JP7047260B2 - 医薬品用複合ゴム成型体 - Google Patents
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Description
表面にフッ素系樹脂フィルムがラミネートされた医薬品用複合ゴム成型体であって、
前記複合ゴム成型体の表面において、炭素、酸素、フッ素の3元素の合計100%に対してフッ素の割合が40%以上であり、L*a*b*表色系におけるb*が2.0以下である、複合ゴム成型体が提供される。
表面にフッ素系樹脂フィルムがラミネートされた医薬品用複合ゴム成型体であって、
前記複合ゴム成型体の表面において、フッ素/炭素元素比(F/C)が0.8以上であり、L*a*b*表色系におけるb*が2.0以下である、複合ゴム成型体が提供される。
本発明の複合ゴム成型体は、表面にフッ素系樹脂フィルムがラミネートされたものであって、優れた耐薬品性、耐溶剤性、滑り性および付着防止性等を有するため、医薬品容器のゴム栓や注射器のガスケット等の種々の医薬品用ゴム製品に用いることができる。
ゴム栓の場合、天面部あるいは脚部のみにフッ素系樹脂フィルムをラミネートしてもよいし、天面部と脚部の両方にフッ素系樹脂フィルムをラミネートしてもよい。
色によって、人の目による識別可能な色の違いは異なるが、彩度が低い色では色の違いを識別しやすく、色差(ΔE*ab)2.0程度で識別可能となる。ゴム成型体において、無彩色や無彩色から青みがかった色を用いる場合、黄色や茶色への変色は嫌われるため、b*は、好ましくは+2.0以下であり、好ましくは-5.0以上0.0以下であり、より好ましくは-4.0以上-0.5以下である。赤色への変色も嫌われるため、a*は、好ましくは+2.0以下であり、好ましくは-3.0以上0.0以下であり、より好ましくは-2.0以上-0.5以下である。
本発明の複合ゴム成型体に用いるゴム素材としては、特に限定されないが、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。その中でも気体不透過性の観点から、ブチルゴムが好ましく、特に塩素化ブチルゴムが好ましい。
本発明で用いるフッ素系樹脂フィルムは、不活性であり、耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性に優れるため、ゴム素材にラミネートすることで、ゴム成型体の表面(脚部や天面部)に優れた耐薬品性・耐溶剤性や滑り性や付着防止性を付与することができる。
フッ素系樹脂フィルムの表面の改質処理としては、特に限定されないが、薬液による処理、電子ビームによる処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等があげられる。生産性の観点からコロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等が好ましい。低圧プラズマ処理は、官能基導入のためのガス種の割合を広い範囲で使用できるため特に好ましい。
フッ素系樹脂の表層部を低圧プラズマ処理等により活性化すると、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成するようになる。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成する。その後、雰囲気中の酸素と結合し、さらに離脱した水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
あるいは、低圧プラズマ処理により雰囲気中に発生した酸素ラジカルにより、フッ素系樹脂の骨格からフッ素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の酸素含有官能基が形成される。また、フッ素系樹脂の骨格に水素原子が結合している場合には、同様にフッ素系樹脂の骨格から水素原子の引き抜きとフッ素系樹脂への酸素の付加反応が起こり、さらに引き抜かれた水素原子や雰囲気中から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基等の官能基が形成される。
低圧プラズマ処理により活性化した表面は、大気圧に戻した際に、空気中の酸素や窒素由来の官能基が形成される。このため、プラズマ雰囲気中に酸素や窒素がない処理条件であっても、表面に酸素や窒素が検出される。
これらの官能基が存在するようになった表層は、他の樹脂との親和性と反応性が著しく向上するようになり、フッ素系樹脂の接着性が発現するものと考えられる。
プラズマ雰囲気の制御のしやすさや使用可能なガスの自由度から、低圧プラズマ処理が可能な装置が好ましい。低圧プラズマ処理装置としては、ICP型のプラズマ処理装置、並行平板型のプラズマ処理装置、ロールツーロール型のプラズマ処理装置等を用いることができる。生産性の観点から、ロールツーロール型のプラズマ処理装置が好ましい。
プラズマ生成に用いる電源としては、高周波電源、パルス波電源等の従来公知の電源を用いることができる。電源の周波数は100kHz以下の範囲であれば、ガスの自由度は高く、官能基を積極的に導入するためのガス種の割合を多く使用できる。そのようなガスとしては、O2、CO、CO2、NH3、N2O、SO2、H2S等が挙げられる。
[実施例1]
フッ素系樹脂フィルムとして幅300mmのETFEフィルム※1(ダイキン(株)製、ネオフロンEF-0050)を前記記載のロールツーロール型プラズマ処理装置内に通し、チャンバーを閉めて0.01Pa以下まで減圧した後、Arを200sccm、酸素を1500sccm導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を8Paに調整したのち、電力を370Wとし、プラズマ処理を行った。フッ素系樹脂フィルムの搬送速度は4.2m/minとし、プラズマ処理を繰り返し3回行った。プラズマ処理終了後、放電とガスの供給を止めて、0.01Pa以下まで減圧した後、ベントして大気圧に戻して、表面改質フッ素系樹脂フィルムを得た。
表1に示したプラズマ処理条件に変更した以外は実施例1と同様にして、プラズマ処理を実施して、表面改質フッ素系樹脂フィルムを得た。実施例5および比較例5では、フッ素系樹脂フィルムとしてECTFEフィルム(デンカ(株)製、TEFKA)を用いた。また、実施例6~9および比較例7~8では、フッ素系樹脂フィルムとしてETFEフィルム※2(旭硝子(株)製、アフレックス)を用いた。但し、比較例1と比較例6では、下記の複合ゴム成型体の製造においてフッ素系樹脂フィルムを用いずに、ゴム栓を成型した。
複合ゴム成型体のゴム素材として未加硫の塩素化ブチルゴムシートを用意した。塩素化ブチルゴムには、主な添加剤としてシリカ系補強剤・酸化マグネシウム・酸化チタン・カーボンブラック・加硫剤からなる材質を使用した。
上記の実施例および比較例で製造した表面改質フッ素系樹脂フィルムのプラズマ処理面と、上記の未加硫の塩素化ブチルゴムシートとを相対するように重ね合わせ、脚部長さ10mm、脚径13mm、天面部厚み3mm、天面部外径19mmのゴム栓の寸法に合わせた上下金型で、表面改質フッ素系樹脂フィルムがゴム栓の天面部側に接触する状態にして真空プレスで加硫成形して、ラミネートゴム栓を得た。成形時の金型温度は170±3℃、加硫時間は420秒、フィルムの予備加熱時間は30秒であった。
上記の実施例および比較例で製造した表面改質フッ素系樹脂フィルムのプラズマ処理面と、上記の未加硫の塩素化ブチルゴムシートとを相対するように重ね合わせ、脚部長さ10mm、脚径13mm、天面部厚み3mm、天面部外径19mmのゴム栓の寸法に合わせた上下金型で、表面改質フッ素系樹脂フィルムがゴム栓の脚部側に接触する状態にして真空プレスで加硫成形して、ラミネートゴム栓を得た。成形時の金型温度は170±3℃、加硫時間は420秒、フィルムの予備加熱時間は30秒であった。
(評価基準)
○:ゴム栓のバリ部で、表面改質フッ素系樹脂フィルムが剥離しなかった。
×:ゴム栓のバリ部で、表面改質フッ素系樹脂フィルムが剥離した。
上記で製造したラミネートゴム栓の表面について、コミカミノルタ製の分光測色計CM-600dを用いて、反射光で、L*a*b*表色系で表わされる色を測定した。測定条件は、SCE(正反射光除去)、10°視野、D65光源とした。
ゴム栓の天面部を測定する場合には、分光測色計の試料面開口部が天面部に向かい、測定機が天面部の一部に接触する状態で測定した。ゴム栓の脚部を測定する場合には、分光測色計の試料面開口部が脚部に向かい、測定機が笠部と脚部の一部に接触した状態で測定した。
上記で製造したラミネートゴム栓の表面組成について、X線光電子分光分析装置(KRATOS社製ESCA-3400)を用いて、X線銃:MgKα、20mA、10kVとして、C1s、O1s、F1sを表3に記載の条件で測定した。解析ソフトにより、測定で得られた各元素のピークにShirley法でバックグラウンドを引き、各元素のピークの積分強度(面積)から、ラミネートゴム栓の表面における元素濃度を算出した。得られた元素濃度から、必要な元素比を算出した。測定結果は、表2に示した通りであった。
2:表面改質フッ素系樹脂フィルム
3:ゴム栓
4:ラミネートゴム栓
5:ラミネートゴム栓
6:表面改質フッ素系樹脂フィルム
7:ゴム栓
P:プラズマ
11:チャンバ
12:フィルム供給部
12a:フィルムローラ
13:フィルム巻取部
13a:巻取ローラ
14:メインロール
15:フィルム搬送装置
16:案内ロール
17:排気ポンプ
18:連結管
19:バルブ
34:ガスノズル
40:処理ガス供給部
41、42、43:ガスボンベ
44、45、46:ガス供給管
47、48、49:マスフローコントローラー
50:表面改質フッ素系樹脂フィルム
51:フッ素系樹脂フィルム
52:マスク
60:磁場発生部
61:マグネット
65:隔壁
Claims (8)
- 表面にフッ素系樹脂フィルムがラミネートされた医薬品用複合ゴム成型体であって、
ゴムと、前記ゴムにラミネートされた前記フッ素系樹脂フィルムと、を備え、
前記フッ素系樹脂フィルムは、前記ゴムにラミネートされた一方の面と、前記複合ゴム成型体の表面に露出する他方の面と、を含み、
前記複合ゴム成型体の表面において、炭素、酸素、フッ素の3元素の合計100%に対してフッ素の割合が50%以上であり、L*a*b*表色系におけるb*が+2.0以下であり、
前記フッ素系樹脂フィルムの前記一方の面は、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の合計100%に対して、炭素の割合が45%以上70%以下であり、窒素の割合が0.1%以上5%以下であり、酸素の割合が13%以上であり、フッ素の割合が35%以下である領域を含む、複合ゴム成型体。 - 表面にフッ素系樹脂フィルムがラミネートされた医薬品用複合ゴム成型体であって、
ゴムと、前記ゴムにラミネートされた前記フッ素系樹脂フィルムと、を備え、
前記フッ素系樹脂フィルムは、前記ゴムにラミネートされた一方の面と、前記複合ゴム成型体の表面に露出する他方の面と、を含み、
前記複合ゴム成型体の表面において、フッ素/炭素元素比(F/C)が1.2以上であり、L*a*b*表色系におけるb*が+2.0以下であり、
前記フッ素系樹脂フィルムの前記一方の面は、炭素、窒素、酸素、フッ素の4元素の合計100%に対して、炭素の割合が45%以上70%以下であり、窒素の割合が0.1%以上5%以下であり、酸素の割合が13%以上であり、フッ素の割合が35%以下である領域を含む、複合ゴム成型体。 - 前記複合ゴム成型体の表面において、L*a*b*表色系におけるb*が-5.0以上0.0以下である、請求項1または2に記載の複合ゴム成型体。
- 前記複合ゴム成型体の表面において、L*a*b*表色系におけるa*が+2.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合ゴム成型体。
- 前記複合ゴム成型体の表面において、L*a*b*表色系におけるa*が-3.0以上0.0以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合ゴム成型体。
- 前記フッ素系樹脂フィルムが、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合ゴム成型体。
- 前記フッ素系樹脂フィルムが、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合ゴム成型体。
- ゴム栓またはガスケットである、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合ゴム成型体。
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