以下
窒素(N)は不可避の不純物である。つまり、Nは0%超である。NはTiやBと結合して窒化物を形成する。窒化物は、後述の焼準処理後における鋼材の低温靱性を低下する。したがって、N含有量は0.0080%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0070%であり、さらに好ましくは0.0060%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、N含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、N含有量の好ましい下限は、0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Mo:0~0.05%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。含有される場合、Moは固溶して、又は、微細炭化物を生成して、焼準処理後の鋼材の強度及び硬さを高める。Mo含有量が少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mo含有量が0.05%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において十分な低温靱性が得られない。したがって、Mo含有量は0~0.05%である。Mo含有量の好ましい下限値は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Mo含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。
Nb:0~0.010%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは炭素(C)及び/又は窒素(N)と結合して炭窒化物等を形成する。これらの炭窒化物等の析出強化により、焼準処理後の鋼材の強度及び硬さが高まる。しかしながら、Nb含有量が0.010%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、焼準処理後において十分な低温靱性が得られない。したがって、Nb含有量は0~0.010%である。Nb含有量の好ましい下限は0.001%である。Nb含有量の好ましい上限は0.008%であり、さらに好ましくは0.006%である。
本実施の形態による熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、熱間鍛造用継目無鋼管を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は、製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[硬さ低温靱性指数について]
本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成はさらに、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60~0.68である。
硬さ低温靱性指数=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管を、寒冷地での圧力容器として適用する場合、熱間鍛造用継目無鋼管を熱間鍛造した後に焼準処理を実施して、圧力容器を製造する。焼準処理では、初めに、熱間鍛造後の継目無鋼管を熱処理炉に装入して、Ac3変態点以上で加熱する。熱処理温度はたとえば、850~900℃である。熱処理温度で所定時間保持する。保持時間は特に限定されないが、たとえば、10~180分である。焼準温度で保持時間経過した後、鋼材を冷却する。ここでの冷却はたとえば、放冷、強制空冷である。焼準処理の冷却では、冷却の初期段階では放冷を実施して、Ar1変態点以下となってから、徐冷又は強制空冷を実施してもよい。
熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成において、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数は、上述の焼準処理後の継目無鋼管の肉厚中央部での硬さと、低温靱性とを示す指数である。ここで、860℃での焼準処理を、「基準焼準処理」と定義する。本明細書において、860℃での焼準処理とは、具体的には、焼準温度が860℃であり、保持時間が25~125分であり、保持時間経過後の冷却方法が放冷(自然放冷)である焼準処理を意味する。硬さ低温靱性指数が0.68を超えれば、上述の焼準処理を実施した後の鋼材において、優れた低温靱性が得られない。より具体的には、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.68を超えれば、熱間鍛造用継目無鋼管を基準焼準処理した後において、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験で得られた-20℃における衝撃値が48J/cm未満となる。
熱間鍛造用継目無鋼管の化学組成において、式(1)で定義される低温靱性指数が0.68以下であれば、基準焼準処理後において、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験で得られた-20℃における衝撃値が48J/cm未満となる。
さらに、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60未満であれば、基準焼準処理後において十分な低温靱性は得られるものの、十分な硬さが得られなくなる。一方、硬さ低温靱性指数が0.60以上であれば、基準焼準処理後において、ASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaとなる。さらに、ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた、肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上となる。
低温靱性指数の好ましい下限は0.61である。低温靱性指数の好ましい上限は0.65である。
[基準焼準処理後の引張強度]
上述のとおり、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管を基準焼準処理した後の、ASTM E8に準拠した引張強度は、620~795MPaである。ここで、引張強度は次の方法で求める。
熱間鍛造用継目無鋼管に対して、基準焼準処理を実施する。基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚中央部から、丸棒引張試験片を採取する。たとえば、丸棒引張試験片の直径を6.35mm、平行部長さを35mmとし、丸棒引張試験片の中心軸が、熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚中央位置と略一致させる。なお、丸棒引張試験片の平行部は、熱間鍛造用継目無鋼管の長手方向(軸方向)と平行とする。
上述の丸棒引張試験片を、熱間鍛造用継目無鋼管の周方向に90°ピッチの任意の4箇所から採取する。4つの丸棒引張試験片に対して、ASTM E8に準拠した、常温(25℃)、大気中での引張試験を実施して、引張強度(MPa)を得る。得られた4つの引張強度の平均を、基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の引張強度(MPa)と定義する。
[基準焼準処理後の肉厚中央位置でのブリネル硬さ]
基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚中央位置でのブリネル硬さは187HBW以上である。ここで、肉厚中央位置でのブリネル硬さは次の方法で求める。
熱間鍛造用継目無鋼管に対して、基準焼準処理を実施する。基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管を長手方向に垂直に切断する。切断面において、周方向に90°ピッチの4箇所の肉厚中央位置に対して、ASTM E10-08に準拠し、試験力を750kgf、圧子直径を5mmとするブリネル硬さ試験を実施する。得られた4つのブリネル硬さの平均を、基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚中央位置でのブリネル硬さ(HBW)と定義する。
ブリネル硬さの好ましい下限は190HBWであり、さらに好ましくは195HBWである。ブリネル硬さの好ましい上限は特に制限されないが、たとえば、240HBWであり、さらに好ましくは230HBWである。
[基準焼準処理後の低温靱性]
基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の-20℃における衝撃値は48J/cm以上である。ここで、-20℃における衝撃値は次の方法で求める。
熱間鍛造用継目無鋼管に対して、基準焼準処理を実施する。基準焼準処理後の熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚中央部から、Vノッチ試験片を採取する。Vノッチ試験片は、幅:10mm、長さ55mmとする。Vノッチ試験片の長さ方向は、熱間鍛造用継目無鋼管の長手方向と平行とする。Vノッチは肉厚方向に割れが進展するように作製する。上述のVノッチ試験片を、3つ作製する。3つのVノッチ試験片に対して、ASTM E23に準拠して、-20℃におけるシャルピー衝撃試験を実施する。試験により得られた3つの衝撃値(J/cm)の最小値を、-20℃での衝撃値(J/cm)と定義する。
-20℃での衝撃値の好ましい下限は50J/cmであり、さらに好ましくは55J/cmである。
[熱間鍛造用継目無鋼管の外径及び肉厚]
熱間鍛造用継目無鋼管の外径及び肉厚については、特に限定されない。熱間鍛造用継目無鋼管の外径の好ましい下限は100.0mmであり、さらに好ましくは150.0mmであり、さらに好ましくは170.0mmである。熱間鍛造用継目無鋼管の外径の好ましい上限は400.0mmであり、さらに好ましくは350.0mmであり、さらに好ましくは320.0mmである。熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚の好ましい下限は10.0mmであり、さらに好ましくは12.0mmであり、さらに好ましくは12.5mmである。熱間鍛造用継目無鋼管の肉厚の好ましい上限は40.0mmであり、さらに好ましくは38.0mmであり、さらに好ましくは36.0mmである。
[製造方法]
本実施形態による熱間鍛造用継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。なお、本実施形態による熱間鍛造用継目無鋼管は、下記の製造工程以外の製造工程で製造されてもよい。下記の製造工程は、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管の好適な製造工程の一例である。好適な製造工程の一例は、素材製造工程と、熱間加工工程とを備える。以下、各工程について詳述する。
[素材製造工程]
素材製造工程では、上述の化学組成を有し、式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60~0.68である溶鋼を用いて素材を製造する。具体的には、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。
[熱間加工工程]
熱間加工工程では、準備された素材を熱間加工して、熱間鍛造用継目無鋼管を製造する。初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対してマンネスマン法を実施して、素管を製造する。具体的には、穿孔機により素材を穿孔圧延して、素管を製造する。穿孔圧延後の素管に対して、マンドレルミルによる延伸圧延を実施する。さらに、必要に応じて、レデューサによる定径圧延を実施する。以上の熱間加工工程により、継目無鋼管を製造する。製造された継目無鋼管を冷却する。冷却方法は特に限定されない。冷却方法は、放冷であってもよいし、強制空冷であってもよし、焼入れを実施してもよい。しかしながら、製造コストを抑えるために、好ましくは、冷却方法を放冷とする。なお、上述の熱間加工工程では、マンネスマン法による熱間加工を説明したが、マンネスマン法に代えて、熱間押出法により熱間鍛造用継目無鋼管を製造してもよい。
以上の製造工程により、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管が製造される。上述のとおり、本実施形態の熱間鍛造用継目無鋼管は、圧延まま(As-Rolled)材でよい。
[圧力容器の製造方法]
上述の熱間鍛造用継目無鋼管を用いた、圧力容器の製造方法について説明する。圧力容器として図1に示す蓄圧器を例に説明する。圧力容器の製造方法は、熱間鍛造工程と、焼準処理工程とを含む。以下、各工程について詳述する。
[熱間鍛造工程]
初めに、熱間鍛造用継目無鋼管に対して、熱間鍛造を実施する。熱間鍛造により、熱間鍛造用継目無鋼管の端部に、図1に示す鏡部3A、3Bを成型して、圧力容器形状とする。以下、熱間鍛造後の継目無鋼管を「中間品」と定義する。熱間鍛造工程時の熱間鍛造用継目無鋼管の加熱温度はたとえば、1000~1300℃である。熱間鍛造後の継目無鋼管を冷却する。冷却方法は特に限定されない。冷却方法は放冷であってもよいし、強制空冷であってもよい。以上の工程により、中間品を製造する。
[焼準処理工程]
熱間鍛造後の中間品には、局所的にひずみが蓄積されている。そこで、局所的なひずみを低減して機械特性を均一化するために、中間品に対して、焼準処理を実施する。焼準処理では、熱間鍛造後の中間品を熱処理炉に挿入して、Ac3変態点以上で加熱する。焼準温度はたとえば、850~900℃である。上記焼準温度で所定時間保持する。保持時間はたとえば、たとえば、10~180分である。焼準温度で保持時間経過した後、鋼材を冷却する。ここでの冷却はたとえば、放冷、強制空冷である。焼準処理の冷却では、冷却の初期段階では放冷を実施して、Ar1変態点以下となってから、徐冷又は強制空冷を実施してもよい。
以上の製造工程により、圧力容器が製造される。圧力容器は、高い強度、及び、高い硬さを有するだけでなく、寒冷地で使用された場合においても、優れた低温靱性を示す。具体的には、上述の焼準処理が基準焼準処理であった場合、ASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaとなり、ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上となり、ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験により得られた-20℃における衝撃値が48J/cm以上となる。
表1の化学組成を有する溶鋼を製造した。
Figure 0007063169000001
表1中の「硬さ低温靱性指数」には、各鋼番号における式(1)で定義された硬さ低温靱性指数を示す。表1中の「Ac1点」には、各鋼番号のAc1点を示し、「Ac3点」には、各鋼番号のAc3点を示す。表1中の「-」は、当該成分が含まれていない(検出されなかった)ことを示す。
上述の溶鋼を用いて、造塊法により鋼材(インゴット)を製造した。インゴットに対して熱間圧延を実施して、板厚13~35mmの鋼板を製造した。熱間圧延により製造された鋼板を常温(25℃)まで放冷した。以上の製造工程により、熱間鍛造用継目無鋼管を模擬した供試材(鋼板)を製造した。
各供試材に対して、圧力容器の製造工程(熱間鍛造工程及び焼準処理工程)を模擬して、次の処理を実施した。まず、熱間鍛造工程を模擬して、表2に示す各試験番号の供試材を1100℃で5分加熱し、加熱後の供試材を常温(25℃)まで放冷した。その後、表2に示す焼準温度(℃)及び保持時間(分)で焼準処理を実施した。
Figure 0007063169000002
焼準処理後の各試験番号の供試材に対して、次の引張試験、ブリネル硬さ試験、低温靱性試験を実施した。
[引張試験]
焼準処理後の各試験番号の供試材の板厚中央部(継目無鋼管における肉厚中央部に相当)から、丸棒引張試験片を採取した。丸棒引張試験片の直径を6.35mm、平行部長さを35mmとし、丸棒引張試験片の中心軸を、供試材の板厚中央位置と略一致させた。丸棒引張試験片の平行部は、供試材の長手方向(軸方向)と平行とした。作製された丸棒引張試験片を、任意の4箇所から採取した。採取した4つの丸棒引張試験片に対して、ASTM E8に準拠した、常温(25℃)、大気中での引張試験を実施して、引張強度(MPa)を得た。得られた4つの引張強度の平均を、その試験番号での引張強度TS(MPa)と定義した。
[ブリネル硬さ試験]
焼準処理後の各試験番号の供試材を長手方向に垂直に切断した。切断面において、任意の4箇所の板厚中央位置に対して、ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験を実施した。試験での試験力を750kgf、圧子直径を5mmとした。得られた4つのブリネル硬さの平均を、その試験番号でのブリネル硬さ(HBW)と定義した。
[低温靱性試験]
焼準処理後の各試験番号の供試材の板厚中央部から、Vノッチ試験片を採取した。Vノッチ試験片は、幅を10mmとし、長さを55mmとした。Vノッチ試験片の長さ方向は、供試材の長手方向(圧延方向)と平行とした。Vノッチは、供試材の厚さ方向に割れが進展するように作製した。各試験番号の供試材において、3つのVノッチ試験片を作製した。3つのVノッチ試験片に対して、ASTM E23に準拠して、-20℃におけるシャルピー衝撃試験を実施した。試験により得られた3つの衝撃値(J/cm)の最小値を、その試験番号の-20℃での衝撃値(J/cm)と定義した。なお、表2には、3つのVノッチ試験片で得られた衝撃値を全て記載している。
[試験結果]
試験結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号3、4、7、8の化学組成は適切であり、硬さ低温靱性指数が0.60~0.68の範囲内であった。そのため、基準焼準処理後の引張強度TSは620~795MPaであり、肉厚中央位置に相当する板厚中央位置でのブリネル硬さは187HBW以上であり、-20℃での衝撃値が48J/cm以上であった。
一方、試験番号1では、各元素の含有量は適切であったものの、硬さ低温靱性指数が0.60未満であった。そのため、十分な引張強度、及び、十分な低温靱性は得られたものの、肉厚中央位置に相当する板厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW未満であり、十分な硬さが得られなかった。
試験番号2では、Ni含有量が低かった。そのため、-20℃での衝撃値が48J/cm未満となった。
試験番号5及び6では、C含有量が高すぎた。そのため、試験番号5,6いずれにおいても、-20℃での衝撃値が48J/cm未満となった。
試験番号9では、従来の熱間鍛造用継目無鋼管に相当する化学組成であった。試験番号9では、C含有量が高く、Ti含有量も高かった。一方、Ni含有量は低く、Vが含有されていなかった。そのため、3つのVノッチ試験で得られた-20℃での衝撃値がいずれも、48J/cm未満となった。
試験番号10では、C含有量が低く、Ni含有量も低かった。そのため、ブリネル硬さが187HBW未満であり、十分な硬さが得られなかった。
試験番号11では、各元素の含有量は適切であったものの、硬さ低温靱性指数が0.68を超えた。そのため、-20℃での衝撃値が48J/cm未満となった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 圧力容器
2 胴部
3A、3B 鏡部

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.25~0.33%、
    Si:0.01~0.35%、
    Mn:1.20~1.60%、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、
    Ni:0.11~0.30%、
    Cr:0.01~0.30%、
    V:0.01~0.08%、
    Ti:0~0.005%、
    B:0~0.0010%、
    Al:0.01~0.10%、
    N:0.0080%以下、
    Mo:0~0.05%、
    Nb:0~0.010%、及び、
    残部:Fe及び不純物、からなり、
    式(1)で定義される硬さ低温靱性指数が0.60~0.68である、
    熱間鍛造用継目無鋼管。
    硬さ低温靱性指数=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 (1)
    ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載の熱間鍛造用継目無鋼管であって、
    860℃での焼準処理を実施した後の前記熱間鍛造用継目無鋼管において、
    ASTM E8に準拠した引張試験により得られた引張強度が620~795MPaであり、
    ASTM E10-08に準拠したブリネル硬さ試験により得られた、肉厚中央位置でのブリネル硬さが187HBW以上であり、
    ASTM E23に準拠したシャルピー衝撃試験により得られた、-20℃における衝撃値が48J/cm以上である、
    熱間鍛造用継目無鋼管。
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