JP7043071B2 - 電流測定装置およびインバータ - Google Patents
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Description
このインバータからの出力電流を監視する電流測定装置は、インバータからの出力線を一次側とし、二次側に抵抗を接続して、抵抗の電圧を測定することで、インバータからの出力線に流れる電流を測定するものである。
また、他の電流測定装置として、磁性体コアとホール素子を用いるものや、シャント抵抗での電圧降下を測定するものなどがある。
このような電流を測定する電流測定装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載の半導体スイッチ内の電流を測定する電流センサは、測定される電流が流れる導体を介して周りに位置する非磁性のトロイダルコアに巻回されたコイルと、トロイドを通過する導体を流れる電流の時間微分に比例するコイル巻線の開放端子間電圧に応じた電流を積分する積分器と、サイクルごとに一度積分器をリセットする制御回路とを備えたものである。
これは、コイル161と交錯する磁束の変化量が電圧に反映されるため、低い周波数では電圧の変化が少なく、出力電圧が小さい。このため電圧とノイズとの分離が原理的に困難であるためである。また、オペアンプで構成された積分器162では、キャパシタ放電抵抗とキャパシタの時定数以下の時定数の変化は計測できない。
空芯コイルからのターンオン時およびターンオフ時のピーク波形となる電流は、離散的で変動幅が大きいため、その代わりとして、近似値算出回路が近似値を算出して連続した電流値とすることで、インバータの出力電流の変化に応じた電流値とすることができる。
上アームと下アームとの電流の和の値がある値以上に変化した場合は、本発明の電流測定装置の各部品やインバータに故障が起こった場合と判断できるため、故障検出回路がそれぞれの積分回路からの出力の和を算出し、しきい値と比較することで、故障を検出することができる。また、上アームまたは下アームにおける、ターンオン時およびターンオフ時の積分回路の出力の差が、ある範囲を超えて急に大きくなった場合に、短絡電流等の大電流が、上アームまたは下アームに流れている可能性がある。そのため、故障検出回路にて、それぞれの積分回路からの出力値の差を算出し、しきい値と比較することで、故障を検出することができる。
11 第1アーム
12 第2アーム
13 第3アーム
111,121,131 上アーム
112,122,132 下アーム
14 制御部
20 電流測定装置
21,22 空芯コイル
23 測定回路
231 積分回路
232 近似値算出回路
233 リプル成分算出回路
234 故障検出回路
235,236,237,238 補正回路
BT 電池
MT 三相交流モータ
LH 電源線
LL グランド線
L1 第1配線
L2 第2配線
L3 第3配線
iu,iv,iw 出力電流
vu1,vu2,vv1,vv2,vw1,vw2 誘導起電力
i_low,i_high 電流
Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2 ゲート信号
Suout,Svout,Swout 信号
Xw1avg,Xw2avg 信号
tn,tn-2 ターンオフ時
tn-1,tn+1 ターンオン時
Xn,Xn-1,Xn-2,Xn+1,Xon,Xoff 電流値
Loff,Lon 直線
Xrip リプル成分
Xw1rip,Xw2rip 信号
t0 第1タイミング
t1 第2タイミング
本発明の実施の形態1に係る電流測定装置およびインバータを図面に基づいて説明する。
図1に示すインバータ10は、電池BTからの直流を交流に変換して三相交流モータMTを駆動するものである。
インバータ10は、各相の電流を出力する3つのアームである第1アーム11から第3アーム13が、電池BTからの一方の電源線(電池BTの正極側の電源線LH)と他方の電源線(電池BTの負極側のグランド線LL)との間に、並列に接続されている。
第1アーム11から第3アーム13は、上アーム111,121,131と下アーム112,122,132とが、直列に接続されている。
制御部14は、電流測定装置20からの信号Suout,Svout,Swoutに基づいて、第1アーム11から第3アーム13のスイッチング信号となるゲート信号Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を制御して、各アーム11~13の第3配線L3からの出力電流iu,iv,iwの電流値および周波数を調整する。
電流測定装置20は、電源線LHと上アーム111~131との間の第1配線L1と、グランド線LLと下アーム112~132との間の第2配線L2との両方の配線をそれぞれに取り囲む一対の空芯コイル21,22を各相に備えている。本実施の形態1では、空芯コイル21,22として、ロゴスキーコイルを使用している。
積分回路231は、演算増幅器を積分器として機能させてアナログ処理としたり、AD変換してデジタル処理としたりすることができる。デジタル処理する場合には、空芯コイル21,22からの波形の面積を求める演算回路とすることで、演算回路を積分演算させることができる。
故障検出回路234は、差動入力の演算増幅器を使用することができる。
インバータ10の制御部14が、第1アーム11から第3アーム13のスイッチング素子のオン状態とオフ状態を切り替えるゲート信号Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を出力する。上アーム111~131のスイッチング素子がオン状態、下アーム112~132のスイッチング素子がオフ状態のときに、上アーム111~131に電流i_highが流れ、上アーム111~131のスイッチング素子がオフ状態、下アーム112~132のスイッチング素子がオン状態のときに、電流i_lowが流れる。
電流i_highと電流i_lowとの合成電流により、出力電流iu,iv、iwが三相交流となって、インバータ10から三相交流モータMTへ出力される。図2Aに示すように、出力電流iu,iv、iw(i_out)は、電流i_highと電流i_lowとを合成した電流であるため、鋸刃状の波形となり、擬似的な正弦波となる。
この電流i_lowは、スイッチング素子がオン状態からオフ状態(ターンオフ時)となると電流が遮断され、流れなくなる。オフ状態からオン状態(ターンオン時)になると、急激に電流i_lowが流れ始めた後に、図2Bでは、徐々に増加して、オフ状態となるときより多くの電流が流れ、再びオフ状態となり電流が遮断される。
しかし、この誘導起電力の波形は、下アーム132のスイッチングの遅れや、空芯コイル22が不完全微分回路であるため、振幅が無限で幅が0の波形とならず、ターンオフ時およびターンオン時に急激に変化する、振幅が有限で、幅を有するピーク波形となる。
インバータ回路などの電力変換器は、負荷がモータの巻き線などの場合が多い。そのため、電流値が急激に変化しない。従って、積分回路231からの波形に対して絶対値を取り、直線近似を行うことにより、電流値への変換が可能である。
この場合はピーク同士を直線で結んでいるが、ノイズ除去のためにピークから所定時間経過時の絶対値を直線で近似するようにしてもよい。
この所定時間は、ターンオン時であれば、上アームおよび下アームの逆回復期間(リバースリカバリ期間)とすることができる。また、ターンオフ時であれば、上アームおよび下アームにおけるフォール期間後のテール期間とすることができる。また、所定時間は、ピーク波形への影響を考慮して、任意に設定することができる。
このように近似値算出回路232が、離散的で変動幅が大きいピーク値の代わりとして、直線近似により連続した電流値とすることで、出力電流iu,iv,iw(図1参照)の変化に応じた電流値とすることができる。
図3に示すように、近似値算出回路232は、まず、最初に現れるターンオフ時tn-2の電流値Xn-2を保持する。次に現れるターンオン時tn-1の電流値Xn-1は、図2Dに示すようにマイナス値であるため、近似値算出回路232が絶対値を取ると、プラス値となる。そして、近似値算出回路232は、ターンオン時tn-1まで保持された電流値Xn-2とターンオン時tn-1の電流値Xn-1との平均を算出する。この平均値が、次のターンオフ時tnまでの出力電流iu,iv,iwの近似電流値となる。
ターンオン時に想定される電流値とは、図4に示すように連続するターンオフ時tn-2とtnと、その時のそれぞれの電流値Xn-2,Xnとから、直線Loffの方程式を求め、この方程式から求められたターンオン時tn-1の電流値Xonである。
同様に、ターンオフ時に想定される電流値とは、連続するターンオン時tn-1とtn+1と、その時のそれぞれの電流値Xn-1,Xn+1とから、直線Lonの方程式を求め、この方程式から求められたターンオフ時tnの電流値Xoffである。
このようにして、リプル成分算出回路233は、リプル成分Xripを求め、第3アーム13の上アーム131側のリプル成分を信号Xw1ripとし、下アーム132側のリプル成分を信号Xw2ripとしてインバータ10へ出力する。
従って、故障検出回路234にて、一対の空芯コイル21,22に接続されたそれぞれの積分回路231からの出力値の和から、ノイズ成分をフィルタ等で除去し、その値をモニタし、予め設定されたしきい値と比較し、しきい値以上か否かを判断することによって故障を検出することができる。
従って、故障検出回路234にて、一対の空芯コイル21,22に接続されたそれぞれの積分回路231からの出力値の差をモニタし、予め設定されたしきい値と比較し、しきい値以上か否かを判断することによって故障を検出することができる。
以上のように構成することで、上アームと下アームに個別に判断回路を設ける必要が無く、簡単な構成で故障を検出できる。
また、本実施の形態1では、上アーム111~131用と、下アーム112~132用にそれぞれ空芯コイル21,22を装着しているが、電流測定装置に故障検出回路234を備えなければ、空芯コイル21,22はいずれか一方でもよい。
本発明の実施の形態2に係る電流測定装置を図面に基づいて説明する。
本実施の形態2に係る電流測定装置では、積分回路の後段に、補正回路が接続されている。図5では、第3アームの下アーム132用の空芯コイル21に接続された積分回路231の出力に接続された補正回路235を示しているが、本実施の形態2に係る電流測定装置では、各上アーム用、各下アーム用として、この補正回路235が積分回路231の出力に接続されている。以下、第1アーム11~第3アーム13を代表して、下アーム132を例に説明する。
しかし、この図6Bのピーク波形を微視的にみると、バイアスが掛かっている場合がある。そうなると、ピーク波形のピーク値にバイアスが加算されるため、本来のピーク値が正確に測定できず、近似値算出回路232での平均電流の算出や、リプル成分算出回路233でのリプル成分の算出に支障が生じるおそれがある。
補正回路235は、ターンオン時とターンオフ時とをゲート信号Sw2により判断する。
本発明の実施の形態3に係る電流測定装置を図面に基づいて説明する。
図7に示すように、本実施の形態3に係る電流測定装置では、実施の形態2と同様に、積分回路231の後段に、補正回路236が接続されている。
この補正回路236は、図8A~図8Cに示すように、上アームおよび下アームのターンオン時の直後の出力差を算出するときに、上アームおよび下アームの逆回復期間(リバースリカバリ期間)trrを待ってから積分回路231からの出力値の測定を行う。例えば、スイッチングが始まってから逆回復期間trrが終了するまでの期間を、上アームおよび下アームをIGBTとすれば、耐圧1000Vあたり500nsとすることができる。例えば、耐圧2000VのIGBTであれば補正回路236は、直後としての積分回路231からの出力値の測定を1μs後とすることができる。
なお、図8Cにおいては、便宜上、波形の上下を反転させて示している。
従って、補正回路236が、ターンオン時の直後における測定を、逆回復期間trr後とすることで、オーバーシュートによる影響を排除することができる。
また、ターンオン時の出力値とすることによって、測定する2つの時点の間隔を最短とすることができるので、正確な測定が可能である。
本発明の実施の形態4に係る電流測定装置を図面に基づいて説明する。
図9に示すように、本実施の形態4に係る電流測定装置では、実施の形態2と同様に、積分回路231の後段に、補正回路237が接続されている。
この補正回路237は、図10A~図10Cに示すように、上アームおよび下アームのターンオフ時の直後の出力差を算出するときに、上アームおよび下アームにおけるフォール期間tfall後のテール期間ttailを待ってから積分回路231からの出力値の測定を行う。例えば、スイッチング開始からテール期間ttailを終了までの期間を、上アームおよび下アームをIGBTとすれば、耐圧1000Vあたり500nsとすることができる。
このとき、ターンオン時およびターンオフ時の直前の値は、実施の形態3と同様に、ターンオフ時とすることができる。
本発明の実施の形態5に係る電流測定装置を図面に基づいて説明する。
図11に示すように、本実施の形態5に係る電流測定装置では、実施の形態2と同様に、積分回路231の後段に、補正回路238が接続されている。
この補正回路238は、積分回路231からの出力波形の一定期間を積算し、その積算した値を積算期間で割ることで平均化するというものである。
この図12Aに示す電流の波形からスイッチング周期(ターンオンから次のターンオン、またはターンオフから次のターンオフまでの期間)を切り出し拡大したものが図12Bである。図12Bでは、下アーム132に流れる電流i_lowを実線、下アーム132の両端の電圧を点線で示している。
図12Cでは、図12Bに示すターンオン時およびターンオフ時を拡大した波形である。
図12Dでは、この電流i_lowを空芯コイル22により微分し、不完全積分回路である積分回路231によって積分したときの波形である。ターンオン時およびターンオフ時にピークとなり、その後に減衰する尖鋭な波形となる。図12Eは、図12DのD部を拡大した図である。
ここで、第1タイミングt0は、補正回路238が、電圧値をAD変換してメモリにデジタル値を格納して演算するものであれば、出力波形が立ち上がったタイミングとすることができる。また、補正回路238がアナログ回路により構成されたものであれば、出力波形の立ち上がりを検出したタイミングとすることができる。
スイッチング時間≦積分時間(t1-t0)≦スイッチング周期・・・(6)
なお、図12Eにおいては、波形がオーバーシュートした状態を図示しているが、図8Cと同様に、便宜上、波形の上下を反転させて示している。
Claims (8)
- 電源からの一方の電源線と他方の電源線との間に直列接続された上アームおよび下アームを備えたインバータからの出力電流を検知する電流測定装置であって、
前記一方の電源線と前記上アームとの間の第1配線、または前記他方の電源線と前記下アームとの間の第2配線のいずれか一方を取り囲む空芯コイル、または両方の配線をそれぞれに取り囲む一対の空芯コイルと、
前記空芯コイルからの出力を積分する積分回路と、
前記積分回路からの出力であって、前記上アームまたは前記下アームのターンオン時の出力およびターンオフ時の出力の絶対値を取り、ピークから、ターンオン時であれば逆回復期間経過時点、ターンオフ時であればフォール期間あとのテール期間経過時点の絶対値を結ぶことにより直線近似を行う近似値算出回路とを備えた電流測定装置。 - 前記積分回路からの電流値に基づいて算出されたターンオン時に想定される電流値であり、連続するターンオフ時と、その時のそれぞれの電流値とによる座標から直線の方程式を求め、この方程式から求められたターンオン時の電流値と、前記積分回路からのターンオン時の実際の電流値との差、または前記積分回路からの電流値に基づいて算出されたターンオフ時に想定される電流値であり、連続するターンオン時と、その時のそれぞれの電流値とから直線の方程式を求め、この方程式から求められたターンオフ時の電流値と、前記積分回路からのターオフ時の実際の電流値との差のいずれか一方、または両方を算出するリプル成分算出回路を備えた請求項1記載の電流測定装置。
- 前記一対の空芯コイルに接続されたそれぞれの前記積分回路からの出力の和および/または差を算出し、しきい値と比較して、前記空芯コイル、前記積分回路または前記インバータの故障を検出する故障検出回路を備えた請求項1記載の電流測定装置。
- 前記積分回路からの出力であって、前記上アームまたは前記下アームのいずれか一方、または両方における、ターンオン時またはターンオフ時からピーク時直前までの出力と、ピーク値を含む直後の出力の差を算出して、前記近似値算出回路への出力とする補正回路を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の電流測定装置。
- 前記積分回路からの出力であって、前記上アームまたは前記下アームのいずれか一方、または両方における、ターンオン時からピーク時直前までの出力と、逆回復期間が終了したときの出力の差を算出して、前記近似値算出回路への出力とする補正回路を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の電流測定装置。
- 前記積分回路からの出力であって、前記上アームまたは前記下アームのいずれか一方、または両方における、ターンオフ時からピーク時直前までの出力と、フォール期間あとのテール期間後の出力との差を算出して、前記近似値算出回路への出力とする補正回路を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の電流測定装置。
- 前記積分回路からの出力であって、前記上アームまたは前記下アームのいずれか一方、または両方における、ターンオン時またはターンオフ時からピーク時直前までを第1タイミング、逆回復期間経過時からのスイッチング周期であり、ターンオンから次のターンオン、またはターンオフから次のターンオフまでのスイッチング周期の終わりまでの間のタイミングを第2タイミングとしたときの、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの出力を積算し、平均化して、前記近似値算出回路への出力とする補正回路を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の電流測定装置。
- 前記請求項1から7のいずれかの項に記載の電流測定装置の積分回路からの出力信号と、前記上アーム、または前記下アームのスイッチング信号とにより、前記出力電流が流れ出る方向、または前記出力電流が流れ込む方向のいずれかを判定する制御部を備えたインバータ。
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