JP7035279B2 - 含水型耐熱性チョコレート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の好ましい一態様によれば、前記含水材の添加により、チョコレートに水が0.1~5.0質量%、好ましくは0.3~3.0質量%加配してなるチョコレートを提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記チョコレートが、テンパリング型あるいはノンテンパリング型であるチョコレートを提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、20℃のヘキサン浸漬後、20分以上経っても型崩れが起きないチョコレートを提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、融液状のチョコレートに、果糖を60質量%以上含む糖組成の水性組成物(以下、この組成物を「含水材」という。)を添加する工程を含む、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、さらに続いて、冷却固化工程、及び、保温処理工程を含み、前記保温処理工程における処理時間が従来よりも短くなることを特徴とする製造方法を提供することができる。
本発明において「チョコレート」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)又は法規上の規定等により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等)の一部又は全部を経て製造されたものを指す。また、本発明におけるチョコレートは、ミルクチョコレートのほか、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等も含む。なお、本発明のチョコレートは、テンパータイプであっても、非テンパータイプであってもどちらでもよい。
本発明における「チョコレート生地」とは、融液状態のチョコレートを意味する。すなわち、常法に従い、上記チョコレートの原材料である、油脂、ショ糖及び粉乳等の混合、ロールリファイニング等による微粒化、必要に応じてコンチング処理等を行って製造する溶融状態のチョコレートを意味する。しかし、固形状態のチョコレートを加熱して溶融し、融液状としてもよい。コンチング処理を行う場合、コンチング処理における加熱は、チョコレートの風味を損なわないように、40~60℃で行うことが好ましい。なお、本発明の製造方法において、工程と処理とは、同じ意味として使用している。なお、後述の含水材は、好ましくは、微粒化処理を経ているチョコレート生地に添加される。
水添加工程における融液状態にあるチョコレート生地の温度は、30~70℃であることが好ましく、35~60℃であることがより好ましく、32~50℃であることが更に好ましい。水添加工程において添加される水の量(以下、「添加する水の全体量」ということもある)は、通常の含水型耐熱性チョコレートにおいて使用される量でよく、特に限定されないが、融液状態のチョコレート生地に対して0.1~5.0質量%であることが好ましい。水の添加量が融液状態のチョコレート生地に対して0.1質量%以上であると、糖骨格が十分に形成され、耐熱性に優れたチョコレートが得られる。他方、水の添加量が融液状態のチョコレート生地に対して5.0質量%以下であると、微生物汚染のリスクを抑制できる。水の添加量は、融液状態のチョコレート生地に対して、0.3~3.0質量%であってもよく、さらに0.5~2.5質量%であってもよい。水はチョコレート生地の粘度に多大な影響を与えるため、1.0~1.5質量%であることが殊更好ましい。本発明において、「添加する水の全体量」とは、前述のような範囲となるために必要な水の量の総計であり、例えば、100gのチョコレート生地に対して、1gとなるように水を添加する場合、「添加する水の全体量」は1質量%と計算される。なお、本発明において、水が添加された前記チョコレート生地のことを「含水チョコレート生地」という。
本発明の含水型耐熱性チョコレートの製造方法において、上記水添加工程の前後のどちらかで、テンパリング処理もしくはシーディング処理を行ってもよい。
本発明におけるチョコレート生地は、上記水添加工程後、融液状態のチョコレート生地を10分以上、生地温度を32~40℃、好ましくは34~39℃、さらに好ましくは35~39℃、最も好ましくは37~39℃に保持してもよい。これにより、チョコレート生地中に分散した水の温度を高め、チョコレート生地中に分散する砂糖や乳糖等への水の親和性を高めて糖骨格の形成を促進できる。その結果、チョコレート生地の粘度の上昇を効果的に抑制しつつ、チョコレートの保形性を向上させることができる。
水添加工程を経た融液状態のチョコレート生地は、冷却固化してもよく、この工程により、融液状態から固形の成型されたチョコレートを効率的に製造できる。
本発明の製造方法においては、上記冷却固化後のチョコレートを、さらに保温処理する、保温処理工程を設けることが好ましい。保温処理とは、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは24~36℃、より好ましくは26℃~34℃、さらに好ましくは28~32℃において、好ましくは30分~6日間、より好ましくは3時間~4日間、さらに好ましくは3時間~3日間、最も好ましくは6時間~2日間保温する処理である。保温処理により、チョコレート中に形成された糖骨格をより強固なものとすることができる。
本発明の特徴の1つは、糖組成の60質量%以上が果糖である含水材を用いると、この保温処理工程に要する時間が著しく短くなることである。比較のために述べると、従来の含水材を使用した一般的な保温処理の時間は、本発明の含水材を使用した場合の約2倍である。従来の含水材を使用した一般的な保温処理は、以下のとおりである。
一般的な保温処理とは、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは24~36℃、より好ましくは26℃~34℃、さらに好ましくは28~32℃において、好ましくは1時間~12日間、より好ましくは6時間~8日間、さらに好ましくは6時間~6日間、最も好ましくは12時間~4日間保温する処理である。
また、得られた含水型耐熱性チョコレートに糖骨格が形成されているかどうかは、n-ヘキサンへの浸漬テストを行い、少なくとも20分間、チョコレートの形状が保たれていることを確認することで特定できる。n-ヘキサンの浸漬テストにおいて、本発明のチョコレートは好ましくは2時間以上、より好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上形状が保たれていることが好ましい。なお、n-ヘキサンへの浸漬テストについては、特許文献3に詳しく記載されている。
このように含水材の中に果糖が多く含まれていることにより、従来よりも短い時間の保温処理工程で、耐熱性を強化することができる。本発明の保温処理工程における具体的な温度と時間は、上記「保温処理工程」で説明したのと同様である。また、本発明の効果を別の視点で捉えれば、含水材の中に果糖が多く含まれていることによる糖骨格の強度を高めることができる(糖骨格強度を向上する方法を提供できる)。また、本発明の効果を別の視点で捉えれば、含水材の中に果糖が多く含まれていることにより、含水材の添加量(水の添加量)を低減しても、従来の含水材と同程度の耐熱性を保持できるので、水添加装置の簡略化や水の分散性の向上が図れる。
チョコレートの主原材料として、以下のものを使用した。
・全脂粉乳(よつ葉乳業株式会社、商品名:全脂粉乳)
・脱脂粉乳(よつ葉乳業株式会社、商品名:脱脂粉乳)
・粉糖(株式会社徳倉製、商品名:POWDER SUGAR)
・ココアバター(大東カカオ株式会社製、商品名:TCココアバター)
・カカオマス(大東カカオ株式会社製、商品名:カカオマス QM-P)
・香料(小川香料株式会社製、商品名:バニラ香料)
・レシチン(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:レシチンDX)
・PGPR(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、太陽化学株式会社製)
水性組成物として、以下の市販の液糖を使用した。
・ニューフラクト55(水分25質量%、日本コーンスターチ株式会社製果糖ブドウ糖糖液)
・ハイフラクトS95C(水分25質量%、日本コーンスターチ株式会社製高果糖糖液)
表2に記載した液糖A~Dは、使用前に、ニューフラクト55とハイフラクトS95Cをガラス瓶の中で適当な比率でブレンドし、20~30℃の室温の環境下においてスターラー(アズワン社製マルチスターラーM-1)を用いて、各液糖が全体に均質になるように30分間撹拌して調製した。
35℃で2時間静置した含水型耐熱性チョコレート(上面が縦16mm、横35mmであり、下面が縦20mm、横38mmであり、厚さが6mmの立体形状)を、レオメーター(英弘精機社製)を用いて測定した。ここで言う耐荷重応力とは、レオメーターは侵入速度を0.33mm/secに設定し、直径3mmの円筒状のプランジャーが、測定サンプルに3mm侵入するまでの最大応力のことを指す。
35℃で2時間静置した含水型耐熱性チョコレートの状態を熟練した技術者による官能評価により評価した。当該生地に指を押し付け、以下の基準により評価した。
○:指にチョコレートがほとんど付着していない
△:指にチョコレートが少し付着する
×:指に溶融したチョコレートがべっとりと付着する
以下表1の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行い、温度が35℃の融液状態にあるチョコレート生地(油脂含有量(油分)33.0質量%)を調製した。このチョコレート生地100質量%に対して、表2の各種液糖(水分25質量%)を用意し、4質量%(水としては対チョコレート生地1質量%)になるように添加し、撹拌分散させた。なお、液糖を滴下中、チョコレート生地は公知の攪拌機を用いて63rpmで攪拌した。また、液糖の添加が完了してから20分経過時点で、サンプリングをおこない、速やかにモールドに充填し、冷却工程によって成型をおこなった。その後、保温処理工程を28℃で48時間および96時間おこない供試した。耐荷重応力(単位はgf(重量グラム))および付着性に関する結果を表3にまとめた。なお、液糖Aを用いた含水型耐熱性チョコレートは比較例1であり、液糖B、C、Dを用いた含水型耐熱性チョコレートが実施例1~3である。
このように、果糖が多く含まれる含水材(液糖B~D)をチョコレートに添加することで、従来技術の液糖(液糖A)を使用した場合よりも、より短い時間で保温処理工程を終えることができ(例えば、通常96時間必要であるところ、48時間で終えることができ)、より工程全体にかかる時間を短かくして、含水型耐熱性チョコレートを簡便に製造できることが証明できた。
また、同じ時間の保温処理工程であっても、果糖が多く含まれる含水材(液糖B~D)をチョコレートに添加することで、耐荷重応力の高い含水型耐熱性チョコレートを得ることができるので、暑熱環境下における衝撃に対する保形性や、喫食行動に対する可搬性の向上等も期待できる。
上記と同様の温度が35℃の融液状態にあるチョコレート生地(油脂含有量(油分)33.0質量%)100質量%に対して、液糖Dを3質量%(水としては対チョコレート生地0.75質量%)になるように添加し、撹拌分散させた。なお、液糖を滴下中、チョコレート生地は公知の攪拌機を用いて63rpmで攪拌した。また、液糖の添加が完了してから20分経過時点で、サンプリングをおこない、速やかにモールドに充填し、冷却工程によって成型をおこなった。その後、保温処理工程を28℃で48時間および96時間おこない供試した。耐荷重応力(単位はgf(重量グラム))および付着性に関する結果を表4にまとめた。なお、参考のため比較例1(液糖Aを4質量%、水としては対チョコレート生地1質量%)の結果を併記した。
このように、果糖が多く含まれる含水材を使用することで、含水材添加設備の小型化と融液状態のチョコレート生地への水の分散の効率化が図れる。
〇:元の形状が完全に残っている
△:元の形状の一部が崩れている
×:ネット上に残渣が残っている程度に崩れているか、全て落下している。
Claims (3)
- 融液状のチョコレートに、果糖を60質量%以上含む糖組成の水性組成物(以下、この組成物を「含水材」という。)を添加する工程を含む、連続相が油脂である含水型耐熱性チョコレートの製造方法。
- 前記含水材の添加により、チョコレートに水が0.1~5.0質量%加配される、請求項1に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。
- 前記含水材の添加工程に続いて、冷却固化工程、及び、保温処理工程を含む、請求項1または2に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。
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