以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る上陸可否判定装置を適用する水陸両用車が水上航行、陸上走行、及び陸地に上陸する様子を示す図である。図1Bは、本発明の一実施形態に係る上陸可否判定装置が上陸可否判定を行なう陸地を示した図である。
本発明の一実施形態に係る水陸両用車の上陸可否判定装置は、水上を航行したり、陸地を走行したり、あるいは水上から陸地に上陸したりすることが可能な車両である水陸両用車100に適用され、この水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際において、この水陸両用車100が上陸することができるかどうかを判定するための装置である。水陸両用車100は、例えば、図1Aに示すように、エンジン50、推進器101及び履帯102を備えている。このような水陸両用車100は、主に推進器101を駆動させる水上航行モード、主に履帯102を駆動させる陸上走行モード、及び主に推進器101と履帯102との両方を駆動させる上陸モードの何れかの運転モードに基づいてエンジン50を運転させるように構成されている。
水陸両用車100は、例えば、水陸両用車100に乗っている乗員がボタンを押下することで、又は水陸両用車100と陸地との間の距離が所定の距離以下になったことをセンサなど検知することで、エンジン50の運転が上陸モードに切り換えられるように構成されている。尚、エンジン50の運転を上陸モードに切り換える方法は、上記以外の方法であってもよい。
図2は本発明の一実施形態に係る上陸可否判定装置の構成を概略的に示す概略構成図である。図3Aは決定最大噴射量マップの一例を示す図である。図4は最大上陸角度マップの一例を示す図である。図5は最大トルクマップの一例を示す図である。図6は推定排気温度マップの一例を示す図である。図7は本発明の一実施形態に係る最大噴射量決定部の補正係数算出部及び標準最大噴射量補正部の構成を示すブロック図である。図8は本発明の一実施形態に係る最大噴射量決定部の補正係数算出部、標準最大噴射量補正部、及び補正係数補正部の構成を示すブロック図である。
上陸可否判定装置1は、図2に示すように、決定最大噴射量算出部2と最大上陸角度算出部3とを備えており、例えば、上述したような方法でエンジン50の運転が上陸モードに切り換えられると、水陸両用車100の上陸可否判定を開始する。図2に示した実施形態では、上陸可否判定装置1は、予め設定された幾つかの設定値、マップ及びテーブルなどを記憶するための記憶部4をさらに備えている。
また、上陸可否判定装置1は、エンジン50の状態を知るために、幾つかの計測結果を取得可能に構成されている。例えば、エンジン50のエンジン回転数Ne、エンジン50から排出される排気の排気温度T、及びエンジン50に導入される吸気の圧力損失ΔPなどを取得可能に構成されている。また、上陸可否判定装置1は、エンジン50を運転させる環境を知るために、幾つかの計測結果を取得可能に構成されている。例えば、水陸両用車100に積載される積載物の重量W、水陸両用車100の外気温Ta、及び水陸両用車100の外気圧Paなどを取得可能に構成されている。尚、本開示では、エンジン50の状態、及びエンジン50を運転させる環境を併せたものをエンジン運転条件と記載する。
決定最大噴射量算出部2は、決定最大噴射量Qmaxを算出する。決定最大噴射量Qmaxは、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際におけるエンジン50に噴射される燃料の最大噴射量であって、例えば、エンジン50の運転が上陸モードに切り換えられてから他の運転モード(例えば、陸上走行モード)に切り換えられるまでにおいて、一度の噴射で噴射される燃料の最大噴射量である。
また、決定最大噴射量算出部2は、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際におけるエンジン回転数Neに応じた決定最大噴射量Qmaxを算出する。図2に示した実施形態では、記憶部4は予め設定されたマップである決定最大噴射量マップMap1Aを記憶している。決定最大噴射量マップMap1Aは、図3Aに示すように、エンジン回転数Neと決定最大噴射量Qmaxとの関係を示すマップである。そして、決定最大噴射量算出部2は、この決定最大噴射量マップMap1Aを参照して、エンジン回転数Neに応じた決定最大噴射量Qmaxを算出する。
また、幾つかの実施形態では、決定最大噴射量算出部2は、図3Aに示すように、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際における、予め想定されるエンジン回転数Neである上陸想定回転数Neaに応じた決定最大噴射量Qmax’を算出する。上陸想定回転数Neaは予め設定される値(例えば、2000rpm)であり、図2に示した実施形態では、記憶部4に予め記憶されている。尚、上陸想定回転数Neaは、第1上陸想定回転数(例えば、2000rpm)及び第2上陸想定回転数(例えば、1800rpm)のように、記憶部4に複数記憶されていてもよい。
また、決定最大噴射量算出部2は、エンジン50から排出される排気の排気温度Tが予め定められている設定温度Tc未満となる燃料の最大噴射量である決定最大噴射量Qmaxを算出するように構成される。設定温度Tcは、エンジン不具合(過給機の損傷、排気管やシリンダヘッドの熱変形に起因するガス漏れ、及びシリンダヘッドの疲労寿命の低下など)を発生させる排気の排気温度Tよりも低くなるように予め定められている温度である。図2に示した実施形態では、設定温度Tcは記憶部4に予め記憶されている。
最大上陸角度算出部3は、最大上陸角度θを算出する。最大上陸角度θは、エンジン50に決定最大噴射量Qmaxの燃料を噴射した場合において、水陸両用車100が水上から陸地に上陸可能な角度である。最大上陸角度θは、図1Bを参照して後述する上陸実角度θrと比較可能な角度であって、例えば、0度<θ<90度の範囲となるように算出される。
図2に示した実施形態では、記憶部4は、予め設定されたマップである最大上陸角度マップMap2を記憶している。最大上陸角度マップMap2は、図4に示すように、決定最大噴射量Qmax及びエンジン回転数Neに最大上陸角度θが関連付けられたマップである。図示した実施形態では、最大上陸角度θ=θ1を実線で、最大上陸角度θ=θ2を点線で、最大上陸角度θ=θ3を一点鎖線で、最大上陸角度θ=θ4を2点鎖線で示しており、各最大上陸角度の大小関係はθ4<θ3<θ2<θ1である。また、同一のエンジン回転数Neでは、決定最大噴射量Qmaxが大きくなるほど、最大上陸角度θは大きくなる。そして、最大上陸角度算出部3は、記憶部4に記憶されているこの最大上陸角度マップMap2を参照して、決定最大噴射量Qmaxにおける最大上陸角度θを算出する。
このような本発明の一実施形態に係る上陸可否判定装置1の構成によれば、決定最大噴射量算出部2は、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際におけるエンジン50に噴射される燃料の最大噴射量であって、エンジン50から排出される排気の排気温度Tが予め定められている設定温度Tc未満となる最大噴射量である決定最大噴射量Qmaxを算出する。最大上陸角度算出部3は、エンジン50に決定最大噴射量Qmaxの燃料を噴射した場合において、水陸両用車100が水上から陸地に上陸可能な最大上陸角度θを算出する。
このため、水陸両用車100が水上から最大上陸角度θ以下となる陸地に上陸するようにすれば、排気の排気温度Tが高温となり過ぎることによるエンジン不具合が発生するのを防止することができる。
また、例えば、図2に示す報知装置107が最大上陸角度θを表示するなどして報知すれば、この報知された最大上陸角度θに基づいて乗員が上陸可能か否かを水陸両用車100が陸地に接地する前など、実際に上陸を開始する前に判定することができる。よって、上陸を開始したものの上陸が失敗するような事態を防止することができ、確実に上陸ができるように図ることができる。
幾つかの実施形態では、図2に示すように、上陸可否判定装置1は、実角度取得手段5と、判定部6と、をさらに備える。
実角度取得手段5は、水陸両用車100が上陸する上陸実角度θrを取得する手段であって、例えば、図1Bに示すようにカメラ5A(5)を用いて陸地の所定箇所を撮像し、撮像画像から上陸実角度θrを計測する。上陸実角度θrは、図1Bに示すように、陸地の所定箇所における水面に対する地面の角度である。尚、上陸実角度θrは、エンジン50の運転モードに関係なく取得されてもよい。
実角度取得手段5は、カメラ5Aを用いる以外の方法であってもよい。例えば、水面からの高さごとに水陸両用車100から陸地までの距離を測定するための赤外線などのようなレーザを用いる方法であってもよい、この場合、測定された距離に基づいて上陸実角度θrを推定する。または、陸地の所定箇所における上陸実角度θrを含む地理情報やGPSを用いる方法であってもよい、この場合、例えば、記憶部4に記憶されている地理情報から上陸実角度θrを取得する。
判定部6は、実角度取得手段5が取得した上陸実角度θrと最大上陸角度算出部3が算出した最大上陸角度θとの比較に基づいて、水陸両用車100が陸地の所定箇所から上陸可能であるかどうかを判定する。判定部6は、例えば、上陸実角度θr<最大上陸角度θである場合には、水陸両用車100が陸地の所定箇所から上陸可能であると判定し、上陸実角度θr≧最大上陸角度θである場合には、水陸両用車100が上陸不可能であると判定する。
尚、幾つかの実施形態では、図2に示すように、判定部6が判定した結果を乗員に知らせるための装置である報知装置107が設けられる。報知装置107は、判定結果をモニタに表示することで乗員に視覚的に判定結果を知らせる装置であってもよいし、「上陸可能」というような判定音を鳴らすことで乗員に聴覚的に判定結果を知らせる装置であってもよい。
このような構成によれば、判定部6は、実角度取得手段5が取得した上陸実角度θrと最大上陸角度算出部3が算出した最大上陸角度θとの比較に基づいて、水陸両用車100が陸地の所定箇所から上陸可能であるかどうかを判定する。このため、例えば、水陸両用車100に乗っている乗員が目視によって上陸実角度θrを推定し、この目視によって推定された上陸実角度θrと最大上陸角度θとを比較する場合に比べて、エンジン不具合の発生防止を考慮した水陸両用車の上陸可否判定を高い精度で行なうことができる。
幾つかの実施形態では、最大上陸角度算出部3は、水陸両用車100に積載されている積載物の重量Wに基づく補正を実行して最大上陸角度θを算出する。
図2に示した実施形態では、最大上陸角度算出部3は積載物の重量Wを重量センサ103から取得している。この重量センサ103は、水陸両用車100に設けられ、水陸両用車100に積載されている積載物の重量Wを取得するための装置である。幾つかの実施形態では、最大上陸角度算出部3は、重量センサ103以外の装置によって取得された重量情報に基づいて積載物の重量Wを推定してもよい。
そして、最大上陸角度算出部3は、上述したように最大上陸角度マップMap2を参照して、決定最大噴射量Qmaxにおける最大上陸角度θを算出し、この算出した最大上陸角度θに、例えば積載物の重量Wに対応する係数を乗算することで、積載物の重量Wに基づく補正を実行する。
最大上陸角度θは、水陸両用車100に積載されている積載物の重量Wに応じて変化する。例えば、最大上陸角度θは積載物の重量Wが大きくなると小さくなる。このため、このような構成によれば、最大上陸角度算出部3は、積載物の重量Wに基づく補正を実行して最大上陸角度θを算出することで、積載物の重量Wに基づく補正を実行しないで最大上陸角度θを算出する場合と比較して、より精度の高い最大上陸角度θを算出することができる。
幾つかの実施形態では、最大上陸角度算出部3は、水陸両用車100の重心の位置に基づく補正を実行して最大上陸角度θを算出する。最大上陸角度θは、水陸両用車100の重心の位置に応じて変化する。例えば、水陸両用車100の重心が水陸両用車100の後方に位置すれば、水陸両用車100の重心が水陸両用車100の前方に位置する場合と比較して、最大上陸角度θは小さくなる。このため、このような構成によれば、最大上陸角度算出部3は、水陸両用車100の重心の位置に基づく補正を実行することで、より精度の高い最大上陸角度θを算出することができる。
幾つかの実施形態では、決定最大噴射量算出部2は、エンジン50のエンジン回転数Neと、エンジン50に導入される吸気の圧力損失ΔP、水陸両用車100の外気温Ta、及び水陸両用車100の外気圧Paのうち少なくとも1つとに基づいて、決定最大噴射量Qmaxを算出する。
図2に示した実施形態では、決定最大噴射量算出部2は圧力損失ΔPを圧力センサ104から取得している。圧力センサ104は、水陸両用車100に設けられ、エンジン50に導入される吸気の圧力損失ΔPを取得するための装置である。圧力センサ104は、例えば、エンジン50に導入された吸気がエアフィルタ128(図9参照)を通過することによる圧力損失ΔPをエアフィルタ128の上流側の吸気圧力と下流側の吸気圧力との差から算出する装置や、吸気がインタークーラ129(図9参照)を通過することによる圧力損失ΔPをインタークーラ129の上流側の吸気圧力と下流側の吸気圧力との差から算出する装置である。また、圧力損失ΔPの代わりに、吸気マニホールド131(図9参照)内の吸気圧力が取得されてもよい。
図2に示した実施形態では、決定最大噴射量算出部2は外気温Taを外気温センサ105から取得している。外気温センサ105は、水陸両用車100に設けられ、水陸両用車100の外気温Taを取得するための装置である。また、決定最大噴射量算出部2は外気圧Paを外気圧センサ106から取得している。外気圧センサ106は、水陸両用車100に設けられ、水陸両用車100の外気圧Paを取得するための装置である。
図3Aを参照して上述したように、決定最大噴射量マップMap1Aはエンジン回転数Neと決定最大噴射量Qmaxとの関係を示すマップである。また、この決定最大噴射量マップMap1Aは、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paのうち少なくとも1つと関連付けられているマップである。そして、決定最大噴射量算出部2は、決定最大噴射量マップMap1Aを参照して、エンジン回転数Neに応じた決定最大噴射量Qmaxを算出する。
ここで、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paのうち少なくとも1つと関連付けるとは、後述する標準最大噴射量Qmax1及び、後述する補正係数K(圧力損失補正係数Kp、外気圧補正係数Kpa、外気温補正係数Kta)に基づいて(図7参照)、決定最大噴射量Qmaxを算出することである。尚、後述するステップ12で、エンジン運転条件は標準条件を満たさない場合(ステップS12:No)には、標準最大噴射量算出ステップS13、最大トルク算出ステップS14、ステップS15、補正標準最大噴射量算出ステップS16を実行しないで、標準最大噴射量Qmax1に、例えば補正係数K=1を乗算して、決定最大噴射量Qmax1を算出する。
このような構成によれば、決定最大噴射量算出部2は、エンジン回転数Neと、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paのうち少なくとも1つとに基づいて、決定最大噴射量Qmaxを算出する。これによって、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paといったエンジン運転条件に応じた決定最大噴射量Qmaxを算出することができる。例えば、決定最大噴射量算出部2は、外気温が25度である場合の決定最大噴射量や、外気温が40度である場合の決定最大噴射量を算出することができる。
幾つかの実施形態では、図2に示すように、決定最大噴射量算出部2は、標準最大噴射量算出部7と、最大トルク算出部8と、排気温度推定部9と、排気温度判定部10と、最大噴射量決定部11と、を含む。
標準最大噴射量算出部7は、エンジン50に導入される吸気の標準的な圧力損失ΔP、水陸両用車100の標準的な外気温Ta、及び水陸両用車100の標準的な外気圧Paのうち少なくとも1つを含む標準条件における標準最大噴射量Qmax1を、エンジン50のエンジン回転数Neに基づいて算出する。
ここで標準条件は、標準的なものとして任意に規定したエンジン運転中のエンジン運転条件であって、標準的な圧力損失ΔP、標準的な外気温Ta、又は標準的な外気圧Paのうち少なくとも1つを含む。これらの標準的な圧力損失ΔP、標準的な外気温Ta、又は標準的な外気圧Paは、標準的なものとして任意に規定した外気温、外気圧、吸気の圧力損失の値または範囲である。例えば、標準的な圧力損失ΔPは、エアフィルタ128やインタークーラ129に付着している埃や粉塵、異物などが非常に少ない場合、又は付着していない場合に、吸気がエアフィルタ128やインタークーラ129を通過するときの吸気の圧力損失である。標準的な外気温Taは、例えば、20度以上30度未満の範囲にある外気温である。標準的な外気圧Paは、例えば大気圧(1気圧)である。
図2に示した実施形態では、記憶部4は予め設定されたマップである標準最大噴射量マップMap1Bを記憶している。標準最大噴射量マップMap1Bは、図3Bに示すように、標準状態における、エンジン回転数Neと標準最大噴射量Qmax1との関係を示すマップである。また、標準最大噴射量Qmax1は、標準条件における、エンジン50に噴射される燃料の最大噴射量である。標準最大噴射量算出部7はこの標準最大噴射量マップMap1Bを参照して、標準条件における、エンジン回転数Neに応じた標準最大噴射量Qmax1を算出する。
最大トルク算出部8は、標準最大噴射量Qmax1に基づいて最大トルクNを算出する。図2に示した実施形態では、記憶部4は、予め設定されたマップである最大トルクマップMap3を記憶している。最大トルクマップMap3は、図5に示すように、標準最大噴射量Qmax1及びエンジン回転数Neに最大トルクNが関連付けられたマップである。図示した実施形態では、エンジン回転数Ne=Ne1を実線で、エンジン回転数Ne=Ne2を点線で、エンジン回転数Ne=Ne3を一点鎖線で、エンジン回転数Ne=Ne4を2点鎖線で示しており、各エンジン回転数の大小関係はNe1<Ne2<Ne3<Ne4である。また、同一のエンジン回転数Neでは、標準最大噴射量Qmax1が大きくなるほど最大トルクNは大きくなる。また、ポイントPのように、エンジン回転数Neに対する標準最大噴射量Qmax1の上限値が定められている。そして、最大トルク算出部8は、記憶部4に記憶されているこの最大トルクマップMap3を参照して、エンジン回転数Neにおける、標準最大噴射量Qmax1に対する最大トルクN(例えば、エンジン回転数Ne=Ne1におけるポイントPの最大トルクN)を算出する。
排気温度推定部9は、最大トルクNと、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paのうち少なくとも1つとに基づいて推定排気温度Tbを推定する。図2に示した実施形態では、記憶部4は、予め設定されたマップである推定排気温度マップMap4を記憶している。図6に示した実施形態では、推定排気温度マップMap4は最大トルクNと圧力損失ΔPとに推定排気温度Tbが関連付けられたマップである。
ここで、図6を参照して圧力損失ΔPが関連付けられている場合を例にして説明する。図示した実施形態では、標準条件(例えば、ΔP=0)における最大トルクNと推定排気温度Tbとの関係を実線で、圧力損失ΔP=ΔP1のエンジン運転条件における最大トルクNと推定排気温度Tbとの関係を点線で、圧力損失ΔP=ΔP2(ΔP1<ΔP2)のエンジン運転条件における最大トルクNと推定排気温度Tbとの関係を一点鎖線で示している。また、この推定排気温度マップMap4では、最大トルクNが大きくなるほど、推定排気温度Tbは高くなる。また、この推定排気温度マップMap4では、同一の最大トルクN1において、標準状態における推定排気温度Tb1(ポイントP1)<圧力損失ΔP1のエンジン運転条件における推定排気温度Tb2(ポイントP2)<圧力損失ΔP2のエンジン運転条件における推定排気温度Tb3(ポイントP3)である。排気温度推定部9は、記憶部4に記憶されているこの推定排気温度マップMap4を参照して、最大トルクN及び圧力損失ΔPに基づいて推定排気温度Tbを推定している。
排気温度判定部10は、推定排気温度Tbが設定温度Tc未満であるかどうかを判定する。上述したように設定温度Tcは、記憶部4に記憶されている。排気温度判定部10は、図6に示した実施形態では、推定排気温度Tbと設定温度Tcとを比較して、推定排気温度Tbが設定温度Tc未満であるかどうかを判定する。図示した実施形態では、最大トルクN1において、標準状態における推定排気温度Tb1、及び圧力損失ΔP1のエンジン運転条件における推定排気温度Tb2は設定温度Tc未満であり、圧力損失ΔP2のエンジン運転条件における推定排気温度Tbは設定温度Tc以上である。
最大噴射量決定部11は、推定排気温度Tbが設定温度Tc未満である場合には標準最大噴射量Qmax1を決定最大噴射量Qmaxとして決定する。一方で、最大噴射量決定部11は、推定排気温度Tbが設定温度Tc以上である場合には標準最大噴射量Qmax1を補正した補正後の標準最大噴射量Qmax2を決定最大噴射量Qmaxとして決定する。
圧力損失ΔP2のエンジン運転条件における推定排気温度Tbは設定温度Tc以上であると(図6参照)、補正後の標準最大噴射量Qmax2が、後述する図7の圧力損失補正係数マップMap5aを参照して算出される(圧力損失ΔP2の場合の圧力損失補正係数Kpを標準最大噴射量Qmax1に乗算する)。そして、この補正後の標準最大噴射量Qmax2に対応する最大トルクN2は、例えば図6のポイントP4に示すように、推定排気温度Tbが設定温度Tc未満となるトルクである。つまり補正後の標準最大噴射量Qmax2は、排気温度Tが設定温度Tc未満となる燃料の最大噴射量である。
このような構成によれば、エンジン回転数Neに基づいて算出可能な標準条件における標準最大噴射量Qmax1と、エンジン回転数Neとに基づいて最大トルクNを算出し、この最大トルクNと、圧力損失ΔP、外気温Ta、又は外気圧Paのうち少なくとも1つとに基づいて推定排気温度Tbを推定する。推定排気温度Tbが設定温度Tc未満の場合には、標準最大噴射量Qmax1を決定最大噴射量Qmaxとして決定する。一方で、最大噴射量決定部11は、推定排気温度Tbが設定温度Tc以上の場合には、標準最大噴射量Qmax1を補正した補正後の標準最大噴射量Qmax2を決定最大噴射量Qmaxとして決定する。これによって、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際におけるエンジン50に噴射される燃料の最大噴射量であって、排気温度Tが設定温度Tc未満となる最大噴射量である決定最大噴射量Qmaxを算出することができる。
幾つかの実施形態では、図2、図7及び図8に示すように、最大噴射量決定部11は、補正係数算出部12と、標準最大噴射量補正部13とを有する。
補正係数算出部12は、図7及び図8に示すように、圧力損失ΔPによって決定される圧力損失補正係数Kp、外気温Taによって決定される外気温補正係数Kta、及び外気圧Paによって決定される外気圧補正係数Kpaのうち少なくとも1つを含む補正係数Kを算出する。図2に示した実施形態では、記憶部4は、予め設定されたマップである圧力損失補正係数マップMap5a、外気温補正係数マップMap5b、外気圧補正係数マップMap5cを記憶している。
図7及び図8に示すように、圧力損失補正係数マップMap5aは、圧力損失ΔPと圧力損失補正係数Kpとの関係を示すマップである。圧力損失補正係数Kpは、圧力損失ΔP<所定圧力損失ΔP’においては一定であり、圧力損失ΔP≧所定圧力損失ΔP’においては圧力損失ΔPが大きくなるにつれて小さくなっている。尚、圧力損失ΔP<所定圧力損失ΔP’における圧力損失補正係数Kpは、例えば1であり、標準的な圧力損失の場合には圧力損失補正係数Kp=1となる。
図7及び図8に示すように、外気温補正係数マップMap5bは、外気温Taと外気温補正係数Ktaとの関係を示すマップである。外気温補正係数Ktaは、外気温Ta<所定外気温Ta’においては一定であり、外気温Ta≧所定外気温Ta’においては、外気温Taが大きくなるにつれて小さくなっている。尚、外気温Ta<所定外気温Ta’における外気温補正係数Ktaは、例えば1であり、標準的な外気温の場合には外気温補正係数Kta=1となる。
図7及び図8に示すように、外気圧補正係数マップMap5cは、外気圧Paと外気圧補正係数Kpaとの関係を示すマップである。外気圧補正係数Kpaは、外気圧Pa<所定外気圧Pa’においては外気圧Paが大きくなるにつれて大きくなり、外気圧Pa≧所定外気圧Pa’においては一定である。尚、外気温Pa>所定外気温Pa’における外気温補正係数Ktaは、例えば1であり、標準的な外気温の場合には外気温補正係数Kpa=1となる。
そして、補正係数算出部12は、圧力損失補正係数マップMap5aを参照して取得する圧力損失補正係数Kp、外気温補正係数マップMap5bを参照して取得する外気温補正係数Kta、及び外気圧補正係数マップMap5cを参照して取得する外気圧補正係数Kpaのうち少なくとも1つを含む補正係数Kを算出する。尚、補正係数Kは、例えば、圧力損失補正係数Kp、外気温補正係数Kta、及び外気圧補正係数Kpaのうちのいずれかの値であってもよいし、圧力損失補正係数Kp、外気温補正係数Kta、及び外気圧補正係数Kpaの3つを用いて算出される値であってもよい。
標準最大噴射量補正部13は、図7及び図8に示すように、標準最大噴射量Qmax1と補正係数Kとに基づいて、補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出する。図7に示した実施形態では、標準最大噴射量補正部13は標準最大噴射量Qmax1に補正係数Kを乗算することで、補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出している。
このような構成によれば、推定排気温度Tbが設定温度Tc以上となるような場合には、推定排気温度Tbが設定温度Tc未満となるように標準最大噴射量Qmax1の値を補正することが可能な補正係数Kを、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Paのうち少なくとも1つに基づいて算出する。このような補正係数Kで標準最大噴射量Qmax1を補正することにより、上陸時に生じる実際の排気温度Tが設定温度Tc未満となるような最大噴射量(決定最大噴射量Qmax)を容易に算出することができる。
幾つかの実施形態では、図7及び図8に示すように、補正係数算出部12は、圧力損失補正係数Kp、外気温補正係数Kta、及び外気圧補正係数Kpaの少なくとも2つのうち最も小さい最小補正係数Kmin(K)を算出する。そして、標準最大噴射量補正部13は、標準最大噴射量Qmax1と最小補正係数Kminとに基づいて補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出する。図7に示した実施形態では、標準最大噴射量補正部13は標準最大噴射量Qmax1に最小補正係数Kminを乗算することで、補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出している。
このような構成によれば、少なくとも2つ以上の補正係数Kを算出した場合には、最も小さい補正係数Kである最小補正係数Kminと標準最大噴射量Qmax1とに基づいて補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出する。つまり、標準最大噴射量補正部13は、排気温度Tが最も低くなる補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出する。よって、排気の排気温度Tが高温となり過ぎることにより生じるエンジン不具合をより確実に防止することができる。
幾つかの実施形態では、図2及び図8に示すように、最大噴射量決定部11は補正係数補正部14をさらに含む。この補正係数補正部14は、図8に示すように、エンジン回転数Neに応じて補正係数Kを補正する。そして、補正係数補正部14が補正した補正後の補正係数K’で、標準最大噴射量Qmax1を補正する。
図2に示した実施形態では、記憶部4は、予め設定されたマップである補正量マップMap6を記憶している。補正量マップMap6は、図8に示すように、エンジン回転数Neと補正量Lとの関係を示すマップである。補正量Lはエンジン回転数Neに応じて定められる値である。補正係数補正部14は、補正係数Kに、補正量マップMap6を参照することで算出される補正量Lを乗算することで補正係数Kを補正し、エンジン回転数Neに応じた補正後の補正係数K’を算出する。そして、標準最大噴射量Qmax1に補正後の補正係数K’を乗算して、補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出している。
このような構成によれば、エンジン回転数Neに応じて補正係数Kを補正する。このように、エンジン回転数Neに応じた補正係数K’を用いることで、排気の排気温度Tが高温となり過ぎることにより生じるエンジン不具合をさらに確実に防止することができる。
また、最大噴射量決定部11は補正後の標準最大噴射量Qmax2が必要以上に小さく補正されてしまうことを防止し、エンジン50の応答性低下を抑制することができる。
図9は、本発明の一実施形態に係る水陸両用車のエンジン制御装置の概略構成図である。
幾つかの実施形態では、図9に示すように、水陸両用車100は、上述した上陸可否判定装置1と、エンジン制御装置110とを備える。エンジン制御装置110は、エンジン50の電子的な制御を行なうための装置であって、例えば、ECUである。
図9に示した実施形態では、エンジン50は12の気筒(燃焼室120)を有していて、例えば、ディーゼルエンジンである。気筒の各々には燃料噴射装置121が備えられている。これら燃料噴射装置121から噴射される燃料を燃焼することで各燃焼室120から排出される排気は、排気マニホールド122で合流した後、排気通路123に設けられたタービン124を駆動させる。そして、タービン124の駆動によって、吸気通路127に設けられたコンプレッサ125を駆動させる。これらタービン124及びコンプレッサ125によってターボチャージャ126が構成されている。図示した実施形態では、エンジン50は複数のターボチャージャ126(低圧段ターボチャージャ126A、及び高圧段ターボチャージャ126B)を備える、いわゆる多段過給システムを適用しており、エンジン50に導入される吸気を過給する過給段数を調整するためのバルブ130が、吸気通路127及び排気通路123に設けられている。
吸気通路127に取りこまれた吸気は、エアフィルタ128を通過した後、コンプレッサ125によって圧縮、昇圧及び昇温される。そして、昇温された吸気はコンプレッサ125の下流側に配置されたインタークーラ129によって冷却され、吸気マニホールド131を介して各燃焼室120に供給される。図示した実施形態では、低圧段ターボチャージャ126Aで過給した吸気を、高圧段ターボチャージャ126Bに供給する前に冷却するための装置である中間冷却器132が吸気通路127に設けられている。
尚、本開示における「吸気通路127」とは、吸気が燃焼室120に供給されるまでに流れる通路を指し、「吸気通路127」には吸気マニホールド131が含まれる。同様に、本開示における「排気通路123」とは、燃焼室120から排出された排気がエンジン50の外部に排出されるまでに流れる通路を指し、「排気通路123」には排気マニホールド122が含まれる。
エンジン制御装置110は上陸可否判定装置1が算出する決定最大噴射量Qmaxでエンジン50を制御する。
エンジン制御装置110は、図9に示すように、噴射タイミング制御部112、燃料圧制御部114、及びバルブ制御部116の少なくとも1つを有する。噴射タイミング制御部112は、上陸可否判定装置1によって算出された決定最大噴射量Qmaxに基づいて、エンジン50の燃焼室120に燃料を噴射する燃料噴射タイミングを変更するように制御する燃料噴射タイミング変更制御を実行可能に構成されている。燃料圧制御部114は、上陸可否判定装置1によって算出された決定最大噴射量Qmaxに基づいて、エンジン50に噴射する燃料を蓄圧する燃料噴射装置121内(コモンレール)の圧力を増減するように制御する燃料圧増減制御を実行可能に構成されている。バルブ制御部116は、上陸可否判定装置1によって算出された決定最大噴射量Qmaxに基づいて、エンジンに導入される吸気を過給する過給段数を増減するように制御する過給段数増減制御を実行可能に構成されている。
このような構成によれば、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際において、エンジン制御装置110が決定最大噴射量Qmaxでエンジン50を制御することで、排気の排気温度Tが高温となり過ぎることによるエンジン不具合の発生を防止することができる。
図10は、本発明の一実施形態に係るエンジン制御装置の上陸時エンジン制御決定部を説明するためのブロック図である。
また、エンジン制御装置110は、図9に示すように、上陸時エンジン制御決定部118をさらに備える。上陸時エンジン制御決定部118は、図10に示すように、水陸両用車100が陸地に上陸しているときの燃料の噴射量(上陸時噴射量Qf)に応じて、噴射タイミング制御部112、燃料圧制御部114、及びバルブ制御部116の少なくとも1つに対して指示を行なうように構成されている。
図10に示した実施形態では、上陸時エンジン制御決定部118は、エンジン50(エンジン50の燃焼室120)に噴射している燃料の噴射量Q、及び上陸可否判定装置1によって算出された決定最大噴射量Qmaxを取得する。図示した実施形態では、燃料の噴射量Qは、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Accに燃料の噴射量Qが関連付けられたマップである噴射量マップMap7を参照することで算出されている。尚、噴射量マップMap7は記憶部4に予め記憶されていてもよい。
そして、上陸時エンジン制御決定部118は、燃料の噴射量Qと決定最大噴射量Qmaxとを比較する。燃料の噴射量Q>決定最大噴射量Qmaxである場合には、決定最大噴射量Qmaxを上陸時噴射量Qfとする。燃料の噴射量Q≦決定最大噴射量Qmaxである場合には、燃料の噴射量Qを上陸時噴射量Qfとし、燃料の噴射量Qが維持される。
上陸時エンジン制御決定部118は、過給段数マップMap8a、燃料圧マップMap8b、及び噴射タイミングマップMap8cの少なくとも1つを備える。過給段数マップMap8aは、エンジン回転数Ne及び上陸時噴射量Qfに過給段数C1が関連付けられたマップである。燃料圧マップMap8bは、エンジン回転数Ne及び上陸時噴射量Qfに燃料圧C2が関連付けられたマップである。噴射タイミングマップMap8cは、エンジン回転数Ne及び上陸時噴射量Qfに噴射タイミングC3が関連付けられたマップである。
上陸時エンジン制御決定部118は、過給段数マップMap8aを参照して過給段数C1を算出し、燃料圧マップMap8bを参照して燃料圧C2を算出し、噴射タイミングマップMap8cを参照して噴射タイミングC3を算出する。そして、上陸時エンジン制御決定部118は、噴射タイミング制御部112に対しては噴射タイミングC3となる燃料噴射タイミング変更制御を実行するように指示し、燃料圧制御部114に対しては燃料圧C2となるように燃料圧増減制御を実行するように指示し、バルブ制御部116に対しては過給段数C1となるように過給段数増減制御を実行するように指示する。
図11A及び図11Bは、本発明の一実施形態に係る水陸両用車の上陸可否判定方法のフローチャートである。
本発明の一実施形態に係る水陸両用車の上陸可否判定方法は、図11A及び図11Bに示すように、決定最大噴射量算出ステップS1と、最大上陸角度算出ステップS2と、を備える。
決定最大噴射量算出ステップS1は、水陸両用車100が水上から陸地に上陸する際におけるエンジンに噴射される燃料の最大噴射量であって、エンジン50から排出される排気の排気温度Tが予め定められている設定温度Tc未満となる最大噴射量である決定最大噴射量Qmaxを算出する。最大上陸角度算出ステップS2は、エンジン50に決定最大噴射量Qmaxの燃料を噴射した場合において、水陸両用車100が水上から陸地に上陸可能な最大上陸角度θを算出する。
図11A及び図11Bに示した実施形態では、水陸両用車の上陸可否判定方法は、上陸モード切替ステップS10、エンジン運転条件取得ステップS11、標準最大噴射量算出ステップS13、最大トルク算出ステップS14、及び補正標準最大噴射量算出ステップS16をさらに備える。図11Aに示した実施形態では、上陸地変更ステップS17Aをさらに備える。図11Bに示した実施形態では、清掃ステップS17Bをさらに備える。
上陸モード切替ステップS10は、エンジン50の運転を上陸モードに切り換える。図示した実施形態では、後述する上陸実角度取得ステップS3によって、上陸実角度θrが取得された後に実行されている。
エンジン運転条件取得ステップS11は、エンジン50の状態を知るために、エンジン50のエンジン回転数Ne、エンジン50から排出される排気の排気温度T、及びエンジン50に導入される吸気の圧力損失ΔPなどを取得する。また、エンジン50を運転させる環境を知るために、水陸両用車100に積載される積載物の重量W、水陸両用車100の外気温Ta、及び水陸両用車100の外気圧Paなどを取得する。図示した実施形態では、上陸モード切替ステップS10が、エンジン50の運転を上陸モードに切り換えた後に実行されている。
ステップS12では、エンジン運転条件取得ステップS11で取得したエンジン運転条件は標準条件を満たさないかどうかを確認している。標準条件を満たさない場合には(ステップS12:No)、決定最大噴射量算出ステップS1に進む。この場合、決定最大噴射量算出ステップS1は、標準条件における最大噴射量(標準最大噴射量Qmax1)を、決定最大噴射量Qmaxとして算出する。標準条件を満たす場合には(ステップS12:Yes)、次のステップである標準最大噴射量算出ステップS13に進む。
標準最大噴射量算出ステップS13は、標準最大噴射量Qmax1を算出する。最大トルク算出ステップS14は、標準最大噴射量算出ステップS13が算出した標準最大噴射量Qmax1に基づいて最大トルクNを算出する。
ステップS15では、最大トルク算出ステップS14が算出した最大トルクN、及びエンジン運転条件取得ステップS11で取得したエンジン運転条件(例えば、圧力損失ΔP、外気温Ta、及び外気圧Pa)に基づいて算出する推定排気温度Tbと設定温度Tcとを比較する。推定排気温度Tb<設定温度Tcである場合には(ステップS15:Yes)、決定最大噴射量算出ステップS1に進む。推定排気温度Tb≧設定温度Tcである場合には(ステップS15:No)、次のステップである補正標準最大噴射量算出ステップS16に進む。
補正標準最大噴射量算出ステップS16は、補正後の標準最大噴射量Qmax2を算出する。上陸地変更ステップS17Aは、後述する判定ステップS4において、上陸実角度θr≧最大上陸角度θと判定された後に(判定ステップS4:No)、水陸両用車100が上陸する陸地を変更する。清掃ステップS17Bは、後述する判定ステップS4において、上陸実角度θr≧最大上陸角度θと判定された後に(判定ステップS4:No)、エンジン50に導入される吸気の圧力損失ΔPを低減するために、例えば、エアフィルタ128やインタークーラ129に付着している埃などを取り除く。
本発明の一実施形態に係る水陸両用車の上陸可否判定方法によれば、水陸両用車100が水上から最大上陸角度θ以下となる陸地に上陸するようにすれば、排気の排気温度Tが高温となり過ぎることによるエンジン不具合が発生するのを防止することができる。また、例えば、最大上陸角度θを表示するなどして報知すれば、この報知された最大上陸角度θに基づいて乗員が上陸可能か否かを水陸両用車両100が陸地に接地する前など、実際に上陸を開始する前に判定することができる。よって、上陸を開始したものの上陸が失敗するような事態を防止することができ、確実に上陸ができるように図ることができる。
幾つかの実施形態では、水陸両用車の上陸可否判定方法は、図11A及び図11Bに示すように、上陸実角度取得ステップS3と、判定ステップS4とを備える。実角度取得ステップS3は、水陸両用車100が上陸する上陸実角度θrを取得する。判定ステップS4は、実角度取得ステップS3が取得した上陸実角度θrと最大上陸角度算出ステップS2が算出した最大上陸角度θとの比較に基づいて、水陸両用車100が上陸可能であるかどうかを判定する。
このような方法によれば、判定ステップS4は、実角度取得ステップS3が取得した上陸実角度θrと最大上陸角度算出ステップS2が算出した最大上陸角度θとの比較に基づいて、水陸両用車100が上陸可能であるかどうかを判定する。このため、例えば乗員が目視によって水陸両用車の上陸可否を判定する場合と比較して、正確に判定をすることができる。
以上、本発明の一実施形態にかかる水陸両用車の上陸可否判定装置、上陸可否判定方法、及び水陸両用車について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。