JP7006877B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
本発明は、低温定着性、印刷物の保存性、及び高温高湿下での画像濃度の安定性の全てに優れる静電荷電現像用トナーに関する。
前記非晶質複合樹脂(A)が、芳香族ジオールを含むアルコール成分と炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位と、を含み、且つ、
前記結晶性ポリエステル樹脂(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は、非晶質複合樹脂(A)及び結晶性ポリエステル樹脂(C)を含む結着樹脂と、離型剤とを含有する。
非晶質複合樹脂(A)が、芳香族ジオールを含むアルコール成分と炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位と、を含む。
更に、結晶性ポリエステル樹脂(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
以上の構成を有することで、低温定着性、印刷物の保存性、及び高温高湿下での画像濃度の安定性(以下、単に「画像濃度の安定性」ともいう)の全てに優れる静電荷電現像用トナーが得られる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
また、非晶質複合樹脂(A)が疎水的なポリエステル樹脂セグメントを有することにより、定着後に結晶性ポリエステル樹脂(C)の再結晶化が促進され、ガラス転移温度を高めることができるため、印刷物の保存性を向上させることができる。
更に、非晶質複合樹脂(A)が疎水的なポリエステル樹脂セグメントを有するため、結晶性ポリエステル樹脂(C)及び離型剤の分散性を向上させることができ、トナー表面が可塑化されずに高い硬度を維持することができる。その結果、高温高湿下でもトナーの劣化が生じ難く、帯電性が維持され、高温高湿下で印刷した際の画像濃度の安定性を向上させることができると考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶質であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶質樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その例示の化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
明細書中、「結着樹脂」とは、非晶質複合樹脂(A)及び結晶性ポリエステル系樹脂(C)を含むトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
非晶質複合樹脂(A) (以下、「複合樹脂(A)」ともいう)は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性に優れるトナーを得る観点から、芳香族ジオールを含むアルコール成分と炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位とを含む。
ポリエステル樹脂セグメントは、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性に優れるトナーを得る観点から、芳香族ジオールを含むアルコール成分と炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のポリオキシプロピレン付加物、ビスフェノールAのポリオキシエチレン付加物が挙げられる。
芳香族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
直鎖ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは10以上14以下である。
炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸等の飽和ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、セバシン酸、ドデカン二酸、又はテトラデカン二酸が好ましく、印刷物の保存性をより向上させる観点から、セバシン酸、又はドデカン二酸がより好ましい。
炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸の量は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
他のジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、炭素数7以下の直鎖ジカルボン酸、炭素数15以上の直鎖ジカルボン酸、分岐ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ビニル系樹脂セグメントは、低温定着性、印刷物の保存性、及び高温高湿下での画像濃度の安定性に優れるトナーを得る観点から、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であり、好ましくは、スチレン系化合物及び炭素数3以上22以下の脂肪族炭化水素基を有するビニル系モノマーを含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
スチレン系化合物の量は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、ビニル系樹脂セグメントの原料モノマー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
脂肪族炭化水素基を有するビニル系モノマーは、好ましくは(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの場合、炭化水素基はエステルのアルコール側残基である。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル(以下、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルともいう)、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニルが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
ここで、「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルを示す。また、アルキル部位について「(イソ)」とは、ノルマルアルキル又はイソアルキルを意味する。
複合樹脂(A)は、ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントを連結するため、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
「両反応性モノマー由来の構造単位」とは、両反応性モノマーの官能基、ビニル部位が反応した単位を意味する。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル系モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有するビニル系モノマーが好ましく、カルボキシ基を有するビニル系モノマーがより好ましい。
両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、又はメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは3モル部以上、更に好ましくは5モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは20モル部以下、更に好ましくは15モル部以下である。
ビニル系樹脂セグメントの量は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、複合樹脂(A)中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、複合樹脂(A)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
複合樹脂(A)中のポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントと、両反応性モノマー由来の構成単位の合計量は、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
複合樹脂(A)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは8mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは23mgKOH/g以下、更に好ましくは17mgKOH/g以下である。
なお、複合樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらのうちいずれか樹脂の酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度の値が前述の範囲内であることが好ましい。
複合樹脂(A)の製造方法は、例えば、ポリエステル樹脂セグメントの原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合をすること、及びビニル系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合することとを含み、例えば、以下の(i)~(iii)の方法が挙げられる。
(i)アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合の後に、ビニル系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合する方法
(ii)ビニル系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合の後に、アルコール成分とカルボン酸成分による重縮合する方法
(iii)アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合とビニル系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合とを並行して行う方法
上記(i)~(iii)の方法の重縮合及び付加重合は、いずれも、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂は、上記(i)又は(ii)の方法により製造することが、重縮合反応の反応温度の自由度が高い点から好ましく、上記(i)がより好ましい。
重縮合は、例えば、エステル化触媒等の存在下、公知の方法により行うことができ、具体的には実施例に記載の方法に従って行うことができる。
付加重合は、例えば、ラジカル重合開始剤等の存在下、公知の方法により行うことができ、具体的には実施例に記載の方法に従って行うことができる。
トナーは、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、好ましくは、結着樹脂として、非晶質ポリエステル系樹脂(B)(以下、「ポリエステル系樹脂(B)」ともいう)を含む。
ポリエステル系樹脂(B)としては、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル系樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂又はそのウレタン変性物が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは上述の式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、そして、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
以上の中でも、ポリエステル系樹脂(B)は、好ましくは芳香族ジオールを含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物又はそのウレタン変性物を含み、好ましくは芳香族ジオールを含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物を含む。
ポリエステル系樹脂(B)中、芳香族ジオールを含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物又はそのウレタン変性物の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。
ポリエステル系樹脂(B)の酸価は、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは7mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
なお、ポリエステル系樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
トナーは、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性に優れるトナーを得る観点から、結晶性ポリエステル樹脂(C)を含有する。
結晶性ポリエステル樹脂(C)は、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である。
脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは4以上6以下である。
炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール等のα,ω-アルカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,8-デカンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールが更に好ましい。
これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の軟化点は、印刷物の保存性及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下である。
トナーは、低温定着性、印刷物の保存性、及び画像濃度の安定性に優れるトナーを得る観点から、離型剤を含有する。離型剤としては、ワックスが好ましい。
ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、トナーの低温定着性、印刷物の保存性及び画像濃度の安定性をより向上させる観点から、炭化水素ワックス、又はエステルワックスが好ましく、エステルワックスがより好ましい。
なお、離型剤を2種以上組み合わせて使用する場合は、それぞれの離型剤の融点が、前述の範囲内であることが好ましい。離型剤の融点は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
粉砕トナーである場合、トナーの製造方法は、例えば、下記工程1及び工程2を含む。
工程1:複合樹脂(A)、結晶性ポリエステル系樹脂(C)、及び離型剤を含むトナー原料を溶融混練する工程
工程2:工程1で得られた溶融混合物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
溶融混練の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
工程1の溶融混練には、密閉式ニーダー、一軸押出機、又は二軸押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。結晶を溶融混合する観点から、高温条件に設定することのできる二軸押出機が好ましい。
工程1で得られた溶融混合物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程2に供する。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックスが挙げられる。微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミルが挙げられる。
工程2の分級に用いられる分級機としては、例えば、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機が挙げられる。
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
〔樹脂の酸価、水酸基価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)吸熱の最高ピーク温度
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間保持させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。なお、結晶性ポリエステル樹脂(C)の場合には、上記方法で得られる吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次の通り測定する。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:上記の分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
製造例A1~A8(非晶質複合樹脂A-1~A-8)
表1に示すポリエステル樹脂セグメントの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、160℃まで昇温した。そこに、ビニル系樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤を混合したものを滴下し、重合を行った。その後、エステル化触媒を添加し、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後、220℃まで昇温し、8.0kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、複合樹脂A-1~A-8を得た。
*1 BPA-POはビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物を意味する。
BPA-EOはビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2)付加物を意味する。
*2 原料モノマー(P)のアルコール成分を100モルとしたときの、原料モノマー(P)及び両反応性モノマーを構成する各モノマーのモル比を意味する。
*3 原料モノマー(V)の総量中における、原料モノマー(V)を構成する各モノマーの含有量(質量%)を意味する。
*4 原料モノマー(V)の総量を100質量部としたときの、ラジカル重合開始剤の添加量(質量部)を意味する。
*5 原料モノマー(P)の総量を100質量部としたときの、エステル化触媒の添加量(質量部)を意味する。
表2に示すトリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマーとエステル化触媒とを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、230℃で7時間重縮合させた。200℃まで降温し、200℃にてトリメリット酸無水物を添加した後、210℃に昇温し、重縮合反応を行い、軟化点が表2に示す軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂B-1を得た。
表3に示すポリエステル樹脂の原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、エステル化触媒を添加し、8.0kPaにて表3に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C-1~C-6を得た。
実施例1~11及び比較例1~6
表4に示す比率の結着樹脂及び離型剤としてワックスW-1〔「カルナウバワックス C1」(株式会社加藤洋行製、融点:80℃)〕、並びに着色剤「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)5質量部及び荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット株式会社製)1質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は90℃であり、混練物の温度は140℃、混練物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を140℃から50℃まで1.5時間で冷却し、50℃で、冷却ローラーで圧延冷却した後、45℃で4時間静置後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z 1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。なお、印刷に用いた紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。
テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。結果を表4に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。最低定着温度は、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。
トナーを製造後、そのまま、温度25℃、相対湿度50%の条件下で3日間トナーを保管した。保管後のトナーを用いて下記試験を行った。
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。前記複写機の定着機をオフラインで、140℃、20mm/secで100枚の定着を行った。なお、印刷に用いた紙には「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。
印刷物を重ね、さらにその上に2kgの重りを載せ、50℃、相対湿度50%の環境下で12時間放置した。放置の間、4時間毎に印刷物同士の融着の有無を確認し、以下の評価基準に従って、印刷物の保存性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:印刷後、12時間放置しても融着しない。
B:印刷後、8時間放置で融着する。
C:印刷後、4時間放置で融着する。
プリンター「MICROLINE 3010」(株式会社沖データ製、定着:接触定着方式、現像:非磁性一成分現像方式)にトナーを実装し、35℃、85%の高温高湿下で500枚の画像を得た。50枚目と500枚目の画像を透過型マクベス濃度計「TR-927」(グレタグマクベス社製)を用いて画像濃度を測定し、画像濃度の比の値(500枚目の画像濃度の値/50枚目の画像濃度)から、高温高湿下での画像濃度の安定性を評価した。結果を表4に示す。比の値が大きいほど、高温高湿下での画像濃度の安定性に優れ、比の値は、0.75以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.95以上が更に好ましい。
Claims (7)
- 非晶質複合樹脂(A)及び結晶性ポリエステル樹脂(C)を含む結着樹脂と、離型剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記非晶質複合樹脂(A)が、芳香族ジオールを含むアルコール成分と炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位と、を含み、
前記非晶質複合樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントを構成するカルボン酸成分中、炭素数8以上14以下の直鎖ジカルボン酸の量が、2モル%以上30モル%以下であり、芳香族ジカルボン酸の量が、70モル%以上98モル%以下であり、且つ、
前記結晶性ポリエステル樹脂(C)が、炭素数4以上8以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分との重縮合物である、静電荷像現像用トナー。 - 前記結晶性ポリエステル樹脂(C)を構成するカルボン酸成分中、炭素数4以上6以下の脂肪族ジカルボン酸の量が、80モル%以上である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記非晶質複合樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントを構成する芳香族ジオールが、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記非晶質複合樹脂(A)のガラス転移温度が50℃以上である、請求項1~3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記非晶質複合樹脂(A)の含有量が、前記結着樹脂中、3質量%以上60質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂(C)の含有量が、前記結着樹脂中、2質量%以上30質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 更に非晶質ポリエステル系樹脂(B)を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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