JP7049103B2 - 単一細胞の網羅的3’末端遺伝子発現解析法 - Google Patents
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Description
該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
上記方法が、
前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
前記固相担体を(プールして)洗浄する工程と、
前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を行う工程と、
前記固相担体を洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
を含む方法を提供する。
該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
前記方法が、
前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
前記固相担体を(プールして)洗浄する工程と、
前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を行う工程と、
前記固相担体を洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
を含む方法を提供する。
100個の微小反応槽103がアレイ状に配置したチップ100(図1-1の(a)平面図、(b)断面図)を16枚、搭載したデバイスを用意する。この微小反応槽103の中は、PCR増幅用配列112(配列番号4)、微小反応槽ごとに異なる6塩基の既知配列である細胞識別配列111(配列番号3)、プローブ分子毎に異なる7塩基のランダム配列からなる分子識別配列110(配列番号2)、およびオリゴ(dT)VNの配列で構成される逆転写反応用プローブ109(配列番号1)が高密度に固定化された担体(好ましくは磁性ビーズ)104が潤沢に充填してある。微小反応槽の上面には細胞よりも小さい径(2~6μm)の微小貫通孔102が存在し、さらに下面は多孔質素材膜(孔径:0.8μm、ミリポア社)130で密着させることで担体を保持しながら試薬が通過させられる試薬排出部105が存在している。すなわち、本実施例で使用するデバイスはチップの下方向から陰圧をかけることが可能な構造であるため、微小反応槽の試薬排出部105を通過して微小反応槽の上部・内部から試薬を排出することができる。まず始めにデバイスに搭載された全てのチップ100の上面へ、RNase Inhibitor(1U/μL)を含んだ2μLのPhosphate buffered saline(PBS)を添加後、陰圧をかけることでPBSを排出させ、微小反応槽103を洗浄する。Green fluorescent protein(GFP)を発現させたヒト大腸がん細胞(HCT116)を100細胞/μLとなるようにPBSで希釈した細胞懸濁液を用意し、約80細胞が含まれる0.8μLを全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。これによってPBSはチップ下面から排出され(図1-1の(b))、微小貫通孔102よりも十分に大きい細胞101が微小反応槽103の上面に捕捉される。
2μLの細胞溶解試薬(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、10 mM EDTA、1%SDS、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、弱く陰圧をかけながら室温で2分間インキュベートさせる。この操作により細胞膜106(図1-1の(c))および核膜107は溶解し、各細胞中に含まれるmRNA 108が微小反応槽中に溶出する。mRNAの3’末端にはポリA配列が存在するため、逆転写反応用プローブ109の3’末端側に含まれるオリゴ(dT)配列部分で、mRNA分子は捕捉される(図1-1の(d))。例えば径1μmの担体104あたりに固定される逆転写反応用プローブ109は5 x 104~105分子であり、微小反応槽あたりに充填される担体が105~2 x 105個であることから、微小反応槽あたりの逆転写反応用プローブ数は5 x 109~2 x 1010分子となる。すなわち、1細胞あたり存在する105~106分子のmRNAを捕捉するためのプローブとしては十分量であり、高効率でmRNAを捕捉することが可能である。
デバイス内の陰圧を強くすることで完全に細胞溶解試薬を除去する。さらに2μLの細胞洗浄液(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。この操作を2回行うことで、各微小反応槽をよく洗浄し、後続の逆転写反応の阻害剤となり得る細胞溶解試薬を除去する。4μLの逆転写反応試薬(1x Lysis buffer、1x Ultra Low First strand Buffer、SMART-Seq v4 Oligo 115 (3.6μM)、SMART Scribe RT(13.8 U/μL)、RNase Inhibitor (1.5 U/μL):タカラバイオ社)を全チップの上面へ添加し、緩やかな陰圧をかけることで微小反応槽内へ試薬を満たさせた後、42℃ 90分間インキュベートさせる。これにより、捕捉されたmRNA分子108を鋳型として、逆転写反応用プローブ109の3’方向に1st cDNA 113が合成される。本実施例で使用した逆転写酵素SMART Scribe RTはテンプレートスイッチ(Template Switch:TS)機能を持つため、合成された1st cDNAは3’末端に数塩基の特異的配列114が付加される。次にこの特異的配列114と相補的配列を3’末端側に含むSMART-Seq v4 Oligo 115が相補鎖結合し、これを鋳型としてさらに1st cDNA合成が進む。従って、最終的に合成された1st cDNAは、3’末端側にSMART-Seq v4 Oligo 115の相補的配列、5’末端にPCR増幅用配列112(配列番号4)、細胞識別配列111(配列番号3)、および分子識別配列110(配列番号2)を有する(図1-1の(d))。本工程により、同時に複数の1細胞において、発現している全遺伝子由来のmRNAから1st cDNAライブラリを担体に固定させた状態で合成することができる。
デバイス内の陰圧をやや強くすることで逆転写反応液を除去し、チップ100、およびチップ下面で担体を保持するとともに試薬排出部105の役割を担っていた多孔質素材膜130を、ピンセットで取り出してチューブ116内の20μLの担体展開用バッファ117(50 mM Tris、50 mM NaCl、0.1%Tween20、pH8.0)中へ入れる。チップは自家蛍光が少ない柔軟性のある素材(PDMSなど)であり、多孔質素材膜も柔軟性のある素材であるため、チューブ底部分にネオジウム磁石118を設置しながらバッファ内でチップをピンセットで揺する、もしくは揉むことで、容易に微小反応槽に充填された担体104はバッファ117内へ展開される。これにより、チップを用いて同時に複数の各細胞から合成された1st cDNAライブラリ試料がプールされる。細胞識別配列111が各1st cDNAライブラリ(微小反応槽)毎に異なっているため、本工程でプールしてもNGS解析データにおいて細胞毎に区別することが可能であるため問題はない。またプールする細胞数が多いほど、試料調製に要する労力・コストの低減化が可能となる。目視で全ての担体がバッファ内へ展開されたことを確認し、チップおよび多孔質素材膜をチューブから除去する。ネオジウム磁石118で担体104を捕捉しながら逆転写反応試薬の残留試薬などが溶出したバッファを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄後、担体を1μLの10 mM Tris (pH 8.0)へ懸濁させる。
5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL)、2nd cDNA合成用プライマー119(0.72μM):タカラバイオ社)を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→58℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 120を合成する。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
1μLのタグメンテーション試薬(0.25μLの滅菌水、0.5μLのAmplicon Tagment Mix、0.25μLのTagment DNA bufferから成る混和液:イルミナ社)を担体と混和し、55℃で2.5分間インキュベート後10℃まで温度を下げる。タグメンテーション試薬に含まれるトランスポザーゼによって、担体に保持された状態の2本鎖DNAが、250~1000塩基以下に断片化されると同時に、共通配列部分121(配列番号5)および特異的配列A部分122(配列番号6)からなるタグ配列A、および共通配列部分121および特異的配列B部分123(配列番号7)からなるタグ配列Bの2種類のタグ配列(図4)がランダムに付加される。反応終了後ただちに、氷上で冷やした50μLの高濃度塩を含有する界面活性剤洗浄液(0.1%Tween20、100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl)を添加し、ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、タグメンテーション反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去する。この操作を2回繰り返して洗浄した後、氷上で冷やした50μLの洗浄液(0.1%Tween20、20 mM Tris (pH8.0))で同様に2回繰り返して洗浄する。この操作によって、トランスポザーゼを直ちに完全除去して活性を停止させることができるとともに、担体に保持されていないDNA断片(タグメンテーション反応における副産物)は完全に除去できるのでターゲットDNA(mRNAの3’末端由来の配列を有する)のみが担体に保持された状態で得ることができる。ここで担体に保持された状態で断片化されたDNAは、タグ配列Aおよびタグ配列Bのいずれかの配列が付加されている。
DNAポリメラーゼを事前に活性化させる目的で、28.6μLの反応液(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.025 U/μL):タカラバイオ社)を98℃ 1分間インキュベート後、4℃へ冷却させる。この反応液へPCR増幅用配列112(配列番号4)の5’側にNGS解析用配列(P5_R1SP)124(配列番号8)が付加されたForwardプライマー(10μM)を1μL、および共通配列部分121(配列番号5)の5’側にチップ識別配列126(配列番号10)、およびNGS解析用配列(P7_R2SP)125(配列番号9)が付加されたReverseプライマーを0.4μL混和してPCR反応溶液30μLを調製し、タグメンテーション反応後の試料と氷上にて混和させる。続いて68℃ 30秒間→98℃ 45秒間インキュベートした後、98℃ 15秒間→60℃ 45秒間→68℃ 30秒間を14サイクルのPCR増幅をサーマルサイクラーで実施し、4℃へ冷却させる。ネオジウム磁石を用いて上澄みである約30μLのPCR増幅産物試料を別チューブへ採取する。20μLの0.1%Tween 20(10 mM Tris (pH8.0))で担体表面およびチューブ内壁を洗浄して残留したPCR産物を追加回収し、PCR増幅産物試料と混和させる(計50μL)。AmpureXPビーズを用いてDNA試料を精製・定量し、NGS解析の為の最終試料127を得た。このPCR増幅工程では、チップ(チューブ)毎に異なった5塩基の既知配列であるチップ識別配列126をターゲットDNAへ導入する。すなわち本実施例で用いた16枚分のチップの識別が可能となるため、100種類の細胞識別配列111と組み合わせることで合計1600細胞について理論上区別することができる。すなわち、1回のNGS解析で1600個の細胞について網羅的遺伝子発現解析を行うことが可能となる。
1枚のチップ100あたり80個の細胞を投入・捕捉し、諸工程を経て得られた最終試料127を用いてNGS装置128で解析を行う。すなわち得られたシーケンスリードを、100種類の細胞識別配列111で分離後、細胞識別配列あたりのシーケンスリード中に検出された遺伝子数を調べた結果、検出遺伝子数値における連続性が異なった3種類のデータを確認できる(図8)。すなわち、微小反応槽103あたり複数細胞が捕捉されたと想定される2~3細胞データ、1細胞データ、および細胞が捕捉されなかった(諸工程がうまくワークしなかった)と想定される0細胞データが各々確認できる。1細胞データにおける平均検出遺伝子は7818個であり、1チップ100あたりの総検出遺伝子数は15773であった(図9)。補足であるが、本実施例ではMiseq(イルミナ社)のNGS装置を用いており、スループットが15M~20Mリード/ランとやや低いため、細胞あたりのリード数は平均0.14Mリードと少なかった。本試料を1Gリード/ランより高スループットなNGS装置を用いて細胞あたり1Mリードほど得られれば、細胞あたりの検出遺伝子数も1チップあたりの総検出遺伝子数である15773へ近似すると考えられる。これにより、1細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析が可能であることが実証できた。また、92種類のmRNAが既知量ミックスされたERCC(Ambion)を用いて、本実施例の方法による定量精度を調べた。その結果、1細胞相当量(0.614pg)から得たデータにおけるR2値は0.9073であり、100細胞相当量(61.4pg)から得たデータにおけるR2値は0.9714であり、高い定量精度が実証できた(図7)。
実施例1と同様に微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程を行った後、デバイス内の陰圧を強くすることで完全に細胞溶解試薬を除去する。さらに2μLの細胞洗浄液(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。この操作を2回行うことで、各微小反応槽をよく洗浄し、後続の逆転写反応の阻害剤となりえる細胞溶解試薬を除去する。4μLの逆転写反応試薬(1x FS buffer、25 mM DTT、2.5 mM dNTPs、0.75% NP40、RNase OUT (4 U/μL)、SuperScriptIII (20 U/μL): Thermo Fisher社)を全チップの上面へ添加し、緩やかな陰圧をかけることで微小反応槽内へ試薬を満たさせた後、50℃ 50分間インキュベートさせる。これにより、捕捉されたmRNA分子108を鋳型として、逆転写反応用プローブ109の3’方向に1st cDNA 113が合成される。従って、最終的に合成された1st cDNAの5’末端にはPCR増幅用配列112(配列番号4)、細胞識別配列111(配列番号3)、および分子識別配列110(配列番号2)が存在する。本工程により、同時に複数の1細胞において、発現していた全遺伝子由来のmRNAから1st cDNAライブラリを担体に固定させた状態で合成することができる。
実施例1と同様に(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程を行った後、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL))を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(a))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作によりmRNA 108を分解・除去できる。次に5μLの2nd cDNA合成試薬(10μMランダムプライマー201(配列番号13)、1x Bst Reaction Buffer、0.25 mM dNTP mix、Bst DNA polymerase (1.6U/μL):日本ジーン社)を添加して担体と混和し、50℃で30分間インキュベートする。本試薬は鎖置換型DNA polymeraseを含むため、1st DNA 113の複数個所でアニールしたランダムプライマー201を起点として、前方向で合成された鎖(202、203)と置き換わるように相補鎖結合反応が次々に進む(図2の(a))。始めに合成された相補鎖は担体から外れて液相中に存在する副産物205となり、1st DNA 113の3’側付近にアニールしたランダムプライマーによって合成された相補鎖である2nd cDNA 204は、最終的に担体に捕捉された状態で得ることができる。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬、および担体から外れて液相中に存在する副産物205が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
実施例2と同じく、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL):タカラバイオ社)を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(b))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により分解されたmRNA 206が除去できる。続いて同チューブへ4μLの1本鎖DNAリガーゼ試薬(1x Buffer、50μM dATP、2.5 mM MgCl2、Circ ssDNA Ligase (0.25U/μL) 5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207(配列番号14))を添加して担体と混和し、60℃ 1時間→80℃ 10分間インキュベートする。この反応によって5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207が1st cDNAの3’末端に付加される。続いて5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL: タカラバイオ社)、6μM 2nd cDNA合成用プライマー208(配列番号15))を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→50℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 209を合成する(図2の(b))。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
実施例2および3と同じく、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL):タカラバイオ社)を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(c))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により分解されたmRNA 206(図2の(c))が除去できる。同チューブへ12μLのトランスフェラーゼ反応液(5 mM Tris-HCl (pH8.3)、25 mM KCl、0.75 mM MgCl2、1.5 mM dATP、RNase H (0.15U/μL)、ターミナルトランスフェラーゼ (0.188U/μL)、0.45% NP40)を添加して担体と混和後、30℃ 15分間→70℃ 5分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この反応により1st cDNAの3’末端へ連続塩基(本実施例ではポリT配列)210を付加できる。続いて5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL)、1μM 3’末端BN付加_ポリA配列プライマー211(配列番号16):タカラバイオ社)を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→44℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 212を合成する(図2の(c))。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
同チューブへ5μLの鎖置換型DNA polymeraseを含む2nd cDNA合成試薬(1x Bst Reaction Buffer、0.25 mM dNTP mix、Bst DNA polymerase (1.6U/μL:日本ジーン社))を添加して担体と混和し、50℃で30分間インキュベートする。本工程では、1st DNA 113が担体に固定化されたランダムプライマー213と相補的な配列部分でアニールし、2nd cDNA 214が合成される(図3の(b))。すなわち、実施例1~4と異なり、2nd cDNA鎖側も担体に固定された状態で得られる。次に異なるランダムプライマーと相補的な部分で1st cDNAがアニールし、新たな2nd cDNA 215が合成され得る。このように1分子の1st cDNAから複数の2nd cDNA分子が合成され、またこの増幅された2nd cDNA分子は担体上の逆転写反応用プローブ109(配列番号1)とさらにアニールできることから新たなcDNA鎖が合成され得る。すなわち担体に捕捉された状態で1細胞由来のcDNAを増幅させることができる(図3の(b))。これにより低発現遺伝子においても検出感度および定量精度を向上させることができる。続いて、ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬、および担体から外れて液相中に存在する副産物205が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
101:細胞
102:微小貫通孔
103:微小反応槽
104:担体
105:試薬排出部
106:溶解された細胞膜
107:溶解された核膜
108:mRNA
109:逆転写反応用プローブ
110:分子識別配列
111:細胞識別配列
112:PCR増幅用配列
113:1st DNA
114:Template Switch(TS)機能を有した逆転写酵素により付加されたTS特異的配列
115:SMART-Seq v4 Oligo
116:PCRチューブ
117:担体展開用バッファ
118:ネオジウム磁石
119:2nd cDNA合成用プライマー
120:2nd cDNA
121:共通配列部分(19塩基)
122:特異的配列A部分(14塩基)
123:特異的配列B部分(15塩基)
124:NGS解析用配列(P5_R1SP)
125:NGS解析用配列(P7_R2SP)
126:チップ識別配列
127:最終試料
128:NGS解析装置
130:多孔質素材膜
200:Exonuclease Iにより分解された1本鎖の逆転写反応用プローブ109
201:ランダムプライマー
202:201より先に1st cDNA 113へアニールして鎖置換型DNAポリメラーゼにより相補鎖伸長反応した鎖
203:201、202より先に1st cDNA 113へアニールして鎖置換型DNAポリメラーゼにより相補鎖伸長反応した鎖
204:担体に固定された2nd cDNA
205:担体から外れて液相中に存在する副産物
206:RNaseにより分解されたmRNA
207:1本鎖DNAリガーゼで付加された5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ
208:207と相補的な配列を含む2nd cDNA合成用プライマー
209:208を利用して合成された2nd cDNA
210:ターミナルトランスフェラーゼにより付加されたポリT配列
211:3’末端にBNが付加されたポリA配列プライマー
212:ポリA配列プライマー211を利用して合成された2nd cDNA
213:担体固定化ランダムプライマー
214:担体に固定化された2nd cDNA
215:1st cDNAの3’末端側で新たにランダムプライマーがアニールして合成された2nd
cDNA
配列番号1:逆転写反応用プローブ109(100種類ある細胞識別タグの一例を示す)
CCATCTCATCCCTGCGTGTCTCCGACTCAGCGTACTNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN
配列番号2:分子識別配列110(N=A、G、C、T)
NNNNNNN
配列番号3:細胞識別配列111(100種類ある既知配列中の一例を示す)
CGTACT
配列番号4:PCR増幅用配列112
CCATCTCATCCCTGCGTGTCTCCGACTCAG
配列番号5:共通配列部分121
AGATGTGTATAAGAGACAG
配列番号6:特異的配列A部分122
TCGTCGGCAGCGTC
配列番号7:特異的配列B部分123
GTCTCGTGGGCTCGG
配列番号8:NGS解析用配列(P5_R1SP)124
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT
配列番号9:NGS解析用配列(P7_R2SP)125
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT
配列番号10:チップ識別配列126(16種類ある中の一例を示す)
CGATA
配列番号11:P5
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC
配列番号12:P7
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT
配列番号13:ランダムプライマー201(N=A、G、C、T)
NNNNNNNNN
配列番号14:5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207
(5’P)AGCAACGCACTTTGAATTTTGTAATCCTGAAGGG(3’ddC)
配列番号15:207と相補的な配列を含む2nd cDNA合成用プライマー208
CCCTTCAGGATTACAAAATTCAAAGTGCGTTGCT
配列番号16:3’BN付加ポリA配列プライマー211(B=G、C、T、 N=A、G、C、T)
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAABN
Claims (16)
- 複数の微小反応槽を有するデバイスを用いて細胞の遺伝子発現を解析する方法であって、
該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
前記方法が、
前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
前記固相担体を洗浄する工程と、
前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を、2本鎖DNAに対するタグメンテーション反応により行う工程と、
前記固相担体を前記タグメンテーション反応に使用する酵素に対する阻害作用を有する洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
を含む方法。 - 前記タグ配列が特異的配列部分および共通配列部分を含み、前記増幅工程において、前記タグ配列のうち該共通配列または該共通配列に相補的な配列を増幅することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記固相担体を洗浄する工程の前または後に、前記単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体を、複数の細胞分プールする工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体を、10~100000個の細胞分をプールすることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 前記固相担体が径10nm~100μmのサイズであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記固相担体が磁性ビーズであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記逆転写反応をテンプレートスイッチ(Template switch)機能を有する逆転写酵素を用いて行うことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記2nd cDNA合成工程において、ランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記2nd cDNA合成工程において、テンプレートスイッチ機能を有する逆転写酵素により付加された特異的配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
- 前記2nd cDNA合成工程において、1本鎖DNAリガーゼを用いて既知配列を前記1st cDNAの3’末端へ付加し、該既知配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記2nd cDNA合成工程において、ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)により1st cDNAの3’末端へポリT、A、GまたはCのポリ塩基配列を付加し、該ポリ塩基配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記固相担体に、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブと、ランダム配列を含むプライマーとが固定されており、前記2nd cDNA合成工程において、前記固相担体に固定されたランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成し、cDNA増幅することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記微小反応槽の各々に直径10μm以下の貫通孔が形成されており、前記細胞導入工程において、該貫通孔に単一細胞が捕捉されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記洗浄液が500mMの濃度の塩を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記微小反応槽の中に、前記プローブが固定された固相担体が複数個充填されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
- 5 x 104~105分子の前記プローブが固定された固相担体が105~2 x 105個充填されている、請求項15に記載の方法。
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