以下、本発明のガス圧縮機を用いた排熱回収システムの具体的実施例を、図面を用いて説明する。各図において、同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
本発明のガス圧縮機を用いた排熱回収システムの実施例1を図1に示す系統図により説明する。
図1において、3は圧縮機本体で、本実施例では油冷式のスクリュー空気圧縮機で構成されている。前記圧縮機本体3がモータ4により駆動されると、圧縮機ユニット20内に吸込まれたガス(空気)は、吸込フィルタ1及び吸込絞り弁2を介して前記圧縮機本体3内に吸引された後、圧縮されて吐出され、油分離器(オイルタンク)6に流入する。5は吐出温度センサ(圧縮機本体出口温度センサ)(T1)で、前記圧縮機本体3から吐出された圧縮ガス(圧縮空気)の温度を検出するものである。この吐出温度センサ5により温度が検出された後、前記圧縮ガスは前記油分離器6に流入する。
この油分離器6に流入する前記圧縮ガスには油(潤滑油)が混合されており、前記油分離器6内では、圧縮ガスと油が遠心分離されて、圧縮ガスは、油分離器6上部のガス配管(空気配管)8から流出して、水冷熱交換器で構成された排熱回収熱交換器10に流入する。前記油分離器6下部に溜まった油は、油配管7から流出し、温調弁9により、油温が高い場合には前記排熱回収熱交換器10側に流れ、油温が低い場合には前記オイルフィルタ16側にバイパスして流れる。前記オイルフィルタ16を通過した油は再び前記圧縮機本体3に流入するように構成されている。
前記排熱回収熱交換器10は、貯温水タンクユニット(排熱回収機器)23に接続されている。この貯温水タンクユニット23が稼動している場合には、熱媒体(水などの流体)を循環配管(熱媒体入口配管17及び熱媒体出口配管18)を介して前記排熱回収熱交換器10に循環させており、排熱回収熱交換器10への熱媒体入口配管17から前記熱媒体を流入させて、熱媒体出口配管18から温度の上昇した熱媒体として回収することで、前記圧縮機本体3で発生する圧縮熱の熱量を前記貯温水タンクユニット23で回収するように構成している。
即ち、前記排熱回収熱交換器10では、油配管7を流れる高温の油及びガス配管8を流れる高温の圧縮ガスと、前記貯温水タンクユニット23からの熱媒体とが熱交換して、前記熱媒体は加熱されると共に、前記圧縮ガスと油は冷却されるように構成されている。
前記排熱回収熱交換器10は、排熱回収ユニット21内に配置されている。また、前記貯温水タンクユニット23には水(水とは温水である場合も含む)を溜める貯温水タンク19が設けられ、この貯温水タンク19には水を供給するための水入口配管27と、貯温水タンク19で温度の上昇した水(温水)を温水供給先に送るための温水出口配管28が接続されている。また、前記貯温水タンク19内には水対水熱交換器24が設置されており、前記循環配管を流れる熱媒体と前記貯温水タンク19内の水(温水)とが熱交換することで貯温水タンク19内の水の温度を上昇させるように構成されている。
また、前記循環配管には前記熱媒体を循環させるための循環ポンプ22が設けられている。本実施例では、前記循環ポンプ22は、前記貯温水タンクユニット23内の前記熱媒体入口配管17に設置されているが、前記熱媒体出口配管18に設置するようにしても良い。前記循環用ポンプ22により、前記循環配管17,18を介して前記熱媒体を、前記排熱回収熱交換器10と前記貯温水タンク19とに何度も循環させることが可能となる。これにより、前記貯温水タンク19内の水を予め決めた所定の温度まで上昇させることが可能となる。また、空気圧縮機の負荷率が小さくなった場合でも、空気圧縮機は基本的にその負荷率に関係なく吐出温度を保つことが可能であるため、空気圧縮機の負荷率に関係なく要求温度の温水供給が可能となる。従って、要求温水温度下限がある場合で、更にその要求温水温度下限が圧縮機吐出温度より数度しか低くないというような場合であっても、圧縮機の負荷率に関係なく、要求温度の温水を供給することが可能になる。
前記排熱回収熱交換器10の下流側には空冷熱交換器13が設けられており、前記排熱回収熱交換器10を通過した前記圧縮ガスと油は、この空冷熱交換器13も通過するように構成されている。即ち、前記圧縮ガスと油は、前記排熱回収熱交換器10において前記循環する熱媒体により冷却された後、或いは前記循環ポンプ22が停止している場合には熱媒体との熱交換がされない状態で前記空冷熱交換器13に流入する。この空冷熱交換器13では、冷却ファン14により送風される冷却風により前記圧縮ガスと油を冷却できるように構成されている。
15は前記冷却ファン14を駆動するファンモータで、インバータ29により回転数制御が可能な構成となっている。従って、前記排熱回収熱交換器10から出た前記圧縮ガスや油の温度が所定温度よりも高い場合にはその温度に応じて冷却ファン14の回転数を制御することにより、前記圧縮ガスや油の温度を所定の範囲にして供給することが可能な構成となっている。
前記空冷熱交換器13を出た圧縮ガスは圧縮機ユニット20外の需要先に供給され、また前記油は、前記温調弁9によりバイパスされた油がある場合にはその油と合流した後、前記オイルフィルタ16を介して圧縮機本体3に注入される。
次に、前記冷却ファン14の回転数を制御することにより、前記圧縮ガスや油の温度を所望の温度にして供給する制御について詳しく説明する。
30は前記ファンモータ15の回転数を制御する制御装置で、この制御装置30には、前記吐出温度センサ5からの吐出温度情報、及び前記排熱回収熱交換器10下流側における温度センサ(ガス温度センサ)(TA)11からの圧縮空気(圧縮ガス)の温度情報、温度センサ(油温度センサ)(TO)12からの油の温度情報が入力される。
これらの温度情報に基づいて、前記制御装置30は、前記吐出温度センサ5で検出される圧縮空気の吐出温度が予め設定されている目標吐出温度との温度差が小さくなるように、前記インバータ29を介して前記ファンモータ15を制御し、冷却ファン14の回転数を変化させて、圧縮機本体3に注入される油を適正な温度に冷却する。この冷却された油はオイルフィルタ16を介して圧縮機本体3に注入される。
即ち、前記排熱回収熱交換器10での熱交換量が少ない場合には、前記空冷熱交換器13での熱交換量が増加するように、排熱回収熱交換器10での熱交換量が多い場合には、空冷熱交換器13での熱交換量が低減するように、前記冷却ファン14の回転速度は制御される。
前記排熱回収熱交換器10及び前記空冷熱交換器13でのそれぞれの熱交換器容量は、圧縮機本体3で発生する全熱量をそれぞれ単独で処理可能な容量に設計されている。このため、前記排熱回収熱交換器10において最大の熱回収が行われた場合、該排熱回収熱交換器10から出た潤滑油及び圧縮空気の温度は十分に冷却されているので、前記空冷熱交換器13においては前記ファンモータ15が停止される場合もある。
油冷式スクリュー空気圧縮機の場合、圧縮機ユニット20に内に充填されている油の循環回数(圧縮機本体3から吐出された油が再び圧縮機本体に戻る循環回数)は一般に2~5回/分程度と多いため、前記冷却ファン14の回転速度が変化すると前記吐出温度センサ5で検出される吐出圧縮空気の温度も比較的敏感に変化する。従って、吐出温度センサ5の温度に応じて、冷却ファン14の回転速度を変化させるインバータ制御を行うことにより、圧縮機本体3から吐出される圧縮空気の温度をほぼ目標吐出温度(所定範囲の吐出温度)に制御することが可能である。
なお、本実施例では、前記温度センサ(TA)11及び前記温度センサ(TO)12も備えているので、前記空冷熱交換器13に流入する圧縮空気の温度及び油の温度が分かることから、これらの温度センサ11,12からの温度情報も考慮して前記冷却ファン14の回転速度を調整することも可能となり、圧縮機本体3から吐出される圧縮空気の温度をより迅速に精度良く目標温度に近づけることが可能となる。
以上のように、前記冷却ファン14の回転数制御を実施することにより、前記貯温水タンクユニット23での排熱回収状況(稼働状況)に関係なく、つまり、前記排熱回収熱交換器10での熱交換量に関係なく、前記吐出温度センサ5の温度が一定となるように、圧縮機ユニット20を稼働させることが可能となる。
前記貯温水タンクユニット23内には、前記排熱回収熱交換器10と前記貯温水タンク19との間に熱媒体を循環させる前記循環配管17,18のうち、前記熱媒体出口配管18を流れる熱媒体の温度を検出する温度センサ(熱媒体温度センサ)(Tw1)25、前記貯温水タンク19内の温水温度を検出する温度センサ(温水温度センサ)(Tw2)26、及び制御装置31が設けられている。この制御装置31には、前記温度センサ25及び前記温度センサ26の温度情報が入力され、これらの温度情報に基づいて、前記制御装置31は前記循環ポンプ22の制御を実施するように構成されている。例えば、前記温度センサ(Tw2)26で検出された温度が、予め定めた所定温度(例えば、温水供給先での要求温度)を超えた場合に、前記循環ポンプ22を停止させるか或いはその回転数を低下させるように制御する。
また、前記温度センサ(Tw1)25で検出された温度が、前記温度センサ(Tw2)26で検出された温度よりも、低い或いは所定温度以上低い場合には、前記貯温水タンク19内の温水温度を低下させるおそれがあるので、この場合にも前記循環ポンプ22を停止させるか或いはその回転数を低下させるようにしても良い。
また、前記制御装置31には、前記温度センサ25,26から入力された温度情報などを外部へ出力するための出力端子としての機能を持たせることができる。即ち、前記制御装置31から出力された前記温度センサ25,26の温度情報に基づいて、前記水入口配管27や温水出口配管28での温水制御に使用することができる。例えば、温度センサ(Tw2)26で検出された温度が予め定めた所定温度(温水供給先での要求温度)以上となった場合には、前記温水出口配管28に設けた弁(図示せず)を開として温水を供給先に供給し、同時に前記水入口配管27に設けた弁(図示せず)も開として、前記貯温水タンク19内に水を補給するように制御することができる。
また、前記温度センサ25,26からの温度情報を、前記制御装置31から、外部の表示装置や、排熱回収システム全体を制御する後述する制御装置32などに出力することもできる。
32は図1に示す油冷式ガス圧縮機における排熱回収システム全体を制御する制御装置で、この制御装置32は、前記貯温水タンクユニット23内、或いは前記圧縮機ユニット20内に設けられている。そして、この制御装置32には、前記温度センサ(TO)12で検出された油温度の情報及び前記温度センサ(Tw2)26で検出された貯温水タンク19内の温水温度の情報が入力され、前記温度センサ12で検出された温度が、前記温度センサ26で検出された温度以下となった場合、前記循環ポンプ22を停止させる、或いはその回転数を下げるように制御する。
なお、この制御装置32には前記温度センサ(TA)11で検出された圧縮ガス温度の情報も前記制御装置30を介して入力可能に構成されているので、この温度センサ11で検出された温度が、前記温度センサ26で検出された温度以下となった場合に、前記循環ポンプ22を停止させる、或いはその回転数を下げるように制御しても良い。
また、前記制御装置32には、前記温度センサ(TA)11、前記温度センサ(TO)12、前記温度センサ(Tw2)26から入力された温度情報を外部に出力するための出力端子としての機能を持たせることもできる。
前記圧縮機ユニット20が停止状態や無負荷運転状態の場合、前記排熱回収熱交換器10で受け取れる排熱回収熱量は少量である。また、前記貯温水タンク19内の温水温度よりも前記排熱回収熱交換器10での油配管を流れる油の温度の方が低い場合、前記循環回路を流れる熱媒体を介して前記貯温水タンク19内の熱が前記排熱回収熱交換器10へ移動してしまうので、排熱回収率を悪化させる。
これに対し、本実施例では、上述したように、温度センサ(TO)12或いは温度センサ(TA)11で検出された温度が、温度センサ(Tw2)26で検出された温度以下となった場合、前記循環ポンプ22を例えば停止させるように制御する。従って、本実施例によれば、排熱回収率の悪化を防止することが可能となる。
また、前記制御装置32から外部に出力された前記温度情報を基にして、前記水入口配管27や温水出口配管28の制御に使用することもできる。即ち、温度センサ(TO)12或いは温度センサ(TA)11の検出温度が温度センサ(Tw2)26の検出温度以下となった場合、貯温水タンク19内の温水の更なる温度上昇は望めないので、この場合にも、温水出口配管28に設けた前記弁を開として温水を活用し、水入口配管27に設けた前記弁も開いて水を貯温水タンク19内に補給するようにしても良い。
なお、図1に示す実施例では、前記制御装置32により、排熱回収熱交換器10で熱交換される油または圧縮ガスの温度が、温水温度センサ26で検出された貯温水タンク内の温水温度以下の場合に、前記循環用ポンプ22を停止させるかその回転数を低下させるように制御する例について述べたが、次のように制御しても良い。
即ち、前記制御装置32により、排熱回収熱交換器10で熱交換される油または圧縮ガスの温度が、前記熱媒体温度センサ25で検出された温度以下の場合に、前記循環用ポンプ22を停止させるかその回転数を低下させるように制御しても良い。
即ち、前記温水温度センサ26は貯温水タンク19の上方の温度を検出しているので、通常は、前記熱媒体温度センサ25で検出される温度は前記温水温度センサ26で検出される温度とほぼ近い温度になっている。従って、前記熱媒体温度センサ25で検出された温度を用いて制御しても、前記温水温度センサ26を用いて制御した場合とほぼ同様の効果が得られる。
また、前記圧縮機本体3が停止状態や無負荷運転状態の場合で、貯温水タンク19内の温水温度が、沸き上げ途中の状態では、貯温水タンク19内の温水温度が上方で高く、下方では低くなっている。このため、水対水熱交換器24で熱媒体は低温の水とも熱交換するため、熱媒体入口配管17を流れる熱媒体温度は温水温度センサ26で検出される温度よりも低下している。この状態では排熱回収熱交換器10内での油や圧縮ガスの温度が前記温水温度センサ26で検出された温度よりも低い場合もありうる。しかし、このような状態であっても、前記熱媒体温度センサ25で検出される温度が前記油温度センサ12或いはガス温度センサ11で検出される温度より低い場合には、排熱回収をしていることに
なるので、循環ポンプ22の駆動を継続した方が良い。
一方、前記油温度センサ12或いはガス温度センサ11で検出される温度が、前記熱媒体温度センサ25で検出される温度より低い場合には、熱媒体側から油或いは圧縮ガス側に熱移動させることになるので、この場合には循環ポンプ22を停止させる。このように制御することにより、排熱回収率を向上することができる。
また、本実施例では、前記制御装置32は、温度センサ(TO)12或いは温度センサ(TA)11の検出温度と、温度センサ(Tw2)26または温度センサ(Tw1)25の検出温度を比較して制御する例を説明した。しかし、前記吐出温度センサ(T1)5で検出された温度情報も前記制御装置30を介して前記制御装置32に入力されるように構成されているので、前記温度センサ(TO)12或いは温度センサ(TA)11の代わりに、前記吐出温度センサ(T1)5の検出温度を用いて前記の制御をすることもでき、このようにしてもほぼ同様の効果を得ることができる。更に、前記温度センサ5、11、12の全ての検出温度を用いて制御すれば、より精度の高い制御が可能となる。
なお、本実施例では、前記温水温度センサ(Tw2)26を貯温水タンク19の上部に1個だけ設置した例を示したが、前記温水温度センサ26の設置位置は上部に限られず例えば中央部付近に設置するようにしても良い。好ましくは、前記水対水熱交換器24よりも上部に設置すると良い。また、前記温水温度センサ26を貯温水タンク19内の上下方向に複数個設置し、これら複数の温度センサを用いて制御すれば、より排熱回収率を向上させることのできる排熱回収システムとすることも可能となる。
また、前記吐出温度センサ5で検出された温度が、前記油温度センサ12または前記ガス温度センサ11の少なくとも何れかで検出された温度よりも低い場合には、前記排熱回収熱交換器10で熱交換される前記油または前記圧縮ガスの温度が、前記貯温水タンク19内の温水温度よりも低くなっていると考えられる。従って、制御装置32は、吐出温度センサ5で検出された温度が、油温度センサ12またはガス温度センサ11の少なくとも何れかで検出された温度よりも低い場合には、排熱回収熱交換器10で熱交換される油または圧縮ガスの温度が、貯温水タンク19内の温水温度よりも低くなっていると判定し、前記循環用ポンプ22を停止させるかその回転数を低下させるようにしても良い。
図2は図1に示す油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムにおいて、圧縮機本体3から吐出される圧縮ガス温度を約100℃(図2には「吐出温度99℃」と表記)とし、排熱回収熱交換器10に冷却水を何度も循環させるのではなく、1度だけ通水したときの、冷却水量と、通水した冷却水の排熱回収熱交換器出口での温度上昇との関係の試験結果を示す線図である。
図2の試験結果を利用し、本実施例1による具体的な排熱回収熱交換器10での温度上昇の効果について説明する。この試験結果は、図1に示す排熱回収システムにおいて、貯温水タンク19が存在しない排熱回収システムで試験を行った結果である。横軸は排熱回収熱交換器10への冷却水量を示し、縦軸は排熱回収熱交換器10を通過後の温水の温度上昇を示す。また、線図は、前記排熱回収熱交換器10における油配管7側(オイルクーラOC側)と、ガス配管8側(エアクーラAC側)とを合せた排熱回収によって得られた冷却水の温度(温度上昇)を示すものである。
図2から分かるように、冷却水量を絞るほど高い温水温度を得られるが、冷却水量が2L/min以下では、排熱回収熱交換器10の能力の限界によって、冷却水量を更に絞っても温水温度を上昇させることができず、温水温度の上昇は80℃で限界となる。つまり、排熱回収熱交換器10への通水が1回限りの場合(即ち、1パス通水の場合)、圧縮機本体出口を約100℃になるよう設定した油冷式スクリュー圧縮機(この例では22kWの容量のものを使用)からの排熱回収によって得られる温水の温度は80℃までの温度上昇が限界である。
これに対して、図1に示す油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムの場合、貯温水タンク19と排熱回収熱交換器10の間を、循環配管17,18を介して、水(温水)を何度でも循環させるため(1回限りの通水ではなく何度も循環させるマルチパス通水であるため)、貯温水タンク19内の温度を、最終的には圧縮機吐出温度に近い温度、例えば約93℃まで上昇させることが可能となる。即ち、同じ条件での前記1回限りの通水(1パス通水)の場合に比較して、10℃以上温度が高い約93℃の高温の温水を得ることができる。また、排熱回収熱交換器10への通水が1回限りの場合、圧縮機の負荷率が低いと得られる温水温度も低下する。しかし、圧縮機は基本的に負荷率に関係なく吐出温度を保つことが可能であるから、上記本実施例の構成とすることにより、圧縮機の負荷率に関係なく、要求温度の温水供給が可能となる。
図3は図1に示す油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムにおいて、圧縮機本体3から吐出される圧縮ガス温度を約78℃とし、排熱回収熱交換器10に冷却水を何度も循環させるのではなく、1度だけ通水したときの、冷却水量と、通水した冷却水による排熱回収率との関係の試験結果を示す線図である。
図3は、図2と同様に、図1に示す排熱回収システムにおいて、貯温水タンク19が存在しない排熱回収システムで試験を行った結果である。横軸は排熱回収熱交換器10への冷却水量を示し、縦軸は排熱回収熱交換器10への冷却水の通水による排熱回収率を示している。また、線図は、前記排熱回収熱交換器10における油配管7側(オイルクーラOC側)と、ガス配管8側(エアクーラAC側)とを合せた排熱回収による排熱回収率を示している。ここで、排熱回収率とは、排熱回収熱交換器10で受け取った熱量を圧縮機の総合入力で割った値であり、排熱回収率が高いほど圧縮機排熱を有効活用していることになる。
図3から分かるように、冷却水量を絞るほど排熱回収率が低くなり、前述した図2において、最高温水温度を確保できる冷却水量2L/minでは、図3に示すように、排熱回収率は10%程度しかなく、排熱回収の効率が非常に悪いことがわかる。つまり、1回の通水のみで温水を生成する場合で、ある程度高温の温水が求められる場合、冷却水量を絞る必要があるので、排熱回収率は非常に低くなってしまう。
逆に、冷却水量を多くしていくと、ある程度の冷却水量以上(図3では10L/min以上)では、排熱回収率を80%近くまで上昇させることができ、またそれ以上に冷却水量を増やしても、排熱回収率をそれ以上は上昇できないが高い値に維持できる。即ち、図3の試験結果で言えば、冷却水量を10L/min以上(例えば20L/min)とすることにより、高い排熱回収率での熱交換をさせることができる。従って、図1に示す本実施例において、この冷却水量(例えば20L/minの循環水量)に設定することにより、高温の温水が得られるだけでなく、排熱回収率も高い排熱回収システムとすることができる。
次に、本発明を、温水による洗浄設備に適用した場合の適用事例を説明する。この洗浄設備の適用事例は、従来、ヒータが5kWのもの2個を備えていてこれに通電することで、300Lの水を20℃から80℃以上まで上昇させ、その得られた温水により洗浄を行うようにした設備である。ここで、ヒータ通電の熱量が全て水の温度上昇に使用されたとして計算すると、80℃以上まで温度上昇するのに要する時間は2時間程度となる。しかし、実際の設備では、当然のことながら熱が大気に逃げるため、2.5時間以上の通電で、水を目標温度80℃以上の温水に上昇させていた。更に、1日8時間の作業中も、温水を80℃以上にキープさせるため、5kWのヒータのオン、オフを繰返していた。これらにより、従来は、合計47kWh程度の電力を消費していた。
上記の温水による洗浄設備への本発明の適用事例を説明する。前記洗浄設備の横には、容量が22kWの油冷式のスクリュー空気圧縮機ユニット(空冷タイプ)が従来から設置されていた。そこで、この圧縮機ユニットの排熱を利用して、前記洗浄設備で使用される温水を製造するシステムを検討し、図1に示すような排熱回収システムとして、温水を製造した。図1に示す貯温水タンク19から排熱回収熱交換器10への水(温水)の循環量を20L/minとした。
これにより、図3で説明したように、80%もの高い熱回収率が得られ、300Lの水を20℃から80℃以上まで上昇させるのに要する時間は120分(2時間)となり、従来のヒータを使用していたものより30分早く目標温度に到達させることができた。また、80℃の目標温度到達後も、圧縮機排熱により目標温度80℃以上をキープすることができたため、従来のヒータを利用していたときの使用電力量が1日あたり47kWhであったものを0kWhにすることができた。また、80℃以上の高温水を得ることが可能となった。これは、貯温水タンク内の温水を何度も排熱回収熱交換器へ循環させるという本発明の適用により成し遂げられたものであり、排熱回収熱交換器への通水が1回だけのものでは、この温度への到達は困難である。
本発明の油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムの実施例2を図4に示す系統図により説明する。この図4において、上記図1と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分であるので、図1に示す実施例1と異なる部分を中心に説明する。
上記実施例1では、貯温水タンク19内に水対水熱交換器24を設け、循環回路17,18を循環する熱媒体を、前記水対水熱交換器24に通過させ、前記貯温水タンク19内の水(温水)と熱交換させるようにした例について説明した。
これに対し、本実施例2では、図1に示す上記水対水熱交換器24を設けず、前記循環回路17,18を循環させる熱媒体を、貯温水タンク19内の水(水とは温水である場合も含む)にしていることが異なっている。
即ち、貯温水タンクユニット23の前記貯温水タンク19内の水をその下部から直接熱媒体入口配管17に導き、循環ポンプ22により、排熱回収ユニット21の排熱回収熱交換器(水冷熱交換器)10に送るように構成している。前記排熱回収熱交換器10に送られた前記水(熱媒体)は、該排熱回収熱交換器内の油配管7を流れる高温の油及びガス配管(空気配管)8を流れる高温の圧縮ガスと熱交換されてこれらの油及び圧縮ガスから熱を回収して加熱される。
水に熱を回収されて冷却された前記油と圧縮ガスは、油配管7またはガス配管8を介して下流側に設置されている空冷熱交換器13に送られて更に冷却されるように構成されている。また、前記排熱回収熱交換器10で加熱されて温度の上昇した前記水(温水)は熱媒体出口配管18を介して、前記貯温水タンク19に戻される。このようにして、前記貯温水タンク19内の水は何度も前記排熱回収熱交換器10へ循環される。従って、貯温水タンク19内の水の温度を次第に上昇させることができる。
これにより、前記貯温水タンク19内の水を予め決めた所定の温度まで上昇させることが可能となる。また、空気圧縮機の負荷率が小さくなった場合でもその負荷率に関係なく要求温度の温水供給が可能となるから、温水の要求下限温度がある場合で、更にその要求温度が圧縮機吐出温度より数度しか低くないような場合であってもその要求温度の温水を供給することが可能になる。
本実施例2のように構成しても上記実施例1と同様の効果が得られる。また、本実施例2では、実施例1に示すような水対水熱交換器を設ける必要がないので、構造が簡単となり安価に製作することができる共に、前記水対水熱交換器による熱交換をさせなくて良い分、排熱回収率を向上させることができる。
また、貯温水タンク19内の最下部から水を導いて排熱回収熱交換器10で熱交換させることができるから、貯温水タンク19内の最も低い温度の水と圧縮機からの高温の油と圧縮ガスとを熱交換させるので、排熱回収率を更に向上することもできる。
他の構成や制御については上記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
以上説明したように、本発明の各実施例によれば、ガス配管8を流れる圧縮ガスと油配管7を流れる油の少なくとも何れかから熱回収するための排熱回収熱交換器10を備え、更に、この排熱回収熱交換器10で受け取った熱を温水として貯える貯温水タンク19と、前記排熱回収熱交換器10で受け取った熱を前記貯温水タンク19に移動させるために、熱媒体(水などの流体)を前記排熱回収熱交換器10と前記貯温水タンク19との間に循環させる循環回路(循環配管17,18)と、この循環回路に設けられた循環用ポンプ22と、前記排熱回収熱交換器で熱交換される油または圧縮ガスの温度が前記貯温水タンク内の温水温度以下の場合に、前記循環用ポンプを停止させるかその回転数を低下させるように制御する制御装置を備えている。
従って、圧縮機負荷率が低い場合でも要求温度の温水を供給することが可能であり、しかも排熱回収機器からの放熱を抑制して排熱回収率を向上することのできる油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムを得ることができる。
即ち、本実施例では、油冷式ガス圧縮機の冷却系統として、主たる第1の冷却系統である空冷熱交換器13に加えて、第2の冷却系統である排熱回収熱交換器10を備え、更に圧縮機ユニット20に貯温水タンクユニット(排熱回収機器)23を並設して排熱回収システムを構成し、貯温水タンク19と排熱回収熱交換器10の間を、循環配管17,18を介して、熱媒体(上記実施例では水)を何度でも循環させるようにしている。このため、貯温水タンク19内の温水を圧縮機出口温度より数℃だけ低い温度(圧縮機出口温度に近い温度)まで上昇させることが可能になる。
油冷式スクリュー圧縮機の出口温度は通常100℃以下と低いので、その排熱により温水を製造する場合、その温度は熱交換器の限界により更に低くなってしまうが、本実施例を採用することにより、圧縮機出口温度に極めて近い温水温度を得ることができる。
また、前記制御装置は、前記排熱回収熱交換器10で熱交換される油または圧縮ガスの温度が前記貯温水タンク19内の温水温度以下の場合に、前記循環用ポンプ22を停止させるかその回転数を低下させるように制御するので、前記循環回路を流れる熱媒体を介して前記貯温水タンク19内の熱が前記排熱回収熱交換器10へ移動して、排熱回収率が悪化するのを抑制することもできる。
更に、本実施例によれば、前記排熱回収熱交換器10での熱交換量、即ち、前記貯温水タンクユニット(排熱回収機器)23の稼働状況に関係なく、圧縮機ユニット20内の空冷熱交換器13へ送風する冷却ファン14が回転数制御が可能な構成としているので、圧縮機本体3の出口温度が一定の目標温度になるように制御することが可能である。従って、前記貯温水タンクユニット(排熱回収機器)23の稼働状況と圧縮機ユニット20の稼働状況を一致させる必要のない油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムを得ることができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記各実施例では、油冷式ガス圧縮機として油冷式のスクリュー空気圧縮機を例に挙げ説明したが、これには限られず、例えばスクロール圧縮機のような他の方式の圧縮機でも同様に適用できる。
また、油冷式ガス圧縮機で圧縮される媒体も空気には限られず、他のガスを圧縮する圧縮機でも同様に適用可能である。更に、駆動源もモータ以外の他の駆動源、例えばエンジンやタービンなどでも良い。
また、上述した実施例では、油冷式ガス圧縮機における排熱回収システムを、圧縮機ユニット20、排熱回収ユニット21及び貯温水タンクユニット23の3つのユニットを並列に配置して接続した例で説明したが、前記3つのユニットを一体化して1ユニットにしたり、或いは2ユニットの構成とすることも可能である。
また、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。