以下、図面を参照して本発明における第1実施形態を詳細に説明する。
図1は、インクジェット装置100を印刷対象物6の主面方向から表した平面図である。
図1に示すように、本発明の1つの実施形態にかかるインクジェットヘッドは、インクジェット装置100に備えられて、複数個のモジュールヘッド15と、複数個のモジュールヘッド15を配置したベースプレート11とを有して、ノズル孔15g(図17参照)からインクを吐出する部材である。
インクジェット装置100は、基台1、ガイド2、搬送テーブル3、支持部材の一例としての門型形状のガントリー4、ラインヘッド5、駆動部7を備えている。
基台1は、走査方向に長尺な長方形の平面形状を有する直方体で構成している。
ガントリー4は、正面形状が門型形状であり、平面的に見て基台1の幅方向に跨るように基台1の所定位置、例えば、中間位置に固定されている。
ガイド2は、基台1の長手方向すなわち走査方向沿いに、基台1の上面に固定されている。一例として、ガイド2は、走査方向に直交する方向沿いの断面が矩形の直方体形状の部材で構成されている。
矩形の搬送テーブル3は、下面がガイド2に接触してガイド2でガイドされつつ基台1の走査方向に搬送可能となっている。搬送テーブル3の上面には、基板などの印刷対象物6が保持可能となっている。搬送テーブル3は、ガイド2に沿うように、ガイド2の剛性よりも低い剛性とする。
ラインヘッド5は、インクジェットヘッドの一例であり、基台1に幅方向に跨いで連結されているガントリー4に支持されている。ラインヘッド5は、搬送テーブル3がラインヘッド5の下を走査方向に通過するタイミングに合わせて、搬送テーブル3に向けてインクをラインヘッド5から吐出する。すなわち、ラインヘッド5の下を、搬送テーブル3が、走査方向沿いに図1の左側から右側に移動すると同時に、ラインヘッド5からインクが吐出され、搬送テーブル3の上面にて保持される印刷対象物6の塗布領域に、インクが塗布される。
なお、本構成においては、ラインヘッド5は、図1に示すように、2種類のラインヘッド5がガントリー4の両面(すなわち、図1ではガントリー4の左右面)にそれぞれ配置される構成としたが、ラインヘッド5は、1個のみがガントリー4に配置されていても良いし、ガントリー4が2個配置され、それぞれのガントリー4の両面に合計4個のラインヘッド5が配置されていても良い。ラインヘッド5の個数及び配置などの構成については、印刷対象物6に対して、ラインヘッド5で行いたい処理によって決めれば良い。
なお、図1に示すように、搬送テーブル3が走行する走査方向をX方向、印刷対象物6の面内に含まれ、かつX方向と直交する副走査方向をY方向とする。また、印刷対象物6の主面方向、すなわち一般的には鉛直方向を上下方向とする。
また、搬送テーブル3を走査方向に駆動させるため、少なくとも一つ以上の駆動部7が基台1に走査方向沿いに配置されて搬送テーブル3に連結されて、搬送テーブル3を走査方向に搬送駆動可能としている。駆動部7の一例として、図1では、幅方向の両端部近傍に走査方向沿いに2個の駆動部7が基台1に配置されている。各駆動部7は、リニアモータであっても良いし、又は、回転モータに連結されたボールねじ等であっても良いが、本実施の形態の構成では、長尺の構成としやすいリニアモータを用いている。
図2A及び図2Bを用いて、ラインヘッド5の構成について説明する。図2Aは、複数のモジュールヘッド15が取り付けられる矩形板状のベースプレート11と、ベースプレート11が有する複数の抜き孔12の模式図である。図2Bは、図2AのA-A断面から見た断面図であり、ベースプレート11とモジュールヘッド15とが締結された状態を示す模式図である。
なお、ラインヘッド5は、ベースプレート11と、ベースプレート11に締結される複数のモジュールヘッド15とで構成される。
図2Aで示すように、ベースプレート11は、モジュールヘッド15又はモジュールヘッド15から出る配線及び配管類18を貫通させるために、複数の抜き孔12を有する。また、複数の抜き孔12がベースプレート11に配列されるため、隣接する複数の抜き孔12同士の間に1つの短幅の桟31が存在する。各抜き孔12は、一例として長方形状であり、各桟31も、一例として長方形状である。各抜き孔12は、内部に、モジュールヘッド15の少なくとも一部が重なるように配置される。
なお、モジュールヘッド15を細密に配列するためには、桟31の幅を短くする必要があるため、桟31の曲げ剛性値は低く変形しやすくなる。よって、変形しやすい桟31の変形を起点としてベースプレート11の変形が生じやすい。
図2Bで示すように、モジュールヘッド15は、位置決めピン17を用いて位置決めをした状態で、螺子16によりベースプレート11に締結される。
モジュールヘッド15は、一例として理解しやすくするため、直方体として簡略化して図示している。
ベースプレート11には、モジュールヘッド15の長手方向の両端部を位置決めするための、位置決め基準である基準穴11bが、各抜き孔12の長手方向の外側にそれぞれ形成されている。モジュールヘッド15の長手方向の両端部には、ベースプレート11に対するモジュールヘッド15の位置決め基準である基準穴15bが、基準穴11bに対応して、それぞれ形成されている。よって、各端部で、位置決めピン17が基準穴15bと基準穴11bとにそれぞれ挿入されると、位置決めが行われる。すなわち、位置決めピン17は、ベースプレート11とモジュールヘッド15とに接触して、モジュールヘッド15とベースプレート11とを螺子16で締結する際の位置決めに用いる。
また、ベースプレート11には、モジュールヘッド15の長手方向の両端部を位置決めするための基準穴11bよりも前記長手方向の中心寄りの位置でかつ各抜き孔12の長手方向の外側に、各基準穴11bとは別に、締結用のネジ穴11aが形成されている。モジュールヘッド15の長手方向の両端部には、ベースプレート11にモジュールヘッド15を締結して固定するため、ネジ穴11aに対応して、螺子挿入穴15aがそれぞれ形成されている。螺子16は、モジュールヘッド15の螺子挿入穴15aを貫通して、螺子16のおねじ部16aがベースプレート11のネジ穴11aとネジ結合されている。ここで、螺子16は、ベースプレート11とモジュールヘッド15とを締結する部材である。
なお、モジュールヘッド15は、複数のノズル孔(図示せず)を有する矩形のヘッド部14と、ヘッド部14と締結されかつベースプレート11と締結される矩形のサブプレート13と、ヘッド部14とサブプレート13とを締結する複数の螺子19とで構成されている。
なお、ヘッド部14とベースプレート11との間にサブプレート13を設けることで、ベースプレート11の面性状、又は、ベースプレート11とサブプレート13との位置決め基準の誤差の影響を抑制することが出来る。
すなわち、サブプレート13をベースプレート11に対して位置合わせを行って組み立てた状態で、サブプレート13と組み合わされているヘッド部14のノズル孔位置を測定し、仕様を外れているモジュールヘッド15は、サブプレート13と組み合わされた状態でベースプレート11から取り外し、ずれ量を減算して、サブプレート13とヘッド部14との位置関係を修正することが出来る。
しかしながら、本実施形態においては、サブプレート13及び螺子19はモジュールヘッド15に含まれていても、含まれていなくても良く、ヘッド部14のみをモジュールヘッド15として用いても良い。その場合も、ヘッド部14をモジュールヘッド15と呼ぶ。
なお、モジュールヘッド15は、配線又は配管又はその両方18を有し、抜き孔12を通って制御部及びインク供給部又はインク廃液部へ接続される。
なお、制御部及びインク供給部又はインク廃液部の図示は省略するが、制御部及びインク供給部又はインク廃液部は、例えばラインヘッド5の上部の空間等に配置されていればよい。
なお、モジュールヘッド15は、Y方向に複数配置されるのが望ましいが、その数が多いほど、1つのラインヘッド5で、幅広い印刷対象物6に対して一括印刷を行うことが出来る。
しかしながら、その分、ベースプレート11のサイズが大きくなり、加工精度を保つのが困難になる。例えば、モジュールヘッド15を200個を越えて配置する場合、ベースプレート11のY方向の長さが例えば1000mmを超え、加工精度を保つのが困難となる。
なお、X軸方向にも複数のモジュールヘッド15を並べても良い。そうすることで、同一のモジュールヘッド15を用いても、Y方向に重なるように配置できるため、より高精細な印刷ピッチでの印刷が可能となる。
しかしながら、その分、ベースプレート11のサイズが大きくなり、加工精度を保つのが困難になる。
なお、モジュールヘッド15は、Y方向又はX方向に対して、傾いて配置されるのが良い。そうすることで、同一のモジュールヘッド15を用いても、より高精細なピッチでの印刷が可能となる。
モジュールヘッド15が、Y方向又はX方向に対して傾いて配置される1つの例を、図17に示す。
図17に示すように、モジュールヘッド15をY方向に対して一定角度だけ傾いた状態でベースプレート11に配置する場合には、複数のモジュールヘッド15のノズル孔15gが、Y方向に等ピッチで配列されるように構成とする方法が一般的に知られている。そうすることで、Y方向のノズルピッチを細かくすることができるので、高分解能での印刷が可能となる。
しかしながら、この構成とする場合、複数のモジュールヘッド15が等ピッチで配置されなければ、所望の分解能での印刷が出来なくなる。例えば図17に示すようにモジュールヘッド15を配置した場合、モジュールヘッド15が3つ以上配置されなければ、所望の分解能での印刷が出来なくなる。
なお、モジュールヘッド15を二つ配置して、相互のモジュールヘッド15のノズル孔15gが等ピッチで配列される構成とすることも出来るが、その分、モジュールヘッド15をX軸に対して大きく傾けて配置する必要があり、同じモジュールヘッド15を用いても実現できる印刷分解能が粗くなるため、モジュールヘッド15は3個以上配置するのが良い。
したがって、モジュールヘッド15をベースプレート11に配置する数は、3個以上でかつ200個以下とするのが良い。
なお、モジュールヘッド15は、より単純な構成とするため、Y方向又はX方向に対して傾いて配置されず、Y方向又はX方向に沿って配置されても良い。
本実施の形態では、一例として、モジュールヘッド15は、X方向に対して一定角度だけ傾いた状態で配置され、Y方向に12個配置され、X軸方向には複数のモジュールヘッド15を並べず、Y方向に沿って1列で配列される構成としている。
なお、モジュールヘッド15とベースプレート11との位置関係を合わせるための位置決めピン17は、一般的に用いられる圧入タイプのピンを用いると、モジュールヘッド15の取り替え及び取り外しが困難になるために、容易に取り外しができないという問題が生じる。また、逃がし機構を用いる必要があるために、X方向及びY方向双方での高精度な位置決め精度が求められる本構成には、不向きであるという問題も生じる。よって、本実施の形態では、位置決めピン17の一例としては、内部に螺子部を有し、螺子を締めて螺子部にねじ込むことで螺子部の外周部が拡径される機構を有するコレット冶具50を用いる。
図3を用いて、コレット冶具50の構成について説明する。
図3(a)にコレット冶具50の斜視図を示し、図3(b)にコレット冶具50の断面図を示す。コレット冶具50は、コレット51とテーパーコーン52とプルボルト53とを有する。コレット冶具50において、コレット51は、外周側が略円筒形状で内周側がテーパー形状を有するスリ割り付のコレットである。テーパーコーン52は、外周側は図3(b)の上向きに向かうに従い先窄まりとなるようなテーパー形状で、同様なテーパー形状のコレット51の内周側テーパーと接触しており、テーパーコーン52の内周側にはめねじ部52aが施されている。プルボルト53は、おねじ部53aが施されており、テーパーコーン52の内周側のめねじ部52aとネジ結合されている。図3(b)において、プルボルト53を回転させることにより、ネジ結合を介して、図3(b)でテーパーコーン52はコレット51に対して引き上げられ、コレット51は拡径される。
この機構を用いることによって、ベースプレート11の位置決め基準である基準穴11bと、モジュールヘッド15の位置決め基準である基準穴15bとの高精度かつ簡易な位置合わせが可能となる。
なお、位置決めピン17は、上述のコレット冶具50である必要はなく、例えばモジュールヘッド15の取り替え及び取り外しを考慮しなくてもよい場合には、圧入タイプのピン、偏心ピン等を用いても良く、求められる仕様に応じて選定すれば良い。
なお、位置決めピン17が挿入されるモジュールヘッド15の基準穴15bは、円形穴に挿入される必要はなく、例えばV溝型に切り替え板側面に接触するように配置されても良いし、単純にモジュールヘッド15の側面に当たるように配置されても良い。
図4に、モジュールヘッド15とベースプレート11とを、螺子16により締結した際の簡易力学モデルを示す。なお、理解を容易とするために、図2Bと上下方向を逆方向にして表現している。螺子16は、モジュールヘッド15の螺子挿入穴15aを貫通して、螺子16のおねじ部16aがベースプレート11のネジ穴11aとネジ結合されている。
螺子16を回転させてモジュールヘッド15とベースプレート11とを所望のトルクで締結すると、螺子16には引張力21が生じ、モジュールヘッド15とベースプレート11との非締結物には圧縮力22が生じる。これらにより、螺子16のおねじ部16aとベースプレート11のネジ穴11aのめねじ部とのそれぞれの螺子部の山と螺子部の谷の間の摩擦力、及び締付け座面での摩擦力が生じ、螺子16によりモジュールヘッド15とベースプレート11とが締結される。
すなわち、螺子16でモジュールヘッド15とベースプレート11とを所定のトルクで締結した際、螺子部の山と谷との間の摩擦力、及び螺子16の締付座面とモジュールヘッド15との間の摩擦力とが螺子16に対して作用することで、螺子16が締結された方向と逆の方向に戻ることを抑制し、螺子16が緩まない構成になっている。
なお、螺子16の締付座面とモジュールヘッド15との間の摩擦力が生じることで、作用反作用の法則に則り、モジュールヘッド15には、螺子16の締結方向と反対方向の力が作用する。これにより、モジュールヘッド15は、螺子16の締結方向と反対方向に回転しようとする。
更に、モジュールヘッド15の回転を抑制する力が、ベースプレート11からモジュールヘッド15に与えられる。
更に、その反作用として、モジュールヘッド15からベースプレート11に対して、螺子16の締結方向と同じ方向に力が作用する。
すなわち、モジュールヘッド15とベースプレート11との間で相互に力が作用し、どちらか一方又は双方が弾性変形することで、力の釣り合いが保たれる。
なお、モジュールヘッド15とベースプレート11とのうち、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性値の低い方が、より大きく弾性変形することとなる。詳細は後述するが、本構成においては、モジュールヘッド15の回転方向に対して、ベースプレート11の曲げ剛性値がモジュールヘッド15の曲げ剛性値より低い。よって、モジュールヘッド15とベースプレート11との間で相互に力が作用し、主にベースプレート11が弾性変形することで、力の釣り合いが保たれる。
これらの作用により、モジュールヘッド15をベースプレート11に締結していく過程及びモジュールヘッド15をベースプレート11から取り外す過程において、ベースプレート11に変形が生じていることを、本願発明者らは発見した。
以下に、モジュールヘッド15とベースプレート11との間で相互に力が作用し、どちらか一方又は双方が弾性変形する方向及びそのメカニズムについて説明する。
まず、図5~図8を用いて、モジュールヘッド15又はベースプレート11が変形する方向及び変形の様子についての概念を説明する。
図5は、締結時の螺子16の時計回りの回転に伴い、モジュールヘッド15が矢印23の方向に反時計回りに回転しようとする場合について、ベースプレート11からモジュールヘッド15に対して作用する力によって、モジュールヘッド15が変形する様子の概念図を示している。
モジュールヘッド15には、モジュールヘッド15の反時計回りの回転を抑制するため、矢印23と反対方向の時計回りに力が作用するため、モジュールヘッド15の長手方向の中心線は破線24で示す湾曲した状態に変形する。
図6は、モジュールヘッド15が矢印23の方向に反時計回りに回転しようとする場合について、モジュールヘッド15からベースプレート11に対して作用する力によって、ベースプレート11が変形する様子の概念図を示している。
ベースプレート11には、モジュールヘッド15が反時計回りに回転しようとすることで、モジュールヘッド15の反時計回りの回転方向23と同一方向の力が作用するため、ベースプレート11は破線25で示す形の湾曲した状態に変形する。
図7は、取外時の螺子16の反時計回りの回転に伴い、モジュールヘッド15が矢印26の方向に時計回りに回転しようとする場合について、ベースプレート11からモジュールヘッド15に対して作用する力によって、モジュールヘッド15が変形する様子の概念図を示している。
モジュールヘッド15には、モジュールヘッド15の時計回りの回転を抑制するため、矢印26と反対方向の時計回りに力が作用するため、モジュールヘッド15の長手方向の中心線は破線28で示す湾曲した状態に変形する。
図8は、モジュールヘッド15が矢印26の方向に反時計回りに回転しようとする場合について、モジュールヘッド15からベースプレート11に対して作用する力によって、ベースプレート11が変形する様子の概念図を示している。
ベースプレート11には、モジュールヘッド15が時計回りに回転しようとすることで、モジュールヘッド15の時計回りの回転方向と同一方向の力が作用するため、ベースプレート11は破線29で示す形の湾曲した状態に変形する。
なお、モジュールヘッド15とベースプレート11とのうち、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性値の低い方が、より大きく変形することとなる。
モジュールヘッド15及びベースプレート11のどちらについても、変形が生じるのは好ましくないが、特に、モジュールヘッド15が大きく変形すると、モジュールヘッド15内のノズル孔の配置がずれること、又は、隣接するモジュールヘッド15同士が異なる変形をすることで高い精細な印刷が困難となるなど、ベースプレート11が変形する場合よりも深刻な問題が生じる。
よって、モジュールヘッド15は、ベースプレート11よりも、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性を強くすることで、少なくともモジュールヘッド15は変形が生じづらい構成とするのが良い。
なお、前述したように、ベースプレート11には複数の抜き孔12が配列されているため、隣接する抜き孔12同士の間に短幅の桟31が存在している。ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31の変形を起点として生じる。
モジュールヘッド15を細密に配列するためには、桟31の幅を短くする必要がある。少なくとも、桟31の短手方向の幅は、モジュールヘッド15の短手方向の幅よりも短くすることが望ましい。そうすることで、Y方向のノズル孔の間隔を短くすることができ、高精細な印刷をすることが可能となる。
また、モジュールヘッド15の回転方向に対するベースプレート11の曲げ剛性値は、桟31の短手方向幅の概3乗に比例する。すなわち、桟31の短手方向の幅は、ベースプレート11の曲げ剛性値に強く影響を与えるため、桟31の短手方向の幅を短くすることで、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性値を、モジュールヘッド15よりも低くすることができる。
そうすることで、モジュールヘッド15とベースプレート11との間で相互に力が作用したとしても、ベースプレート11を変形させ、少なくともモジュールヘッド15が大きく変形することを抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、一例として、桟31の幅は5mm、モジュールヘッド15の幅は10mmとし、桟31の厚みは10mm、モジュールヘッド15の厚みは10mmとしている。
このような構成とすることで、ベースプレート11の、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性値は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性値よりも低くすることができる。すなわち、ベースプレート11にモジュールヘッド15を締結した際の、モジュールヘッド15の変形量は、ベースプレート11にモジュールヘッド15を締結した際の、ベースプレート11に配列された抜き孔12同士の間に形成される桟31の変形量よりも小さくなる。
なお、以降の説明では、モジュールヘッド15とベースプレート11とに相互に力が作用した場合において、モジュールヘッド15の変形は無視できるものとし、ベースプレート11に生じる変形について説明する。
以下に、図9~図12Cを用いて、モジュールヘッド15をベースプレート11に対して螺子16で締結していく際に、ベースプレート11が変形していくメカニズムについて説明する。
なお、一例として、締結する2つの螺子16が、一般的に用いられる右螺子16A及び16Bであり、右螺子16A及び16Bを図9~図12Cのそれぞれの図の手前から奥に向かって挿入する場合について説明する。
図9は、モジュールヘッド15の、両端部の2つの右螺子16A及び16Bと、両端部の2つの位置決めピン17A及び17Bの配置と、モジュールヘッド15の回転方向を示している。
なお、モジュールヘッド15は、ベースプレート11との相互の位置関係の再現性を得るために、位置決めピン17A及び17Bをそれぞれの基準穴に15b,11bに挿入して拡径して位置決めした状態で、螺子16A及び螺子16Bが締結される。
図9に示すように、右螺子16Aを回転してモジュールヘッド15とベースプレート11とを締結すると、モジュールヘッド15は、螺子16Aの締結時の時計回りの回転方向と逆方向である反時計回りの回転方向23の方向に回転しようとするが、それに対してモジュールヘッド15の回転を抑える力が作用することで回転が抑えられる。
モジュールヘッド15の回転を抑える方向に作用する力は、主に、位置決めピン17A又は位置決めピン17Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力、又は、締結した右螺子16Aと異なる位置に配置された右螺子16Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力、又は、モジュールヘッド15とベースプレート11との間の摩擦力のいずれかである。
図10A~図12Cを用いて、前述の3つの力について説明する。
図10Aは、モジュールヘッド15の矢印23の方向への反時計回りの回転を抑えるために、位置決めピン17A又は位置決めピン17Bと、ベースプレート11とが接触する点又は面を作用点として生じる力41A及び力41Bの概念図を示している。
なお、力41Bは、力41Aと比較して小さい力となる。なぜならば、右螺子16Aと位置決めピン17Bとの距離は、右螺子16Aと位置決めピン17Aとの距離よりも長く、螺子16Aを回転中心とした所望のモーメントを発生させるための力が小さいためである。また、螺子16Aと位置決めピン17Bとの距離が、右螺子16Aと位置決めピン17Aとの距離よりも長いことで、モジュールヘッド15の弾性変形が生じる余地が大きいことも要因として考えられる。
図10Bは、力41A及び41Bの反作用として、ベースプレート11に対して力42A及び力42Bが作用する様子を示す概念図である。すなわち、力41A及び力41Bの反力として、力42A及び力42Bがベースプレート11の桟31に作用することで、ベースプレート11に変形を与える。
なお、ベースプレート11の変形は、回転方向23に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31のたわみを起点として生じるため、桟31と力42A及び力42Bとの関係について、図10Cを用いて説明する。
図10Cは、桟31と力42A及び力42Bとの対応関係を示す概念図である。図10Cに示すように、力42A及び力42Bは、桟31を桟31Aの状態に変形させる力として作用する。このように、桟31が桟31Aのように変形することで、ベースプレート11全体の変形が生じる。
なお、モジュールヘッド15を複数配置されるため、この変形が同一方向に累積し、ベースプレート11がより大きく変形することとなる。
図11Aは、モジュールヘッド15の矢印23の反時計回りの方向の回転を抑えるために、締結した右螺子16Aと異なる位置に配置された右螺子16Bが、ベースプレート11と接触する点又は面を作用点として生じる力43の概念図を示している。
なお、右螺子16Bが締結されておらず、右螺子16Bとベースプレート11との間に隙間が存在する場合等、力43は作用しない場合もある。
図11Bは、力43の反作用として、ベースプレート11に対して力44が作用する様子を示す概念図である。すなわち、力43の反力として、力44がベースプレート11に対して作用することで、ベースプレート11に変形を与える。
なお、ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向23に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31のたわみを起点として生じるため、桟31と力44の関係を、図11Cを用いて説明する。
図11Cは、桟31と力44との対応関係を示す概念図である。力44は、桟31を桟31Aの方向に回転させる力として作用する。このように、桟31が桟31Aのように変形することで、ベースプレート11に変形が生じる。
なお、モジュールヘッド15を複数配置されるため、この変形が同一方向に累積し、ベースプレート11がより大きく変形することとなる。
なお、力44による桟31の変形は、図10Aを用いて説明した力42A及び力42Bによる桟31の変形と同一方向である。よって、これらが相互に打ち消し合うことはなく、ベースプレート11の変形は累積される。
図12Aは、モジュールヘッド15の回転方向である矢印23方向の反時計回りの回転を抑える時計回りの方向に作用する、モジュールヘッド15とベースプレート11との間の摩擦力45の例を示している。
摩擦力45は、モジュールヘッド15とベースプレート11とが接触している面の全てで発生し得るが、右螺子16Aを時計回りに回転させて締結することでモジュールヘッド15を押圧するため、右螺子16Aの回転軸を中心として概ね点対称に発生する摩擦力が最も大きくなる。
図12Bは、摩擦力45の反作用として、ベースプレート11に対して作用する摩擦力46の様子を示す概念図である。すなわち、摩擦力45の反力として摩擦力46がベースプレート11に対して作用し、ベースプレート11に変形を与える。
なお、ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向23に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31の変形を起点として生じるため、桟31と摩擦力46との関係を、図12Cを用いて説明する。
図12Cは、桟31と摩擦力46との対応関係を示す概念図である。摩擦力46は、例えば摩擦力46Aと摩擦力46Bといったように分解して考えることができるが、それぞれ桟31に逆方向の変形を生じさせる成分を有するため、互いに打ち消し合う効果がある。
なお、ベースプレート11又はモジュールヘッド15の面性状にばらつきが多い場合など、摩擦力46の点対称性が崩れている場合には、互いに打ち消し合わずに、桟31を変形させる力として作用する場合もある。
しかしながら、ベースプレート11又はモジュールヘッド15の面性状に無視できないばらつきが存在していない場合、すなわち、通常実現できる加工精度でベースプレート11又はモジュールヘッド15が製作されている場合、摩擦力46により桟31に生じる変形量は、図10C及び図11Cを用いて説明した前述の力によって桟31に生じる変形量よりも微量である。
すなわち、モジュールヘッド15の回転を抑える方向に作用する力のうち、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力と、締結した右螺子16Aと異なる位置に配置された右螺子16Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力は、相殺効果を有さず、ベースプレート11を変形させる主要因となる一方で、モジュールヘッド15とベースプレート11との間の摩擦力は、相殺効果を有するため、ベースプレート11を変形させる主要因とはなりづらい。
なお、締結した右螺子16Aと異なる位置に配置された右螺子16Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力は、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力と比較すると、小さい力となる。
よって、ベースプレート11を変形させる主要因として、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力のみを想定しても良い。
そこで、モジュールヘッド15とベースプレート11との接触面積を大きくすること、又は、モジュールヘッド15とベースプレート11との摩擦係数を大きくすることで、モジュールヘッド15とベースプレート11との間の摩擦力の割合を高めることができ、ベースプレート11の変形を抑制する効果が期待できる。
しかしながら、摩擦力だけでモジュールヘッド15の回転を抑制することは困難であり、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力と、締結した右螺子16Aと異なる位置に配置された右螺子16Bとベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力は残るため、ベースプレート11の変形を完全に抑制することは困難である。
また、モジュールヘッド15とベースプレート11との接触面積を大きくすると、接触面全ての面性状を高精度に加工する必要がある。接触面の面精度が不充分であると、摩擦力のばらつきが生じ、摩擦力がベースプレート11を変形させる効果についての相殺効果が発揮されない場合がある。また、モジュールヘッド15とベースプレート11との位置関係の再現性も取りづらくなるという問題も生じる。
本実施の形態においては、ベースプレート11の加工をする際に、特に桟31の部分は面精度を確保することが困難となる事情を鑑み、ベースプレート11の桟31とモジュールヘッド15とが接しないように、モジュールヘッド15に対して、一例として、0.2mm程度の削り部をベースプレート11の桟31のモジュールヘッド15が対向する面に設けて、ベースプレート11の桟31とモジュールヘッド15との間に隙間を形成する構成としている。つまり、ベースプレート11とモジュールヘッド15とは、互いに対向する面の間には空間(すなわち、隙間)があり、互いに接触していない部分を有する構成としている。
このように隙間を形成することで、面精度が出づらい桟31については、モジュールヘッド15と接触させず、モジュールヘッド15の取付け面の精度を確保しやすい構成とすることが出来る。
なお、以上の説明では、締結する螺子16が一般的に用いられる右螺子60である場合について説明したが、締結する螺子16が左螺子61である場合についても、力及び回転方向の方向が反対になるだけで、同様に考えることが出来る。
なお、締結方向が、図9~図12Cのそれぞれの図の手前から奥に向かう方向である場合について説明したが、締結方向を反対にした場合についても、力及び回転方向の方向が反対になるだけで、同様に考えることが出来る。
すなわち、複数個配列されたモジュールヘッド15を、全て同一方向に、同一の回転方向に締結する螺子16を用いてベースプレート11に締結すると、螺子16を締結するごとにベースプレート11に、同一方向の僅かな変形が生じ、これらが累積されることで、数μm~数百μm程度の変形が生じてしまう。
それに対して、複数個のモジュールヘッド15をベースプレート11に締結する際に、右螺子60と左螺子61とを混在させ、締結時の回転方向の異なる螺子60,61を混在させることで、ベースプレート11の変形を大幅に抑制できる効果があることを、本願発明者らは発見した。
図13Aは、複数個のモジュールヘッド15をベースプレート11に締結する際に、右螺子60と左螺子61とを1つのベースプレート11内で混在させる方法の一例を示している。
なお、図13Aでは、モジュールヘッド15の図示は省略している。なお、図13Aでは、右螺子60を二重丸で表し、左螺子61を二重三角で表し、位置決めピン17A及び17Bを一重丸で表している。
図13Aに示すように、1つのベースプレート11に複数設けられた抜き孔12のうちの任意の一つの前記抜き孔12の中心座標を原点Oとして、抜き孔12が配列されている方向をY軸とし、前記抜き孔12の長手方向をN軸とすると、螺子16及び位置決めピン17は、N方向に正及び負の座標にそれぞれ配置され、右螺子60と左螺子61とは、Y方向に交互に配置されている。すなわち、右螺子60及び左螺子61、及び位置決めピン17A及び17Bは、N方向に正(例えば原点Oより図13Aの斜め上向きを正とする。)及び負(例えば原点Oより図13Aの斜め下向きを負とする。)の座標にそれぞれ配置され、右螺子60及び左螺子61は、Y方向に交互に1つのベースプレート11内で配置されている。なお、N方向に正及び負の向きの例は、以下の図でも、同様とする。
本構成とすることで、モジュールヘッド15をベースプレート11に螺子60,61で締結することによってベースプレート11が変形する作用を相殺する効果があり、ベースプレート11の変形を少なくする効果がある。
ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31の変形を起点として生じるため、右螺子60又は左螺子61を締結することで、桟31とベースプレート11との間に作用する力関係について、図13Bを用いて説明する。
図13Bは、前記の構成において、複数の桟31に生じる力の方向を示す概念図である。
なお、右螺子60を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印62で表し、左螺子61を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印63で表している。
なお、右螺子60又は左螺子61を締結することでベースプレート11の間に作用する力として、右螺子60又は左螺子61とベースプレート11との間に作用する力と、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11との間に作用する力の双方が同じ方向に作用するため、これらをまとめて一つの力として記載している。なお、モジュールヘッド15とラインヘッド5との間の摩擦力については、前述したように桟31に対して変形を与える効果が相殺されるために影響が微量であるため、記載していない。
図13Bに示すように、桟31に変形を及ぼすように作用する力について、隣接する螺子60,61同士の、締結する際に生じる力は、相互に相殺し合う関係となっている。
この効果により、複数のモジュールヘッド15をベースプレート11に締結しても、ベースプレート11のうちの曲げ剛性の弱い部分である桟31が変形しづらく、結果としてベースプレート11の変形を抑制することが出来る。
なお、この構成の場合には、回転方向が反対の螺子60,61を交互に取り扱うため、モジュールヘッド15の取付け作業又は取外し作業、又はベースプレート11の加工工程が煩わしくなるという問題が生じる。
そこで、右螺子60と左螺子61とを交互に配置せずに、右螺子60と左螺子61との個数が概同一となるようにする構成とするだけでも良い。
図14Aに、複数個のモジュールヘッド15をベースプレート11に締結する際に、右螺子60と左螺子61とを混在させる方法の別の例を示している。
なお、図14Aでは、モジュールヘッド15の図示は省略している。なお、図14では、右螺子60を二重丸で表し、左螺子61を二重三角で表し、位置決めピン17A及び17Bを一重丸で表している。
図14Aに示すように、ベースプレート11に複数設けられた抜き孔12のうちの任意の一つの前記抜き孔12の中心座標を原点Oとして、前記抜き孔12の長手方向をN軸とすると、右螺子60又は左螺子61、及び位置決めピン17A及び17Bは、N方向に正及び負の座標にそれぞれ配置され、かつ、ベースプレート11の中心座標をY方向の原点Oとすると、Y方向に負の座標に配置される領域11Gの螺子60の回転方向は、Y方向に正の座標に配置される領域11Hの螺子61の回転方向と反対であるように配置されている。
この構成とすることで、モジュールヘッド15をベースプレート11に螺子60,61で締結することによってベースプレート11が変形する作用を相殺する効果があり、ベースプレート11の変形を少なくすることができ、かつ、同じ領域11G,11H内では螺子60,61の種類が同一であり、同一種類の螺子についてまとめて作業が行えるため、モジュールヘッド15の取付け作業又は取外し作業、又はベースプレート11の加工工程における煩わしさを改善できる。
なお、ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31の変形を起点として生じるため、右螺子60又は左螺子61を締結することで、桟31とベースプレート11との間に作用する力関係について、図14Bを用いて説明する。
図14Bは、前記の構成において、複数の桟31に生じる力の方向を示す概念図である。
なお、右螺子60を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印62で表し、左螺子61を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印63で表している。
なお、右螺子60又は左螺子61を締結することでベースプレート11の間に作用する力として、右螺子60又は左螺子61とベースプレート11との間に作用する力と、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11との間に作用する力の双方が同じ方向に作用するため、これらをまとめて一つの力として記載している。なお、モジュールヘッド15とラインヘッド5との間の摩擦力については、前述したように桟31に対して変形を与える効果が相殺されるために、影響が微量であるため記載していない。
図14Bに示すように、右螺子60が連続して配置されており、力62が作用する領域11Gの桟31については、桟31が破線71で示す状態に変形しようとする。これに対して、左螺子61が連続して配置されており、力63が作用する領域11Hの桟31については、桟31が破線72で示す状態に変形しようとする。なお、右螺子60と左螺子61とが隣接する部分については、図13Bで示した例と同様に、桟31に作用する力は相殺し合う。
すなわち、破線71の状態に変形しようとする桟31と破線72の状態に変形しようとする桟31とが1つのベースプレート11内で混在することとなり、1つのベースプレート11全体の変形という視点で見れば、相殺することが出来る。
しかしながら、個々の桟31を見ると歪みがたまりやすい状態であり、図13Aで示したように1つのベースプレート11で右螺子60と左螺子61とを交互に配置する場合と比較すると、ベースプレート11が変形しやすい状態となっている。そのため、モジュールヘッド15の取付け作業又は取外し作業、又はベースプレート11の加工工程煩わしさが許容できるのであれば、図13A及び図13Bに示した構成とする方が望ましい。
ただし、右螺子60と左螺子61とが交互に配置されていなくても、右螺子60と左螺子61との個数が1つのベースプレート11内で概同一であれば、1つのベースプレート11の変形に対して、相殺する効果を発揮するので、作業性との両立を図りたい場合は、図14Aに示すような構成としても良い。
図15Aは、複数個のモジュールヘッド15を1つのベースプレート11に締結する際に、右螺子60と左螺子61とを1つのベースプレート11内で混在させる方法のさらに別の例を示している。
なお、図15Aでは、モジュールヘッド15の図示は省略している。なお、図15Aでは、右螺子60を二重丸で表し、左螺子61を二重三角で表し、位置決めピン17A及び17Bを一重丸で表している。
図15Aに示すように、ベースプレート11に複数設けられた抜き孔12のうちの任意の一つの前記抜き孔12の中心座標を原点Oとして、抜き孔12の長手方向をN軸とすると、螺子60又は螺子61、及び位置決めピン17A及び17Bは、N方向に正及び負の座標にそれぞれ配置されている。その際、N方向に正の座標に配置される螺子60の回転方向は互いに同一であり、かつN方向に負の座標に配置される螺子61の回転方向は、互いに同一でありかつN方向に正の座標に配置される螺子60の回転方向と反対方向となるように配置される。
図15Aに示す構成とすることで、モジュールヘッド15をベースプレート11に螺子60,61で締結することによってベースプレート11が僅かに変形する作用を相殺する効果があり、ベースプレート11の変形を少なくすることが出来る。
しかしながら、モジュールヘッド15の回転を抑える方向に作用する力のうち、締結した螺子と異なる位置に配置された螺子とベースプレート11が接触している点又は面を作用点とする力については、相殺効果が期待できない。なぜならば、締結した螺子と異なる位置に配置された螺子がベースプレート11に締結されていない状態では、前述の力は作用しないためである。
例えば、右螺子60をベースプレート11に締結した後に左螺子61をベースプレート11に締結する場合、右螺子60を締結する際には、左螺子61とベースプレート11とは接触していないため、左螺子61とベースプレート11との間で力が作用しないのに対して、右螺子60の締結後に左螺子61を締結する際には、右螺子60とベースプレート11との間で、ベースプレート11を変形させようとする力が作用する。すなわち、右螺子60又は左螺子61とベースプレート11との間に作用する力について、相殺効果が生じない。また、右螺子60又は左螺子61を締結する順番によっても、ベースプレート11の変形方向に違いが生じることとなる。
そのため、隣接する2つのモジュールヘッド15を締結する際に、締結する順番を隣接する2つのモジュールヘッド15で同一で締結する場合、締結した螺子と異なる位置に配置された螺子とベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする同一方向の力が、累積しやすくなる。
よって、図15Aに示す構成とする場合、隣接するモジュールヘッド15同士では、右螺子60と左螺子61との締結順番を、異なる順番にするのが良い。例えば、右螺子60、左螺子61、右螺子60、左螺子61、と、単に交互に繰り返す順番ではなく、右螺子60、左螺子61、左螺子61、右螺子60との順番などとする。そうすることで、締結した螺子と異なる位置に配置された螺子とベースプレート11とが接触している点又は面を作用点とする力を相殺させる効果がある。
なお、ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31のたわみを起点として生じるため、右螺子60又は左螺子61を締結することで、桟31とベースプレート11との間に作用する力関係について、図15Bを用いて説明する。
図15Bは、前記の構成において、複数の桟31に生じる力の方向を示す概念図である。
なお、右螺子60又は左螺子61を締結することでベースプレート11との間に作用する力として、右螺子60又は左螺子61とベースプレート11との間に作用する力と、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11との間に作用する力の双方が同じ方向に作用するため、これらをまとめて一つの力として記載している。なお、モジュールヘッド15とラインヘッド5との間の摩擦力については、前述したように桟31に対して変形を与える効果が相殺されるため、影響が微量であるため記載していない。
図15Bに示すように、右螺子60又は左螺子61を締結することでベースプレート11に作用する力は、桟31の長手方向の中心に対して、桟31を互いに反対方向に変形させようとする力になるため、相殺し合う関係にある。しかしながら、桟31に回転が生じなくても、桟31は、破線73で示す方向にたわみが生じやすい状態となる。そのため、ベースプレート11に歪みが溜まった状態となり、ベースプレート11内の局所的な歪みが生じやすいこと、又は、ベースプレート11に何らかの外乱が加わったときにベースプレート11に変形が生じやすいといった問題がある。
一方で、図15Aに示すような構成とすることで、モジュールヘッド15を一つだけ取り付けた際、又は、モジュールヘッド15を奇数個取り付けた際にも、ベースプレート11の変形に対する相殺効果を発揮しやすいという効果がある。
図16Aは、複数個のモジュールヘッド15をベースプレート11に締結する際に、右螺子60と左螺子61とを1つのベースプレート11内に混在させる方法のさらに別の例を示している。
なお、図16Aでは、モジュールヘッド15の図示は省略している。なお、図16Aでは、右螺子60を二重丸で表し、左螺子61を二重三角で表し、位置決めピン17A及び17Bを一重丸で表している。
図16Aに示すように、ベースプレート11に複数設けられた抜き孔12のうちの任意の一つの前記抜き孔12の中心座標を原点Oとして、前記抜き孔12の長手方向をN軸とすると、右螺子60又は左螺子61、及び位置決めピン17A及び17Bは、N方向に正及び負の座標にそれぞれ配置され、右螺子60と左螺子61とはY方向に交互に配置され、かつ、同一のモジュールヘッド15を締結する螺子について、N方向に負の座標に配置される螺子61の回転方向は、N方向に正の座標に配置される螺子60の回転方向と反対方向であるように配置されている。言い換えれば、1つのモジュールヘッド15の両端部のうちの一方には右螺子60が配置され、他方には左螺子61が配置され、かつ、隣接する2つのモジュールヘッド15同士では、各端部で隣接する螺子が、互いに異なる種類となるように配置されている。
この構成とすることで、モジュールヘッド15をベースプレート11に螺子60,61で締結することによってベースプレート11が変形する作用を相殺する効果があり、ベースプレート11の変形を少なくすることができる。
なお、ベースプレート11の変形は、モジュールヘッド15の回転方向に対する曲げ剛性が弱い部分である桟31の変形を起点として生じるため、右螺子60又は左螺子61を締結することで、桟31とベースプレート11との間に作用する力関係について、図16Bを用いて説明する。
図16Bは、前記の構成において、複数の桟31に生じる力の方向を示す概念図である。
なお、右螺子60を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印62で表し、左螺子61を締結することでベースプレート11に作用する力を矢印63で表している。
なお、右螺子60又は左螺子61を締結することでベースプレート11の間に作用する力として、右螺子60又は左螺子61とベースプレート11の間に作用する力と、位置決めピン17A又は17Bとベースプレート11の間に作用する力の双方が同じ方向に作用するため、これらをまとめて一つの力として記載している。なお、モジュールヘッド15とラインヘッド5との間の摩擦力については、前述したように桟31に対して変形を与える効果が相殺されるために、影響が微量であるため記載していない。
図16Bに示すように、桟31に変形を及ぼすように作用する力について、隣接する螺子同士の、締結する際に生じる力は、相互に相殺し合う関係となっている。
この効果により、複数のモジュールヘッド15を1つのベースプレート11に締結しても、ベースプレート11のうちの曲げ剛性の弱い部分である桟31が変形しづらく、結果としてベースプレート11の変形を抑制することが出来る。
さらに、モジュールヘッド15を一つだけ取り付けた際、又は、モジュールヘッド15を奇数個取り付けた際にも、ベースプレート11の変形に対する相殺効果を発揮しやすいという効果も有する。
なお、この構成だと、モジュールヘッド15の一端部と他端部とで螺子60,61の回転向きが異なり、モジュールヘッド15の取付け作業又は取外し作業、又はベースプレート11の加工工程が煩わしくなるという問題が生じる。
図13A~図16Bに示した例は、それぞれ利点と欠点とを有するので、設備構成又は設備構成に付帯する作業に応じて、使い分ければ良い。
なお、ベースプレート11の変形に対して相殺する効果を発揮するためには、右螺子60と左螺子61との個数が概同一であれば良く、その配置は、図13A~図16Bに示す構成に縛られず、例えば3個ずつ交互に配置するなど、設備の構成又は作業負担に応じて決めれば良い。
なお、右螺子60と左螺子61との個数は概同一であればよいが、全く同数であることが望ましい。その構成を容易とするために、1つのベースプレート11に取り付けるモジュールヘッド15の個数は偶数とすることが望ましい。
なお、右螺子60と左螺子61との個数は概同一であればよいが、右螺子60又は左螺子61の個数が、回転方向の異なる螺子の個数の半分未満になると、相殺効果が殆ど発揮されないことを、本願発明者らは発見した。よって、ベースプレート11の変形が殆ど抑制できないため、右螺子60の個数は、左螺子61の個数の半分以上でかつ2倍以下とするのが良い。ここで、2倍以下とする理由は、半分以上とする理由と同じである。
なお、ベースプレート11に取り付けられたモジュールヘッド15は、任意のタイミングで交換作業を要する場合がある。
例えば、モジュールヘッド15の取り付け工程において、モジュールヘッド15のノズル孔15gの座標を測定し、狙いの座標からずれているモジュールヘッド15が存在していた場合に、そのモジュールヘッド15を取り外し、アライメントを行ってから再取り付けを行う交換作業が発生する。
また、設備にラインヘッド5を搭載して印刷動作を行う印刷工程においても、印刷精度が不充分である場合、又は、インク若しくはパーティクルの詰まり等による不吐出ノズルが増えた場合には、モジュールヘッド15を取り替える交換作業が発生する。
このような場合において、モジュールヘッド15を取り外す際にも、ベースプレート11の変形が生じる。なぜならば、モジュールヘッド15をベースプレート11に締結する際に、ベースプレート11の桟31に歪みが生じるが、その状態で曲げ剛性値の高いモジュールヘッド15と螺子16とで固定されるため、歪みが溜まった状態を維持されているためである。すなわち、締結している螺子16を緩めると、溜まっていた歪みが解放されるため、モジュールヘッド15を締結した際に生じる変形方向と反対方向に変形が生じる。したがって、モジュールヘッド15を取り付ける工程と同様に、モジュールヘッド15を交換する工程においても、ベースプレート11の変形に寄与する力が相殺される構成とするのが望ましい。
すなわち、複数モジュールヘッド15の任意の一つの第一モジュールヘッド15を取外す前と後の、ベースプレート11の変形方向を第一方向とし、第一モジュールヘッド15と隣接する第二モジュールヘッド15を取外す前と後の、ベースプレート11の変形方向を第二方向としたとき、第一方向と第二方向とは、反対方向であることが望ましい。
そうすることで、モジュールヘッド15の交換作業においても、ベースプレート11がどちらか一方の方向に大きく変形することを抑制することが出来る。
なお、図15A又は図16Aの構成においては、右螺子60と左螺子61との締結順番を全てのモジュールヘッド15に対して同一で行う場合、又は、右螺子60の締結時のみ高トルクで締結するなどとした場合など、第一方向と第二方向とは全て同一となる場合も存在する。
よって、図15A又は図16Aに示す構成においては、右螺子60と左螺子61との締結順番を同一としない交換方法とするのが良い。
そうすることで、複数モジュールヘッド15の任意の一つの第一モジュールヘッド15を取外す前と後の、ベースプレート11の変形方向を第一方向とし、第一モジュールヘッド15と隣接する第二モジュールヘッド15を取外す前と後の、ベースプレート11の変形方向を第二方向としたとき、第一方向と第二方向とは、反対方向である部分を含むことができる。
なお、本実施の形態の説明において、1例としてモジュールヘッド15及びラインヘッド5の構成を説明したが、本発明は、インクジェットの用途に縛られない。
すなわち、ベースプレート11の代わりにベースプレートAを用意し、モジュールヘッド15の代わりに取付プレートBを用意して、ベースプレートAと取付プレートBとを締結する場合にも適用可能である。すなわち、ベースプレートAと、ベースプレートAに配列された複数の抜き孔12と、抜き孔12の内部に少なくとも一部が重なるように配置される複数の取付プレートBと、ベースプレートAに取付プレートBを締結する螺子16と、取付プレートBとベースプレートAとを位置決めするピン17で構成される場合において、本発明と同様の考え方が出来る。
このような構成においても、螺子16は、右螺子及び左螺子の両方を含み、右螺子の個数は、左螺子の個数の半分以上でかつ2倍以下である構成とするのが良い。
また、ベースプレートAに取付プレートBを締結した際の、取付プレートBの変形量は、ベースプレートAに取付プレートBを締結した際の、ベースプレートAに配列された抜き孔同士の間に形成される桟31の変形量よりも小さい構成とするのが良い。
なお、本実施の形態においては、右螺子と左螺子とを混在させる構成を説明しているが、回転方向が異なる螺子が混在されていればよく、全て右螺子を用いても、右螺子を締結する方向を反対方向とすることでも、同様の効果を得られる。
よって、ベースプレートAに対して螺子を加工する際に左螺子の加工が困難な場合など、左螺子を用いず、右螺子を反対方向に締結させる構成としても良い。しかしながら、作業性が大幅に悪化するため、左ねじの加工が困難でない場合は、右螺子と左螺子とを混在させる方が良い。
前記実施形態によれば、複数の螺子16は、右螺子60及び左螺子61の両方を含み、右螺子60の個数は、左螺子61の個数の半分以上でかつ2倍以下であるように構成し、螺子16でモジュールヘッド15をベースプレート11に締結するので、ベースプレート11が変形することを抑制することができ、モジュールヘッド15のノズル孔15gの位置を高精度に再現することが可能となる。
よって、前記実施形態によれば、モジュールヘッド15のアライメント作業の難易度を大幅に下げることができ、ラインヘッド生産の高効率化が可能となる。
また、前記実施形態によれば、ベースプレート11に歪が生じている状態のまま設備搭載等の作業を行う必要がなくなるため、ベースプレート11に予期せぬタイミングで不連続な変形が生じることを未然に抑制することができ、設備稼働率を高めることが出来る。
これらの効果により、例えば有機ELパネル等にインクジェットでインクを吐出する際など、狭ピッチで吐出精度が求められる生産工程において、高精度な印刷を行うことが可能となる。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。