以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
[第1実施形態]
図1に示すエアフロメータ14は例えば車両に搭載されている。エアフロメータ14は、主通路としての吸気通路12に設けられており、内燃機関に供給される吸入空気の流量や温度、湿度、圧力といった物理量を計測する機能を有している。エアフロメータ14は、流体の物理量を計測する物理量計測装置であって、気体としての吸入空気を計測する流量計に相当する。
エアフロメータ14は、吸気通路12において図示しないエアクリーナの下流側であって図示しないスロットルバルブの上流側に配置されている。この場合、吸気通路12においてエアフロメータ14にとっては、エアクリーナ側が上流側であり、燃焼室側が下流側になる。
図1、図2に示すエアフロメータ14は、吸気通路12を形成する吸気管12aに着脱可能に取り付けられている。エアフロメータ14は、吸気管12aの筒壁を貫通するよう形成されたエアフロ挿入孔12bに挿し込まれており、少なくとも一部を吸気通路12内に位置させている。吸気管12aは、エアフロ挿入孔12bから外周側に向けて延びた円環状の管フランジ12cを有しており、合成樹脂材料等により形成された配管を含んで構成されている。以降、吸気通路12の長手方向、すなわち吸気通路12において吸入空気が流れる方向のことを、流れ方向と記載する。
図1~図6に示すように、エアフロメータ14は、ハウジング21、流量検出部22及び吸気温センサ23を有している。ハウジング21は、少なくとも樹脂を含んで形成されている。具体的には、ハウジング21は、樹脂材料により形成され且つ絶縁性を有するベースポリマーと、ベースポリマーよりも強度が高いフィラーとを有する。フィラーは、ハウジング21を強化する強化材である。エアフロメータ14においては、ハウジング21が吸気管12aに取り付けられていることで、流量検出部22が、吸気通路12を流れる吸入空気と接触可能な状態になる。
ハウジング21は、バイパスハウジング24、リング保持部25、フランジ部27、コネクタ部28、根元部29a及び保護突起29bを有している。リング保持部25にはOリング26が取り付けられている。リング保持部25は、Oリング26を介してエアフロ挿入孔12bに内嵌される部位である。図6ではOリング26の図示を省略している。
バイパスハウジング24は、リング保持部25から吸気通路12に向けて突き出している。以降、バイパスハウジング24のリング保持部25側をハウジング基端と記載し、また、バイパスハウジング24のリング保持部25とは反対側をハウジング先端と記載する。
フランジ部27は、リング保持部25に対して吸気管12aの外側、すなわち吸気通路12外に配置されており、エアフロ挿入孔12bを吸気管12aの外側から覆った状態になっている。フランジ部27には、ネジ孔42が複数形成されており、このネジ孔42を用いてハウジング21が吸気管12aのボス12dに固定されている。
コネクタ部28は、複数のコネクタターミナル28aを囲う部位であり、コネクタターミナル28aを保護するターミナル保護部に相当する。複数のコネクタターミナル28aのうちの1つはグランド端子であり、外部のグランド45に接続される。
根元部29aは、リング保持部25から吸気通路12の中心側に向けて突出し、エンジンから受熱し温度上昇したバイパスハウジング24の熱の影響を避けるべく、バイパスハウジング24から側方に離間した位置に配置されている。
吸気温センサ23は、吸入空気の温度を感知する感温素子23aと、感温素子23aから延びた一対のリード線23bと、リード線23bに接続された一対の吸気温ターミナル23cとを有している。一対の吸気温ターミナル23cは根元部29aから延びている。感温素子23aは、一対のリード線23bを介して一対の吸気温ターミナル23cにかけ渡された状態になっている。リード線23b及び吸気温ターミナル23cは、いずれも導電性を有している。吸気温ターミナル23cは、コネクタ部28内部でコネクタターミナル28aに電気的に接続されている。吸気温センサ23は、感温素子23aにて感知した吸気温に応じた検出信号を出力する。
保護突起29bは、バイパスハウジング24から側方に向けて突出しており、吸気温センサ23よりもハウジング先端側に配置されている。バイパスハウジング24からの保護突起29bの突出寸法は、バイパスハウジング24からの吸気温センサ23の離間距離より大きくなっている。保護突起29bは、エアフロメータ14の吸気管12aへの取り付け時において、吸気温センサ23と吸気管12aとの接触による吸気温センサ23の破損を抑制する。
図6に示すように、バイパスハウジング24は、吸気通路12を流れる吸入空気の一部が流れ込むバイパス通路30を形成している。バイパス通路30は、通過通路31及び計測通路32を有しており、これら通過通路31及び計測通路32は、バイパスハウジング24の内部空間により形成されている。
通過通路31は、バイパスハウジング24の先端部を流れ方向に貫通しており、上流端部である流入口33aと、下流端部である流出口33bとを有している。計測通路32は、通過通路31の中間部分から分岐した分岐通路であり、下流端部である計測出口33cを有している。計測出口33cは、バイパスハウジング24の両側面に1つずつ設けられている。
通過通路31は、後半部分47が流出口33bに向けてハウジング基端側に寄るように傾斜している。また、後半部分47は、流出口33bに近付くにつれて絞られた構成になっている。計測通路32の上流端部の計測入口34は、通過通路31と計測通路32との境界である。
図1に示すように流れ方向において流出口33bを上流側から見ると、計測入口34は、通過通路31のハウジング基端側に隠れて見えない位置にあることになる。これにより、吸気に交じって砂塵およびダスト等の異物が飛来しても、通過通路31を直進して流出口33bから排出され易くなる。そのため、異物は流量検出部22まで到達しにくい。
図6、図7に示すように、計測通路32は、中間位置にて折り返された折り返し形状になっている。計測通路32は、流量検出部22が設けられた検出路32aと、検出路32aに吸入空気を導入する導入路32bと、検出路32aから吸入空気を排出する排出路32cとを有している。導入路32bは通路境界部34からハウジング基端側に向けて延びており、排出路32cは、計測出口33cからハウジング基端側に向けて延びている。
検出路32aは、導入路32b及び排出路32cよりもハウジング基端側に配置されており、これら導入路32bと排出路32cとにかけ渡された状態で、導入路32bの下流端部と排出路32cの上流端部とを接続している。
検出路32aにおいては、吸気通路12や通過通路31とは反対向きに吸入空気が流れる。計測通路32においては、通過通路31から流入した吸入空気が一度はハウジング基端側に向かって流れた後、検出路32aを通過することでUターンしてハウジング先端側に向かって流れる。Uターン形状の通路により、吸気に交じって砂塵およびダスト等の異物が飛来しても流量検出部22まで到達しにくくなっている。
計測出口33cは、排出路32cを吸気通路12に開放している。2つの計測出口33cの開口面積の合計は、排出路32cの通路面積とほぼ同じになっている。
流量検出部22は、計測通路32を流れる流体の物理量に応じた検出信号を出力する物理量検出部である。第1実施形態では、流量検出部22は、検出路32aを流れる吸入空気の流量に応じた検出信号を出力する。
図6~図8に示すように、流量検出部22は、回路基板としての検出基板22aと、検出基板22aに搭載された検出素子22bとを有している。検出基板22aは流量検出部22の外郭を形成しており、検出基板22aの基板面の中央に検出素子22bが配置されている。検出基板22aは、コネクタターミナル28aに電気的に接続されている。検出素子22bは、発熱抵抗体等の発熱部や温度検出部を有しており、流量検出部22は、検出素子22bでの発熱に伴う温度の変化に応じた検出信号を出力する。
流量検出部22の検出精度を適正に保つには、検出素子22bでの吸気流量に伴う温度検出部での温度変化がある程度大きい必要があり、その温度変化を大きくするには検出素子22bに触れる流体の流速がある程度大きいことが好ましい。これは、流体の流速に応じた検出素子22bの温度変化に対して、自然対流により検出素子22bに作用する温度変化の影響を無くすためである。自然対流による温度変化は検出素子22bの設置角度により変化し、流体による温度変化の検出信号に誤差を及ぼす。検出素子22bに触れる流体の流速を大きくすることで、検出素子22bならびにエアフロメータ14の設置角度により生じる自然対流の影響をなくし、流体の検出を適正に保つことができる。
エアフロメータ14は、チップ式の流量検出部22を含んで構成されたセンササブアッセンブリを有しており、このセンササブアッセンブリをセンサSA50と称する。
センサSA50は、回路収容部51、中継部52、センシング部53及びリードターミナル54を有している。回路収容部51とセンシング部53との間に中継部52が設けられている。リードターミナル54は、導電性を有しており、回路収容部51からセンシング部53とは反対側に向けて複数延出している。
図6、図7、図9に示すように、ハウジング21において、センサSA50はセンシング部53が検出路32aに入り込む位置に配置されている。センシング部53は、検出路32aの中間位置に配置されている。センシング部53は、検出路32aの中間領域を通路幅方向に仕切った状態になっている。検出路32aの内周面において流量検出部22に対向する位置には、検出路32aの通路面積を小さくすることで検出路32aを絞る検出絞り部59が設けられている。
検出路32aにおいては、センシング支持部57と検出絞り部59との離間距離が流量検出部22に近付くにつれて徐々に小さくなっていく。この構成では、導入路32bから検出路32aに流れ込んだ吸入空気がセンシング支持部57と検出絞り部59との間を通る場合、流量検出部22の検出素子22bに近付くにつれて吸入空気の流速が大きくなりやすい。この場合、検出素子22bには適度な流速で吸入空気が付与されるため、流量検出部22の検出精度を高めることができる。
図8、図10に示すように、センサSA50は、このセンサSA50の外郭を形成するモールド部76を有している。モールド部76は、モールド樹脂等の樹脂材料により形成されており、流量検出部22や回路チップ81などを保護した状態で固定している。
図2、図10に示すように、センサSA50のリードターミナル54は、ターミナルユニット85を介してコネクタターミナル28aに電気的に接続されている。リードターミナル54及びコネクタターミナル28aは、それぞれ所定間隔で複数ずつ並べられている。
ターミナルユニット85は、複数のブリッジターミナル86と、これらブリッジターミナル86を固定するターミナル固定部87とを有している。ブリッジターミナル86は、導電性を有し、全体としてU字状に延びた細長部材になっており、ターミナル28a,54に溶接等で接続されている。ターミナル固定部87は、電気的な絶縁性を有する樹脂材料等により形成されており、各ブリッジターミナル86の中間部分を連結している。
感温素子23aからの信号は、吸気温ターミナル23c→ブリッジターミナル86→リードターミナル54→モールド部76内の回路チップ81→リードターミナル54→ブリッジターミナル86→コネクタターミナル28aの順でコネクタ部28から出力される。
センサSA50においては、計測通路32を流通する吸入空気の流量に応じた流量信号が流量検出部22から回路チップ81に対して出力され、この流量信号が回路チップ81にて処理されることで吸気通路12における吸入空気の流量が算出される。回路チップ81により算出された流量は、リードターミナル54やコネクタターミナル28aを通じた信号送信により、外部のECU等に伝達される。このようにエアフロメータ14は、吸気通路12を流通する吸入空気の流量を流量検出部22によって検出する。
ここで、流量検出部22への異物付着によるエアフロメータ14の検出精度の悪化について説明する。第1実施形態では、前述のように計測入口34の形成位置や計測通路32の形状により異物が流量検出部22に到達しにくくなっている。しかし、異物の流量検出部22への到達を完全に無くすことはできない。また、異物が帯電している場合、その異物が流量検出部22に付着してエアフロメータ14の特性ずれが発生するおそれがある。
この特性ずれに関して、ハウジングの樹脂材料に帯電防止剤を混入させることにより異物の帯電抑制を図る従来技術がある。しかし、帯電防止剤を含むハウジングだと、帯電防止剤の分だけ樹脂材料が減少するため、ハウジングの成形性が低下しやすい。また、帯電防止剤の分だけガラス繊維が少なくなるため、ハウジングの強度が低下しやすい。強度低下は耐久性が低下する要因となる。つまり、樹脂材料に帯電防止剤を混入させることによるハウジングの成形性の低下および耐久性の低下が課題であった。
以下、ハウジング21の成形性および耐久性の低下を回避しつつ、エアフロメータ14の特性ずれを抑制するための構成について説明する。
図11に示すように、ハウジング21は、グラファイトを含む非絶縁部90を有する。具体的には、非絶縁部90は、ハウジング21の内面であって、バイパス通路30を区画するバイパスハウジング24の内壁24aに形成されている。図11において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された内壁24aである。非絶縁部90は、グラファイトの集合体である炭化物を含んでいることで導電性を有しており、電荷をグランド45に放出する導電部である。非絶縁部90は、電磁波が照射された部位、すなわち電磁波の被照射部からなる。
非絶縁部90の表面固有抵抗値は1012Ω/sq.以下である。表面固有抵抗値について以下(1)~(4)のように領域を分けた場合、第1実施形態では非絶縁部90は(4)の領域に属する。なお、非絶縁部90は(2)または(3)の領域に属していてもよい。
(1)絶縁領域:1013Ω/sq.以上
(2)帯電防止領域:1010~1012Ω/sq.
(3)無帯電領域:108~109Ω/sq.
(4)半導電~導電領域:107Ω/sq.以下
非絶縁部90の形成方法を、ハウジング21の製造手順と共に説明する。図6、図10に示すように、バイパスハウジング24、リング保持部25、根元部29aおよび保護突起29bは、ハウジング本体91を構成している。フランジ部27およびコネクタ部28は、主通路外ハウジング92を構成している。
エアフロメータ14の製造方法は、準備工程と、加熱工程とを含む。準備工程では、ハウジング本体91と流量検出部22とを準備する。ハウジング本体91は、先ず、流れ方向から見たときの幅方向の中央位置、すなわち図12に二点鎖線で示す分割面で二分割した状態で図13に示すように成形される。加熱工程では、図14に示すようにハウジング本体91をレーザ加工機46の治具47に固定し、非絶縁部90がハウジング本体91の内壁24aに設けられるようにレーザ加工機46を用いて内壁24aを加熱する。つまり、後にバイパス通路30を区画する内壁の表層にレーザを照射し、当該表層を局所的に加熱処理する。このとき表層には2000℃以上の熱が付加され、材料となる高分子の結合の開裂を生じさせ、炭素以外の構成元素が二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等の分解ガスとして離脱させられて炭化させられる。そして、炭素原子の六員環(すなわち、ベンゼン環)が平面状に繋がったグラファイトに一部を変換する事で、上記表層にグラファイトを含む炭化部としての非絶縁部90が形成される。この非絶縁部90には導電性が付与される。このようにして非絶縁部90が形成された二分割の樹脂部材は、図15に示すように溶着等により互いに一体化される。なお、電磁波としてレーザを用いているが、これに限らず、プラズマ処理、高圧水蒸気照射、電子線照射、ジュール熱を利用した加熱等の他の方法を用いてもよく、樹脂部材の加工性に応じて最適な方法を選択することが出来る。
続いて、図16に示すようにハウジング本体91にセンサSA50が設置されたあと、図17に示すようにセンサSA50のリードターミナル54とターミナルユニット85とがコネクタターミナル28aを介して電気的に接続される。そして、図10に示すように主通路外ハウジング92が二次成形されて、ハウジング21が完成する。
ハウジング21の樹脂材料としては、例えばPBT(polybutylene terephthalate)、またはPPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)等の熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂に対して一般に融点が低く、グラファイト構造を付与する加工性に優れるが、ハウジング21の樹脂材料は、熱可塑性樹脂に限らず、熱硬化性樹脂であってもよい。要するに、ベンゼン環が有り、この共有結合を切断することで自由電子の拘束を解き、導電性を呈するような樹脂材料であればよい。
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、エアフロメータ14は、吸入通路12から分岐するバイパス通路30を有する樹脂製のハウジング21と、バイパス通路30に配置されている流量検出部22と、を備える。ハウジング21は、グラファイトを含む非絶縁部90を有する。
このようにハウジング21がグラファイト含有の非絶縁部90を有することで、そのハウジング21に接触したダスト等の異物の電荷を除電することができる。これにより、流量検出部22への異物付着が抑制される。また、ハウジング21の樹脂材料には帯電防止剤を混入させる必要がない。そのため、ハウジング21の成形性および耐久性の低下を回避しつつ、エアフロメータ14の特性ずれを抑制することができる。
また、第1実施形態では、非絶縁部90は電磁波の被照射部からなる。つまり、非絶縁部90は、樹脂部材の表面層を電磁波で変質させて導電化させることにより形成される。ハウジング21には、電磁波の照射により樹脂部材の分子構造の一部をグラファイトに改質することで、帯電防止特性が付与されている。このように電磁波のエネルギで変質させるため、所望の箇所のみを加工でき、加工性に優れる。
電磁波照射によるグラファイト化の加工は、対象が全体でも部分的でも、複数個所でも、平面部でも湾曲部でも可能であり、且つ数秒から数十秒で施工が完了するため加工性に優れる。また、表面で有れば部品状態でも完成品状態(組付け完了状態)や後加工でも可能であり、工程を選ばないため加工性に優れる。また、樹脂成形品の場合、成形後に加工するため樹脂成形性に影響を与えない。また、レーザ加工層の深さは0.1mm以上で導電性の効果を発揮できることから、製品寸法公差内での加工が可能であり、製品強度など物性値を変えずに除電効果が期待できる。
また、第1実施形態では、電磁波はレーザである。レーザは電磁波の中でもエネルギ密度が高いため、短時間で樹脂部材を導電化させることができる。
また、第1実施形態では、ハウジング21は、吸入通路12内に配置されバイパス通路30を形成するバイパスハウジング24を含む。非絶縁部90はバイパスハウジング24に形成されている。バイパスハウジング24の一部に導電性を有する部位を構成することで、他の部位も分極(電荷移動)する。これにより、流量検出部22への異物付着が抑制される。
また、第1実施形態では、非絶縁部90は、バイパス通路30を区画するバイパスハウジング24の内壁に形成されている。そのため、バイパス通路30を通過する異物の電荷を効果的に除電することができる。また、樹脂材料の分子内での電荷の偏りが生む分極効果により、流量検出部22への異物付着が抑制される。
また、第1実施形態では、非絶縁部90の表面固有抵抗値が1012Ω/sq.以下である。これにより、非絶縁部90が帯電防止領域、無帯電領域、半導電~導電領域のいずれかに属することになり、帯電した異物の電荷を除電する効果が得られる。
また、第1実施形態では、エアフロメータ14は、流体が流れる計測通路32を形成し、少なくとも樹脂を含んで形成されたハウジング21と、計測通路32を流れる流体の物理量に応じた検出信号を出力する物理量検出部22と、ハウジング21の内壁24aに設けられ、炭化物を含んでいることで導電性を有し、電荷をグランド45に放出する非絶縁部90とを備える。
エアフロメータ14の製造方法は、準備工程と、加熱工程とを含む。準備工程では、流体が流れる計測通路32を形成し少なくとも樹脂を含んで形成されるハウジング21と、計測通路32を流れる流体の物理量に応じた検出信号を出力する物理量検出部22とを準備する。加熱工程では、炭化物を含んでいることで導電性を有する非絶縁部90がハウジング21の内壁24aに設けられるように、且つ電荷が非絶縁部90からグランド45に放出され得るように、ハウジング21の内壁24aを加熱する。
このように非絶縁部90があれば、ハウジング21に接触したダスト等の異物の電荷を除電することができる。そのため、エアフロメータ14の特性ずれを抑制できる。また、ハウジング21の材料に帯電防止剤を混ぜて樹脂材料を減少させるという必要がないため、樹脂材料が不足してハウジングの成形性が低下するということを抑制できる。また、ハウジング21の材料に帯電防止剤を混ぜてガラス繊維を減少させるという必要がないため、ガラス繊維が不足してハウジング21の強度が低下するということを抑制できる。
ここで、ハウジングの樹脂材料に帯電防止剤を混入させる比較形態と、ハウジング21の成形後にグラファイトを含む非絶縁部90を設ける第1実施形態との樹脂成形性および耐久性の違いについて説明する。
図34に示すように比較形態では、金属やカーボンなどの帯電防止剤62によって導電性を持たせているため、同時に熱伝導性も良くなることで、成形時の冷却が早くなり流動性が低下する。そのため、ハウジング61の樹脂成形性が低下し易い。例えば、成形時の樹脂温度を樹脂劣化限界まで高温にしないと成形ショートが発生したり、急激な成形冷却が原因で樹脂69の結晶化が進まず製品寸法や強度、耐久性などが不安定になったりする場合がある。また、帯電防止剤62を添加することから、流動性を確保するためにはガラス繊維63やガラス粒子64の添加量を減らす必要がある。そのため、ハウジング61の強度や寸法安定性も低下する。図34では、煩雑になるのを避けるためにハウジング61のハッチングを一部省略している。
これに対して、図18に示すように第1実施形態では、ハウジング21の材料に帯電防止剤を添加する必要がないため、比較形態と比べて成形時の冷却が遅くなり流動性が低下しない。そのため、ハウジング21の樹脂成形性が低下し難い。レーザ加工によるグラファイト化は、樹脂成形後の加工であるため、ハウジング21の樹脂成形性に影響を与えない。また、帯電防止剤を添加せず流動性が低下しないことから、ガラス繊維73やガラス粒子74の添加量を減らす必要がない。そのため、ハウジング21の強度や寸法安定性の低下を抑制できる。図18では、煩雑になるのを避けるためにハウジング21のハッチングを一部省略している。
[第2実施形態]
第2実施形態では、図19、図20に示すように、非絶縁部90はハウジング21の外面であって、バイパスハウジング24の外壁24bに形成されている。図19、図20において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された外壁24bである。
エアフロメータ14の製造方法の準備工程では、図21に示すように組み付けが完了したエアフロメータ14を用意する。ここで用意されるエアフロメータ14は、未使用および使用済みを問わない。加熱工程では、図22に示すようにエアフロメータ14を治具47に固定し、バイパスハウジング24の外壁24bに非絶縁部90が設けられるようにレーザ加工機46を用いて外壁24bを加熱する。
以上のようにバイパスハウジング24の外壁24bに非絶縁部90が形成されてもよい。それでも分極効果により流量検出部22への異物付着が抑制される。また、エアフロメータ14の各構成部品を組み合わせた後でも非絶縁部90を形成することが可能である。
[第3実施形態]
第3実施形態では、図23に示すように、非絶縁部90はハウジング21の外面であって、主通路外ハウジング92の外壁92aに形成されている。図23において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された外壁92aである。このように主通路外ハウジング92の外壁92aに非絶縁部90が形成されてもよい。それでも分極効果により流量検出部22への異物付着が抑制される。また、エアフロメータ14の各構成部品を組み合わせた後でも非絶縁部90を形成することが可能である。また、導電化加工(すなわち、レーザ照射による加熱処理)で主通路外ハウジング92に寸法変化があったとしても、その寸法変化の箇所はバイパス通路30(図6参照)外であるため、流量計測に影響を与えない。また、コネクタ部28への異物付着が減少し、ショートを抑制することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態では、図24に示すように、非絶縁部90は、流量検出部22を保持するセンサ保持部としてのモールド部76に形成されている。図24において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された外壁である。このようにモールド部76に非絶縁部90が形成されてもよい。それでも分極効果により流量検出部22への異物付着が抑制される。また、特に流量検出部22近傍の部位を導電化させるため、流量検出部22の分極効果が大きくなり、流量検出部22への異物付着が一層抑制される。
[第5実施形態]
第5実施形態では、図25、図26に示すように、非絶縁部90はハウジング21の外面であって、根元部29aに形成されている。図25、図26において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された外壁29cである。このように根元部29aの外壁29cに非絶縁部90が形成されてもよい。それでも分極効果により流量検出部22への異物付着が抑制される。
また、非絶縁部90は、根元部29aのうちGND電位の吸気温ターミナル23cとの接触界面にレーザが照射されて炭化された部位を含んでいる。これにより、非絶縁部90は、一定電位すなわちGND電位に接続されている。そのため、電荷の通り道を作ることで、異物を効果的に除電することができる。また、吸気温センサ23のターミナルから容易に電位を取ることができる。なお、非絶縁部90は、GND電位に限らず、電源電位等の他の一定電位に接続されてもよい。それでも同様の効果を得ることができる。
[第6実施形態]
第6実施形態では、図27に示すように、非絶縁部90は、ハウジング本体91の外壁のうちGND電位のコネクタターミナル28aと接触する接触部93に形成されている。非絶縁部90は、図28に示すようにコネクタターミナル28aが組付けられる前の段階でレーザ照射により形成される。これにより、非絶縁部90は、一定電位すなわちGND電位に接続されている。そのため、電荷の通り道を作ることで、異物を効果的に除電することができる。また、コネクタターミナル28aから容易に電位を取ることができる。
[第7実施形態]
第7実施形態では、図29に示すように、非絶縁部90はハウジング21の外面であって、バイパスハウジング24の外壁24bに形成されている。図10において網掛けハッチングで示す部位が非絶縁部90の形成された外壁24bである。非絶縁部90は、ハウジング21の外面から突出した一対の吸気温ターミナル23cのうちグランド45に接続された一方の端子(以下、グランド接続部71と記載)に向けて延びた状態になっている。
具体的には、図6および図29に示すように、非絶縁部90は、バイパスハウジング24の外壁24bのうち計測通路32の外側(計測通路32を区画する内壁に対応する外壁)に設けられている。非絶縁部90は、バイパスハウジング24の外壁24bのうち、通過通路31と、導入路32bと、検出路32aの入口部分とに対応する外面に設けられており、通過通路31からグランド接続部71近傍まで延びるように形成されている。
グランド接続部71は、バイパスハウジング24の外壁24bのうち一側面に設けられている。非絶縁部90は、バイパスハウジング24の一側面(すなわち片面)だけに設けられている。以下、非絶縁部90を形成することをグラファイト化と記載する。
グラファイト化の最適構成は、図30および図31に示すようにPBT樹脂のポリマー72に少なくともガラス繊維73を含有させ、レーザなどの高温熱処理によりポリマー72を炭化させてグラファイト75を生成し、熱処理でも焼失せず残るガラス繊維73およびガラス粒子74によってグラファイト75を機械的に固定することである。バイパスハウジング24の通路形成部の板厚t=0.5~2.0mmに対して、グラファイト化深さdを0.1mm以上とすることにより、非絶縁部90の導電性を高めることができる。
図29に示すように帯電の原因である電荷を持ったダストが空気の流れにより飛来する場合において、流量検出部22へ到達する前に一番遠い入口部の通過通路31で除電させることが安全且つ効率的である。そのため、バイパスハウジング24の外壁24bのうち通過通路31に対応する部分をグラファイト化することが最適である。また、通過通路31に対応する外面とグランド接続部71近傍の外面とを非絶縁部90で接続することで、グランド45に静電気を逃がすことができる。非絶縁部90とグランド接続部71とを接続しなくても、絶遠破壊で放電できる距離(例えば0.5~2.0mm)を保てば効果は変わらない。
ここで、ハウジングの樹脂材料に帯電防止剤を混入させる比較形態と、ハウジング21の外面にグラファイトを含む非絶縁部90を設ける第7実施形態との帯電防止メガニズムの違いについて説明する。
先ず比較形態について説明する。比較形態において、図35に示すように、複数のマイナス電荷77がハウジング61の外面61aに近い導電部62Xに集まっており、複数のプラス異物Fpがこれらマイナス電荷77により電気的に吸引されていることでハウジング61の外面61aに付着している場合を想定する。この場合、ハウジング61においては、導電部62Xに集まったマイナス電荷77の数が多いほどこの導電部62Xの電位が負側に高くなり、静電気によりマイナスに帯電した状態であり、導電部62Xはハウジング61のスキン層に含まれている。ハウジング61においては、この電位による電圧がある程度高くなると、導電部62Xとその近くの導電部62Yとの間で放電Edが生じる。
導電部62Xと導電部62Yの間での放電Edが発生すると、絶縁部66において導電部62Xと導電部62Yの間の部分にて絶縁破壊が生じ、導電部62Xのマイナス電荷77が導電部62Yに移動する。このような放電及び絶縁破壊が、導電部62Xとグランド端子67とを結ぶ経路において複数の位置で発生することで、導電部62Xに溜まっていたマイナス電荷77が複数の導電部62及びグランド端子67を通じてグランド45に放出される。このように、複数のプラス異物Fpを電気的に吸引していたマイナス電荷77が導電部62Xからなくなると、これらプラス異物Fpはハウジング61の外面61aから離間しやすくなる。このため、外面61aに接触しているプラス異物Fpによりハウジング61が再びマイナスに帯電してマイナス電荷77が生じるということが抑制される。
続いて第7実施形態について説明する。第7実施形態において、図32に示すように、複数のプラス異物Fpにより母材樹脂が分極され、バイパスハウジング24の内壁24aにマイナス電荷77が溜まり、更に電気的にプラス異物Fpが吸引されていることで内壁24aに多量付着している場合を想定する。この場合、内壁24aにマイナス電荷77の数が多いほど電位が負側に高くなり、静電気によりマイナスに帯電した状態である。内壁24aの電位がある程度高くなると、内壁24aと、導電層である外壁24bのグラファイト(すなわち非絶縁部90)との間で絶縁破壊による放電Edが生じる。この現象はプラス電荷を持った埃やダストが吸引され易いマイナス電荷の静電気が-1kV以下で、且つ樹脂製品の板厚が0.5~2.0mmに施したグラファイト層で発現し易い。
内壁24aと、導電層である外壁24bの非絶縁部90との間で絶縁破壊による放電Edが生じると、内壁24aのマイナス電荷77が外壁24bの非絶縁部90へ移動する。このような放電及び絶縁破壊が複数の位置で発生することで、内壁24aに溜まっていたマイナス電荷77が非絶縁部90およびコネクタターミナル28a(すなわちグランド端子)を通じてグランド45に放出される。このように、複数のプラス異物Fpを電気的に吸引していたマイナス電荷77が内壁24aからなくなると、これらプラス異物Fpは内壁24aの表面から離間しやすくなる。このため、内壁24aに接触しているプラス異物Fpにより内壁24aが再びマイナスに帯電してマイナス電荷77が生じるということが抑制される。尚、外壁24bの非絶縁部90は導電層のグラファイトであるため、プラス異物Fpは電気的に吸引されず付着し難い。
(効果)
以上説明したように、第7実施形態では、ハウジング21の外壁24bに設けられ、炭化物を含んでいることで導電性を有し、電荷をグランド45に放出する非絶縁部90を備える。加熱工程では、非絶縁部90がハウジング21の内壁24aに設けられるように、且つ電荷が非絶縁部90からグランド45に放出され得るように、ハウジング21の外壁24bを加熱する。そのため、第1実施形態と同様にハウジング21の成形性の低下を抑制しつつ特性ずれを抑制することができる。
また、第7実施形態では、非絶縁部90は、バイパスハウジング24の外壁24bのうち計測通路32の外側に設けられている。これにより、計測通路32を通る空気中の異物の電荷を放電しやすくなる。また、非絶縁部90をハウジング21の内壁に設ける必要がないため、エアフロメータ14の各構成部品を組み合わせた後でも非絶縁部90を形成することが可能である。
また、第7実施形態では、非絶縁部90は、グランド45に接続されたグランド接続部71に向けて延びた状態になっていることで、グランド接続部71を介して電荷をグランド45に放出する。加熱工程では、電荷を非絶縁部90からグランド接続部71を介してグランド45に放出させるために、非絶縁部90がグランド45に接続されたグランド接続部71に向けて延びた状態になるように、ハウジング21の外面を加熱する。これによりグランド接続部71を利用して電荷放出を実現できるため、非絶縁部90専用のグランド線を設ける必要がない。
また、第7実施形態では、ハウジング21の外面から突出した一対の吸気温ターミナル23cが設けられている。それら一対の吸気温ターミナル23cのうち一方の端子がグランド接続部71である。準備工程では、ハウジング21の外面から突出した一対の吸気温ターミナル23cを準備する。加熱工程では、一対の吸気温ターミナル23cのうち一方の端子であるグランド接続部71に向けて非絶縁部90が延びた状態になるように、ハウジング21の外面を加熱する。これにより吸気温ターミナル23cを利用して電荷放出を実現できる。
また、第7実施形態では、グランド接続部71は、バイパスハウジング24の外壁24bのうち一側面に設けられている。非絶縁部90は、バイパスハウジング24の一側面だけに設けられている。これにより、非絶縁部90を形成するときバイパスハウジング24をひっくり返す必要がないので、作業工数を低減できる。
以上説明した第1~第7実施形態における非絶縁部90には、以下説明する第8~第17実施形態における炭化部115が設けられる。第8~第17実施形態における樹脂部材110は、第1~第7実施形態におけるハウジング21に相当する。
[第8実施形態]
第8実施形態の樹脂部材を図36および図37に示す。樹脂部材110は、フィラー及び絶縁性を有するベースポリマーを主成分とする樹脂材料で構成されている。図38に示すように、樹脂部材110の表面111の近傍には、配向層112が形成されている。配向層112は、表面111に対して平行な方向(以下、表面方向)に配向した多数のフィラー113、および、各フィラー113間に充填されたベースポリマー114を含む。
図39に示すように、配向層112は、ベースポリマー114の炭化物であってグラファイトを含み、導電性及び熱伝導性を付与する炭化部115を有する。炭化部115は、図43に示すように互いに結合状態にある炭素原子からなるグラファイトにおいて、炭素原子に属する4つの外殻電子のうち1つの電子が余った状態でいることで電子が移動できる状態になっているため、導通する。
樹脂部材110のうち炭化部115が形成された箇所の肉厚は300μm以上である。図36に示すように、第8実施形態では、炭化部115は、直線状に延びるように複数形成されており、導電性パターンを構成している。この導電性パターンは例えばエアフロメータまたは回転角センサなどの電子装置において静電気除去回路として利用される。このように静電気除去回路として炭化部115を用いる場合、生成する炭化物の体積抵抗率は少なくとも1.0×10-3Ωm以下、好ましくは1.0×10-4Ωm以下、より好ましくは1.0×10-5Ωm以下である。なお、炭化部115は、例えば格子状などの他のパターン状であってもよい。また、炭化部115は、パターン状に限らず、膜状に形成されてもよい。また、炭化部115は、静電気除去回路に限らず、例えば配線回路、電磁シールド、帯電防止、放熱部材などに利用されてもよい。
次に、樹脂部材110の製造方法について説明する。樹脂部材110の製造方法は、図40に示すように成形工程P1および炭化工程P2を含む。
<成形工程(1次成形工程)>
成形工程P1では、図41に示すように、フィラー113及び絶縁性を有するベースポリマー114で構成される樹脂材料を所定の可塑化温度で溶融させ、溶融樹脂116を所定の形状の金型190に高速射出し、圧力を付加しながら冷却固化させる。その過程において、金型190表面と溶融樹脂116の表面との間、あるいは充填の過程で金型190からの抜熱により金型面に固着した樹脂材料と肉厚中心近傍で流動性を保持した溶融樹脂116との間にせん断応力を作用させる。これにより、フィラー113が表面法線方向よりも表面方向に優先的に配向し、さらにその間をベースポリマー114が伸長して水平に充填された配向層112が成形体117の表面近傍に形成される。
フィラー113は、炭化部115(図39参照)を形成させる際の昇温速度を緩和すると同時に、炭化物に対してアンカー効果を発揮し、高温条件で炭化させた際にも炭化物の飛散を防止する役割を果たす。本来フィラーが添加されないナチュラルな樹脂部材であれば、炭化物が激しく飛散し、微細な導電性パターンの形成が困難となる温度条件に於いても、精度高く微細な導電性パターンの形成を可能とする。
また、導電性パターン上に於ける炭化物同士の導通を妨げないために、フィラー113は表面方向に配向している事が望ましい。
樹脂部材がフィラー113として40wt%程度のガラス繊維を含む場合と、フィラー113を含まない場合では、レーザ照射により生成した導電性パターンの導電性は前者の方が格段に良好である。また、樹脂部材がフィラー113として40wt%程度のガラス繊維を含む場合と、15wt%程度のガラス繊維を含む場合では、レーザ照射により生成した導電性パターンの導電性は前者の方が良好である。さらには、フィラー113が配向している箇所をレーザ照射により炭化させる場合と、フィラー113が配向していない箇所をレーザ照射により炭化させる場合では、導電性パターンの導電性は前者の方が格段に良好である。
成形体117を作製する方法としては、例えば、射出成形法やトランスファー成形法や押出し成形法や圧縮成形法があるが、与えられるせん断力が大きく、より強くフィラー113が配置した配向層112を形成しやすいことから、射出成形法が望ましい。
図41および図42に示すように、配向層112は、フィラー113及び分子鎖118が表面方向に配向し、フィラー113の間に表面方向に伸長するようにベースポリマー114が充填している。このことから、炭化処理した際に生成される炭化物が表面方向に配向し、伸長した層状の組織になり易く、表面方向への導電性及び熱伝導性を向上させる。また、ベースポリマー114を構成する高分子にも表面方向にせん断応力が付与されることから、分子鎖118が配向することで、炭化物を構成するグラファイトのa-b面(図43参照)が表面方向に配向しやすい。そのため、表面方向への導電性及び熱伝導性が向上する。上述した効果は、主に鎖状高分子で構成される熱可塑性樹脂をベースポリマー114として選定したい場合、特に有効である。
成形体117の作製方法としては、炭化すべき箇所において、成形時に可及的に表面にせん断力が加わり、フィラー113や分子鎖118が配向するように形成されることが良い。そのため、炭化すべき箇所にウェルドラインや最終充填部が形成されること、また、ジェッティングが発生するようなゲートの位置・形状および条件設定は、避けるのが望ましい。また、成形過程においてフィラー113や分子鎖118の配向度をより向上させるために、例えば金型面がせん断応力を増大させる動作、例えば摺動・回転動作等を行っても良い。また、成形体117の表面近傍に配向層112が形成されればよく、成形体117の作製方法としては射出成形機を用いた方法に限定されない。
樹脂材料を構成するベースポリマー114としては、後工程である炭化工程P2にて炭化されてグラファイト状の組織を形成するという観点から、炭素含有率が高く、グラファイトのa-b面と類似の炭素環状構造を有するものが望ましい。例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルスチレン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ビスフェノールA共重合体、ビスフェノールF共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の高分子からなる縮合系芳香族系高分子材料が挙げられる。芳香族系高分子は、グラファイトの基本構造となる炭素の六員環(すなわち、ベンゼン環)を主鎖に含有するという点で望ましい。しかし、特にこれに限定されない。また、局所的に炭化させる事を目的とする為、炭化させた際に過剰な燃焼が生じないよう自己消火性を有するものがより望ましい。
フィラー113としては、後工程である炭化工程P2での加熱処理により急激に昇温して炭化される際に生じる急激な分解ガス発生に対して、レーザビームの加工スポットの温度を低減し、昇温速度を緩やかにする効果と、アンカーとして作用することで分解ガス発生による炭化物の飛散を抑制する効果を期待するため、強度耐熱性良好かつ高アスペクト比の形状のものが望ましい。つまり、フィラー113は、ベースポリマー114よりも燃焼しにくい繊維状のものであって、例えば無機系の繊維状物質が望ましい。具体的な材質としては、上記に加えて低コストであるという観点から、ガラス繊維が望ましい。またガラス繊維を用いた場合、加熱処理を施した際にガラスが溶融固化する事で、炭化物の定着性を向上する効果が期待できる。また、局所的に炭化させる事を目的とする為、炭化させた際に過剰な燃焼が生じないよう自己消火性を付与する難燃材が含有されていても良い。
ガラス繊維の添加量としては、導電性や熱伝導性が最大となる添加量が望ましい。ガラス繊維の添加量が少なすぎると、アンカー効果による炭化物定着の効果が十分に発揮されず、加熱炭化処理を行った際の急激な分解ガス発生による炭化物の飛散が増大し、導電性や熱伝導性が低下する。ガラス繊維の添加量が多すぎると、相対的に高分子材料の量が減少し、炭化物の密度が低下することから、導電性や熱伝導性が低下する。これを踏まえて、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド等、ナチュラルな状態で密度1.3~1.4g/cm2程度のベースポリマー14を使用する場合では、全体に対するガラス繊維の重量比率として、樹脂部材110全体に対するフィラー113の重量比率が30wt%~66wt%、好ましくは30wt%~45wt%、より好ましくは40wt%が望ましい。
フィラー113を構成する材質としては、ガラス繊維の他には、例えば、アラミド繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ケイ素繊維、ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、その他ステンレス・アルミニウム・チタン・銅・真鍮等の金属繊維状物等の無機質繊維状物質などが挙げられる。
また、粉粒状充填材としては、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。しかし、炭化物定着の効果と配向層の形成が可能であれば特にこれに限定されない。
また、導電性あるいは熱伝導性に優れたフィラー113を添加することで、炭化処理前の成形体117にそもそも導電性や熱伝導性が付与されている場合においても、さらにベースポリマー114の炭化処理を実施する事で、導電性や熱伝導性を向上する事が期待できる。
<炭化工程>
図44に示すように、炭化工程P2では、成形体117の表面近傍に形成された配向層112に例えばレーザビーム照射等により少なくとも1000℃以上の熱を付加し、材料となる高分子の結合の開裂を生じさせ、炭素以外の構成元素を二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等の分解ガスとして離脱させて炭化させる。さらに望ましくは2000℃以上の熱を付加し、炭素原子の六員環が平面状に繋がったグラファイトに一部を変換する事で、配向層112の表面局所にグラファイトを含む炭化部115を生成する。炭化部115は導電性あるいは熱伝導性を付与する。炭化処理時の雰囲気としては炭素成分の減少を抑制するため不活性ガス中が望ましい。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
加熱処理時に付加する温度が高い程、良質で電気伝導性あるいは熱伝導性に優れたグラファイトへの転化が可能である。そのため、加熱処理時の温度としては、導電性あるいは熱伝導性の良好な炭化物を得るには2000℃以上の温度が望ましい。また、局所的な加熱方法としては、レーザビーム照射、プラズマ処理、高圧水蒸気照射、電子線照射、ジュール熱を利用した加熱等が挙げられる。2000℃を超える高温を短時間で局所的に付与することができ、経済性に優れる事から、レーザビーム照射が望ましい。
ここで、一般的にグラファイトフィルム等の作製方法として特開2008-24571号公報に開示されているように、炉内で長時間をかけて徐々に昇温する方法と比較して、例えばレーザビーム照射を用いた場合には昇温速度が高速である。樹脂にレーザビームを照射して急激に高温状態にすると、導電性を持った炭化物と分解ガスが発生する。この分解ガスが噴き出す衝撃は強い。そのため、炭化物がその分解ガスに巻き込まれて基材から離れてしまう。つまり、分解ガスが急激に発生する事による炭化物の飛散が顕著である。このことは、炭化部115の導電性や熱伝導性を低下させる原因となる。特に、フィルム等の薄肉の部材とは異なり、少なくとも300μm以上の厚みを有する厚肉の部材を炭化させる場合、内部で発生した分解ガスが抜けにくく、ガスが抜ける過程で組織を破壊しながら炭化物が飛散しやすく、導電性や熱伝導性を低下させる大きな要因となっていた。
本実施形態では、これを規制する為に、樹脂材料にフィラー113を一定割合含有させて、昇温速度を緩やかにすると同時に炭化時にアンカー効果を発揮させている。レーザ照射時に温度が上昇する主な理由は、レーザ光の吸収による発熱と、ベースポリマー114が炭化する際に発生する燃焼熱であり、後者の影響度合いが大きい。樹脂材料にフィラー113を一定割合含有させるとベースポリマー114が相対的に減るため、燃焼熱が低減し昇温速度が緩やかになる。また、基材に固定されているフィラー113が炭化物に入り込む又は貫通し、くさびの様になる事で、炭化物と基材との分離を抑制するアンカー効果が生じる。レーザ照射による炭化中においては、炭化部115に隣接している炭化されない樹脂部、又は、レーザ軌道上に存在するがレーザ走査方向の前方にあってまだレーザ照射されていない樹脂部にフィラー113が固定されていることで、そのフィラー113に引っ掛かる炭化物の離脱が抑制される。これにより、炭化物の飛散および脱落を防止し、定着性を向上させている。
さらに、炭化前の状態においてフィラー113を表面方向に配向させた層を形成する事で、フィラー113の間を充填する高分子を炭化した組織もまた、表面方向に伸長した層状の組織となる。これにより、導電性あるいは熱伝導性が向上する。また、本実施形態では、成形工程P1の段階でベースポリマー114を構成する高分子を溶融時にせん断力を付加し、表面方向に配向させている事で、炭化物を構成するグラファイトのa-b面と表面方向との成す角が小さくなり易い。これにより、表面方向への導電性及び熱伝導性が向上する。
レーザビームの照射方法としては、出来る限り微細なパターンを短時間で形成する目的で、炭化前の配向層112に直接的にエネルギー密度(すなわちレーザ強度)の高いレーザビームを1回に限定して走査しても良い。その一方で、前述した分解ガスの急激な発生及び炭化物の飛散を抑止する目的で、例えば、減圧環境下にて比較的エネルギー密度の低いレーザビームを走査して比較的緩やかな昇温速度にて炭素成分が主成分となるような組織にした後、エネルギー密度の高いレーザビームを照射し、より高温を付加し炭化を促進させるといったような2段階に分けた走査を行っても良い。その他、適宜多段階に分けて照射しても良い。また、レーザビームにて導電性パターンを形成した後、あるいは形成の途中において、炭化を促進する目的で電圧を印加し、ジュール熱による加熱を行っても良い。
また、レーザビームの軌道としては、単純に走査すれば線状のパターンが形成される。この時、レーザビームの焦点近傍では高分子の一部が蒸発・除去されるため、溝が形成される。その他の走査方法としては、ある任意の面に隙間なく走査する事により、広範囲の面積に緻密な炭化物の膜を形成することが出来る。この時もまた、レーザビームによって高分子の一部が蒸発・除去されるためレーザの軌道に沿って溝が形成され、凹凸となる。レーザビーム照射時には、成形体117に対してレーザビームを移動させても良いし、レーザビームを固定して成形体117を移動させても良いし、両方を移動させても良い。
レーザビームの種類としては、局所的に高温を付加できればよく、CO2レーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ(GaAs、GaAlAs、GaInAs)等が挙げられる。微細なパターンを形成したい場合はYAGレーザ等の波長の短いものが望ましい。また、広範囲あるいは深く炭化したい場合はCO2レーザ等の波長の大きいレーザビームが望ましい。
レーザビームの条件としては、前述したようにエネルギー密度が高すぎると、スポットの温度が高くなり過ぎ、昇温速度が高くなりすぎることで、分解ガスが急激に発生して炭化物を飛散させてしまうため、好ましくない。一方、エネルギー密度が低すぎると、グラファイトが生成するのに必要な温度に昇温しないため、好ましくない。ただし、フィラー113が焼けないようにレーザ照射を加減するわけではない。レーザスポット直下は超高温になるため、フィラー113が溶融または切断される。しかし、レーザスポットからわずかに外れた部分(例えば溝の底面および側面)の温度は比較的低くなるため、フィラー113が残る。一般的な半導体レーザをジャストフォーカス付近の焦点距離から走査する場合、出力100W、走査速度50mm/s程度が望ましい。レーザ加工時の雰囲気圧力としては、圧力が低すぎると炭化物の密度が低下するため良くない。圧力が高すぎると分解ガスが抜けにくくなり、炭化物の組織を破壊してしまうため良くなく、3MPa以下にするのが望ましい。
レーザ強度を強くするほど、または、レーザ加工時の雰囲気圧力を上げるほど、炭化部115の体積抵抗率は下がる。これは、加工部の温度が高くなることにより、ベースポリマー114の結合状態がグラファイト系カーボンの結合状態に変化することが促進されるからである。
体積抵抗率は単位体積あたりの導電性の指標である。そのため、炭化物とフィラー113で構成される炭化部115において、単位体積あたりに含まれる導電性の炭化物の割合が多いほど、体積抵抗率は低くなる。一方でフィラー113が少なすぎると、炭化工程P2において炭化物が分解ガスに巻き込まれて飛散してしまう。したがって、アンカー効果により炭化物を基材に留めておける範囲でフィラー113を少なくし、形成される炭化物の割合を多くすることで、炭化部115の体積抵抗率が低くなる。
(効果)
以上説明したように、第8実施形態では、樹脂部材110の表面111近傍には、表面方向に配向したフィラー113、および、各フィラー113間に充填されたベースポリマー114を含む配向層112が形成されている。配向層112は、ベースポリマー114の炭化物であってグラファイトを含み、導電性及び熱伝導性を付与する炭化部115を有している。
このように配向層112にてフィラー113が表面方向に配向していることから、その間を充填するベースポリマー114が炭化した際に生成する炭化物が表面方向に配向した層状の組織を形成しやすくなる。また、炭化物に含まれるグラファイトのa-b面が表面方向に配向しやすくなる。そのため、炭化物の表面方向への導電性が向上する。
また、配向層112がフィラー113を含んでいることから、炭化のために配向層112を局所的に加熱処理するときに、加熱部位の温度が高くなりすぎるのを抑制し、昇温速度を緩やかにすることで、分解ガスが急激に発生して炭化物が飛散するのを抑止する。また、炭化物またはベースポリマー114の高分子に対してアンカーとなり、分解ガス発生による炭化物の飛散を抑制する。そのため、炭化物の定着性が向上し、導電性が向上する。
また、第8実施形態では、樹脂部材110のうち炭化部115が形成された箇所の肉厚は300μm以上である。このように比較的肉厚な部材を炭化させる場合であっても、樹脂材料にフィラー113を一定割合含有させて、昇温速度を緩やかにすると同時に炭化時にアンカー効果を発揮させる事で、炭化物の飛散を防止している。
また、第8実施形態では、樹脂部材110に対するフィラー113の重量比率は40wt%である。これにより、炭化時の昇温速度の緩化およびアンカー効果を効果的に発揮させ、炭化部115の導電性を向上させることができる。
また、第8実施形態では、フィラー113はガラス繊維である。これにより、炭化時の昇温速度の緩化およびアンカー効果を効果的に発揮させ、炭化部115の導電性を向上させることができる。また、低コストである。また、加熱処理を施す際にガラスが溶融固化する事で、炭化物の定着性を向上させることができる。
また、第8実施形態では、樹脂部材110の製造方法は、成形工程P1と炭化工程P2とを含む。成形工程P1では、樹脂材料を溶融し、樹脂部材110の表面111近傍に対応する溶融樹脂にせん断応力を作用させた後、固化することで、表面方向に配向したフィラー113、および、各フィラー113間に充填されたベースポリマー114を含む配向層112を表面111近傍に形成する。炭化工程P2では、配向層112を局所的に加熱処理し、配向層112に含まれるベースポリマー114を炭化させ、グラファイトを含み導電性及び熱伝導性を付与する炭化部115を生成する。
このように成形工程P1にて配向層112にてフィラー113を表面方向に配向させることから、その間を充填するベースポリマー114が炭化した際に生成する炭化物が表面方向に配向した層状の組織を形成しやすくなる。また、炭化物に含まれるグラファイトのa-b面が表面方向に配向しやすくなる。そのため、炭化物の表面方向への導電性が向上する。
また、配向層112がフィラー113を含んでいることから、炭化工程P2にて炭化のために配向層112を局所的に加熱処理するときに、加熱部位の温度が高くなりすぎるのを抑制し、昇温速度を緩やかにして分解ガスが急激に発生して炭化物が飛散するのを抑止する。また、炭化物またはベースポリマー114の高分子に対してアンカーとなり、分解ガス発生による炭化物の飛散を抑制する。そのため、炭化物の定着性が向上し、導電性が向上する。
また、第8実施形態では、炭化工程P2では、レーザビーム照射を用いて配向層112を局所的に加熱処理する。これにより、2000℃を超える高温を短時間で局所的に付与することができる。そのため、導電性パターンを短時間かつ低コストに形成することが出来る。また、レーザビームを用いると、導電性パターンのレイアウトを変更する際、走査プログラムのソフトウェアを修正変更するのみで良く、ハードウェアを変更する必要が無い。そのため、短時間かつ低コストに導電性パターンのレイアウトを変更することができる。例えばプレス部品を用いる場合、金型を着脱する工数がかかるという欠点がある。
また、第8実施形態では、成形工程P1では射出成形により樹脂材料の成形が行われる。これにより、樹脂部材110の表面111近傍に対応する溶融樹脂に比較的大きなせん断応力を与えることができ、より強くフィラー113が配置した配向層112を形成しやすい。
[第9実施形態]
第9実施形態では、図45、図46に示すように、樹脂部材110は、単純な平板形状ではなく、互いに交差する第1面131、第2面132および第3面133を含む段部を形成している。第1面131から第2面132にかけて、および、第2面132から第3面133にかけて立体的に炭化部115が形成されている。炭化物形成前の成形体の形状としては、炭化すべき箇所において、なるべく成形時に表面にせん断力が加わりフィラーや分子鎖が配向するように溶融樹脂が流動する形状が望ましい。そのため、第1面131と第2面132との角部134、および、第2面132と第3面133との隅部135は、比較的大きなR形状(すなわちラウンド形状)になっている。角部134および隅部135の曲率半径は、出来る限り大きい事が望ましく、具体的な大きさとしては少なくとも5mm以上が望ましい。
図47に示すように、樹脂部材110の表面層すなわち配向層112には、凹部141が形成されている。炭化部115は、凹部141の底壁部142が炭化されてなる。互いに近接する炭化部115の間には、沿面絶縁性を向上させるためのリブ143が形成されている。このように凹部141の内壁部を炭化させることにより、近接する炭化部115の間にリブ143を設けて沿面絶縁性を向上させることができる。
第9実施形態の製造方法の成形工程P1では、図48に示すように成形体117の配向層112に凹部141が形成される。炭化工程P2では、凹部141の底壁部142がレーザビーム照射により炭化される。凹部141の溝幅W1は、その凹部141内におけるレーザビームの集光径よりも大きい。これにより、凹部141の底壁部142のみを局所的に炭化させることができる。
[第10実施形態]
第10実施形態では、図49に示すように、成形体117の凹部141の底面がR形状となっている。これにより、凹部141の底壁部142においてフィラーや分子鎖の配向度を向上することができる。
[第11実施形態]
第11実施形態では、図50に示すように、炭化部115は、成形体117の凹部145の底壁部142および側壁部144が炭化されてなる。凹部145の溝幅W2は、少なくとも成形体117の表面(すなわち凹部145の開口)におけるレーザビームの集光径以下である。配線状の導電性パターンを構成する炭化部115が形成される場合、導電性パターンの間隔を狭小化しながら導電性を向上するために、樹脂部材110の肉厚方向に炭化部115の断面積を増大させるのが望ましい。第11実施形態では、炭化前の成形体117に予め凹部145を形成し、側壁部144を炭化させることで深さ方向に断面積を増加させている。
また、凹部145の隅部にまで確実にレーザビームが照射され炭化されるようにするため、凹部145の側壁部144の勾配θgはレーザ集光角度θlと同等あるいはそれよりも大きくなっている。第11実施形態では、導電性パターン間隔の狭小化の観点から、凹部145の側壁部144の勾配θgはレーザ集光角度θlと同程度になっている。これにより、凹部145の壁面全体が炭化され、導電性が向上する。これに対して、図51に示すように凹部181の側壁面182に勾配がない比較形態では、凹部181の隅部にレーザビームが当たらないため、炭化物が分断されて導電性が低下する。
[第12実施形態]
第12実施形態では、図52に示すように、凹部145は凹部141の内部に形成されている。これにより、第9実施形態と同様に互いに近接する炭化部115間の沿面絶縁性を向上させつつ、第11実施形態と同様に導電性パターンの間隔を狭小化しながら導電性を向上することができる。
[第13実施形態]
第13実施形態では、図53に示すように、第13実施形態と同様に凹部145は凹部141の内部に形成されている。しかし、第13実施形態と異なる点は、凹部145と凹部141の側壁部144が連続的に形成されている。また、側壁部144の勾配θgがレーザビームの集光角度θlよりも大きく設定されている。また、凹部141の溝幅は、その高さにおけるレーザビームの集光径よりも小さく設定されている。これにより、凹部141および凹部145を含む溝には、内壁部が炭化されて深さ方向に断面積を増大させる箇所と、内壁部が炭化されずに沿面絶縁性を向上させる箇所とが形成される。このように凹部141と凹部145とが一体形成されてもよい。
[第14実施形態]
第14実施形態では、図54に示すように樹脂部材110は、樹脂材料を含んで形成されている樹脂体であって、例えばエアフロメータまたは回転角センサなどの電子装置のハウジングまたはカバーとして用いられる。樹脂部材110は、ベース部161および炭化部115を備える。
図54、図55および図56に示すように、ベース部161は、樹脂材料により形成され且つ絶縁性を有するベースポリマー114と、ベースポリマー114よりも強度が高いフィラー113とを有する。ベースポリマー114は、ベース部161の樹脂部を構成している。フィラー113は、ベース部161を強化する強化部材である。ベース部161は、ベースポリマー114に混じった状態のフィラー113により強化されている。
炭化部115は、ベース部161の外面162に設けられ、炭化物166(図43参照)を含んでいることで導電性を有する導電部である。炭化部115は、直線状に延びるように複数形成されている。複数の炭化部115は、パターン状に配置されたパターン部であり、配線パターンを構成している。この配線パターンは、例えばエアフロメータまたは回転角センサなどの電子装置において静電気除去回路として利用される通電部である。
炭化物は、導電性を有するカーボン(すなわち導電性カーボン)である。炭化物を形成する炭化材料は、導電材料であって、例えばグラファイト、カーボン粉、カーボン繊維、ナノカーボン、グラフェンまたは炭素マイクロ材料などのカーボン材料である。ナノカーボンは、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびフラーレンなどである。
図55および図56に示すように、樹脂部材110は、ベース部161の外面162に沿って延びたスキン層163と、スキン層163の内側に設けられたコア層164とを備える。スキン層163は、ベース部161の外面162を形成する表層部であって、ベース部161の樹脂成形時に溶融樹脂のうち金型の内面に接して固化した部位である固化層である。コア層164は、ベース部161の樹脂成形時に溶融樹脂のうち固化層の内側を流動した流動層である。ベース部161の外面162は、スキン層163の外面であり、また樹脂部材110の外面でもある。
外面162は、コア層164側に凹んだ溝状凹面165を有する。炭化部115は、溝状凹面165上においてスキン層163からコア層164に向けて延びるように設けられている。炭化部115は、スキン層163の少なくとも一部が炭化したものである。スキン層163およびコア層164を構成する樹脂であるベースポリマー114の材料としては、少なくとも炭素の六員環(すなわち、ベンゼン環)を含む材料が用いられる。
スキン層163およびコア層164の少なくともコア層164がベース部161を形成している。第14実施形態では、炭化部115はスキン層163においてコア層164から離間した位置に設けられている。つまり、溝状凹面165はコア層164に到達しておらず、炭化部115はスキン層163のみに隣接するように設けられている。スキン層163およびコア層164の両方がベース部161を形成している。
図54、図55および図56に示すように、スキン層163では、コア層164と比べて多くのフィラー113がベース部161の外面162に沿って所定方向へ延びるように配向している。以下、所定方向へ延びるように配向しているフィラー113のことを「配向フィラー113」と記載する。炭化部115は、配向フィラー113に交差する方向に延びている。特に第14実施形態では、炭化部115は、配向フィラー113に直交する方向に延びている。
図57に示すように、炭化部115は、たくさんの炭化物166が集まって形成されている。フィラー113は、フィラー113の少なくとも一部が炭化部115に入り込んでベース部161からの炭化部115の離脱を規制している。すなわち、フィラー113は、炭化部115からの炭化物166の離脱を規制する規制部材である。フィラー113の材料としては、第8実施形態において説明したとおり、繊維状、粉粒状または板状のものが用いられ得る。第14実施形態では、フィラー113の材料として例えば難燃性繊維、ガラス繊維、カーボン繊維などの繊維材を用いており、これにより繊維部を構成している。図57では、煩雑になるのを避けるためにハッチングの図示を省略している。
ベース部161に含まれるフィラー113のうち溝状凹面165から突き出したものは、その一端がベース部161に保持されつつ、他端が炭化部115に引っかかっていることで、炭化部115とベース部161との結びつきを強固にしている。フィラー113の材料として繊維材を用いることで、引っかかりの長さを長くすることができる。特に、配向フィラー113は、炭化部115の延出方向に交差しているので溝状凹面165から突き出しやすく、炭化部115に引っかかりやすい。また、配向フィラー113の一部は、炭化部115において炭化物166を貫通しており、炭化物166の脱落を効果的に抑制している。
樹脂部材110の製造方法は、図58に示すように準備工程P1および炭化工程P2を含む。準備工程P1では、図59および図60に示すようにベースポリマー114に混じった状態のフィラー113により強化されたベース部161が準備される。この準備工程P1における準備には、第8実施形態における成形工程P1と同様にベース部161を成形することのみならず、未使用および使用済みを問わず既に成形されたベース部161を用意することが含まれる。
炭化工程P2では、図61および図62に示すように準備工程P1で準備されたベース部161が加熱される。加熱は、ベースポリマー114の一部が炭化した炭化物166を含んでいることで導電性を有する炭化部115がベース部161の外面162に設けられるように、且つフィラー113の少なくとも一部が炭化部115に入り込んでベース部161からの炭化部115の離脱を規制する状態になるように行われる。また、スキン層163の少なくとも一部が炭化して炭化部115が形成されるように、且つ炭化部115がコア層164から離間した位置に形成されるように、スキン層163が加熱される。
炭化工程P2では、図61に示すように、スキン層163においてベース部161の外面162に沿って延びているフィラー113に交差する方向に炭化部115が延びるように、スキン層163が加熱される。
(効果)
以上説明したように、第14実施形態では、樹脂部材110はベース部161と炭化部115とを備えている。ベース部161は、樹脂材料により形成され且つ絶縁性を有するベースポリマー114と、ベースポリマー114よりも強度が高いフィラー113とを有し、ベースポリマー114に混じった状態のフィラー113により強化されている。炭化部115は、ベース部161の外面162に設けられ、炭化物166を含んでいることで導電性を有する。フィラー113は、フィラー113の少なくとも一部が炭化部115に入り込んでベース部161からの炭化部115の離脱を規制している。
樹脂部材110の製造方法は、ベース部161を準備する準備工程P1と、炭化工程P2とを含む。炭化工程P2では、ベースポリマー114の一部が炭化した炭化物166を含んでいることで導電性を有する炭化部115がベース部161の外面162に設けられるように、且つフィラー113の少なくとも一部が炭化部115に入り込んでベース部161からの炭化部115の離脱を規制する状態になるように、ベース部161を加熱する。
上記樹脂部材110およびその製造方法によれば、樹脂部材110の製造後において、炭化物166の離脱がフィラー113で規制される。そのため、炭化物166が離脱して炭化部115の導電性が低下することを抑制できる。また、加熱によってベースポリマー114を炭化させて炭化部115を生成する製造中において、分解ガスの発生に伴う炭化部115の飛散がフィラー113で規制される。そのため、加熱に伴って炭化部115の一部が飛散して炭化部115の導電性が低下することや、炭化部115が途切れることを抑制できる。
また、第8実施形態では、樹脂部材110は、ベース部161の外面162に沿って延びたスキン層163と、スキン層163の内側に設けられたコア層164とを備える。スキン層163およびコア層164の少なくともコア層164がベース部161を形成している。ベース部161の外面162は、コア層164側に凹んだ溝状凹面165を有している。炭化部115は、溝状凹面165上においてスキン層163からコア層164に向けて延びるように設けられている。準備工程P1では、スキン層163とコア層164とを有するベース部161を準備する。炭化工程P2では、スキン層163の少なくとも一部が炭化して炭化部115が形成されるようにスキン層163を加熱する。
樹脂部材110においては、フィラー113の向きが揃っているスキン層163の方が、フィラー113の向きが不揃いになりやすいコア層164に比べて、フィラー113が炭化部115の離脱を規制しやすい。そのため、上記樹脂部材110およびその製造方法によれば、炭化部115のコア層164からの離脱をより抑制できる。
ここで、炭化部115がコア層164に設けられた構成では、コア層164でのフィラー113の向きが不揃いになりやすいことに起因して、コア層164からの炭化部115の離脱をフィラー113が規制しにくいことが懸念される。
これに対して、第8実施形態では、炭化部115は、スキン層163においてコア層164から離間した位置に設けられている。炭化工程P2では、炭化部115がコア層164から離間した位置に形成されるようにスキン層163を加熱する。上記樹脂部材110およびその製造方法によれば、炭化部115がコア層164に設けられていないため、炭化部115のコア層164からの離脱をより一層効果的に抑制できる。
ここで、フィラー113の全体が炭化部115に含まれていると、このフィラー113は炭化部115と共にベース部161から離脱しやすいことが懸念される。
これに対して、第8実施形態では、炭化部115は、スキン層163においてベース部161の外面162に沿って延びているフィラー113に交差する方向に延びている。炭化工程P2では、スキン層163においてベース部161の外面162に沿って延びているフィラー113に交差する方向に炭化部115が延びるようにスキン層163を加熱する。このように炭化部115とフィラー113とが交差していると、フィラー113の一端がベース部161に入り込み、且つ他端に炭化部115が引っかかった状態になりやすいため、フィラー113が炭化部115と共にベース部161から離脱するということを抑制できる。
また、第8実施形態では、フィラー113は、炭化部115において炭化物166を貫通している。これによれば、フィラー113が炭化物166の離脱をより確実に規制できる。また、フィラー113が貫通している高分子部(すなわち、高分子の塊)を有するベースポリマー114において、ベースポリマー114を加熱した場合、フィラー113が貫通したままの状態で高分子部が炭化して炭化物166に変質するという事象を利用して、ベースポリマー114の燃焼に伴う炭化物166の飛散をフィラー113により規制できる。
[第15実施形態]
第15実施形態では、図63~図65に示すように炭化部115は、配向フィラー113に平行な方向に延びている。炭化工程P2(図58参照)では、図66~図67に示すように、配向フィラー113に平行な方向に炭化部115が延びるように、レーザビームが配向フィラー113に平行な方向に走査されてスキン層163が加熱される。すなわちレーザビームの走査方向と配向フィラー113の配向方向とが平行である。
このように炭化部115の延伸方向と配向フィラー113の配向方向とが交差していなくてもよい。図66に示すように、レーザ照射による炭化中においては、炭化部115に隣接している炭化されない樹脂部、又は、レーザ軌道上に存在するがレーザ走査方向の前方にあってまだレーザ照射されていない樹脂部にフィラー113が固定されていることで、そのフィラー113に引っ掛かる炭化物の離脱が抑制される。これにより、炭化物の飛散および脱落を防止し、定着性を向上させることができる。
[第16実施形態]
第16実施形態では、図68に示すように樹脂部材110のベース部161の外面162は、「第1外面」としての第1面170と、第1面170に交差する方向に延びる「第2外面」としての第2面171と、第1面170と第2面171とが交差する部分(すなわち入隅部分)を面取りしている「面取り外面」としての面取り面173とを有している。また、外面162は、第2面171に交差する方向に延びる「第1外面」としての第3面172と、第3面172と第2面171とが交差する部分(すなわち出隅部分)を面取りしている「面取り外面」としての面取り面174とを有している。
炭化部115は、第1面170に設けられた第1炭化部175と、第2面171に設けられた第2炭化部176と、面取り面173に設けられ第1炭化部175と第2炭化部176とを接続する接続炭化部178とを有している。また、炭化部115は、第3面172に設けられた第3炭化部177と、面取り面174に設けられ第2炭化部176と第3炭化部177とを接続する接続炭化部179とを有している。
ここで、互いに交差する2つの面をもち、その角部が面取りされておらず、2つの面が直接的に接続された比較形態について説明する。このような比較形態では、上記角部にフィラーが存在しにくいため、相対的にベースポリマー114の割合が多くなってレーザ照射時に昇温速度が高くなりすぎることで、分解ガスが急激に発生して炭化物を飛散させてしまう。これにより、角部の炭化部の導通が切れやすくなることが懸念される。また、樹脂部材の微小な変形に伴って角部に応力が集中し、2つの面の炭化部が物理的に離間して、角部の炭化部で断線が起こることが懸念される。
これに対して、第16実施形態では、第1面170と第2面171との角部が面取りされ、面取り面173に接続炭化部178が設けられている。また、第2面171と第3面172との角部が面取りされ、面取り面174に接続炭化部179が設けられている。これにより、第1炭化部175と第2炭化部176との境界部および第2炭化部176と第3炭化部177との境界部で電気的な遮断が生じることを接続炭化部178、179により抑制できる。
樹脂部材10の製造方法は、図69に示すように準備工程P1、面取り工程P2および炭化工程P3を含む。準備工程P1では、図70に示すように互いに交差する3つの面、すなわち第1面170、第2面171および第3面172をもつベース部161が準備される。第3面172と第2面171とが交差する部分には、ベース部161の樹脂成形時に面取り面174が形成されている。一方、第1面170と第2面171とが交差する部分は、ピン角(すなわち、面取りされずに尖っている角部)になっている。
面取り工程P2では、図71に示すように第1面170と第2面171とが交差する部分を面取りする面取り面173を形成する。面取りは、レーザ照射でピン角を除去することにより行われる。
炭化工程P3では、図72に示すように、炭化部115として、第1面170に沿って延びる第1炭化部175と、第2面171に沿って延びる第2炭化部176と、面取り面173に沿って延び且つ第1炭化部175と第2炭化部176とを接続する接続炭化部178とがベース部161の外面162に設けられるように、ベース部161を加熱する。また、炭化部115として、第3面172に沿って延びる第3炭化部177と、面取り面174に沿って延び且つ第3炭化部177と第2炭化部176とを接続する接続炭化部179とがベース部161の外面162に設けられるように、ベース部161を加熱する。
ここで、第1炭化部175と第2炭化部176と第3炭化部177を先に形成した後に接続炭化部178、179を形成する製造方法について説明する。このような製造方法おいては、炭化部115を形成した時点において第1炭化部175と第2炭化部176とが接続炭化部178により接続された状態になっていないこと、および、第2炭化部176と第3炭化部177とが接続炭化部179により接続された状態になっていないことが懸念される。
これに対して、第16実施形態では、炭化工程P3において、第1炭化部175と第2炭化部176とが接続炭化部178により接続された状態になるように、第1面170から面取り面173を経由して第2面171まで連続してベース部161を加熱する。また、第2炭化部176と第3炭化部177とが接続炭化部179により接続された状態になるように、第2面171から面取り面174を経由して第3面172まで連続してベース部161を加熱する。そのため、炭化部115を形成した時点において、第1炭化部175と第2炭化部176とを接続炭化部178により確実に接続できるとともに、第2炭化部176と第3炭化部177とを接続炭化部179により確実に接続できる。
[第17実施形態]
第17実施形態では、図73および図74に示すように炭化部115は格子状に形成されている。炭化部115は、例えばエアフロメータまたは回転角センサなどの電子装置においてハウジングの外壁面に設けられ、静電気除去回路として利用される。
ベース部161の外面162には、炭化部115の周縁部に沿って延びるように変形跡185が設けられている。変形跡185は、ベース部161の一部が変形した跡である。第17実施形態では、変形跡185は、溶融して固化した溶融固化跡である。なお、他の実施形態では、変形跡185は、例えばレーザ加工、研磨などの機械加工、または溶液を用いた溶解加工による除去跡であってもよい。炭化部115の形成に伴って発生した飛散物等の異物がベース部161に付着していても、変形跡185を形成する際にこの異物をベース部161から除去することが可能である。そのため、変形跡185を設けることで、上記異物によりベース部161の意匠性が低下することを回避できる。
変形跡185は、ベース部161の少なくとも一部が発泡した状態になっている発泡部186、及びベース部161の外面162に設けられた複数の点状凹部187を有している。これらの発泡部186や点状凹部187はベース部161が加熱されることで形成可能な変形跡である。
樹脂部材10の製造方法は、図75に示すように準備工程P1、炭化工程P2および変形工程P3を含む。変形工程P3では、炭化工程P2の後、変形跡185がベース部161の外面162において炭化部115の周縁部に沿って延びるように、ベース部161の少なくとも一部を変形させる。変形工程P3では、ベース部161の外面162に変形跡185が形成されるように、且つ炭化工程P2でのベース部161の加熱よりも低い温度になるように、ベース部161及び炭化部115のそれぞれの少なくとも一部を加熱する。
ここで、炭化工程P2での加熱に伴って発生した異物がベース部161の外面162に付着したままの状態である場合、炭化部115による電荷放出が異物によって阻害されやすいことが懸念される。
これに対して、第17実施形態では、変形工程P3での加熱によって、ベース部161に付着している異物を燃焼などにより除去することができる。
ここで、炭化部115に、不安定な姿勢でかろうじてベース部161に付着している部位が含まれている場合、この部位の姿勢が変化することで、炭化部115での電荷の通りやすさも変化することになる。この場合、この部位の姿勢によって炭化部115の導電性が変化し、導電性が不安定になることが懸念される。
これに対して、第17実施形態では、変形跡185の形成に際して、ベース部161だけでなく炭化部115の一部も除去される。このとき、炭化部115のうち安定した姿勢の部位よりも不安定な姿勢の部位が除去されやすい。つまり、変形工程P3では、ベース部161だけでなく炭化部115も加熱されるため、炭化部115のうち不安定な姿勢の部位を加熱や燃焼などにより除去することができる。そのため、炭化部115の導電性が変化することを抑制し、炭化部115の導電性を安定させることができる。
また、炭化部115の一部を除去するトリミングを行うことにより、炭化部115の抵抗値を所定の値に制御することができる。
炭化工程P2では、ベース部161に例えばレーザビームなどの電磁波を照射することでベース部161を加熱して炭化部115を形成する。変形工程P3では、炭化工程P2にてベース部161に照射される電磁波よりも強度(すなわち出力)が低くなるように、走査速度が速くなるように、および、周波数が低くなるようにベース部161に電磁波を照射することでベース部161を加熱して変形跡185を形成する。
このようにして炭化部115および変形跡185の両方を電磁波照射によって形成することができるため、炭化部115および変形跡185を形成する際の作業負担を低減できる。例えば、炭化工程P2と変形工程P3とを連続して行う構成であれば、電磁波を照射する装置に対してベース部161の位置合わせを行うという作業を1回にまとめることができる。
変形跡185の形成にレーザを用いる場合、レーザのエネルギによっては樹脂が発泡して変色することがあるが、意匠性の付与を目的としてこれを意図的に生じさせることが可能である。また、変形跡185の形成にレーザを用いる場合、除去加工に適することからパルスレーザを用いることが望ましい。パルスレーザを用いることで点状凹部187を周期的に形成することができる。
以下に複数の実施例を示す。各実施例は経済性と導電性の両立の観点から比較的高出力のレーザビームを用いて短時間加工を行った場合の例である。しかしこれに限られず、導電性向上の観点から、比較的低出力のレーザビームを用いて長時間加工を行った場合、昇温速度が緩やかになり、さらなる導電性の向上が期待できる。
(実施例1)
実施例1では、図76に示すように、成形体117は、ポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーに、フィラーとしてガラス繊維が40wt%添加され、体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料で構成されている。配向層112は、成形体117の表面から少なくとも0.3mm以上の深さにおいて形成されている。図76、図77に示すように、幅および奥行ともに80mm、厚さ3mmの平板状に形成された成形体117の表面の所定の箇所の配向層112に圧力0.15MPaのアルゴンガス雰囲気下で、焦点距離を表面に対してジャストフォーカス近傍となるよう調整した発振波長940nm、集光径0.6mmの半導体レーザを、出力100Wにて50mm/sの速度で直線40mmの区間を走査し、配向層112の一部を炭化させた。
図76および図77に示すように、配向層112のレーザビームが照射された箇所(以下、第1領域A1)が2300℃から2500℃程度に昇温し、高温の分解ガスが盛んに発生する。この時、樹脂材料の発泡等により膨張が生じるが、同時にレーザビームによって蒸発・除去がされる。そのため、第1領域A1においては凹部が形成され、凹部における炭化物は多孔質な組織となる。
それと並行して、高温に昇温した第1領域A1からの熱伝導、および、第1領域A1から発生した高温の分解ガスにより、第1領域A1の周囲に1800℃から2200℃程度に昇温して炭化する第2領域A2が形成される。
第2領域A2はレーザビームの走査軌道上からはずれているため、第2領域A2にはレーザビームが直接的に当たらない。しかし、分解ガスなどの温度を受け炭化している箇所(以下、第3領域A3)は、蒸発・除去が起こりにくく、発泡や体積膨張によって凸状の組織となる(図78参照)。第3領域A3では、炭化前の状態においてフィラーの配向が形成されている。この配向状態が反映され、表面方向に伸長した少なくとも10層以上から成る層を成した状態で炭化組織が形成された(図79参照)。
図80に示すように、フィラー113が配向した樹脂材料で構成される第1層121と、その上部に発泡を伴った第2層122と、その上部に前述したように層を成した炭化物の第3層123が観察される。第3層123の法線方向100μm以内に少なくとも10層以上の積層構造をなす炭化物の層が観察できる。第1領域A1および第3領域A3の下部には樹脂が発泡した第2層122が形成される。
また、図80においてはフィラー113が配向している方向と、炭化物を形成している方向が一致しているが、フィラー113は樹脂部材表面のある特定の主方向に強く配向していればよく、主方向は樹脂部材表面のどの方向に向いていても良い。例えばフィラー113は、図80の紙面に直交する方向に配向を成していても良い。炭化物の層と樹脂部材表面がなす角度については、レーザビームの走査方向によってどこの箇所が先に炭化し膨張するかによって決まり、レーザ走査を行う軌道の上流側にあたる方が上側(表面から遠い側)に位置するような斜めとなるような若干の角度を形成して層を形成する。
実施例1において、第1領域A1および第3領域A3により形成された導電性パターンの形状は、巾が0.9mm、樹脂部材表面から厚さ方向に向けて炭化された深さが0.12mm、長さが40mmの直線状であった。導電性パターンの両端に市販の銀ペーストを塗布・硬化させ、中央20mmの電気抵抗値を測定すると、両端の電気抵抗値が97.1Ωであった。
第1領域A1および第3領域A3により形成した導電性パターンをエポキシ樹脂からなる注型材で周囲を被覆・固定し、全体の電気抵抗値が変化しない事を確認した後、断面研磨により全体から第1領域A1において形成した炭化物のみを除去したサンプルを作製した。そして、電気抵抗値、長さ、断面形状の関係から、第1領域A1において形成した炭化物と第3領域A3において形成した炭化物の電気伝導率を比較すると、第1領域A1において形成した炭化物は第3領域A3において形成した炭化物の3倍以上の電気伝導率を示した。
さらに、第3領域A3に対してラマン分光分析を実施したところ、1580cm-1(Gバンド)と1360cm-1(Dバンド)にピークを観測すると、GバンドとDバンドのピーク強度比(I1580/I1360)は1.61であった。
作製した炭化物を60%の濃度の硝酸中に室温で5分間放置する事により酸化処理を行ったのち、硝酸を蒸留水で洗い流した後、50℃の恒温槽にて十分に乾燥させた後、同様にして測定を行うと電気抵抗値が30%低減した。
(実施例2)
実施例2では、フィラーを添加せずにポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーのみで構成された体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料を用いて、実施例1と同様の方法で成形体を形成し、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行った。この場合、炭化物が激しく飛散し、炭化物が定着しなかった。その後、実施例1と同様の方法にて電気抵抗を測定した結果、少なくとも50MΩ以上であった。また、レーザビームの出力のみを5W、10W、50W、100W、150W、200Wと変化させ、電気抵抗を測定したが、いずれの水準も少なくとも50MΩ以上の電気抵抗値を示した。
(実施例3)
ポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーに、フィラーとして炭素繊維が30wt%程度添加された体積抵抗率10Ωm程度の導電性樹脂材料を用いて、実施例1と同様の方法で成形体を形成し、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行い、実施例1と同様の導電性パターンを形成した。実施例1と同様の方法にて電気抵抗を測定した結果、21.8Ωであった。また、この時の導電性パターンの体積抵抗率を長さ、断面形状、電気抵抗値から概算すると、8.4×10-5Ωmであった。
(実施例4)
実施例1と同様の要領で、レーザビームの照射時における雰囲気の圧力のみを0.001MPaの減圧雰囲気に変更し、炭化物を形成すると、発生した分解ガスの温度が瞬時に低下し、第3領域A3がほとんど形成されず、第3領域A3における層状の炭化物の層が形成されなかった(図81参照)。この時、形成した配線パターンの形状は、巾が0.6mm、樹脂部材表面から厚さ方向に向けて炭化された深さが0.05mm、長さ40mmの直線状であった。導電性パターンの両端に市販の銀ペーストを塗布・硬化し中央20mmの電気抵抗値を測定すると、両端の電気抵抗値が1124Ωであった。
(実施例5)
図82に示すように、実施例1と同様の要領で長さ40mmの直線状に炭化部を形成し、それを表面垂直方向に0.8mmずつレーザビームを走査する軌道をずらしながら50本形成する事で、直線状に炭化部同士が導通し、40mmの正方形形状の導電性パターンを形成する事が出来た。この時生成した炭化物の電気伝導度は実施例1で形成した炭化物と同等程度であった。この時、表面には実施例1と同等の凹凸が形成された。
(実施例6)
ポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーに、フィラーとしてガラス繊維33wt%と炭化カルシウムが33wt%の合計66wt%が添加された、体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料を用いて、実施例1と同様の方法で成形体を形成し、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行うと、実施例1と同様の配線パターンが形成された。実施例1と同様の方法にて電気抵抗を測定した結果、1270Ωであった。
(実施例7)
ポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーに、フィラーとしてガラス繊維30wt%が添加された、体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料を用いて、実施例1と同様の方法で成形体を形成し、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行うと、実施例1と同様の配線パターンが形成した。実施例1と同様の方法にて電気抵抗を測定した結果、139.3Ωであった。
(実施例8)
ポリフェニレンスルフィドを主成分とするベースポリマーに、フィラーとしてガラス繊維45wt%が添加された、体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料を用いて、実施例1と同様の方法で成形体を形成し、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行うと、実施例1と同様の配線パターンが形成した。実施例1と同様の方法にて電気抵抗を測定した結果、169.1Ωであった。
(実施例9)
フェノール樹脂を主成分とするベースポリマーに、ガラス繊維35wt%とその他無機フィラー15wt%の合計50wt%のフィラーが添加された、体積抵抗率1013Ωm以上を有する絶縁性樹脂材料を用いて、圧縮成形法にて成形体を作製した後、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行い、巾0.75mm、樹脂部材表面から厚さ方向に向けて炭化された深さが0.05mm、長さ40mmのパターンを形成した。この時、実施例1と同様にして区間20mmの電気抵抗値を測定すると、171.2Ωであった。
(実施例10)
実施例9と同じ樹脂材料を用いて射出成形法にて成形体を作製した後、実施例1と同様の方法にて炭化処理を行い、実施例9と同様の導電性パターンを形成した。この時、実施例1と同様にして区間20mmの電気抵抗値を測定すると、133.3Ωであった。
(実施例11)
実施例1と同様の要領で、レーザビームの照射時における雰囲気圧力のみを1.0MPaの加圧雰囲気に変更し、炭化物を形成すると、実施例1に対して30%電気伝導度が向上した導電性パターンが形成された。
(実施例12)
実施例1と同様にして形成した成形体の表面から厚さ方向に1.5mm湿式研磨を行う事により配向層を除去したのち、十分に乾燥させた樹脂部材表面に、実施例11と同様にして炭化物を形成し、実施例1と同様の導電性パターンを形成した。この時、実施例1と同様にして区間20mmの電気抵抗値を測定すると、558Ωであった。
(実施例13)
図83に示すように、実施例1と同様に形成した成形体117の配向層112と、鉄、銅または黄銅等の金属部材151とを密着させ、実施例1と同じ条件で配向層112と金属部材151との接触界面152にレーザビームを照射して、図84に示すように炭化部115を形成した。この炭化部115と金属部材151との間には十分な導通を確保することができた。
(実施例14)
図85に示すように、実施例1と同様の樹脂材料を用いて成形体117の所定の箇所を0.1mm程度の薄肉に形成し、その薄肉箇所を金属部材151に密着させ、実施例1と同じ条件で金属部材151に向けて成形体117の薄肉箇所の厚さ方向にレーザビームを照射して、図86に示すように炭化部115を形成した。上記薄肉箇所に対応する炭化部115は厚さ方向において金属部材151に到達し、炭化部115と金属部材151との間に十分な導通が得られた。
成形体の配向層と金属部材との接触界面に炭化部を形成する場合、配向層の樹脂を加熱し炭化させることのみならず、金属部材を加熱し、配向層を炭化させる為の熱源としても良い。
また、上述した方法において用いる金属部材として特に限定はされないが、例えばニッケル、ビスマス、鉄のように炭素を固溶しやすい金属を選定した場合に特に良好な接合及び導通が得られる。特に、ニッケルを用いた場合、界面にて触媒作用が働き、高品質なグラファイトが形成されるため、特に有効である。また、鉄のように温度と供給される炭素の量により炭素と反応して導電性を有する化合物を形成する場合も有効である。また、めっき等の方法でこれらの金属種を金属部材表面に付着させていても良い。
(実施例15)
実施例1~14で形成した炭化物をエポキシ樹脂からなる注型材で被覆したところ、炭化物の導電性は変化せずに、内部に導電性良好なパターンが形成された樹脂部材が得られた。
[他の実施形態]
他の実施形態では、非絶縁部が形成される部位は、ハウジングの表面に限らず、ハウジング内部であってもよい。例えば、溶着によりハウジング内部に隠れる部分等であってもよい。
他の実施形態では、グランド接続部は、吸気温ターミナルに限らず、例えば吸気管などの他の部位であってもよい。要するにグランド接続部は、グランドに接続されており、電荷をグランド45に放出可能であればよい。
他の実施形態では、レーザ照射によるグラファイト化の加工は、対象が部分的でもよいし、複数個所でもよい。図33に示すように、例えばバイパスハウジング24の外壁24bのうち、流量検出部に対応する部分A、計測出口に対応する部分B、排出路に対応する部分C、および通過通路に対応する部分Dの1つ以上に非絶縁部90が形成されてもよい。また、通路外ハウジング92の外壁92aの一部Eに非絶縁部90が形成されてもよい。
他の実施形態では、炭化部は、パターン状に限らず、膜状に形成されてもよい。その場合、樹脂材料に導電性のフィラーを混合・分散させて導電性を付与した樹脂部材に比べて、樹脂部材表面に緻密な導電性の膜を形成する事が出来る。そのため、より優れた電磁波シールド性を樹脂部材に付与する事ができる。厚みが300μmよりも大きい厚肉の樹脂部材の導電性や熱伝導性を向上させるとともに、電磁波シールド性を向上させることができる。
他の実施形態では、炭化部は、コア層から離間した位置に設けられなくてもよい。すなわち、炭化部はスキン層からコア層まで到達するように設けられてもよい。コア層ではフィラーの向きが不揃いになりやすいが、少なくとも一部のフィラーが炭化部に入り込むことでベース部からの炭化部の離脱を規制することができる。
他の実施形態では、樹脂部材のすべての外面を含む範囲に面状に炭化部が形成され、しかもその炭化部がスキン層からコア層まで到達するように設けられてもよい。その場合には、ベース部はコア層のみから構成される。
他の実施形態では、フィラーの添加量および加熱条件を調整することで電気抵抗値を調整し、電気機器内部の抵抗体またはヒーターとして用いてもよい。
他の実施形態では、導電性及び熱伝導性をより向上する為、樹脂部材表面に形成した炭化物を電極として、電気めっきを施しても良い。また、導電性を向上する為に、酸化剤を用いて酸化処理を行っても良い。
他の実施形態では、複雑な導電性パターンを形成する為、成形体のあらゆる面に導電性パターンを形成しても良い。例えば、成形体に貫通孔を設けておき、貫通孔内部を炭化させる、あるいは、通電部材を挿入する等の方法で、貫通孔の両側面に形成された導電性パターンを導通させても良い。
他の実施形態では、より複雑な立体交差を形成する為、図87に示すように成形した成形体117に図88に示すように所定箇所に炭化部115を形成して樹脂部材110を作成し、図89に示すように複数の樹脂部材110を例えばプレスフィット・スナップフィットによる篏合、接着、溶着、インサート成形等の方法により一体化しても良い。さらに、炭化物の脱落を防止する為、図90に示すように例えばインサート成形、ポッティング、硬化材塗布、その他コーティング等の方法で、炭化物の周囲を固定する被覆部153が形成されても良い。このとき、いくつかのフィラーが炭化物を貫通して樹脂部材110の外側に露出しているため、フィラーの露出した部分が二次成形モールドである被覆部153に入り込むことにより、樹脂部材110と被覆部153との密着性を向上できる。
他の実施形態では、炭化物の脱落を防止する為、成形体を構成する樹脂の一部を加熱溶融し、炭化物を封止しても良い。この時の熱源として、レーザビームを用いても良い。
他の実施形態では、炭化処理を行う前に、成形体117表面にレーザビームを透過する材料(透過材)の層を形成し、図91に示すようにレーザビームを透過材155越しに成形体117に照射することにより成形体117と透過材155の間に炭化部115を形成しても良い。この時、例えば、成形体117と透過材155との間等に多孔質な層を設けたり、成形体117あるいは透過材155の表面に凹凸を設けたりするなどの方法によって、成形体117と透過材155の間に分解ガスが抜ける経路が設けられていることが望ましい。
生成した炭化物と他の金属部材の導通確保の為、炭化物と金属部材を単純に接触させるだけでも良いが、他の実施形態では、銀ペーストやカーボンペースト等の導電性接着剤やはんだ等の溶融金属を間に介在させても良い。
他の実施形態では、炭化工程で用いるレーザで樹脂部材のバリ取りや印字などの加工を行ってもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。