JP7039374B2 - 低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒 - Google Patents
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Description
金属炭酸塩は、MgCO3、CaCO3、BaCO3、MnCO3などから添加され、アーク中で分解してCO2ガスを発生して溶融プール及び溶融スラグを大気から保護して溶接金属の靭性を確保するとともに、アークの吹き付けを強くしてピットの発生を防止する効果がある。金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が5%未満であると、シールド効果が不足して溶接金属の靭性が低下するとともに、アークの吹付けが弱くなってピットが発生しやすくなる。一方、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が15%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。したがって、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計は5~15%とする。
金属弗化物は、CaF2、MgF2、BaF2、AlF3、Na3AlF6、NaF、LiFなどから2種以上にわたり添加され、溶融スラグの流動性を調整してビード形状を良好にする効果がある。金属弗化物の2種以上の合計が3%未満では、溶融スラグの流動性が悪くビード形状が凸状となる。一方、金属弗化物の2種以上の合計が8%を超えると、溶融スラグの流動性が著しく高くなりビードの下脚側が膨らんだ形状となり、またヒューム発生量も多くなる。したがって、金属弗化物の2種以上の合計は3~8%とする。
金属弗化物中のNaFは、アークの吹付けを強くする効果が高く、ウォッシュプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接であってもピットの発生を防ぐことができる。金属弗化物中のNaFが0.2%未満であると、十分なアークの吹付けが得られず、ウォッシュプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接ではピットの発生を防止することができない。一方、金属弗化物中のNaFが1.5%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。したがって、金属弗化物中のNaFは0.2~1.5%とする。
Ti酸化物は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイトなどから添加され、アーク安定剤及びスラグ生成剤として作用し、アークを安定にしてスパッタ発生量を少なくし、スラグ被包性及びビード形状を良好にする効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。またTi酸化物のTiO2換算値の合計が8%未満では、スラグ量が不足し、スラグ被包性が悪くなってビード形状が不良になる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が18%を超えると、スラグ量が過多となってスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は8~18%とする。
Si酸化物は、珪砂、長石、水ガラスなどから添加され、スラグ剥離性の改善とビード形状を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が10%未満では、スラグ剥離性及びビード形状が不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が20%を超えると、スラグの粘性が高くなってビード表面をスラグが均一に被包できずビード形状が不良になる。またSi酸化物のSiO2換算値の合計が20%を超えると、溶融プール中のガスが放出されにくくなり、ピットが発生しやすくなる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値の合計は10~20%とする。
Al酸化物は、アルミナ、長石などから添加され、溶融スラグの粘度を調整するとともに、スラグ剥離性を改善する効果がある。Al酸化物のAl2O3換算値の合計が1.5%未満では、スラグ剥離性が悪く、溶融スラグの粘度が低くなってビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が4.0%を超えると、スラグがガラス状となりスラグ剥離性が悪く、溶融スラグの粘度が高くなってビード形状が不良になる。したがって、Al酸化物のAl2O3換算値の合計は1.5~4.0%とする。
Fe酸化物は、FeO、Fe2O3などから添加され、溶融スラグの流動性を調整してスラグ被包性を良好にしてビード形状を改善する効果がある。Fe酸化物のFeO換算値の合計が0.5%未満では、溶融スラグの流動性が悪くなってスラグ被包性が悪くビード形状が不良になる。一方、Fe酸化物のFeO換算値の合計が2.0%を超えると、スラグ量が過多となりスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値の合計は0.5~2.0%とする。
MgOは、マグネシアクリンカーなどから添加され、スラグ剥離性及びビード形状を良好にする効果がある。MgOが6%以下では、その効果が得られず、スラグ剥離性及びビード形状が不良になる。一方、MgOが10%を超えると、スラグ量が過多となってスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、MgOは6%超~10%とする。
Siは、金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mnなどの合金粉などから添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の靭性を向上させるとともに、ピットの発生を防止する効果がある。Siが0.5%未満では、脱酸不足となって溶接金属の靭性が低下するとともに、ピットが発生しやすくなる。一方、Siが2.0%を超えると、溶接金属の粒界に低融点酸化物が析出して靭性が低下する。したがって、Siは0.5~2.0%とする。
Mnは、金属Mn、Fe-Mn、Fe-Si-Mnなどの合金粉などから添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の強度及び靭性を向上させるとともに、ピットの発生を防止する効果がある。Mnが5%未満では、脱酸不足となって溶接金属の強度及び靭性が低下するとともに、ピットが発生しやすくなる。一方、Mnが10%を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、Mnは5~10%とする。
Niは、金属Ni、Fe-Niなどの合金粉などから添加され、溶接金属の強度及び靭性を向上させる効果がある。Niが0.3%未満では、必要な溶接金属の強度及び靭性が得られない。一方、Niが2.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、Niは0.3~2.0%とする。
鉄粉は、アーク状態をソフトにする効果を有する。鉄粉が25%未満では、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。一方、鉄粉が45%を超えると、アークの吹付けが弱くなり、ピットが発生しやすくなる。したがって、鉄粉は25~45%とする。
Na酸化物及びK酸化物は、水ガラス中の珪酸ソーダ及び珪酸カリウム、カリ長石、カリガラス及びソーダ長石などから添加され、特にアークを安定にしてスパッタ発生量を少なくする効果がある。またNa酸化物及びK酸化物は、被覆アーク溶接棒を生産する際、塗布剤の粘度を調整して乾燥時の被覆割れを防止して生産性を向上する効果もある。Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が2%未満では、生産時に被覆割れが生じやすくなる。また、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が6%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなるとともに、ヒューム発生量も多くなる。したがって、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は2~6%とする。
Claims (1)
- 鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒において、
前記被覆剤は、当該被覆剤全質量に対する質量%で、
金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5~15%、
金属弗化物の2種以上の合計:3~8%、
前記金属弗化物中のNaF:0.2~1.5%、
Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8~18%、
Si酸化物のSiO2換算値の合計:10~20%、
Al酸化物のAl2O3換算値の合計:1.5~4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.5~2.0%、
MgO:6%超~10%、
Si:0.5~2.0%、
Mn:5~10%、
Ni:0.3~2.0%、
鉄粉:25~45%、
Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:2~6%を含有し、
残部は、塗布剤、鉄合金からのFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒。
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