JP7043678B1 - 多層シート - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性、多層共押出性、成形性、および接着性に優れる多層シートを実現する。【解決手段】本発明の一実施形態に係る多層シートは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A1)と、ポリオレフィンを含む基材層(B1)と、前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンとを含む接着層(C1)と、を備える多層シートであるか、または熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A2)と、ABS樹脂を含む基材層(B2)と、前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層(C2)と、を備える多層シートである。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用 公開者 日本プラスチック工業株式会社 (1)販売日 令和3年1月12日 販売した場所 サイデック株式会社(宮城県仙台市若林区卸町5丁目6番2号) (2) 販売日 令和3年1月13日 販売した場所 大和化学工業株式会社 広陵工場(奈良県北葛城郡広陵町南郷986番地1) (3) 販売日 令和3年2月5日 販売した場所 株式会社和田木型製作所 漆生工場(福岡県嘉麻市漆生1416番地33) (4) 販売日 令和3年3月23日 販売した場所 株式会社モリオカ 北工場(愛知県稲沢市平和町上三宅上屋敷114-2) (5) 販売日 令和3年4月22日 販売した場所 ヒロホー株式会社 尾道EIT工場(広島県尾道市長者ヶ原1丁目220-6) (6) 販売日 令和3年5月27日 販売した場所 株式会社ユーパック 亀山本社(三重県亀山市関町会下字山神谷1117番地12) (7) 販売日 令和3年6月4日 販売した場所 サンエイ株式会社 物流事業部安城工場(愛知県安城市根崎町長配60) 販売した場所 ヒロホー株式会社 デザインセンター(広島県廿日市市峠245-35佐伯工業団地) (8) 販売日 令和3年6月11日 販売した場所 株式会社モリオカ テクノベーションセンター(愛知県稲沢市平和町下三宅菱池904番地7) (9) 販売日 令和3年6月22日 販売した場所 宗和工業株式会社(愛知県瀬戸市美濃池町90番地) (10) 販売日 令和3年7月22日 販売した場所 加藤梱包株式会社 神東工場(兵庫県神戸市東灘区深江浜町153) (11) 販売日 令和3年9月1日 販売した場所 サトウパック株式会社 本社工場(岐阜県美濃市笠神1013) (12) 販売日 令和3年10月22日 販売した場所 株式会社ヨシザワ 新本社(三重県鈴鹿市三日市町1823番地の1) (13) 販売日 令和3年11月1日 販売した場所 サンエイ株式会社 営統事業部(愛知県豊橋市若松町字若松948)
本発明は、多層シートに関する。
例えば工場などの製造現場では、製品および部品等の重量物を運搬するためのトレイ、箱、仕切り板、パレット等の搬送部材が広く用いられている。搬送部材の材料としては、耐摩耗性が優れたポリオレフィンが広く使用されてきた。
しかし、ポリオレフィンについては、重量物、金属製部品等を運搬する場合、これらと接触する表面が切削されるという不具合が生じたため、さらに耐摩耗性の良い材料が望まれていた。
そこで、本発明者らは、基材層としてポリオレフィンを備え、基材層上に、メタロセン系ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、およびスチレン系熱可塑性エラストマー等を含む耐摩耗層を備えた積層体(多層シート)を開発した。このとき、前記ポリオレフィンとの接着性が良くない耐摩耗性の材料を耐摩耗層として使用する場合は、基材層と耐摩耗層とを接着する接着層を用いた。前記多層シートによって、前記不具合に対しては相応の効果を得た。
しかしながら、前記多層シートの耐摩耗性には、なお改善の余地があった。そのため、前記耐摩耗層よりもさらに耐摩耗性に優れた耐摩耗層を用いた多層シートを得ることが必要であった。
押出成形可能なプラスチックに含まれる材料としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、TPUとも称する)が耐摩耗性に大変優れていることが広く知られている。特許文献1の実施例には、耐摩耗層がTPUおよびワックスから構成されている多層シートが記載されている。特許文献1に記載の多層シートは、耐摩耗層がTPUを含むため、耐摩耗性に優れた多層シートであると考えられる。
特開2020-203385号公報
しかしながら、上述の従来技術は、耐摩耗層を他の層と共に均一に押出して多層化することが困難であるという課題があった。特に、メンテナンスが容易でかつ安価である金型を用いる場合に、当該課題は顕著であった。
また、TPUは加熱溶融する温度の範囲、および溶融から分解に至る温度の範囲が狭く、溶融領域内においても溶融粘度が大きく変化し、溶融後直ちにドローダウンする等の難成形性の樹脂である。
そのため、TPUのみの単層シートであれば、押出成形は比較的容易である。しかしながら、成形条件が異なり、溶融粘度が大きく異なるポリプロピレン(以下、PPとも称する)等のポリオレフィンまたはアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(以下、ABS樹脂とも称する)等とTPUとを多層共押出成形することは容易ではない。さらに、最適な成形条件および材料グレードを選定することにより、前記多層共押出成形を可能にしたとしても、製品の生産では管理しなければならない成形条件の範囲が狭く、成形条件をコントロールすることが難しいため、実用化が進んでいない。特に、TPU層においてシートの巾方向(シート押出方向に対して水平方向)の厚さが均一にならず、両サイドへ樹脂が偏るため、良好な製品化が難しいという問題がある。
そのため、従来技術は、多層共押出性および成形性を向上させるという観点からはさらなる改善の余地があった。また、近年、多層共押出性および成形性のみならず、従来技術よりもさらに各層間の接着性が優れた多層シートが求められている。
そこで、本発明の一態様は、耐摩耗性、多層共押出性、成形性、および接着性に優れる多層シートを実現することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、耐摩耗層にTPUおよびスチレン系エラストマー(以下、TPSとも称する)を配合することにより、TPUの成形性を改善させた。また、耐摩耗性を維持し、かつ良好な多層共押出性を得るために好適な配合比率をも見出した。さらに、プラスチックの粘性の指標となるメルトフロレート値(MFR)の数値を小さくさせるとともに、各層におけるMFR値を互いに近い数値へ調整した。これにより、各層の押出性のバランスを整えることができ、多層共押出性および成形性が向上することを見出した。
また、基材層と接着層とが共通する成分を含むようにすることによって層間の接着性を改良し得ることを見出した。さらに、基材層がABS樹脂を含む場合は、接着層にABS樹脂を含有させ、かつ、耐摩耗層の成分をも含有させることにより、強固な接着性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の構成を含む。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A1)と、
ポリオレフィンを含む基材層(B1)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンとを含む接着層(C1)と、
を備える多層シート、または
熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A2)と、
ABS樹脂を含む基材層(B2)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層(C2)と、
を備える多層シート。
本発明の一態様によれば、耐摩耗性、多層共押出性、成形性、および接着性に優れる多層シートを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る多層シートの層構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る多層シートの層構成を模式的に示す断面図である。
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.多層シート〕
本発明の一実施形態に係る多層シートは、以下に説明する特徴(a1~c1またはa2~c2)を有する。
<a1>熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A1)
<b1>ポリオレフィンを含む基材層(B1)
<c1>前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンとを含む接着層(C1)。
<a2>熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A2)
<b2>ABS樹脂を含む基材層(B2)
<c2>前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層(C2)。
多層シートは、上記a1~c1の特徴を有する場合、特に限定されないが、基材層(B1)の一方の表面に、接着層(C1)を介して耐摩耗層(A1)を有する、例えば図1に示す3層構成であってもよい。また、基材層(B1)の両方の表面に、接着層(C1)を介して耐摩耗層(A1)を有する、例えば図2に示す5層構成であってもよい。
同様に、多層シートは、上記a2~c2の特徴を有する場合、特に限定されないが、基材層(B2)の一方の表面に、接着層(C2)を介して耐摩耗層(A2)を有する、例えば図1に示す3層構成であってもよい。また、基材層(B2)の両方の表面に、接着層(C2)を介して耐摩耗層(A2)を有する、例えば図2に示す5層構成であってもよい。
多層シートを構成する各層の比率は、シート全体の厚さに対して、耐摩耗層、基材層および接着層の厚さの合計を100%としたときに、耐摩耗層が5~25%であり、基材層が70~85%であり、接着層が5~10%であることが好ましい。次に、各層の特徴について以下に説明する。
<2.1.耐摩耗層>
本願明細書において、耐摩耗層は、多層シートを構成する層のうち、少なくとも一つの最外層をなす層である。例えば図1に示す多層シートであれば、耐摩耗層は一つの最外層をなしており、図2に示す多層シートであれば、耐摩耗層は二つの最外層をなしている。
耐摩耗層(A1およびA2)は、TPUを含む。TPUとしては、例えば、ポリカプロラクトン系TPU、ポリカーボネート系TPU、ポリエーテル系TPU、ポリエステル系TPU等が挙げられる。
中でも、耐摩耗性に優れるという観点からは、ポリエステル系ポリウレタンを用いることが好ましい。また、多層シートを用いたトレイ等の成形品を洗浄し、再利用するという観点からは、耐摩耗性に優れることに加え加水分解性が少ないため、ポリエーテル系ポリウレタンを用いることが好ましい。よって、用途に応じて、適切なTPUを用いればよい。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗層(A1)が含むTPUと、耐摩耗層(A2)が含むTPUとは、同種であってもよいし、異種であってもよい。
耐摩耗層(A1およびA2)に含まれるTPSは、特に限定されない。TPSとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、耐摩耗層(A1)が含むTPSと、耐摩耗層(A2)が含むTPSとは、同種であってもよいし、異種であってもよい。
本発明の一実施形態に係る多層シートは、耐摩耗層にTPUおよびTPSを含む。そのため、実用に耐える十分な耐摩耗性を有し、かつ、ドローダウンを防いで良好な共押出性を実現することができる。
したがって、多層シートに対し、輸送時の多層シートの表面と車載重量部品等(金属等)との接触によるシートの切削等に対する十分な抵抗性を付与することができる。また、多層シートを構成する各層の厚さに偏りを生じさせることなく、均一に共押出させることができるため、幅方向における各層の厚みの偏りを改善することができる。特に、シート成形に用いられる共押出多層Tダイのマルチマニホールド方式のような複雑かつ高価な方法を用いずとも、安価な共押出多層Tダイのフィードブロック方式を用いることによって、均一な共押出を容易に実現することができる。
さらに、TPSは、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーはTPUとの相溶性が良いため、耐摩耗層を形成しやすくなるという利点を有する。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐摩耗性が比較的高く、高い引張強度、高いオイル保持力等を有するため、SEEPSを用いることがより好ましい。
耐摩耗層において、TPSの配合量の上限は、TPU100重量部に対して35重量部以下であることが好ましい。この上限は、例えば、30重量部、25重量部、または20重量部であってもよい。耐摩耗層において、TPSの配合量の下限は、TPU100重量部に対して5重量部以上であることが好ましい。この下限は、例えば、10重量部または15重量部であってもよい。
本発明者は、耐摩耗性においてTPUの配合量が多いと耐摩耗性は向上するが成形性が低下し、TPSが多いと耐摩耗性は低下するが成形性は向上することを見出した。本発明の一実施形態にかかる多層シートは、前記配合量の上限および下限を備えることにより、耐摩耗性と成形性(共押出時の押出性)とをバランスよく両立することができる。
耐摩耗層には、さらに添加物が含まれていてもよい。添加物としては、軟化剤(流動パラフィン)、改質剤、滑剤(ワックス)等が挙げられるが、これらに限定されない。前記添加物は、耐摩耗層の硬度の調整、成形性と外観とのバランスの調整などの目的に応じて、適宜用いることができる。また、埃付着を生じさせる静電気の発生を防止する目的で帯電防止剤(低分子系帯電防止剤、高分子系帯電防止剤等)、導電性材料(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)を添加することができる。
上記添加物が耐摩耗層に含まれる場合、添加剤の配合量は、耐摩耗層の総重量を100重量%としたときに5~25重量%であることが好ましい。
前記耐摩耗層は、JIS K 7215(1986)に基づいて測定したデュロメータA硬さが50~95であることが好ましい。前記デュロメータA硬さの上限は、95以下であることが好ましく、耐摩耗性の観点から、90以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。前記デュロメータA硬さの下限は、50以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましく、70以上であることがよりさらに好ましい。
本発明の一実施形態において、前記デュロメータA硬さは比較的低く、柔らかい方が好ましい。耐摩耗層のデュロメータA硬さが高いと表面の弾力性がなく、鋭利な金属等が当たった場合に削れが発生しやすい。しかし、耐摩耗層のデュロメータA硬さが低すぎる場合は、粘度が高くなりブロッキングが発生する可能性がある。そのため、前記デュロメータA硬さは50~95であることが好ましい。
デュロメータA硬さは、HARDMATIC HH-335(Type A)(ミツトヨ製)を使用し、JIS K 7215に基づいて測定することができる。
前記耐摩耗層は、メルトフローレイト(MFR)が0.10g/10分間以上であることが好ましく、0.50g/10分間以上であることがより好ましい。また、MFRは、15g/10分間以下であることが好ましく、10g/10分間以下であることがより好ましく、7g/10分間以下であることがさらに好ましい。なお、MFRは試験温度200℃、荷重5.00kgで測定する。
また、前記耐摩耗層は、試験温度190℃、荷重5.00kgでMFRを測定した場合に流出可能であり、試験温度220℃、荷重2.16kgでMFRを測定した場合に20g/10分間以下であることが好ましい。
この範囲のMFRを得る材料配合にすることで、巾方向に均一な押出が可能になり、また、過負荷状態での押し出しを回避し、ドローダウンをより効果的に防止することができる。また、前記基材層、および前記接着層のMFRは、前記したように耐摩耗層のMFRに近づけるよう調整することで、各層の押出成形のバランスが良好になり、多層シートの成形性を向上させることができる。
<2.2.基材層>
基材層(B1)は、ポリオレフィンを含む。基材層(B1)は、ポリオレフィンを主成分とすることが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン等の単独重合体、あるいはこれらを主成分とする共重合体等が挙げられるが、これらに限定されない。洗浄剤等の薬品に対する耐薬品性に優れ、かつ、比較的剛性が高いという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンがあるが、高剛性であるため、ホモポリプロピレンがより好ましい。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
基材層の主成分がポリオレフィンの場合、真空成型によく使用され、耐摩耗、耐薬品性に比較的優れる。前記「主成分」とは、基材層(B1)の重量を100重量%としたときに、ポリオレフィンが50重量%超含まれることを言う。基材層(B1)におけるポリオレフィンの割合は、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記割合は90重量%以下であることが好ましく、100重量%であってもよい。
基材層(B1)は、ポリオレフィン以外に、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリオレフィン、相溶化剤、タルク等のフィラー、SEBS等を含んでいてもよい。
LDPEを含むことにより、多層共押出成形性をより向上させることができる。また、相溶化剤を含むことにより、いわゆる目ヤニの防止性を高めることができる。さらに、フィラー、強化繊維等を含むことにより、基材層(B1)の剛性を向上させることができる。また、SEBSを含むことにより、接着層(C1)と基材層(B1)との接着性を強化することができる。
また、基材層(B1)は、結晶性樹脂を含んでいてもよい。結晶性樹脂としては、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
基材層(B2)は、ABS樹脂を含む。ABS樹脂はポリオレフィンよりも剛性に優れる。そのため、当該構成によれば、重量部品運搬用のトレイ等の製造に適した多層シートを提供することができる。
ABS樹脂としては、例えば、スチレンとアクリロニトリルとの共重合樹脂とポリブタジエンとの混合物;ポリブタジエンにスチレンおよびアクリロニトリルをグラフト重合したグラフト重合体;前記共重合樹脂と前記グラフト重合体とを溶融混合したもの;ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体と、前記共重合樹脂とを溶融混合したもの、等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、本明細書において、ABS樹脂には、ASA樹脂、ACS樹脂、AES樹脂等も含まれる。ASA樹脂とは、ABS樹脂のブタジエンゴムの代わりにアクリルゴムを重合させた樹脂である。ACS樹脂とは、ABS樹脂のブタジエンゴムの代わりに塩素化ポリエチレンを重合させた樹脂である。AES樹脂とは、ABS樹脂のブタジエンゴムの代わりにエチレンプロピレンゴム(EPDM)を重合させた樹脂である。
本発明に係る一実施形態においては、基材層の溶融粘度を耐摩耗層の溶融粘度に近づけるように、使用するABS樹脂を選定することが好ましい。
基材層(B2)は、ABS樹脂を主成分とすることが好ましい。前記「主成分」とは、基材層(B2)の重量を100重量%としたときに、ABS樹脂が50重量%超含まれることを言う。基材層(B2)におけるABS樹脂の割合は、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記割合は、100重量%であってもよい。
基材層(B2)は、ABS樹脂以外に、アクリルニトリルスチレン(AS)を含んでいてもよく、さらに、無機フィラー、強化繊維等を含んでいてもよい。これにより、基材層(B2)の剛性を向上させることができる。また、TPUおよび/またはTPSを含むことにより、接着層(C2)と基材層(B2)との接着性を強化することができる。
また、基材層(B2)は、他の非結晶性樹脂を含んでもよい。非結晶性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
基材層(B1)、および基材層(B2)の剛性向上のため添加し得る強化材としては、繊維状強化材としてガラス繊維、炭素繊維等がある。板状強化材としてマイカ、タルク、クレー、ガラスフレーク等がある。粒状強化材としてシリカや炭酸カルシウム、珪酸カルシウムなどの金属の酸化物、炭酸塩や硫酸塩、ガラスビーズ等の粉末、カーボンブラック等がある。また、基材層の樹脂はリサイクル材を用いても良い。
<2.3.接着層>
ポリオレフィンを含む基材層(B1)を使用する場合、ポリオレフィンは、耐摩耗層(A1)に含まれるTPUとは難接着性であるため、接着層(C1)が必要である。
接着層(C1)は、TPSと、ポリオレフィンとを含む。TPSとしては、例えば上述したものが挙げられる。接着層(C1)に含まれるTPSと、耐摩耗層(A1)に含まれるTPSとは、同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。TPSは、全部または一部が水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンと、ブタジエンもしくはイソプレン等とからなるブロック共重合体の二重結合部分を水素添加したポリマーである。
水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、基材層(B1)に含まれるポリオレフィンと、耐摩耗層(A1)に含まれるTPUとの接着性に優れているため、基材層(B1)と耐摩耗層(A1)との接着性を強化することができる。よって、TPSに占める水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの割合は高いほど好ましく、TPSの全部が水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであることが最も好ましい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば上述したものが挙げられる。
さらに、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの全部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィンとTPUとの接着性をさらに向上させる観点から、アミン変性させることが好ましい。
前記接着性の向上という観点からは、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーに占める、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの割合は高いほど好ましい。よって、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの全てがアミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであることが最も好ましい。
接着層(C1)にTPSを単独で使用した場合、多層化時に接着層の厚さが水平方向で偏在するという不具合が生じる。また、この場合、シートの両端部にはみ出すTPSのべたつきが大きく、TPSが冷却ロールに付着してしまうという不具合も生じる。接着層(C1)にTPSを配合するとともに、ポリオレフィンを配合することにより、基材層(B1)と耐摩耗層(A1)との接着性を向上させ、かつ、上記不具合を解消することができる。
接着層(C1)においてTPSおよび前記ポリオレフィンが占める割合は、接着力の観点から、接着層(C1)の重量を100重量%として、それぞれ30重量%以上70重量%以下であることが好ましく、40重量%以上60重量%以下であることがより好ましい。前記ポリオレフィンは、限定されるものではないが、基材層(B1)と耐摩耗層(A1)との接着性向上の観点から、基材層(B1)が含むポリオレフィンと同種であることが好ましい。例えば、当該ポリオレフィンがPPである場合、接着層(C1)が含むポリオレフィンもPPであることが好ましい。また、PPは、ホモPPであることがより好ましい。
さらに、接着層(C1)にポリオレフィン(PP等)を多く配合してTPS(アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)等)の配合率を減少させることによって、接着層(C1)が均一に押し出される。これにより、シート端部への接着層(C1)のはみ出しを低減し、良好な成形を達成することができる。また、TPSの配合比率が大きく低下させることにより、シート端部のスリット端材をリサイクル(基材層へのリターン)することが可能である。よって、コスト削減を図ることができる。
本発明者は、このような有効な効果が接着力を低減せずに実現できることを見出した。なお、本発明に係る一実施形態においては、接着層の溶融粘度(MFR)を耐摩耗層、および基材層の溶融粘度(MFR)に近づけるように、使用する配合樹脂を選定することが好ましい。
ポリオレフィンを含む基材層(B1)を使用する場合には、接着層(C1)に耐摩耗層(A1)を構成するTPUが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
接着層(C2)は、耐摩耗層(A2)に含まれる成分であるTPUおよびTPSならびにABS樹脂を含む。TPUとしては、例えば上述したものが挙げられる。TPSとしては、例えば上述したものが挙げられ、TPSは全部または一部が水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの一部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーは、一部が、酸変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
耐摩耗層(A2)に含まれるTPUおよびTPSと、接着層(C2)に含まれるTPUおよびTPSとは、限定されるものではないが、接着性向上の観点から、それぞれ同種のTPUおよびTPSを含むことが好ましい。また、同様の観点から、接着層(C2)に含まれるABS樹脂は、基材層(B2)に含まれるABS樹脂と同種類の樹脂であることが好ましい。
接着層(C2)には、耐摩耗層(A2)に含まれる成分であるTPUおよびTPSを配合するとともに、基材層(B2)に含まれる成分であるABS樹脂と、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてのSEBSとが配合されることが好ましい。これにより、層間の接着性および成形性を大きく向上させることができる。また、接着層(C2)の巾方向の厚みのバランスを向上させることができ、接着層(C2)を冷却ロールへ付着させることなく、シート端部のリサイクル(基材層へのリターン)も可能とすることができる。
〔3.多層シートの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る多層シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、共押出多層Tダイとしては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、マルチスロットルダイ方式等が挙げられる。フィードブロック方式は、安価であり金型の構造が比較的簡略でメンテナンスが容易であるため生産効率に優れてはいるが、フィードブロック内で各層の樹脂材料が合流するため、各層の厚さや巾方向の流れ等のコントロールに劣る。
一方、本発明の一実施形態に係る多層シートは、既に説明した構成を備えており、前述したように、安価なフィードブロック法であっても十分に均一な多層共押出を容易に実現することができるという利点を有する。
前記製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。すなわち、まず、必要な材料を混練造粒および混合することによって、耐摩耗層調製用の材料、接着層調製用の材料、および基材層調製用の材料をそれぞれ調製する。次に、調製した各材料を、それぞれ異なる押出機に供給し、各押出機の設定温度条件を、約130℃から金型先端へ向かって徐々に180℃~230℃程度まで上昇させた条件で混錬溶融させ均一にして各々押し出す。続いて、押し出された各層の材料を、190℃~220℃の温度条件にて、Tダイの直前に設けられたフィードブロック内で合流させてからTダイへ供給し、Tダイ内のシングルマニフォールドで拡幅して、基材層と耐摩耗層とが接着層によって接着された多層シートを得る。
〔4.用途〕
本発明の一実施形態に係る多層シートは、例えば、トレイ成形用、搬送ケースとその仕切り板、または搬送用のシートとして使用することができる。前記多層シートを有するトレイ成形用、搬送ケース、仕切り板、または搬送用のシートは、前記多層シートが既に説明した構成を備えるため、多層共押出性、成形性および接着性に優れ、かつ、優れた耐摩耗性を有する。そのため、真空成型方法、圧空成形方法、又は切削加工等により、所望の形状へ成形することが容易であり、かつ、金属等との接触に対しても優れた抵抗性を示すことができる。したがって、前記多層シートは、例えば工場などの製造現場で用いられる、製品および部品等の重量物を運搬するためのトレイ、箱、仕切り板、パレット等の搬送部材の製造に好適に用いることができる。
〔5.まとめ〕
本発明には、以下の態様が含まれる。
<1>
熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A1)と、
ポリオレフィンを含む基材層(B1)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンとを含む接着層(C1)と、
を備える多層シート。
<2>
熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A2)と、
ABS樹脂を含む基材層(B2)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層(C2)と、
を備える多層シート。
<3>
前記耐摩耗層は、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100重量部に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマーを5~35重量部含有する、<1>または<2>に記載の多層シート。
<4>
前記接着層(C1)および(C2)に含まれる前記スチレン系熱可塑性エラストマーの全部または一部が、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層シート。
<5>
前記接着層(C1)における前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの全部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、<4>に記載の多層シート。
<6>
前記接着層(C2)における前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの一部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、<4>に記載の多層シート。
<7>
前記耐摩耗層は、JIS K 7215(1986)に基づいて測定したデュロメータA硬さが50~95である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の多層シート。
<8>
前記耐摩耗層に含まれる前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の多層シート。
<9>
前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含む、<1>に記載の多層シート。
<10>
<1>~<9>のいずれか1つに記載の多層シートを有する、トレイ成形用または搬送用のシート。
以下に、本発明の具体的な実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
下記の構成材料を用いて、表1および2に示す組み合わせで、シート全体の厚さが0.8~2.0mmの多層シートを作製し、以下の評価方法で評価した。
〔実施例および比較例で用いた材料〕
・熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU):大日精化工業製のレザミンP
・スチレン系エラストマー(TPS):クラレ製のセプトンまたはハイブラー
・ポリプロピレン(PP):住友化学製のノーブレン
・低密度ポリエチレン(LDPE):住友化学製のスミカセン
・アミン変性水素添加スチレン系エラストマー(SEBS):旭化成製のタフテックMP10
・アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂:日本エイアンドエル製のクララスチック
・アクリロニトリルスチレン(AS):日本エイアンドエル製のライタック-A
〔多層シートの製造方法〕
実施例および比較例において、まず、耐摩耗層調製用の材料、接着層調製用の材料、および基材層調製用の材料をそれぞれ以下の方法で調製した。次に、前記各材料を、それぞれ異なる押出機(日立造船製、スクリュー径φ100、およびIKG製スクリュー径φ65)に供給し、約130℃から徐々に昇温して各々押し出した。押し出された各層の材料は、Tダイの直前に設けられたフィードブロック内で合流させてからTダイへ供給し、約190℃~220℃の条件でTダイ内のシングルマニフォールドで拡幅して、基材層と耐摩耗層とが接着層によって接着された多層シートを得た。
実施例1では、TPU100重量部に対しTPSを15重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で15重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、SEBSを50重量%、PPを50重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。さらに、PPを85重量%、LDPEを15重量%、その他の添加剤を適量配合することにより、基材層調製用の材料を調製した。
実施例2では、TPU100重量部に対しTPSを10重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で10重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、SEBSを40重量%、PPを60重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
実施例3では、TPU100重量部に対しTPSを20重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で20重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、SEBSを40重量%、PPを60重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
実施例4では、TPU100重量部に対しTPSを5重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で5重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、SEBSを70重量%、PPを30重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
実施例5では、TPU100重量部に対しTPSを25重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で25重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、SEBSを30重量%、PPを70重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
実施例6では、TPU100重量部に対しTPSを15重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で15重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。また、ABS樹脂を40重量%、TPUを20重量%、TPSを15重量%、SEBSを10重量%、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で15重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料としては、ABS樹脂のみを用いた。
実施例7では、TPU100重量部に対しTPSを20重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で20重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。接着層調製用の材料、および基材層調製用の材料は、実施例6と同じであった。
比較例1では、耐摩耗層調製用の材料にTPSを配合せず、TPUのみを用いた。また、SEBSを40重量%、PPを60重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
比較例2では、耐摩耗層調製用の材料は比較例1と同じであった。また、SEBSを50重量%、PPを50重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
比較例3では、TPU100重量部に対しTPSを55重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で40重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。接着層調製用の材料としては、SEBSのみを用いた。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
比較例4では、TPU100重量部に対しTPSを15重量部、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で15重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。接着層調製用の材料は、比較例3と同じであった。基材層調製用の材料は、実施例1と同じであった。
比較例5では、耐摩耗層調製用の材料は、比較例1と同じであった。接着層は設けず、基材層調製用の材料は実施例6と同じであった。
比較例6では、接着層を設けないこと以外は、実施例6と同じであった。
比較例7では、接着層調製材料としてSEBSのみを用いること以外は、実施例6と同じであった。
比較例8では、接着層調製材料としてTPUを40重量%、TPSを25重量%、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で35重量%配合すること以外は、実施例6と同じであった。
比較例9では、接着層調製材料としてABS樹脂を45重量%、TPUを25重量%、TPSを15重量%、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を合計で15重量%配合すること以外は、実施例6と同じであった。
比較例10では、耐摩耗層調製用の材料にTPSを配合せず、TPUのみを用いたこと以外は実施例6と同じであった。
〔評価方法〕
(多層共押出性)
多層シートを製造する際の積層性、ロールへの貼り付き、押出機への負荷などを総合評価した。
〇:巾方向、長さ方向、厚さ方向とも厚さ変動が無く、また各層の比率が全方向で均一に押出成形されている。また、外観も良好で合格である。
△:各方向の寸法変動、又は各層の比率に若干のバラ付きがある。外観が許容範囲ではあるが多少不具合がある。いずれも許容範囲で合格であるが、生産の安定性に欠ける。
×:各方向の寸法変動が多い。各層の流れが不均一である。ドローダウンが発生する。等の不具合があり不合格である。
(成形性)
シートを真空成型し、表層追従(耐摩耗層における穴開きの発生、および耐摩耗層の基材層からの剥離等の不具合)が発生していないかを目視で確認した。真空成型の方法は、シートを140℃~170℃にてドローダウンさせ、張り戻りした後、真空成型機に設置したトレイ形状の金型へあてがい、負圧状態で金型へ密着させ冷却して成形する方法である。
〇:耐摩耗層が基材層に密着し、成形品(トレイ)の絞り底面のコーナー部等に良く追従し一体化している。
△:耐摩耗層が基材層に密着し追従している。成形品のコーナー部等で若干の浮き上がりが発生するが許容の範囲である。
×:耐摩耗層が基材層に追従せず、穴開きが発生、又は剥離が生じている。
また、真空成型したシートを成形品(トレイ等)に重ね、シートと成形品との間でくっつき(ブロッキング)が発生していないかを目視で確認した。
〇:ブロッキング無く、重ねた成形品が容易に離れる。
×:ブロッキング有り、重ねた成形品がくっつき、剥がすのに手間がかかる。
(耐摩耗性)
耐摩耗性は、摩耗損失量の測定、および削り試験を行うことにより評価した。
摩耗損失量の測定は、安田精機製作所(株)製のテーバー摩耗試験機(型式:No.101)を用い、荷重:1000g、摩耗輪:CS-17、回転数:1000回転、試験片サイズ:100mm×100mmの条件で行った。
摩耗損失量が少ない程、耐摩耗性に優れていると言える。
削り試験は、試験治具(先端R1.5、先端角度75度の形状で、厚さ0.5mmのステンレス製)を用いて行った。試験治具の金具先端を30~45度の角度で耐摩耗層の平面へ強く押し当て、手前に引き戻すことで、表面に発生する削屑の有無目視で確認した。
〇:削屑の発生無し
×:削屑の発生有り
(シート端部の外観状況)
成形したシート端部に、耐摩耗層、又は接着層が巾方向に均一に押出されず、樹脂材料が偏ったり、はみ出す不具合がないか目視で確認した。
〇:問題無し
×:問題有り
(層間の接着性)
シート状態で切り込みを入れた後、切断端面から耐摩耗層をめくり、剥離が生じるかを確認した(剥がし評価)。
〇:剥離無し
×:剥離有り
突き刺し試験は、試験治具(先端R1.5、先端角度75度の形状で、厚さ0.5のステンレス製)を用いて行った。試験治具の金具先端を30~45度の角度でシート平面に強く押し当て、前方方向に平面へ突き刺すように移動させ、基材層からの耐摩耗層の剥離を目視で確認した(突き刺し評価)。
〇:剥離無し
×:剥離有り
(振動試験)
JIS Z 0232「包装貨物-振動試験方法」において、多層シートを3軸方向に振動させ、削れ粉の発生の有無を目視で確認した(削屑評価)。
〇:削れ粉の発生無し
×:削れ粉の発生有り
ポリオレフィンを基材層の主成分とする場合の評価結果を表1に示し、ABS樹脂を基材層の主成分とする場合の評価結果を表2示す。
Figure 0007043678000002
ポリオレフィンを基材層の主成分とする場合、実施例と比較例との比較により、耐摩耗層にTPUおよびTPSを配合することにより、多層共押出性、シート端部の外観状況、耐摩耗性、およびトレイ等の成形性が向上することが確認できた。また、接着層にポリオレフィンを配合することで、多層共押出性、シート端部の外観状況、およびトレイ等の成形性が向上した。さらに、耐摩耗層におけるTPSの配合比率が高すぎると、耐摩耗性が低下することが確認された。また、耐摩耗層におけるTPUの配合比率が高すぎると、多層共押出性、シート端部の外観状況が低下し、また、ブロッキングが発生してトレイ等の成形性が低下することが確認された。
Figure 0007043678000003
ABS樹脂を基材層の主成分とする場合、実施例6および7と、比較例9との比較により、接着層の主成分へのSEBSの添加が、多層共押出性には影響を与えないことが確認できた。そのため、実施例6および7において、比較例8と比較して多層共押出性が向上したが、これは、接着層の主成分へABS樹脂を添加したことによることが確認できた。
また、実施例6および7と、比較例9との比較により、接着層の主成分として、SEBSを添加することで、接着性が向上することが確認された。
さらに、実施例6および7と、比較例10との比較により、多層共押出性および耐摩耗性(削屑評価)が向上した。すなわち、耐摩耗層にTPSを配合することにより、多層共押出性および耐摩耗性が向上することが確認された。
本発明の一態様は、重量物の運搬容器(トレイ等)等に使用されるシートの分野で好適に利用することができる。
A:耐摩耗層
B:基材層
C:接着層

Claims (10)

  1. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A1)と、
    ポリオレフィンを含む基材層(B1)と、
    前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマーと、ポリオレフィンとを含む接着層(C1)と、
    を備える多層シート。
  2. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、耐摩耗層(A2)と、
    ABS樹脂を含む基材層(B2)と、
    前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層(C2)と、
    を備える多層シート。
  3. 前記耐摩耗層は、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100重量部に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマーを5~35重量部含有する、請求項1または2に記載の多層シート。
  4. 前記接着層(C1)および(C2)に含まれる前記スチレン系熱可塑性エラストマーの全部または一部が、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層シート。
  5. 前記接着層(C1)における前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの全部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項4に記載の多層シート。
  6. 前記接着層(C2)における前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーの一部が、アミン変性させた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項4に記載の多層シート。
  7. 前記耐摩耗層は、JIS K 7215(1986)に基づいて測定したデュロメータA硬さが50~95である、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層シート。
  8. 前記耐摩耗層に含まれる前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1~7のいずれか1項に記載の多層シート。
  9. 前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含む、請求項1に記載の多層シート。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の多層シートを有する、トレイ成形用または搬送用のシート。
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