以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1~図16を参照して、本発明の第1実施形態によるX線位相差撮像システム100の構成について説明する。
(X線位相差撮像システムの構成)
図1に示すように、X線位相差撮像システム100は、被写体Tを通過したX線の位相差を利用して、被写体Tの内部を画像化する装置である。また、X線位相差撮像システム100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体Tの内部を画像化する装置である。X線位相差撮像システム100は、たとえば、非破壊検査用途では、物体としての被写体Tの内部の画像化に用いることが可能である。また、X線位相差撮像システム100は、たとえば、医療用途では、生体としての被写体Tの内部の画像化に用いることが可能である。
図1は、X線位相差撮像システム100を上から見た図である。図1に示すように、X線位相差撮像システム100は、X線源1と、第3格子2と、第1格子3と、第2格子4と、検出器5と、格子位置ずれ取得部6と、調整機構制御部7と、調整機構8とを備えている。なお、本明細書において、X線源1から第3格子2に向かう方向をZ方向とする。また、Z方向と直交する面内の左右方向をX方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をY方向とする。なお、X方向とは、特許請求の範囲の「X線の光軸方向と直行する水平方向」の一例である。また、Y方向とは、特許請求の範囲の「X線の光軸方向と直交する垂直方向」の一例である。また、Z方向とは、特許請求の範囲の「X線の光軸方向」の一例である。
X線源1は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させるとともに、発生されたX線をZ方向に向けて照射するように構成されている。
第3格子2はX方向に所定の周期(ピッチ)p0で配列される複数のX線透過部2aおよびX線吸収部2bを有している。各X線透過部2aおよびX線吸収部2bはY方向に延びるように構成されている。
第3格子2は、X線源1と第1格子3との間に設置されており、X線源1からX線が照射される。第3格子2は、各X線透過部2aを通過したX線を、各X線透過部2aの位置に対応する線光源とするように構成されている。これにより、第3格子2は、X線源1から照射されるX線の可干渉性を高めることが可能である。
第1格子3は、X方向に所定の周期(ピッチ)p1で配列される複数のスリット3aおよび、X線位相変化部3bを有している。各スリット3aおよびX線位相変化部3bはそれぞれ、Y方向に延びるように形成されている。
第1格子3は、第3格子2と、第2格子4との間に設置されており、第3格子2を通過したX線が照射される。第1格子3は、タルボ効果により、自己像30を形成するために設けられている。可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像30)が形成される。これをタルボ効果という。
第2格子4は、X方向に所定の周期(ピッチ)p2で配列される複数のX線透過部4aおよびX線吸収部4bとを有する。第3格子2、第1格子3、第2格子4はそれぞれ異なる役割を持つ格子であるが、X線透過部2a、スリット3aおよびX線透過部4aはそれぞれX線を透過させる。また、X線吸収部2bおよびX線吸収部4bはそれぞれX線を遮蔽する役割を担っており、X線位相変化部3bはスリット3aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる。
第2格子4は、第1格子3と検出器5との間に配置されており、第1格子3を通過したX線が照射される。また、第2格子4は、第1格子3からタルボ距離離れた位置に配置される。第2格子4は、第1格子3の自己像30と干渉して、検出器5の検出表面上にモアレ縞12(図6(A)参照)を形成する。
検出器5は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器5は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器5は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器5は、取得した画像信号を、格子位置ずれ取得部6に出力するように構成されている。
格子位置ずれ取得部6は、図2に示すように、制御部9と、画像処理部10と、ノイズ除去処理部11とを含んでいる。制御部9は、検出器5から出力された画像信号をフーリエ変換し、フーリエ変換画像14(図9参照)を生成するように構成されている。また、制御部9は、第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得し、調整機構制御部7に出力するように構成されている。
画像処理部10は、制御部9で生成されたフーリエ変換画像14における、ピーク間の距離や、ピークの大きさを取得するように構成されている。なお、ピークの大きさとは、フーリエ変換画像14におけるピークの大きさのことであり、フーリエ変換後の周波数ピークの分散度合によって決まる。また、ピークの大きさは、フーリエ変換後の周波数ピークの最大振幅から所定の振幅までの周波数ピークの横幅で決定される。第1実施形態では、所定の振幅は、最大振幅の50%までの周波数ピークの横幅(いわゆる半値幅)をピークの大きさとしている。また、ノイズ除去処理部11は、検出器5で検出した画像から、フーリエ変換を行う前に周波数ノイズを除去するように構成されている。具体的には、ノイズ除去処理部11は、窓関数によるフィルタリング、ダーク補正、ゲイン補正および欠損補正のうち、いずれか1つまたは複数を行うように構成されている。第1実施形態では、ノイズ除去処理部11は、全てのフィルタリングおよび補正を行うように構成されている。
なお、窓関数によるフィルタリングとは、取得した画像の実データに対して、特定の窓関数をかけて境界の不連続性を取り除く処理である。これにより、フーリエ変換後の画像から有限空間の解析によるアーティファクト(虚像)を除去することができる。特定の窓関数とは、たとえば、ハニング関数やハミング関数である。
また、ダーク補正とは、X線を照射しない状態で撮影した画像(ダーク画像)を、X線を照射して撮影した画像から減算する処理である。これにより、フーリエ変換後の画像から検出器5に由来するアーティファクト(虚像)を除去することができる。
また、ゲイン補正とは、格子を置かずにX線を照射して撮影した画像(エア画像)を、格子を置いて撮影した画像から除算する処理である。これにより、フーリエ変換後の画像から検出器5に由来するアーティファクト(虚像)を除去することができる。
また、欠損補正とは、検出器5の感度が著しく低下した欠損箇所について、周囲の画素との平均化処理などにより、その部分を補正する処理である。これにより、フーリエ変換後の画像から検出器5に由来するアーティファクト(虚像)を除去することができる。
制御部9およびノイズ除去処理部11は、たとえば、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、画像処理部10は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)を含む。
調整機構制御部7は、格子位置ずれ取得部6から出力された第1格子3または第2格子4の位置ずれに基づいて、第1格子3または第2格子4の位置ずれを補正する信号を調整機構8に出力するように構成されている。調整機構制御部7は、たとえば、CPUを含む。
調整機構8は、調整機構制御部7から出力された位置ずれを補正する信号に基づいて、第1格子3または第2格子4の位置ずれを補正するように構成されている。
次に、図3および図4を参照して、調整機構8が第1格子3または第2格子4の位置ずれを調整する構成について説明する。ここで、第1格子3または第2格子4の位置ずれには、図3に示すように、主に、Z方向の位置ずれ、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれおよびY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれがある。
図4に示すように、調整機構8は、基台部80と、ステージ支持部81と、格子を乗せるステージ82と、第1駆動部83と、第2駆動部84と、第3駆動部85と、第4駆動部86と、第5駆動部87とを含む。第1~第5駆動部は、たとえば、それぞれモータなどを含む。また、ステージ82は、連結部82aと、Z方向軸周り回動部82bと、X軸方向周り回動部82cとによって構成されている。
第1駆動部83、第2駆動部84および第3駆動部85は、それぞれ、基台部80の上面に設けられている。第1駆動部83は、ステージ支持部81をZ方向に往復移動させるように構成されている。また、第2駆動部84は、ステージ支持部81をY軸方向周りに回動させるように構成されている。また、第3駆動部85は、ステージ支持部81をX方向に往復移動させるように構成されている。ステージ支持部81は、ステージ82の連結部82aと接続しており、ステージ支持部81の移動に伴って、ステージ82も移動する。
また、第4駆動部86は、Z方向軸周り回動部82bをX方向に往復移動させるように構成されている。Z方向軸周り回動部82bは、底面が連結部82aに向けて凸曲面状に形成されており、X方向に往復移動されることにより、ステージ82をZ方向の中心軸線周りに回動するように構成されている。また、第5駆動部87は、X軸方向周り回動部82cをZ方向に往復移動させるように構成されている。X軸方向周り回動部82cは、底面がZ方向軸周り回動部82bに向けて凸曲面状に形成されており、Z方向に往復移動されることにより、ステージ82をX方向の中心軸線周りに回動するように構成されている。
したがって、調整機構8は、第1駆動部83によって、格子をZ方向に調整可能に構成されている。また、調整機構8は、第2駆動部84によって、格子をY軸方向周りの回転方向(Ry方向)に調整可能に構成されている。また、調整機構8は、第3駆動部85によって、格子をX方向に調整可能に構成されている。また、調整機構8は、第4駆動部86によって、格子をZ方向軸周りの回転方向(Rz方向)に調整可能に構成されている。また、調整機構8は、第5駆動部87によって、格子をX軸方向周りの回転方向(Rx方向)に調整可能に構成されている。各軸方向の往復移動は、たとえば、それぞれ数mmである。また、X軸方向周りの回転方向Rx、Y軸方向周りの回転方向RyおよびZ方向軸周りの回転方向Rzの回動可能角度は、たとえば、それぞれ数度である。
(格子位置ずれの調整方法)
次に図5~図16を参照して、第1実施形態におけるX線位相差撮像システム100が第1格子3または第2格子4の位置ずれを調整する構成について説明する。
まずは、図5および図6を参照して、第1実施形態におけるX線位相差撮像システム100が格子を調整する方法の全体の流れを説明する。
ステップS1において、検出器5は、第1格子3の自己像30と第2格子4との画像を取得する。ステップS1では、被写体Tを配置せずに画像の取得を行う。ここで、第1格子3および第2格子4の相対位置が、設計された位置と異なっている場合、意図しないモアレ縞12(図6(A)参照)が発生する。
次に、ステップS2において、ノイズ除去処理部11は、ステップS1で取得した画像から、周波数成分ノイズを除去する。すなわち、ノイズ除去処理部11は、窓関数によるフィルタリング、ダーク補正、ゲイン補正および欠損補正を行う。
次に、ステップS3において、制御部9は、ステップS2でノイズ除去処理を行った画像を2次元フーリエ変換し、フーリエ変換画像14(図10参照)を生成する。
次に、ステップS4において、画像処理部10は、フーリエ変換画像14において、0次ピーク15(図10参照)と1次ピーク16(図10参照)との間の距離および、1次ピーク16の大きさを取得する。ここで、0次ピーク15とは、画像中の低周波数成分に由来するピークである。また、1次ピーク16とは、第1格子3の自己像30と第2格子4との位置ずれによって発生する意図しないモアレ縞12の周波数成分に由来するピークである。
次に、ステップS5において、制御部9は、1次ピーク16の大きさに基づいて、格子の位置ずれを取得する。格子の位置ずれがない場合、ステップS6に進む。格子の位置ずれがある場合、ステップS7に進む。
ステップS6において、制御部9は、0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離に基づいて、格子の位置ずれを取得する。格子の位置ずれがない場合、ここで処理を終了する。格子の位置ずれがある場合、ステップS7に進む。
ステップS7において、制御部9は、調整機構制御部7に格子の位置ずれを補正する信号を出力する。そして、調整機構制御部7は、格子の位置ずれを補正する信号に基づいて、調整機構8を介して第1格子3または第2格子4の位置ずれを調整する。その後、ステップS1に進む。
なお、第1実施形態では、X線位相差撮像システム100は、格子位置ずれ取得部6が取得した格子の位置ずれに基づいて、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれおよびY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれを調整するように構成されている。その後、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれおよびZ方向における位置ずれを調整するように構成されている。
第1実施形態では、X線位相差撮像システム100は、第1格子3または第2格子4の位置ずれ量(σx、σyおよびdx、dy)が閾値(th1およびth2)以下になるまで、ステップS1~ステップS7を繰り返すように構成されている。
図6(A)は、格子の位置ずれが存在する場合の画像の例を示す図である。また、図6(B)は、格子の位置ずれを調整した後の例を示す図である。格子の位置ずれを調整する前は、図6(A)に示すように、第1格子3の自己像30と第2格子4とにより、取得画像に意図しないモアレ縞12が発生している。この場合、格子の位置ずれを調整することにより、図6(B)に示すように、取得画像から意図しないモアレ縞12が除去される。
(第1格子または第2格子の位置ずれの取得)
次に、図1、図3および図7~図16を参照して、第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得する構成について説明する。
<Z方向の位置ずれの取得>
まず、図1および図7~図10を参照して、第1実施形態における格子位置ずれ取得部6が第1格子3または第2格子4のZ方向における位置ずれを取得する構成について説明する。
第1実施形態において、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14において、0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離に基づいて、Z方向における第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。
ここで、図1に示すように、第1格子3と第2格子4とのZ方向の距離が、タルボ距離(ZT)となるように第1格子3および第2格子4を配置した場合、第1格子3の自己像30の周期p3と、第2格子4の周期p2とは等しくなる。そのため、意図しないモアレ縞は発生しない。
しかし、図7および図8に示すように、第1格子3と第2格子4とのZ方向の距離がタルボ距離(ZT)からずれた場合、第1格子3の自己像30の周期p3が変化する。そのため、第1格子3の自己像30の周期p3と第2格子4の周期p2との周期差により、モアレ縞12a(図9参照)が観測される。
図9に示すように、第1格子3に位置ずれがない(ΔZ1が0である)場合、第1格子3の自己像30aの周期p3と第2格子4の周期p2とが等しくなるため、取得画像にモアレ縞12aは形成されない。また、第1格子3に位置ずれがない(ΔZ1が0である)場合、フーリエ変換画像14aには0次ピーク15aのみが検出される。また、モアレ縞画像13aにおいて、第1格子3が正常位置(第1格子3と第2格子4との距離がタルボ距離ZTである位置)から離れる(ΔZ1の絶対値が大きくなる)につれてモアレ縞12aの周期が細かくなる。また、フーリエ変換画像14aにおいて、第1格子3が正常位置(第1格子3と第2格子4との距離がタルボ距離ZTである位置)から離れる(ΔZ1の絶対値が大きくなる)につれて0次ピーク15aと1次ピーク16aとの間の距離dxが大きくなる。なお、図9および図10における第1格子3の位置ずれ量ΔZ1の単位は、「mm(ミリメートル)」である。
図10は、第1格子3のZ方向における位置ずれ量ΔZ1が0.50mmの場合におけるフーリエ変換画像14aの拡大図の例である。dxは、0次ピーク15aと1次ピーク16aとの間のX方向の距離である。第1実施形態では、格子位置ずれ取得部6は、0次ピーク15aと1次ピーク16aとの間の距離dxに基づいて、Z方向における第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。以下、格子位置ずれ取得部6が、第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得する詳細な構成について説明する。
図6に示すように、第1格子3がZ方向にΔZ1だけずれた場合、第1格子3の自己像30aの周期p3は、以下の式(1)により表される。
この時、検出器5の検出面では、自己像30aと第2格子4の周期差によって、X方向に振動するモアレ縞12aが観測される。このモアレ縞12aの周期pmxは、以下の式(2)により表される。
一方、モアレ縞画像13aをフーリエ変換した時の1次ピーク16aのX方向の位置(0次ピーク15aとの間の距離)をdxとすると、モアレ縞12aの周期pmxとは、以下の式(3)に示す関係がある。
ここで、Nxは取得画像のX方向の画素数である。また、sxは、検出器5のX方向の画素サイズである。
上記式(2)および式(3)からpmxを消去すると、以下の式(4)が得られる。
ここで、第2格子4の周期p2は、位置ずれがない(ΔZ1=0である)場合の自己像30aの周期p3と等しくなるため、以下の式(5)により表される。
上記式(4)に上記式(1)および式(5)を代入すると、以下の式(6)が得られる。
上記式(6)を変形すると、以下の式(7)が得られる。
上記式(7)から分かるように、第1格子3のZ方向の位置ずれ量ΔZ1は、dxを計測することで算出することができる。
一方、図8に示すように、第2格子4がZ方向にΔZ2だけずれている場合、第1格子3の自己像30aの周期p3は、以下の式(8)で表される。
第2格子4の周期p2は、上記式(5)であるため、上記式(4)に上記式(5)および式(8)を代入することにより、以下の式(9)が得られる。
上記式(9)を変形すると、以下の式(10)が得られる。
上記式(10)から分かるように、第2格子4のZ方向の位置ずれ量ΔZ2も、第1格子3のZ方向の位置ずれ量ΔZ1と同様に、dxを計測することにより算出することができる。そして、制御部9は、第1格子3のZ方向の位置ずれ量ΔZ1または第2格子4のZ方向の位置ずれ量ΔZ2を位置ずれを補正する信号として調整機構制御部7に出力する。
<Z方向軸周りの回転方向における位置ずれの取得>
次に、図3、図11および図12を参照して、第1実施形態における格子位置ずれ取得部6が、第1格子3のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれを取得する構成について説明する。なお、図11および図12の第1格子3のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz1の単位は「度」である。
第1実施形態において、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14bに基づいて、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。なお、Z方向軸周りの回転方向Rzとは、特許請求の範囲の「X線の光軸方向周りの回転方向」の一例である。
図3に示すように、第1格子3および第2格子4がZ方向軸周りの回転方向Rzにおいて位置ずれがない場合、第1格子3の自己像30の周期方向と、第2格子4の周期方向とが一致するため、意図しないモアレ縞12は観測されない。しかし、第1格子3がΔRz1ずれた場合、図11の例に示すように、自己像30bも傾いて形成されるため、観測されるモアレ縞12bは、Y方向に形成される。また、ΔRz1の絶対値が大きくなるにつれて、モアレ縞12bの周期が細かくなり、得られるフーリエ変換画像14bの0次ピーク15bと1次ピーク16bとの間のY方向の距離dyが大きくなる。なお、図11は第1格子3のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz1が1.2度の例である。また、図11において、1次ピーク16bがX方向にずれているのは、第1格子3および第2格子4のZ方向における位置ずれを調整する前に、第1格子3および第2格子4のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれを調整するように構成されているからである。
第1格子3がZ方向軸周りの回転方向RzにおいてΔRz1だけ位置がずれた場合に発生するモアレ縞12bの周期pmyは、ΔRz1が0に近い場合、以下の式(11)で表される。
一方、フーリエ変換画像14bの1次ピーク16bのY方向の位置(0次ピーク15bとの距離)dyと、モアレ縞12bの周期pmyとには、以下の式(12)に示す関係がある。
ここで、Nyは、取得画像のY方向の画素である。また、syは、検出器5のY方向の画素サイズである。
上記式(11)および式(12)から、pmyを消去すると、以下の式(13)が得られる。
上記式(13)を変形すると、以下の式(14)が得られる。
上記式(14)より、第1格子3のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz1は、dyに比例することが分かる。なお、ΔRz1の単位は、ラジアンである。
また、第2格子4がZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれを起こしている場合の位置ずれ量ΔRz2は、第1格子3と第2格子4との相対的な回転ずれであるため、ΔRz1と等しく、以下の式(15)によって表される。なお、ΔRz2の単位は、ラジアンである。
上記式(15)から分かるように、第2格子4のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz2もdyに比例している。したがって、第1格子3および第2格子4のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれは、dyを計測することで算出することができる。そして、制御部9は、第1格子3のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz1または第2格子4のZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRz2を、位置ずれを補正する信号として調整機構制御部7に出力する。
<X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれの取得>
次に、図3、図13および図14を参照して、第1実施形態における格子位置ずれ取得部6が、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれを取得する構成について説明する。なお、図13および図14における第1格子3のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量ΔRx1の単位は「度」である。
第1実施形態において、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14cにおいて、1次ピーク16cの大きさに基づいて、第1格子3または第2格子4のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。
図3に示すように、第1格子3および第2格子4がX方向の中心軸線回りの回転方向Rxにおいて位置ずれがない場合、検出面における第1格子3の自己像30の周波数と、第2格子4の周波数とが一致するため、意図しないモアレ縞12は観測されない。しかし、第1格子3がX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置がずれている場合、第1格子3の拡大率が変化し、検出面の上下で周波数の異なる自己像30cが形成される。この際、図13の例に示すようなモアレ縞12cが生じる。第1格子3のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量ΔRx1が大きくなるにつれて、発生するモアレ縞12cの歪みも大きくなる。
第1格子3がX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置がずれている場合、観測されるモアレ縞12cは、上下左右に歪んだ形状となり、X方向およびY方向に複数の周波数成分を含んだ強度分布となる。したがって、図14の例に示すように、フーリエ変換画像14cの1次ピーク16cは、X方向およびY方向に広がる。また、ΔRx1の絶対値が大きくなるにつれて、1次ピーク16cのX方向およびY方向の広がりが大きくなる。したがって、第1格子3のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量ΔRx1と、1次ピーク16cのX方向の大きさσxおよび1次ピーク16cのY方向の大きさσyとには相関関係がある。
このように、1次ピーク16の大きさに基づいて位置ずれを取得することは、1次ピーク16を構成する周波数成分の分散の大きさに基づいて格子の位置ずれを取得することと言い換えてもよい。
また、第2格子4がX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置がずれている場合も、第1格子3と第2格子4との相対的な回転ずれは第1格子3がずれている場合と同様なので、第2格子4がX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにずれている場合のずれ量ΔRx2もΔRx1と同様に、1次ピーク16cのX方向の大きさσxおよび1次ピーク16cのY方向の大きさσyと相関関係がある。なお、図14は、第1格子3のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量ΔRx1が1.4度の場合の例である。また、図13において、1次ピーク16cがX方向にずれているのは、第1格子3および第2格子4のZ方向における位置ずれを調整する前に、第1格子3および第2格子4のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれを調整するように構成されているからである。
<Y方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれの取得>
次に、図3、図15および図16を参照して、第1実施形態における、格子位置ずれ取得部6がY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれを取得する構成について説明する。なお、図15および図16において、第1格子3のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量ΔRy1の単位は「度」である。
第1実施形態において、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14dにおいて、1次ピーク16dの大きさに基づいて、第1格子3または第2格子4のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける第1格子3または第2格子4位置ずれを取得するように構成されている。
図3に示すように、第1格子3および第2格子4がY方向の中心軸線回りの回転方向Ryにおいて位置ずれがない場合、検出面における第1格子3の自己像30の周波数と、第2格子4の周波数とが一致するため、意図しないモアレ縞12は観測されない。しかし、第1格子3のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置がずれている場合、第1格子3の拡大率が変化して、検出面の左右で周波数が異なる自己像30dが形成される。この自己像30dと第2格子4と干渉によって生じるモアレ縞12dは、左右に歪んだ形状となり、X方向に複数の周波数成分を含んだ強度分布となる。したがって、第1格子3のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置がずれている場合、図16に示すように、フーリエ変換画像14dの1次ピーク16dがX方向に広がる。ΔRy1の絶対値が大きくなるにつれて、1次ピーク16dのX方向の広がりが大きくなる。すなわち、第1格子3のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量ΔRy1は、フーリエ変換画像14dの1次ピーク16dのX方向の大きさσxと相関関係がある。
また、第2格子4がY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれを有する場合も、第1格子3と第2格子4との相対的な回転ずれは第1格子3がずれている場合と同様なので、第2格子4がY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにずれている場合のずれ量ΔRy2もΔRy1と同様に、1次ピーク16dのX方向の大きさσxと相関関係がある。なお、図16は、第1格子3のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量ΔRy1が1.0度の場合の例である。また、図15および図16において、1次ピーク16dがX方向にずれているのは、第1格子3および第2格子4のZ方向における位置ずれを調整する前に、第1格子3および第2格子4のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれを調整するように構成されているからである。
上述したZ方向の位置ずれ、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれおよびY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれと、フーリエ変換画像14における0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx、dy)およびフーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)とには、以下に示す式(16)~式(19)の関係があることが分かる。
第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14における0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx、dy)に基づいて、格子の位置ずれの大きさを取得するように構成されている。また、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)に基づいて、格子の位置ずれの有無を取得するように構成されている。
ここで、第1実施形態では、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14のピーク間の距離(dx、dy)に基づいて、Z方向における格子の位置ずれ量ΔZおよびZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRzを取得することができる。しかし、第1実施形態では、格子位置ずれ取得部6は、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量およびY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量を直接算出することはできない。そこで、第1実施形態では、格子位置ずれ取得部6は、第1格子3または第2格子4のどちらか一方を一方向に回動させて撮像した複数のフーリエ変換画像14に基づいて、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)が最小値または最小値近傍となる回動量を位置ずれ量として取得するように構成されている。なお、1次ピーク16の大きさ(σx、σy)が最小値近傍となる回動量とは、第1格子3または第2格子4のどちらか一方を一方向に回動させて複数回撮影したフーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)が、所定の閾値th1以下となる範囲の回動量である。
格子位置ずれ取得部6は、格子の位置ずれ量として、Z方向における格子の位置ずれ量ΔZを調整機構制御部7に出力する。また、格子位置ずれ取得部6は、格子の位置ずれ量として、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRzを調整機構制御部7に出力する。また、格子位置ずれ取得部6は、格子の位置ずれ量として、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量(フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy))が最小値または所定の閾値th1以下の最小値近傍となる第1格子3または第2格子4の回動量を調整機構制御部7に出力する。また、格子位置ずれ取得部6は、格子の位置ずれ量として、Y方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量(フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx))が最小値または所定の閾値th1以下の最小値近傍となる第1格子3または第2格子4の回転量を調整機構制御部7に出力する。
第1実施形態では、X線位相差撮像システム100は、第1格子3または第2格子4の位置ずれが所定の閾値(th1、th2)以下になるまで格子の位置ずれを調整するように構成されている。すなわち、X線位相差撮像システム100は、X方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける位置ずれ量(フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy))が所定の閾値th1以下になるまで格子の調整を行うように構成されている。また、X線位相差撮像システム100は、Y方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける位置ずれ量(フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx))が所定の閾値th1以下になるまで格子の調整を行うように構成されている。また、X線位相差撮像システム100は、Z方向における格子の位置ずれ量ΔZが所定の閾値th2以下になるように格子の調整を行うように構成されている。また、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRzが所定の閾値th2以下になるように格子の調整を行うように構成されている。なお、第1実施形態では、Z方向における格子の位置ずれ量ΔZおよびZ方向軸周りの回転方向Rzにおける位置ずれ量ΔRzは、直接算出することが可能である。したがって、X線位相差撮像システム100は、所定の閾値th2がほぼ0となる位置に格子を調整するように構成されている。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、X線位相差撮像システム100は、X線源1と、X線源1から照射されたX線を検出する検出器5と、X線源1と検出器5との間に配置され、X線源1からX線が照射されて自己像30を形成するための第1格子3と第1格子3を通過したX線が照射され第1格子3の自己像30との干渉縞12を形成するための第2格子4とを含む複数の格子と、検出器5で検出された干渉縞画像13に対するフーリエ変換によって得られたフーリエ変換画像14に基づいて格子の位置ずれを取得する格子位置ずれ取得部6とを備える。ここで、第1格子3および第2格子4の相対位置が設計位置からずれていると、意図しないモアレ縞12が発生する。したがって、フーリエ変換画像14おいて、第1格子3の自己像30に起因するピーク(0次ピーク15)のほかに、意図しないモアレ縞12に起因するピーク(1次ピーク16)が発生する。これにより、格子位置ずれ取得部6がフーリエ変換画像14に基づいて格子の位置ずれを取得するので、得られた格子の位置ずれに基づいて、格子の位置調整を行うことができる。したがって、測定者の知識や経験に依存することなく格子の位置のずれを調整することが可能であるとともに、調整時間の短縮を図ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、X線位相差撮像システム100は、第1格子3または第2格子4のうち、少なくともどちらか一方の位置ずれを調整する調整機構8をさらに備え、調整機構8は、格子位置ずれ取得部6が取得した格子の位置ずれに基づいて、格子の位置ずれを補正するように構成されている。これにより、格子位置ずれ取得部6が取得した格子の位置ずれに基づいて、調整機構8により自動で格子の位置ずれを補正することが可能になるので、測定者の知識や経験に依存することなく格子の位置のずれをより容易に調整することができる。また、調整機構8により自動で格子の位置ずれを補正することが可能になるので、調整時間をより短縮することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14のピーク間の距離(dx、dy)およびピークの大きさ(σx、σy)の少なくとも一方に基づいて、格子の位置ずれを取得するように構成されている。これにより、フーリエ変換画像14を画像処理することによって、格子の位置ずれを取得することができる。その結果、測定者が目視でモアレ縞12を確認することなく、格子の位置ずれを自動で取得することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14において、0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx)に基づいて、Z方向における第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。これにより、Z方向における第1格子3または第2格子4の位置ずれを、フーリエ変換画像14の0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx)の大きさに置き換えて把握することができる。その結果、フーリエ変換画像14の0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx)が小さくなるように格子の位置を調整することによって、Z方向における第1格子3または第2格子4の位置ずれを容易に調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14において、0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dy)に基づいて、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。これにより、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを、フーリエ変換画像14の0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dy)の大きさに置き換えて把握することができる。その結果、フーリエ変換画像14の0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dy)が小さくなるように格子の位置を調整することによって、Z方向軸周りの回転方向Rzにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを容易に調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14における0次ピーク15と1次ピーク16との間の距離(dx、dy)に基づいて、格子の位置ずれの大きさを取得するように構成されている。これにより、格子の位置ずれの大きさを取得することができる。その結果、取得した位置ずれの大きさを補正量として格子の位置を調整することによって、第1格子3または第2格子4の位置ずれをより容易かつ精度よく調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14において、1次ピーク16の大きさ(σx)に基づいて、第1格子3または第2格子4のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。これにより、第1格子3または第2格子4のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを、フーリエ変換画像14の1次ピーク16の大きさ(σx)に置き換えて把握することができる。その結果、フーリエ変換画像14の1次ピーク16の大きさ(σx)が小さくなるように格子を調整することにより、第1格子3または第2格子4のY方向の中心軸線周りの回転方向Ryにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを容易に調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14において、1次ピーク16の大きさ(σx、σy)に基づいて、第1格子3または第2格子4のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを取得するように構成されている。これにより、第1格子3または第2格子4のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを、フーリエ変換画像14の1次ピーク16の大きさ(σx、σy)に置き換えて把握することができる。その結果、フーリエ変換画像14の1次ピーク16の大きさ(σx、σy)が小さくなるように格子を調整することにより、第1格子3または第2格子4のX方向の中心軸線周りの回転方向Rxにおける第1格子3または第2格子4の位置ずれを容易に調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)に基づいて、格子の位置ずれの有無を取得するように構成されている。これにより、フーリエ変換画像14の画像処理によって、第1格子3または第2格子4の位置ずれの有無を自動で判断することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子位置ずれ取得部6は、第1格子3または第2格子4のどちらか一方を回動させて撮像した複数のフーリエ変換画像14に基づいて、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の大きさ(σx、σy)が最小値または最小値近傍となる回動量を位置ずれ量として取得するように構成されている。これにより、複数のフーリエ変換画像14に基づいて、格子の位置ずれが極力小さくなる格子の相対位置を取得することができる。その結果、第1格子3または第2格子4の位置ずれを容易かつ精度よく調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、複数の格子は、X線源1と第1格子3との間に配置された第3格子2をさらに含んでいる。これにより、第3格子2を用いて、X線源1の可干渉性を向上させることができる。その結果、焦点距離が微小でないX線源1を用いてX線位相差撮像を行うことが可能となるので、X線源1の選択の自由度を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、X線位相差撮像システム100は、検出器5で検出した画像から、フーリエ変換を行う前に周波数ノイズを除去するノイズ除去処理部11をさらに備える。これにより、フーリエ変換を行う際の有限空間の解析によるアーティファクト(虚像)や、検出器5に由来するアーティファクト(虚像)を、フーリエ変換を行う前に除去することができる。その結果、フーリエ変換によって得られる格子の位置ずれに起因するピーク(1次ピーク16)をより精度よく検出することができる。
[第2実施形態]
次に、図1、図2および図17~図20を参照して、本発明の第2実施形態によるX線位相差撮像システム200(図1参照)について説明する。干渉縞画像13に対してフーリエ変換を行う前に周波数ノイズを除去する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、画像処理部10(図2参照)は、干渉縞画像13に対するフーリエ変換によって予め得られたフーリエ変換基準画像23(図19参照)を用いて、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22(図18参照)を除去するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
ここで、検出器5に画素欠損が生じたり、第1格子3および/または第2格子4に欠損が生じた場合、図17に示すように、干渉縞画像13において、検出器5の画素欠損に起因するノイズ19や、格子の欠損に起因するノイズ20などが観測される。また、格子に対してX線が斜め方向に入射することによって、検出器5に入射角に応じた感度むらが生じると、干渉縞画像13において、感度むら21が観測される。図17に示すような干渉縞画像13をフーリエ変換した場合、図18に示すように、0次ピーク15および1次ピーク16以外のピークがノイズ22としてフーリエ変換画像14に生じる。フーリエ変換画像14に生じるノイズ22は、X線源1を設置する方向や、複数の格子および検出器5自体の欠損によって生じる。したがって、ランダムノイズとは異なり、フーリエ変換画像14およびフーリエ変換基準画像23においてノイズ22が生じる位置は略一致する。
そこで、第2実施形態では、画像処理部10は、図19に示すように、干渉縞画像13に対するフーリエ変換によって予め得られたフーリエ変換基準画像23を用いて、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22を除去するように構成されている。
具体的には、画像処理部10は、フーリエ変換画像14からフーリエ変換基準画像23を減算することにより、ノイズ22を除去するように構成されている。ノイズ22はランダムノイズとは異なり、フーリエ変換画像14およびフーリエ変換基準画像23において位置が略変化しない。したがって、フーリエ変換画像14からフーリエ変換基準画像23を減算することにより、ノイズ22を除去することができる。図20に示すように、ノイズ22が除去された後のフーリエ変換画像14には1次ピーク16のみが観測される。
なお、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の位置と、フーリエ変換基準画像23における1次ピーク16の位置とが重なる場合、減算することによってノイズ22とともに1次ピーク16も除去されてしまい、フーリエ変換画像14において1次ピーク16を観測することができなくなる。そこで、図19に示すように、フーリエ変換基準画像23は、フーリエ変換画像14と1次ピーク16の位置が異なる画像である。具体的には、図19に示す例では、フーリエ変換基準画像23の1次ピーク16は、フーリエ変換画像14における1次ピーク16よりも、0次ピーク15との間の距離dyが大きい画像の例である。
フーリエ変換画像14およびフーリエ変換基準画像23において観測される1次ピーク16の位置は、モアレ縞12の周期に基づいている。したがって、複数の格子のうち、少なくともいずれかを移動させてモアレ縞12の周期を変化させることにより、フーリエ変換画像14(フーリエ変換基準画像23)において観測される1次ピーク16の位置を変えることができる。
また、フーリエ変換基準画像23は、格子の位置調整を行う前であれば、いつ取得されてもよい。たとえば、予め取得したものを記憶部(図示せず)などに記憶しておき、フーリエ変換画像14を取得した際に記憶部から読み出して使用してもよいし、格子の位置調整を行う度に取得してもよい。しかし、フーリエ変換基準画像23を取得してから長期間たつと、検出器5の画素欠損や格子の欠損などが増加する可能性があり、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22とフーリエ変換基準画像23に生じるノイズ22とが異なる場合がある。したがって、フーリエ変換基準画像23は、格子の位置調整を行う度に、フーリエ変換画像14を取得する前に取得されることが好ましい。
次に、図21を参照して、第2実施形態にけるX線位相差撮像システム200が格子を調整する方法の全体の流れについて説明する。なお、ステップS1~ステップS7の処理は、上記第1実施形態と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
ステップS1~ステップS3において、X線位相差撮像システム200は、フーリエ変換画像14を取得する。その後、ステップS8において、画像処理部10は、フーリエ変換画像14からフーリエ変換基準画像23を減算することにより、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22の除去を行う。
その後、処理はステップS4~ステップS5へと進む。格子の位置ずれがない場合、処理はステップS6に進み、処理を終了する。格子の位置ずれがある場合、処理はステップS7へ進み、制御部9は、格子の位置調整を行った後、処理はステップS1へ進む。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、干渉縞画像13に対するフーリエ変換によって予め得られたフーリエ変換基準画像23を用いて、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22を除去する画像処理部10をさらに備える。これにより、フーリエ変換画像14に生じるノイズ22を除去することが可能となるので、1次ピーク16の位置や大きさなどを正確に取得することができる。その結果、フーリエ変換によって得られる格子の位置ずれに起因するピークをより精度よく検出することが可能となり、格子の位置ずれを調整する精度を向上させることができる。
また、第2実施形態では、上記のように、画像処理部10は、フーリエ変換画像14からフーリエ変換基準画像23を減算することにより、ノイズ22を除去するように構成されている。これにより、ランダムノイズと異なり、時間的に変化しにくいフーリエ変換画像14のノイズ22を容易に除去することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、フーリエ変換基準画像23は、フーリエ変換画像14と1次ピーク16の位置が異なる画像である。このような画像を用いることにより、フーリエ変換画像14のノイズ22を除去する際に、フーリエ変換基準画像23の1次ピーク16によってフーリエ変換画像14における1次ピーク16がノイズ22とともに除去されることを抑制することができる。その結果、フーリエ変換画像14における1次ピーク16がどの位置にあったとしても、フーリエ変換画像14のノイズ22を除去することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、第1格子3として、位相格子を用いたが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1格子3として、吸収格子を用いてもよい。その結果、干渉計および非干渉計のどちらの構成においても、X線位相差撮像を行うことが可能となり、第1格子3の選択の自由度を向上させることができる。
また、上記第1および第2実施形態では、第3格子2を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線源1の可干渉性が十分に高い場合、第3格子2を設けなくてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、制御部9がフーリエ変換画像14を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部10がフーリエ変換画像14を生成するように構成されていてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、0次ピーク15の大きさおよび1次ピーク16の大きさを、フーリエ変換後の周波数ピークの半値幅によって決定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、フーリエ変換後の周波数ピークの半値幅以外の大きさを用いてもよい。半値幅以外の大きさとしては、たとえば、フーリエ変換後の周波数ピークの最大振幅から40%となる周波数ピークの横幅の大きさを0次ピーク15および1次ピーク16の大きさとしてもよい。また、フーリエ変換画像14の0次ピーク15および1次ピーク16のそれぞれの面積をそれぞれのピークの大きさとしてもよい。
また、上記第2実施形態では、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の位置と異なる位置に1次ピーク16があるフーリエ変換基準画像23を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、フーリエ変換画像14における1次ピーク16の位置と、フーリエ変換基準画像23における1次ピーク16の位置が重なっていた場合でも、図22に示すように、画像処理部10は、フーリエ変換画像14の1次ピーク16を削除することによって得られたフーリエ変換基準画像23を用いてフーリエ変換画像14のノイズ22を除去するように構成されていてもよい。なお、図22に示す例では、便宜上削除された1次ピーク16を破線で図示している。