以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、ディスポーザブル型穿刺器具に係る本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、理解を容易とするために、先ず、ディスポーザブル型穿刺器具の基本的構造および作動について説明し、その後、本願発明の一つの特徴的な構成である、係止リングの不用意な回動を規制する規制手段を詳述する。それ故、基本的構造の説明欄で参照する図1~20では、規制手段に関連する細部構造を省略してあり、かかる細部構造については、図21~25を参照しつつ説明することとする。
[i]第1の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具の基本的構造および作動
先ず、図1には、本発明の第1の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具10の平面図が示されており、その分解斜視図、縦断面図及び横断面図が、図2~5に示されている。なお、図1,3,4,5は、何れも、市場でユーザーに商品として提供される状態(標準状態)での穿刺器具10を示している。かかる穿刺器具10は、ハウジング12に対して、ランセット14とばね部材としての圧縮コイルばね16が収容されており、ランセット14から針キャップ18を外してハウジング12の操作片20を押操作することで、ランセット14がハウジング12から突出して穿刺作動するようになっている。なお、以下の説明中、特に断りのない限り、中心軸方向とはハウジング12及びランセット14の中心軸方向(図1中の左右方向)をいい、ランセット14の突出方向となる図1中の左方向を前方または先端側、右方向を後方または基端側という。
より詳細には、ハウジング12は、何れも樹脂成形品からなるハウジング本体22とハウジング口体24によって構成されている。ハウジング本体22は、深底の略有底円筒形状とされており、その先端側開口部分に対して略円筒形状のハウジング口体24が固定的に組み付けられている。
ハウジング本体22の底壁には、内面中央から内方に突出するばね座26が設けられている。また、ハウジング本体22の筒壁には、内周面上に突出して軸方向に直線的に延びる複数本の案内突条28が設けられている。そして、これら複数本の案内突条28により、ハウジング本体22の筒壁内面において、軸直角方向で対向位置する一対のガイドレール30,30が形成されている。
また、ハウジング本体22の筒壁には、底壁側部分よりも僅かに拡径された開口側部分に位置して、操作部材としての操作片20が形成されている。この操作片20は、ハウジング本体22の周壁に形成された貫通窓34内に配されて、ハウジング本体22に対して部分的に連結されている。そして、ハウジング本体22の外側から操作片20を手指で押すことにより、かかる連結部の弾性変形に基づいて、操作片20がハウジング本体22の内方に向けて変位されるようになっている。
さらに、ハウジング本体22の筒壁の開口周縁部には、外周面上に突出して周方向に延びる係合リブ36が一体形成されている。一方、ハウジング口体24の軸方向後端側には、外周を周方向に延びる大径の係合リング38が一体形成されている。なお、係合リング38は、ハウジング口体24の外周面上で周上の複数箇所に突設された連結脚部40によって、ハウジング口体24に連結支持されている。
そして、ハウジング本体22の開口部分にハウジング口体24が組み合わされ、ハウジング口体24の係合リング38に対してハウジング本体22の係合リブ36が係合されることで、ハウジング本体22にハウジング口体24が組み付けられている。なお、かかる組付状態下では、係合リブ36の係合リング38に対する係合作用で、ハウジング本体22に対してハウジング口体24が軸方向に位置決め固定されていると共に、係合リブ36の連結脚部40への係合作用でハウジング本体22に対してハウジング口体24が周方向でも位置決め固定されている。
また、ハウジング口体24は、係合リング38の内周側で中心軸上を後方に向かって筒状に延び出しており、それによって、ハウジング本体22内に入り込む支持筒部42が形成されている。また、ハウジング口体24の外周面上に突設された連結脚部40は、支持筒部42の外周面上にまで軸方向に所定長さで延び出して形成されている。更にまた、ハウジング口体24の内周面には、前方側の開口部近くに位置する、一対のキャップ係止用突起47,47が、軸直角方向で対向位置して突出形成されている。
さらに、ハウジング口体24の内周面には、一対の第一案内溝44,44と、一対の第二案内溝46,46とが、それぞれ径方向で対向位置して軸方向に平行に延びて形成されている。これら第一案内溝44,44と第二案内溝46,46は、何れも、ハウジング口体24の軸方向中間部分から支持筒部42の内周面にまで延びており、支持筒部42の後方端部に開口されている。
特に本実施形態では、一対の第一案内溝44,44が対向する径方向と、一対の第二案内溝46,46が対向する径方向とが、互いに直交している。また、第一案内溝44は、第二案内溝46に比して、その周方向幅寸法と径方向深さ寸法とが、何れも大きくされており、支持筒部42では、第一案内溝44が支持筒部42の周壁を貫通してスリット形状とされている。
そして、このようにハウジング本体22とハウジング口体24から構成されたハウジング12には、その内部空間に対してランセット14が収容状態で組み込まれている。なお、ハウジング口体24は、穿刺後の血液溜まりを目視可能とするために透明または半透明とすることが好適である。
かかるランセット14は、インサート成形品であって、ロッド形状を有する合成樹脂製のランセットハブ50に対して、その中心軸上に穿刺体としての穿刺針52が埋設固着されている。そして、ランセットハブ50の先端部中央から前方に向かって穿刺針52の先端が突設されている。
また、ランセットハブ50の後端部には、周方向に延びる環状支持突部を備えたばね座54が形成されている。更に、ランセットハブ50の後端部分の外周面上には、軸直角方向両側に突出する一対のガイド突起56,56が、一体形成されている。一方、ランセットハブ50の前端部分の外周面上には、軸直角方向両側に突出する一対の再使用防止突部58,58が一体形成されている。更に、かかる一対の再使用防止突部58,58よりも所定寸法だけ軸方向後方に位置して、ランセットハブ50の外周面上で軸直角方向両側に突出する一対の係止突部60,60が一体形成されている。
ここにおいて、一対の再使用防止突部58,58の突出方向と、一対の係止突部60,60の突出方向とは、互いに異ならされている。特に本実施形態では、一対の再使用防止突部58,58の突出方向と、一対の係止突部60,60の突出方向とが、互いに中心軸回りで90度異ならされており、また、一対の再使用防止突部58,58の突出方向が、一対のガイド突起56,56の突出方向と、中心軸回りで同じ方向に設定されている。
さらに、ランセットハブ50の先端側には、針キャップ18が設けられている。この針キャップ18は、ロッド形状とされており、穿刺針52が突設されたランセットハブ50の先端から同一中心軸上に延び出して一体成形されている。ランセットハブ50と針キャップ18との境界部分は括れ状に外径寸法が小さくされたねじ切部64とされており、ランセットハブ50に対して針キャップ18を中心軸回りに捩じってねじ切部64で離脱させることで、針キャップ18を手作業でランセットハブ50から取り外すことが出来るようになっている。そして、針キャップ18をランセットハブ50から取り外すことで、針キャップ18で覆われていた穿刺針52の先端部を露出させ得るようになっている。
また、図6に示されているように、針キャップ18の先端部分は、扁平な摘み部66とされており、この摘み部66の後端部分には、幅方向両側部分において、それぞれ、突起68と舌片状の弾性爪部70とが軸方向で対向位置して突出形成されている。
そして、かかるランセット14は、ハウジング本体22に対してランセットハブ50の後端側が差し入れられ、ハウジング口体24に対して針キャップ18が挿通された状態で、ハウジング12の中心軸上に配設されて組み付けられている。また、かかるランセット14のハウジング12への組み付けに際しては、圧縮コイルばね16と係止リング72とがハウジング12内に組み付けられて装着されている。
すなわち、圧縮コイルばね16は、ハウジング本体22の底部に収容されて中心軸上に配されており、その後方端部がハウジング本体22のばね座26に嵌められて位置決めされていると共に、その前方端部がランセットハブ50のばね座54に嵌め合わされている。これにより、かかる圧縮コイルばね16が、ハウジング本体22の底部とランセットハブ50の後端部との軸方向対向面間に介装されており、ランセットハブ50が軸方向後方(ハウジング本体22の奥方)に変位されることで圧縮変形させられ、圧縮変形に伴う付勢力がランセットハブ50をハウジング本体22から前方に押し出す方向に及ぼされるようになっている。
一方、係止リング72は、図6~9にも示されているように、略円形のリング形状を有する樹脂成形品であり、ハウジング口体24の支持筒部42に外挿されて回動可能に装着されている。なお、係止リング72には、前方に向かって突出する一対の当接脚部74,74が一体形成されており、かかる当接脚部74が、支持筒部42において周上で隣り合う連結脚部40,40間に差し入れられている。そして、係止リング72が回動した際、当接脚部74が連結脚部40に対して周方向で当接することにより、支持筒部42上での係止リング72の周方向の回動許容範囲が45度よりも小さく設定されている。
また、係止リング72には、後方端部に位置して内フランジ状の係合部75が一体形成されており、この係合部75の内周面には、一対の第一通過溝76,76と、一対の第二通過溝78,78とが、それぞれ径方向で対向位置して軸方向に平行に延びて形成されている。これら第一通過溝76,76と第二通過溝78,78は、何れも、係合部75の軸方向全長に亘って直線的に延びている。
更にまた、係合部75の内径寸法は、ランセットハブ50及び針キャップ18の外径寸法よりも僅かに大きくされており、それらランセットハブ50及び針キャップ18に対して係止リング72が外挿装着されている。また、係合部75の第一通過溝76は、ランセットハブ50の再使用防止突部58よりも僅かに大きな断面形状とされており、かかる再使用防止突部58が第一通過溝76内を軸方向に移動可能とされている。また一方、係合部75の第二通過溝78は、ランセットハブ50の係止突部60よりも僅かに大きな断面形状とされており、かかる係止突部60が第二通過溝78内を軸方向に移動可能とされている。
また、係止リング72では、一対の第一通過溝76,76が対向する径方向と一対の第二通過溝78,78が対向する径方向との為す角度(交角)が、ランセットハブ50において一対の再使用防止突部58,58が対向する径方向と一対の係止突部60,60が対向する径方向との為す角度(交角)と異ならされている。特に本実施形態では、一対の第一通過溝76,76が対向する径方向と一対の第二通過溝78,78が対向する径方向とが、相互に略60度で交差するようにされている。
これにより、図8,9からも明らかなように、係止リング72に対してランセットハブ50が挿通された状態下で、ランセットハブ50の一対の再使用防止突部58,58が係止リング72の一対の第一通過溝76,76に位置合わせされて軸方向への通過が許容された周方向の相対位置では、ランセットハブ50の一対の係止突部60,60が係止リング72の一対の第二通過溝78,78に対して位置ずれ状態にあり、係止突部60,60が係止リング72に係止されて軸方向前方への移動が阻止されるようになっている。一方、ランセットハブ50の一対の係止突部60,60が係止リング72の一対の第二通過溝78,78に位置合わせされて軸方向への通過が許容された状態下では、ランセットハブ50の一対の再使用防止突部58,58が係止リング72の一対の第一通過溝76,76に対して位置ずれ状態にあり、再使用防止突部58,58が係止リング72に係止されて係止リング72に対するランセットハブ50の軸方向後方への移動が阻止されるようになっている。
なお、ランセットハブ50における一対の再使用防止突部58,58と一対の係止突部60,60とは、中心軸方向で係止リング72における係合部75の厚さ寸法より僅かに大きな距離だけ離れている。これにより、係合部75の軸方向前方に再使用防止突部58,58が外れて位置し且つ係合部75の軸方向後方に係止突部60,60が外れて位置した状態下、ランセットハブ50に外挿された係止リング72をランセットハブ50に対して回動させることができるようになっている。そして、この係止リング72の回動により、一対の再使用防止突部58,58と一対の係止突部60,60との何れか一方を、選択的に、第一通過溝76,76または第二通過溝78,78に対して位置合わせして、軸方向への通過変位を許容し得るようになっている。
また、係止リング72の外周面には、一対の押圧片80,80が、径方向両側に突出して一体形成されている。この押圧片80は、係止リング72の軸方向視において不等辺直角三角形状を有しており、その斜辺に相当する面が、係止リング72の中心軸回りで傾斜した押圧傾斜面82とされている。そして、図3及び図5に示されているように、これらの押圧片80,80は、係止リング72を支持筒部42に装着した状態下で、ハウジング本体22の操作片20の内方に位置するように位置合わせされている。
このようにして、圧縮コイルばね16及び係止リング72と共にランセット14をハウジング12に組み込むことによって、本実施形態の穿刺器具10が構成されている。なお、ハウジング12に組み込まれたランセット14は、ランセットハブ50に突設されたガイド突起56,56が、ランセット14を突出方向に案内する案内機構としてのガイドレール30,30に差し入れられており、ランセット14のハウジング12に対する周方向変位である中心軸回りの回転を阻止された状態で軸方向の移動が許容されている。
また、ユーザーに提供される商品としての標準状態では、図4に示されているとおり、ハウジング口体24のキャップ係止用突起47,47が、それぞれ、針キャップ18に形成された突起68と弾性爪部70の間で軸方向に挟まれて係止されており、針キャップ18の摘み部66がハウジング口体24から外方に所定長さで突出する状態で、ランセット14がハウジング12に対して軸方向で位置決めされている。
かかる標準状態では、図3に示されているとおり、ランセット14は、圧縮コイルばね16を圧縮変形させて、ランセットハブ50の係止突部60,60が係止リング72よりも更に後方に位置するまで、ハウジング本体22の奥方まで押し込まれている。そして、かかる状態下、図4に示されているように、ランセットハブ50の再使用防止突部58,58は、係止リング72の第一通過溝76,76と、ハウジング口体24の支持筒部42の第一案内溝44,44との間に跨がって位置されている。即ち、係止リング72の第一通過溝76とハウジング口体24の第一案内溝44とが、再使用防止突部58で係合されることによって、係止リング72がハウジング口体24に対して周方向で相対回転不能に係合されて誤操作防止機構が構成されている。
また、この位置決め状態下、図5に示されているように、係止リング72の押圧片80の押圧傾斜面82が、操作片20の内方に対向位置している。そして、操作片20を手指でハウジング12内に押し込むことで、操作片20の周方向一方の端部が押圧傾斜面82に押し付けられ、押圧傾斜面82の傾斜角度に応じて発揮される分力作用に基づいて、操作片20の押圧力が係止リング72に対して回転力に変換されて及ぼされるようになっている。尤も、図3,4に示された標準状態では、前述のとおり係止リング72のハウジング12に対する回転が阻止されていることから、操作片20を誤って押圧しても、穿刺器具10が予期せずに穿刺作動することはない。
[穿刺準備状態]
次に、上述の如き標準状態で提供された穿刺器具10を用いて穿刺作動させる操作を説明するが、それには先ず、図3,4に示された標準状態の穿刺器具10において、そのハウジング12を片手で把持し、他方の手で針キャップ18を摘まみ、針キャップ18を回転させる。これにより、針キャップ18の突起68と弾性爪部70を、ハウジング口体24のキャップ係止用突起47から離脱させると共に、ランセットハブ50から針キャップ18をねじ切部64でねじ切って、針キャップ18をハウジング口体24から抜き取る。このような操作により、穿刺器具10が、標準状態から、図10,11に示されている穿刺準備状態とされる。
この穿刺準備状態とされた穿刺器具10では、針キャップ18のハウジング口体24への軸方向の位置決めが解除されたことで、ランセットハブ50が、圧縮コイルばね16の付勢力で軸方向前方に移動させられる。そして、ランセットハブ50の係止突部60が、係止リング72の係合部75の後端面に当接して軸方向前方への変位が阻止されることとなる。この係止突部60の係止リング72への係止作用により、ランセット14が穿刺準備位置に保持されることとなる。
また、この位置までランセットハブ50が前方に移動されることで、ランセットハブ50の再使用防止突部58,58は、係止リング72の第一通過溝76,76への係合位置から前方に外れて、ハウジング口体24の第一案内溝44,44だけに係合して位置させられる。
このように、穿刺準備状態では、ランセットハブ50の再使用防止突部58,58と係止突部60,60が、係止リング72の第一通過溝76,76と第二通過溝78,78に対して、軸方向前方及び後方にそれぞれ外れて非係合状態とされていることにより、ハウジング12内において係止リング72の回転が許容されている。
[穿刺作動状態]
それ故、穿刺準備状態から穿刺作動させて穿刺作動状態とするには、図12に示されているように、穿刺準備状態にある穿刺器具10を把持して操作片20を手指で押し込めば良い。図12中に二点鎖線で示すように操作片20を押し込んで係止リング72の押圧傾斜面82に押し付けることで、係止リング72が中心軸回りでハウジング12及びランセット14に対して回転する。そして、図13,14に示されているように、係止リング72の後端面に当接されていたランセットハブ50の係止突部60,60に対して、係止リング72の第二通過溝78,78が位置合わせされると、係止突部60,60の係止リング72による軸方向の変位阻止力が解除され、係止突部60,60が係止リング72の第二通過溝78,78を通って軸方向前方への変位が許容される。
その結果、図15,16に示されているように、ランセット14が圧縮コイルばね16の付勢力に基づいてハウジング12内を軸方向前方に勢い良く移動する。そして、ランセット14のガイド突起56,56が係止リング72の後端面に当接するまでランセット14が軸方向前方に移動することで、ランセット14におけるガイド突起56,56より先端側が係止リング72を貫通するとともに、ランセット14の先端の穿刺針52が、ハウジング口体24の先端開口部から外方に所定長さで突出して、穿刺作動が実現されるのである。
[穿刺後]
なお、上述の穿刺作動に際しては、圧縮コイルばね16の付勢力によって圧縮コイルばね16の自由長を超えてランセット14が軸方向前方に移動する。その際、圧縮コイルばね16の軸方向両端部は、ハウジング本体22の底部とランセット14の後端部とにそれぞれ固着されていることから、穿刺針52がハウジング口体24から突出した穿刺時において、ランセット14に対して圧縮コイルばね16の復元力がハウジング12内に引き戻す方向に及ぼされる。
その結果、ハウジング口体24から穿刺針52が突出する穿刺作動が瞬間的に行われ、穿刺後には、図17,18に示されているように、速やかにランセット14がハウジング12内に引き戻されて穿刺針52の針先がハウジング口体24内に収納されることとなる。
[再使用防止]
また、上述の如き穿刺後には、図17,18に示されているようにランセット14が、自由長とされた圧縮コイルばね16で位置決めされた軸方向位置に保持されることとなる。また、操作片20で回動された係止リング72も、図13,14に示されている如き回動後の位置のままとされる。即ち、穿刺後には係止リング72に回転力が及ぼされずに係止解除状態とされた回動位置に保たれていることから、ランセット14がハウジング12の奥方に押し込まれても、係止突部60は第二通過溝78内を移動するだけであり、係止突部60が係止リング72に対して係止されない。それ故、穿刺後に、たとえ操作片20を操作してもランセット14が軸方向前方に突出する穿刺作動は再現されない。
加えて、穿刺後に、ハウジング12の前方開口部から線材等を差し入れてランセット14をハウジング12の奥方に押し込むことで強制的に再使用を試みた場合でも、図13,14に示されているように、ランセット14における再使用防止突部58,58と係止突部60,60との周方向の相対位置が、係止リング72における第一通過溝76,76と第二通過溝78,78との周方向の相対位置に比して、異ならされていることから、再使用がより確実に防止され得る。
すなわち、ハウジング12の奥方にランセット14を強制的に押し込むに際して、たとえランセット14の係止突部60,60を第二通過溝78,78に対して周方向で位置合わせすることが出来て、係止突部60,60を係止リング72より奥方まで移動させ得たとしても、その時点で、既に、再使用防止突部58,58が第一通過溝76,76に対して位置ずれしている。それ故、図19,20に示されているように、そこから更にランセット14を押し込むと、再使用防止突部58,58が係止リング72の係合部75の前端面に当接して、係止リング72もランセット14と一緒にハウジング12の奥方に移動するだけで、係止リング72に対してランセット14を再び係止させて図8~11に示されている如き穿刺準備状態とすることが実質的に不可能である。
特に本実施形態では、係止リング72が、ハウジング口体24の奥方向に位置して、ハウジング口体24の支持筒部42より大径とされて該支持筒部42に外挿配置されている。それ故、ハウジング口体24の前方開口部から覗き込んでも、係止リング72を視認することが殆ど出来ず、従って、ハウジング口体24の小さな前方開口部を通じて、ランセット14を押し込みつつ同時に係止リング72を回転変位させることなど、実質的に不可能である。
また、ランセット14は、ガイド突起56,56のガイドレール30,30への係合作用で、ハウジング12に対する中心軸回りの回転が阻止されていることから、ランセット14を回転させて係止リング72に相対回転作用を及ぼすこともできない。ましてや、上述のとおり、係止リング72は、ハウジング本体22の奥方への移動が許容されていることから、ハウジング口体24の前方開口部から差し入れた線材等で係止リング72を回転させようとしても、線材等の係止リング72に対する軸方向の当接反力を得ることさえ困難である。
[ii]ディスポーザブル型穿刺器具における規制手段の具体的構造および作動
本実施形態では、穿刺準備状態において操作片20の操作に基づかない係止リング72の回動を規制するために、以下の如き構造の規制手段が採用されている。本実施形態におけるハウジング口体24を図21において詳細に説明するとともに、本実施形態における係止リング72を図22において詳細に説明する。
本実施形態のハウジング口体24には、支持筒部42の外周面における連結脚部40,40の周方向間において、軸方向に延びる内周側凸部84が設けられている。この内周側凸部84は、支持筒部42の外周面において径方向の両側に一対設けられている。特に、本実施形態では、それぞれの内周側凸部84が、連結脚部40に隣接する端側凸部84aと、当該端側凸部84aから周方向で離隔して連結脚部40,40間の周方向略中央に位置する中央凸部84bとから構成されている。これにより、これら端側凸部84aと中央凸部84bとの周方向間には、両凸部84a,84bに対して相対的に凹となる凹部86が形成されている。なお、中央凸部84bは、それぞれ略半円形断面を有しており、外周面が湾曲面形状とされている。また、端側凸部84aは、それぞれ連結脚部40に隣接する部分の外周面が略平坦面形状とされている一方、中央凸部84b側の外周面が湾曲面形状とされている。さらに、支持筒部42の外周面において、中央凸部84bに対して端側凸部84aと反対側には何等の凹凸は設けられておらず、支持筒部42の外周面が滑らかに広がっている。
また、本実施形態の係止リング72には、その内周面に、軸方向に延びる外周側凸部88が設けられている。この外周側凸部88は、係止リング72における当接脚部74の周方向略中央において、係止リング72の軸方向略全長に亘って設けられている。本実施形態では、一対の当接脚部74,74が径方向で対向する位置に設けられていることから、外周側凸部88も、径方向で対向して一対設けられている。なお、外周側凸部88も、略半円形断面を有しており、内周面が湾曲面形状とされている。
そして、かかるハウジング口体24と係止リング72とが、標準状態においては、図23,24に示されるように組み付けられている。すなわち、係止リング72の当接脚部74,74が、ハウジング口体24の連結脚部40,40の周方向間に挿し入れられるとともに、係止リング72がハウジング口体24に設けられた支持筒部42に外挿されて回動可能に支持されている。
ここにおいて、標準状態では、支持筒部42の外周面に設けられた内周側凸部84,84における端側凸部84a,84aと中央凸部84b,84bの周方向間に形成された凹部86,86に対して、係止リング72の内周面に設けられた外周側凸部88,88が入り込んでいる。すなわち、これら内周側凸部84,84と外周側凸部88,88とは、支持筒部42と係止リング72との各対応する位置に形成されており、内周側凸部84,84と外周側凸部88,88とが、それぞれ周方向で等間隔に形成されている。なお、支持筒部42の外周面に設けられた内周側凸部84(端側凸部84aおよび中央凸部84b)は、係止リング72における当接脚部74の内周面(外周側凸部88の設けられていない部分)に略ゼロタッチで当接するか僅かな離隔距離をもって対向している。一方、当接脚部74の内周面に設けられた外周側凸部88は、支持筒部42の外周面(内周側凸部84の設けられていない部分)に略ゼロタッチで当接するか僅かな離隔距離をもって対向している。
かかる標準状態から、ランセット14の先端に設けられた針キャップ18を捩じ切って穿刺準備状態とされることで、支持筒部42に対する係止リング72の回動が許容されることとなるが、本実施形態では、支持筒部42に対して係止リング72の回動が許容された状態下においても、支持筒部42に対して係止リング72が周方向で位置決めされている。すなわち、かかる係止リング72の回動が許容された状態下において、外周側凸部88,88と、内周側凸部84,84の特に中央凸部84b,84bとが相互に当接することにより、支持筒部42に対する係止リング72の自由な回動が規制されている。さらに、穿刺準備状態だけでなく、ランセット14の先端に設けられた針キャップ18を捩じ切って標準状態から穿刺準備状態とする操作の過程においても、針キャップ18を捩じ切る力が係止リング72に伝わることで支持筒部42に対して係止リング72が周方向に回動することが防止され得る。
したがって、本実施形態では、支持筒部42(ハウジング口体24)と係止リング72との径方向間に設けられた内周側凸部84,84と外周側凸部88,88とが、支持筒部42に対する係止リング72の回動に際して相互に当接することで抵抗を生じる当接部とされている。すなわち、当該当接部が設けられることで、係止リング72の回動が許容された状態下において、係止リング72の回動に際して抵抗が及ぼされて、操作片(操作部材)20の操作に基づかない係止リング72の回動が規制されるものであることから、本実施形態では、かかる当接部によって規制手段が構成されている。
そして、穿刺作動に伴い、操作片20を押し込んで押圧傾斜面82に外力を及ぼすことで、図25に示されるように、外周側凸部88,88が内周側凸部84,84の中央凸部84b,84bを乗り越えて、支持筒部42に対する係止リング72の回動が許容される。かかる外周側凸部88,88による中央凸部84b,84bの乗越えは、例えば係止リング72の当接脚部74,74が外周側に撓み変形することなどによりなされ得る。これにより、係止リング72とランセットハブ50の係止突部60,60との軸方向の変位阻止力が解除されて、係止突部60,60の軸方向前方への変位が許容され得る。その結果、ランセット14が圧縮コイルばね16の付勢力に基づいてハウジング12内を軸方向前方に勢いよく移動して、穿刺作動が実現される。
以上の如き構造とされた本実施形態のディスポーザブル型穿刺器具10では、針キャップ18を抜き取って穿刺準備状態とした際に、係止リング72は回動が許容された状態となるが、当該状態において、係止リング72の回動に抵抗が及ぼされることで、操作片20の操作に基づかない係止リング72の回動が規制されるようになっている。これにより、操作片20の操作前に係止リング72が支持筒部42に対して意図せず回転してランセット14が軸方向前方に移動してしまうことが回避され得る。
特に、係止リング72の回動を規制する規制手段が、内周側凸部84,84と外周側凸部88,88とにより構成されており、係止リング72の回動が、内周側凸部84,84の中央凸部84b,84bと外周側凸部88,88との当接により規制される一方、外周側凸部88,88が中央凸部84b,84bを乗り越えることによって許容されている。すなわち、係止リング72の回動に際して、例えば係止リング72やランセット14が軸方向に移動することがないことから、係止リング72やランセット14が軸方向に移動することに伴う振動などが抑制されて、ランセット14がぶれることなどが回避される。
また、外周側凸部88,88が中央凸部84b,84bを乗り越えた後は、如何なる凹凸も設けられていないことから、外周側凸部88,88が支持筒部42の外周面にゼロタッチまたは僅かに離隔して対向した状態で、係止リング72が支持筒部42に対して回動せしめられる。それ故、外周側凸部88,88が中央凸部84b,84bを乗り越えた後の、係止リング72の回動がスムーズに行われて、使用者が引っ掛かり感などの抵抗感を感じることなく操作することができる。
[iii]第2の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具
次に、別構造の係止リングを採用したディスポーザブル型穿刺器具を、図26~39において、本発明の第2の実施形態として例示する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、それぞれ、図中に第1の実施形態と同じ符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態の穿刺器具100は、その分解図が図29に示されていると共に、市場でユーザーに商品として提供される標準状態が図26~28に示されているように、第1の実施形態に比して、ランセットハブ50に突設された一対の再使用防止突部(58,58)を備えていない。なお、本実施形態では、第1の実施形態における一対の再使用防止突部(58,58)と略同じ位置に、一対の回転阻止突部102,102が形成されている。
また、それに対応して、係止リング72における係合部75の形状が、第1の実施形態と異なっている。具体的には、内フランジ状の係合部75には、略1/4周に亘る一対の切欠部104,104が、径方向で対向位置して形成されている。なお、係止リング72の係合部75の後端面には、肉厚が部分的に切除された一対の肉欠部106,106が、径方向で対向位置して形成されている。そして、係止リング72の係合部75の後端面に位置する、肉欠部106の境界線上の段差面によって、押圧傾斜面82が構成されている。即ち、第1の実施形態において係止リング72の外周面上に突設された押圧片80,80に代えて、本実施形態では肉欠部106,106が設けられており、かかる肉欠部106の境界線上の段差面で構成された押圧傾斜面82によって、ハウジング12に設けられた操作片20の押し込み力の分力が係止リング72に対して回転力として及ぼされるようになっているのである。
そして、図26~28に示された標準状態において、針キャップ18のハウジング口体24への係止によりランセット14がハウジング12に対して軸方向で位置決めされた状態下では、係止突部60が係合部75の後端面から軸方向後方に離れて位置している一方、図30にも示されているように、回転阻止突部102,102が、係合部75,75内に位置している。かかる状態下、各回転阻止突部102の周方向両端部が、各切欠部104の周方向端面に対して、中心軸回りで対向位置している。これにより、係止リング72が中心軸回りで回転すると、その係合部75の切欠部104に対して、ランセット14の回転阻止突部102が当接するようになっている。また、ランセット14は、そのガイド突起56,56がハウジング本体22のガイドレール30,30に差し入れられて、中心軸回りの回転が阻止されている。それ故、標準状態では、回転阻止突部102,102の切欠部104,104に対する当接およびガイド突起56,56がガイドレール30,30に差し入れられて、中心軸回りの回転が阻止される誤操作防止機構により、係止リング72の回転が、ランセット14を介してのハウジング12への係合作用によって阻止されているのである。
次に、上述の如き標準状態で提供された穿刺器具100を用いて穿刺作動させるには、第1の実施形態と同様に針キャップ18をランセットハブ50からねじ切ってハウジング口体24から抜き取ることにより、図31,32に示されている如き穿刺準備状態とする。この穿刺準備状態の穿刺器具100では、第1の実施形態と同様に、針キャップ18によるランセットハブ50の位置決めが解除されて、ランセットハブ50が、圧縮コイルばね16の付勢力で軸方向前方に移動させられ、係止リング72の係合部75の後端面に対して、ランセットハブ50の係止突部60,60が当接した状態となる。
また、この位置までランセットハブ50が前方に移動されることで、ランセットハブ50の回転阻止突部102,102が、係止リング72の係合部75から前方に外れ、それによって、係止リング72のハウジング12内での回転が許容される。
それ故、かかる穿刺準備状態において、第1の実施形態と同様に操作片20をハウジング12の内方に押し込むと、操作片20が係止リング72の押圧傾斜面82に押し付けられ、回転方向の分力によって係止リング72が中心軸回りでハウジング12及びランセット14に対して回転される。これにより、図33~35に示されているように、係止リング72の係合部75の後端面に当接されていたランセットハブ50の係止突部60,60が、係止リング72の切欠部104,104に位置合わせされると、ランセットハブ50に及ぼされていた軸方向の変位阻止力が解除され、係止突部60,60が係止リング72の切欠部104,104を通って軸方向前方へ変位許容される。
その結果、図36に示されているように、ランセット14が圧縮コイルばね16の付勢力に基づいてハウジング12内を軸方向前方に勢い良く移動し、第1の実施形態と同様に穿刺針52がハウジング12の前方開口部から瞬間的に突出することで、穿刺作動が実現されるのである。なお、本実施形態では、ハウジング本体22の筒部の内周面には、複数条の位置決めリブ108が、圧縮コイルばね16が配設される底部側を軸方向に延びて突設されている。そして、これら複数条の位置決めリブ108により、圧縮コイルばね16がハウジング本体22内の中心軸上で安定位置して伸縮変形されるようになっている。
また、図37に示されているように、穿刺針52の針先がハウジング口体24内に収納された穿刺後では、操作片20で回動された係止リング72が、図34,35に示されている如き回動後の位置のままとされる。それ故、穿刺後に、図38,39に示されているように、たとえランセット14をハウジング12の奥方に押し込むことで強制的に再使用を試みた場合でも、ランセット14の係止突部60,60が係止リング72の切欠部104,104を通じてハウジング本体22の奥方に移動するだけで、係止リング72に対してランセット14を再び係止させて図30~32に示されている如き穿刺準備状態とすることが実質的に不可能である。
特に本実施形態では、ランセット14のハウジング12に対する中心軸回りの回転が、ガイド突起56,56がガイドレール30,30へ差し入れられることで阻止されていることから、押し込んだランセット14を回転させて係止リング72に係止させることも出来ない。それ故、穿刺後に再び穿刺準備状態とするには、ハウジング口体24の小さな前方開口部を通じて、ランセット14を押し込みつつ同時に係止リング72を回転変位させることが必要とされていることから、再使用が一層困難となっている。
本実施形態においても、前記[ii]欄に記載したものと同様な規制手段が採用されており、かかる規制手段によって、穿刺準備状態における係止リング72の不用意な回転が阻止されていることで、意図しないランセット14の係止離脱と突出方向への変位の防止が図られていると共に、操作片20の押込操作による穿刺作動に際しては係止リング72が規制手段による規制をこえて強制的に回動されることで、目的とする穿刺作動が実現されるようになっている。
[iv]第3の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具
次に、図40~45を示して、本発明の第3の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具を説明する。なお、本実施形態におけるハウジング口体120と係止リング122以外の部材は、前記第1の実施形態と同様の構造のものが採用され得ることから、詳細な説明を省略する。すなわち、本実施形態では、図40,41に示されるハウジング口体120と図42,43に示される係止リング122が採用されている。
すなわち、本実施形態のハウジング口体120には、支持筒部42の外周面における連結脚部40,40の周方向間において、外周側に突出して周方向に延びる外周突部124が設けられている。この外周突部124は、連結脚部40,40の周方向間において、一方の連結脚部40に隣接して設けられているとともに、支持筒部42の外周面において径方向の両側に一対設けられている。なお、本実施形態では、かかる外周突部124が、所定の軸方向寸法(図40,41中の上下方向寸法)を有しているとともに、連結脚部40,40間の周方向距離の1/3程度の周方向寸法をもって形成されている。
そして、かかる外周突部124,124における軸方向後方面(図40,41中の上方面)には、周方向における連結脚部40に隣接する側から隣接していない側に向かって軸方向寸法が次第に大きくなる傾斜面126,126が設けられており、本実施形態では、外周突部124,124における軸方向後方面の略全面が傾斜面126,126とされている。
一方、本実施形態の係止リング122では、当接脚部74,74の軸方向前方面が、周方向の一方から他方に向かって軸方向寸法が小さくなる傾斜面128,128が設けられており、特に本実施形態では、当接脚部74,74の軸方向前方面の略全面が傾斜面128,128とされている。
かかる構造とされたハウジング口体120と係止リング122とが、標準状態においては、図44のように組み付けられている。すなわち、係止リング122から延びる当接脚部74,74がハウジング口体120の連結脚部40,40間に挿入されるとともに、係止リング122が支持筒部42に外挿されている。ここにおいて、ハウジング口体120に設けられた傾斜面126,126と係止リング122に設けられた傾斜面128,128とは略同じ傾斜角度をもって形成されており、標準状態では、これら傾斜面126,128が相互に当接するか、僅かな離隔距離をもって軸方向で対向している。したがって、本実施形態では、係止リング122の軸方向前方面(傾斜面128,128)に対向する軸方向対向面が、ハウジング口体120に設けられた傾斜面126,126によって構成されている。
かかる標準状態からランセット(14)の先端に設けられた針キャップ(18)を捩じ切って穿刺準備状態とされることとなるが、本実施形態では、穿刺準備状態とされて支持筒部42に対して係止リング122の回動が許容された状態下においても、ハウジング口体120に設けられた外周突部124,124の傾斜面126,126と係止リング122に設けられた傾斜面128,128とが相互に当接することで支持筒部42に対する係止リング122の自由な回動が規制されている。
すなわち、本実施形態では、係止リング122の回動に際して、係止リング122の軸方向前方面である傾斜面128,128に対して相互に当接して抵抗を生じる当接部が、ハウジング口体120に設けられた外周突部124,124の傾斜面126,126によって構成されている。ようするに、かかる当接部が、係止リング122の軸方向前方面である傾斜面128,128と対向する軸方向対向面(傾斜面126,126)に設けられている。そして、当該当接部により、係止リング122の回動が許容された状態下において、係止リング122の回動に際して抵抗が及ぼされて、操作片(操作部材)(20)の操作に基づかない係止リング122の回動が規制されるものであることから、本実施形態では、かかる当接部によって規制手段が構成されている。
そして、穿刺作動に伴い、操作片(20)を押し込んで押圧傾斜面82に外力を及ぼすことで、図45に示されるように、係止リング122に設けられた傾斜面128,128がハウジング口体120に設けられた傾斜面126,126を乗り越えて、支持筒部42に対する係止リング122の回動が許容される。かかる傾斜面128,128による傾斜面126,126の乗越えは、操作片20の押込みに伴い傾斜面126,126と傾斜面128,128とを相互に当接させ、その当接力の分力を係止リング122の軸方向後方への押込力として作用させて、係止リング122およびランセット(14)を圧縮コイルばね(16)の付勢力に抗して軸方向後方側に移動させることによってなされる。そして、傾斜面128,128が傾斜面126,126を乗り越えることにより、係止リング122の支持筒部42に対する回動が許容されるとともに、係止リング122とランセットハブ(50)の係止突部(60,60)との軸方向の変位阻止力が解除されて、係止突部(60,60)の軸方向前方への変位が許容され得る。その結果、ランセット(14)が圧縮コイルばね(16)の付勢力に基づいてハウジング(12)内を軸方向前方に勢いよく移動して、穿刺作動が実現される。
以上の如き構造とされた本実施形態のディスポーザブル型穿刺装置においても、前記第1の実施形態と同様に、操作片(20)の操作前に係止リング122が支持筒部42に対して意図せず回転してランセット(14)が軸方向前方に移動してしまうことが回避され得る。特に、本実施形態では、係止リング122の回動に際して、係止リング122およびランセット(14)が軸方向後方に移動するに過ぎず、軸直角方向にずれるものでないことから、穿刺作動時におけるランセット(14)のぶれなどが効果的に低減され得る。
[v]第4の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具
次に、図46~49を示して、本発明の第4の実施形態としてのディスポーザブル型穿刺器具を説明する。なお、本実施形態における係止リング130とランセット132以外の部材は、前記第1の実施形態と同様の構造のものが採用され得ることから、詳細な説明を省略する。すなわち、本実施形態では、図46,47に示される係止リング130と図48,49に示されるランセット132が採用されている。
本実施形態における係止リング130には、軸方向後方面となる係合部134の軸方向後端面135に、軸方向後方側に突出する軸方向凸部136が設けられている。本実施形態では、係合部134の軸方向後端面135において、第二通過溝78,78に略隣接する位置に、径方向で対向して、一対の軸方向凸部136,136が軸直角方向に延びて形成されている。
一方、本実施形態におけるランセット132では、係止突部138,138が、段付形状をもって形成されている。すなわち、係止突部138,138が、内周側に位置する周方向寸法の大きい広幅部140,140と、当該広幅部140の周方向中央から外周側に突出する狭幅部142,142とから構成されている。
そして、かかる係止リング130とランセット132とハウジング口体24とが、組み付けられる。すなわち、標準状態では、係止リング130の係合部134に対して、ランセット132の係止突部138,138の特に狭幅部142,142が軸方向で当接するとともに、係止リング130の軸方向凸部136,136に対して、ランセット132の係止突部138,138の特に狭幅部142,142が周方向で当接するか僅かな離隔距離をもって周方向で対向している。
かかる標準状態からランセット132の先端に設けられた針キャップ(18)を捩じ切って穿刺準備状態とされることとなるが、本実施形態では、図48,49に示されるように、穿刺準備状態とされて支持筒部42に対して係止リング130の回動が許容された状態下においても、係止リング130に設けられた軸方向凸部136,136とランセット132に設けられた係止突部138,138の特に狭幅部142,142とが相互に当接することで支持筒部42に対する係止リング130の回動に抵抗を及ぼして、係止リング130の自由な回動が規制されている。
すなわち、本実施形態では、係止リング130の回動に際して、ランセット132の係止突部138,138に対して相互に当接して抵抗を生じる当接部が、係止リング130の軸方向後方面(軸方向後端面135)に設けられた軸方向凸部136,136によって構成されている。そして、当該当接部により、係止リング130の回動が許容された状態下において、係止リング130の回動に際して抵抗が及ぼされて、操作片(操作部材)(20)の操作に基づかない係止リング130の回動が規制されるものであることから、本実施形態では、かかる当接部によって規制手段が構成されている。
そして、穿刺作動に伴い、操作片(20)を押し込んで押圧傾斜面82に外力を及ぼすことで、ランセット132に設けられた係止突部138,138が係止リング130に設けられた軸方向凸部136,136を乗り越えて(逃げて)、支持筒部42に対する係止リング130の回動が許容される。かかる係止突部138,138による軸方向凸部136,136の乗越えは、操作片20の押込みに伴い係止突部138,138と軸方向凸部136,136とを相互に当接させ、その当接力をランセット132の軸方向後方への押込力として作用させて、ランセット132を圧縮コイルばね(16)の付勢力に抗して軸方向後方側に移動させることによってなされる。そして、係止突部138,138が軸方向凸部136,136を乗り越えることにより、係止リング130の支持筒部42に対する回動が許容されるとともに、係止リング130とランセット132の係止突部138,138との軸方向の変位阻止力が解除されて、係止突部138,138の軸方向前方への変位が許容され得る。その結果、ランセット132が圧縮コイルばね(16)の付勢力に基づいてハウジング(12)内を軸方向前方に勢いよく移動して、穿刺作動が実現される。
以上の如き構造とされた本実施形態のディスポーザブル型穿刺装置においても、前記第1の実施形態と同様に、操作片(20)の操作前に係止リング122が支持筒部42に対して意図せず回転してランセット(14)が軸方向前方に移動してしまうことが回避され得る。また、本実施形態においても、係止リング130の回動に際して、ランセット132が軸方向後方に移動するに過ぎず、軸直角方向にずれるものでないことから、穿刺作動時におけるランセット132のぶれなどが効果的に低減され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等限定的に解釈されるものではない。
すなわち、前記実施形態のディスポーザブル型穿刺器具10,100では、何れも、ハウジング12内に、ランセット14,132に対して突出力と引込力の両方を及ぼす圧縮コイルばね16が1つだけ配設されていたが、例えば、ランセット14,132に対して突出方向の付勢力を及ぼすばね部材と引込方向の付勢力を及ぼすばね部材とを各別に設ける等しても良い。
また、穿刺体として、例示の如き穿刺針52に代えて、ブレード等を用いることもできる。
さらに、前記第1の実施形態では、ハウジング口体24の支持筒部42の外周面に内周側凸部84,84を設けるとともに、係止リング72の内周面に外周側凸部88,88を設けてこれら内周側凸部84,84と外周側凸部88,88とにより当接部が構成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、支持筒部42の外周面と係止リング72の内周面との一方に凸部を設けるとともに、他方に凹部を設けて、かかる凹部に対して凸部が嵌まり込むことで操作部材(操作片20)の操作に基づかない係止リング72の回動を規制する規制手段が構成されていてもよい。
なお、前記第1の実施形態において、内周側凸部84,84における端側凸部84a,84aは必須なものではない。すなわち、係止リング72は、係止突部60の係止が解除される方向への回動が規制されていればよく、反対方向への回動は必ずしも規制されなくてもよい。尤も、係止リング72の反対方向への回動は、当接脚部74が連結脚部40に当接することで規制され得る。
また、前記第1,3,4の実施形態では、それぞれ当接部(内周側凸部84および外周側凸部88、傾斜面126、軸方向凸部136)が径方向で対向して一対設けられていたが、周上で1箇所に設けられるだけでもよいし、3箇所以上に設けられてもよい。なお、かかる当接部が複数設けられる場合には周方向で等間隔に設けられることが好適であるが、必ずしも等間隔に設けられなくてもよい。
さらに、前記第1,3,4の実施形態では、係止リング72,122,130の、それぞれ内周面、軸方向前方面(傾斜面128)、軸方向後方面(軸方向後端面135)に当接部が設けられていたが、これらのうち2つまたは3つが相互に組み合わされて採用されてもよく、例えば係止リング72,122,130の内周面と軸方向前方面に当接部が設けられてもよいし、係止リング72,122,130の内周面と軸方向前方面と軸方向後方面の全てに当接部が設けられてもよい。
更にまた、前記第1,3,4の実施形態では、操作部材(操作片20)の操作に基づかない係止リング72,122,130の回動を規制する規制手段が当接部(内周側凸部84および外周側凸部88、傾斜面126、軸方向凸部136)によって構成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、係止リング72,122,130を回動方向と反対方向に付勢する付勢部材を設けて、当該付勢部材による付勢力により係止リング72,122,130の回動に抵抗を及ぼすことで、操作部材の操作に基づかない係止リング72,122,130の回動を規制する規制手段が設けられるようになっていてもよい。かかる規制手段が設けられる場合には、付勢力を上回る操作力を操作部材に及ぼすことで、係止リング72,122,130が付勢部材による付勢力を振り切って回動するようにされる。なお、かかる付勢部材は、係止リング72,122,130やランセット14,132、ハウジング口体24,120やハウジング本体22などの何れに設けられてもよい。
なお、前記第1の実施形態の穿刺器具10では、誤操作防止機構(係止リング72の第一通過溝76およびハウジング口体24の第一案内溝44とランセットハブ50の再使用防止突部58)との係合によって、標準状態や針キャップ18のねじ切り時における係止リング72の回動が阻止されていたが、当該誤操作防止機構とは別個に設けられた規制手段(内周側凸部84,84と外周側凸部88,88との当接)によっても標準状態や針キャップ18のねじ切り時における係止リング72の回動阻止効果が発揮され得る。また、前記第2および第3の実施形態においても誤操作防止機構とは別個に設けられた規制手段によって、標準状態や針キャップ18のねじ切り時における係止リング72,122の回動阻止効果が発揮され得る。尤も、本発明に係る規制手段は、少なくとも穿刺準備状態(即ち、係止リング72の回動が許容された状態下)において、係止リングの回動阻止効果が発揮されればよく、標準状態や針キャップ18のねじ切り時において回動阻止効果が発揮される必要はない。