JP7018771B2 - 粉末油脂、及び粉末油脂の製造方法 - Google Patents

粉末油脂、及び粉末油脂の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、粉末油脂、及び粉末油脂の製造方法に関する。
粉末油脂は、液状又は固形状の油脂よりも他の粉体原料と混合しやすく、さらには、水に分散及び溶解しやすく乳化を必要としない等の利点を持つため、幅広い分野で利用されている。粉末油脂は、例えば、コーヒー等の飲料に配合したり、スープ類等の食品の調味材料として用いたりすることで、飲食品に所望の味や香りを付与する等の目的で使用されている。
例えば、特許文献1には、変色がなく酸化安定性に優れる不飽和脂肪酸含有油脂粉末を提供することを目的として、不飽和脂肪酸含有油脂及びL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含む油相と、乳化剤及び水溶性糖類を含む水相とから得られた水中油型乳化物を乾燥させて得られる粉末油脂が提案されている。
特開2005-8810号公報
しかし、特許文献1における粉末油脂は、風味が良好であるかは明らかではない。また、粉末油脂に対しては、さらに酸化安定性を向上させることへのニーズがある。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、風味が良好であり、優れた酸化安定性を有する粉末油脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、油脂と、乳化剤とを含む粉末油脂において、該油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に油溶性抗酸化剤を分布させることで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 油脂と、乳化剤とを含む粉末油脂であって、
前記油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に油溶性抗酸化剤が分布された、粉末油脂。
(2) 前記粉末油脂は、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含む水相と、油相と、を含む水中油型乳化物を乾燥させたものである、(1)に記載の粉末油脂。
(3) 前記水中油型乳化物は、水相又は油相に乳化剤を含む、(2)に記載の粉末油脂。
(4) 前記乳化剤は、加工澱粉である、(3)に記載の粉末油脂。
(5) 前記粉末油脂中の前記乳化剤の含量は、粉末油脂に対して30質量%以下である、(3)又は(4)に記載の粉末油脂。
(6) 前記粉末油脂中の油脂の含量は、粉末油脂に対して16.0質量%以上である、(1)から(5)のいずれかに記載の粉末油脂。
(7) 保存開始時点での過酸化物価が10以下であり、かつ、40℃で30日保存後の過酸化物価が、前記保存開始時点での過酸化物価の15倍以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の粉末油脂。
(8) 保存開始時点で40℃の温水に溶解させた粉末油脂のメディアン径に対する、40℃で30日保存後に同条件で溶解させた粉末油脂のメディアン径の比が1.2以下である、(1)から(7)のいずれかに記載の粉末油脂。
(9) 水性溶媒と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで水相を得る水相調製工程と、
前記水相調製工程後に、前記水相と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る乳化物調製工程と、
前記水中油型乳化物を乾燥させる乾燥工程と、
を含む、粉末油脂の製造方法。
(10) 水性溶媒と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る第1の乳化物調製工程と、
前記水中油型乳化物と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで、前記親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相に配合する第2の乳化物調製工程と、
前記水中油型乳化物を乾燥させる乾燥工程と、
を含む、粉末油脂の製造方法。
(11) 前記水中油型乳化物は、水相又は油相に乳化剤を含む、(9)又は(10)に記載の製造方法。
(12) 前記乳化剤は、加工澱粉である、(11)に記載の製造方法。
(13) 前記粉末油脂中の前記乳化剤の含量は、粉末油脂に対して30質量%以下である、(11)又は(12)に記載の製造方法。
(14) 前記粉末油脂中の油脂の含量は、粉末油脂に対して16.0質量%以上である、(9)から(13)のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、風味が良好であり、優れた酸化安定性を有する粉末油脂を得ることができる。
本発明の一実施形態における粉末油脂の写真である。 比較例の粉末油脂の写真である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<粉末油脂>
本発明の粉末油脂は、油脂と、乳化剤とを含む粉末油脂であって、該油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に油溶性抗酸化剤が分布されている。
従来は、上述した特許文献1のように、油脂及び油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル)を含む油相と、乳化剤及び水溶性糖類を含む水相とから得られた水中油型乳化物を乾燥させて得られる粉末油脂等が知られていた。このような粉末油脂は、図2に示すような外観を有する。該粉末油脂において、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルは、油脂の液滴の内部に分布しており、液滴の表面には分布していない。
他方、本発明者の検討の結果、油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル等)を、図1に示すように、油脂の液滴の表面上に分布させると、意外にも、粉末油脂の風味や酸化安定性を高められることが見出された。なお、図1中に認められる針状結晶が油溶性抗酸化剤に相当する。
本発明において、「油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に油溶性抗酸化剤が分布する」とは、油溶性抗酸化剤が、油脂の液滴の表面の一部又は全てと接触していることを意味する。なお、油溶性抗酸化剤は、液滴の表面と直接接触していてもよいし、乳化剤等の成分に由来する層を介して間接的に接触していてもよい。
油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に油溶性抗酸化剤が分布しているかどうかは、光学顕微鏡等による観察によって特定できる。
粉末油脂を構成する成分としては、後述する水相や油相に含まれる成分が挙げられる。ただし、油溶性抗酸化剤として、親水化されていない油溶性抗酸化剤を用いる場合、水相中に分散できる性質(乳化性等)を有するものを用いる。このような性質を有する油溶性抗酸化剤としては、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル等が挙げられる。
油溶性抗酸化剤を、粉末油脂において、油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に分布させる方法としては、油溶性抗酸化剤を水相に混合させ、次いで該水相と油相とを混合し、これを乾燥させる方法等が挙げられる。
本発明の粉末油脂は、好ましくは、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又は水相中に分散できる性質を有する油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル等)を含む水相と、油相とを含む水中油型乳化物を乾燥させたものである。以下に、かかる態様の本発明の粉末油脂の構成について詳述する。
(水相)
本発明における水中油型乳化物の水相には、親水化された油溶性抗酸化剤が含まれる。この点で、本発明と、水中油型乳化物の油相に油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル)が含まれる特許文献1の技術と、は少なくとも相違する。本発明者らの検討の結果、油溶性抗酸化剤を油相ではなく水相に配合し、該水相と油相とを含む水中油型乳化物を乾燥することで、油溶性抗酸化剤を油相に配合した場合と比較して、意外にも、風味が良好であり、かつ、優れた酸化安定性を有する粉末油脂を得られることが見出された。
水中油型乳化物から得られる粉末油脂においては、気相と油相との界面や、水相と油相との界面から酸化が生じると考えられる。そのため、水中油型乳化物においては、配合した抗酸化剤を該界面付近に分布させることが酸化抑制の観点から重要と考えられる。従来は、油相へ油溶性抗酸化剤を配合することにより、酸化安定性を向上させることが試みられてきた。しかし、本発明者らによる検討の結果、通常非極性である油溶性抗酸化剤は、水との親和性が低いため、水相と油相との界面付近にはあまり存在せずに油相の中央寄りに分布していることが多く、酸化の起点となり得る界面のうち、特に水相と油相との界面から生じる酸化を十分に防げていないことがわかった。
そこで、本発明者らが、油溶性抗酸化剤が水中油型乳化物の水相に分布するように、親水化された油溶性抗酸化剤、及び/又は、乳化性を有する油溶性抗酸化剤であるL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相に配合したところ、油相に油溶性抗酸化剤を配合した場合と比較して、得られる粉末油脂の酸化安定性や風味が大幅に向上した。その理由は定かではないが、以下のように推察される。水相に配合された親水化処理された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルは、水相中に均一に分散した後、親和性の低い水相中の水よりも親和性の高い(つまり、極性の差が小さい)油滴との界面付近へ近づく。その結果、油溶性抗酸化剤を油相に配合した場合と比較して、水相と油相との界面付近に分布する油溶性抗酸化剤の量が多くなり、該界面からの酸化をより効果的に抑制できるものと考えられる。
なお、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの代わりに、水溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸等)を水中油型乳化物の水相に配合しても、得られる粉末油脂の酸化安定性を十分に高めることができなかった。したがって、本発明の効果は、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相に配合したことによる特有の効果であることがわかった。
[親水化された油溶性抗酸化剤]
油溶性抗酸化剤としては、油脂に溶けやすく、食品等に添加可能な抗酸化剤であれば特に限定されない。例えば、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル(L-アスコルビン酸モノステアレート、L-アスコルビン酸モノパルミテート等のL-アスコルビン酸モノアルキルエステル類)、フェノール系合成抗酸化剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等)、トコフェロール、ミックストコフェロール、トコトリエノール、リン脂質、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物、カンゾウ油抽出物、ゴマ油不けん化物、レスベラトロール、ゴマリグナン(セサミン等)、カロテン類(カロテン、リコペン等)、フラボン誘導体(フラボン、ケルセチン、ルチン等)、コーヒー酸(コーヒー豆やカカオ豆等に含まれるもの)、没食子酸及びそのエステル、フェルラ酸、クロロゲン酸、並びにオリザノールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外)と、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルとは併用して用いてもよい。
油溶性抗酸化剤としては、本発明の効果が特に奏されやすいという観点から、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルが好ましい。なお、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルは親水化されていなくとも水相に配合することができるが、親水化されていると、本発明の効果(長期保存時の酸化安定性)をより奏しやすくなるため好ましい。親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外)と、親水化されたL-アスコルビン酸脂肪酸エステルとを併用して用いてもよい。
本発明における油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外)は、通常、そのままでは水相には分散できないので、親水化されている。油溶性抗酸化剤を親水化する方法としては、通常、油溶性の物質を親水化する手法を使用でき、例えば、乳化剤を用いた乳化や賦形等が挙げられる。
[水相中のその他の成分]
水相には、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルのほかに、水性溶媒(水等)が少なくとも含まれる。以下、「水相中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステル」を「水相に含まれる本発明の油溶性抗酸化剤」ともいう。また、水相には本発明の効果を阻害しない範囲で、通常食品等に添加可能な水溶性成分が含まれていてもよい。このような成分として、乳化剤(加工澱粉、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、サポニン、脱脂粉乳、カゼイン類、大豆タンパク質、えんどうタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、アラビアガム、ガティガム、ゼラチン、胆汁末等)、賦形剤(デキストリン等)、親水化された油溶性抗酸化剤以外の抗酸化剤、増粘剤、防腐剤、着色剤等が挙げられる。これらの成分や含量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。水中油型乳化物の乳化性を高める観点から、水相には乳化剤及び/又は賦形剤が含まれていることが好ましく、アレルゲンフリーの粉末油脂が得られるという観点から、加工澱粉が含まれていることがより好ましい。加工澱粉としては、カルボキシメチル澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、湿熱処理澱粉、酸処理澱粉、架橋処理澱粉、α化澱粉等が挙げられ、これらのうち、良好な乳化性を有するオクテニルコハク酸澱粉が特に好ましい。
[水相の組成]
水相の組成は、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステル、並びに水性溶媒が含まれていれば特に限定されない。水相の組成は水性溶媒の含量に応じて大きく変動し得るため、水相の各成分の含量は、油相(特に、油相中の油脂)の総量に対して設定してもよい。
水相に含まれる本発明の油溶性抗酸化剤の総量の下限は、本発明の油溶性抗酸化剤を十分量配合する観点から、油脂の総量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.20質量%以上である。水相に含まれる本発明の油溶性抗酸化剤の総量の上限は、風味への影響の観点から、油脂の総量に対して、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
水相に含まれる水性溶媒の含量の下限は、乳化安定性が高い水中油型乳化物を得られやすいという観点から、油脂の総量に対して、好ましくは150質量%以上、より好ましくは200質量%以上である。水性溶媒の含量の上限は、粉末化工程における生産効率の観点から、油脂の総量に対して、好ましくは400質量%以下、より好ましくは300質量%以下である。
水相に乳化剤が含まれている場合、その含量の下限は、水中油型乳化物の乳化性を十分に高める観点から、油脂の総量に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上である。乳化剤の含量の上限は、粉末油脂の風味への影響や、粉末油脂の溶解性の観点から、油脂の総量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
水相に含まれている乳化剤が賦形剤としても機能する物質(加工澱粉等)である場合、その含量の下限は、水中油型乳化物の乳化性を十分に高める観点から、油脂の総量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。乳化剤の含量の上限は、水中油型乳化物の粘度が過度となりにくく、さらには得られる粉末油脂の溶解性が損なわれにくいという観点から、油脂の総量に対して、好ましくは300質量%以下、より好ましくは200質量%以下である。
(油相)
油相には、通常の粉末油脂に配合できる任意の油脂(好ましくは、食用油脂)が含まれる。このような油脂としては、植物性油脂、動物性油脂、合成油脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせた調合油を用いてもよい。油相に含まれる油脂としては、風味が良好な粉末油脂が得られやすいという観点から、植物性油脂が好ましい。
植物性油脂としては、エゴマ油、亜麻仁油、サフラワー油、シソ油、菜種油、大豆油、パーム油及びその分別油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ゴマ油、米油等が挙げられる。パーム油の分別油としては、パーム分別中融点油、パーム分別硬質油、パーム極度硬化油等が挙げられる。
動物性油脂としては、魚油(マグロ、サバ、イワシ、カツオ、ニシン等)、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂等が挙げられる。
合成油脂としては、中鎖脂肪酸油が挙げられる。
油脂としては、上記の油脂に対して所望の処理を施した加工油脂であってもよい。このような処理としては、分別(例えば分別乳脂低融点部、パームスーパーオレイン等の分別)、硬化、エステル交換等が挙げられる。油脂に対しては、1又は2以上の処理を施してもよい。
油脂は、粉末油脂の溶解性が良好になりやすいという観点から、30℃における固体脂含量(%)が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下であるものが好ましい。油脂の固体脂含量(SFC)は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」に準じた測定によって特定する。
油相には本発明の効果を阻害しない範囲で、通常食品等に添加可能な油溶性成分が含まれていてもよい。このような成分として、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、大豆レシチン、卵黄レシチン、スフィンゴ脂質、植物ステロール類、トマト糖脂質等)、油溶性抗酸化剤、増粘剤、防腐剤、着色剤等が挙げられる。油溶性抗酸化剤としては、水相に含まれる本発明の油溶性抗酸化剤と同様のもの(ただし、親水化されていないもの)を使用してもよい。これらの成分や含量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
油相の組成は、油脂が含まれていれば特に限定されないが、該油脂の含量の下限は、水中油型乳化物の粘度を過度に高めにくいという観点から、水中油型乳化物を乾燥させた後に得られる粉末油脂に対して、好ましくは16.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、さらに好ましくは40.0質量%以上となるように調整してもよい。該油脂の含量の上限は、乳化安定性が高い水中油型乳化物を得られやすいという観点から、水中油型乳化物を乾燥させた後に得られる粉末油脂に対して、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下となるように調整してもよい。
(水中油型乳化物)
水中油型乳化物は、上述した水相及び油相を含む。該水中油型乳化物においては、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルが水相に分布している。
水中油型乳化物において、水相と油相との割合(質量比)は、好ましくは4:1~2:1である。
(粉末油脂の組成)
水中油型乳化物を乾燥させ、水分含量を低下させることで粉末油脂を得ることができる。粉末油脂の組成は、水分含量が低い点以外は、水中油型乳化物と同様である。
粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量の下限は、粉末油脂の酸化安定性を十分に高める観点から、粉末油脂に対して、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上である。該粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量の上限は、風味の観点から、粉末油脂に対して、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下、さらに好ましくは0.30質量%以下である。親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外)と、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルとを併用する場合、総量が上記の範囲であればよい。
粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量は、粉末油脂に対して、好ましくは0.02質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.50質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以上0.30質量%以下である。親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外)と、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルとを併用する場合、総量が上記の範囲であればよい。
粉末油脂中の油脂の含量の下限は、粉末油脂の溶解性の観点、及び粉末油脂の用途に応じて油脂が有する機能を十分に発揮させるという観点から、粉末油脂に対して、好ましくは16.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、さらに好ましくは40.0質量%以上である。該油脂の含量の上限は、粉末油脂の風味が損なわれにくいという観点から、粉末油脂に対して、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下、さらに好ましくは60.0質量%以下である。
粉末油脂中の油脂の含量は、粉末油脂に対して、好ましくは16.0質量%以上80.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以上70.0質量%以下、さらに好ましくは40.0質量%以上60.0質量%以下である。
粉末油脂中に乳化剤が含まれている場合、その含量の下限は、乳化安定性の観点から、粉末油脂に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。該乳化剤の含量の上限は、粉末油脂の風味や溶解性の観点から、粉末油脂に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
粉末油脂中に乳化剤が含まれている場合、その含量は、粉末油脂に対して、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上15質量%以下である。
粉末油脂中に含まれている乳化剤が賦形剤としても機能する物質(加工澱粉等)である場合、その含量の下限は、粉末油脂に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。該乳化剤の含量の上限は、粉末油脂に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
粉末油脂中に含まれている乳化剤が賦形剤としても機能する物質(加工澱粉等)である場合、その含量は、粉末油脂に対して、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは35質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
従来の粉末油脂を得る際には、乳化性を高めるために、カゼイン又はその塩が配合されていた。しかし、カゼインはアレルゲン性物質であるため、アレルゲンフリーの観点からは配合しないことが好ましい。本発明においては、カゼイン又はその塩を含まなくとも良好な乳化性を実現できる点で有利である。なお、本発明において、カゼイン又はその塩を含む態様は排除されない。
粉末油脂中には水分が含まれていてもよいが、含まれていなくともよい。粉末油脂中には水分が含まれている場合、その含量は、粉末油脂に対して、好ましくは2.0質量%以下である。
<粉末油脂の性質>
本発明の粉末油脂は、風味が良好であり、優れた酸化安定性を有する。
本発明の粉末油脂の風味は官能評価で特定できる。本発明の粉末油脂は長期(例えば20℃で30~360日間)にわたって保存しても、風味の劣化が抑制されている。
本発明の粉末油脂の酸化安定性は、粉末油脂の過酸化物価を測定することによって評価できる。過酸化物価は実施例に記載した方法で特定する。例えば、本発明の粉末油脂は、保存開始時点での過酸化物価が10以下であり、かつ、40℃で30日保存後の過酸化物価が、保存開始時点での過酸化物価の15倍以下であり得る。
また、本発明の粉末油脂は、長期(例えば20℃で30~360日間)にわたって保存しても、粉末油脂の溶解性や乳化性が安定している傾向にある。粉末油脂の溶解性や乳化性は、実施例に示した方法で、粉末油脂を溶解させた際のメディアン径を測定することで評価できる。例えば、本発明の粉末油脂においては、保存開始時点で40℃の温水に溶解させた粉末油脂のメディアン径に対する、40℃で30日保存後に同条件で溶解させた粉末油脂のメディアン径の比(30日保存後の粉末油脂のメディアン径/保存開始時点の粉末油脂のメディアン径)が1.2以下であり得る。
<粉末油脂の製造方法>
本発明の粉末油脂の製造方法は、水中油型乳化物の水相に親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを配合できる工程を含み、例えば、下記の2方法が挙げられる。
製造方法1:水性溶媒と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで水相を得る水相調製工程と、水相調製工程後に、水相と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る乳化物調製工程と、水中油型乳化物を乾燥させる乾燥工程と、を含む方法。
製造方法2:水性溶媒と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る第1の乳化物調製工程と、水中油型乳化物と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで、油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相に配合する第2の乳化物調製工程と、水中油型乳化物を乾燥させる乾燥工程と、を含む方法。
上記の2方法は、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含む水中油型乳化物の調製方法において異なる。具体的には、製造方法1では、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含む水相と、油相とを混合することで、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相中に含む水中油型乳化物を得る。製造方法2では、水性溶媒と油相とを混合した後に、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルをさらに混合することで、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相中に含む水中油型乳化物を得る。
(製造方法1の水相調製工程)
水相調製工程における混合の際には、水相を構成する成分(水性溶媒、親水化された油溶性抗酸化剤、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル等)を混合できる任意の方法を採用できる。例えば、撹拌機等を使用し、水相を構成する成分を混合できる。
(製造方法1の乳化物調製工程)
水相調製工程後に、得られた水相と、油相を構成する成分(油脂等)とを混合することで、水中油型乳化物を得る。かかる場合、水相と、油相を構成する成分とだけを混合してもよいし、水相と、油相を構成する成分と、さらにその他の成分(乳化剤等)とを加えて混合してもよい。その他の成分としては、上述した水相及び油相に含まれ得る任意の成分を選択できる。
水相及び油相を混合する方法としては、乳化物を製造できる任意の方法を採用できる。例えば、水相を撹拌しながら油相を添加する方法、油相を撹拌しながら水相を添加する方法、水相及び油相を同時に添加して混合する方法等が挙げられる。
混合のために使用する装置としては、公知の撹拌機、乳化機等が挙げられる。
(製造方法1の乾燥工程)
得られた水中油型乳化物を乾燥させる方法としては、水分を乾燥させること(つまり水分含量を低下させること)ができる通常の方法を用いることができ、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等が挙げられる。これらのうち、製造の簡便さと製造コストの安さの観点、及び得られる粉末油脂の粒子サイズが均一になりやすいため固結しづらいという観点から噴霧乾燥が好ましい。
(製造方法2の第1の乳化物調製工程)
第1の乳化物調製工程は、水相に親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルが含まれない点以外は(製造方法1の乳化物調製工程)と同様である。つまり、第1の乳化物調製工程で得られる水中油型乳化物は、水性溶媒(及び、任意で、上述した水相中のその他の成分)及び油相を構成する成分(油脂等)を含むが、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含まない水中油型乳化物である。
(製造方法2の第2の乳化物調製工程)
第2の乳化物調製工程においては、第1の乳化物調製工程で得られた水中油型乳化物の水相に、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを配合するために、水中油型乳化物と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルとを混合する。
水中油型乳化物と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルとを混合する方法としては、乳化物を製造できる任意の方法を採用できる。例えば、水中油型乳化物を撹拌しながら親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを添加する方法、水中油型乳化物及び親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを同時に添加して混合する方法が挙げられる。
混合のために使用する装置としては、公知の撹拌機、乳化機等が挙げられる。
(製造方法2の乾燥工程)
製造方法2の乾燥工程は、(製造方法1の乾燥工程)と同様である。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<粉末油脂の作製>
下記の方法に基づき、水相及び油相を含む水中油型乳化物を調製し、該水中油型乳化物を用いて、最終的な組成が表1~3で表される粉末油脂を作製した。表中、「油相」及び「水相」の項の値の単位は「質量%」である。
なお、表中、使用した抗酸化剤及び加工澱粉の詳細は下記のとおりである。
(1)L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有水溶性製剤(親水化された油溶性抗酸化剤であり、かつ、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルに相当する。)
商品名「ドライEミックスCP-13」、理研ビタミン株式会社製を用いた。
(2)L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有油溶性製剤(親水化されていない油溶性抗酸化剤であり、かつ、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルに相当する。)
商品名「EC-100V」、理研ビタミン株式会社製を用いた。
(3)L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル(親水化されていない油溶性抗酸化剤であり、かつ、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルに相当する。)
商品名「L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル」、DSM社製を用いた。
(4)ミックストコフェロール(ビタミンEの混合物であり、親水化されていない油溶性抗酸化剤に相当する。)
商品名「Eオイルスーパー60」、理研ビタミン社製を用いた。
(5)L-アスコルビン酸2-グルコシド(水溶性抗酸化剤に相当する。)
商品名「アスコフレッシュ」、林原社製を用いた。
(6)オクテニルコハク酸澱粉
商品名「ピュリティガムBE」、日本エヌエスシー社製を用いた。
(粉末油脂の製造方法)
実施例20以外の実施例、及び比較例に係る粉末油脂は、下記[製造方法1]に基づき作製した。実施例20に係る粉末油脂は、下記[製造方法2]に基づき作製した。
[製造方法1]
(水相の調製(水相調製工程))
表に記載した水相及び油相に含まれる全成分の総量と同量の水(水性溶媒)をホモミクサー(商品名「T.K HOMOMIXER MARKII」、プライミクス社製)で撹拌しながら、水相の全成分を添加し、水相の成分を十分に溶解することで水相を得た。
(水中油型乳化物の調製(乳化物調製工程))
水相を60℃まで昇温した後、油相の全成分を添加し、6000rpmで10分撹拌した。その後、ホモジナイザー(商品名「HV-A型」、イズミフードマシナリ社製)で200kg/cmの圧力をかけて均質化することで水中油型乳化物を得た。
(水中油型乳化物の乾燥(乾燥工程))
水中油型乳化物を、噴霧乾燥機(商品名「モービルマイナー2000」、GEA社製)を用いて、熱風入口温度180℃、出口温度95℃の条件下で噴霧乾燥し、粉末油脂を得た。
[製造方法2]
(水相の調製(水相調製工程))
表に記載した水相及び油相に含まれる全成分の総量と同量の水(水性溶媒)をホモミクサー(商品名「T.K HOMOMIXER MARKII」、プライミクス社製)で撹拌しながら、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステル以外の水相の全成分を添加し、水相の成分を十分に溶解することで水相を得た。
(水中油型乳化物の調製-1(第1の乳化物調製工程))
水相を60℃まで昇温した後、油相の全成分を添加し、6000rpmで10分撹拌し、水中油型乳化物(第1の乳化物)を得た。
(水中油型乳化物の調製-2(第2の乳化物調製工程))
第1の乳化物に、親水化された油溶性抗酸化剤を添加し、十分に溶解し、次いで、ホモジナイザー(商品名「HV-A型」、イズミフードマシナリ社製)で200kg/cmの圧力をかけて均質化することで水中油型乳化物(第2の乳化物)を得た。
(水中油型乳化物の乾燥(乾燥工程))
第2の乳化物を、噴霧乾燥機(商品名「モービルマイナー2000」、GEA社製)を用いて、熱風入口温度180℃、出口温度95℃の条件下で噴霧乾燥し、粉末油脂を得た。
<粉末油脂の評価>
得られた各粉末油脂について、製造直後、製造30日後(40℃で保存)での諸特性を下記の方法で評価した。その結果を表4~6に示す。
(過酸化物価(POV))
粉末油脂20gに、混合溶剤(クロロホルム及びメタノール)150gを添加し、スターラーバーで30分間撹拌して油脂分を抽出した。次いで、該油脂分を含む溶剤溶液をろ過し、エバポレーターにて溶剤を除去し、油脂分を得た。得られた油脂分のPOVを、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)「2.5.2.1-2013」に準じて測定した。
製造直後の粉末油脂のPOVに対する、製造30日後の粉末油脂のPOV(製造30日後の粉末油脂のPOV/製造直後の粉末油脂のPOV)の値を「POV比」の項に示した。「POV比」の値が低いほど、粉末油脂の製造から30日間保存した後であっても、過酸化物価の上昇が抑制されていることを示す。
(粉末油脂の溶解性)
粉末油脂を、濃度が0.1g/mlとなるように湯(60℃)に入れ、1分間撹拌した後の溶け残りの有無を下記の基準に基づき評価した。
◎:溶け残りが認められない
○:溶け残りがほとんど認められない
△:溶け残りが少し認められた
×:溶け残りが多く認められた
(粉末油脂の油滴径)
粉末油脂を濃度が0.1g/mlとなるように湯(60℃)に入れ、1分間撹拌した後の油滴径(メディアン径)を、レーザー回折式粒子径分布測定装置(商品名「SALD-2300」、株式会社島津製作所製)によって測定した。
製造直後の粉末油脂の油滴径に対する、製造30日後の粉末油脂の油滴径(製造30日後の粉末油脂の油滴径/製造直後の粉末油脂の油滴径)の値を「油滴径比」の項に示した。「油滴径比」の値が低いほど、粉末油脂の製造から30日間保存した後であっても、粉末油脂の溶解性や乳化性が製造直後から変化していないことを示し、粉末油脂の溶解性や乳化性が安定していることを意味する。
(30℃における固体脂含量(%))
30℃における油脂の固体脂含量(SFC)を、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
(粉末油脂の風味)
製造後40℃、30日後の粉末油脂の風味を、パネルによる官能評価によって、下記の基準に基づき評価した。
◎:異臭が全く感じられない
○:異臭がほとんど感じられない
△:異臭を少し感じる
×:異臭を強く感じる
(粉末油脂の総合評価)
「過酸化物価」及び「風味」の評価結果に基づき、下記の基準で総合的な評価を行った。
◎:製造30日後のPOVが100未満であり、かつ、風味の評価結果が◎である
○:製造30日後のPOVが100未満であり、かつ、風味の評価結果が○以下である
△:製造30日後のPOVが100以上であり、かつ、風味の評価結果が△以上である
×:製造30日後のPOVが100以上であり、かつ、風味の評価結果が×である
Figure 0007018771000001
Figure 0007018771000002
Figure 0007018771000003
Figure 0007018771000004
Figure 0007018771000005
Figure 0007018771000006
表4及び5の「POV」、「POV比」及び「風味」の結果から理解されるとおり、水相に、親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有水溶性製剤)及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステル(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル)を含む水中油型乳化物から得た、本発明の粉末油脂は、粉末油脂の製造から30日間保存した後であっても、過酸化物価の上昇が抑制されつつ、風味に優れていた。このような効果は比較例(表6)においては見出せなかった。
特に、比較例2及び3は、油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有油溶性製剤、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、又は、ミックストコフェロール)を水相に配合する代わりに油相に配合した点以外は、実施例4~6とほぼ同条件である。なお、実施例4~6で用いた親水化された油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有水溶性製剤)には、親水化されていない油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル及びミックストコフェロール)が少量含まれている。そこで、比較例3においては、親水化されていない油溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル及びミックストコフェロール)の含量が、実施例4~6で用いた親水化された油溶性抗酸化剤に含まれる親水化されていない油溶性抗酸化剤の割合と同程度になるように調整した。
しかし、比較例2及び3においては、実施例4~6と比較して、粉末油脂の製造から30日間保存した後にPOVが顕著に上昇したうえ、風味が損なわれていた。抗酸化剤を水相に配合するか、又は、油相に配合するかの相違が、粉末油脂のPOVや風味にこのような大きな影響を及ぼすという結果は極めて意外なものといえる。
また、比較例5は、油溶性抗酸化剤の代わりに、水溶性抗酸化剤(L-アスコルビン酸2-グルコシド)を水相に配合した点以外は、実施例4~6とほぼ同条件である。しかし、該比較例においては、実施例4~6と比較して、粉末油脂の製造から30日間保存した後にPOVが顕著に上昇したうえ、風味が損なわれていた。したがって、本発明の効果は、油溶性抗酸化剤(親水化されたもの及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステル)を水相に配合したことによる特有の効果であるといえる。
また、表4の「油滴径」の結果から理解されるとおり、本発明の粉末油脂は、粉末油脂の製造から30日間保存した後であっても、良好な溶解性や乳化性が維持される傾向にあった。さらに、表4の「油滴径比」の結果から理解されるとおり、粉末油脂の製造から30日間保存した後の本発明の粉末油脂は、溶解後の油滴径が、製造直後の粉末油脂におけるものと大きな差がない傾向にあり、長期保存後も粉末油脂の溶解性及び乳化性が安定している傾向にあった。
なお、実施例5及び19の粉末油脂について、上記(過酸化物価(POV))と同様の方法で、製造50日後(40℃で保存)のPOVを測定したところ、それぞれ、167、210だった。実施例5と実施例19との相違は、前者では親水化されたL-アスコルビン酸脂肪酸エステル(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル含有水溶性製剤)を用いたのに対し、後者では親水化されていないL-アスコルビン酸脂肪酸エステル(L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル)を用いた点にある。この結果から、L-アスコルビン酸脂肪酸エステルの代わりに、親水化されたL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを用いる方が、より優れた酸化安定性を有する粉末油脂が得られることがわかった。
<粉末油脂の外観観察>
上記で得られた実施例5及び比較例2の粉末油脂について、以下の方法で電子顕微鏡を用いて外観観察を行った。なお、比較例2は、上述した特許文献1に示された粉末油脂に相当する。
各粉末油脂をスライドガラスに載せ、カバーガラスを載せずに、光学顕微鏡(商品名「DIGITAL MICROSCOPE KH-8700」、ハイロックス社製)を用いて200倍で偏向をかけて観察した。実施例5の観察結果を図1に示し、比較例2の観察結果を図2に示す。
図1から理解されるとおり、本発明の粉末油脂(油溶性抗酸化剤を水相に配合して得られたもの)である実施例5の粉末油脂は、油脂の液滴の表面上に油溶性抗酸化剤(針状結晶)が分布している。他方、図2から理解されるとおり、比較例2の粉末油脂(油溶性抗酸化剤を油相に配合して得られたもの)においては、油脂の液滴の表面に針状結晶が認められず、本発明の粉末油脂とは異なる外観であることがわかる。

Claims (14)

  1. 油脂と、乳化剤とを含む粉末油脂であって、
    前記油脂の液滴の少なくとも一部の表面上に親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルが分布され、
    前記粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量が、粉末油脂に対して0.02質量%以上1質量%以下である、
    粉末油脂。
  2. 前記粉末油脂は、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを含む水相と、油相と、を含む水中油型乳化物を乾燥させたものである、請求項1に記載の粉末油脂。
  3. 前記水中油型乳化物は、水相又は油相に乳化剤を含む、請求項2に記載の粉末油脂。
  4. 前記乳化剤は、加工澱粉である、請求項3に記載の粉末油脂。
  5. 前記粉末油脂中の前記乳化剤の含量は、粉末油脂に対して30質量%以下である、請求項3又は4に記載の粉末油脂。
  6. 前記粉末油脂中の油脂の含量は、粉末油脂に対して16.0質量%以上である、請求項1から5のいずれかに記載の粉末油脂。
  7. 保存開始時点での過酸化物価が10以下であり、かつ、40℃で30日保存後の過酸化物価が、前記保存開始時点での過酸化物価の15倍以下である、請求項1から6のいずれかに記載の粉末油脂。
  8. 保存開始時点で40℃の温水に溶解させた粉末油脂のメディアン径に対する、40℃で30日保存後に同条件で溶解させた粉末油脂のメディアン径の比が1.2以下である、請求項1から7のいずれかに記載の粉末油脂。
  9. 水性溶媒と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで水相を得る水相調製工程と、
    前記水相調製工程後に、前記水相と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る乳化物調製工程と、
    前記水中油型乳化物を乾燥させることで粉末油脂を得る乾燥工程と、
    を含
    前記粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量が、粉末油脂に対して0.02質量%以上1質量%以下である、
    粉末油脂の製造方法。
  10. 水性溶媒と油相とを混合することで水中油型乳化物を得る第1の乳化物調製工程と、
    前記水中油型乳化物と、親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルと、を混合することで、前記親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルを水相に配合する第2の乳化物調製工程と、
    前記水中油型乳化物を乾燥させることで粉末油脂を得る乾燥工程と、
    を含
    前記粉末油脂中の親水化された油溶性抗酸化剤及び/又はL-アスコルビン酸脂肪酸エステルの総量が、粉末油脂に対して0.02質量%以上1質量%以下である、
    粉末油脂の製造方法。
  11. 前記水中油型乳化物は、水相又は油相に乳化剤を含む、請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 前記乳化剤は、加工澱粉である、請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記粉末油脂中の前記乳化剤の含量は、粉末油脂に対して30質量%以下である、請求項11又は12に記載の製造方法。
  14. 前記粉末油脂中の油脂の含量は、粉末油脂に対して16.0質量%以上である、請求項9から13のいずれかに記載の製造方法。
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