JP7009937B2 - 巻鉄心のbf推定方法 - Google Patents

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Description

本開示は、巻鉄心のBF推定方法に関する。
鉄心は、トランス、リアクトル、ノイズフィルター等の磁心として広く用いられている。高効率化などの点から鉄心で生じる鉄損の低減が重要な課題の一つとなっており、従来、様々な観点から低鉄損化の検討が行われている。
巻鉄心の製造方法のひとつとして、例えば、電磁鋼板を筒状に巻き取った後、コーナー部をプレスし、略矩形に形成した後、焼鈍することにより歪取りと形状保持を行い巻鉄心(トランココア)とする方法が広く知られている。この製法の場合、巻鉄心の寸法に応じてコーナー部の曲率半径は異なるが、当該曲率半径は概ね4mm以上の比較的大きい緩やかな曲面となっている。
巻鉄心の別の製造方法として、電磁鋼板の巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、当該曲げ加工された電磁鋼板を重ね合わせることにより、電磁鋼板を積層して巻鉄心(ユニコア、デュオコア等)とする手法が検討されている。
当該製造方法によれば、上記プレス工程が不要であり、また、電磁鋼板を折り曲げているため形状が保持され、上記焼鈍工程による形状保持が必須の工程とはならないため、製造が容易であるというメリットがある。この製法では、電磁鋼板を曲げ加工するため、当該加工部分には曲率半径が1mm~3mm程度の比較的小さな曲げ加工領域(屈曲部)が形成される。
また、通常の巻鉄心は接合部が1か所であるが、接合部を2か所有する巻鉄心も製造されている。接合部が2か所あることにより、接合部が1か所の通常のコアと比較してレイシングの際の時間短縮が可能であり。且つ、歪みが導入されにくいというメリットがある。しかし、接合部が2か所あるため、接合部が1か所の巻鉄心と比較して、鉄損が大きくなる。
曲げ加工を含む製造方法により製造された巻鉄心として、例えば特許文献1には、加工部を曲げ加工した巻鉄心の接合部の構造が開示されている。
また、特許文献2には、加工部を曲げ加工した巻鉄心を簡易的に製造するための治具とその製造方法が開示されている。
実用新案登録第3081863号公報 特開2005-286169号公報
曲げ加工を含む製造方法により製造された巻鉄心は、曲げ加工領域(屈曲部)で歪が導入されるため、従来の形状矯正と歪取りのための焼鈍をして製造された、曲げ加工領域を有しない巻鉄心と比べ、鉄心特性が劣化するという問題がある。
曲げ加工領域を有する巻鉄心で、曲げ加工領域を有しない巻鉄心よりも低鉄損を実現するためには、曲げ加工領域を有する巻鉄心の鉄心長とBFとの関係を定量的に明らかにし、各素材の鉄損に対する曲げ加工領域の影響が小さくなる巻鉄心の仕様を推定していくことが、素材の低鉄損を生かすために求められている。
また、従来の技術では、曲げ加工領域を有する巻鉄心の、曲げ加工領域の鉄損を測定するのは困難であり、当該巻鉄心の特性を簡易的に評価する方法が求められている。
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、少なくとも1つの接合部と、少なくとも1つの曲げ加工領域を有し、同じグレードの素材で構成され、接合部及び曲げ加工領域の数が同じであり、鉄心長が異なる一群の巻鉄心のBFを推定する方法を提供することを目的とする。
本開示の巻鉄心のBF推定方法は、方向性電磁鋼板を素材として構成される巻鉄心の、鉄損劣化(巻鉄心鉄損(W/kg)/素材鉄損(W/kg))の指標として用いるビルディングファクタ(BF)を推定する方法であって、
前記巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備え、
前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部において隣接する2つの平面部のなす角が90°である前記方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた、側面視において略矩形状の積層構造を有し、且つ、1周回中に少なくとも1か所以上の接合部を有し、
前記各コーナー部は、前記方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する曲げ加工領域を1か所以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する曲げ加工領域それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、
同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、当該接合部が形成されている位置が同じであり、当該接合部のステップ数及びラップ長が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じであり、鉄心長l(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)が異なる、一群の関係式導出用巻鉄心を準備する、関係式導出用巻鉄心準備工程と、
前記素材鉄損と、一群の前記関係式導出用巻鉄心の各巻鉄心鉄損とを測定し、当該素材鉄損と当該各巻鉄心鉄損から、一群の当該関係式導出用巻鉄心の各BFを算出し、一群の当該関係式導出用巻鉄心の当該各BF及び当該各鉄心長に基づいて、当該BFと当該鉄心長との関係式を導出する、関係式導出工程と、
前記関係式に、前記関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じである、BF未知巻鉄心の鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定する、推定工程と、を有することを特徴とする。
本開示の巻鉄心のBF推定方法においては、前記関係式が、下記式(1)で表され、
前記関係式導出工程において、一群の前記関係式導出用巻鉄心の前記各BF及び前記各鉄心長に基づいて下記式(1)の係数A及び係数Bの値を算出し、当該係数A及び当該係数Bの値を下記式(1)に代入し、
前記推定工程において、下記式(1)に、前記BF未知巻鉄心の鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定してもよい。
BF=(1/l)A+B・・・式(1)
[上記式中の文字の意味は以下の通りである。
BF:ビルディングファクタ
:巻鉄心の鉄心長(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)
A:係数
B:係数]
本開示の巻鉄心のBF推定方法においては、前記BF未知巻鉄心の接合部のステップ数及びラップ長が、前記関係式導出用巻鉄心の接合部のステップ数及びラップ長と同じであってもよい。
本開示によれば、少なくとも1つの接合部と、少なくとも1つの曲げ加工領域を有し、同じグレードの素材で構成され、接合部及び曲げ加工領域の数が同じであり、鉄心長が異なる一群の巻鉄心のBFを推定することができる。具体的には、本開示によれば、巻鉄心の板幅、巻厚、質量が異なっていても、上記条件を満たす鉄心長の異なる巻鉄心のBFを推定することができる。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。 図3は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。 図4は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。 図5は、図2の実施形態におけるコーナー部付近を拡大した側面図である。 図6は、図3の実施形態におけるコーナー部付近を拡大した側面図である。 図7は、図4の実施形態におけるコーナー部付近を拡大した側面図である。 図8は、方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す側面図である。 図9は、方向性電磁鋼板の別の一例を模式的に示す側面図である。 図10は、方向性電磁鋼板の曲げ加工領域の一例を模式的に示す側面図である。 図11は、巻鉄心の製造方法における曲げ加工方法の一例を示す模式図である。 図12は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図13は、実験例で用いた容量25KVAの巻鉄心の寸法を示す模式図である。 図14は、実験例で用いた容量75KVAの巻鉄心の寸法を示す模式図である。 図15(a)は、実験例で用いた巻鉄心の鉄心長と50Hzにおける各磁束密度でのBFとの関係を示すグラフである。図15(b)は、実験例で用いた巻鉄心の鉄心長と60Hzにおける各磁束密度でのBFとの関係を示すグラフである。
本開示の巻鉄心のBF推定方法は、方向性電磁鋼板を素材として構成される巻鉄心の、鉄損劣化(巻鉄心鉄損(W/kg)/素材鉄損(W/kg))の指標として用いるビルディングファクタ(BF)を推定する方法であって、
前記巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備え、
前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部において隣接する2つの平面部のなす角が90°である前記方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた、側面視において略矩形状の積層構造を有し、且つ、1周回中に少なくとも1か所以上の接合部を有し、
前記各コーナー部は、前記方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する曲げ加工領域を1か所以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する曲げ加工領域それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、
同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、当該接合部が形成されている位置が同じであり、当該接合部のステップ数及びラップ長が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じであり、鉄心長l(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)が異なる、一群の関係式導出用巻鉄心を準備する、関係式導出用巻鉄心準備工程と、
前記素材鉄損と、一群の前記関係式導出用巻鉄心の各巻鉄心鉄損とを測定し、当該素材鉄損と当該各巻鉄心鉄損から、一群の当該関係式導出用巻鉄心の各BFを算出し、一群の当該関係式導出用巻鉄心の当該各BF及び当該各鉄心長に基づいて、当該BFと当該鉄心長との関係式を導出する、関係式導出工程と、
前記関係式に、前記関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じである、BF未知巻鉄心の当該鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定する、推定工程と、を有することを特徴とする。
本開示において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
本開示において巻鉄心は、1周回中に接合部を1か所有し且つ曲げ加工領域(屈曲部)を有さない巻鉄心をトランココアと称し、1周回中に接合部を1か所有し且つ曲げ加工領域を有する巻鉄心をユニコアと称し、1周回中に接合部を2か所有し且つ曲げ加工領域を有する巻鉄心をデュオコアと称する場合がある。
本開示に用いられる巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備える。当該巻鉄心本体は、方向性電磁鋼板が、板厚方向に積み重ねられ、側面視において略矩形状の積層構造を有する。当該巻鉄心本体を、そのまま巻鉄心として使用してもよいし、必要に応じて巻鉄心を固定するために、結束バンド等、公知の締付具等を備えていてもよい。
一般的に方向性電磁鋼板とは、鋼板中の結晶粒の方位が{110}<001>方位に高度に集積され、磁化容易軸が長手方向に揃った鋼板をいう。磁化容易軸が長手方向に揃っているため、鉄損の少なく磁性に優れるという特性を有する電磁鋼板をいう。
本開示において方向性電磁鋼板は、少なくとも、母鋼板を有し、必要に応じ、母鋼板表面に被膜を有していてもよい。被膜としては、例えば、グラス被膜などが挙げられる。以下、方向性電磁鋼板の各構成について説明する。
母鋼板は、当該母鋼板中の結晶粒の方位が{110}<001>方位に高度に集積された鋼板であり、圧延方向に優れた磁気特性を有するものである。
本開示において母鋼板は、特に限定されず、方向性電磁鋼板として公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。以下、好ましい母鋼板の一例について説明するが、本開示において母鋼板は以下のものに限定されるものではない。
母鋼板の化学組成は、特に限定されるものではないが、例えば、質量%で、Si:0.8%~7%、C:0%よりも高く0.085%以下、酸可溶性Al:0%~0.065%、N:0%~0.012%、Mn:0%~1%、Cr:0%~0.3%、Cu:0%~0.4%、P:0%~0.5%、Sn:0%~0.3%、Sb:0%~0.3%、Ni:0%~1%、S:0%~0.015%、Se:0%~0.015%を含有し、残部がFeおよび不純物からなることが好ましい。上記母鋼板の化学組成は、結晶方位を{110}<001>方位に集積させたGoss集合組織に制御するために好ましい化学成分である。母鋼板中の元素のうち、SiおよびCが基本元素であり、酸可溶性Al、N、Mn、Cr、Cu、P、Sn、Sb、Ni、S、およびSeが選択元素である。これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよいので下限値を制限する必要がなく、実質的に含有していなくてもよい。また、これらの選択元素が不可避的不純物として含有されても、本開示の効果は損なわれない。母鋼板は、基本元素および選択元素の残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
なお、本開示において、「不可避的不純物」とは、母鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から不可避的に混入する元素を意味する。
また、方向性電磁鋼板では二次再結晶時に純化焼鈍を経ることが一般的である。純化焼鈍においてはインヒビター形成元素の系外への排出が起きる。特にN、Sについては濃度の低下が顕著で、50ppm以下になる。通常の純化焼鈍条件であれば、9ppm以下、さらには6ppm以下、純化焼鈍を十分に行えば、一般的な分析では検出できない程度(1ppm以下)にまで達する。
母鋼板の化学成分は、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、母鋼板の化学成分は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、例えば、被膜除去後の母鋼板の中央の位置から35mm角の試験片を取得し、島津製作所製ICPS-8100等(測定装置)により、予め作成した検量線に基づいた条件で測定することにより特定できる。なお、CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。
なお、母鋼板の化学成分は、方向性電磁鋼板から後述の方法により後述のグラス被膜およびリンを含有する被膜等を除去した鋼板を母鋼板としてその成分を分析した成分である。
母鋼板の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方向性電磁鋼板の製造方法を適宜選択することができる。製造方法の好ましい具体例としては、例えば、Cを0.04~0.1質量%とし、その他は上記母鋼板の化学組成を有するスラブを1000℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、次いで、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延により冷延鋼板とし、当該冷延鋼板を、例えば湿水素-不活性ガス雰囲気中で700~900℃に加熱して脱炭焼鈍し、必要に応じて更に窒化焼鈍し、1000℃程度で仕上焼鈍する方法などが挙げられる。
本開示において母鋼板の厚みは特に限定されないが、0.1mm以上0.5mm以下であってもよく、0.15mm以上0.40mm以下であってもよい。
本開示において方向性電磁鋼板は、本開示の効果を損なわない範囲で表面に被膜を有していてもよい。このような被膜としては、例えば、母鋼板上に形成されるグラス被膜などが挙げられる。グラス被膜としては、例えば、フォルステライト(MgSiO)、スピネル(MgAl)、及びコーディエライト(MgAlSi16)より選択される1種以上の酸化物を有する被膜が挙げられる。
グラス被膜の形成方法は特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、前記母鋼板の製造方法の具体例において、冷延鋼板にマグネシア(MgO)及びアルミナ(Al)から選択される1種以上を含有する焼鈍分離剤を塗布した後で、前記仕上焼鈍を行う方法が挙げられる。なお当該焼鈍分離剤は、仕上焼鈍時の鋼板同士のスティッキングを抑制する効果も有している。例えば前記マグネシアを含有する焼鈍分離剤を塗布して仕上焼鈍を行った場合、母鋼板に含まれるシリカと反応して、フォルステライト(MgSiO)を含むグラス被膜が母鋼板表面に形成される。
本開示においてグラス被膜の厚みは特に限定されないが、0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。
本開示において用いられる方向性電磁鋼板の板厚は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択すればよいものであるが、通常0.15mm~0.35mmの範囲内であり、好ましくは0.18mm~0.23mmの範囲である。
以下、本開示に用いられる巻鉄心の形状について説明する。
図1は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、図1の実施形態に示される巻鉄心の側面図である。
また、図3及び図4は、巻鉄心の別の一実施形態を模式的に示す側面図である。
なお、本開示において側面視とは、巻鉄心を構成する長尺状の方向性電磁鋼板の幅方向(図1におけるY軸方向)に視ることをいい、側面図とは側面視により視認される形状を表した図(図1のY軸方向の図)である。
図1及び図2に示すように、巻鉄心本体10は、長手方向に平面部4とコーナー部3とが交互に連続し、当該各コーナー部3において隣接する2つの平面部4のなす角が90°である方向性電磁鋼板1が、板厚方向に積み重ねられた部分を含み、側面視において略矩形状の積層構造2を有する。
方向性電磁鋼板1の各コーナー部3は、側面視において、曲線状の形状を有する曲げ加工領域(屈曲部)5を2つ以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する曲げ加工領域それぞれの曲げ角度の合計が90°となっている。
図2の実施形態は1つのコーナー部3中に2つの曲げ加工領域5を有する場合である。
図3の実施形態は1つのコーナー部3中に3つの曲げ加工領域5を有する場合である。
また、図4の実施形態は、1つのコーナー部3が1つの曲げ加工領域5により形成されている場合である。
図5~図7は、それぞれ図2~図4の実施形態におけるコーナー部付近を拡大した側面図である。
図5及び図6の例に示されるように、1つのコーナー部に2つ以上の曲げ加工領域を有する場合には、方向性電磁鋼板の第1の平面部を表す直線状の部分に第1の曲げ加工領域(曲線部分)が連続し、その先には直線部分、第2の曲げ加工領域(曲線部分)、別の直線部分というように、曲げ加工領域(曲線部分)と直線部分が交互に連続し、当該コーナー部における最後の曲げ加工領域(曲線部分)に至り、その先に、コーナー部を介して前記第1の平面部に隣接する、方向性電磁鋼板の第2の平面部が連続してなる形状を有する。
図5の例では線分A-A’から線分B-B’までの領域をコーナー部3とする。点Aは、巻鉄心10の最も内側に配置された方向性電磁鋼板1aの曲げ加工領域5aにおける平面部4a側の端点であり、点A’は、点Aを通り方向性電磁鋼板1aの板面に垂直方向の直線と、巻鉄心本体10の最も外側の面との交点である。同様に点Bは、巻鉄心10の最も内側に配置された方向性電磁鋼板1aの曲げ加工領域5bにおける平面部4b側の端点であり、点B’は、点Bを通り方向性電磁鋼板1aの板面に垂直方向の直線と、巻鉄心本体10の最も外側の面との交点である。図5において当該コーナー部3を介して隣接する2つの平面部4aと4bのなす角はθであり、本開示において当該θは90°である。曲げ加工領域の曲げ角度φについては後述するが、図5においてφ1+φ2は90°となる。
次に、コーナー部3中に曲げ加工領域5を3つ以上有する例について説明する。
図6は、図3の実施形態におけるコーナー部付近の拡大図である。
図6においても図5と同様に線分A-A’から線分B-B’までの領域をコーナー部3とする。図6において、点Aは平面部4aに最も近い曲げ加工領域5aの平面部4a側の端点であり、点Bは平面部4bに最も近い曲げ加工領域5bの平面部4b側の端点である。曲げ加工領域が3つ以上ある場合、各曲げ加工領域間には直線部分が存在する。いずれの平坦部が平面部4を構成するかについては、コーナー部を介して隣接する2つの平面部のなす角θが90°であることを考慮して決定すればよく、これにより平面部4に隣接する曲げ加工領域5が決定される。なお図6の例では、φ1+φ2+φ3が90°となり、一般にコーナー部内にn個の曲げ加工領域を有する場合、φ1+φ2+・・・+φnは90°となる。
次に、コーナー部3中の曲げ加工領域5が1つの場合について説明する。
図7は、図4の実施形態におけるコーナー部付近の拡大図である。
図7においても図5及び図6と同様に線分A-A’から線分B-B’までの領域をコーナー部3とする。図7において点Aは曲げ加工領域5の平面部4a側の端点であり、点Bは曲げ加工領域5の平面部4b側端点となる。また図7の例では、φ1は90°である。
本開示においては、前述するコーナー部の角度θが90°である場合、φは90°以下であってもよい。加工時の変形による歪み発生を抑制して鉄損を抑える点からは、φは60°以下であってもよく、45°以下であってもよい。そのため、本開示で用いられる巻鉄心においては1つのコーナー部に2以上の曲げ加工領域を有していてもよい。
1つのコーナー部に2つの曲げ加工領域を有する図5の実施形態では、鉄損低減の点から、例えば、φ1=60°且つφ2=30°とすることや、φ1=45°且つφ2=45°等とすることができる。
また、1つのコーナー部に3つの曲げ加工領域を有する図6の実施形態では、鉄損低減の点から、例えばφ1=30°、φ2=30°且つφ3=30°等とすることができる。更に、生産効率の点からは折り曲げ角度が等しいことが好ましいため、1つのコーナー部に2つの曲げ加工領域を有する場合には、φ1=45°且つφ2=45°としてもよい。
また、1つのコーナー部に3つの曲げ加工領域を有する図6の実施形態では、鉄損低減の点から、例えばφ1=30°、φ2=30°且つφ3=30°としてもよい。
図8は1周回中に接合部が1か所且つ曲げ加工領域を有する巻鉄心の材料として用いられる方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す図である。
図9は1周回中に接合部が2か所且つ曲げ加工領域を有する巻鉄心の材料として用いられる方向性電磁鋼板の一例を模式的に示す図である。
図8及び図9の例に示されるように、本開示において用いる、1周回中に接合部が1か所以上且つ曲げ加工領域を有する巻鉄心に用いることができる方向性電磁鋼板は、折り曲げ加工されたものであって、前記巻鉄心のコーナー部に対応する1つまたは2つ以上の曲げ加工領域5から構成されるコーナー部3と、平面部4を有し、1周回中に1つ以上の接合部6を介して略矩形の環を形成してもよい。
図8の例に示されるように、1つの接合部6を介して1枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成するものであってもよく、図9の例に示されるように1枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心の約半周分を構成し、2つの接合部6を介して2枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成するものであってもよい。
また巻鉄心の材料として用いられる方向性電磁鋼板の別の例としては、2枚の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成する場合、略矩形の3辺に相当する曲げ加工体と、残りの1辺に相当する真直ぐな(側面視が直線状の)鋼板を組み合わせて略矩形状の環を形成してもよい。このように、2枚以上の方向性電磁鋼板が巻鉄心本体の1層分を構成する場合、鋼板の曲げ加工体と、真直ぐな(側面視が直線状の)鋼板とを組み合わせてもよい。
いずれの場合も巻鉄心製造時に隣接する2層間に隙間が生じないようにするため、隣接する2層の方向性電磁鋼板において、内側に配置される方向性電磁鋼板の平面部4の外周長と、外側に配置される方向性電磁鋼板の平面部4の内周長が等しくなるように鋼板の長さ及び曲げ加工領域の位置を調整する。
図10を参照しながら、曲げ加工領域5について更に詳細に説明する。
図10は、方向性電磁鋼板の曲げ加工領域の一例を模式的に示す図である。
曲げ加工領域の曲げ角度とは、方向性電磁鋼板曲げ加工領域において、折り曲げ方向の後方側の直線部と前方側の直線部の間に生じた角度差を意味し、曲げ加工領域において、方向性電磁鋼板の外面を表す線Lbに含まれる曲線部分の両側(点F及び点G)それぞれに隣接する直線部分を延長して得られる2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2がなす角の補角の角度φとして表される。
各曲げ加工領域の曲げ角度φは、90°以下であり、かつ、一つのコーナー部に存在する全ての曲げ加工領域の曲げ角度φの合計は90°である。
本開示において曲げ加工領域とは、図10に示す方向性電磁鋼板の側面視において、方向性電磁鋼板の内面を表す線La上の点D及び点E、並びに、方向性電磁鋼板の外面を表す線Lb上の点F及び点Gを下記のとおり定義したときに、方向性電磁鋼板の内面を表す線La上で点Dと点Eとで区切られた線、方向性電磁鋼板の外面を表す線Lb上で点Fと点Gとで区切られた線、前記点Fと前記点Eを結ぶ直線、及び、前記点Dと前記点Gを結ぶ直線により囲まれる領域を示す。
また、本開示において、曲げ加工領域長さ(l)とは、図10に示す方向性電磁鋼板の曲げ加工領域において内面を表す線La上で点Eと点Dとで区切られた線の長さである。
また、巻鉄心が曲げ加工領域を複数有する場合は、各曲げ加工領域における上記La上で点Eと点Dとで区切られた線の長さの総和である。
例えば、ユニコアの曲げ加工領域の1箇所に注目すれば、曲げ加工領域曲率半径rが45°曲げの場合、1箇所の曲げ加工領域における曲げ加工領域長さは2πr/8と表わされる。
そのため、曲率半径rが45°曲げの曲げ加工領域が8箇所ある場合は、曲げ加工領域長さ(l)は、各曲げ加工領域における曲げ加工領域長さの総和であり、上記2πr/8の8倍(l=8×(2πr/8))となる。
ここで、点D、点E、点F及び点Gは次のように定義する。
側面視において、方向性電磁鋼板の内面を表す線Laに含まれる曲線部分における曲率半径の中心点Aと、方向性電磁鋼板の外面を表す線Lbに含まれる曲線部分の両側それぞれに隣接する直線部分を延長して得られる前記2つの仮想線Lb-elongation1、Lb-elongation2の交点Bとを結んだ直線ABが、方向性電磁鋼板の内面を表す線と交わる点を原点Cとし、
当該原点Cから方向性電磁鋼板の内面を表す線Laに沿って、一方の方向に下記式(A)で表される曲線部分の距離m/2だけ離れた点を点Dとし、
当該原点Cから方向性電磁鋼板の内面を表す線Laに沿って、他の方向に曲線部分の距離m/2だけ離れた点を点Eとし、
方向性電磁鋼板の外面を表す線Lbに含まれる前記直線部分のうち、前記点Dに対向する直線部分と、当該点Dに対向する直線部分に対し垂直に引かれ且つ前記点Dを通過する仮想線との交点を点Gとし、
方向性電磁鋼板の外面を表す線Lbに含まれる前記直線部分のうち、前記点Eに対向する直線部分と、当該点Eに対向する直線部分に対し垂直に引かれ且つ前記点Eを通過する仮想線との交点を点Fとする。
式(A): 2×(m/2) = r ×(π/4)
[式(A)中、2×(m/2)は、点Cから点Dまでの曲線部分の距離m/2と点Cから点Eまでの曲線部分の距離m/2の総距離、すなわち、点Dから点Eまでの曲線部分の距離m(曲げ加工領域長さ)を表す。rは中心点Aから点Cまでの距離(曲率半径)を表す。π/4は、∠EADを示し、φ=45°を表す。]
すなわち、rは点C付近の曲線を円弧とみなした場合の曲率半径を示すものであり、本開示では、曲げ加工領域の側面視における内面側曲率半径を表す。曲率半径rが小さいほど曲げ加工領域の曲線部分の曲がりは急であり、曲率半径rが大きいほど曲げ加工領域の曲線部分の曲がりは緩やかになる。
巻鉄心は、従来公知の方法で作成することができる。
以下巻鉄心の作成方法の一例について、本開示において用いることができる、接合部を1か所以上且つ曲げ加工領域を1か所以上有する巻鉄心の場合について説明する。
まず、方向性電磁鋼板を準備する。
次に、必要に応じて上記方向性電磁鋼板を所望の長さに切断した後、前記方向性電磁鋼板上に予め割り当てた各コーナー部形成領域に少なくとも一か所を曲げ加工することにより、前記方向性電磁鋼板を、平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部において隣接する2つの平面部のなす角が90°である曲げ加工体を成形する。
曲げ加工の方法について図を参照して説明する。
図11は、巻鉄心の製造方法における曲げ加工方法の一例を示す模式図である。
加工機の構成は特に限定されるものではないが、例えば、図11に示されるように、通常、プレス加工のためのダイスとパンチとを有し、更に方向性電磁鋼板を固定するガイドなどを有している。方向性電磁鋼板は、搬送方向に搬送され、予め設定された位置で固定される。次いでパンチで予め設定されたクリアランス(c)およびストローク(s)を調整することにより、折れ曲がり角度φの曲げ加工領域を有する曲げ加工体が得られる。
曲げ加工領域の曲率半径rは、通常、ダイスとパンチ間の距離やダイスとパンチの形状を変更することにより調整することができる。
本開示の巻鉄心のBF推定方法は、少なくとも(1)関係式導出用巻鉄心準備工程、(2)関係式導出工程、(3)推定工程を有する。
以下、各工程について順に説明する。
(1)関係式導出用巻鉄心準備工程
関係式導出用巻鉄心準備工程は、同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、当該接合部が形成されている位置が同じであり、当該接合部のステップ数及びラップ長が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じであり、鉄心長l(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)が異なる、一群の関係式導出用巻鉄心を準備する工程である。
一群の関係式導出用巻鉄心は、各々鉄心長が異なるものとし、推定法を確立するためには、関係式の精度を高める観点から、鉄損劣化を及ぼす可能性があるため、同じグレードの素材で構成され、接合部の数、接合部の位置、接合部のステップ数及びラップ長、曲げ加工領域の数を各々同じにする必要がある。
関係式導出用巻鉄心は、後述する関係式を導出するために、少なくとも2つ準備する必要があり、各々の鉄心長が異なるものである必要がある。
一群の関係式導出用巻鉄心は、接合部が形成されている位置が同じであれば、当該接合部は、少なくとも当該巻鉄心の長辺側か短辺側にいずれか1箇所設けられていればよく、長辺側に2箇所、又は、短辺側と長辺側に各1箇所設けられていてもよく、3箇所以上設けられていてもよい。
一群の関係式導出用巻鉄心の接合部のステップ数は特に限定されないが、通常、3~20である。
一群の関係式導出用巻鉄心の接合部のラップ長は特に限定されないが、通常、4~150mmである。
一群の関係式導出用巻鉄心は、曲げ加工領域を少なくとも1か所有していればよく、上限は特に限定されないが、例えば、各コーナー部に1~4か所、巻鉄心全体で4~16か所有していてもよい。
なお、一群の関係式導出用巻鉄心の各厚さは同じであっても異なっていてもよい。
本開示において鉄心長(l)とは、側面視による巻鉄心の積層方向の中心点における周長であり、巻鉄心の最外周部周長と最内周部周長の平均値である。
図12は、巻鉄心の一実施形態を模式的に示す斜視図である。鉄心長(l)とは、具体的には、図12に示すユニコアの外側の点線で示す部分を最外周部周長lout、内側の点線で示す部分を最内周部周長lintとすれば、鉄心長は最外周部周長と最内周部周長の平均値(l=(lout+lint)/2)で表わされる。
本開示において、一群の関係式導出用巻鉄心の鉄心長に特に制限はなく、0.02m以上であってもよく、3.0m以下であってもよい。
(2)関係式導出工程
関係式導出工程は、前記素材鉄損と、一群の前記関係式導出用巻鉄心の各巻鉄心鉄損とを測定し、当該素材鉄損と当該各巻鉄心鉄損から、一群の当該関係式導出用巻鉄心の各BFを算出し、一群の当該関係式導出用巻鉄心の当該各BF及び当該各鉄心長に基づいて、当該BFと当該鉄心長との関係式を導出する工程である。
本開示の巻鉄心のBF推定方法においては、前記関係式が、下記式(1)で表されるものであってもよく、一群の前記関係式導出用巻鉄心の前記各BF及び前記各鉄心長に基づいて下記式(1)の係数A及び係数Bの値を算出し、当該係数A及び当該係数Bの値を下記式(1)に代入してもよい。
BF=(1/l)A+B・・・式(1)
[上記式中の文字の意味は以下の通りである。
BF:ビルディングファクタ
:巻鉄心の鉄心長(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)
A:係数
B:係数]
上記式(1)は具体的には以下の方法で導出することができる。
鉄心長がl(m)の任意の曲げ加工領域を有する巻鉄心について、断面積をS(m)、質量をm(kg)、曲げ加工領域の長さl(m)(巻鉄心寸法によらず一定)、巻鉄心の板幅をw(m)とする。
巻鉄心鉄損の中の巻鉄心の曲げ加工領域鉄損をWb(W/kg)、巻鉄心の曲げ加工領域以外の鋼板の鉄損をWs(W/kg)とすると巻鉄心鉄損W(l)(W)は下式(2)で表される。
Figure 0007009937000001
式(2)は単位質量当たりの巻鉄心鉄損をw(l)(W/kg)と置き換えれば、式(3)のように変形できる。
Figure 0007009937000002
BFは巻鉄心鉄損w(l)(W/kg)を素材鉄損Wm(W/kg)で除することで算出され、式(4)、及び式(5)のように変形できる。そして、式(5)を、式(6)に示す係数Aと係数Bに置き換えることにより、上記式(1)を導出できる。
Figure 0007009937000003
Figure 0007009937000004
Figure 0007009937000005
[上記式(5)~(6)中の文字の意味は以下の通りである。
BF:ビルディングファクタ
:巻鉄心の曲げ加工領域長さ
:巻鉄心の鉄心長(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)
Wb:巻鉄心の曲げ加工領域鉄損
Ws:巻鉄心の曲げ加工領域以外の鉄損(直線部(平面部)鉄損)
Wm:素材鉄損
A:係数(鉄損の劣化率)
B:係数(鉄心長が無限に大きくなり塑性歪がない状態の巻鉄心BF)]
巻鉄心の鉄損値は、従来公知の方法で求めることができ、例えば、JIS C 2550-1に記載のエプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法における励磁電流法により求めることができる。
Wsは巻鉄心の曲げ加工領域以外の鉄損値、すなわち直線部を積層した鉄損値であり、この鉄損は通常、励磁電流法で評価される。
一方、Wmは素材鉄損値であり、素材鉄損は、通常、Hコイル法又は励磁電流法により評価することができる。また、素材の試料は、通常、積層されず、鋼板1枚の状態で測定される。
そのため、WsとWmでは試料の積層枚数(複数枚の積層の場合と1枚の場合等)の違い及び励磁電流法又はHコイル法の違いによる影響が含まれ、一致しない場合があるため、それぞれWsとWmとで別表記としてもよい。
なお、Wbは、巻鉄心の曲げ加工領域鉄損値であるが、当該値を評価することは困難であり、実際的でない。
上記式(5)では、巻鉄心が曲げ加工領域を有することが、鉄損劣化の原因の大部分を占め、巻鉄心の直線部では、鉄損劣化をほとんど生じないものと仮定している。
したがって、上記式(1)は、鉄損劣化を及ぼす可能性のある、素材のグレード、巻鉄心の接合部の数、曲げ加工領域の数等が同じである一群の巻鉄心において用いることができる関係式である。
なお、巻鉄心の鉄損値は、励磁電流法による測定時の磁束密度(T)と周波数(Hz)によって変動する場合があるため、一群の関係式導出用巻鉄心の鉄損の測定は、磁束密度(T)と周波数(Hz)を統一して行ってもよい。
また、誤差を少なくする観点から、同じ磁束密度(T)及び周波数(Hz)で測定した一群の関係式導出用巻鉄心の各鉄損値から各BFを算出し、その後、当該各BFと各鉄心長から、係数A及び係数Bを算出してもよい。
(3)推定工程
推定工程は、前記関係式に、前記関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じである、BF未知巻鉄心の鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定する工程である。
上記関係式を用いるために、BF未知巻鉄心は、関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材で構成され、接合部の数が同じであり、曲げ加工領域の数が同じであればよい。これにより、関係式にBF未知巻鉄心の鉄心長を代入することにより、当該巻鉄心のBFを推定することができる。
BF未知巻鉄心の接合部が形成されている位置は、接合部の位置による鉄損値の変動を考慮しなくてもBFを推定することができるため、関係式導出用巻鉄心と同じであっても異なっていてもよいが、精度よくBFを推定する観点から同じであってもよい。
BF未知巻鉄心の接合部のステップ数は、関係式導出用巻鉄心と同じであっても異なっていてもよいが、精度よくBFを推定する観点から同じであってもよい。接合部のステップ数の変動により、巻鉄心の厚さが変動するが、本開示においては、厚さが異なる巻鉄心であってもBFを推定することができる。なお、本開示において用いることができるBF未知巻鉄心のステップ数は特に限定されないが、通常3~20である。通常用いられる範囲であれば、ステップ数は考慮しなくても、BFを推定することができる。
BF未知巻鉄心の接合部のラップ長は、関係式導出用巻鉄心と同じであっても異なっていてもよいが、精度よくBFを推定する観点から同じであってもよい。接合部のラップ長の変動により、巻鉄心の鉄心長が変動するが、本開示によれば、鉄心長が異なる巻鉄心のBFを推定することができる。なお、本開示において用いることができるBF未知巻鉄心のラップ長は特に限定されないが、通常4~150mmである。通常用いられる範囲であれば、ラップ長は考慮しなくても、BFを推定することができる。
上記関係式によれば、BF未知巻鉄心が上記条件を満たす限りは、当該鉄心長を測定すれば、容量、厚さ及び鉄心長が異なる一群のBF未知巻鉄心の各BFを簡易的に推定することができる。
そのため、上記関係式を導出しておくことにより、励磁電流法による評価をしなくても上記条件を満たす巻鉄心のBFを推定することができる。
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
(実験例1)
素材の方向性電磁鋼板は23ZDKH85材(板厚:0.23mm、鉄損W17/50(W/kg):0.85≦)を使用した。
素材鉄損は、単板(W100mm×L500mm)を採取して、Hコイル法により評価した。
素材鉄損W17/50は、0.753(W/kg)であった。なお、W17/50は、1.7T/50Hzのときの鉄損値である。
また、素材のB値は、1.93Tであった。なお、B値とは、エプスタイン試験により得られる磁場の強さHが800A/mの時の磁束密度(T)であり、方位集積度の指標となる値である。
次に、一群の関係式導出用巻鉄心として、図13及び図14に示す容量25KVA及び75KVAの焼鈍をしていないユニコアを製造した(図13及び図14に示す寸法の単位はmm)。鉄心接合部はともにステップ数が4でラップ長が36mm設計とした。鉄心長はそれぞれ0.7mおよび1.1mであった。
そして一群の関係式導出用巻鉄心の鉄損(W/kg)をJIS 2550-1に記載されている励磁電流法により測定した。励磁条件は表1に示す。
その後、素材鉄損値と各巻鉄心鉄損値から関係式導出用巻鉄心の各BFを評価した。図15に鉄心長とBFとの関係を示したグラフを示す。
図15(a)は、実験例で用いた上記一群の関係式導出用巻鉄心の鉄心長と50Hzにおける各磁束密度でのBFとの関係を示すグラフである。
図15(b)は、実験例で用いた上記一群の関係式導出用巻鉄心の鉄心長と60Hzにおける各磁束密度でのBFとの関係を示すグラフである。
図15に示すように、BFは鉄心長の増加に伴い小さくなっていくことがわかる。
上記一群の関係式導出用巻鉄心としての容量25KVA及び75KVAのユニコアの各鉄心長と、表1に記載の励磁条件で測定した各巻鉄心鉄損から算出した各BFとを、上記式(1)に代入して連立方程式を導出し、当該連立方程式から各励磁条件における係数A及び係数Bをそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
Figure 0007009937000006
上記式(1)に周波数50Hz、磁束密度1.7Tの励磁条件で測定した巻鉄心鉄損から算出した係数A及び係数Bを代入し、関係式(1’)を導出した。
BF=0.15(1/l)+0.92・・・式(1’)
そして、0.5~2.0mまでの任意の鉄心長(l)を上記式(1’)代入して、各巻鉄心のBFを推定した。結果を表2に示す。
[関係式の精度検証]
実施例1で推定した各BFを検証するため、鉄心長が0.5~2.0mまでの鉄心長の異なる種々のユニコアを上記一群の関係式導出用巻鉄心と同様の方法で製造し、各ユニコアの各BFを評価した。なお、製造した鉄心長の異なる種々のユニコアは、上記一群の関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材を用い、接合部の数が同じであり、当該接合部が形成されている位置が同じであり、当該接合部のステップ数及びラップ長が同じであり、曲げ加工領域の数が同じものとした。
表2に各ユニコアの各鉄心長における各BFの実測値と、推定式から求めた各BFとを比較した。
表2に示すように、各BFの推定値と実測値とは、ほぼ一致しているため、精度よく推定できていることがわかる。
Figure 0007009937000007
1、1a 方向性電磁鋼板
2 積層体
3 コーナー部
4、4a、4b 平面部(直線部)
5、5a、5b、5c 曲げ加工領域(屈曲部)
6 接合部
out 最外周部周長
int 最内周部周長
10 巻鉄心本体(巻鉄心)

Claims (3)

  1. 方向性電磁鋼板を素材として構成される巻鉄心の、鉄損劣化(巻鉄心鉄損(W/kg)/素材鉄損(W/kg))の指標として用いるビルディングファクタ(BF)を推定する方法であって、
    前記巻鉄心は、側面視において略矩形状の巻鉄心本体を備え、
    前記巻鉄心本体は、長手方向に平面部とコーナー部とが交互に連続し、当該各コーナー部において隣接する2つの平面部のなす角が90°である前記方向性電磁鋼板が板厚方向に積み重ねられた、側面視において略矩形状の積層構造を有し、且つ、1周回中に少なくとも1か所以上の接合部を有し、
    前記各コーナー部は、前記方向性電磁鋼板の側面視において、曲線状の形状を有する曲げ加工領域を1か所以上有しており、且つ、一つのコーナー部に存在する曲げ加工領域それぞれの曲げ角度の合計が90°であり、
    同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、当該接合部が形成されている位置が同じであり、当該接合部のステップ数及びラップ長が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じであり、当該曲げ加工領域の長さl が一定であり、鉄心長l(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)が異なる、一群の関係式導出用巻鉄心を準備する、関係式導出用巻鉄心準備工程と、
    前記素材鉄損と、一群の前記関係式導出用巻鉄心の各巻鉄心鉄損とを測定し、当該素材鉄損と当該各巻鉄心鉄損から、一群の当該関係式導出用巻鉄心の各BFを算出し、一群の当該関係式導出用巻鉄心の当該各BF及び当該各鉄心長に基づいて、当該BFと当該鉄心長との関係式を導出する、関係式導出工程と、
    前記関係式に、前記関係式導出用巻鉄心と同じグレードの素材で構成され、前記接合部の数が同じであり、前記曲げ加工領域の数が同じである、BF未知巻鉄心の鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定する、推定工程と、を有することを特徴とする、巻鉄心のBF推定方法。
  2. 前記関係式が、下記式(1)で表され、
    前記関係式導出工程において、一群の前記関係式導出用巻鉄心の前記各BF及び前記各鉄心長に基づいて下記式(1)の係数A及び係数Bの値を算出し、当該係数A及び当該係数Bの値を下記式(1)に代入し、
    前記推定工程において、下記式(1)に、前記BF未知巻鉄心の鉄心長(l)を代入して得た値を、当該巻鉄心のBFと推定する、請求項1に記載の巻鉄心のBF推定方法。
    BF=(1/l)A+B・・・式(1)
    [上記式中の文字の意味は以下の通りである。
    BF:ビルディングファクタ
    :巻鉄心の鉄心長(巻鉄心の最外周部周長loutと最内周部周長lintの平均値)
    A:係数
    B:係数]
  3. 前記BF未知巻鉄心の接合部のステップ数及びラップ長が、前記関係式導出用巻鉄心の接合部のステップ数及びラップ長と同じである、請求項1又は2に記載の巻鉄心のBF推定方法。
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