JP7019954B2 - インクセット、インクカートリッジセット、記録装置、及び記録方法 - Google Patents
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Description
着色剤、高分子粒子、水、及び水溶性有機溶媒を含み、互いに色が異なる複数色の水性インクを有し、
前記複数色の水性インクの静的表面張力が、各々30mN/m以下であり、
最大泡圧法により動的表面張力を測定したとき、5msec後の水性インクの動的表面張力であって、前記複数色の水性インクの動的表面張力が、各々34mN/m以下であり、
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、2msec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角の互いの差が、2°以内であるインクセット。
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、2msec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角が、各々54°以下である<1>に記載のインクセット。
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、1sec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角が、各々14°以上である<1>又は<2>に記載のインクセット。
前記複数色の水性インクの動的表面張力の互いの差が、3mN/m以内である<1>~<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
前記複数色の水性インクの静的表面張力が、各々25mN/m以上である<1>~<4>のいずれか1項に記載のインクセット。
<1>~<5>のいずれか1項のインクセットの各水性インクを収容するインクカートリッジセット。
<1>~<5>のいずれか1項のインクセットの各水性インクを収容し、前記各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出ヘッドと、
前記非浸透性の記録媒体上に吐出された前記各水性インクを乾燥する乾燥装置と、
を備える記録装置。
<1>~<5>のいずれか1項のインクセットの各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出工程と、
前記非浸透性の記録媒体上に吐出された前記各水性インクを乾燥する乾燥工程と、
を有する記録方法。
<2>に係る発明によれば、複数色の水性インクの「2msec後の動的接触角」が54°超えの場合に比べ、非浸透性の記録媒体に対して、色間滲みを抑制した画像の記録を実現するインクセットが提供される。
<3>に係る発明によれば、複数色の水性インクの「1sec後の動的接触角」が14°未満である場合に比べ、連続して記録したときに生じる水性インクの吐出不良を抑制するインクセットが提供される。
<4>に係る発明によれば、複数色の水性インクの動的表面張力の互いの差が3mN/m超えである場合に比べ、非浸透性の記録媒体に対して、色間滲みを抑制した画像の記録を実現するインクセットが提供される。
<5>に係る発明によれば、複数色の水性インクの静的表面張力が25mN/m未満である場合に比べ、連続して記録したときに生じる水性インクの吐出不良を抑制するインクセットが提供される。
<6>、<7>、又は<8>に係る発明によれば、着色剤、高分子粒子、水、及び水溶性有機溶媒を含み、静的表面張力が30mN/m以下かつ動的表面張力が34mN/m以下である複数色の水性インクを有するインクセットであって、2msec後の水性インクの動的接触角であって、複数色の水性インクの動的接触角の互いの差が2°超えであるインクセットを適用した場合に比べ、非浸透性の記録媒体に対して、色間滲みを抑制した画像の記録を実現するインクカートリッジセット、記録装置、又は記録方法が提供される。
本実施形態に係るインクセットは、着色剤、高分子粒子、水、及び水性有機溶媒を含み、互いに色が異なる複数色の水性インクを有する。なお、以下「水性インク」を「インク」とも称する。
複数色の水性インクは、各々、静的表面張力が30mN/m以下であり、最大泡圧法により動的表面張力を測定したとき、5msec後の動的表面張力が34mN/m以下である。
そして、動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、2msec後の水性インクの動的接触角であって、複数色の水性インクの動的接触角の互いの差は、2°以内である。
また、本実施形態に係るインクセットでは、後のインク滴が着弾位置に留まって、濡れ拡がり易くなるため、画像抜けも抑えられ、画像の粒状性も高まると推測される。
なお、5msec後のインクの動的表面張力の値とは、キャピラリー先端で新しい界面が形成されてから5msecで最大泡圧に達したときの動的表面張力の値である。
一方、インクの「1sec後の動的接触角」は、動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、1sec後の動的接触角である。
なお、インクの「2msec後の動的接触角」及び「1sec後の動的接触角」は、次の通り算出される。まず、各々、記録媒体にインクを2μl滴下し、インク滴が記録媒体に接触した時点より2msec又は1sec経過した時点で、インク滴を撮像する。そして、各々、撮像した画像から、インク滴が記録媒体と接触した面の直径およびインク滴の高さを解析し、前進接触角を求め、この前進接触角を各動的接触角とする。
例えば、界面活性剤として、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile- Lipophile Barance」)が14以下の界面活性剤の量を合わせこむことで、目的とする静的表面張力にすることができる。また、HLBが14以下の界面活性剤のうち、異なるHLBの界面活性剤を複数種使用することでも動的表面張力に合わせこむことができる。具体的には、例えば、HLBが11以上14以下の界面活性剤とHLBが4以上11未満の界面活性剤を混合すると、目的とする動的表面張力を得ることができる。
例示すると、オルフィンE1004(HLB=7~9)の量を増やすと、静的表面張力が低下する傾向となる。また、オルフィンE1004(HLB=7~9)と共に、オルフィンE1010(HLB=13~14)及びEXP.4123(HLB=11~14)の少なくとも一方とを併用すると、オルフィンE1004(HLB=7~9)の相溶性が増し、動的表面張力が低下する傾向となる。
例えば、ポリエーテル変性シリコーンを主成分とした界面活性剤の添加量により動的接触角を調整することができる。例示すると、SAG002(HLB=12)の添加量を減らすと、動的接触角が高くなる傾向がある。
同時に、インク中の固形分の量が増えると、動的接触角が高くなる傾向がある。インク中の固形分の分散性が低いと、動的接触角が高くなる傾向がある。
さらに、蒸発時のインクの粘度上昇率を高めると、動的接触角も高くなる傾向がある。インクの粘度上昇率を高めるには、例えば、1)グリセリンなどの保湿性溶媒を用いる方法、2)高分子粒子などの固形成分の添加量を調整する方法、3)高分子の分子量を調整する方法等がある。
次に、着色剤について説明する。
着色剤としては、目的とする色相の水性インクに応じたものを使用すればよく、具体的には、顔料が挙げられる。顔料としては、有機顔料、無機顔料が挙げられる。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red-5,-7,-12,-48,-48:1,-57,-112,-122,-123,-146,-168,-177,-184,-202, C.I.Pigment Violet-19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イエロー顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow-1,-2,-3,-12,-13,-14,-16,-17,-73,-74,-75,-83,-93,-95,-97,-98,-114,-128,-129,-138,-151,-154,-180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
自己分散型顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。自己分散型顔料は、例えば、顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理を施すことにより得られる。
また、顔料としては、高分子化合物を顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料も挙げられる。
また、顔料としては、黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等も挙げられる。
また、顔料としては、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も挙げられる。
着色剤の体積平均粒径とは、着色剤そのものの粒径、又は着色剤に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。
体積平均粒径の測定には、マイクロトラックUPA粒度分析計 UPA-UT151 (Microtrac社製)により行う。その測定は、1000倍希釈した水性インクを測定セルに入れて行う。なお、測定時の入力値として、粘度には水性インク希釈液の粘度を、粒子屈折率は着色剤の屈折率を採用する。
高分子粒子について説明する。
高分子粒子は、記録媒体に対する水性インクによる画像の定着性を高める成分である。
なお、高分子粒子は、高分子化合物を粒状化したものであって、前述した高分子分散剤とは別の成分である。
高分子粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
なお、高分子粒子としては、粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェル型の高分子粒子も挙げられる。
乳化剤としては、界面活性剤、スルホン酸基、カルボキシル基等の親水性基を有するポリマー(例えば、親水性基がグラフト結合しているポリマー、親水性を持つ単量体と疎水性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)が挙げられる。
高分子粒子の体積平均粒径の測定は、マイクロトラックUPA粒度分析計 UPA-UT151(Microtrac社製)により行う。その測定は、1000倍希釈した水性インクを測定セルに入れて行う。なお、測定時の入力値として、粘度には水性インク希釈液の粘度を、粒子屈折率は高分子粒子の屈折率を採用する。
水について説明する。
水としては、特に不純物の混入、又は微生物の発生を防止するという観点から、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水が好適に挙げられる。
水性有機溶媒について説明する。
水性有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコール誘導体、含窒素溶媒、アルコール、含硫黄溶媒等が挙げられる。水性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も挙げられる。
アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
界面活性剤について説明する。
水性インクは、界面活性剤として、例えば、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile- Lipophile Barance」)が14以下の界面活性剤を含むことが好ましい。上述のように、HLBが14以下の界面活性剤の量を調整する、また、異なるHLBの界面活性剤を複数種使用することなどにて、水性インクの静的表面張力、動的表面張力、及び動的接触角の調整がし易くなる。
・HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)
アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物の市販品(なお、括弧内の数値はHLBのカタログ値を示す)としては、例えば、オルフィンE1004(7~9)、オルフィンE1010(13~14)、オルフィンEXP.4001(8~11)、オルフィンEXP.4123(11~14)、オルフィンEXP.4300(10~13),サーフィノール104H(4)、サーフィノール420(4)、サーフィノール440(4)、ダイノール604(8)[以上、日信化学工業社]等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンの市販品(なお、括弧内の数値はHLBのカタログ値を示す)としては、シルフェイスSAG002(12)、シルフェイスSAG503A(11)、シルフェイスSAG005(7)[以上、日信化学工業社]等が挙げられる。
その他の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤である。
これらの中でも、アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等がよい。
これらの中でも、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコールがよい。
その他の添加剤について説明する。
水性インクは、その他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤としては、インク吐出性改善剤(ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、導電率/pH調整剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物等)、反応性の希釈溶媒、浸透剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、キレート化剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
水性インクの好適な他の物性について説明する。
水性インクのpHは、好ましくは4以上10以下の範囲、より好ましくは5以上9以下の範囲が挙げられる。
ここで、水性インクのpHは、温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H.環境下において、pH/導電率計(メトラー・トレド社製MPC227)により測定した値を採用する。
導電率の測定は、MPC227(pH/Conductivity Meter、メトラー・トレド社製)で行う。
本実施形態に係る記録装置は、本実施形態に係るインクセットの各水性インクを収容し、各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出ヘッドと、非浸透性の記録媒体上に吐出された各水性インクを乾燥する乾燥装置と、を備える記録装置である。
本実施形態に係る記録装置によれば、インクセットの各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出工程と、非浸透性の記録媒体上に吐出された各水性インクを乾燥する乾燥工程と、を有する記録方法が実現される。
以下、本実施形態に係る記録装置及び記録方法の一例について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、記録媒体に対して水性インクを(目的とする領域に)吐出することを「画像形成」又は「画像を形成する」と称することがあり、記録媒体に対して水性インクの吐出し、乾燥させて定着まで行われたことを「記録」、「画像記録」又は「画像を記録する」と称することがある。
本実施形態に係る記録装置100は、記録媒体P上に画像を記録する画像記録ユニット10と、画像記録ユニット10に供給する記録媒体Pが収容される前処理ユニット20と、前処理ユニット20から画像記録ユニット10へ供給される記録媒体Pの搬送量等を調整するバッファユニット30と、を備えている。バッファユニット30は、画像記録ユニット10と前処理ユニット20との間に配置されている。
なお、吐出ヘッド12A、12Bは、これに限られず、記録媒体Pの幅よりも短尺状の吐出ヘッドであって、記録媒体Pの幅方向に移動して水性インクを吐出する方式(所謂キャリッジ方式)の吐出ヘッドであってもよい。
吐出ヘッド12A、12Bからのインク液滴量は、水性インクの最大液滴量の範囲である。また、dpiは「dot per inch」を意味する。
なお、ヘッドの温度(吐出面の温度)を調温するための調温装置は、ヒータに限られず、温風を送風する装置等の周知の調温装置あればよい。また、調温装置は、吐出ヘッドに内蔵されている態様に限られず、吐出ヘッドの外部に備えていてもよい。
同様に、画像記録ユニット10には、吐出ヘッド12Bに対して用紙搬送方向の下流側に、それぞれ、例えば、記録媒体Pの表面が巻き掛けられ、記録媒体Pと接触して従動回転しながら記録媒体の裏面の画像(インク)を乾燥する乾燥ドラム14B(乾燥装置の一例)が配置されている。
そして、乾燥ドラム14Aに対して用紙搬送方向の下流側であって、吐出ヘッド12Bに対して用紙搬送方向の上流側に、記録媒体Pの表面に接触する搬送ローラ18が配置されている。
即ち、例えば、乾燥ドラムの加熱源の温度や、温風送風装置の温風温度は、水性インクの乾燥を早める点や、記録媒体Pの変形の抑制の点から、40℃以上120℃以下の範囲であることが好ましく、60℃以上100℃以下の範囲であることがより好ましい。
なお、この乾燥温度条件は、乾燥ドラム14Aと乾燥ドラム14Bとで、また、温風送風装置16Aと温風送風装置16Bとで、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態に係る記録装置100では、まず、前処理ユニット20の供給ロール20Aから、バッファユニット50を通じて、画像記録ユニット10に記録媒体Pを搬送する。
次に、画像記録ユニット10において、各吐出ヘッド12Aから水性インクを記録媒体Pの表面に吐出する。その後、乾燥ドラム14Aにより、記録媒体Pの表面の画像(インク)を記録媒体Pの裏面側(吐出ヘッド12Aからのインク吐出面とは反対の面)から乾燥する。そして、温風送風装置16Aにより、記録媒体Pの表面に吐出されたインク(画像)を記録媒体Pの表面側(吐出ヘッド12Aからのインク吐出面側)から乾燥する。つまり、乾燥ドラム14A及び温風送風装置16Aにより、記録媒体Pの表面に吐出された水性インクを乾燥する。
そして、記録媒体Pの表面に記録された画像は、搬送ローラ18に接触することで、かかる画像を介して、記録媒体Pを除電する。
続いて、画像記録ユニット10において、各吐出ヘッド12Bから水性インクを記録媒体Pの裏面に吐出する。その後、乾燥ドラム14Bにより、記録媒体Pの裏面の画像(インク)を記録媒体Pの表面側(吐出ヘッド12Bからのインク吐出面とは反対の面)から乾燥する。そして、温風送風装置16Bにより、記録媒体Pの裏面に吐出されたインク(画像)を記録媒体Pの裏面側(吐出ヘッド12Bからのインク吐出面側)から乾燥する。つまり、乾燥ドラム14B及び温風送風装置16Bにより、記録媒体Pの裏面に吐出された水性インクを乾燥する。
次に、冷却ユニット60において、クーリングローラ60Aにより、表面に画像が記録された記録媒体Pを冷却する。
次に、バッファユニット50を通じて、後処理ユニット40は、表面に画像が記録された記録媒体Pを巻取ロール40Aにより巻き取る。
なお、必要に応じて、上記のようにして記録された画像を備える記録媒体Pは、切断工程を経て、目的とする大きさへと裁断される。
(シアンインク;「Cインク」と表記)
・C.I.Pigment Blue 15:3(着色剤) : 4質量%
・スチレン/アクリル酸共重合体ナトリウム中和物 : 2.5質量%
(水溶性樹脂:重量平均分子量=30000)
・プロピレングリコール: 10質量%
・ジエチレングリコール: 5質量%
・水:残部
上記成分を十分に混合後、混合物に下記成分を添加した。
・TOCRYL W-4627: 2.5質量%(固形分)
(高分子粒子:「アクリル系エマルション」トーヨーケム社製、体積平均粒径=0.12μm、ガラス転移温度=45℃)
・界面活性剤(「オルフィンE1010」日信化学工業社):1.0質量%
・界面活性剤(「オルフィンEXP.4123」日信化学工業社):1.0質量%
・界面活性剤(「シルフェイスSAG002」日信化学工業社):0.1質量%
その後、得られた混合物を5μmのフィルターでろ過し、水性インク(Cインク)を得た。
着色剤として、C.I.Pigment Red 122: 5質量%を使用し、界面活性剤(「オルフィンE1010」日信化学工業社)の量を1.2質量%に変更した以外は、Cインクと同様にして、Mインクを得た。
着色剤として、C.I.Pigment Yellow 74: 4質量%を使用した以外は、Cインクと同様にして、Yインクを得た。
得られたCインク、Mインク、及びYインクを実施例1のインクセットとした。
表1~表2に従って、界面活性剤の種類及び量(質量%)、並びに、高分子粒子(TOCRYL W-4627「アクリル系エマルション」トーヨーケム社製)の量(固形分:質量%)を変更した以外は、実施例1と同様にインクセットを準備した。
(各インクの物性測定)
各例の各インクの物性を、既述の方法に従って測定した。その結果を表1~表3に示す。
インクの吐出ヘッドとして、600dpiのピエゾヘッド(最大インク滴量12pl)のピエゾヘッドと、乾燥装置として、近赤外線ヒーターと、を備える記録装置を準備した。準備した記録装置の詳細は、以下の通りである。
-記録装置の詳細-
・記録速度(記録媒体搬送速度): 100m/min
・近赤外線ヒーターの設定温度: 60℃
各記録装置を用いて、非浸透性の記録媒体(枚葉紙:王子製紙製「OKトップコート+」)に、各色100%カバレッジのベタ印字パターンが部分的に重なる画像および陰影を含む人物画像を配置した印字チャートを印字した。そして、得られチャートを次の評価基準で目視評価した。
G1:各インクによる印字パターン間で色間滲みがなく、濃度ムラが目立たない
G2:各インクによる印字パターン間で色間滲みがなく、濃度ムラが軽微に見られる
G3:各インクによる印字パターン間で色間滲みが軽微に見られ、濃度ムラも軽微に見られる
G4:各インクによる印字パターン間で色間滲み及び濃度ムラが酷い
各記録装置を用いて、非浸透性の記録媒体(連帳紙:日本製紙製「NPiフォームNext-IJ70)に、1ページ中の印字カバレッジを各色8%としたチャートを4000m印字した。そして、スジの発生状態を次の評価基準で目視評価した。
G1:各インクによる印字において、初期とスジの状態が変化していない
G2:各インクによる印字において、スジがわずかに目立つようになる
G3:各インクによる印字において、新たなスジがわずかに生じている
G4:各インクによる印字において、スジが目立ち、新たなスジが多数生じている
各インクの「1sec後の動的接触角」が高い実施例1等のインクセットは、実施例4のインクセットに比べ、吐出安定性が高いことがわかる。つまり、連続して記録したときに生じる水性インクの吐出不良が抑制されていることがわかる。
各インクの動的接触角の互いの差が小さい実施例1等のインクセットは、実施例3のインクセットに比べ、色間滲みが少ないことがわかる。また、濃度ムラも少ないこともわかる。
実施例1等と比較例4とのインクセットとの比較、及び比較例3と比較例4とのインクセットの比較から、各インクの静的表面張力が高いインクセットは、吐出安定性が高いことがわかる。つまり、連続して記録したときに生じる水性インクの吐出不良が抑制されていることがわかる。
-アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(日信化学工業社)-
・オルフィンE1004(HLB=7~9)
・オルフィンE1010(HLB=13~14)
・オルフィンEXP.4001(HLB=8~11)
・オルフィンEXP.4123(HLB=11~14)
・オルフィンEXP.4300(HLB=10~13)
-ポリエーテル変性シリコーン(日信化学工業社)-
・シルフェイスSAG002(HLB=12)
・シルフェイスSAG503A(HLB=11)
12A、12KA、12YA、12MA、12CA 吐出ヘッド
12B、12KB、12YB、12MB、12CB 吐出ヘッド
14A 乾燥ドラム
14B 乾燥ドラム
16A 温風送風装置
16B 温風送風装置
20 前処理ユニット
20A 供給ロール
30 バッファユニット
30A 第1パスローラ
30B ダンサーローラ
30C 第2パスローラ
40 後処理ユニット
40A 巻取ロール
50 バッファユニット
50A 第1パスローラ
50B ダンサーローラ
50C 第2パスローラ
60 冷却ユニット
60A クーリングローラ
100 記録装置
P 記録媒体
R 搬送経路
Claims (6)
- 着色剤、高分子粒子、水、及び水溶性有機溶媒を含み、互いに色が異なる複数色の水性インクを有し、
前記複数色の水性インクが、各々、2種類以上のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、及びポリエーテル変性シリコーンを含有する界面活性剤を含み、
前記界面活性剤がHLB14以下である2種類以上4種類以下のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物及びHLB14以下である1種類のポリエーテル変性シリコーンのみであり、
前記複数色の水性インクの静的表面張力が、各々30mN/m以下であり、
最大泡圧法により動的表面張力を測定したとき、5msec後の水性インクの動的表面張力であって、前記複数色の水性インクの動的表面張力が、各々34mN/m以下であり、
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、2msec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角の互いの差が、2°以内であり、
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、2msec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角が、各々48°以上54°以下であり、
動的走査吸液計で測定した接触時間100msecにおける純水の記録媒体への転移量が3~15ml/m2である記録媒体に水性インクを2μl滴下したとき、1sec後の水性インクの動的接触角であって、前記複数色の水性インクの動的接触角が、各々14°以上21°以下であるインクセット。 - 前記複数色の水性インクの動的表面張力の互いの差が、3mN/m以内である請求項1に記載のインクセット。
- 前記複数色の水性インクの静的表面張力が、各々25mN/m以上である請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
- 請求項1~請求項3のいずれか1項のインクセットの各水性インクを収容するインクカートリッジセット。
- 請求項1~請求項3のいずれか1項のインクセットの各水性インクを収容し、前記各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出ヘッドと、
前記非浸透性の記録媒体上に吐出された前記各水性インクを乾燥する乾燥装置と、
を備える記録装置。 - 請求項1~請求項3のいずれか1項のインクセットの各水性インクを非浸透性の記録媒体上に吐出する吐出工程と、
前記非浸透性の記録媒体上に吐出された前記各水性インクを乾燥する乾燥工程と、
を有する記録方法。
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