JP7044103B2 - 静電荷像現像用正帯電性トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本開示の課題は、印字耐久性と併せて、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れる静電荷像現像用正帯電性トナーを提供することにある。
前記外添工程において、前記外添剤として、個数平均粒径が70~200nmである球形シリカ粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.7~4.5質量部、および、個数平均粒径が5~25nmである無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.01~0.4質量部含み、かつ、当該外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であるものを用いることを特徴とする。
本開示の製造方法においては、前記外添工程において、前記無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに前記球形シリカ粒子を付着させることが好ましい。
以下、本開示の着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本開示のトナーの製造方法及び本開示のトナーについて、順に説明する。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A-1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールに炭素-炭素二重結合を有するカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N-ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本開示では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~2質量部の割合で用いることが望ましい。
マクロモノマーとしては、例えば、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリアクリロニトリルマクロモノマー、及びシリコーンマクロモノマー、並びにこれらマクロモノマーの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸エステルマクロモノマー及びポリメタクリル酸エステルマクロモノマーを用いることが好ましい。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
本開示において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、例えば、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート等のモノエステル化合物;ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミテート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもモノエステル化合物が好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300~800であることが好ましく、400~600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1~10であることが好ましく、2~7であることがより好ましい。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いることが好ましい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部用いられ、更に好ましくは1~20質量部用いられる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム含有共重合体、及び4級アンモニウム塩含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸含有共重合体、スルホン酸塩含有共重合体、カルボン酸含有共重合体及びカルボン酸塩含有共重合体等が挙げられる。
本開示では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01~10質量部、好ましくは0.03~8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が0.01質量部以上であれば、カブリ発生のおそれが少ない。また、帯電制御剤の添加量が10質量部以下であれば、印字汚れ発生のおそれが少ない。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン-4-チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’-ジオクタデシル-N,N’-ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部の割合で用いることが望ましい。
本開示では、少なくとも重合性単量体及び着色剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記(A-2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60~95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1~20時間であり、更に好ましくは2~15時間である。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96以上であれば、印字の細線再現性が悪化するおそれが少ない。
本開示においては、上記着色樹脂粒子を、外添剤と共に混合攪拌して外添処理を行うことにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を付着させて1成分トナー(現像剤)とする。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分現像剤としてもよい。
球形シリカ粒子の個数平均粒径が70nm以上であれば、球形シリカ粒子同士の凝集や、着色樹脂粒子に対する球形シリカ粒子の埋没等の不具合も少なく、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、球形シリカ粒子の個数平均粒径が、200nm以下であれば、球形シリカ粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくく、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)をトナー粒子に十分に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
球形シリカ粒子の球形度が1.3以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、また、帯電量分布を狭く維持でき、初期カブリを抑制でき、初期印字性能に優れ、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に十分に付与させることができ、多枚数の連続印刷では、細線再現性を維持でき、カブリ等による画質の劣化も少なく、耐久印刷性能に優れる。これらの傾向は、低温低湿や高温高湿などの厳しい環境下においても同様である。
球形シリカ粒子の球形度(Sc/Sr)は、電子顕微鏡で撮影された球形シリカ粒子の写真を、画像処理解析装置により、Sc及びSrを解析し、球形度(Sc/Sr)を算出し、算術平均して求められる値である。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
これらの疎水化処理剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、疎水化処理剤の使用量は、球形シリカ粒子100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましく、10~30質量部が更に好ましい。
具体的には、乾式法としては球形シリカ粒子を高速で攪拌しながら、疎水化処理剤を滴下または噴霧する方法や、湿式法としては疎水化処理剤を有機溶媒中に溶解させ、当該有機溶媒を攪拌しながら球形シリカ粒子を添加する方法等が挙げられる。
球形シリカ粒子の含有量が0.5質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に優れる。一方、球形シリカ粒子の含有量が4.5質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、球形シリカ粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくいため、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
球形シリカ粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、電気化学工業社製のUFP-30H(:商品名、個数平均粒径:110nm、球形度:1.13);信越化学工業社製のX-24-9163A(:商品名、個数平均粒径:140nm、球形度:1.12)、及びKMPX100(:商品名、個数平均粒径:100nm、球形度:1.12);等が挙げられる。
無機酸化物粒子の個数平均粒径が5nm以上であれば、無機酸化物粒子同士の凝集や、着色樹脂粒子に対する無機酸化物粒子の埋没等の不具合も少なく、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、無機酸化物粒子の個数平均粒径が25nm以下であれば、無機酸化物粒子が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくく、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)をトナー粒子に十分に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
無機酸化物粒子の個数平均粒径は、7~20nmであることがより好ましい。
本開示において、無機酸化物粒子の含有量が0.01質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。一方、無機酸化物粒子の含有量が0.6質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
無機酸化物粒子としては、種々の市販のシリカ粒子を用いることができ、例えば、クラリアント社製のHDK2150(:商品名、個数平均粒径:12nm);日本アエロジル社製のR504(:商品名、個数平均粒径:12nm)、RA200HS(:商品名、個数平均粒径:12nm);テイカ社製のMSP-013(:商品名、個数平均粒径:12nm);キャボット社製のTG-820F(:商品名、個数平均粒径:7nm)、TG-7120F(:商品名、個数平均粒径:22nm)等が挙げられる。
当該粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合の上限は特に限定されず、例えば、100%以下であってもよい。
外添剤の含有量が0.5質量部以上であれば、所望の外添剤としての機能(帯電安定性、及び流動性等の機能)が得られ、トナーの印字性能に優れる。一方、外添剤の含有量が5.0質量部以下であれば、帯電立ち上がり性が良好であり、さらに、外添剤が着色樹脂粒子から遊離(脱離)しにくいため、経時的に安定した帯電性及び流動性をトナー粒子に付与させることができ、トナーの印字性能に悪影響が及ぶおそれも少ない。
2種類以上の外添剤を併用する場合には、個数平均粒径の小さい外添剤から順に外添するのが好ましい。上記球形シリカ粒子及び無機酸化物粒子を併用する場合を例にとると、無機酸化物粒子を着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに球形シリカ粒子を付着させることが好ましい。なぜなら、無機酸化物粒子と球形シリカ粒子を同時に外添することがなければ、球形シリカ粒子の表面に無機酸化物粒子が外添されるおそれも少なく、これら2種類の外添剤を併用する効果を十分に発揮することができるためである。トナー表面に均一に外添剤を外添するには、無機酸化物粒子、球形シリカ粒子の順番で外添するのが好ましい。
本開示のトナーは、従来よりも個数平均粒径の大きい球形シリカ粒子を使用し、かつ粒径の小さい外添剤粒子を従来よりも少なく用いることにより、トナー粒子表面に埋没する外添剤の割合が減少する結果、帯電安定性及び搬送量安定性に優れる。
搬送量の測定方法の例は以下の通りである。まず、常温常湿(N/N)環境下(例えば、温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行う。この際、500枚毎に、現像ロールに載っているトナーについて、吸引式実機帯電量測定器によりトナー吸引量を測定する。このトナー吸引量をそのトナーの搬送量とみなして、以下の通り搬送量安定性の算出に供する。
計算式1:搬送量安定性=耐久印刷後搬送量(M2)/基準搬送量(M1)
搬送量安定性の値が1に近いほど、多枚数印刷後にも搬送量が変動せず、経時的に安定したトナー特性を示すものといえる。一方、搬送量安定性の値が大きいほど、多枚数印刷後にトナー搬送量が増えすぎることを示し、トナー特性が経時的に不安定であることを示す。このように、搬送量安定性はトナー特性の経時変化の指標の1つとなる。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[製造例1]
攪拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、メタノール623.7g、水41.4g、及び28%アンモニア水49.8gを加えて混合し、混合溶液の温度が35℃となるように調整した。
温度調整した混合溶液を攪拌しながら、テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物1250gの滴下、及び5.4%アンモニア水418.1gの滴下を同時に開始した。テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物1250gを8.5時間かけて滴下し、5.4%アンモニア水を5時間かけて滴下した。
それぞれの滴下が終了した後も、さらに0.5時間混合溶液の攪拌を継続し、加水分解を行うことにより、球形シリカ粒子の懸濁液を得た。
次いで、上記3Lのガラス製反応器に、エステルアダプター及び冷却管を取り付け、得られた球形シリカ粒子の懸濁液の温度が60~70℃となるまで加熱し、メタノールを留去(蒸留除去)した後、水を添加し、この懸濁液の温度が70~90℃となるまで加熱し、メタノールを完全に留去(蒸留除去)し、球形シリカ粒子の水性懸濁液を得た。
疎水化処理された水性懸濁液に、メチルイソブチルケトン1440gを添加し、その後、水性懸濁液の温度が80~110℃となるまで加熱し、共沸混合物を、10時間かけて留去(蒸留除去)し、その後、水性懸濁液の温度が室温となるまで冷却した。
冷却した水性懸濁液に、メタノール1000gを加え、10分間攪拌した後、遠心分離機にて3000Gで10分間処理し、上澄液を分離した。残留液から溶媒のメチルイソブチルケトンとメタノールを留去した後、乾燥して球形シリカ粒子を得た。
乾燥した球形シリカ粒子100gに対して、室温で、疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン10g及び環状シラザンである下記式1の化合物10gを添加し、その後、110℃となるまで加熱し、3時間反応させることにより、球形シリカ粒子を疎水化処理した。
次いで、80℃となるまで減圧下(6650Pa)で加熱し、溶媒を完全に留去(蒸留除去)し、球形シリカ粒子(シリカa、個数平均粒径:90nm、球形度:1.12)を作製した。
[製造例2~製造例6]
製造例1において、テトラメトキシシランとテトラブトキシシランの混合物の滴下量及び滴下時間を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2~製造例6の球形シリカ粒子(シリカb~シリカf)を作製し、試験に供した。
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン78部及びn-ブチルアクリレート22部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25BS)5部を、インライン型乳化分散機(大平洋機工社製、商品名:マイルダー)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(4級アンモニウム基含有スチレンアクリル樹脂)1.0部、離型剤として脂肪酸エステルワックス(ベヘニルベヘネート)5.0部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン1.6部を添加し、混合、溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
実施例1の外添処理において、球形シリカ粒子の種類及び含有量、並びに無機酸化物粒子の含有量を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~実施例6、参考例7~参考例9、及び比較例1~比較例4のトナーを作製し、試験に供した。
(1)個数平均粒径の測定
上記シリカa~シリカfについて、以下の方法により個数平均粒径を測定した。
まず、各球形シリカ粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真を画像処理解析装置(ニレコ社製、商品名:ルーゼックスIID)により、フレーム面積に対する粒子の面積率:最大2%、トータル処理粒子数:100個の条件下で、粒子の投影面積に対応する円相当径を算出した。その算術平均の値を、その球形シリカ粒子の個数平均粒径とした。
上記シリカa~シリカfについて、以下の方法により球形度を測定した。
まず、各球形シリカ粒子の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。その写真を、上記個数平均粒径の測定と同様の画像処理解析装置及び解析条件下で、粒子の絶対最大長を直径とした円の面積(Sc)、及び粒子の実質投影面積(Sr)を解析した。これら解析値から球形度(Sc/Sr)を算出し、その算術平均の値を、その球形シリカ粒子の球形度とした。
上記実施例1~実施例6、参考例7~参考例9、及び比較例1~比較例4の各トナーについて、使用した外添剤の粒度分布を以下の方法により算出した。
まず、外添後のトナー粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製、型番:JSM-7610F)を用いて観察し、倍率45,000倍でSEM画像を20枚撮影した。そのSEM画像について画像処理及び画像解析を行い、トナー粒子表面に存在する外添剤の大きさ(粒径)と各大きさの個数頻度を算出することにより、外添剤の粒度分布を得た。この粒度分布より、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合を算出した。
上記実施例1~実施例6、参考例7~参考例9、及び比較例1~比較例4の各トナーについて、トナー評価を行った。詳細は以下の通りである。
本試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ40枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。
次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND-1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B-A)をカブリ値(%)とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。
なお、下記表2中、「>20000」とあるのは、20,000枚の時点においても、印字濃度が1.3%以上で、且つカブリ値が3%以下の画質を維持できたことを示す。
上記印字耐久性試験と同様のプリンターを用いて、トナーを充填し、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で20,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、現像ロールに載っているトナーについて、吸引式実機帯電量測定器により帯電量及びトナー吸引量を測定した。
20,000枚印刷時のトナー帯電量(Q2)を連続印刷開始時のトナー帯電量(Q1)により除した値(Q2/Q1)を、帯電安定性の指標とした。この指標(Q2/Q1)が1に近いほど、トナー帯電量の変動が少ないことを意味し、トナーの帯電安定性が優れていることを意味する。
トナー吸引量をそのトナーの搬送量とみなした。20,000枚印刷時のトナー搬送量(M2)を測定開始時のトナー搬送量(M1)により除した値(M2/M1)を、搬送量安定性の指標とした。この指標(M2/M1)が1に近いほど、トナー搬送量の変動が少ないことを意味し、トナーの搬送量安定性が優れていることを意味する。
以下、表2を参照しながら、トナー評価結果について検討する。
表2より、比較例1のトナーは、個数平均粒径30nmのシリカdを含むトナーである。比較例1のトナーにおいては、外添剤における粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が1%である。
表2より、比較例1の印字耐久性の評価枚数は7,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.34と低い。特に、印字耐久性の評価枚数は、今回評価したトナー中最も少ない。また、帯電安定性(Q2/Q1)の値は、今回評価したトナー中最も低い。したがって、個数平均粒径が70nm未満の球形シリカ粒子を含み、かつ外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%を大きく下回る比較例1のトナーは、印字耐久性及び帯電安定性に劣ることが分かる。
表2より、比較例2の印字耐久性の評価枚数は10,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.48と低く、搬送量安定性(M2/M1)は2.04と高い。特に、搬送量安定性(M2/M1)の値は、今回評価したトナー中最も高い。したがって、個数平均粒径が70nm未満の球形シリカ粒子を含み、かつ外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例2のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも劣ることが分かる。
表2より、比較例3の印字耐久性の評価枚数は12,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.51と低く、搬送量安定性(M2/M1)は1.61と高い。したがって、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例3のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも劣ることが分かる。
表2より、比較例4の印字耐久性の評価枚数は14,000枚と少なく、帯電安定性(Q2/Q1)は0.64と低い。したがって、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%未満の比較例4のトナーは、印字耐久性及び帯電安定性にいずれも劣ることが分かる。
表2より、実施例1~実施例6、参考例7~参考例9の印字耐久性の評価枚数は20,000枚以上であり、帯電安定性(Q2/Q1)は0.72~0.99の範囲内に収まり、搬送量安定性(M2/M1)は0.95~1.58の範囲内に収まる。
したがって、球形シリカ粒子の個数平均粒径が70~200nmであり、かつ、外添剤中の粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上である実施例1~実施例6、参考例7~参考例9のトナーは、印字耐久性、帯電安定性及び搬送量安定性にいずれも優れるトナーであることが分かる。
Claims (7)
- 結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、
前記外添剤として、個数平均粒径が70~200nmである球形シリカ粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.7~4.5質量部、および、個数平均粒径が5~25nmである無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.01~0.4質量部含み、かつ、
前記外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナー。 - 前記外添剤の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.5~5.0質量部であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
- 前記外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
- 結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子を製造する工程、及び
前記着色樹脂粒子と外添剤とを混合して攪拌することにより、当該着色樹脂粒子の表面に当該外添剤を付着させる外添工程を含む静電荷像現像用正帯電性トナーの製造方法であって、
前記外添工程において、
前記外添剤として、個数平均粒径が70~200nmである球形シリカ粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.7~4.5質量部、および、個数平均粒径が5~25nmである無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子100質量部に対し0.01~0.4質量部含み、かつ、当該外添剤のSEM画像に基づき算出される当該外添剤の粒度分布において粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が75%以上であるものを用いることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナーの製造方法。 - 前記外添工程において、前記無機酸化物粒子を前記着色樹脂粒子に付着させ、当該無機酸化物粒子の付着した着色樹脂粒子に対しさらに前記球形シリカ粒子を付着させることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
- 前記外添剤の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、0.5~5.0質量部であることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
- 前記外添剤の粒度分布において、粒径が50nm以上の粒子の個数の割合が80%以上であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
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