以下、本発明のワイピングシートをその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明においてワイピングとは、清掃及び清拭の両方の意味を含むものであり、例えば、床面、壁面、天井及び柱等の建物の清掃、建具や備品の清掃、物品の拭き取り等が含まれる。特に、本発明のワイピングシートは、床面等をワイピング対象面として、該ワイピング対象面を清掃する自走式の清掃用ロボットの清掃部に装着して使用されることが好適なものである。
本発明のワイピングシートは繊維集合体を備えている。繊維集合体を構成する繊維は、繊維径が10μm以上の太径繊維と、繊維径が3μm以下の細径繊維とを少なくとも含む。太径繊維及び細径繊維は、太径繊維どうし、細径繊維どうし、及び太径繊維と細径繊維とが交絡して前記の繊維集合体を形成している。つまり、ワイピングシートに使用する繊維集合体は、太径繊維及び細径繊維の交絡を主体として複合化された繊維集合体である。太径繊維及び細径繊維の詳細は後述する。
図1には、本発明のワイピングシートに備えられた繊維集合体の縦断面が示されている。同図に示すとおり、ワイピングシート1における繊維集合体1Aは、太径繊維11及び細径繊維12を含んで構成されている。またワイピングシート1は、第1面1Fと、第1面1Fと反対側に位置している第2面1Rとを有する。第1面1F及び第2面1Rは、ともにワイピングシートの使用時におけるワイピング面(ワイピング対象面と対向する面)として用いることができる。
同図に示すワイピングシート1では、第1面1Fに細径繊維12が主に存在し、第2面1Rに太径繊維11が主に存在しているが、この態様に限られず、第1面1Fに太径繊維11が主に存在し、第2面1Rに細径繊維12が主に存在している態様となっていてもよい。つまり、第1面又は第2面のいずれか一方の面において、細径繊維12が主に存在している態様となっていればよい。本明細書において「主に存在している」とは、第1面1Fと平行な任意の面に存在する繊維のうち、存在割合が最も高い繊維を指す。
なお、以下の説明では、図1に示すように、第1面1Fに細径繊維12が主に存在し、第2面1Rに太径繊維11が主に存在している態様として説明する。
図1に示すとおり、ワイピングシート1は、その厚さ方向Zに沿う縦断面視において、太径繊維11と細径繊維12との存在箇所が偏在している。詳細には、ワイピングシート1は、厚さ方向Zの縦断面視において、細径繊維12の存在割合が、第2面1Rよりも、第1面1Fで高くなっている。また第1面1Fでは、細径繊維12がその存在割合が高い状態を維持しながら面方向にわたり散在している。それに対して、太径繊維11の存在割合は、第1面1Fよりも、第2面1Rで高くなっている。また第2面1Rでは、太径繊維11がその存在割合が高い状態を維持しながら面方向にわたり散在している。特に、細径繊維が多い箇所は、該繊維どうしが緻密に交絡して空隙率が低い構造となっており、また太径繊維が多い箇所は細径繊維が多い箇所と比較して空隙率が高い構造となっている。このような構成を採用することによって、微粒子汚れの捕集率を高めることができる。
細径繊維によって形成された緻密且つ低空隙率を有する構造で微粒子を効率的に捕集しつつ、太径繊維によって形成された高空隙率の構造で汚れをワイピングシートの構成繊維間に保持しやすくするという観点から、ワイピングシート1の厚さ方向Zに沿う縦断面視において、細径繊維12の存在割合が、第1面1Fから第2面1Rに向けて、階段状に、連続的に又はその組み合わせで漸次減少していることが好ましい。
本発明のワイピングシートは、第1面1F及び第2面1Rに着目したときに、第1面1F又は第2面1Rのいずれか一方の面において、構成繊維の占める存在割合が所定の範囲となっていることが好ましい。詳細には、第1面1F又は第2面1Rのいずれか一方の面において、太径繊維11の占める存在割合は、面積比率で表して、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましく、また、30%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。第1面1F又は第2面のいずれか一方の面における太径繊維11の占める存在割合は、面積比率で表して、10%以上30%以下であることが好ましく、12%以上28%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることが更に好ましい。
また、上述した太径繊維11の占める存在割合を有する面と同一の面に着目したときに、該面における細径繊維12の占める存在割合は、面積比率で表して、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、78%以上であることが更に好ましく、また、90%以下であることが好ましく、88%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましい。上述の太径繊維11の占める存在割合を有する面と同一の面において、細径繊維12の占める存在割合は、面積比率で表して、70%以上90%以下であることが好ましく、75%以上88%以下であることがより好ましく、75%以上85%以下であることが更に好ましい。
なお、図1においては、第1面1Fが太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面に相当する。
このように、同一面において、太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっていることによって、該面をワイピング面としたときに、細径繊維によって形成された緻密且つ低空隙率を有する構造で微粒子ダストを捕集しつつ、太径繊維によって形成された高空隙率の構造で汚れをワイピングシートの構成繊維間に保持しやすくするという効果が奏される。このような効果を得る観点から、本発明のワイピングシートは、太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面をワイピング面として用いることが一層好ましい。
太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面(図1における第1面1Fに相当)をワイピング面として用いたときに、ワイピング面と反対側の反対側の面(図1における第2面1Rに相当)における太径繊維11の占める割合は、面積比率で表して、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、また、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面と反対側の面における太径繊維11の占める存在割合は、面積比率で表して、50%以上90%以下であることが好ましく、55%以上85%以下であることがより好ましく、60%以上80%以下であることが更に好ましい。
同様に、太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面(図1における第1面1Fに相当)をワイピング面として用いたときに、ワイピング面と反対側の反対側の面(図1における第2面1Rに相当)における細径繊維12の占める存在割合は、面積比率で表して、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましく、また、25%以下であることが好ましく、23%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。太径繊維11及び細径繊維12が上述の存在割合となっている面と反対側の面(図1における第2面1Rに相当)における細径繊維12の占める存在割合は、面積比率で表して、10%以上25%以下であることが好ましく、12%以上23%以下であることがより好ましく、15%以上20%以下であることが更に好ましい。
太径繊維11及び細径繊維12の存在割合は、例えば共焦点レーザー顕微鏡を用いて、面積比率として測定できる。詳細には、ワイピングシートの厚さ方向Zにおける第1面1F及び第2面1Rで画成される領域を、第1面1Fと平行な面方向に仮想的に分割し、これらの面をラマンイメージングによって観察し、画像データをそれぞれ取得する。得られた各画像をImageJなどの画像処理ソフトウェアを用いて、太径繊維と細径繊維との明度境界に閾値を設定し、明度を二値化する。一般的に、白色と黒色とで二値化した場合、太径繊維は白色となり、細径繊維は黒色となるので、それぞれの色を有する面積を計算して、各繊維の面積比率を算出する。したがって、面積比率は繊維の占める面積を測定対象となる面積で除した値となる。なお、%表示の場合は除した値の100倍となる。
繊維集合体1Aを構成する太径繊維11及び細径繊維12は、合成繊維及び天然繊維のいずれであってもよい。合成繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン/ポリエステル混合繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド繊維、ポリ塩化ビニルやポリスチレン等のビニル系繊維、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系繊維等が挙げられる。天然繊維としては各種セルロース繊維、例えばパルプ、コットン、レーヨン、キュプラ、リヨセル及びテンセル等が挙げられる。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ワイピングシートに洗浄液を供給及び担持させた場合に、該シート全体に洗浄液を担持させつつ、該洗浄液をワイピング対象面に適量ずつ供給するという観点から、太径繊維11として親水性繊維を少なくとも1種含むことが好ましい。親水性繊維としては、例えばパルプ、コットン、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル及び上述の合成繊維に親水化処理を施した繊維等が挙げられる。これらの繊維は、太径繊維11として単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、親水性繊維とは、25℃の環境下において繊維上に純水の液滴を滴下したときに、繊維表面と水との接触角が90度未満である繊維をいう。接触角の測定は、例えば特開2015-142721号公報の記載の方法に従って行うことができる。
同様の観点から、繊維集合体1Aの全質量に対して、上述の親水性繊維を5質量%以上含むことが好ましく、7質量%以上含むことがより好ましく、8質量%以上含むことが一層好ましく、またその上限は50質量%以下含むことが好ましく、20質量%以下含むことがより好ましく、15質量%以下含むことが更に好ましい。具体的には、繊維集合体1Aの全質量に対して、上述の親水性繊維を5質量%以上50質量%以下含むことが好ましく、7質量%以上20質量%以下含むことがより好ましく、8質量%以上15質量%以下含むことが一層好ましい。
微粒子汚れの捕集性を高めるとともに、毛髪等の繊維状の汚れの捕集性も高める観点から、太径繊維11の繊維径(直径)は、10μm以上であることが好ましく、10.5μm以上であることがより好ましく、11μm以上であることが更に好ましく、またその上限は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。具体的には、太径繊維11の繊維径(直径)は、10μm以上30μm以下であることが好ましく、10.5μm以上25μm以下であることがより好ましく、11μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
同様の観点から、細径繊維12の繊維径(直径)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることが更に好ましく、またその上限は、3μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。具体的には、細径繊維12の繊維径(直径)は、0.1μm以上3μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2.5μm以下であることがより好ましく、0.4μm以上2μm以下であることが更に好ましい。これらの繊維の繊維径は、例えば観察対象面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して、その二次元画像から繊維の塊、繊維の交差部分を除いた繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引いたときの長さを繊維径としたときに、これらの測定値の平均値を繊維径とすることができる。
繊維集合体1Aは、上述のとおり、該繊維集合体1Aを構成する繊維どうしが絡合して形成された不織布状のものである。繊維集合体1Aの構成繊維の自由度を高めて、微粒子汚れの捕集性を高める観点から、繊維集合体1Aの構成繊維は互いに融着していないことが好ましい。
ワイピングシート1に実用上十分な強度を持たせる観点から、ワイピングシートを構成する太径繊維11及び細径繊維12が交絡してなる繊維集合体1Aの坪量は、45g/m2以上が好ましく、50g/m2以上が更に好ましく、またその上限は、100g/m2以下が好ましく、90g/m2以下が更に好ましい。具体的には、繊維集合体1Aの坪量は、45g/m2以上100g/m2以下が好ましく、50g/m2以上90g/m2以下が更に好ましい。
ワイピングシート1は、ワイピング時において、繊維集合体1Aをそのまま(いわゆる乾式の態様)で使用してもよく、繊維集合体1Aに洗浄液を塗布、噴霧、供給、担持又は含浸させた態様(いわゆる湿式の態様)で使用してもよい。これらの態様は、ワイピング対象面に付着している汚れの種類や、ワイピング対象物の物性に応じて選択することができる。
ワイピングシートを湿式の態様で用いる場合、該シートに担持される洗浄液としては、水単独や、添加剤を含む水溶液など、湿式ワイピングシートに用いられる一般的な組成のものを用いることができる。洗浄液に用いられる添加剤としては、例えば界面活性剤、殺菌剤、香料、芳香剤、消臭剤、pH調整剤、アルコール及び研磨粒子などが挙げられる。
以上の構成を有していることによって、本発明のワイピングシートは、微粒子汚れの捕集性が高いものとなる。特に、細径繊維の存在割合が高い面(図1における第1面1Fに相当)をワイピング面として用いた場合、該繊維が緻密に存在していることに起因して、微粒子汚れを一層捕集できる。
本発明のワイピングシートは、これを自走式の清掃用ロボットに装着して使用することによって、ワイピング対象面との摩擦抵抗が高い場合であってもその制約を受けずに、微粒子汚れを一層効率的に捕集できるものである。
自走式の清掃ロボットの一般的な形態として、ワイピングシートを装着する清掃部(上述の清掃用ヘッドに相当)と、ロボット本体部とを有している。ワイピングシートは清掃部を被覆するように係止され、且つ清掃部はロボット本体部と2箇所以上で係止できるように構成されている(後述する図2及び図3参照)。このような構成を有していることによって、シートとワイピング対象面との摩擦抵抗が高い場合でも、清掃部自体が回動することなく、ワイピング対象面における所望の範囲を首尾よくワイピングできるようになる。その結果、本発明のワイピングシートによる微粒子汚れの高い捕集性が実現できる。
図2及び図3に示すように、ワイピングシート1を装着可能な自走式の清掃用ロボット100(以下、単に「清掃用ロボット100」ともいう。)は、清掃部110と、ロボット本体部120(以下、単に「本体部120」ともいう。)とから構成されている。
図2及び図3に示すように、清掃部110は、略矩形の板状の形状を有しており、ワイピングシート1を装着するための部材である。清掃部110には、清掃部110の上面110a及び下面110bを連通する係合口部111が形成されている。清掃部110における係合口部111は、後述する本体部120の係合凸部122と係合し、清掃部110と本体部120とを係止できるようになっている。ワイピングシートを簡便に装着する観点から、清掃部110は、本体部120と着脱可能に構成されている。
清掃部110の上面110aには、洗浄液を保持するタンク部112と、外部から該タンク部112内へ洗浄液を注入するためのタンク蓋部113とが設けられている。タンク部112内には、清掃部110の上面110a及び下面110bを連通する洗浄液供給口114が設けられており、本体部120内での電子制御によって、洗浄液を該下面110b側に位置するワイピングシート1へ供給したり、洗浄液の供給を停止したりできるようになっている。なお、ワイピングシートを乾式の態様で使用する際は、洗浄液がタンク部112内に注入されていなくてもよい。清掃部110の下面110bは、ワイピング対象面と対向する面であり、清掃部110の上面110aは、清掃部110における下面110bと反対側の面である。
タンク部112の上面には、ワイピングシートを係止するためのシート係止部115が設けられている。ワイピングシート1を清掃部110に装着する際は、シートの第2面1Rと清掃面の下面110bとが対向した状態で、該下面110bを覆うようにして折り返されるので、折り返されたワイピングシート1の第2面1Rとシート係止部115とが向き合うように係止される。このように、シートの両端をシート係止部115で係止することによって、ワイピングシート1のワイピング面(同図では第1面1Fに相当)が外方に向いた状態で装着することができる。
図3に示すように、本体部120は、その下方に一対の車輪121が設けられている。車輪121はシャフトなどの駆動力伝達部(図示せず)を介して、本体部120に内蔵されている駆動部(図示せず)と接続されている。本体部120内での電子制御によって、駆動部から駆動力が車輪121に伝達される。この駆動力によって、本体部120は自動且つ自由に移動できるようになっている。また、本体部120の下方には、清掃部110における係合口部111と係合可能な係合凸部122が設けられており、清掃部110と本体部120とを係止できるようになっている。同図に示すように、本体部120における車輪121の存在位置が偏在し、本体部120の重心が清掃部110側に位置しているので、ワイピングの際に、ワイピングシート1におけるワイピング面(同図では第1面1Fに相当)と、ワイピング対象面とがより密着しやすくなるように構成されている。
本発明のワイピングシートを清掃用ロボットの清掃部に装着して使用した際に、ワイピング時の過度な摩擦抵抗を抑制する観点から、ワイピングシート1の第1面1F又は第2面1Rのいずれか一方の面には、図3及び図4に示すように、曲線部を有する巨視的パターンの凹凸部を有していることが好ましく、ワイピング面として用いられる面側に曲線部を有する巨視的パターンの凹凸部を有していることがより好ましい。特に、ワイピングシート1における細径繊維の存在割合の高い面をワイピング面として使用した際に、該ワイピング面とワイピング対象面との摩擦抵抗が高くなってしまうので、細径繊維の存在割合が高い面(図1における第1面1Fに相当)に曲線部を有する巨視的パターンの凹凸部が形成されていることによって、ワイピング時の過度な摩擦抵抗を一層抑制できる。
図4に示すように、ワイピングシート1の第1面1F又は第2面1Rのいずれか一方の面には、凹凸部を構成する凸部3と凹部4とが形成されている。凸部3と凹部4との境界線は、巨視的に見て曲線状の部分を有している。このような構成を有していれば、同図に示す巨視的パターンに限られず、例えば特開2017-113282号公報に示す巨視的パターンや、直線、曲線、円及び多角形等の図形が適宜組み合わされた巨視的パターンであってもよい。なお、巨視的に見て曲線状とは、マイクロスケールの微細な孔を構成する曲線や、直径1.5~2mm程度の水抜き用穴を構成する曲線を除いて、凹凸部を構成する図形の辺の一部が曲線であることが目視で確認できることを意味する。このような巨視的パターンの凹凸部を有していることによって、ワイピングシート自体の意匠性を高めるという利点も奏される。
以上は本発明のワイピングシートの一実施形態に関する説明であったところ、以下に、ワイピングシートの製造に好適に用いられる製造装置10について説明する。図5には、ワイピングシート1の製造に好適に用いられる製造装置10が示されている。製造装置10は、ウェブ形成部20、第1水流交絡部30及び第2水流交絡部40をこの順で備えている。
ウェブ形成部20は、太径繊維11のウェブを形成するものである。ウェブ形成部20は、ワイピングシート1の構成原料である太径繊維11から該繊維のウェブを形成するカード機21を備えている。
第1水流交絡部30は、太径繊維11のウェブを水流によって交絡させ、太径繊維の交絡体を形成するものである。第1水流交絡部30は、太径繊維11のウェブ側に水流を吹き付ける第1水流ノズル31と、無端ベルトからなる第1支持ベルト32とを備えている。第1水流ノズル31は、第1支持ベルト32の上方に位置しており、太径繊維のウェブの幅方向(搬送方向MDと直交する方向)全域にわたって高圧水流を吹き付けることができるようになっている。第1支持ベルト32は、第1水流ノズル31と対向して配されており、吹き付けられた水を透過させるために、格子状などの各種パターンで穴が空いた構造となっている(図示せず)。
第2水流交絡部40は、太径繊維11の交絡体の一方の面に、細径繊維12の交絡体を積層して積層体5を形成し、この積層体5に水流を吹き付けて、繊維集合体1Aを形成させるものである。第2水流交絡部40は、シート状の細径繊維12の交絡体を繰り出す原反ロール41及びガイドロール42と、水流を吹き付ける第2水流ノズル43と、無端ベルトからなる第2支持ベルト44とを備えている。第2水流ノズル43及び第2支持ベルト44は、第1水流ノズル31及び第1支持ベルト32と同様の構造となっている。
また、図4に示すような巨視的パターンの凹凸部を第1面1F又は第2面1Rのいずれか一方の面に形成させたワイピングシートを製造する場合、例えば図6に示すような形状を有する凹凸部形成部材50を、積層体5と第2支持ベルト44との間に備えていることが好ましい。凹凸部形成部材50のその他の例として、パンチングメタルやプラスチックネット等を用いることができる。
図5に示す製造装置10を用いたワイピングシートの製造方法は以下に述べるとおりである。本製造方法は、水流交絡によって太径繊維11の交絡体を形成する工程と、太径繊維11の交絡体の一方の面に細径繊維12の交絡体を積層し、水流交絡によって繊維集合体1Aを形成する工程との2工程に大別される。
まず、ウェブ形成部20におけるカード機21から太径繊維11のウェブが繰り出される。
次いで、第1水流交絡部30において、太径繊維11のウェブが、第1支持ベルト32によってMD方向に搬送されながら、第1水流ノズル31から噴出する高圧水流によって交絡処理される(第1交絡工程)。この工程を経ることによって、太径繊維どうしが交絡して太径繊維11の交絡体が形成される。本工程においては、第1水流ノズル31から吹き付ける水圧を、好ましくは30kg/cm2以上80kg/cm2以下、更に好ましくは40kg/cm2以上60kg/cm2以下とし、且つ太径繊維11のウェブのMD方向における搬送速度を好ましくは2m/min以上60m/min以下、更に好ましくは10m/min以上50m/min以下とすることで製造することができる。
太径繊維11の交絡体の坪量は、35g/m2以上が好ましく、40g/m2以上がより好ましく、45g/m2以上が更に好ましい。また太径繊維の交絡体の坪量は、95g/m2以下が好ましく、85g/m2以下がより好ましく、80g/m2以下が更に好ましい。具体的には、太径繊維11の交絡体の坪量は、35g/m2以上95g/m2以下が好ましく、40g/m2以上85g/m2以下がより好ましく、45g/m2以上80g/m2以下が更に好ましい。
太径繊維11の交絡体が形成されたら、その一方の面に細径繊維12の交絡体を積層し、水流交絡によって繊維集合体1Aを形成する(第2交絡工程)。詳細には、太径繊維11の交絡体をMD方向に搬送するとともに、その交絡体の一方の面に、原反ロール41から繰り出されたシート状の細径繊維12の交絡体が積層し、積層体5とする。この積層体5に第2水流ノズル43から高圧水流を吹き付けることによって、各交絡体の構成繊維どうしを三次元的に交絡させ、繊維集合体1Aを形成させる。第2水流ノズル43から吹き付ける水圧及び積層体5の搬送速度は、第1交絡工程と同様の範囲とすることができる。
細径繊維12の交絡体の坪量は、4g/m2以上が好ましく、5g/m2以上がより好ましく、7g/m2以上が更に好ましい。また太径繊維の交絡体の坪量は、20g/m2以下が好ましく、15g/m2以下がより好ましく、10g/m2以下が更に好ましい。具体的には、細径繊維12の交絡体の坪量は、4g/m2以上20g/m2以下が好ましく、5g/m2以上15g/m2以下がより好ましく、7g/m2以上10g/m2以下が更に好ましい。
第2交絡工程においては、図5に示すように、積層体5と第2支持ベルト44との間に、図6に示す凹凸部形成部材50を備えている場合、高圧水流の吹き付けによって、各交絡体の構成繊維どうしを三次元的に交絡させながら、繊維集合体1Aの一方の面に凹凸部形成部材50が有する凹凸形状に相補的な凸部3及び凹部4を形成することができる。詳細には、第2水流ノズル43から積層体5の上面側に向かって吹き付けられた水流は、その下面を凹凸部形成部材50における凹部形成用凸部50a上面に密着するように押し当てる。これとともに、凹凸部形成部材50の凸部形成用凹部50bに位置する積層体5の構成繊維を該凹部50b内に突出させ、また、凹凸部形成部材50の凹部形成用凸部50aに位置する積層体5の構成繊維を該積層体の厚み方向に陥没させる。水流交絡において吹き付けられた水は、凹凸部形成部材50における凸部形成用凹部50bや、凹部形成用凸部50aに複数設けられている水抜き穴50cを介して下方に透過させる。これによって、ワイピングシートの一方の面に曲線部を有する巨視的パターンの凹凸部を形成させることができる。
なお、図5に示す製造工程においては、細径繊維12が主に存在する側の面(図1における第1面1Fに相当)に凹凸部形成部材50が配置され、同面に巨視的パターンの凹凸部を形成されている態様について説明したが、この形態に限られず、太径繊維11が主に存在する側の面(図1における第2面1Rに相当)に該凹凸部が形成されていてもよい。太径繊維11が主に存在する側の面に巨視的パターンの凹凸部を形成するためには、例えば積層体5を反転ロール等の反転手段(図示せず)で上下面を反転させて、太径繊維11が主に存在する側の面と凹凸部形成部材50とが当接している状態にする。この状態で、高圧水流の吹き付けを行うことによって、太径繊維11が主に存在する側の面に巨視的パターンの凹凸部を形成することができる。
以上の工程を経て製造された繊維集合体1Aは、これをそのままで乾式のワイピングシートとして用いてもよく、繊維集合体1Aに洗浄液を担持させて(担持工程)、湿式のワイピングシートとして用いることもできる。洗浄液の担持工程において、繊維集合体1Aに担持させる洗浄液の担持量は、17g/m2以上が好ましく、117g/m2以上が更に好ましく、690g/m2以下が好ましく、430g/m2以下が更に好ましい。
このようにして製造されたワイピングシートは、該ワイピングシート単体でワイピングに用いることができる。あるいは、図2及び図3に示すように、自走式の清掃用ロボットに装着して用いることができる。
本発明のワイピングシートを用いたときのワイピング対象面としては、床面、壁面等の建物、戸棚、窓ガラス、鏡等の建具、ラグ、カーペット、机等の家具、キッチン等にも使用できる。特に、本発明のワイピングシートは、床面等を清掃する自走式の清掃用ロボットの清掃部に装着して使用することが好適である。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、本実施形態では、繊維集合体の形成と巨視的パターンの凹凸部の形成とを同時に行う態様で説明したが、これらは別々の工程で行ってもよい。例えば、積層体5に水流交絡を行って繊維集合体1Aを形成した後、更に別の工程で高圧水流の吹き付けを行って、該集合体の一方の面に凹凸部を形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
上述した製造方法に従って、ワイピングシートを製造した。太径繊維11としてPET:アクリル:レーヨン=7:1.5:1.5を質量割合で含む平均繊維径11.4μmの混合ステープルファイバ(繊維長50mm)を用いた。細径繊維12としてメルトブローン法で得られた平均繊維径1μmのポリプロピレン繊維を用いた。繊維集合体の坪量は67g/m2とし、太径繊維の交絡体の坪量は60g/m2とし、細径繊維の交絡体の坪量は7g/m2とした。ワイピング面として用いられる一方の面における細径繊維の占める存在割合(面積比率)は81%であり、同面における太径繊維の占める存在割合(面積比率)は19%であった。ワイピングシートは矩形のものであり、その寸法は285mm×205mmであった。本実施例のワイピングシートは、シート自体に洗浄液を担持しない乾式のものとした。
〔実施例2〕
ワイピング面における細径繊維の占める存在割合(面積比率)を90%とし、同面における太径繊維の占める存在割合(面積比率)を10%となるようにワイピングシートを製造した他は、実施例1と同様にワイピングシートを製造した。
〔参考例1〕
ワイピング面における細径繊維の占める存在割合(面積比率)を60%とし、同面における太径繊維の占める存在割合(面積比率)を40%となるようにワイピングシートを製造した他は、実施例1と同様にワイピングシートを製造した。
〔参考例2〕
ワイピング面における細径繊維の占める存在割合(面積比率)を97%とし、同面における太径繊維の占める存在割合(面積比率)を3%となるようにワイピングシートを製造した他は、実施例1と同様にワイピングシートを製造した。
〔比較例1〕
本比較例では、ワイピングシートとして、ブラーバ(登録商標)専用ウエットクロス(iRobot社製)を用いた。本シートは、乾式のものであった。本シートは、1種類の繊維から構成された乾式のものであり、ワイピング面を構成する繊維の平均繊維径は18.2μmであった。
〔比較例2〕
本比較例では、ワイピングシートとして、ウェーブ(登録商標)超水分キープワイピングシート(ユニチャーム社製)を用いた。本シートは、1種類の繊維から構成された湿式のものであり、ワイピング面を構成する繊維の平均繊維径は12.5μmであった。
〔微粒子汚れの捕集率〕
実施例、参考例及び比較例のワイピングシートを、清掃用ロボットの清掃部に装着して、以下の方法で微粒子汚れの捕集率を評価した。
まず、1820mm×910mmの面積(1畳の面積に相当)を有するフローリング床(コンビットニューアドバンス101、ウッドワン社製)に、JIS Z 8901に規定される試験用粉体7種(粒径:5~75μm)を0.6g散布した。
続いて、自走式の清掃用ロボット(ブラーバ(登録商標)、iRobot社製)の清掃部に、ワイピングシートのワイピング面が外面に向くように装着した。この清掃用ロボットを用いて上述のフローリング床をワイピングした。なお、実施例及び参考例におけるワイピング面は、細径繊維の存在割合が高い面とした。
これらのシートについて、乾燥状態におけるシート使用前後のシート質量をそれぞれ測定して、以下の式から微粒子汚れの捕集率(%)を算出した。
また、上述の試験用粉体7種に代えて、JIS Z 8901に規定される試験用粉体11種(粒径:0.01~8μm)を用いて、同様の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
微粒子汚れの捕集率(%)=100×((使用後のワイピングシートの乾燥質量[g])-(使用前のワイピングシートの乾燥質量[g]))/0.6[g])
なお、表1に示す「多量」、「微量」及び「なし」は、清掃用ロボットからの洗浄液(水)の供給量を示し、それぞれ0.25mL/秒、0.02mL/秒及び0mL/秒に設定した。つまり、表1に示す「多量」及び「微量」の実施態様は湿式の態様であり、表1に示す「なし」の実施態様は乾式の態様である。
また、比較例2のシートは、そのまま湿式の態様で使用した状態を「湿式」とし、該シートを乾燥して乾式の態様で使用した状態を「乾燥」として表1に示した。比較例2では、清掃用ロボットからの洗浄液(水)の供給量を0mL/秒に設定した。
〔毛髪捕集率の評価〕
実施例、参考例及び比較例のワイピングシートについて、毛髪捕集率の評価を行った。すなわち、毛髪を10本散布した1820mm×910mmのフローリング(コンビットニューアドバンス101、ウッドワン社製)をワイピング対象面として、実施例、参考例及び比較例のワイピングシートを装着した清掃用ロボットを用いて、上述の〔微粒子汚れの捕集率〕の項と同様の方法でワイピングした。毛髪捕集率(%)は、以下の式で算出した。結果を表1に示す。
毛髪捕集率(%)=100×(ワイピングシートに付着した毛髪の本数(本))/10(本)
表1に示すように、実施例1及び2並びに参考例1及び2のワイピングシートを比較すると、いずれのシートも湿式又は乾式の態様によらず、ワイピング面における細径繊維の割合が高いほど、微粒子汚れの捕集率が高いことが判る。特に、乾式の態様とした場合、実施例1及び2のワイピングシートは、参考例1及び2のワイピングシートと比較して、微粒子汚れの捕集率とともに、毛髪の捕集率も高くなっていることが判る。
同様に、実施例1及び2並びに比較例1及び2のワイピングシートを比較すると、実施例1及び2のワイピングシートは、湿式又は乾式の態様によらず、微粒子汚れの捕集率が高いものであることが判る。特に、実施例1及び2のワイピングシートを乾式の態様とした場合、比較例1及び2のワイピングシートと比較して、微粒子汚れの捕集率とともに、毛髪の捕集率も高くなっていることが判る。
以上のとおり、本発明のワイピングシートは微粒子汚れの捕集性が高く、自走式の清掃用ロボットに装着して好適に使用されるものであることが判る。特に、本発明のワイピングシートを乾式の態様で使用した場合、微粒子汚れとともに、毛髪などの繊維汚れが効率的に捕集できていることが判る。