[0011]発明者らは、この度、多孔質フィルムへ塗布された容量性電極材料がフィルムの表面の上に離隔電極の複数対を形成するという容量性エネルギー貯蔵デバイス及び同デバイスを作製するための方法を開発した。フィルムは、概して従来のスーパーキャパシタでのセパレータに類似する性質を有しているフィルムであって、使用時は離隔電極間にフィルムの内部孔隙を介したイオン連通が提供されるように電解質のための溜りの役目を果たすうえで十分に多孔質である。フィルムの内部を通るイオン伝導性経路―フィルム表面を横断する更なるイオン伝導性経路によって及び/又は複層積重体では上に重ねられた多孔質フィルムを貫く更なるイオン伝導性経路によって随意に増補される―は、マイクロ電極への複数方向からの電解質到達容易性が電解質拡散に関連する抵抗を低減するので、デバイスの電気化学的性能を強化するものと確信される。追加的又は代替的に、電解質の溜りとしての多孔質基板の活用は、基板の上の電解質の重積層の厚さを最小化させることを可能にし、又はその様な層を完全に不在にさせることを可能にする。こうして、電極間の満足できるイオン伝導性を維持しながらにデバイスの体積が縮小される。また、フィルムの孔隙は高解像度の電極の製作を容易にすると考えられ、それについては後段でより詳細に説明してゆく。
[0012]したがって、発明は、第1の態様によれば、容量性エネルギー貯蔵デバイスであって:電解質で浸潤された少なくとも1枚の多孔質フィルム;および、多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対であって、下層の多孔質フィルムとイオン連通する容量性電極材料を各電極が備える離隔電極の対、を備えていて、電解質が多孔質フィルムの内部孔隙を介して離隔電極間のイオン連通を提供する、容量性エネルギー貯蔵デバイス、を提供している。
[0013]多孔質フィルムは、概して、フィルムの互いに反対側の2つの表面を有している。ここでの使用に際し、多孔質フィルムの「第1表面」及び「裏表面」は、これらの互いに反対側の表面を指し、表面同士を差別化するのに使用されている用語であり、それ自体は表面同士の何らかの相違を暗示するものではない。
[0014]多孔質フィルムは、少なくとも第1表面と連通する、典型的には第1表面と裏表面のどちらとも連通する内部孔隙を有している。多孔質材料の内部孔隙とは、固体基質を通して分散されている内部のボイド又は孔をいう。多孔質フィルムの孔は相互接続されており、よって多孔質フィルムは液体に透過性であり、従って電解質で浸潤させることができる。当業者には理解される様に、多孔質フィルムの内部孔隙は、孔サイズ、孔隙率(ボイド率、即ち総体積中の孔によって占められる割合、としても知られている)、及び表面積の様なパラメータによって特徴付けることができる。
[0015]一部の実施形態では、総電解質の少なくとも80%、望ましくは少なくとも90%、又は実質的に全部が、容量性エネルギー貯蔵デバイス内の多孔質フィルムの内部孔隙内に浸潤されている。従って、デバイス内の、電解質の離散層によって占められる空間は、最小限に留められる。
[0016]ここでの使用に際し、「多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の対」とは、少なくとも部分的には下層の多孔質フィルムの連続した表面より上に形成されひいては当該表面から突き出る3次元の物理的構造を有する電気的に孤立化された電極の対を指し、電極同士はそれらの中間にある多孔質フィルム表面の部分によって離隔されている。電極は下層の多孔質フィルムとイオン連通する容量性電極材料を備えている。容量性電極材料は、電解質イオンが、電極と、下層の多孔質フィルム部分の内部孔隙と、の間で多孔質フィルム表面を介して動くことができる場合に、下層の多孔質フィルムとイオン連通にある、ということを理解されたい。容量性電極材料は、好適な実施形態では第1の多孔質フィルムの表面と直接接触していても及び/又は接着又は結合されていてもよいが、「イオン連通」のための要件は、非接着性当接係合、容量性電極材料のフィルム内部孔隙内への部分的浸透又はイオン連通が適切に提供される他の係合モードを除外しない、ということを理解されたい。
[0017]一部の実施形態では、離隔電極の対は、約50ミクロン未満、望ましくは30ミクロン未満の電極間離隔距離を有している。ここでの使用に際し、電極間離隔距離は離隔電極同士の中間にある多孔質フィルムの第1表面の部分を横切る最小距離であって、確実に電極同士を互いから電気的に孤立化させる最小距離である。狭い電極間離隔距離は、イオンにとっての拡散長さスケールを縮小し、それにより改善された時間及び周波数応答及び/又は改善されたパワー密度を提供する。一部の実施形態では、離隔電極の対は、多孔質フィルムの厚さより小さい電極間離隔距離を有している。その様な離隔距離は、本質的に、電極を多孔質セパレータフィルムのどちらの側にも配置させる従来のスーパーキャパシタ設計では手に入れることができない。
[0018]一部の実施形態では、電極自体と電極間離隔区域の両方を含む離隔電極の各対は、多孔質フィルム上の約1mm2未満の表面積、例えば0.5mm2未満という様な表面積、を覆っている。ここでの使用に際し、電極間離隔区域とは、離隔電極同士の中間にある多孔質フィルムの第1表面の区域であって、確実に電極同士を互いから電気的に孤立化させる区域である。好都合にも、その様な小さい電極では、電荷輸送動態は放射状拡散メカニズムによって制御され、結果的に改善された静電容量及びエネルギー密度がもたらされるものと考えられる。加えて、その様な電極は、十分な電気伝導性を保有し、追加の電流コレクタ、即ち電極の平面内区域を覆う箔又は他の金属製の層、を必要としない。したがって、一部の実施形態では、容量性エネルギー貯蔵デバイスの電極は隣接する電極へ及び/又は外部回路へ金属製電流コレクタ無しに電気的に接続される。
[0019]一部の実施形態では、離隔電極の対は、各電極が2本から6本のフィンガ、望ましくは3本から5本のフィンガ、例えば4本という様なフィンガ、を有する櫛型電極を備えている。各フィンガは約50ミクロン未満の幅と約250ミクロン未満の長さを有することができる。
[0020]一部の実施形態では、電極は約25nmから約1ミクロンの間の平面外厚さを有している。ここでの使用に際し、平面外厚さとは、電極が多孔質フィルムの第1表面から突き出ている距離をいう。
[0021]一部の実施形態では、多孔質フィルムの第1表面の上に離隔電極の複数対が直列及び/又は並列に電気的に接続されて配置されている。何れかの特定の用途にとってのエネルギー及びパワーの要件に依っては、並列の複数の電極対、直列の複数の電極対、並列接続の電極対を直列に接続したブロック、などを含め、広範に様々な電極対構成を多孔質フィルム上に提供することができる。当業者には理解される様に、並列の電極対の総静電容量は、個々の電極対の静電容量の合計として増加する。対照的に、電極対の直列式組合せは総静電容量を減少させるが、印加電圧は電極対の数と共に直線的に増加する。キャパシタのエネルギー密度は印加電圧の2乗に正比例するので、デバイスのエネルギー密度は、直列に接続される電極対の数の増加と共に直線的に増加する。
[0022]また、多孔質基板の表面区域の効率的活用は、基板の第1表面の所与の面積内の離隔電極対の数を最大化し、それにより電極対間の未活用空間を最小化することによって提供されることが理解されるであろう。一部の実施形態では、多孔質フィルムの第1表面の上に、表面1cm2当たり10より多い電極対、望ましくは50より多い電極対、例えば80より多いという様な電極対、が配置される。この方式では、デバイス内のデッドボリュームは小さくなり、単位デバイス体積当たりのエネルギー密度及びパワー密度は最大化される。
[0023]一部の実施形態では、離隔電極の複数対は多孔質フィルムの第1表面上の伝導性リンケージによって電気的に接続されており、伝導性リンケージも容量性電極材料を備えている。これら及び他の実施形態では、離隔電極の対又は電気的に接続されている離隔電極の複数対には、外部回路への電気的接続のための電気接点が提供されており、電気接点も容量性電極材料を備えている。その様な実施形態は、好都合にも、外部回路へ接続するための構成の、電気的に接続されている電極対の拡張型ネットワークを、典型的には単一の印刷工程で、単一の伝導性材料(又はその還元可能な先駆物質)を塗布することによって、多孔質フィルム上に作製することができるようになることで、デバイスの製作を単純化する。電極対間の伝導性リンケージの長さはリンケージをまたぐ電圧の落ち込みを最小限に抑えるために最小に留められ、デバイスのパワー性能が危うくならないようにするのが望ましい。これに関連して、他の実施形態では、同じ多孔質フィルム上の電極の対間の伝導性リンケージ又は外部回路への接続のための電気接点は、金属を含め他の伝導性材料を備えることもできる、ものと理解されたい。これは、例えば、エネルギー貯蔵デバイスの内部抵抗を小さくするには好適であろう。
[0024]一部の実施形態では、複数の多孔質フィルムが積重されていて、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対が第1の多孔質フィルムより上に積重されている第2の多孔質フィルムの裏表面と接触するように、例えば当接係合するように積重されている。接触が、電極と裏表面の間にイオン連通を提供するのが好適である。複数の多孔質フィルムがこの方式で積重されている場合、第1のフィルムの離隔電極は、それぞれが電解質で浸潤された2枚の多孔質フィルムの間に挟まれ2枚の多孔質フィルムとイオン連通する。したがって電解質は離隔電極間に第1の多孔質フィルムと第2の多孔質フィルムの両方の内部孔隙を介してイオン連通経路を提供することができる。電極は全ての面を第1及び第2の多孔質フィルム内に含まれる電解質の溜りによって有効に取り囲まれているので、容量性エネルギー貯蔵デバイスのデッドボリュームを最小化しつつも電気化学的性能は更に強化される。そのうえ、特に多孔質フィルムが可撓性の膜である場合、隣接する多孔質フィルムは間に挟まれた電極の周りに密接に馴染むので、フィルム同士の間に実質的に隙間無しにフィルムを積重させることができる。したがって、デバイス内の総電解質の少なくとも90%、望ましくは実質的に全部を、積重された多孔質フィルムの内部孔隙内に浸潤させることができる。デバイスの体積的なエネルギー密度及びパワー密度はこうして増加される。
[0025]2枚又はそれより多い多孔質フィルムが積重されてもよい。当業者には自明であろうが、2枚より多い多孔質フィルムが積重される場合、積重体内で上下両方の隣り合うフィルムを有する各多孔質フィルムは、それの第1表面上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対がその上側の隣り合うフィルムの裏表面と接触している、という点で第1の多孔質フィルムと定義されることもあれば、それの裏表面がその下側の隣り合うフィルムの離隔電極の1つ又はそれ以上の対と接触している、という点で第2の多孔質フィルムと定義されることもある。
[0026]複数の多孔質フィルムが積重される一部の実施形態では、第1の多孔質フィルムの第1表面上に配置されている離隔電極の少なくとも1つは、伝導性経路を介して、第2の多孔質フィルムの第1表面上に配置されている離隔電極の少なくとも1つと電気的に接続されている。この方式では、エネルギー貯蔵デバイスは、直列に及び/又は並列に接続されている電極対の、積重体の厚さに亘る3次元拡張ネットワークを備えることができるわけである。
[0027]一部の実施形態では、伝導性経路は、第2の多孔質フィルムの厚さを貫いて延びている開口部内に伝導性材料を備えている。伝導性材料は、それにより、第2の多孔質フィルムを通って浸透し、典型的には第1及び第2の多孔質フィルム上の接続されている電極の電気接点と電気的に連通する。伝導性材料は、分散金属を備える硬化型樹脂、好ましくは銀充填エポキシ、を備えていてもよい。
[0028]少なくとも1枚の多孔質フィルムは、典型的には、高分子多孔質フィルムであり、望ましくは可撓性高分子膜であり、したがって容量性エネルギー貯蔵デバイスの可撓性エレクトロニクス用途での使用の可能性が開ける。多孔質フィルムの厚さは、100ミクロン未満、望ましくは50ミクロン未満、最も望ましくは30ミクロン未満、とすることができる。概して、デバイスの体積的なエネルギー密度及びパワー密度はフィルムの厚さを小さくすることによって増加される。
[0029]一部の実施形態では、可撓性高分子膜は、従来のスーパーキャパシタ又はリチウムイオンバッテリの様な電気化学的デバイスでのセパレータとしての使用に適する多孔質材料を備えている。孔隙に加え、その様な材料は、概して、酸電解質又はアルカリ電解質の存在下での劣化を回避するうえで充分に化学的に安定していて、作動中の温度の突発的上昇に耐えるうえで充分に熱的に安定している。可撓性高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレートから成る群より選択される少なくとも1つを備えていてもよい。或る好適な実施形態では、可撓性高分子膜はポリフッ化ビニリデンを備えている。
[0030]一部の実施形態では、容量性電極材料は、炭素系電極材料又は疑似容量性電極材料から成る群より選択される少なくとも1つを備えている。一部の実施形態では、容量性電極材料は、還元された酸化グラフェン、グラフェン、剥離グラファイト、多孔質炭素、及び活性炭の様な炭素系電極材料を備えている。還元された酸化グラフェンを容量性電極材料として備えている電極、好都合には酸化グラフェンから形成させてその後に多孔質フィルム表面上で還元させることができる、は、特に好適である。後段により詳細に説明されている様に、容量性電極材料は概して多孔質フィルム上に印刷される。
[0031]一部の実施形態では、電解質はゲル電解質であり、随意に架橋型ポリビニルアルコール、典型的には、KOH、H2SO4、又はH3PO4の様な強酸性又は強塩基性電解質塩と組み合わせで、を備える。別の例では、ポリエチレンオキシド系ゲル電解質も適しているであろう。ゲル電解質は、全体に固体であるが可撓性であるエネルギー貯蔵デバイスを提供する能力及びフィルム面を横切って電極間に増補的イオン伝導性経路を提供する潜在能力が理由で目下のところ好適とされているが、水性、非水性、及びイオン液体性の電解質を含め、多孔質フィルムの孔隙内に少なくとも部分的に保持される液体電解質を使用することも構想される。
[0032]ここに説明されている様に、発明による容量性エネルギー貯蔵デバイスの特に好都合な実施形態は積重型構成を有している。その様なデバイスは、電極対のマイクロスケールサイズ、上層及び下層の多孔質フィルムの内部孔隙を介しての電極間の多重的イオン伝導性経路の利用可能性、直列及び/又は並列に接続された電極対の積重体の厚さに亘る広範に様々な3次元拡張ネットワークを作製するための実現性、及び電流コレクタ又は電極の上に重なる厚い電解質層の様な体積充満構成要素の不在、に因る、高エネルギー密度と高パワー密度と高速サイクリング応答のうちの1つ又はそれ以上を有することができる。
[0033]従って、更なる態様によれば、発明は、積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスであって:第1の多孔質フィルム;第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つそれ以上の対であって、各電極が下層の第1の多孔質フィルムとイオン連通する容量性電極材料を備えている、離隔電極の対;第1の多孔質フィルムより上に積重されている第2の多孔質フィルムであって、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対が第2の多孔質フィルムの裏表面と接触するように積重されている第2の多孔質フィルム;および、第1及び第2の多孔質フィルムの内部孔隙内の電解質、を備えている積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスを提供している。
[0034]第1及び第2の多孔質フィルムのそれぞれは第1表面と裏表面を有している。積重されたとき、第2の多孔質フィルムの裏表面は第1の多孔質フィルムの第1表面に対向していて典型的には当該第1表面と直接接触している。
[0035]一部の実施形態では、容量性電極材料は第2の多孔質フィルムの裏表面とイオン連通している。したがって、使用時、電解質は離隔電極間に第1の多孔質フィルムと第2の多孔質フィルムの両方の内部孔隙を介してイオン連通を提供する。
[0036]一部の実施形態では、積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスは、更に、第2の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対であって、各電極が下層の第2の多孔質フィルムとイオン連通する容量性電極材料を備えている、離隔電極の対を備えている。
[0037]一部のその様な実施形態では、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つは、伝導性経路を介して、第2の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つと電気的に接続されている。
[0038]発明の容量性エネルギー貯蔵デバイスの実施形態についてここに説明されている他の随意的又は好都合な特徴は、同じく、積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスの実施形態の特性となり得るものと理解されたい。その様な特徴には、多孔質フィルムの性質、フィルムの第1表面上の電極対の組成及び幾何学形状、電解質の組成、及び同じ表面上の又は隣接して積重されているフィルムの表面上の電極対間の電気的接続が含められる。
[0039]本発明の容量性エネルギー貯蔵デバイスは、発明者らによって開発された方法であってデバイスを作製するための方法によって提供される。発明の方法は、高解像度での形成を含め、離隔電極を多孔質フィルムの表面上に電極間のイオン連通が少なくとも部分的に多孔質フィルムの内部孔隙を介して提供されるようにして形成することを提供する。
[0040]従って、更なる態様によれば、発明は容量性エネルギー貯蔵デバイスを作製する方法を提供しており、方法は:容量性電極材料又は先駆物質を多孔質フィルムの第1表面へ塗布して第1表面の上に配置される離隔電極の1つ又はそれ以上の対を形成する段階;および、多孔質フィルムを電解質で浸潤させる段階、を備えており、電解質が離隔電極間に多孔質フィルムの内部孔隙を介してイオン連通を提供する。
[0041]一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質を備えるインクが第1表面上へ印刷される。フィルムの孔隙は、これらの好適な実施形態でのマイクロスケール電極の製作をやり易くするものと考えられる。何れかの理論によって縛られたいわけではないが、塗布された際にインクの連続した相がフィルムの孔の中へ急速に吸い込まれてゆき、それにより、非常に小さい寸法と狭い電極間距離を有する電極が印刷される場合でさえもインクの拡散と合体が防止されるであろうと考えられている。
[0042]一部の実施形態では、インクは第1表面上へグラビア印刷又はフレキソグラビア印刷により印刷され、グラビア印刷が望ましい。発明者らは、驚くべきことに、その様な印刷技法を使用して、ミクロンスケールの特徴を有する電極を、セパレータとして従来使用されている多孔質フィルムの表面上へ印刷できることを発見した。それにより、分散した電極材料又は先駆物質を備える適切な粘度のインクを採用した場合に優れた解像度と再現性を得ることができる。さらに、何れかの理論に縛られたいわけではないが、グラビア印刷は電極を形成する電極材料又は先駆物質のせん断誘導整列を生じさせ、それによりエネルギー貯蔵デバイスのサイクル中の電極内部への好ましいイオン伝導性が提供されるであろうと考えられている。
[0043]インクの粘度は、グラビア印刷又はフレキソグラビア印刷を許容し且つ容量性電極材料又は先駆物質の多孔質フィルムの内部への浸透を制限又は回避させるのに適切な範囲に入っていなくてはならない。したがって、インクは、第1表面へ印刷されるときには、約25Pa sから約100Pa sの間の粘度を有することができる。発明の電極を印刷するためのインク中の容量性電極材料又は先駆物質の適切な濃度は、材料及び担体流体の性質に依存することになるものと理解されたい。1つの実施形態では、インクは、容量性電極材料又は先駆物質の約1重量%から5質量%の間の濃度、例えば大凡3質量%という様な濃度、を有していた。
[0044]一部の実施形態では、発明の方法は、更に、第1表面上へ印刷するためのインクを提供する段階を備えている。インクを提供する段階は、容量性電極材料又は先駆物質の分散体を濃縮してその粘度を高める段階を備えていてもよい。或る好適な方法では、容量性電極材料又は先駆物質は分散体の水性連続相中に分散されており、分散体は:i)水性連続相から吸水性固体の中へ水を吸収させるために、分散体を超吸収性高分子のビードの様な吸水性固体と接触させる段階;および、ii)その後、分散体を吸水性固体から分離する段階、によって分散体が濃縮される。発明者らは、グラビア印刷のための適切な粘度を有する濃縮酸化グラフェンインクを好都合にもこの方式で調製することができ、それにより濃縮酸化グラフェン分散体を直接調製するという課題又は希釈分散体を水性相の揮発によって濃縮させるという課題を回避できることを発見した。
[0045]一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質を発明の方法により塗布することによって形成される離隔電極は、約50ミクロン未満、望ましくは30ミクロン未満の電極間離隔距離を有する。しかも、こうして形成された、電極自体と電極間離隔区域の両方を含む離隔電極の各対は、多孔質フィルム上の1mm2未満の表面積を覆うことになる。
[0046]一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質を塗布する段階は、多孔質フィルムの第1表面の上に配置される離隔電極の複数対を形成する段階を備えており、離隔電極の複数対は容量性電極材料又は先駆物質を備えるリンケージによって直列及び/又は並列に接続される。一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質を塗布する段階は、更に、外部回路への電気的接続のための電気接点を形成する段階を備えており、電気接点もまた容量性電極材料を備えている。電極、リンケージ、及び電気接点は、同じ印刷段階にて第1表面へ印刷することができる。
[0047]例えば、酸化グラフェンの様な電極先駆物質材料が電極を形成するために塗布される一部の実施形態では、方法は、更に、多孔質フィルムの第1表面上の容量性電極材料又は先駆物質を還元してその伝導性を高める段階を備えている。容量性電極材料又は先駆物質は、任意の適切な技法、化学的、熱的、光熱的、及びビームによる還元技法を含む、によって還元されてもよい。一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質は、ヨウ化水素酸の様な化学的還元剤への暴露によって還元される。
[0048]一部の実施形態では、方法は、更に、複数の多孔質フィルムを積重する段階であって、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対が、第1の多孔質フィルムより上に積重される第2の多孔質フィルムの裏表面と、例えば当接係合によって、接触するように積重する段階を備えている。接触が電極と裏表面の間のイオン連通を提供するのが好適である。
[0049]一部のその様な実施形態では、方法は、更に、伝導性経路を介して、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つを、第2の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つと電気的に接続する段階を備えている。電極同士を電気的に接続する段階は、例えば第2の多孔質フィルムの厚さを貫いて延びる開口部の中へ伝導性材料を設置することによって、第2の多孔質フィルムを貫いて伝導性経路を作製する段階を備えている。伝導性材料は、第2のフィルムの第1表面上へ及び/又は第2のフィルムの開口部の中へ、印刷され、ドロップキャストされ、又は注入されてもよい。一部の実施形態では、伝導性材料は、分散金属を備える硬化性樹脂、望ましくは室温で硬化できる樹脂で、望ましくは銀充填エポキシを備えている。硬化性樹脂を第2多孔質フィルムの厚さを貫いて浸透させたら、第1の多孔質フィルムを第2の多孔質フィルムへ接着させるよう樹脂は硬化されてよい。
[0050]したがって、発明の方法は、容易に利用できるマイクロ製作技法を使用する積重型複層エネルギー貯蔵デバイスを作製するための工業的にスケール可能な段階的方法を提供している。具体的には、デバイスは、第1の多孔質フィルムより上に第2の多孔質フィルムを積重することによって製作することができ、第2の多孔質フィルム上に配置されている離隔電極のうちの少なくとも1つの電極の電気接点は、第1の多孔質フィルム上に配置されている離隔電極のうちの少なくとも1つの電極の電気接点との適切な垂直方向整列に置かれる。次いで、分散金属を備える硬化性樹脂が、第2の多孔質フィルム上の電極の電気接点を貫通するか又は電気接点に隣接する第2の多孔質フィルムの開口部の中へ設置される。十分に伝導性の接続が電気接点相手に作られることを確約するために、硬化性樹脂を更に開口部に隣接する第2の多孔質フィルムの区域上へ設置するのは随意である。1mm未満の直径、例えば約0.8mm、の穴であってもよいとされる開口部は、電極及びその上の電気接点を形成する段階の前か後のどちらでも第2の多孔質フィルムに作製することができるが、望ましくは後である。伝導性樹脂は開口部を通って浸透し第1の多孔質フィルム上の電極の電気接点に接触する。次いで、積重体の隣接する層同士の電極間に永久的な電気接続を生じさせ、層同士を一体に接着させるために樹脂が硬化される。第1の多孔質フィルムの電極と第2の多孔質フィルムの電極の間の全ての必要な電気接続がこの方式で作製されたら、第3の多孔質フィルムを、ここに説明されている様に、第2の多孔質フィルムより上に積重し、電気的に接続させることができる。この方式では、2層、3層、4層、5層、又はそれよりなお多い層を備える複層積重体を作製することができる。
[0051]積重する段階の前に多孔質フィルムは随意に電解質で飽和させられるが、一部の好適な実施形態では、複数の多孔質フィルムは多孔質フィルムを積重する段階の後になって、一般的には更に、ここに説明されている様に積重体内の層間の電気接続を確立する段階の後になって初めて電解質で浸潤される。積重体のフィルムの透過性の性質の結果として、積重され電気的に接続された容量性エネルギー貯蔵デバイスを、製作後に、電解質で浸潤させることができる、というのが本発明の利点であると考えられる。
[0052]一部の実施形態では、多孔質フィルム又は複数の積重された多孔質フィルムは、デバイスの中への浸透が許されるように、低粘度硬化性電解質で浸潤される。硬化性電解質は、フィルムの中へ浸潤されるときは約10Pa sより下、望ましくは約1Pa sより下の粘度を有することができる。その様な実施形態では、方法は、更に、単数又は複数のフィルムが適切に浸潤され次第、ゲル電解質を生成するために低粘度硬化性電解質を硬化させる段階を備えている。一部の実施形態では、低粘度硬化性電解質は、架橋性ポリビニルアルコールを、典型的にはKOH、H2SO4、又はH3PO4の様な強酸性又は強塩基性電解質塩と組み合わせて備えている。その様な硬化性電解質は、熱処理により、又は室温にて、ゲル化させることができる。
[0053]一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質が塗布される多孔質フィルムは、高分子多孔質フィルムであり、望ましくは可撓性高分子膜である。可撓性高分子膜は、従来のスーパーキャパシタ又はリチウムイオンバッテリの様な電気化学的デバイスでのセパレータとしての使用に適した多孔質フィルムを備えていてもよい。可撓性高分子膜は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレートから成る群より選択される少なくとも1つを備えていてもよい。或る好適な実施形態では、可撓性高分子膜はポリフッ化ビニリデンを備えている。
[0054]一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質は、炭素系電極材料、疑似容量性電極材料、又はこれらのうちのどちらかの先駆物質から成る群より選択される少なくとも1つを備えている。一部の実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質は酸化グラフェンを備えている。
[0055]その様な実施形態では、方法は、その伝導性を高めるために多孔質フィルムの第1表面上の容量性電極材料又は先駆物質を還元する段階を備えている。電極を形成するため酸化グラフェンを多孔質フィルムの第1表面へ塗布する実施形態では、酸化グラフェンは、例えば化学的還元によって還元されて、伝導性の還元された酸化グラフェンを生成する。
[0056]更なる態様によれば、発明は、ここに開示されている実施形態の何れかの方法により作製された容量性エネルギー貯蔵デバイスを提供する。
[0057]ここに開示されている様に、発明の電極官能化型多孔質フィルムの特に好都合な用途は、積重型複層エネルギー貯蔵デバイスの作製である。
[0058]したがって、更なる態様によれば、発明は、複数の多孔質フィルムの使用であって、各多孔質フィルムは、多孔質フィルムの第1表面の上に配置されていて第1表面とイオン連通する容量性電極材料を備えている離隔電極の1つ又はそれ以上の対、を備えている、容量性エネルギー貯蔵デバイスを作製するための複数の多孔質フィルムの使用を提供しており、当該使用は、次を備える:第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対が第1の多孔質フィルムより上に積重される第2の多孔質フィルムの裏表面と接触するように複数の多孔質フィルムを積重する段階;および、多孔質フィルムを電解質で浸潤させる段階。こうして作製された容量性エネルギー貯蔵デバイスの充電時及び放電時に、電解質は離隔電極間に多孔質フィルムの内部孔隙を介してイオン連通を提供する。
[0059]接触は、例えば、当接係合を介してであってもよい。接触が第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている電極と第2の多孔質フィルムの裏表面との間にイオン連通を提供するのが好適である。こうして作製された容量性エネルギー貯蔵デバイスの充電時及び放電時に、電解質は離隔電極間に第1及び第2の多孔質フィルムの内部孔隙を介してイオン連通を提供する。
[0060]一部の実施形態では、使用は、更に、伝導性経路を介して、第1の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つを、第2の多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の少なくとも1つと電気的に接続する段階を備えている。一部のその様な実施形態では、電極同士を電気的に接続する段階は、伝導性経路を作製するために第2の多孔質フィルムの厚さを貫いて延びる開口部の中へ伝導性材料を設置する段階を備えている。一部の実施形態では、多孔質フィルムを積重し電極同士を電気的に接続する段階の後、多孔質フィルムは電解質で浸潤される。
[0061]「comprise」、「comprises」、及び「comprising」という用語(訳注:翻訳文では「備える」(「備えている」などの変形も含む))が明細書(特許請求の範囲を含む)の中で使用されている場合、それらは記載の特徴、個別の存在物、段階、又は構成要素を指定してはいるものの1つ又はそれ以上の他の特徴、個別の存在物、段階、又は構成要素、又はそれらから成る群の存在を排除しない、と解釈されるべきである。
[0062]ここでの使用に際し、開示されている実施形態の様々な特徴に関連する「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、任意に割り当てられており、様々な実施形態に組み入れられ得る2つ又はそれ以上のその様な特徴同士を区別することを意図しているにすぎない。それらの用語自体が何れかの特定の配置向き又は配列順を指示するものではない。また、「第1」の特徴の存在は「第2」の特徴が存在していることを暗示するものではなく、「第2」の特徴の存在は「第1」の特徴が存在していることを暗示するものではないこと、などなど、を理解されたい。
[0063]発明の更なる態様は、以下の発明の詳細な説明に出ている。
[0064]ここでは発明の実施形態を添付図面に関連付けて単に一例として説明してゆく。
[0092]本発明は、容量性エネルギー貯蔵デバイス、容量性エネルギー貯蔵デバイスを作製する方法、及び積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスを作製するための多孔質フィルムの使用に関する。発明の容量性エネルギー貯蔵デバイスは、電解質で浸潤された少なくとも1枚の多孔質フィルムと、多孔質フィルムの第1表面の上に配置されている離隔電極の1つ又はそれ以上の対と、を備えている。各電極は、下層の多孔質フィルムとイオン連通する容量性電極材料を備えている。外部回路を介してデバイスを充電したり放電したりするときの様な使用時に、電解質は離隔電極間に多孔質フィルムの内部孔隙を介してイオン連通を提供する。
多孔質フィルム
[0093]容量性エネルギー貯蔵デバイスは、少なくとも1枚の多孔質フィルムを備えている。多孔質フィルムの厚さは、100ミクロン未満、望ましくは50ミクロン未満、最も望ましくは30ミクロン未満とすることができる。
[0094]多孔質フィルムは、典型的には、高分子多孔質フィルムであり、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレートから成る群より選択される少なくとも1つを備えることができる。或る好適な実施形態では、可撓性高分子膜は、ポリフッ化ビニリデンを備えているか又は本質的にポリフッ化ビニリデンから成っている。
[0095]多孔質フィルムの孔サイズは、0.1ミクロンから0.5ミクロンの間、望ましくは0.1ミクロンから0.3ミクロンの間、例えば大凡0.2ミクロンなど、とすることができる。多孔質フィルムの孔サイズは、米国材料試験協会(ASTM)D-2873によるといった様に、液体又は気体吸収法を使用して測定することができる。
容量性電極材料
[0096]多孔質フィルム表面上の離隔電極は容量性電極材料を備えている。容量性電極材料は、炭素系電極材料と疑似容量性電極材料のどちらか又は両方を含むことができる。理解されたいこととして、典型的に高表面積(例えば約100m2/gから2500m2/gの間など)と高伝導性の両方を有する炭素系電極材料は、エネルギー貯蔵が主として伝導性電極材料の表面と電解質の間の界面でのヘルムホルツ二重層内での電荷の分離によって起こる電気二重層キャパシタ(electric double-layer capacitors, EDLCデバイス)にとりわけ適している。比べて疑似容量性材料は、エネルギーを、電極材料の表面にて起こる電解質イオンを伴う急速可逆的酸化還元又はインターカレーションのプロセスを介して貯蔵する。
[0097]容量性電極材料は、還元された酸化グラフェン、グラフェン、剥離グラファイト、多孔質炭素、及び/又は活性炭の様な、炭素系電極材料を備えることができる。還元された酸化グラフェンを容量性電極材料として備える電極は、好都合なことに酸化グラフェンから形成されること、続いて多孔質フィルム表面上で還元されることができることから、特に好適である。適した疑似容量性電極材料には、伝導性高分子、遷移金属酸化物、及び金属ナノ粒子が含められる。発明の離隔電極は還元された酸化グラフェンの様な炭素系電極材料と疑似容量性材料の両方を含むことができるものと構想している。
電解質
[0098]容量性エネルギー貯蔵デバイスは、多孔質フィルムの内部孔隙の中へ浸潤させた電解質を含んでいる。電解質は、イオン液体を含む液体電解質であってもよいし、又は有機溶剤と適した可溶性の塩とを備える電解質であってもよい。
[0099]電解質は、ゲル電解質、例えば架橋型ポリビニルアルコール又はポリエチレンオキシドの様な基本高分子を備える電解質、とすることができる。その様な電解質は、可撓性の容量性エネルギー貯蔵デバイス向けにとりわけ好適であろう。ゲル電解質は、KOH、H2SO4、又はH3PO4の様な、強酸性又は強塩基性電解質塩を備えていてもよい。
[0100]発明は、容量性エネルギー貯蔵デバイスを作製するための方法にも関する。方法は、容量性電極材料又は先駆物質を多孔質フィルムの第1表面へ塗布して第1表面の上に配置される離隔電極の1つ又はそれ以上の対を形成する段階を備えている。多孔質フィルムは、離隔電極間に多孔質フィルムの内部孔隙を介してイオン連通が提供されるように、電解質で浸潤される。
電極を印刷する
[0101]容量性電極材料又は先駆物質は、電極を形成することのできる何れの適切な方法によって第1表面へ塗布されてもよい。好適な実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質は、容量性電極材料又は先駆物質を備えるインクを多孔質フィルム表面上へ印刷することによって塗布される。
[0102]インクは、グラビア印刷の様な凹版印刷技法により第1表面上へ印刷されてもよい。当業者には理解される様に、グラビア(又は輪転グラビア)印刷とは、彫刻された印刷面、エッチングされた印刷面、又はそれ以外のやり方で微細構造化された印刷面、例えば印刷シート、グラビアシリンダ、又はローラー取り付け型シムなど、へインクが塗布される印刷方法をいう。余剰インクは概して印刷面から拭い去られ、次いで印刷面が基板と接触させられる。これは、典型的には、可撓性基板を塗布ローラーの周りに送り、ひいてはそれを印刷面と転がり接触させることによって実現される。印刷面陥凹部内のインクはそのとき基板へ移される。
[0103]グラビア印刷、及びフレキソグラビアの様な関連技法は、多孔質フィルム表面上で容易に合体しない粘性インクを使用できるようになるので、微細構造を高解像度で印刷するにはとりわけ好適である。対照的に、低粘度噴射可能インクを使用するインクジェット印刷の様な技法は、より大型の電極を本発明に従って作製するには適している可能性もあるが、放射状拡散イオン輸送メカニズムが有利に支配する精細解像電極構造を作製するにはあまり適さないか又は不適であるだろう。また、何れかの理論によって縛られたいわけではないが、グラビア印刷は電極構造での電極材料又は先駆物質の好ましいせん断誘導整列を生じさせると考えられている。
[0104]インクの粘度は、グラビア印刷による高解像度電極構造の形成を可能にするのに適切で尚且つ容量性電極材料又は先駆物質の多孔質フィルムの内部への浸透を制限又は回避するのに適切な範囲に入っていなくてはならない。適切なインク粘度は、約25Pa sから約100Pa sの間の粘度を含む。
[0105]その様な粘度を有するインクは、場合によっては、単に適した容量性電極材料又は先駆物質を担体流体中に要求される濃度で分散させるだけでは、又は担体流体を希釈分散体から蒸発させるだけでは、簡単に手に入らないこともある。発明者らは、容量性電極材料又は先駆物質の希釈水性分散体を超吸水性高分子ビードの様な吸水性固体と接触させることによって、マイクロ電極のグラビア印刷向けの十分に粘性のある水性インクを提供することができる、ということを発見した。吸水性固体は、水性連続相から水を吸収したうえで、残留する濃縮された粘性分散体から分離されることができる。
[0106]この方式で調製された適した粘度の酸化グラフェン含有インクで電極をグラビア印刷することによって、大凡50ミクロンのライン幅を有する電極、及び30ミクロン未満の電極間離隔距離を有し多孔質フィルム上の1mm2未満の表面積を覆う電極対、を作製することができる。
[0107]広範に様々な幾何学形状を有する電極を発明に従って印刷することができる。適する電極対幾何学形状には、図27に描かれている様に、櫛型、パッド(矩形)、同心円、ジグザグ、L字形、及び迷路型の幾何学形状が含められる。
[0108]理解されたいこととして、発明によるマイクロ電極のグラビア印刷は、ウェブ加工を介して、つまり可撓性多孔質フィルムの連続したウェブを給送ロールから印刷ステーション経由でその先へ更なる加工のために及び/又は巻き取りロール上へと給送することにより、スケールアップするよう修正できるのが好都合である。
電極を還元する
[0109]発明の方法では、容量性電極材料又はその先駆物質のどちらかを第1表面へ塗布して電極を形成させることができ、随意的には更に電極対と電気接点の間のリンケージを形成させることができる。ここでの使用に際し、容量性電極材料の先駆物質とは、適切な化学的変換によって多孔質フィルム基板上の伝導性容量性電極材料へ変換され得る物質である。従って、先駆物質が多孔質フィルム表面へ、例えば先駆物質を備えるインクを多孔質フィルム表面上へ印刷することによって塗布される場合、発明の方法は多孔質フィルム表面上の先駆物質材料を容量性電極材料へ変換する段階を含んでいる。
[0110]好適な実施形態では、先駆物質材料は還元されて容量性電極材料を形成する。先駆物質は、化学的、熱的、光熱的、又はビームによる方法を含め、何れの適切な技法によって還元されてもよい。様々な容量性電極材料をそれらの先駆物質から作製するための適した還元方法が報告されており、当業者にとって利用可能である。
[0111]酸化グラフェンは、グラフェンの様な還元された高表面積炭素材料よりも簡単に水性インク中に分散させることができると考えられるので、特に好適な容量性電極材料先駆物質である。従って、発明の離隔電極を酸化グラフェン系インクを使用して印刷し、その後に、印刷された酸化グラフェンを印刷された電極内で還元させて還元された酸化グラフェンを形成することができる。還元された酸化グラフェンは、高表面積と、本発明による容量性エネルギー貯蔵デバイスでの使用にとって適した電気伝導性と、を有している。酸化グラフェンは、化学的、熱的、光熱的、及びビームによる還元技法を含む方法によって多孔質フィルムの表面上で還元させることができる。例えば、酸化グラフェン印刷電極は、ヒドラジン又はヨウ化水素酸の様な化学的還元剤への暴露によって還元させることができる。
フィルムを電解質で浸潤させる
[0112]発明の方法では、多孔質フィルムは電解質で浸潤される。好適な実施形態では、容量性電極材料又は先駆物質を塗布して多孔質フィルム上に電極を形成した後、多孔質フィルムは電解質で湿潤される。但し、電解質又はそれの1つ又はそれ以上の成分又はその先駆物質で既に湿潤されている多孔質フィルム上に電極を形成することもできる、ということを除外するものではない。
[0113]電解質は、単数又は複数の多孔質フィルムの内部孔隙の中へ少なくとも部分的に浸潤される。そういうものとして、低粘度液体電解質又は先駆物質混合体を多孔質フィルムの中へ浸潤させ、それによりフィルム内部への透過を可能にさせる、というのが概して好適である。こうして、イオン液体の電解質又は有機溶剤系電解質の様な液相電解質を直接に多孔質フィルムの中へ、例えば電解質を多孔質フィルム表面へ塗布することによって、浸潤させることができる。ゲル電解質が好適とされる場合、低粘度電解質前駆物質がフィルムの内部孔隙の中への浸潤を有効化するために使用され、その後に先駆物質をゲル化させて電解質を生成するようにしてもよい。低粘度電解質先駆物質は、電解質イオンも含有する水性混合体中にポリビニルアルコールの様な架橋性高分子を備えていてもよい。その場合、ゲル電解質は高分子を架橋することによって生成される。
例示としての実施形態
[0114]図1は、外部回路へ接続されている金属製電流コレクタ箔101及び102を備える先行技術スーパーキャパシタ100を概略的に描いている。電流コレクタ箔101及び102は、高表面積伝導性炭素電極103及び104で被覆されている。間に置かれた多孔質セパレータ105が電極間の電気絶縁を提供する一方で、セパレータ105並びに電極103及び104を飽和状態にしている電解質106が充電中及び放電中に電極間のイオン連通を提供する。電極間の離隔距離(図1にdsと表示)は、セパレータの厚さより大きく、したがって典型的には50ミクロンより大きい。そのうえ、電極は、デバイスの充電中及び放電中は単一方向からしか到達できず、即ち直接的に電極103と104の間をセパレータ106を通って延びているイオン伝導性経路(矢印106で指示)を介してしか到達できない。加えて、電極103及び104の比較的大きいサイズが、受容できない内部電極抵抗を回避するために電流コレクタ箔101及び102の使用を余儀なくしている。
[0115]これより本発明の或る実施形態を特に図2から図4を参照して説明してゆく。図2は、多孔質PVDFフィルム201と、離隔電極202と203の対と、を備える容量性エネルギー貯蔵デバイス200の破断面を平面図で概略的に描いている。電極202及び203は、形状が矩形であり、30ミクロン未満の離隔距離(図2にdsと表示)を有している。電極202及び203は電気接点パッド204及び205へリンケージ206及び207を介してそれぞれ接続されており、接点パッドは例えば付着されたワイヤを介する外部回路への電気的接続に利用可能である。電極、リンケージ、及び接点パッドは、後段に更に詳細に説明されている様に、酸化グラフェンを備えるインクを多孔質フィルム201上へ印刷し次いで酸化グラフェンを化学的に還元させることによって生成される還元された酸化グラフェンを備えている。
[0116]図3は、図2に指示されるA-B断面を通って取られた容量性エネルギー貯蔵デバイス200を側面図で概略的に描いている。多孔質フィルム201は、第1表面208及び裏表面209を有していて、大凡50ミクロンの厚さ(図3にtsと表示)を有している。電極202及び203は、金属製電流コレクタ層を介在させることなく第1表面208の上に直接配置されていて、大凡50nmの平面外厚さ(teと表示)を有している。図3及び図4に描かれている様に、ポリビニルアルコール/KOH電解質210が低粘度水性混合体としてディスペンサ211から多孔質フィルム201へ塗布され、それにより多孔質フィルム201の内部孔隙212を充填し、随意的には更に多孔質フィルムの第1表面の上に重なる層213を形成する。次いで電解質210が熱処理によってゲル化されてゲル電解質をフィルム201の内部孔隙内及び層213内に提供する。
[0117]電極202及び203の高表面積の還元された酸化グラフェンは、多孔質フィルム201の第1表面208の下層の部分と直接接触にあり、ひいては第1表面208とイオン連通する。使用時、エネルギー貯蔵デバイスを充電するために離隔電極202及び203を横切って電位が印加されるとき、又は外部回路を介してデバイスが放電されるとき、内部孔隙内の電解質は図4の矢印214で描かれている様に電極間のイオン連通のための経路を提供する。随意的に、矢印215で描かれている様にイオン連通のための増補的経路もまた第1表面2018より上に層213を通って提供される。とはいえ、内部孔隙212が電解質210のための主たる溜りの役割を果たし、特に電極202及び203の容量性の還元された酸化グラフェン材料間に複数の方向を経由するイオン輸送経路を提供する。
[0118]これより、電解質(図示せず)で浸潤された多孔質PVDFフィルム301と、離隔電極302と303の対と、を備える容量性エネルギー貯蔵デバイス300の破断面を平面図で概略的に描いている図5を参照しながら、発明の別の実施形態を説明してゆく。電極302及び303は、還元された酸化グラフェン、酸化グラフェンとして多孔質フィルム表面上へ直接印刷されそこで化学的に還元されたもの、を備えている。複数の電極は一体で1対の櫛型電極を形成しており、各電極は4本のフィンガを有している。フィンガは、100ミクロンの幅(図5にwfと表示)と900ミクロンの長さ(図5にLfと表示)を有している。電極間の離隔距離(図5にdsと表示)即ち隣接するフィンガ間の最短距離は大凡30-50ミクロンである。電極自体と電極間離隔区域とを含んでいる離隔電極302と303の対は、電極対幅と電極対長さ(図5にwe及びLeとしてそれぞれ表示)の積として計算されている約1mm2未満の多孔質フィルム上の表面積を覆っている。
[0119]これより、容量性エネルギー貯蔵デバイス400を描いている図6を参照しながら発明の別の実施形態を説明してゆく。離隔電極402と403の複数の対(図6に402a/403aから402d/403dとして示す)が、多孔質PVDFフィルム401の第1表面408上に配置されている。フィルム401は電解質(図示せず)で浸潤されている。電極402及び403は、還元された酸化グラフェン、酸化グラフェンとして多孔質フィルム表面上へ直接印刷されそこで化学的に還元されたもの、であって表面408とイオン連通する、還元された酸化グラフェンを備えている。
[0120]容量性エネルギー貯蔵デバイス400は並列の電極対(即ち、402a/403aが402b/403bと並列、及び402c/403cが402d/403dと並列)を備えている。また、容量性エネルギー貯蔵デバイス400は、直列に接続された電極対(即ち、402a/403aと402b/403bの組み合わせが、402c/403cと402d/403dの組合せと直列に接続されている)を備えている。複数の電極対のアレイは、多孔質フィルム401の第1表面408上の印刷された還元された酸化グラフェンの伝導性リンケージ406によって電気的に接続されている。電気的に接続された電極対のアレイには、更に、同じく印刷され・還元された酸化グラフェンで構成される電気接点パッド404及び405がそれぞれ設けられている。電極のアレイは、接点パッド404及び405へ付着されているワイヤ416及び417を介してそれぞれ外部回路へ電気的に接続可能である。
[0121]容量性エネルギー貯蔵デバイス400は、2つの並列接続電極対のブロック2つを直列に接続した場合が描かれているが、広範に様々な電極構成を同じく発明に従って提供することができる、ということが理解されるであろう。
[0122]これより、図7から図9を参照しながら発明の別の実施形態を説明してゆく。図7は、第1表面508aの上に直接配置された離隔電極502と503の対を有する第1の多孔質PVDFフィルム501aを側面図で描いている。電極502及び503は、付着されたワイヤを有する接点パッド(図示せず)を介して外部回路へ接続可能である。図7及び図8に描かれている様に、次いで第2の多孔質PVDFフィルム501bが第1の多孔質フィルム501aの上に、電極502及び503が第2の多孔質フィルム501bの裏表面509bと当接係合するように積重される。第1の多孔質フィルムと第2の多孔質フィルムはどちらも可撓性膜であるので、フィルム501a及び501bは、表面508aと509bが接触するように電極502及び503の周りに密接に馴染み、せいぜい電極の周囲に僅かな間隙519が残る程度である。
[0123]図8及び図9に描かれている様に、次いで、積重させた多孔質フィルム501a及びフィルム501bへ、低粘度水性混合体としてポリビニルアルコール/KOH電解質510がディスペンサ511から塗布され、それにより多孔質フィルム501aの内部孔隙512a及び多孔質フィルム201bの内部孔隙512b(及び存在している場合には間隙519)を充填する。電解質210は次いで熱処理によってゲル化されて、ゲル電解質を両フィルム501a及び501bの内部孔隙内に提供する。かくして積重型容量性エネルギー貯蔵デバイス500が図9に描かれている。
[0124]電極502及び503の高表面積の還元された酸化グラフェンは、多孔質フィルム501aの第1表面208a及び第2の多孔質フィルム501bの裏表面509bと直接接触し、ひいてはイオン連通する。使用時、エネルギー貯蔵デバイスを充電するために離隔電極502と503を横切って電位が印加されるとき、又は外部回路を介してデバイスが放電されるとき、両フィルムの内部孔隙内の電解質は、図9に矢印514a及び514bで描かれている様に、電極間のイオン連通のための経路を提供する。電極502及び503は、第1の多孔質フィルム501a及び第2の多孔質フィルム501bの内部孔隙内に実質的に全体に亘って含有される電解質の溜りによって全ての面を有効に取り囲まれており、それにより、電極502及び503の容量性の還元された酸化グラフェン材料間に複数の方向を経由するイオン輸送経路が提供され、尚且つ電解質の層によって占められるデバイス内のデッドボリュームが回避される。
[0125]これより図10から図14を参照しながら発明の別の実施形態を説明してゆく。図10は、第1の多孔質PVDFフィルム601a及び第2の多孔質PVDFフィルム601bを描いており、フィルムの各々は、第1表面608a及び608b上に配置されている離隔電極602と603の複数対(602a/603a及び602b/603bをそれぞれ含む)を有している。電極602及び603は、ここで図6に関連して説明されている様に、還元された酸化グラフェンを備え、伝導性リンケージ606a及び606bを介して接続されていて、電気接点パッド604a及び605a並びに604b及び605bをそれぞれ提供されている。接点パッド604aは、付着されているワイヤ616を介して外部回路へ電気的に接続可能である。
[0126]図10及び図11に描かれている様に、第2の多孔質PVDFフィルム601bが第1の多孔質フィルム601aの上に、ここで図8に関連してより詳細に説明されている様に、電極602a及び603aが第2の多孔質フィルム601bの裏表面609bと当接係合するように積重される。フィルム同士は、接点パッド605bが接点パッド605aと垂直方向に整列するように積重される。次いで、ディスペンサ619から分注される伝導性銀粒子充填エポキシ樹脂618が、開口部620bの中へ及び接点パッド605bの隣接区域上へ設置される。開口部620bは接点パッド605b及び第2の多孔質フィルム601bの全厚さを貫通する穴である。フィルム同士を積重させた状態で、伝導性エポキシ618は開口部620bを通って浸透し、第1の多孔質フィルム601a上の接点パッド605aに接触する。エポキシ618は次いで硬化して、接点パッド605aと接点パッド605bの間に永久的な電気接続部621a-621bを作り出すとともに多孔質フィルム601aと601bを一体に永久的に接着させる。
[0127]理解されたいこととして、開口部620bは、接点パッド605bを第1表面608b上に印刷する段階の前か又は後のどちらに形成されてもよく、更に、多孔質フィルム601bを多孔質フィルム601aの上に積重する段階の前か又は後のどちらに形成されてもよい。同じく、理解されたいこととして、開口部620bは、必ずしも接点パッド605bを直進的に貫通している必要はなく、例えば、エポキシ618が塗布されたときに表面608bの上を接点パッド605b上へ拡がってゆくように接点パッド605bに隣接して位置決めされていてもよい。また、接点パッド605bと605aは、同一のサイズである必要もなければ完全に垂直に整列している必要もない。当業者には理解される様に、接点パッド605a及び605b並びに開口部620bは、接点パッド間の適切な電気的接続が提供され得ることを条件に異なるやり方で構成されてもよい。
[0128]接点パッド605aと605bを電気的に接続する手段でフィルムに形成された開口部に頼らない他の手段も発明の内に入ると考えられる。例えば十分に低い粘度の伝導性材料が、接点パッド605bの上の及び/又は隣接する第1の表面608bへ塗布されてもよく、そして電気接続部を作製するために多孔質フィルム601bの内部孔隙を通って接点パッド605aと接触するように透過させられることが可能にされていてもよい。別の代替形として、電気的接続は、多孔質フィルム601bの縁の周りに延びる金属製ワイヤ又はクリップを介して提供されてもよい。
[0129]図11及び図12に描かれている様に、次いで、第1の表面608c上に配置させた602c/603cを含む電極の複数対を有する第3の多孔質PVDFフィルム601cが、第2の多孔質フィルム601bの上に、電極602b及び603bが第3の多孔質フィルム601cの裏表面609cと当接係合するように積重される。次いで、伝導性のエポキシ樹脂618を開口部620cを通して浸透させることによって接点パッド604cと604bの間の電気接続部621b-621cが作成される。接点パッド605cは付着されているワイヤ617を介して外部回路へ電気的に接続可能である。
[0130]図12及び図13に描かれている様に、次いで、ポリビニルアルコール/KOH電解質610が低粘度水性混合体としてディスペンサ611から積重させた多孔質フィルム601a、601b、及び601cへ塗布され、それにより全3枚の多孔質フィルムの内部孔隙612を含む積重体全体を浸潤させる。次いで、電解質610が熱処理によってゲル化されてゲル電解質をフィルム601a、601b、及び601cの内部孔隙内に提供する。かくして積重型容量性エネルギー貯蔵デバイス600が図13に描かれている。
[0131]図14は、積重させた多孔質フィルム601a、601b、及び601cと、各フィルム上の電極対602及び603と、を含む容量性エネルギー貯蔵デバイス600の側面透視図を描いており、電極対602a/603a及び602b/603bは、フィルム601aと601bの間及びフィルム601bと601cの間にそれぞれ挟まれている。硬化した伝導性エポキシ電気接続部621a-621bがフィルム601bの厚さを貫通し、かくしてここに説明されている様に接点パッド605bと605aを電気的に接続している。同様に、電気接続部621b-621cがフィルム601cの厚さを貫通し、かくして接点パッド604cと604bを電気体に接続している。ゲル化された電解質610が積重体全体を通って浸潤されていて、主として多孔質フィルム601a、601b、及び601cの各々の内部孔隙612内に位置付けられている。電気化学的貯蔵デバイス全体は、ワイヤ616及び617だけを外部回路への接続のために突き出させた状態でカプトンポリイミドパウチ621(訳注:カプトンは少なくとも日本国における登録商標)の中に隔離されている。積重型デバイス600は、可撓性高分子膜の複数の層から構築されていて可撓性パウチ内にすっぽり包まれているおかげで、デバイス全体が可撓性であることは注目に値する。
[0132]対になった電極602a/603aの高表面積の還元された酸化グラフェンは、多孔質フィルム601aと601bの間に挟まれ、ひいては両多孔質フィルムとイオン連通する一方、対になった電極602b/603bの還元された酸化グラフェンは、多孔質フィルム601bと601cの間に挟まれ、ひいては両多孔質フィルムとイオン連通する。使用時、デバイス600を充電するために積重体の全3層にまたがって延びる電極対の接続されたアレイを横切って電位が印加されるとき、又はデバイス600が(ワイヤ616及び617を介して)外部回路を通して放電されるとき、多孔質フィルムの内部孔隙内の電解質は電極の対間のイオン連通のための経路を提供する。
[0133]図13及び図14は、多孔質フィルム3層と電極とを有する積重型容量性エネルギー貯蔵デバイス600を描いているが、4層、5層、又は更にそれよりなお多い層を備える複層積重体を同じ方法論によって作製することができる、ということが理解されるであろう。また、デバイス600は隣接する層間の電気接続部が1つしかないとして描かれているが、複層積重体は同様に、隣接する層の電極間に複数の電気接続部を有する設計とすることもできる。例えば、隣接する層上の電極の対同士が、各対の一方の電極を隣接する層側の対応する電極へ電気的に接続することによって、並列に接続されてもよい。
[0134]本発明を以下の実施例に関連して説明する。実施例は、ここに説明されている発明を例示するものであり、ここに説明されている発明に限定しようとするものではないことを理解されたい。
材料
[0135]大きな片状天然グラファイトを、Strategic Energy Resources Pty Ltd.社から得た。水酸化カリウム(KOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、アセトニトリル、ヨウ化水素酸、酢酸、硫酸、過硫酸カリウム、五酸化リン、過マンガン酸カリウム、アンモニア(NH4OH)、及びヒドラジンを、Sigma Aldrich社から購入し、一切の更なる精製無しに使用した。自重の90倍にも上る水を吸収する能力を有する架橋型ポリアクリル酸共重合体ベースのヒドロゲルビードをDemi Co Ltd.社(中国)から得た。可撓性で多孔質のPVDF膜(~50ミクロン厚さで0.2ミクロンの孔サイズ)をmdi Technologies Pty Ltd.社(インド)から購入した。非多孔質酢酸セルロースシート(Nobo Universalのトランスパレンシーシート)を事務用品小売店から得た。電気伝導性エポキシを日本のAgIC Inc.社(訳注:AGICは少なくとも日本における株式会社エージックの登録商標であり、AgICは少なくとも日本におけるエレファンテック株式会社(旧名:AgIC株式会社)の登録商標である。なお、株式会社エージックと旧AgIC株式会社は別法人であり、本記載は後者を指すものと思われる)から購入した。カプトンポリイミドシートをDupont社から購入した。
実施例1.単層容量性エネルギー貯蔵デバイスの調製
1a)酸化グラフェンの合成
[0136]修正ハマーズ法を使用して酸化グラフェン(GO)を合成した。合成には、大きな片状グラファイト、硫酸、過硫酸カリウム、五酸化リン、及び過マンガン酸カリウムを使用した。合成したGOを逆浸透精製水中に1時間の超音波処理(UP-100超音波処理装置)によって剥離させ、次に遠心分離を行ってGOの未剥離結晶を除去した。
1b)GOインクの調製
[0137]GOを水に0.25mg/mlのGO濃度で分散させた分散体を以上に説明されている様に調製した。1リットルの分散体試料に対し、10gの超吸収性高分子(SAP)ビードを添加した。1時間後、飽和したビードを残りの分散体から分離し、水で洗い、再使用のために50℃で乾燥させた。ビード除去後の濃縮分散体は30mg/mlのGO濃度で10mlの体積を有した。インクの粘度は25Pa sであった。
1c)酸化グラフェンマイクロ電極のグラビア印刷
[0138]グラビア印刷装置(スイスのnsm Norbert Schlafli Maschinen社から得たLabratester180)を使用してGOインクを可撓性多孔質ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム上に印刷した。様々なサイズの櫛型電極パターンを有していて直列構成及び並列構成の様々な組合せの相互接続された電極パターンのアレイを備えている版面を設計した。スイスのNorbert Schlafli AG社から調達したレーザーで版面をエッチングした。版面設計の実例が図15に描かれており、エッチングされた版面の写真が図16に描かれている。
[0139]GOインクを版面へ塗布した。次いで、塗布ローラーの周りに巻かれた可撓性PVDFフィルムを平板状の版面と転がり接触させて、離隔電極をPVDFフィルムの表面上へ印刷した。印刷した電極を雰囲気条件下に数分内で乾燥させた。
[0140]表面の上に配置させた離隔櫛型GO電極を有する多孔質PVDFフィルムの実施例が図17及び図18に描かれている。図17では、並列の複数電極対、直列の複数電極対、及び並列接続の電極対を直列に接続したブロックを含め、直列及び/又は並列の電極対の広範に様々な組合せを印刷プロセスで作製したことが分かるだろう。アレイ内の離隔電極対はPVDFフィルムの表面上の酸化グラフェンのリンケージによって接続されており、離隔電極対の接続されたアレイそれぞれは、更に、2つの方形酸化グラフェン接点パッドを有している。
[0141]図18(a)には、並列に接続された櫛型離隔電極4対から成るアレイの拡大図が見られ、図18(b)には、直列に接続された櫛型離隔電極4対から成るアレイの拡大図が見られる。電極の各対は2つの櫛型電極を有し、各電極は大凡90ミクロンの幅及び大凡890ミクロンの長さを持つ4本のフィンガを有している。電極の平面外厚さは大凡50nmであった。電極離隔距離、即ち櫛型電極のフィンガ間の離隔距離は、大凡100ミクロンである。電極と電極間離隔区域の両方を含む櫛型電極の各対は、多孔質PVDFフィルム表面上の大凡9mm2の表面積を覆っている。酸化グラフェン接点パッドは、外部回路への電気的接続を容易にするように2mm×2mm平方である。
[0142]こうして様々な異なる寸法を有する印刷電極対を作製した。図19には、PVDFフィルム上の印刷櫛型電極対の光学顕微鏡画像が描かれている。各電極のフィンガ幅は大凡100ミクロンであり、電極間離隔距離は大凡40ミクロンである。電極対は、多孔質PVDFフィルム表面の2mm2未満の表面積を覆っている。
[0143]図20には、PVDFフィルム上の印刷電極対の光学顕微鏡画像が描かれており、電極はジグザグ構成を有している。電極間離隔距離は大凡30ミクロンであり、更に電極対は多孔質PVDFフィルム表面の0.25mm2未満の表面積を覆っている。電極を電気接点パッドへ接続する印刷された電気的リンケージは大凡30ミクロンのライン幅を有している。したがって、例えば約30ミクロンより下のフィンガ幅と約30ミクロンより下の電極間離隔距離を有する櫛型電極を本方法により作製することができるものと考えられる。
[0144]図17に描かれている電極対組合せの様々な異なるアレイは調査目的で基板上に作製したものであり、商業的実施形では、多孔質基板上の印刷電極の構成は、デバイスのエネルギー貯蔵要件に従って、またフィルム表面上の未活用空間を最小限に抑えるという視点に立って、作製されることになるだろう、ということが理解されるであろう。
1d)マイクロ電極の還元
[0145]多孔質PVDFフィルム上の印刷GOマイクロ電極を、伝導性を最大化しそれにより印刷スーパーキャパシタでの抵抗関連損失を最小化することを目指して還元するにあたり、複数の化学的還元方法論を使用した。
[0146]第1の還元手続(ヒドラジン及びアンモニア溶液還元)では、印刷されたGOマイクロ電極を備えるPVDFフィルムを、0.15mlのヒドラジン(80重量%)と1.05mlのNH4OH(0.28重量%)と300mlの水との混合溶液中に浸漬し、水冷凝縮器の下に95℃で1時間加熱した。1時間後、フィルムを水及びメタノールで完全に洗い、145℃の真空オーブン内で1時間乾燥させた。
[0147]第2の還元手続(ヒドラジン気相還元)では、印刷されたGOマイクロ電極を備えるPVDFフィルムを、カプトンテープを使用して100mlビーカーの壁に設置した。1mlのヒドラジン(80重量%)をビーカーに加え、続いてビーカーをパラフィルムで覆い、100℃で16時間加熱した。続いて、フィルムを水及びメタノールで完全に洗い、145℃の真空オーブン内で1時間乾燥させた。
[0148]第3の還元手続(熱的還元)では、印刷されたGOマイクロ電極を備えるPVDFフィルムを、150℃(PVDF基板の溶融温度170℃より下)で真空下に6時間加熱した。
[0149]第4の還元手続(ヒドラジン溶液還元)では、印刷されたGOマイクロ電極を備えるPVDFフィルムを、1mlのヒドラジン(80重量%)と100mlの水との混合溶液中に浸漬し、水冷凝縮器の下に100℃で24時間加熱した。続いて、フィルムを水及びメタノールで完全に洗い、145℃の真空オーブン内で1時間乾燥させた。
[0150]第5の還元手続(ヨウ化水素酸還元)では、印刷されたGOマイクロ電極を備えるPVDFフィルムを、カプトンテープを使用して300mlビーカーの壁に設置した。2mlのヨウ化水素酸(55重量%)及び5mlの酢酸をビーカーへ加えた。ビーカーをパラフィルムで覆い、40℃で16時間加熱した。続いて、フィルムを水及びメタノールで完全に洗い、雰囲気条件下に乾燥させた。
[0151]Agilent B2900シリーズ(訳注:Agilentは少なくとも日本における登録商標または少なくとも日本を指定した国際登録)のプレシジョン・ソース/メジャーユニットを、EmCal Genelyteプローブ・ステーションを通して5ミクロン先端のタングステンプローブと配線して使用し、2点伝導率測定を遂行した。プローブは電極の2mm×2mm接点パッド上に1mm離間させて設置した。印加電圧を0Vから1Vの間で変化させることによって測定値を取った。測定に使用した走査速度は0.8V/sで、0.008V毎に測定値を取った。
[0152]第1から第5の還元手続の1つによる還元後の印刷酸化グラフェンの抵抗率が図21に示されている。最も高い抵抗率は、熱的に還元され・印刷されたGOの場合に観察されており(10kΩm)、それは印刷された時点でのGOの抵抗率と同等だった。最も低い抵抗率(大凡20Ωm)は、ヨウ化水素酸還元の場合に観察されており、それゆえにそれは以降の電気化学的特徴付け研究に使用された。
[0153]図22は、櫛型の還元された酸化グラフェン電極の複数対をフィルム表面の上に配置させた多孔質PVDFフィルムを描いている。茶色(未還元)から黒色(還元済み)への酸化グラフェンの明瞭な色変化は歴然であった。還元プロセスは電極の印刷された構成を劣化させなかった。
1e)セル組み立て及び電解質浸潤
[0154]多孔質フィルム上の、印刷され・還元された電極と電極の接点パッドの間にワックスの細いライン(概して1mm-1.5mmの範囲の幅を有する)を堆積させた。これは、接点パッドを固化させる段階の前に局所的にフィルムの孔に侵入し孔を封鎖し、ひいては接点パッドを電解質から隔離した。ポリビニルアルコール(PVA、1g)を脱イオン化(DI)水(10ml)に加えることによって電解質混合体を調製し、混合体を常時撹拌しながら90℃で加熱した。PVA/水溶液が透明になったら、KOH(10mlの6M溶液)を均質溶液が実現されるまで滴下的に加えた。続いて、電解質混合体を室温まで冷ました。次いで多孔質フィルムを、定性的にはグリセリンと同じ粘度を有していてしたがって約1Pa sであると推定される低粘度PVA/KOH電解質混合体で浸潤させた。浸潤は、電解質を多孔質フィルムの上へ飽和に至るまでドロップキャストすることによって行われた;視認できる電解質層が表面上に形成されるまで、未硬化電解質混合体が可視的にフィルムの中に吸収された。フィルムを電解質事前混合体で浸潤させたら、電極/電解質組立体を室温にて24時間放置してフィルムの孔隙の内部での電解質のゲル化を促した。次いで、セルをカプトンシートのパウチの中に密封した。金属ワイヤの付着された小型ワニ口クリップを、多孔質PVDFフィルムの表面上の櫛型の還元された酸化グラフェン電極の対の又は電気的に接続された複数対のアレイの電気接点パッド側へ挟み付けて、様々なデバイスの電気化学的応答を測定した。
実施例2.単層容量性エネルギー貯蔵デバイスの電気化学的評価
[0155]実施例1の方法により作製した容量性エネルギー貯蔵デバイスの電気化学的応答は、サイクリックボルタンメトリー(CV)及びBiologic社のVSPポテンショスタットを使用する電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって特徴付けられた。
[0156]安定した電気化学的条件を確約するために、毎回の電気化学的試験の前に1時間に亘って開回路電位測定を遂行した。開回路電位の10mV未満の変動が1000秒の期間に亘って持続したら安定した電気化学的条件であると見なした。CV試験を0V-0.5Vの間で10mV/sの走査速度で行い、概ね100サイクルに亘って繰り返した。正弦電位波を開回路電位にて10mVの振幅で印加することによってEIS試験を実施した。1MHzから10mHzの間の周波数に亘ってインピーダンス応答を測定し、周波数の1ディケード当たり6ポイントを記録した。
[0157]印刷され還元された櫛型電極の単一対(4本フィンガ、フィンガ幅大凡90ミクロン、フィンガ長さ大凡890ミクロン、平面外厚さ大凡50nm、電極間離隔距離大凡100ミクロン)のCV応答は、図23に描かれている様に、理想的な容量性挙動及び低い内部抵抗率を示唆するおおよそ矩形である。デバイスのエネルギー貯蔵容量は、図24に描かれている様に、最初の20サイクルに亘って僅かに増加し、次いで追加の80サイクルに亘っては実質的に不変であった。単一電極対容量性エネルギー貯蔵デバイスの比静電容量は大凡3mF/cm2と計算され、更に10mV/sの高いサイクル性が実証された。
[0158]CV応答と一致して、単一電極対デバイスのナイキストプロットもまた、図25に示されている様に、優れた容量性挙動を示している。等価直列抵抗は8Ωcm2であると計算された。
実施例3.比較例
[0159]実施例1a)-1b)の手続に従って調製された酸化グラフェンインクを、実施例1c)の手続による可撓性高分子フィルム上へ印刷した。実施例1で説明した様に、約30ミクロン未満の明確に画定された特徴を有する高解像度離隔電極対を多孔質PVDFフィルム上へ印刷することができた。対照的に、非多孔質酢酸セルロースフィルムでは櫛型電極の印刷は不成功だった。インクが表面上で合体し、印刷される描写の完全喪失を引き起こした。したがって、印刷中のPVDFフィルムの孔への水性相のインクの吸い上げが、実現される電極の諸特徴の高解像度に資すると判断されている。
実施例4.積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスの調製
4a)複数層の積重及び電気的接続
[0160]櫛型の還元された酸化グラフェン電極の対を各々が有する3枚の多孔質PVDFフィルムを、実施例1a)-1d)の方法によって調製した。電極対は、大凡90ミクロンのフィンガ幅、大凡1800ミクロンのフィンガ長さ、大凡50nmの平面外厚さ、及び大凡200ミクロンの電極間離隔距離を有する4本フィンガ電極を備えた。各電極をフィルム表面上の還元された酸化グラフェン接点パッド(2mm×2mm)へ接続した。各電極と接点パッドの間に、実施例1e)に説明されている様に、ワックス被覆を堆積させた。次いで0.8mmの直径を有する精密穴パンチャーを使用して、各層の電気接点パッド及び下層のフィルムを貫いて0.8mmの直径を有する精密穴を作成した。
[0161]次いで、3つの層を、各層の穴が垂直に整列するようにして互いに直接重ねて積んだ。次に、銀ナノ粒子を含有しペースト様の粘稠度を有する高伝導性エポキシ接着剤を、0.5mm針開口部を有するシリンジを使用して、事前に積重させた電極の電気接点の穴を通して注入し、エポキシを各層の電気接点パッドと接触させた。堆積後、エポキシ接着剤を室温で24時間に亘って硬化させた。3つの基板層を通る電気接続部の確立を、デジタルマルチメータを使用して確証した。電気的接続の結果として、各層上の電極対は並列に電気的に接続された。
4b)セル組み立て及び電解質浸潤
[0162]ポリビニルアルコール(PVA、3g)を脱イオン化水(30ml)中に混合し、H2SO4(98%、3g)を滴下的に加えることによって、電解質混合体を調製した。混合体(8.33重量%PVA)を、1時間に亘って積極的に撹拌しながら85℃へ加熱し、室温まで冷ました。次いで、低粘度電解質混合体を多孔質フィルムの積重体上へドロップキャストし、続いて雰囲気条件下で24時間乾燥させた。3層積重体の電解質の浸潤は、積重体全体が透明になったことで目視的に観察できた。次いで、セルをカプトンシートのパウチの中に密封した。次いで、金属ワイヤの付着された小型ワニ口クリップ2つを積重体側へ挟み付けて、積重型エネルギー貯蔵デバイスの電気化学的応答を測定した。各クリップは各層上の1つの電極へ一番上の層の電気接点パッド及び層間の伝導性エポキシ接続部を介して電気的に接続された。
実施例5.(比較例)
[0163]3層積重型デバイスを実施例4aの方法に従って調製した。
[0164]ポリビニルアルコール(PVA、3g)を脱イオン化水(30ml)中に混合しH2SO4(98%、3g)を滴下的に加えることによって電解質混合体を調製した。混合体(8.33重量%PVA)を1時間に亘って積極的に撹拌しながら85℃へ加熱し、ペトリ皿へフィルムとして流し込み、80℃で8時間乾燥させた。ゲル化したフィルムを次いでペトリ皿から取り出し、手作業で積重体の一番上の層に被せて設置し、ポリイミドテープを介して積重体上へ押圧した。こうして、電解質層が上に重なってはいるが浸潤していない状態で、積重体の多孔質フィルムを積重体の上の電極対とイオン連通に置いた。セルを、実施例4b)に説明されている様にカプトンシートのポーチの中に密封しワニ口クリップを付着させた。
実施例6.積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスの電気化学的評価
[0165]実施例4及び実施例5の方法に従って作製された積重型容量性エネルギー貯蔵デバイスの電気化学的応答が、サイクリックボルタンメトリー(CV)及びBiologic社のVSPポテンショスタットを使用する電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって特徴付けられた。
[0166]積重体内の3枚の多孔質フィルム層を通る電解質浸潤の効果を調べるため、実施例2に説明されている様に開回路電位測定を最初に遂行した。図26に明らかである様に、電解質が積重体全体の孔隙を通って浸潤した状態の積重型エネルギー貯蔵デバイス(実施例4で調製)は、非常に低い変動(最大30mV vs SHE)の安定した開回路電位を提供した。対照的に、電解質層を上に載せただけの積重型デバイス(実施例5で調製)の場合は大きな電圧変動(600mV-1.8V vs SHEの範囲)を得た。この結果は、発明による電気化学的貯蔵デバイスの多孔質フィルムの孔隙の中への電解質浸潤の重要性を実証している。
[0167]実施例4の、積重され・電気的に接続され・電解質で浸潤されているエネルギー貯蔵デバイスの、100サイクル(10mV/sの走査速度で0Vから0.5V)に亘るCV応答が図27に示されている。デバイスのエネルギー貯蔵容量は、最初の20サイクルに亘って僅かに増加し、次いで追加の80サイクルに亘って実質的に不変であった。CVプロットは大凡矩形であり、積重型デバイス構成の容量性挙動を示唆している。
[0168]積重型エネルギー貯蔵デバイス(実施例4)のナイキストプロットが図28に示されている。相対的に高い抵抗(図25に描かれている単層デバイスのそれと比較)は、3つの層上の電気接点パッド間に確立されている伝導性エポキシ接続部に起因しているかもしれない。
実施例7.電極構成
[0169]この実施例では、複数の異なる容量性マイクロ電極幾何学形状の電気化学的性能を調べる。マイクロ電極は本発明により作製したものではなかった;しかしながら、幾何学形状の電極性能に及ぼす効果に関する学習は、本発明による容量性エネルギー貯蔵デバイスの設計を指南するのに使用できると考える。
[0170]連続した酸化グラフェン層(0.6ミクロン厚さで2.0nm±0.4nmのrms粗さを有する)をシリコンウェーハ上へスピンコートした。ウェーハを両面カーボンテープでSEMスタブへ取り付け、FEI Helios Nanolab 600 FIB-SEM(訳注:FEIは少なくとも日本における登録商標)のチャンバの中へ入れ、1×10-3Paより下の真空レベルまでポンプダウンした。次いで、還元された酸化グラフェンの異なる電極設計を、酸化グラフェン層に、1×10-4のFIBフルエンスの集束イオンビーム(FIB)直接書き込み手法を使用して作製した。図29は、この方式で作製された、(a)櫛型、(b)パッド、(c)同心円、(d)ジグザグ、(e)L字形、及び (f)迷路型、を含む電極対幾何学形状を概略的に描いている。電極の各対は、同じ電極間離隔距離を有し、シリコンチップ上の同じ表面積を覆った。
[0171]1Mの硫酸ナトリウム中に、Biologic社のVSPポテンショスタット及びPtプローブ(5μmの直径)を有するプローブステーションを還元された電気接点へ使用して電気化学的特徴付けを遂行した。サイクリックボルタンメトリー(CV)を、0V-0.5V vs SHEの電位範囲に対して異なる走査速度で遂行した。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を、10mHz-1MHzの周波数範囲に対して、10mVの正弦波摂動を開回路電位で印加することによって遂行した。CV測定及びEIS測定を還元されたGOと接触しているPtプローブに対しても遂行して制御電流、静電容量、及び抵抗の値を得た。
[0172]表1は、異なる幾何学形状を有するFIB還元された酸化グラフェン電極について1mV/sの低走査速度で得られた静電容量(mF/cm2として計算)を、櫛型電極設計について得られた静電容量値に対して正規化したものを示している。幾何学形状が静電容量値に影響を与えることが表1から明白である。迷路型の幾何学形状が最も低い静電容量を示しているのに対し、ジグザグ設計は最も高い静電容量を示している。それら電極全てのESRは同等である、即ち実験誤差内であることが判明した。
[0173]当業者には、ここに説明されている発明は具体的に説明されているもの以外の変更及び修正の余地があることが理解されるであろう。発明は本発明の精神及び範囲内に入る全てのその様な変更及び修正を含むものと理解される。