JP7021503B2 - 脂肪族ジアミンの製造方法 - Google Patents

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本発明は脂肪族ジアミンの製造方法に関する。
脂肪族ジアミンは、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂等のモノマ-原料または農薬および医薬の合成上重要な中間体として有用である。例えば、オクタメチレンジアミンは、高強度、高耐熱性と成型加工性を兼ね備えた熱可塑性ポリイミドの原料として知られている。
カルボン酸ジアミンの製造方法としては、ジカルボン酸類を減炭させてジアミンを得る方法が知られている。例えば、ジカルボン酸を強酸中でアジ化ナトリウムと反応させ、シュミット転位によりアミンを得る方法(例えば、特許文献1)がある。しかし、アジ化ナトリウムのようなアジド化合物は爆発性があるため、この方法は安全性に問題があり、操作も煩雑になる。
他の方法として、ジカルボン酸アミドを臭素のアルカリ水溶液で処理し、ホフマン転位によりジアミンを得る方法(例えば、非特許文献1、特許文献2~4)が知られている。しかし、臭素は毒性が強く、取り扱いが難しいために大量合成には不向きである、また、環境に悪影響のある臭素化合物が副生するおそれがあり、精製工程が複雑になる可能性があるという問題を有している。これに対し、特許文献4では塩素を用いる方法も記載されている。
特開2001-226329号公報 米国特許第965,903号 米国特許第991,721号 特開2005-35982号公報
Roger Adams et al.(1946), 『Organic Reactions, Volume 3』, Chapter 7 The Hofmann Reaction-Everett S. Wallis and John F. Lane, pp. 274; John Wiley & Sons, Inc.
ホフマン転位を用いた脂肪族ジアミンの製造を試みたところ、炭素数が大きい場合(例えば炭素数5以上)は、従来用いられている反応条件で反応が進行しないか、または、進行した場合であっても目的物であるジアミンの収率が低くなってしまう問題が生じることが判明した。
したがって、本発明の課題は、安全性、収率、および簡便性の少なくとも一つの点で改良された脂肪族ジアミンの製造方法を提供することである。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ホフマン転位を利用した反応において、特定の反応条件を用いることにより、上記課題を解決しうることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば次の通りである。
[1] 下記式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミドと、次亜塩素酸ナトリウムとを、塩基の存在下、水およびアルコ-ルを含む混合溶媒中で反応させる工程を含み、
前記塩基と前記脂肪族ジアミドとのモル比が、塩基/脂肪族ジアミド(モル比)=1.8~6.0である、脂肪族ジアミンの製造方法。
Figure 0007021503000001
(上記式中、mは、5~11の整数であり、nは、1~3の整数である。)
[2] 前記次亜塩素酸ナトリウムとして、次亜塩素酸ナトリウム五水和物を用いる、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記次亜塩素酸ナトリウムは、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを導入することにより合成される、[1]に記載の製造方法。
[4] 前記混合溶媒における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/0.1~1/10である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記アルコ-ルは、メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、およびブタノ-ルから選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記脂肪族ジアミドと前記次亜塩素酸ナトリウムとを0~20℃で反応させる工程(a)、および
次いで、20~100℃の温度に昇温する工程であって、前記昇温前、昇温中または昇温後に追加の水を添加する、工程(b)を含む、[1]~[5]のいずれかにに記載の製造方法。
[7] 工程(b)において、20~60℃の温度に昇温し、前記昇温前、昇温中または昇温後に前記追加の水を添加し、次いで、60~100℃の温度に昇温することを含む、[6]に記載の製造方法。
[8] 工程(b)において、前記昇温前に前記追加の水を添加する、[6]または[7]に記載の製造方法。
[9] 最終溶液に含まれる水とアルコ-ルとの混合比率が水/アルコ-ル(重量比)=1/0.01~1/10となるように、前記追加の水が添加される、[6]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 追加の水の添加前の混合溶媒における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/1~1/5であり、
追加の水の添加後の最終溶液における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/0.01~1/5である、[6]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種である、[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 前記脂肪族ジアミンが、オクタメチレンジアミンまたはシクロヘキサンジアミンである、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、改良された脂肪族ジアミンの製造方法が提供され得る。
例えば、本発明の方法は、以下の一以上の効果を有する。
(1)炭素数5~11の脂肪族ジアミンを、改善された収率で製造し得る。
(2)昇温条件および/または反応溶媒中の水割合を制御することにより、収率が向上し、および/または、副生成物の生成が抑制され得る。
(3)安全かつ簡便に脂肪族ジアミンを製造することができる。特に、次亜塩素酸ナトリウム五水和物を用いることで、安全性および取扱い易さの向上が図られる。
本発明は、脂肪族ジアミンの製造方法に関する。実施形態に係る脂肪族ジアミンの製造方法は、下記式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミドと、次亜塩素酸ナトリウムとを、塩基の存在下、水およびアルコ-ルを含む混合溶媒中で反応させる工程を含み、前記塩基と前記脂肪族ジアミドとのモル比が、塩基/脂肪族ジアミド(モル比)=1.8~6.0である。
Figure 0007021503000002
上記反応により、それぞれ、下記式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミンが生成する。ただし、実施形態の製造方法は、上記(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミンの製造に限定されることなく、式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応から製造される全ての化合物の製造を包含する。
Figure 0007021503000003
上記式(1)および(1)’中、mは、5~11の整数である。mは、反応性の面で、好ましくは、5~9である。
上記式(2)および(2)’中、nは、1~3の整数である。nは、反応性の面で、好ましくは、1~2である。
実施形態の製造方法は、上記式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミド(以下単に「脂肪族ジアミド」ともいう)に対し、次亜塩素酸ナトリウムを作用させて、いわゆるホフマン転位反応を行い、一炭素ずつ減炭された上記式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミン(以下、単に「脂肪族ジアミン」ともいう)を生成する。
具体的には、実施形態の製造方法では、以下の反応式に従って、式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミドからそれぞれ式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミンが形成されると考えられる。まず、式(1)または式(2)で表される脂肪族ジアミドのアミド基(-CONH)の水素原子の一つと次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)の塩素原子とが置換して-CONHClとなり、それぞれ式(1a)または式(2a)で表される中間体(以下、「中間体(1a)」または「中間体(2a)」ともいう)が生成される。次いで、-CONHClが熱転位してイソシアネ-ト基(-NCO)となり、それぞれ式(1b)または式(2b)で表される中間体(以下、「中間体(1b)」または「中間体(2b)」ともいう)が生成される。さらに、イソシアネ-ト基(-NCO)が加水分解されてアミノ基(-NH)となり、それぞれ、目的物である式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミン(以下、単に「脂肪族ジアミン」ともいう)が形成される。
なお、下記式において、mおよびnは上記式(1)および式(1)’、または、式(2)および(2)’の定義と同一である。
Figure 0007021503000004
出発原料である脂肪族ジアミドは、市販品を用いてもよいし、合成して得てもよい。合成方法は特に制限されず、例えば、ジカルボン酸と塩化チオニル等の酸ハロゲン化剤との反応により合成されるジカルボン酸ハライド(例えばジカルボン酸クロリド)とカルボン酸アンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウム)、アンモニア、第一級または第二級アミンとを反応させる方法が挙げられる。
式(1)の脂肪族ジアミドの例は、へプタンジアミド、オクタンジアミド、ノナンジアミド、デカンジアミド、ウンデカンジアミド、ドデカンジアミド、ウンデカンジアミドである。中でも、ヘプタンジアミド、オクタンジアミド、ノナンジアミド、デカンジアミド、ウンデカンジアミド、特に、デカンジアミドであり得る。
式(2)の脂肪族ジアミドの例は、シクロヘキサンジアミド、シクロへプタンジアミド、シクロオクタンジアミドである。中でも、シクロヘキサンジアミド、シクロヘプタンジアミド、特に、シクロヘキサンジアミド(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジアミド)であり得る。
次亜塩素酸ナトリウムとしては、次亜塩素酸ナトリウム五水和物(NaClO・5HO)を用いることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウム五水和物を出発原料である脂肪族ジアミドとともに反応溶媒中に添加することにより、次亜塩素酸ナトリウムと脂肪族ジアミドとの反応が進行し得る。無水塩である次亜塩素酸ナトリウムは極めて不安定な化合物である。これに対し、次亜塩素酸ナトリウム五水和物は、結晶形態であり、次亜塩素酸ナトリウムの無水塩と比較して安定性が高く、高濃度での使用が可能であるという利点を有する。次亜塩素酸ナトリウム五水和物を用いた反応は、試薬量の低減、試薬の取り扱い容易性および反応の安全性の向上、次亜塩素酸ナトリウムの調製工程の省略等の反応工程の簡略化、廃液量の低減などが図られる。次亜塩素酸ナトリウム五水和物としては市販品を使用することができる。
次亜塩素酸ナトリウムとして、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを導入することにより合成されるものを用いてもよい。水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを導入すると、下記反応式(i)に従い、塩化ナトリウムとともに水溶液に溶解した形態の次亜塩素酸ナトリウムが得られる。この次亜塩素酸ナトリウム水溶液は無水塩である次亜塩素酸ナトリウムと比較して安定である。
2NaOH+Cl→NaOCl+NaCl+HO (i)
上記反応により生成する次亜塩素酸ナトリウムの量(水溶液中の濃度)および反応に使用される水酸化ナトリウムの量は導入する塩素ガス量から算出することができる。
実施形態の製造方法では、上記反応で得られる、塩化ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液(以下単に「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」ともいう)を予め調製し、該水溶液をそのまま出発原料である脂肪族ジアミドとともに溶媒中に添加することができる。
また、市販品の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いることもできる。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の塩素濃度は、特に限定されないが、安定性と入手のし易さの観点で、5~15重量%程度の濃度が好ましい。
あるいは、実施形態の製造方法では、水酸化ナトリウムを含む反応溶液に塩素を導入して次亜塩素酸ナトリウムを生成させながら、脂肪酸ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応を進行させてもよい。例えば、塩基として水酸化ナトリウムを用いる場合には、塩基としての水酸化ナトリウムおよび脂肪族ジアミドを含有する反応溶液に塩素を導入する、または、塩基としての水酸化ナトリウムを含有する反応溶液に塩素を導入しながら、脂肪族ジアミドを添加することにより、該反応が進行し得る。
あるいは、次亜塩素酸ナトリウムを直接溶媒に投入してもよい。この他、次亜塩素酸ナトリウムは、反応系において、次亜塩素酸ナトリウムが脂肪族ジアミドと反応しうる形態で存在する限り、様々な形態で投入または使用し得る。
出発原料である脂肪族ジアミドに対する次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)のモル比率(NaOCl/脂肪酸ジアミド;モル比)は特に制限されないが、好ましくは2.0~6.0、より好ましくは3.0~5.0、さらに好ましくは3.5~4.5となる量で使用することが好ましい。NaOCl/脂肪酸ジアミドのモル比が下限以上であれば収率が向上し、上限以下であれば副生成物の生成を抑制し得る。
塩基としては、強塩基が好ましい。中でも、入手のし易さの面で、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択される少なくとも1種がより好ましい。
塩基は、出発原料である脂肪族ジアミドに対する塩基のモル比率(塩基/脂肪族ジアミド;モル比)が1.8~6.0の量で使用される。塩基/脂肪族ジアミドのモル比が1.8以上であれば収率が向上し、6.0以下であれば副生成物の生成を抑制し得る。塩基と脂肪族ジアミドとのモル比は、より好ましくは2.0~4.0、さらに好ましくは2.0~3.0となる量が好ましい。
なお、反応溶液に直接塩素を導入して次亜塩素酸ナトリウムを発生させる場合には、溶媒に添加する塩基は、脂肪酸ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応に必要な塩基に加えて、次亜塩素酸ナトリウムへの転換に必要な量の水酸化ナトリウムを添加することが好ましい。
実施形態の脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応は、水およびアルコ-ルを含む混合溶媒中で行われる。従来、ホフマン転位を利用したアミン合成反応では、通常反応溶媒として水が使用されてきた。しかし、本発明のように炭素数が大きい(例えば5以上の)脂肪族ジアミンの合成を試みた場合、反応溶媒として水を用いると、目的物を得ることができないか、または、合成できた場合であっても収率が極めて低くなる等の問題が生じることが判明した。そして、本発明者らは、反応条件を詳細に検討した結果、反応溶媒として、水およびアルコ-ルを含む混合溶媒を用いることにより、良好な収率で、目的物である脂肪族ジアミンを得られることを見出した。
なお、反応溶媒として、アルコールのみを使用して脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応を行った場合には、塩基の溶解性が悪化し、依然として反応が進行しない傾向があることが分かった。また、その際の主生成物はウレタン化合物(後述する式(1c)および(2c)の化合物)であり、目的物であるジアミンを得るためには更に加水分解の工程を必要とするため、操作が煩雑になる。
該アルコ-ルとしては、収率向上およびコストの面から、炭素数6以下の低級アルコ-ルが好ましく、より好ましくは炭素数1~4のアルコ-ル(例えば、メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、およびブタノ-ルから選択される少なくとも1種)、さらに好ましくはメタノ-ルおよびエタノ-ルから選択される少なくとも1種、特に好ましくはメタノ-ルである。
混合溶媒における水とアルコ-ルとの混合比率(水/アルコ-ル;重量比)は、収率向上の面から、1/0.1~1/10が好ましく、1/0.5~1/8がより好ましく、1/1~1/5がさらに好ましい。水/アルコ-ルの重量比が、1/0.1以下であれば塩基の反応溶媒への溶解性が向上し、収率の向上および副生成物の抑制の面で好ましい。一方、水/アルコ-ルの重量比が、1/10以上であれば反応物である脂肪族ジアミドの反応溶媒への溶解性の向上および収率の向上の面で好ましい。
脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応の温度は反応が進行し得る温度であれば特に制限されない。しかし、該反応は、温度0~20℃で行うことが好ましく、より好ましくは0~10℃、さらに好ましくは0~5℃(例えば氷冷下)で行なうことが好ましい。反応物である次亜塩素酸ナトリウムや脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応により生じ得る-CONHClを有する中間体(1a)および(2a)は不安定で分解しやすい。上限以下の温度で反応させることにより、該反応物および中間体の分解を防ぐことができる。また、0℃以上の温度であれば、反応液の凍結を抑制し得るため好ましい。また、脂肪酸ジアミド、次亜塩素酸ナトリウム、および塩基の反応溶媒への添加も上記温度の範囲で行うことが好ましい。本明細書において、「反応温度」とは、反応溶液の液温を指す。
反応時間は、特に制限されないが、反応効率の面から、例えば0.5~3時間であり、好ましくは1~2時間、より好ましくは1~1.5時間である。なお、当該反応時間は、反応に関与する脂肪族ジアミド、次亜塩素酸ナトリウムおよび塩基が反応溶媒中に添加された後から脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応終了までの時間をいう。
反応溶媒への脂肪酸ジアミド、次亜塩素酸ナトリウム、および塩基の添加の順序は特に制限されない。反応溶媒に、各試薬を同時に添加してもよいし、順に添加してもよい。
一実施形態では、反応溶媒に、塩基を添加して溶解し、次いで次亜塩素酸ナトリウムを添加し、次いで脂肪酸ジアミドを添加する。脂肪酸ジアミドの添加により反応温度が上昇するため、好ましくは、反応温度を一定温度に維持する目的で、例えば滴下量を調整することにより脂肪酸ジアミドの添加速度を調整することが好ましい。反応温度の急速な上昇は中間体や反応物の分解反応を招きやすく、目的物である脂肪酸ジアミンの収率の低下および/または副生成物の生成を引き起こすおそれがある。したがって、収率向上の観点からは反応温度を一定温度(好ましくは0~20℃、より好ましくは0~10℃、さらに好ましくは0~5℃)に維持することが好ましい。
例えば、好ましい実施形態は以下の通りである。水およびアルコ-ルの混合溶媒に塩基を溶解し、液温を0~20℃に保ち(特に好ましくは氷冷し)、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)次亜塩素酸ナトリウム(好ましくは次亜塩素酸ナトリウム五水和物)を添加し、液温を温度が0~20℃に保たれるように(特に好ましくは氷冷しながら)脂肪酸ジアミドを徐々に(例えば0~3時間かけて)添加する。その後、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)、0.5~4時間(好ましくは1~2時間、より好ましくは1~1.5時間)保持する。かかる形態によれば収率向上の利点がある。
他の実施形態では、反応溶媒に、塩基としての水酸化ナトリウムを添加して溶解し、次いで反応溶液に塩素を導入して次亜塩素酸ナトリウムを含有する溶液とし、次いで脂肪酸ジアミドを添加する。
例えば、好ましい実施形態は以下の通りである。水およびアルコ-ルの混合溶媒に塩基としての水酸化ナトリウムを溶解し、液温を0~20℃に保ち(特に好ましくは氷冷し)、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)塩素を導入して次亜塩素酸ナトリウム含有反応溶液を得、液温を温度が0~20℃に保たれるように(特に好ましくは氷冷しながら)脂肪酸ジアミドを徐々に(例えば0~3時間かけて)添加する。その後、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)、0.5~4時間(好ましくは1~2時間、より好ましくは1~1.5時間)保持する。かかる形態によれば収率向上の利点がある。
他の実施形態では、反応溶媒に、塩基として水酸化ナトリウムを添加して溶解し、次いで脂肪酸ジアミドを添加し、次いで、反応溶液に塩素を導入して次亜塩素酸ナトリウムを生成させながら反応を進行させてもよい。
例えば、好ましい実施形態は以下の通りである。水およびアルコ-ルの混合溶媒に塩基としての水酸化ナトリウムを溶解し、液温を0~20℃に保ち(特に好ましくは氷冷し)、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)脂肪酸ジアミドを添加し、液温を温度が0~20℃に保たれるように(特に好ましくは氷冷しながら)塩素ガスを徐々に(例えば0~3時間かけて)導入する。その後、液温を同温度に保ちながら(特に好ましくは氷冷しながら)、0~4時間(好ましくは1分~2時間)保持する。かかる形態によれば生成する次亜塩素酸ナトリウムの分解を抑制しつつ、効率的に反応に活用できる利点がある。
上記工程により、脂肪族ジアミドが中間体(1a)または(2a)へと変換される。
次いで、反応溶液中で、-CONHClを有する中間体(1a)および(2a)がイソシアネ-ト基(-NCO)に熱転位し、-NCOを有する中間体(1b)および(2b)が生成される。
その後、-NCOを有する中間体(1b)および(2b)が加水分解されてアミノ基(-NH)を有する目的物である脂肪族ジアミンが得られる。
中間体(1a)および(2a)から目的物である脂肪族ジアミンに至る反応において、反応温度は特に制限されない。好ましくは、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応工程後に、反応温度を20~100℃の温度へと昇温することが好ましい。20℃以上であれば熱転位および加水分解反応の進行が良好となり、目的物である脂肪族ジアミンの収率が向上し得る。一方、100℃以下であれば、副生成物の生成を抑制でき、目的物である脂肪族ジアミンの選択率が向上し得る。該反応温度は、より好ましくは30~80℃、さらに好ましくは40~80℃である。反応時間(脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応終了後から脂肪族ジアミンを得るまでの時間;例えば、昇温開始時点から反応終了までの合計時間)は特に制限されないが、反応効率の面から、例えば0.5~10時間であり、好ましくは1~5時間、より好ましくは1~4時間である。
このように、脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとから中間体(1a)または(2a)を得る工程と、中間体(1a)または(2a)から熱転位反応および加水分解反応を経て脂肪族ジアミンを得る工程との2段階で温度調整を行うことで、収率の向上および副生成物の抑制が図られる。
さらに好ましくは、中間体(1a)または(2a)から熱転位反応および加水分解反応を経て脂肪族ジアミンを得る工程において、2段階以上の温度調整が行われる。
例えば、好ましい実施形態は、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応工程後に、20~60℃(より好ましくは40~60℃)の温度に昇温して一定時間保持し(工程(b1))、次いで、60~100℃(より好ましくは60~80℃)の温度に昇温すること(工程(b2))を含む。加水分解反応は一般に高温(例えば60℃以上)で反応が進行しやすく、工程(b2)において主として進行すると考えられる。したがって、このような多段階の温度調節を行うことで、中間体(1a)または(2a)から中間体(1b)または(2b)への熱転位反応が十分に進行し、その後高温での加水分解が行われる態様となるため、収率のさらなる向上および副生成物の抑制が図られる。
反応時間は特に制限されないが、一例をあげると、工程(b1)の反応時間(昇温後の保持時間)が例えば1分~3時間(好ましくは1分~2.5時間、より好ましくは1分~2時間)であり、工程(b2)の反応時間(昇温後の保持時間)が例えば1分~3時間(好ましくは1分~2.5時間、より好ましくは1分~2時間)である。
上記2段階または3段階で温度調整を行う方法のほか、例えば、4段階以上で温度調整する方法や温度を漸次上昇させる方法も使用し得る。
反応溶液中には水が含まれているため、そのままでも加水分解反応が進行し得る。ただし、加水分解反応の反応速度の向上および副生成物の生成抑制の面から、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応後に、追加の水を添加することが好ましい。好ましくは、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応後の昇温前、昇温中または昇温後(好ましくは昇温前)に追加の水が添加される。
例えば、好ましい実施形態は、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとを0~20℃で反応させる工程(a)、および、次いで、20~100℃の温度に昇温する工程であって、前記昇温前、昇温中または昇温後に追加の水を添加する工程(b)を含む。脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応後に追加の水を添加することにより、十分な量の中間体が形成された後に、加水分解反応が促進され、目的物である脂肪族ジアミンの収率の向上および副生成物の抑制が図られる。特に好ましくは、工程(b)において、昇温前に追加の水が添加される。すなわち、好ましい一実施形態は、工程(a)後、追加の水を添加した後に20~100℃の温度に昇温する工程を含む。熱転位反応により生成する中間体(1b)または(2b)は熱的に不安定であり分解しやすい。また、中間体(1b)または(2b)は後述のようにアルコールとの反応によりウレタン化合物(1c)および(2c)を副生し得る。昇温前に追加の水を添加することにより、中間体(1b)または(2b)の生成後すぐに、副生成物(特に、後述するウレタン化合物)の生成を抑制しつつ、目的物である脂肪族ジアミン(1)’または(2)’への加水分解反応が促進され、脂肪族ジアミンの反応収率が向上し得る。
さらに好ましい実施形態は、工程(b)において、20~60℃の温度に昇温し、前記昇温前、昇温中または昇温後に前記追加の水を添加し、次いで、60~100℃の温度に昇温することを含む。すなわち、実施形態の製造方法は、上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとを0~20℃の温度で反応させる工程(a)後に、20~60℃(より好ましくは40~60℃)の温度に昇温し、前記昇温前、昇温中または昇温後に、追加の水を添加する工程(b1)および次いで60~100℃(より好ましくは60~80℃)の温度に昇温する工程(b2)を含む。このように、工程(a)後かつ加水分解前に追加の水が添加され、かつ工程(b)において2段階の温度調整が行われることで、中間体の形成および続く熱転位反応および加水分解反応が効果的に行われ、目的物である脂肪族ジアミンのさらなる向上および副生成物の抑制が図られる。
特に好ましくは、工程(b)において、昇温前に前記追加の水が添加される。すなわち、好ましい一実施形態は、上記工程(a)後、追加の水を添加した後に、20~60℃(より好ましくは40~60℃)の温度に昇温する工程(b1)、および、次いで60~100℃(より好ましくは60~80℃)の温度に昇温する工程(b2)を含む。昇温前に追加の水を添加し、さらに2段階の温度調整を行うことにより、熱転位反応および加水分解反応を効果的に行うとともに、熱転位反応後の分解しやすい中間体(1b)または(2b)の生成後、副生成物(特に、後述するウレタン化合物)の生成を抑制しつつ、速やかに加水分解されて脂肪族ジアミン(1)’または(2)’を得ることができ、脂肪族ジアミンの反応収率が一層向上し得る。
反応時間は特に制限されないが、追加の水が添加された後に、昇温された温度で、0~3時間保持して、反応を十分に進行させることが好ましい。一例をあげると、工程(a)の反応時間が例えば0.5~3時間(好ましくは1~2時間、より好ましくは1~1.5時間)であり、工程(b1)の反応時間(昇温後の保持時間)が例えば1分~3時間(好ましくは1分~2.5時間、より好ましくは1分~2時間)であり、工程(b2)の反応時間(昇温後の保持時間)が例えば1分~3時間(好ましくは1分~2.5時間、より好ましくは1分~2時間)である。
上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応後に追加する水の使用量は、加水分解反応が進行する量であれば特に制限されない。一例をあげると、最終溶液(すなわち反応溶液)に含まれる水とアルコ-ルとの混合比率(水/アルコ-ル;重量比)が、好ましくは1/0.01~1/10、より好ましくは1/0.1~1/5、さらに好ましくは1/0.5~1/3となるように追加の水が添加されることが望ましい。該水/アルコ-ルの重量比が、1/0.1以下であれば加水分解反応が促進され、反応収率の向上および副生成物の抑制の面で好ましい。一方、水/アルコ-ルの重量比が、1/10以上であれば扱う液量が少なくなる面で好ましい。本実施形態は、工程(a)および工程(b)において反応溶媒の比率を変更する点に特徴を有するものであり、これにより両工程の反応を良好に進行させ、収率を有意に向上することができる。
なお、反応溶液中の水の存在割合が小さい反応系で中間体(1a)または(2a)の反応を進行した場合には、イソシアネート化合物である中間体(1b)または(2b)がさらに反応溶媒であるアルコールと反応してウレタン化合物(それぞれ下記式(1c)または(2c);以下、単に中間体(1c)または中間体(2c)ともいう)が主成分として生成され得る。
Figure 0007021503000005
上記式(1c)および(2c)において、mおよびnは上記式(1)および式(1)’、または、式(2)および(2)’の定義と同一であり、Rは、反応溶媒としての上記アルコール(R-OH)を構成する炭化水素基(例えば、炭素数6以下、好ましくは炭素数1~4のアルキル)を表す。
該ウレタン化合物(1c)または(2c)をさらに加水分解することにより、上記式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミンを得ることができる。ただし、中間体(1b)または(2b)からウレタン化合物(1c)または(2c)を経て脂肪族ジアミン(1)’または(2)’を得る方法は、中間体(1b)または(2b)からそのまま脂肪族ジアミン(1)’または(2)’を得る方法に比べて、操作が煩雑であり、反応収率の面でも不利である。したがって、ウレタン化合物(1c)または(2c)の生成を抑制するために、(i)上記脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとの反応後に追加の水を添加して反応溶液の水とアルコ-ルとの混合比率を上記適切な範囲とする;(ii)工程(b)における反応温度および/または反応時間を上記適切な範囲とすることが好ましい。
加水分解反応は反応速度の面から酸性条件または塩基性条件で行うことが好ましい。脂肪族ジアミドから中間体(1a)または(2a)および中間体(1b)または(2b)を経て脂肪族ジアミンを得る反応を連続的に行う場合には、反応溶液中に塩基が存在しているため、通常、塩基性条件での加水分解反応が進行し得る。したがって、加水分解のために追加の酸または塩基の添加は必ずしも必要ではないが、反応促進のために、追加の酸または追加の塩基を作用させて中間体(1b)または(2b)の加水分解反応を行ってもよい。
中間体(1b)または(2b)に作用させる追加の酸としては強酸が好ましい。例えば、濃硫酸、トリクロロ酢酸、硫酸、ピロリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸およびテトラメタリン酸等のポリリン酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、塩酸、発煙硫酸、濃塩酸、臭化水素酸、プロピオン酸、ギ酸、硝酸および酢酸;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
強酸の使用量は、加水分解反応が進行し得る量であれば特に制限されないが、例えば、中間体(1b)または(2b)1モルに対して、通常、1.8~6.0モル、好ましくは2.0~3.0モルである。なお、酸を作用させて中間体(1b)または(2b)を加水分解した場合には、生成物が、脂肪族ジアミンの酸付加体として存在する場合がある。該酸付加物は、塩基で洗浄等することにより除去し得る。
酸性条件で加水分解反応を行う場合、反応性の点で、反応溶液のpHは好ましくは1~5である。
中間体(1b)または(2b)に作用させる追加の塩基としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸化物、リン酸化物;アンモニア;アミンなどが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニア水が好ましい。
塩基の使用量は、加水分解反応が進行し得る量であれば特に制限されないが、例えば、中間体(1b)または(2b)1モルに対して、通常、1.8~6モル、好ましくは2.0~3.0モルである。工程(a)から連続して加水分解を行う場合には、反応溶液中の塩基量がかかる範囲にあれば、追加の塩基のさらなる添加は不要である。一方、工程(a)後に中間体の単離等を行った場合など、加水分解工程において、塩基が存在しない、または、塩基の量が不足している場合には、反応溶液塩基量が上記範囲となるように、追加の塩基を添加することが好ましい。
塩基性条件で加水分解反応を行う場合、反応性の点で、反応溶液のpHは好ましくは9~14である。
上記で説明した反応はワンポット合成であり得る。実施形態の製造方法によれば、脂肪族ジアミドを出発原料として、塩基の存在下で次亜塩素酸ナトリウム(例えば次亜塩素酸ナトリウム五水和物または次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を反応させることで中間体を分離することなく簡便かつ高い収率で目的物である脂肪族ジアミンを製造することができる。このようなワンポット合成法は、コスト、収率、および簡便性の面で好ましい。
あるいは、上記反応中で中間体を単離した後に次工程を行ってもよい。
例えば、上記中間体(1b)および(2b)、ならびに、中間体(1c)および(2c)は反応溶液から単離し得る。具体的には、該反応溶液をイソプロピルエ-テル等の溶媒で抽出し、エバポレ-タ-などで溶媒を留去することで単離可能である。例えば、当該中間体(1b)もしくは(2b)、または、中間体(1c)もしくは(2c)の単離をした後に、加水分解工程を行なってもよい。ただし、中間体(1b)もしくは(2b)、または、中間体(1c)もしくは(2c)を単離することなくそのまま加水分解工程をすることが操作の簡便性および反応収率の点から好ましい。
抽出溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンおよびテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素類;ならびにジエチルエ-テル、イソプロピルエ-テル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジフェニルエ-テル、ベンジルエ-テルおよびtert-ブチルエ-テル等のエ-テル類などが挙げられる。
上記の反応により、上記式(1)’または式(2)’で表される脂肪族ジアミンを得ることができる。
式(1)’の脂肪族ジアミンの例は、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミンである。中でも、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンジアミン、特に、オクタメチレンジアミンであり得る。
式(2)’の脂肪族ジアミンの例は、シクロヘキサンジアミン、シクロへプタンジアミン、シクロオクタンジアミンである。中でも、シクロヘキサンジアミン、シクロヘプタンジアミン、特に、シクロヘキサンジアミン(シクロヘキサン-1,4-ジアミン)であり得る。
得られた脂肪族ジアミンは、反応溶液から単離、精製することができる。単離・精製方法としては特に制限されず、常用の分離手段を採用することができる。例えば、濾過、蒸留、再結晶、昇華、塩析、カラムクロマトグラフィ、活性炭処理などが挙げられる。中でも、操作が簡便である点で濾過、蒸留にて脂肪族ジアミンを回収することが好ましい。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
%は特記しない限り重量パーセントを示す。
<脂肪酸ジアミド>
合成例1
300mL容の3つロフラスコに、アセトン150.1gおよび酢酸アンモニウム33.1g(0.43mol)を添加した。この溶液を液温が30℃程度になるように滴下量を調整しながらセバシン酸ジクロリド27.9g(0.12mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、42℃で1時間保持した。吸引濾過によって析出した固体を分離し、水およびメタノールで順に洗浄し、乾燥させ、15.9gのデカンジアミド(セバシン酸ジアミド)を白色固体として得た(収率67.9モル%)。
得られた化合物の同定はガスクロマトグラフィー質量分析法により行った。
<脂肪酸ジアミン>
実施例1
300mL容の4つロフラスコに、水24.2gおよびメタノール76.0gを添加し、次いで、氷冷下で3.0gのNaOHを添加し、さらに、氷冷下で17.3gの次亜塩素酸ナトリウム五水和物を添加した。次に、液温が、5℃以下を保つように、氷冷下で、合成例1で得たデカンジアミド6.0gを少しずつ添加し、添加終了後、氷冷下で1時間保持した。次に、この反応溶液に50.2gの水を添加した後、30分かけて50~55℃に加熱し30分間保持した後、45分かけて70~75℃に加熱し、2時間保持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、オクタメチレンジアミンの反応収率は75モル%であった。
実施例2
300mL容の4つロフラスコに、水24.1gおよびメタノール76.0gを添加し、次いで、氷冷下で3.0gのNaOHを添加し、さらに、氷冷下で17.3gの次亜塩素酸ナトリウム五水和物を添加した。次に、液温が、5℃以下を保つように、氷冷下で、合成例1で得たデカンジアミド6.0gを少しずつ添加し、添加終了後、氷冷下で1時間保持した。次に、この反応溶液を40分かけて55℃に加熱し、1時間保持した。水50gを0.5時間の間に5回に分けて添加し、その後2時間保持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、オクタメチレンジアミンの反応収率は31モル%であった。
比較例1
300mL容の4つロフラスコに、水24gおよびメタノール76gを添加し、次いで、氷冷下で15.0gの次亜塩素酸ナトリウム五水和物を添加した。次に、液温が、5℃以下を保つように、氷冷下で、合成例1で得たデカンジアミド6.0gを少しずつ添加し、添加終了後、氷冷下で1時間保持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、オクタメチレンジアミンの生成が確認できなかったため、反応を中止した。
比較例2
300mL容の4つロフラスコに、水100.3gを添加し、次いで、氷冷下で3.0gのNaOHを添加し、さらに、氷冷下で17.3.0gの次亜塩素酸ナトリウム五水和物を添加した。次に、液温が、5℃以下を保つように、氷冷下で、合成例1で得たデカンジアミド6.0gを少しずつ添加し、添加終了後、氷冷下で1時間保持した。次に、この反応溶液に50.3gの水を添加し、55℃に加熱し45分間保持した後、70~80℃に加熱し、3時間保持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、オクタメチレンジアミンの生成が確認できなかったため、反応を中止した。
比較例3
300mL容の4つロフラスコに、水24.3gおよびメタノール78.8gを添加し、次いで、氷冷下で7.3gのNaOHを添加し、さらに、氷冷下で15.3gの次亜塩素酸ナトリウム五水和物を添加した。次に、液温が、5℃以下を保つように、氷冷下で、合成例1で得たデカンジアミド6.0gを少しずつ添加し、添加終了後、氷冷下で1時間保持した。次に、この反応溶液を74℃に加熱し2時間保持した後、12.0gの水と12.1gのNaOHを添加し、更に6時間20分間保持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、オクタメチレンジアミンの生成が確認できなかったため、反応を中止した。
上記実施例および比較例の反応条件および収率を表1にまとめた。
Figure 0007021503000006
実施例および比較例より以下のことが確認される。
水およびアルコ-ルを含む混合溶媒中、特定量の水酸化ナトリウム(NaOH)の存在下で、脂肪族ジアミドと次亜塩素酸ナトリウムとを反応させた場合(実施例1~2)に、炭素数5~11の脂肪族ジアミンを安全かつ簡便に製造することができることが確認された。
追加の水を添加した後の昇温を2段階で行った実施例1は、昇温を1段階で行い、追加の水を昇温後に添加した実施例2と比較して、収率が有意に向上した。
塩基が存在しない比較例1、および、塩基と前記脂肪族ジアミドとのモル比が6.0を超える比較例3では、ほとんど反応が進行せず、収率が著しく低いものとなった。
反応溶媒として水を用いた比較例2においてもほとんど反応が進行せず、収率が著しく低いものとなった。
本発明の製造方法で得られる脂肪族ジアミンは、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂等のモノマ-原料または農薬および医薬の合成上重要な中間体として有用な化合物である。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される脂肪族ジアミドと、次亜塩素酸ナトリウムとを、塩基の存在下、水およびアルコ-ルを含む混合溶媒中で0~20℃で反応させる工程(a)、および
    次いで、20~100℃の温度に昇温する工程であって、前記昇温前に追加の水を添加する、工程(b)を含み、
    前記塩基と前記脂肪族ジアミドとのモル比が、塩基/脂肪族ジアミド(モル比)=1.8~6.0である、脂肪族ジアミンの製造方法。
    Figure 0007021503000007
    (上記式中、mは、5~11の整数である。)
  2. 前記次亜塩素酸ナトリウムとして、次亜塩素酸ナトリウム五水和物を用いる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記次亜塩素酸ナトリウムは、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを導入することにより合成される、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記混合溶媒における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/0.1~1/10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記アルコ-ルは、メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、およびブタノ-ルから選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 工程(b)において、20~60℃の温度に昇温し、前記20~60℃の温度への昇温前に前記追加の水を添加し、次いで、60~100℃の温度に昇温することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 最終溶液に含まれる水とアルコ-ルとの混合比率が水/アルコ-ル(重量比)=1/0.01~1/10となるように、前記追加の水が添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 追加の水の添加前の混合溶媒における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/1~1/5であり、
    追加の水の添加後の最終溶液における水とアルコ-ルとの混合比率が、水/アルコ-ル(重量比)=1/0.01~1/5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記脂肪族ジアミンが、オクタメチレンジアミンである、請求項1~のいずれか一項に記載の製造方法。
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