以下、実施形態に係る測定方法及び測定装置について説明する。実施形態では、生物学的な試料と反応する試薬と、複数の電極と、上記試薬及び上記複数の電極が配置された上記試料の流路とを含む分析用具を用いて上記試料の温度を測定する測定方法及び測定装置について説明する。
実施形態に係る測定方法は、上記複数の電極から選択される、上記試薬が設けられた電極を含む二つの電極を用いて、上記流路内の上記試料に上記試薬が設けられた電極から第1の電圧を印加する工程を含む。当該測定方法は、さらに、上記第1の電圧に対する上記試料の第1応答電流値を測定する工程と、上記複数の電極から選択される、上記試薬が設けられていない二つの電極を用いて、上記流路内の上記試料に第2の電圧を印加する工程と、上記第2の電圧に対する上記試料の第2応答電流値を測定する工程とを含む。当該測定方法は、さらに、上記第1応答電流値と上記第2応答電流値との関係を相対的に示す値と、上記第1応答電流値及び上記第2応答電流値のいずれか一方との対応関係に基づいて上記試料の温度を求める工程と、を含む。
上述した第1応答電流値が試料の温度により受ける影響の度合いと、上述した第2応答電流値が試料の温度によって受ける影響の度合いとは異なる。本願発明の発明者は、第1応答電流値と第2応答電流値の関係を相対的に示す値と、第1応答電流値及び第2応答電流値のいずれか一方との対応関係が温度に依存し、且つ、温度判定を行うために好適な分解能を示すことを見出した。そこで、例えば、上記対応関係と温度との関係(相関)を示す検量線データを予め取得しておき、測定された試料の上記対応関係を上記検量線データに基づき温度に換算することで、試料の温度を測定することができる。但し、検量線データを予め取得することは必ずしも必須ではない。
ここで、第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値とは、第1応答電流値と第2応答電流値との関係を両者の比較において示す値(以下、「相対値」という)であり、例えば第1応答電流値と第2応答電流値の比(商)又は差である。但し、相対値は、第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値であれば上述した比や差に限られない。また、上記相対値と第1応答電流値及び第2応答電流値のいずれか一方と
の対応関係とは、例えば、二軸によって表されるグラフにおいて、第1応答電流値及び第2応答電流値のいずれか一方を二軸の一方(例えばY軸(縦軸))とし、第1応答電流値と第2応答電流値との相対値を二軸の他方(例えばX軸(横軸))とした場合のグラフ上の点である。対応関係は、上記相対値が決まると、対応する第1応答電流値又は第2応答電流値が一意に(ユニークに)決まる関係を含む。但し、対応関係を示すためのグラフの作成は必須ではなく相対値と第1応答電流値又は第2応答電流値との一方から他方を単純に算出した値のみでもよい。また、対応関係の算出方法も、適宜採り得る。
測定方法に適用される分析用具は、例えばバイオセンサである。生物学的な試料は、血液、間質液、尿などの液体試料である。試料中の測定対象成分は、グルコース値(血糖値)、ラクテート値(乳酸値)などである。また、試料中の特性は、血液のヘマトクリット値、粘度、塩濃度などである。
第1応答電流値の測定に用いる(第1の電圧の印加に用いる)二つの電極は、例えば、電圧が印加される電極(作用極)と、作用極と対をなす電極(対極)とからなる。試薬は、作用極のみに試薬が設けられていても、双方の電極(作用極及び対極)に設けられていてもよい。ここで、「電極に試薬が設けられている」とは電極上に試薬が接触して設置されている状態、固定されている状態、または、載置されている状態などである。また、作用極および対極には試薬が設けられないが、作用極と対極の間に試薬が設けられている場合も「第1応答電流値の測定に用いる二つの電極」に当てはまる。「作用極と対極の間に試薬が設けられている」とは、作用極と対極の間の基板上に試薬が接触して設置されている状態の他、作用極と対極の間の流路を形成するスペーサ上やカバー上に試薬が接触して設置されている状態も含む(例えば、試薬の設置位置が基板上にないものの、流路を平面視した場合に試薬が作用極と対極の間にある場合など)。言い換えると、「作用極と対極の間に試薬が設けられている」とは、流路内に導入された試料の影響によって、設置されている試薬が作用極近傍の測定環境に拡散(移動)できるように設けられていることを意味する。但し、第1応答電流値が試料と試薬との反応した結果を正確に反映した値を得るためには、作用極上に試薬が設けられている場合と比べ、第1の電圧の値を大きくする、印加時間を長くする、流路内で作用極上に試薬が拡散するように測定時間を長くする、などの付加的条件が必要となる。上記より、第1応答電流値の測定においては作用極上や作用極と対極の間に試薬が設けられていることが必要となる。これに対し、作用極上や作用極と対極の間には試薬が設けられず、対極に試薬が設けられている場合は「第1応答電流値の測定に用いる二つの電極」に当てはまらない。また、作用極と対極の間に試薬が設けられていても試薬が対極の近傍のみに拡散し、作用極近傍の測定環境に拡散しない場合には、試薬と試料との反応が第1応答電流値に影響しないため、「第1応答電流値の測定に用いる二つの電極」に当てはまらない。
さらに、「第2応答電流値の測定に用いる二つの電極」に関しては、二つの電極の双方に試薬が設けられていない。また、第2応答電流値の測定に用いる二つの電極(例えば、作用極と対極)に関して、作用極及び対極には試薬が設けられないが、作用極と対極の間に試薬が設けられている場合の作用極及び対極は「第2応答電流値の測定に用いる二つの電極」に当てはまらない。すなわち、第2応答電流値の測定においては作用極及び対極だけではなく、第2応答電流値の測定環境のすべてにおいて試薬が設けられていないことが必要となる。測定環境のすべてにおいて試薬が設けられていないとは、試料を介して作用極と対極との間を移動する電子(作用極と対極との間を流れる電流)の経路に試薬が存在しないことを意味する。言い換えると、第2応答電流値は試料と試薬とが反応したことに起因する値を一切含んでいないことを意味する。
複数の電極は、上記した第1応答電流値の測定に用いる二つの電極、及び第2応答電流値の測定に用いる二つの電極として使用できる電極を含む。第1応答電流値の測定と第2
応答電流値との測定との間で、試薬が設けられていない電極が共通に使用されてもよい。換言すれば、第1の電圧を印加する二つの電極のうちの、試薬が設けられた電極と異なる電極が、第2の電圧を印加する、試薬が設けられていない二つの電極のうちの一方であってもよい。また、複数の電極の一部又は全部が、試料の特性(例えば血液のヘマトクリット値)や、試料中の所定の測定対象成分(例えばグルコース)の測定に使用されてもよい。ここで、試料の温度は、所定の電圧を印加した場合の応答電流値に影響を与える。つまり、所定の電圧を印加した場合の応答電流値に基づいて、ヘマトクリット値(Hct値とも表記)のような試料の特定や、グルコース値(血糖値ともいう)などの測定対象成分の測定に影響を与える。そこで、測定された試料の温度を用いてHct値やグルコース値などを補正することで、精度の高い試料の測定対象成分の測定結果(測定対象成分の濃度など)を得ることができる。本実施形態では、以下に、測定した試料の温度をHct値やグルコース値の補正に適用する例を示す。但し、測定された温度の用途はこれらに制限されず、分析用具を用いた測定対象成分などに応じて変更され得る。
複数の電極は、例えば、少なくとも試薬が設けられた一つの電極と、試薬が設けられてない二つの電極とから構成することができる(3電極構成)。この場合、第1応答電流値の測定に、試薬が設けられた電極と試薬が設けられていない二つの電極のいずれか一方が共通して使用されるようにすることができる。但し、第1応答電流値の測定と第2応答電流値の測定とで相互に異なる電極対が使用されてもよい(4電極構成)。これらの3電極構成および4電極構成において、4電極から2電極を選択して、試料中の所定の測定対象成分の測定用の電極対として共通して使用してもよい。また、例えば、第1及び第2応答電流値の測定に用いられる三つの電極と、試料中の所定の測定対象成分の測定用の2電極とを備える5電極構成が採用されてもよいし、試料中の所定の測定対象成分の測定用の2電極のうち1電極を三つの電極の一つと共通して使用する4電極構成であってもよい。さらに、例えば、第1及び第2応答電流値の測定に用いられる二組の電極対(4電極)と、試料中の所定の測定対象成分の測定用の2電極とを備える6電極構成が採用されてもよいし、四つの電極の一つと共通して使用する5電極構成であってもよい。上述した3~6電極構成をなす電極の組み合わせは、第1及び第2応答電流値と、測定対象成分の測定ができる限り、適宜設定可能である。
さらに、複数の電極に含まれる、試薬の設けられていない二つの電極を用いて、試料の特性、例えば血液のヘマトクリット値が測定される構成を採用できる。血液のヘマトクリット値の場合、ヘマトクリット値測定用の電極は、第2応答電流値の測定に用いる二つの電極と共通であっても、二つの電極のうちの一方が共通であっても、二つの電極の双方と異なっていてもよい。また、第1応答電流値の測定や試料中の所定の測定対象成分の測定用の2電極に用いる試薬が設けられていない電極と共通であってもよい。上述した6電極構成を用いる場合、ヘマトクリット値測定用の二つの電極のうちの一方が共通の場合、複数の電極は7電極構成となる。また、二つの電極の全てと異なる場合、複数の電極は8電極構成となる。第1及び第2応答電流値、ヘマトクリット値及び測定対象成分(例えばグルコース値)の測定が行われる場合では、これらの3~8電極構成のいずれが採用されてもよい。
実施形態に係る測定方法において、第1の電圧の値と第2の電圧の値とは同じでもよいが、両者は異なるのが好ましい。第2の電圧の値は第1の電圧の値に比べて大きくても小さくてもよい。このように、第1の電圧と第2の電圧との間に差があることによって、両者が同じ値である場合よりも良好な分解能を得ることができる。実施形態に係る試料の温度測定方法では、第1の電圧値及び第2の電圧値のそれぞれが1V以上7V以下である構成を採用するのが好ましい。
実施形態に係る測定方法において、第2の電圧の値は第1の電圧の値より大きい(第1
の電圧の値は第2の電圧の値より低い)のが好ましい。生物学的な試料と反応し、試料の濃度を測定する試薬には、酵素や基質などの塩が含まれている。このように塩が含まれる試薬が設けられた電極と試薬が設けられない電極に同じ電圧を印加した場合、試薬が設けられた電極における試料(試薬と反応している試料)の反応性は、塩の影響によって、試薬が設けられない電極における試料(試薬と反応していない試料)の反応性よりもよく、分解能が高くなる。もし、第1の電圧と第2の電圧を同じ電圧とした場合、第1の電圧が印加される電極での試料の反応を最適化するためには、第1の電圧に合わせて第2の電圧が設定されることになるので、第2の電圧が印加される電極での試料の反応性が不十分になる可能性がある。反対に第2の電圧が印加される電極での試料の反応性を十分とするために、第2の電圧に合わせて第1の電圧の値を高くすれば、第1の電圧が印加される電極での試料の反応性が過剰となるので、分解能が悪くなる可能性がある。従って、試薬が設けられた電極に印加する第1の電圧と、試薬が設けられない電極に印加する第2の電圧を同じ条件とするより、各々の反応性を考慮して、第1の電圧の値による反応性も第2の電圧の値による反応性も適切な値となるように、第2の電圧の値は第1の電圧の値に比べて大きい値にすることがより好ましい。
実施形態に係る測定方法において、例えば、試料が血液である場合に、第2応答電流値を血液のヘマトクリット値を示す値として用いるのが好ましい。すなわち、温度測定のために取得された第2応答電流値の測定結果がヘマトクリット値を示す情報として用いられてもよい。この場合、複数の電極に含まれる、試薬が設けられていない二つの電極が、温度測定とヘマトクリット値を示す値の測定とに共通な二つの電極として使用されることとなる。これにより、分析用具が備える電極数を減らすことができ、分析用具を小型化できる。また、測定工程を共通化できるため、測定時間を短縮化できる。但し、ヘマトクリット値を第2応答電流値に基づいて求めてもよい。例えば、第2応答電流値をヘマトクリット値へ換算する検量線データを用意し、第2応答電流値からヘマトクリット値を換算することによってヘマトクリット値を求めることができる。
但し、既に説明したように、第2応答電流値の測定に用いる二つの電極は、ヘマトクリット値の測定に用いる二つの電極と両方又は片方が共通するものであっても、異なるものであってもよい。例えば、実施形態に係る試料の温度測定方法において、試料が血液である場合に、二つの電極の間に電圧を印加し、血液のヘマトクリット値に対応する応答電流値を測定する工程をさらに含む構成を採用してもよい。この場合において、二つの電極は、複数の電極から選ばれる、第2応答電流値の測定に用いる二つの電極の少なくとも一方を含むように構成するのが好ましい。
また、実施形態に係る測定方法において、以下の構成を採用可能である。すなわち、試料が血液である場合に、上記第1の電圧を印加する二つの電極のうちの上記試薬が設けられた電極から上記第2の電圧を印加する二つの電極のうちの一方へ向けて電圧を印加して、上記血液中のグルコース値に対応する応答電流値を測定する工程をさらに含む。換言すれば、二つの電極のうち、試薬が設けられている一方の電極から他方の電極へ向けて電圧を印加して、血液中のグルコース値に対応する応答電流値を測定する工程をさらに含む構成を採用してもよい。この場合において、二つの電極は、第1応答電流値の測定に用いる電極及び第2応答電流値の測定に用いる電極から選ばれる一つの電極と、複数の電極から選ばれる、第1応答電流値の測定に用いる電極及び第2応答電流値の測定に用いる電極以外の一つの電極とからなる。
また、実施形態に係る測定方法において、第2応答電流値の測定後に血液中のグルコース値に対応する応答電流値を測定し、血液中のグルコース値に対応する応答電流値の測定後に第1応答電流値を測定する構成を採用することができる。
また、実施形態に係る試料の温度測定方法において、以下の構成を採用してもよい。すなわち、第1応答電流値は、第1の電圧を第1の時間連続印加したときにおける第1の時間中の所定の時点における電流値を示し、第2応答電流値は、第2の電圧を第2の時間連続印加したときにおける第2の時間中の所定の時点における電流値を示す。第1の時間中の所定の時点は、例えば上記第1の時間の終点であり、第2の時間中の所定の時点は前記第2の時間の終点である。この場合における第1応答電流値は、第1の電圧を第1の時間連続印加したときの第1の時間の終点における電流値を示し、第2応答電流値は、第2の電圧を第2の時間連続印加したときの第2の時間の終点における電流値を示す。
〔実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る測定方法及び測定装置について説明する。以下に説明する実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
以下の実施形態では、測定方法及び測定装置の一例として、分析用具であるバイオセンサを用い、試料の一例として試料である血液を用い、血液中の測定対象成分としてのグルコース値の測定を行い、血液中のHct値および血液の温度でグルコース値を補正する測定方法及び測定装置について説明する。
<バイオセンサの構成>
図1(A)及び図1(B)は、実施形態に係る分析用具(バイオセンサ)の構成例を示す。図1(A)は実施形態に係る分析用具(4電極を有するバイオセンサ)の上面図であり、図1(B)は、図1(A)に示したバイオセンサの側面図である。
図1(A)及び図1(B)において、バイオセンサ10は、一端10aと他端10bとを有する長手方向(X方向)と、幅方向(Y方向)とを有する。バイオセンサ10は、絶縁性基板1(以下「基板1」)と、スペーサ2と、カバー3とを高さ方向(Z方向)に積層して接着することにより形成される。
基板1には、例えば合成樹脂(プラスチック)が用いられている。合成樹脂として、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ガラスエポキシのような各種の樹脂を適用できる。なお、基板1には、合成樹脂以外の絶縁性材料を適用可能である。絶縁性材料は、合成樹脂の他、紙、ガラス、セラミック、生分解性材料などを含む。スペーサ2及びカバー3には、基板1と同じ材料を適用できる。
基板1の上面には、複数の電極の一例として、電極11と、電極12と、電極13と、電極14とが設けられている。電極11、電極12、電極13、及び電極14のそれぞれは、バイオセンサ10の幅方向に延びる部分と、長手方向に延びる部分とを有するカギ型を有し、長手方向に延びる部分はリード部11a、リード部12a、リード部13a及びリード部14aをなす。一端10a側にあるリード部11a、リード部12a、リード部13a及びリード部14aはスペーサ2及びカバー3で覆われておらず、血糖値計20(図3)のコネクタとの電気的接続に使用される。
電極11、電極12、電極13及び電極14のそれぞれは、例えば、金(Au),白金(Pt),銀(Ag),パラジウム(Pd),ルテニウム(Ru)のような金属材料、或いはカーボンのような炭素材料を用いて形成される。例えば、電極11、電極12、電極13及び電極14のそれぞれは、金属材料を物理蒸着(PVD,例えばスパッタリング)、或いは化
学蒸着(CVD)によって成膜することによって、所望の厚さを有する金属層として形成することができる。或いは、電極11、電極12、電極13及び電極14のそれぞれは、炭素材料または金属粒子を含むインクをスクリーン印刷で基板1上に印刷することで形成することもできる。
スペーサ2は他端10b側に向けて開口する矩形の切り欠き部(他端10bから一端10a側へ凹んだ凹部)を有する。基板1、スペーサ2及びカバー3の積層により、バイオセンサ10の他端10b側には、スペーサ2の切り欠き部の厚みの面と、切り欠き部によって夫々露出する(スペーサ2との接着によって被覆されない)、電極が設けられた基板1の上面及びカバー3の下面とによって形成された開口9aを有する空間が形成されている。この空間は試料の流路9として使用される。カバー3には空気孔7が形成されている。流路9は、開口9aに点着された試料が毛管現象により流路9内に引き込まれ(導入され)るとともに、空気孔7に向かって移動する(流路9内を流れる)ように形成されている。電極11、電極12、電極13及び電極14の一部は流路9内で露出している。開口9aに近い順から電極11、電極12、電極13、そして電極14と並んで形成されている。電極13及び電極14の上には試薬8が設けられている(固定されている)。これに対し、電極11及び電極12には試薬が設けられていない。
試薬8は、酵素や基質を含む。言い換えると、塩を含むと言える。試薬8はメディエータを含む場合もある。酵素は試料の種別や測定対象成分に応じて適宜選択される。測定対象成分が血液や間質液中のグルコースである場合、グルコースオキシダーゼ(GOD)やグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が適用される。メディエータは、例えば、フェリシアン化物、ルテニウム錯体、p-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体等である。これらの中で、フェリシアン化物またはルテニウム錯体が好ましく、フェリシアン化カリウムまたはルテニウム化合物[Ru(NH3)6]Cl3がより好ましい。
電極13及び電極14はグルコース値の測定に用いる電極対として使用される。一例として、電極13は作用極として使用され、電極14は対極として使用される。但し、逆でもよい。また、グルコース値の測定において対極として使用される電極(電極13及び電極14の一方)には、試薬が設けられていなくてもよい。また、電極11や電極12を、グルコース値の測定時の対極として使用してもよい。
電極11及び電極12は、Hct値の測定に用いる電極対として使用される。一例として、電極11は作用極として用いられ、電極12は対極として使用される。但し、逆でもよい。
図1(A)及び図1(B)に示す例では、それぞれ試薬8が設けられていない電極11と電極12との組み合わせが第2応答電流値を得るために使用される。また、電極13及び電極14の一方と、電極11及び電極12の一方との組み合わせが、第1応答電流値を得るために使用される。以下、一例として、電極13と電極12とが第1応答電流値を得るために使用される例を説明する。なお、上述の電極13及び電極14との一方にのみ、試薬8が設けられる場合、例えば、電極13及び電極14のうち電極13のみに試薬8が設けられる場合には、電極13がグルコース値の測定及び第1応答電流値の測定における作用極として使用される。
なお、バイオセンサ10が、図2に示すような3電極構成を採用することもできる。図2は、3電極構成を有するバイオセンサ10Aを図示し、バイオセンサ10Aは電極15、電極16、電極17を含み、開口9aに近い順に電極15、電極16、そして電極17と並んでおり、電極17上に試薬8が載置されている。このような3電極構成では、Hc
t値の測定において、例えば電極15が作用極として使用され、電極16が対極として使用される。一方、グルコース値の測定では、電極17が作用極として使用され、電極15又は電極16が対極として使用される。第1応答電流値の測定には、電極17が作用極として使用され、電極15又は電極16が対極として使用される。第2応答電流値の測定には、電極15及び電極16の一方が作用極として使用され、他方が対極として使用される。なお、図1(A)に示した4電極構成、及び図2に示した3電極構成は例示であり、これまでに説明した5~8電極構成をバイオセンサに適用してもよい。
<測定装置(血糖値計)の構成>
図3は、測定装置の一例である血糖値計20の構成例を示すブロック図である。図3において、血糖値計20には、例えば図1(A)及び(B)に示したバイオセンサ10を接続することができる。血糖値計20は、接続されたバイオセンサ10を用いてグルコース値の測定及びHct値を用いたグルコース値の補正を行う。以下の説明では、一例として、血糖値計20が、バイオセンサ10に関して、グルコース値の測定とHct値の測定とで異なる電極対を使用し、Hct測定には試薬が設けられていない電極対を使用する場合について説明する。
血糖値計20は、グルコース測定部(GLU測定部)33、ヘマトクリット測定部(Hct測定部)34、測定部35、スイッチ(SW)31、制御部23、記憶部24及び出力部25を備える。スイッチ31は、複数のコネクタ(図2ではコネクタ32a、コネクタ32b、コネクタ32c及びコネクタ32d)と電気的に接続される。コネクタ32aはバイオセンサ10のリード部11a(電極11)と接続され、コネクタ32bはバイオセンサ10のリード部12a(電極12)と接続される。コネクタ32cはバイオセンサ10のリード部13a(電極13)と接続され、コネクタ32dはバイオセンサ10のリード部14a(電極14)と接続される。
スイッチ31は、コネクタ32a、コネクタ32b、コネクタ32c、コネクタ32dと電極11、電極12、電極13及び電極14との電気的接続及びその切断状態を切り替えるスイッチである。制御部23は、記憶部24に記憶されたプログラムを実行するプロセッサ(例えばCentral Processing Unit(CPU))である。記憶部24は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、ROM(Read Only Memory)やハードディス
クなどの補助記憶装置を含むメモリを含む。記憶部24は、制御部23によって実行されるプログラムや、プログラムの実行に際して使用されるデータなどを記憶する。出力部25は、プリンタやディスプレイなどの出力装置、信号コネクタや通信インタフェース等の通信機器を含む。
制御部23は、グルコース値の測定時に、SW31を制御して、グルコース値の測定用の作用極(電極13)及び対極(電極14)を血糖値計20と電気的に接続された状態にし、電極11及び電極12を切断状態にする。GLU測定部33は、回路やプロセッサ及びメモリで構成され、以下のような動作を行う。すなわち、GLU測定部33は、制御部23からの指示に従って、電極13から電極14へ向かうDC(直流)電圧(グルコース値の測定用のDC電圧)を印加する。GLU測定部33は、印加を開始しその印加が所定時間連続した後にこのDC電圧に対する応答電流値としてグルコース値に対応する応答電流値(以下、GLU応答電流値)を測定する。
制御部23は、Hct値の測定時に、SW31を制御して、Hct値の測定用の作用極(電極11)及び対極(電極12)を血糖値計20と電気的に接続された状態とし、電極13及び電極14を切断状態にする。Hct測定部34は、回路やプロセッサ及びメモリで構成され、以下のような動作を行う。すなわち、Hct測定部34は、制御部23からの指示に従って、電極11から電極12へ向かうDC電圧(Hct値の測定用のDC電圧
)を印加する。Hct測定部34は、印加を開始しその印加が所定時間連続した後にこのDC電圧に対する応答電流値としてHct値に対応する応答電流値(以下、Hct応答電流値)を測定する。
測定部35は、回路やプロセッサ及びメモリで構成され、制御部23からの指示に従って以下の動作を行う。すなわち、測定部35は、SW31によって電極11及び電極14が接続状態であり且つ電極12及び電極13が切断状態である場合に、第1応答電流値を得るためのDC電圧(第1の電圧)を電極13から電極12へ向かう方向に所定時間連続印加する。このとき、測定部35は、例えば所定時間の終点(エンドポイント)における応答電流値を第1応答電流値として測定する。ただし、測定部35は、第1の電圧印加の終点の電流値ではなく、第1の電圧の印加中の所定の時点(タイミング)の電流値を第1応答電流値として取得してもよい。なお、第1応答電流値を得るために電極13及び電極12以外の組み合わせを使用してもよい。その場合にも、同じように試薬8が設けられる電極から試薬8が設けられない電極へ連続印加することで、第1応答電流値を測定することができる。例えば、図1(A)に示す構成において、電極14から電極11へ向かう方向に第1の電圧を印加することが考えられる。
制御部23は、第2応答電流値を測定する場合に、SW31を制御して、例えば電極11及び電極12を血糖値計20と電気的に接続された状態とし、電極13及び電極14を切断状態にする。Hct測定部34は、制御部23からの指示に従って、電極11から電極12へ向かうDC電圧(第2の電圧)を印加する。Hct測定部34は、印加を開始しその印加が所定時間連続した後にこのDC電圧に対する応答電流値を第2応答電流値として測定する。
上記のように、実施形態に係る血糖値計20では、第2応答電流値の測定に、Hct測定部34と、Hct値の測定に用いる電極11及び電極12とを使用することができる。したがって、Hct応答電流値を測定する工程と、第2応答電流値を測定する工程とを共通化することができる。つまり、Hct応答電流値を第2応答電流値として測定してもよい。この場合、Hct値の測定用の電圧は、第2応答電流値を測定するための第2の電圧となる。また、Hct応答電流値を測定する工程の一部が第2応答電流値を測定する工程と共通してもよい。例えば、DC電圧を印加する手順を共通化し、Hct値の取得タイミングと異なるタイミングにおいて第2応答電流値を取得することで、一部の共通化を実現する。もちろん、Hct測定部34を用いて、Hct値を測定する工程と、第2応答電流値とを測定する工程とが個別に実施される構成が採用されてもよい。
Hct値及び第2応答電流値の夫々の測定に用いる電流値として、Hct値の測定用のDC電圧(第2の電圧)の印加の終点の電流値と、Hct値の測定用のDC電圧(第2の電圧)の印加中の所定の時点の電流値とのいずれが取得されてもよい。
制御部23は、測定部35によって得られた第1応答電流値と第2応答電流値との比を計算し、この比と第2応答電流値(第1応答電流値でもよい)との対応関係を示す値を算出する。記憶部24は、上記した比と第2応答電流値との対応関係と流路9内の試料の温度との関係を示すデータ(温度検量線テーブル)を予め記憶している。制御部23は、温度検量線テーブルを用いて対応する試料の温度を測定する。なお、本実施形態に係る測定装置(血糖値計20)においては、GLU測定部33にて測定されるGLU応答電流値、及び、Hct測定部34にて測定されるHct応答電流値に対して温度補正を行う。このため、後述のとおり、記憶部24は、グルコース値用温度補正検量線テーブル及びHct応答電流値用温度補正検量線テーブルも備える。
また、記憶部24は、GLU測定部33にて測定されるGLU応答電流値をグルコース
値に換算する検量線データ(GLU検量線データ)を記憶している。制御部23は、GLU検量線データを用いてGLU応答電流値をグルコース値に換算することで、グルコース値を算出する。グルコース値は、記憶部24に記憶したり、出力部25から出力(表示等)されたりする。なお、GLU検量線データは検量線テーブル(GLU検量線テーブル)であってもよい。
制御部23は、さらに試料の温度を示す情報を用いて、グルコース値およびHct応答電流値を補正する。記憶部24はグルコース値用温度補正検量線テーブル及びHct応答電流値用温度補正検量線テーブルを記憶し、制御部23はグルコース値用温度補正検量線テーブルを用いて、グルコース値の温度補正を行う。また、制御部23はHct値用温度補正検量線テーブルを用いて、Hct応答電流値の温度補正を行うことができる。
制御部23は、グルコース値用温度補正検量線テーブルによって温度補正されたグルコース値に対して、Hct値用温度補正検量線テーブルによって温度補正されたHct応答電流値を用いて、グルコース値のヘマトクリット補正を行う。記憶部24は、Hct値用温度補正検量線テーブルによって温度補正されたHct応答電流値に基づき電流値用温度補正検量線テーブルによって温度補正されたグルコース値をヘマトクリット補正する検量線テーブル(Hct補正テーブル)を記憶している。制御部23は、Hct補正テーブルを用いて温度補正されたグルコース値を最終的な温度補正及びヘマトクリット補正をしたグルコース値(最終グルコース値)を算出する。最終グルコース値は、記憶部24に記憶したり、出力部25から出力されたりする。このようにして、グルコース値の測定精度を高めることができる。
なお、上述の方法は一例であって、制御部23は取得したGLU応答電流値、Hct応答電流値、および第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値(相対値:比(商)又は差)と、第1応答電流値及び第2応答電流値のいずれか一方との対応関係を算出する。制御部23は、その対応関係に基づいて求められた試料の温度の情報を用いて、温度補正されたグルコース値、温度補正されたHct値、または最終グルコース値を算出することができる。具体的には、制御部23は、試料の温度を示す情報を用いて、GLU応答電流値ではなくグルコース値を補正してもよく、Hct応答電流値ではなくHct値を補正してもよい。また、グルコース値(GLU応答電流値)、およびHct値(Hct応答電流値)に対して、それぞれの検量線テーブルを用いて温度補正を行った後にヘマトクリット補正を行うのではなく、以下のようにしてもよい。すなわち、先にグルコース値(GLU応答電流値)、およびヘマトクリット値(Hct応答電流値)に基づきヘマトクリット補正を行う。その後、ヘマトクリット補正されたグルコース値と試料の温度を示す情報を用いて、最終グルコース値を算出する。このような実施形態において、記憶部24は検量線データまたは検量線テーブルを記憶すればよく、制御部23が検量線データまたは検量線テーブルを適宜使用すればよく、出力部25も適宜出力することができる。
なお、図示は省略するが、バイオセンサ10が図2に示した3電極構成(バイオセンサ10Aの構成)や、上述した5~8電極構成を有する場合、その電極構成に合わせたコネクタを血糖値計20は有することができる。さらに、血糖値計20が適宜の電極を用いて第1及び第2応答電流値、Hct応答電流値、及びGLU応答電流値を測定できるように、制御部23がスイッチ31を制御し、血糖値計20と各電極との電気的接続関係を変更することができる。
一例として、図2に示した3電極構成を有するバイオセンサ10Aが使用される場合を仮定する。この仮定において、制御部23は、グルコース値の測定時に、SW31を制御して、グルコース値の測定用の作用極(電極17)及び対極(電極16)を血糖値計20と電気的に接続された状態にし、電極15を切断状態にする。すなわち、GLU測定部3
3は、制御部23からの指示に従って、電極17から電極16へ向かうグルコース測定用のDC電圧を印加し、このDC電圧に対するGLU応答電流値を測定する。
制御部23は、Hct値の測定時に、SW31を制御して、Hct値の測定用の作用極(電極15)及び対極(電極16)を血糖値計20と電気的に接続された状態とし、電極17を切断状態にする。Hct測定部34は、以下のような動作を行う。すなわち、Hct測定部34は、電極15と電極16との間にHct値の測定用のDC電圧を印加し、印加が開始され印加が所定時間連続した後にHct値に相当するHct応答電流値を測定する。
測定部35は、SW31によって電極16及び電極17が接続状態であり且つ電極15が切断状態である場合に、第1応答電流値を得るためのDC電圧(第1の電圧)を電極17から電極16へ向かう方向に所定時間連続印加する。測定部35は、例えば所定時間の終点における応答電流値を第1応答電流値として測定する。ただし、第1の電圧の終点の電流値を第1応答電流値として取得する代わりに、第1の電圧の印加中の所定のタイミングの電流値を第1応答電流値として取得してもよい。なお、この工程も4電極構成と同じようにHct応答電流値の測定と共通、または一部共通してもよい。また、第1応答電流値を得るために電極17及び電極15を使用することもできる。この場合には、測定部35は、SW31によって電極16が切断状態であり且つ電極17及び電極15が接続状態である場合に、第1応答電流値を得るためのDC電圧(第1の電圧)を電極17から電極15へ向けて所定時間連続印加し、例えば所定時間の終点における応答電流値を第1応答電流値として測定する。ただし、第1応答電流値を第1の電圧の終点の電流値で取得したが、第1の電圧の印加中の所定の時点の電流値を取得してもよい。
また、制御部23は、第2応答電流値を測定する場合に、SW31を制御して、例えば電極15及び電極16を血糖値計20と電気的に接続された状態とし、電極17を切断状態にする。Hct測定部34は、制御部23からの指示に従って、電極15と電極16との間に第2応答電流値の測定用のDC電圧(第2の電圧)を印加する。Hct測定部34は、印加を開始しその印加が所定時間連続した後にこのDC電圧に対する応答電流値を第2応答電流値として測定する。
上記のように、実施形態に係る血糖値計20では、第2応答電流値の測定に、Hct測定部34と、Hct値の測定に用いる電極15及び電極16とを使用することができる。したがって、Hct応答電流値を測定する工程と、第2応答電流値を測定する工程とを共通化することができる。つまり、Hct応答電流値を第2応答電流値として測定してもよい。この場合、Hct値の測定用の電圧は、第2応答電流値を測定するための第2の電圧となる。また、4電極構成と同様に、Hct応答電流値を測定する工程の一部が第2応答電流値を測定する工程と共通する構成や、Hct測定部34を用いてHct値を測定する工程と第2応答電流値とを測定する工程とが個別に実施される構成が採用されてもよい。
Hct値及び第2応答電流値の夫々の測定に用いる電流値として、Hct値の測定用のDC電圧(第2の電圧)の印加の終点の電流値と、Hct値の測定用のDC電圧(第2の電圧)の印加中の所定の時点の電流値とのいずれが取得されてもよい。
以上のような構成の採用によって、4電極構成と同じように試料の温度を測定し、さらにグルコース値を補正することができる。なお、測定部35が第1測定部に相当し、Hct測定部34が第2測定部に相当し、制御部23が算出部に相当する。第2応答電流値は、Hct測定部34によってHct応答電流値と異なるタイミングで測定されてもよく、Hct測定部34以外の測定部によって測定されてもよい。
<動作例>
図4は、4電極を有するバイオセンサ10を用いた血糖値計20の動作例を示すフローチャートである。図4に示すS01では、試料の点着が行われる。すなわち、バイオセンサ10が血糖値計20に接続され、被験者から採取された血液(生物学的な試料)にバイオセンサ10の他端10bの開口9aを接触(点着)させると、毛管力により血液が流路9に引き込まれ、空気孔7に向かって流路9内を満たして移動する。
制御部23は、点着前から電極に対する印加を行っており、印加した電圧を観測し、点着によって血液と電極とが接触することによる電圧の変化を検出して、血液が流路9に導入されたことを検出する。すると、制御部23は、Hct値の測定を開始する(S02)。
S02では、制御部23は、Hct測定部34を制御し、電極11及び電極12を用いて、Hct値及び第2応答電流値を得るためのDC電圧(第2の電圧)を血液に印加する。すなわち、制御部23は、Hct測定部34へ指示を出し、第2の電圧に相当するDC電圧(例えば、4V)を電極11及び電極12に印加させる。
Hct測定部34は、第2の電圧に相当するDC電圧の印加を所定時間(2.5秒程度:第2の時間に相当)連続して行い、所定時間が経過するのを待ち、所定時間経過したときの(所定時間の終点)における血液の応答電流値(Hct応答電流値及び第2応答電流値)を測定する(S03)。Hct測定部34は、Hct応答電流値及び第2応答電流値をA/D変換して制御部23へ送る。
制御部23は、Hct応答電流値及び第2応答電流値を取得すると、グルコース値の測定を開始する。すなわち、制御部23は、血液に対するグルコース値の測定用の電圧(例えば、0.2V)の印加を行う(S04)。すなわち、制御部23は、グルコース値の測定用の電極対(電極13及び電極14)を用いて流路9内の血液にDC電圧を印加することをGLU測定部33に指示する。GLU測定部33は、指示に従ったDC電圧の印加を行う。GLU測定部33は、上記電圧に対する血液のGLU応答電流値を測定する(S05)。GLU測定部33は、GLU応答電流値をA/D変換して制御部23へ送信する。
次に、制御部23は、測定部35に指示を与え、測定部35は、第1応答電流値の測定に用いる電極対(例えば、電極13と電極12)を用いて、流路9内の血液に第1の電圧に相当するDC電圧(2.5V)を印加する(S06)。このとき、試薬8が設けられた電極13から試薬8が設けられていない電極12へ向けて電圧が印加される。測定部35は、第1の電圧に相当するDC電圧の印加を所定時間(2.5秒程度:第1の時間に相当)連続して行い、所定時間の終点の応答電流値を第1応答電流値として測定し、A/D変換して制御部23へ送る(S07)。
S08では、制御部23は、算出部として動作し、血液の温度を算出する。すなわち、第1応答電流値と第2応答電流値との比を計算し、この比と第2応答電流値との対応関係を示す値を算出し、この値と温度の検量線データとを用いて血液の温度を測定する。
S09では、制御部23は、S05で取得したGLU応答電流値と、GLU検量線データとを用いて、血液中のグルコース値を算出し、さらにS08で算出した血液の温度と、グルコース値用温度補正検量線テーブルを用いてグルコース値を温度補正する。また、制御部23は、S08で算出した血液の温度と、Hct応答電流値用温度補正検量線テーブルを用いてS03で得られたHct応答電流値(Hct値に相当)を補正する。そして、補正したHct応答電流値を用いて補正したグルコース値をヘマトクリット補正し、最終グルコース値を取得する。
制御部23は、最終グルコース値を出力する(S10)。すなわち、制御部23は、S09で取得した最終グルコース値を、記憶部24に記憶し、出力部25に表示する。制御部23は、出力部25を用い、有線又は無線ネットワークを介して他の装置へ最終グルコース値を送信することもできる。
なお、図4に示す動作例ではHct値の測定をグルコース値の測定の前に行っているが、逆でも良い。また、第2応答電流値の測定を第1応答電流値の測定前に行っているが逆でもよい。また、グルコース値に相当する応答電流の測定は、第1及び第2応答電流値の測定前でも、第1応答電流値の測定と第2応答電流値の測定との間でも、第1及び第2応答電流値の測定後であってもよい。
〔実施例1〕
〔実施例1-1〕
実施例1-1として、以下のような実験を行った。実施例1-1では、バイオセンサとして、図2で示す3電極を有するバイオセンサ10Aの構成を有し、電極15~17がルテニウム製であるバイオセンサを作製した。電極17の上には試薬8を設けた。試薬8の処方及び製法は以下の通りである。ポリビニルアルコール(PVA146,000)0.8重量%、ルテニウム化合物[Ru(NH3)6]Cl3、1.6重量%、FAD-GDH2.7U、
1-メトキシPES0.3重量%、ACES緩衝液(pH6.5)を含む酵素液を調製し
た。この酵素液0.5μLを分注して、25℃で乾燥させることで試薬8を得た。
生物学的な試料として、2名の人の全血(血液)を混合したものを用いた。試料として、グルコース値が一定の試料について、Hct値が20%、42%、70%に調整されたものを用意した。また、試料として、8℃、25℃、40℃の夫々に温度を調整したものを用意した。
各試料に対する第1及び第2応答電流値の測定、Hct応答電流値の測定(Hct値の測定)及びGLU応答電流値の測定(グルコース値の測定)は以下の条件で行った。
(1)第1電気的応答値の測定
試料が流路9に導入されたバイオセンサ10Aの第1応答電流値の測定用電極(電極16及び電極17)を血糖値計20に接続してから0.5秒後(0.5秒開回路)に第1応答電流値測定用のDC電圧(2.5V:第1の電圧に相当)の電極17から電極16へ向けての印加を開始した。DC電圧の印加を2.5秒間継続し、印加開始から2.5秒後(測定開始から3秒経過時)の応答電流値(第1応答電流値)を測定した。
(2)第2応答電流値及びHct応答電流値の測定
DC2.5Vの印加開始から2.5秒後に印加を停止し、3秒間、開回路の状態(非通電状態)とした。この間に、バイオセンサ10Aの第2応答電流値の測定用電極(電極15及び電極16)を血糖値計20に接続し、第2応答電流値測定用のDC電圧(4.0V:第2の電圧に相当)を、電極15と電極16との間に印加した。印加は2.5秒間連続して行い、第2の電圧の印加から1.5秒の時点である測定開始から7.5秒の時点での応答電流値(第2応答電流値)を測定した。
(3)グルコース値の測定
DC4.0V(第2の電圧)の印加開始から1.5秒後に印加を停止し、5秒間、開回路の状態(非通電状態)とした。この間に、バイオセンサ10Aのグルコース値の測定用電極(電極16及び電極17)を血糖値計20に接続し、グルコース値の測定用のDC電圧(0.2V)を7秒間連続して印加した。このように、同一の試料に対して、Hct値の測定とグルコース値の測定とを連続して行った。
〔比較例1〕
比較例1として、第1応答電流値を求めるDC電圧を印加する工程(工程(1)と称する)において、DC電圧を印加する電極対として、試薬8の設けられていない電極(電極15及び電極16)を用いた。その他は、実施例1-1と同様の実験を行った。
〔実施例1-2〕
実施例2として、第2応答電流値を求めるDC電圧を印加する工程(工程(2)と称する)において、第2の電圧としてDC2.5Vを印加した。その他は、実施例1-1と同様の実験を行った。
〔実施例1-3〕
実施例3として、第2応答電流値を求めるDC電圧を印加する工程(工程(2))において、第2の電圧としてDC2.0Vを印加した。その他は、実施例1-1と同様の実験を行った。
図5(A)~(D)は、実施例1-1における測定結果を示す。図5(A)は、試料の温度が8℃の場合におけるタイムコース(時間経過に伴う変化)を示し、図5(B)は、試料の温度が25℃の場合におけるタイムコースを示す。図5(C)は、試料の温度が40℃である場合におけるタイムコースを示す。
図5(A)~(D)の各グラフのY軸(縦軸)は、応答電流値(μA)を示し、X軸(横軸)は時間(秒(sec))を示す。図5(A)~(D)におけるグラフG11は、Hct値が20%である複数の試料の夫々に第1の電圧を印加して得られた応答電流(応答信号とも呼ばれる)を示す。また、グラフG12は、Hct値が42%である試料の複数の試料の夫々に第1の電圧を印加して得られた応答電流を示す。また、グラフG13は、Hct値が70%である試料の複数の試料の夫々に第1の電圧を印加して得られた応答電流を示す。また、グラフG21は、Hct値が20%である試料の複数の試料の夫々に第2の電圧を印加して得られた応答電流を示す。また、グラフG22は、Hct値が42%である試料の複数の試料の夫々に第2の電圧を印加して得られた応答電流を示す。また、グラフG23は、Hct値が70%である試料の複数の試料の夫々に第2の電圧を印加して得られた応答電流を示す。
図5(D)は、各試料についての第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値の一例である各試料についての第1応答電流値と第2応答電流値との相対値(比)である3秒値/7.5秒値(第1応答電流値/第2応答電流値)と7.5秒値である第2応答電流値との関係を示す値を示す点をマークしたグラフである。図5(D)のグラフのY軸(縦軸)は、第1応答電流値/第2応答電流値であり、X軸(横軸)は第2応答電流値(μA)である。三角形のマーク(点)は、試料の温度が40℃に調整された各試料についての対応関係を示す。また、グラフのX軸方向及びY軸方向に頂点が配置された四角形の点は、試料の温度が25℃に調整された各試料についての対応関係を示す。また、各辺がX軸方向又はY軸方向に配置された四角形の点は、試料の温度が8℃に調整された各試料の対応関係を示す。図5(D)中の各温度に対応する点は、グラフ中において左側の領域、右側の領域、これらの間の領域(中間領域と称する)に分布しており、左側の領域にある点はHct値が20%である場合の点であり、中間領域にある点はHct値が42%である場合の点であり、右側の領域にある点はHct値が70%である場合の点である。
図6(A)~(D)は、比較例1における測定結果を示す。図6(A)は、試料の温度が8℃の場合におけるタイムコースを示し、図6(B)は、試料の温度が25℃の場合に
おけるタイムコースを示す。図6(C)は、試料の温度が40℃である場合におけるタイムコースを示す。図6(D)は、各試料についての第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値の一例である3秒値/7.5秒値(第1応答電流値/第2応答電流値)と7.5秒値である第2応答電流値との対応関係を示す値を示す点をマークしたグラフである。図6(A)~(D)に示すグラフの説明は、図5(A)~(D)に示したグラフに関して行った説明と同様となるため、これらの再度の説明は省略する。
図7(A)~(D)は、実施例1-2における測定結果を示す。図7(A)は、試料の温度が8℃の場合におけるタイムコースを示し、図7(B)は、試料の温度が25℃の場合におけるタイムコースを示す。図7(C)は、試料の温度が40℃である場合におけるタイムコースを示す。図7(D)は、各試料についての第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値の一例である3秒値/7.5秒値(第1応答電流値/第2応答電流値)と7.5秒値である第2応答電流値との対応関係を示す値をマークしたグラフである。図7(A)~(D)に示すグラフの説明は、図5(A)~(D)に示したグラフに関して行った説明と同様となるため、これらの再度の説明は省略する。
図8(A)~(E)は、実施例1-3における測定結果を示す。図8(A)は、試料の温度が8℃の場合におけるタイムコースを示し、図8(B)は、試料の温度が25℃の場合におけるタイムコースを示す。図8(C)は、試料の温度が40℃である場合におけるタイムコースを示す。図8(D)は、図8(B)の6~10秒間におけるX軸のスケールを変更し、応答信号(グラフG21、G22、G23)を拡大して示す図である。図8(E)は、各試料についての第1応答電流値と第2応答電流値との関係を相対的に示す値の一例である3秒値/7.5秒値(第1応答電流値/第2応答電流値)と7.5秒値である第2応答電流値との対応関係を示す値を示す点をマークしたグラフである。図8(A)~(E)に示すグラフの説明は、図5(A)~(D)に示したグラフに関して行った説明と同様となるため、これらの再度の説明は省略する。
図5(D)、図7(D)、図8(E)を参照すると、実施例1-1、実施例1-2及び実施例1-3では、同じHct値に対応する点が同じ領域に属し、且つ各領域が重ならないように、グラフの領域をHct20%、42%、70%の夫々に対応する3つの領域に区分けすることができる。区分けされた各領域では、温度が低くなると、対応関係を示す点の位置が低くなる。すなわち、対応関係と温度とが相関関係を有する。これらより、温度測定に適用可能な分解能が得られている。これに対し、比較例1(図6(D)参照)では、温度が相互に異なる点を領域間が重ならない状態で異なる領域に区分けすることができない。これは、温度測定に使用可能な分解能が得られないことを意味する。これより、試薬が設けられた作用極から対極への電圧印加による第1応答電流値と、試薬が設けられていない二電極への電圧印加による第2応答電流値とが、所望の分解能を得るのに必要であることがわかる。
また、実施例1-1は、第2の電圧(4V)が第1の電圧(2.5V)より高い例であり、実施例1-2は、第2の電圧(2.5V)が第1の電圧(2.5V)と同じである例であり、実施例1-3は、第2の電圧(2V)が第1の電圧(2.5V)より低い例である。図5(D)、図7(D)、図8(E)の結果より図7(D)で示す対応関係の分解能より、図5(D)及び図8(E)で示す対応関係の分解能のほうが、より高い分解能を示しているため、第1の電圧と異なる(高い又は低い)方が第2の電圧が第1の電圧と同じである場合より良い分解能を得ることができることがわかる。なお、実施例1-3では、図8(D)のグラフを参照すると、タイムコースではそれぞれの第2応答電流値の差は実施例1-2より小さいものの、対応関係を利用することで実施例1-2より適切な分解能が得られていることがわかる。
実施例1-1、実施例1-2及び実施例1-3のいずれにおいても測定した温度を利用し、測定したHct応答電流値(Hct値)及びGLU応答電流値(グルコース値)を補正することで各試料中のグルコースの値を最終グルコース値として正確に測定することができた(図示せず)。
なお、実施例1-1、実施例1-2及び実施例1-3のいずれにおいても第2応答電流値測定用のDC電圧の印加は2.5秒間連続して行い、第2の電圧の印加から1.5秒の時点で第2応答電流値を測定したが、DC電圧の印加を1.5秒間とし、終点である1.5秒の時点で第2応答電流値を測定してもよい。このように、第1の電圧および第2の電圧の印加時間や第1応答電流値及び第2応答電流値を取得する所定の時点は適宜変更することができる。第1応答電流値及び第2応答電流値として、使用される試薬や電極の種類を含めた分析用具の特性によって、最適な分解能を取得できる対応関係となるよう最適な値を選択すればよい。
〔実施例2〕
〔実施例2-1〕
実施例2-1として、以下のような実験を行った。実施例1で用いたバイオセンサ10Aを用い、流路9に実施例1と同じように調整した試料を導入してから0.5秒後に、電極17(試薬8あり)から電極16(試薬8なし)へ向かうDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加した。2.5秒経過時の応答電流値(第1応答電流値に相当)を取得した。これを1回目の測定における応答電流値とする。その後、3秒間の開回路(非通電状態)の後に、電極15(試薬なし)と電極16(試薬なし)との間にDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加し、1.5秒時の応答電流値(第2応答電流値に相当)を取得した。これを2回目の測定における応答電流値とする。このような実験を、グルコース値が一定でHct値が70%、42%、20%の夫々であり、温度が40℃、10℃、27℃に調整された各試料について行った。
以下の表1に、実施例2-1に係る実験の結果を示す。表1中のHct値(%)は、温度が40℃、10℃、27℃の夫々である試料のHct値を示す。応答電流値(μA)は、上記した2回目の測定における応答電流値を示す。応答電流値比は、1回目の測定における応答電流値と2回目の測定における応答電流値との比であり、当該比は1回目の測定における応答電流値と2回目の測定における応答電流値との関係を相対的に示す値の一例である。図9は、表1に示した応答電流値比([1回目の測定における応答電流値]/[2
回目の測定における応答電流値])と[2回目の測定における応答電流値]との対応関係を
示す点をマークしたグラフを示す。
図9のグラフのY軸(縦軸)は、応答電流値比であり、X軸(横軸)は応答電流値(μA)である。三角形の点は、試料の温度が40℃に調整された各試料についての対応関係を示す。また、グラフのX軸方向及びY軸方向に頂点が配置された四角形の点は、試料の温度が25℃に調整された各試料についての対応関係を示す。また、各辺がX軸方向又はY軸方向に配置された四角形の点は、試料の温度が8℃に調整された各試料の対応関係を示す。また、図9において、各温度に対応する点は、グラフの左側の領域、右側の領域、及びこれらの間の領域(中間領域)に置かれている。左側の領域にある点は、Hct値が70%の試料についての点である。また、真ん中の点は、Hct値が42%の試料につい
ての点である。また、右側の点は、Hct値が20%の試料についての点である。
図9のグラフに示す点について、同じHct値に対応する点が同じ領域に属し、且つ各領域が重ならないように、グラフの領域をHct20%、42%、70%の夫々に対応する3つの領域に区分けすることができる。また、各領域に属する点は、Hct値が同じであっても、温度が低くなるほど点の位置が低くなるという関係を示す。これらより、実施例2-1によれば、実施例1-1、1-2、1-3と同様に、温度の測定に好適な分解能が得られることがわかる。
〔実施例2-2〕
実施例2-2として、以下のような実験を行った。実施例1で用いたバイオセンサ10Aを用い、流路9に試料を導入してから0.5秒後に、電極15(試薬なし)と電極17(試薬なし)との間にDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加した。2.5秒経過時の応答電流値(第2応答電流値に相当)を取得した。これを1回目の測定における応答電流値とする。その後、3秒間の開回路(非通電状態)の後に、電極17(試薬8あり)から電極16(試薬8なし)へ向かうDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加し、1.5秒時の応答電流値(第1応答電流値に相当)を取得した。これを2回目の測定における応答電流値とする。このような実験を、グルコース値が一定でHct値が70%、42%、20%の夫々であり、温度が40℃、10℃、27℃に調整された各試料について行った。
以下の表2に、実施例2-2に係る実験の結果を示す。表2中のHct値(%)、応答電流値(μA)、応答電流値比の説明は、表1について行った説明と同様となるため、再度の説明は省略する。図10は、表2の応答電流比 ([1回目の測定における応答電流値]/[2回目の測定における応答電流値])と[2回目の測定における応答電流値]との対応
関係をマークしたグラフを示す。
図10に示すグラフの説明は、図9に示したグラフについて行った説明と同じとなるため、再度の説明は省略する。図10に示すように、実施例2-2でも、実施例2-1で得られた知見と同じ知見を得ることができ、温度測定に好適な分解能が得られていることがわかる。また、実施例2-1と実施例2-2の結果から、第1応答電流値を得る工程と第2応答電流値を得る工程とは逆でもよいことがわかる。
〔比較例2-1〕
比較例2-1として、以下のような実験を行った。実施例1で用いたバイオセンサ10Aを用い、流路9に試料を導入してから0.5秒後に、電極17(試薬8あり)から電極16(試薬8なし)へ向かうDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加した。2.5秒経過時の応答電流値を取得した。これを1回目の測定における応答電流値とする。その後、3秒間の開回路(非通電状態)の後に、同じ電極である電極17(試薬あり)から電極16(試薬なし)へ向かうDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加し、1.5秒時の応答電流値を取得した。これを2回目の測定における応答電流値とする。このような実験を、グルコース値が一定でHct値が70%、42%、20%の夫々であり、温度が40℃、10℃、27℃に調整された各試料について行った。
以下の表3に、比較例2-1に係る実験の結果を示す。表3中のHct値(%)、応答電流値(μA)、応答電流値比の説明は、表1について行った説明と同様となるため、再度の説明は省略する。図11は、表3の応答電流比([1回目の測定における応答電流値]/[2回目の測定における応答電流値])と[2回目の測定における応答電流値]との対応関係を示す点をマークしたグラフを示す。
図11に示すグラフの説明は、図9に示したグラフについて行った説明と同じとなるため、再度の説明は省略する。図11のグラフから、二つの応答電流値を得るための電極として試薬が設けられた電極を用いる場合(二つの応答電流値のいずれもが第1応答電流値に相当する応答電流値である場合)では、以下の知見が得られる。すなわち、実施例2-1(図9)、実施例2-2(図10)と異なり、各Hct値に対応する点を重複しない3つの領域に区分けすることができず、温度測定に好適な分解能が得られないことがわかる。
〔比較例2-2〕
比較例2-2として、以下のような実験を行った。実施例1で用いたバイオセンサ10Aを用い、流路9に試料を導入してから0.5秒後に、電極15(試薬なし)と電極17(試薬なし)との間にDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加した。2.5秒経過時の応答電流値を取得した。これを1回目の測定における応答電流値とする。その後、3秒間の開回路(非通電状態)の後に、同じ電極である電極15(試薬なし)と電極17(試薬なし)との間にDC電圧(2.5V)を2.5秒間連続して印加し、1.5秒時の応答電流値を取得した。これを2回目の測定における応答電流値とする。このような実験を、グルコース値が一定でHct値が70%、42%、20%の夫々であり、温度が40℃、10℃、27℃に調整された各試料について行った。
以下の表4に、比較例2-2に係る実験の結果を示す。表4中のHct値(%)、応答電流値(μA)、応答電流値比の説明は、表1について行った説明と同様となるため、再度の説明は省略する。図12は、表4の応答電流比( [1回目の測定における応答電流値]/[2回目の測定における応答電流値])と[2回目の測定における応答電流値]との対応
関係を示す点をマークしたグラフを図12に示す。
図12に示すグラフの説明は、図9に示したグラフについて行った説明と同じとなるため、再度の説明は省略する。図12のグラフから、二つの応答電流値を得るための電極として試薬が設けられない電極を用いる場合(二つの応答電流値のいずれもが第2応答電流値に相当する応答電流値である場合)では、以下の知見が得られる。すなわち、実施例2-1(図9)、実施例2-2(図10)と異なり、各Hct値に対応する点を重複しない3つの領域に区分けすることができず、温度測定に好適な分解能が得られないことがわかる。
実施例2-1、実施例2-2、比較例2-1、比較例2-2の結果から、温度測定に使用可能な適切な分解能(各温度でそれぞれに異なる相関)を得るために、試薬が設けられた電極を含む二つの電極を用いて試薬が設けられた電極から印加した電圧に対する試料の応答電流値と、試薬が設けられていない二つの電極を用いていずれかの電極から印加した電圧に対する試料の応答電流値とが必要であることがわかった。一方、いずれの応答電流値も試薬が設けられた電極を含む二つの電極を用いた場合や、試薬が設けられていない二つの電極を用いた場合は十分な結果を得ることができないことがわかった。一方で、実施例2-1と実施例2-2の結果から、第1応答電流値を得る工程と第2応答電流値を得る工程とは逆でもよいことがわかった。
なお、電極に対する印加電圧は、水の電気分解が起こる電圧に鑑み、DC1.0V程度が下限となる。また、1.0V以上であれば試料中の測定対象成分の影響を受けない応答電流値となる。一方、印加電圧の上昇に伴い試料中に気泡が発生するため、応答電流値が気泡の影響を受けた値となるため、印加電圧の上限は気泡の発生しない7V程度となる。なお、例えば、ルテニウム電極等を用いた上述の実施例の場合、下限が1.5Vで、上限が5.0Vの印加電圧であることが好ましく、第1の電圧の場合においては下限が2.0Vで、上限が3.5Vであることがより好ましく、第2の電圧の場合においては下限が2.0Vで、上限が4.5Vであることがより好ましい。なお、これはルテニウム電極の場合であり、異なる電極を用いた場合は、適切な印加電圧は異なる範囲となる。また、塩の種類によっても適切な印加電圧は異なる範囲となりうる。しかしながら、一般的な分析用具で用いられる電極または塩の場合には、1V以上7V以下から選択される印加電圧であることが好ましい。また、電圧は時間によって方向が変化しない電圧、つまりDC(直流)電圧が選択される。
実施形態で説明した測定方法及び装置によれば、分析用具が備える電極を用いて試料の温度を適正に測定することができ、Hct値やグルコース値の温度補正に適用する補正量の適正化を図ることができる。上述した実施形態で説明した構成は適宜組み合わせることができる。