JP6994100B2 - コンクリート剥落防止方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一般には、格子状の繊維強化樹脂(FRP)部材を用いたコンクリート剥落防止材に関するものであり、特に、例えば、トンネル、更には梁、柱、桁、壁、床版、煙突、給水槽等のコンクリート構造物において、コンクリート面を補強しコンクリートの剥落を防止すると共に、コンクリート面からの漏水に対する導水機能をも有した、コンクリート剥落防止工法に使用することのできる導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法に関するものである。
例えば、トンネルは、経年的に劣化し、トンネル壁面がひび割れして剥落すると共に、漏水する虞があり、そのために定期的に補修し剥落や漏水を防止する必要がある。
従来、所定の形状に成形されたプラスチック製薄板部材である、所謂、プラスチック板或いはプラスチックシートを、トンネル壁面の内側表面に設置し、アンカーボルトで固定し、トンネル内の漏水を防止する導水工法が採用されている。
例えば、特許文献1は、トンネルの覆工壁の内面に繊維強化プラスチック(FRP)製の補強シートを設置し、この補強シートをトンネルの円周方向に設置した湾曲弾性を有する繊維強化プラスチック製の支持枠により覆工壁側に圧接して保持するトンネルの剥落、防水を行う補修工法を開示している。
特許文献2には、波板状繊維強化プラスチック(FRP)板をアンカーボルトで発泡体部材と共に押え板を介してトンネル壁面に圧着、固定して導水樋を形成する工法が開示されている。
また、特許文献3には、両面に合成樹脂製のライナープレートが配置された合成樹脂製中空構造の複数の補強板を、トンネル天端部分より重ね部分を設けてトンネルの周方向に設置し、該重ね部分をアンカーボルトでトンネル壁面に固定して、トンネル覆工壁内面の剥落防止と導水を行うトンネル補修工法を記載している。
一方、特許文献4には、繊維強化プラスチック(FRP)で作製されたFRP格子筋をアンカーボルトでコンクリート面に固定し、コンクリートの剥落防止を行う剥落防止方法が開示されている。
特開2014-84665号公報 特開2007-247162号公報 特開2014-77338号公報 特開2006-9266号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の補修工法は、補強シート、支持枠などは、その成形が現場の形状に合わせて行う必要があり、また、支持枠を取付けるための取付溝の形成が必要であり、軽量性及び施工時の作業性の点で問題を有している。上記特許文献2、3に記載の補修工法も又軽量性及び施工時の作業性の点で問題があった。
特に、特許文献1~3に記載するように、プラスチック板或いはプラスチックシートを使用した場合において、材料として例えば不透明な塩化ビニール板を使用した場合には、補修した躯体におけるひび割れの進展、剥落状況、更には漏水個所や経時変化などが確認し難いと言う問題をも有していた。この問題を解決するために、透明のポリエチレンシートなどを使用した場合には、プラスチック板の特性として剥落対策には板を厚くする必要があり、単位面積当たりの重量が増し、施工時の作業性を非常に悪いものとした。更には、透明板でも幅が狭い場合には比較的軽量ではあるが、導水できる幅がその分狭く漏水幅によっては1枚では対処できないため並べて複数枚を施工する必要があった。従って、この場合は、板材やアンカー本数の増加で大幅なコストアップと施工時間の大幅な増加となってしまうと言う問題があった。また、トンネル内には照明器具やケーブルの留め具などが多数あり、導水工法などの施工にあたって現場での切り欠き加工や狭い場所への入れ込み作業などで重量増加や切り欠き加工のしずらさは作業性の面で非常に問題であった。
これに対して、特許文献4に記載のコンクリート剥落防止方法は、導水機能は有しておらず、トンネル内部の漏水部などへ施工した場合、少量の水でもそのまま水滴として車道などに落ちてしまった。しかしながら、コンクリートの剥落防止には大きな効果を有しており、且つ、特許文献1~3などに記載するような既存の工法に比べて圧倒的に軽量であり、高所作業車上での天井面施工など作業性の悪い場所での工事には施工性が大幅に改善される。また、軽量に加えて現場での加工性が良いためトンネル内付帯物などに対しても極めて容易に現場合わせ加工することができると言う利点を有している。
そこで、本発明者らは、特許文献4に記載するコンクリート剥落防止方法に使用されている、繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋と、該FRP格子筋の升目より小さい升目を有した網状物が一体化されたコンクリート剥落防止材を改良することにより、該コンクリート剥落防止材が本来有している、大きなコンクリート剥落防止効果や、圧倒的に軽量であること及び良好な作業性といった特長を維持したまま、漏水個所への施工が可能となり、特別に導水樋等を設置していないにも拘らず漏水をトンネル壁面に沿って下部まで導水可能であることを見出した。本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づくものである。
本発明の目的は、コンクリート片の剥落に対しても十分な耐荷重性能を有し、且つ、導水機能を有した、安価なしかも良好な施工性を有するトンネルの剥落防止工法などに使用することのできる導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法を提供することである。
上記目的は本発明に係るコンクリート剥落防止方法にて達成される。要約すれば、本発明によれば、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材をコンクリート面に固定してコンクリート面からのコンクリートの剥落を防止すると共に、コンクリート面からの漏水を下方へと導水するコンクリート剥落防止方法であって、
前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材は、
繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋と、
前記FRP格子筋の一側に設けられた、前記FRP格子筋の升目より小さい升目を有した網状物と、
前記網状物の、前記FRP格子筋とは反対側の面に設けられた厚さが0.01~0.1mmとされるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、塩化ビニール樹脂、ウレタン樹脂から選択される樹脂フィルムである導水フィルムと、
を有しており、
前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を前記導水フィルム側が前記コンクリート面に対面するようにしてアンカーボルトを打ち込み、前記コンクリート面に前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を密着して固定し、コンクリート面からの漏水を前記コンクリート面と前記導水フィルムとの間に形成された空隙を通って下方へと導水することを特徴とするコンクリート剥落防止方法が提供される。
上記本発明の一実施態様によれば、前記アンカーボルトは、ワッシャ―及び止水パッキンを介して前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を前記コンクリート面に固定する。
上記本発明の他の実施態様によれば、前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材は、長手方向の少なくとも一側の端部に継手用の厚さが0.01~0.1mmとされる樹脂フィルムが固着されている。
上記本発明の他の実施態様によれば、前記補強筋は、幅が3~10mm、厚さが1~5mmとされる。
上記本発明の他の実施態様によれば、前記補強筋は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸して形成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ボロン、チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、また、前記マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、又は、MMA樹脂を少なくとも一種以上含む。
上記本発明の他の実施態様によれば、前記補強筋の升目は、一辺が30~150mmの長方形又は正方形であり、前記網状物の升目は、一辺が1~25mmの長方形又は正方形である。
本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法は、コンクリート片の剥落に対しても十分な耐荷重性能を有し、且つ、導水機能を有した、安価なしかも良好な施工性を有している。
本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の一実施例の構成を説明する図である。 従来のコンクリート剥落防止材の一例の構成を説明する図である。 本発明に用いるFRP格子筋の斜視図である。 本発明に用いるFRP格子筋の交差部分の拡大図である。 図5(a)、(b)、(c)は、従来のコンクリート剥落防止材の製造方法の一例を説明する工程図である。 図6(a)、(b)は、従来のコンクリート剥落防止材を使用した本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の製造方法の一実施例を説明する工程図である。 図7(a)、(b)、(c)、(d)は、従来のコンクリート剥落防止材を使用した本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の製造方法の一実施例を説明する工程図である。 図8(a)、(b)は、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の製造方法の他の実施例を説明する工程図である。 従来のコンクリート剥落防止材のアンカーによる施工方法を説明する図であり、図9(a)は格子筋側より見た図であり、図9(b)は断面図である。 本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材のアンカーによる施工方法を説明する図であり、図10(a)は格子筋側より見た図であり、図10(b)は断面図である。 格子筋に対するアンカー止め部分の斜視図であり、図11(a)はアンカーを打ちこむ前の状態を示し、図11(b)はアンカー止め完了の状態を示す。 図12(a)は、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の一実施例を示す平面図であり、図12(b)、(c)は、それぞれ、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の一実施例を示す一部の断面図、及び、導水フィルム側から見た平面図であり、図12(d)、(e)は、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法の一実施例を説明する断面図である。 図13(a)は、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の一実施例を示す導水フィルム側から見た平面図であり、図13(b)は、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法の一実施例を説明する、図13(a)のB方向から見た一部端面図である。
以下、本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を使用したコンクリート剥落防止方法を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
(導水フィルム付きコンクリート剥落防止材及の全体構成)
図1に示す本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、基本的には、図2に示すような上記特許文献4に記載のコンクリート剥落防止材10Aを改良したものである。つまり、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋100と、該FRP格子筋100の升目より小さい升目を有した網状物3が一体化されたコンクリート剥落防止材10Aを改良することにより、コンクリート剥落防止材10Aが有する、本来の大きなコンクリート剥落防止効果、圧倒的に軽量、良好な作業性などの特長を有しており、更に、漏水個所への施工が可能となり、漏水をトンネル壁面に沿って下部まで導水が可能とされる。
最初に、従来のコンクリート剥落防止材10Aについて更に詳しく説明する。
図2、図3を参照すると、従来のコンクリート剥落防止材10Aは、上述のように、繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋100と、該FRP格子筋100の升目100aより小さい升目3aを有した網状物3を有し、FRP格子筋100と網状物3とは一体化された構成とされる。図3にて、FRP格子筋100は、通常、直交して格子状に配置された複数の補強筋即ち、縦補強筋101と横補強筋102とを備えている。各補強筋101、102は、例えば、ガラス繊維を一方向に並べて、ビニルエステル樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させたものを複数積層し、硬化して形成される。FRP格子筋100は、通常、補強筋幅(w)が3~10mm、厚さ(t)が1~5mm、であり、格子間距離(W1)が30~150mmとされる。つまり、FRP補強筋100の升目100aは一辺が30~150mmの長方形又は正方形とされる。上述のように、各補強筋101、102は互いに直交して配置されるが、所望に応じて互いに90°以外の所定の角度にて交差し、格子状となるように構成することも可能である。
通常、強化繊維としてガラス繊維を使用した場合には、FRP格子筋100は500N/mm以上の引張強度、30000N/mm以上の引張弾性率を有している。
また、このような構成のFRP格子筋100は、軽量で、耐食性であり、また曲げ易く、施工性に優れている。また、図4に示すように、補強筋101、102の交差部分が他の補強筋部分と同一平面上にあり略平面形状をなし、全体として薄いシート状とされ、重ねてもかさばらない。
FRP格子筋100に使用する強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維;ボロン、チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数混入したハイブリッドタイプとし得る。マトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はMMA樹脂を少なくとも一種使用することができる。FRP格子筋100の樹脂含浸量は、30~70%(体積)とされ、通常40~60%(体積)とされる。
こうした軽量かつ高強度の連続繊維FRP格子筋100を用いているため、作業がし易く安全で、また大きなコンクリートの剥落防止効果が期待できる。
上記構成のFRP格子筋100に対して、図2に示すように、目の細かい、例えば、ポリエステル繊維を使用した網目(升目)3aが一辺10mmの正方形のポリエステル製網状物(即ち、ポリエステル繊維ネット)3が、升目100aの正方形の1辺が50mmのFRP格子筋100の下に重ねて一体とされる。従来は、この一体とされたコンクリート剥落防止材10Aは、図9(a)、(b)に示すように、網状物3が、FRP格子筋100とコンクリート構造物7の壁面7Aとの間に位置するようにして、例えば拡張式アンカーボルト1及びワッシャー2を用いてコンクリート構造物7に取り付けられている。網状物3の升目3aの大きさは一目の大きさがFRP格子筋100の升目100aより小さく、例えば、上述のように、升目100aである正方形の1辺が50mmのFRP格子筋100に対して、網状物3の升目3aは1辺10mmのものが用いられている。このように網状物3をFRP格子筋100に重ねたことにより、網状物3によって小さなコンクリート片などの落下を、また、FRP格子筋100によって大きなコンクリート片などの落下を防止することができる。
上述において、網状物3としては、ポリエステル製の升目3aが正方形の網状物を用いるものとしたが、升目3aの形状はこれに限るものではなく、交差部をからみ織りのように、織り込んで固定したもの、交差部を樹脂バインダー等の結合材で固定したもの、或いは、繊維かヤーン自体を熱溶融で固定したもの等を用いることが可能である。網状物3の材質に関しては、ポリエステル繊維の他にも、ビニロン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド、塩化ビニル、アクリルの合成繊維や、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維から適宜選択し得る。例えば、網状物3としては、ビニロン繊維ネット、ナイロン繊維ネット、ポリオレフィンヤーンネット、ガラス繊維ネット等が用いられる。また、網状物3の升目3aの大きさは一目の大きさがFRP格子筋100の升目100aより小さければよく、通常、一辺が1~25mmの長方形又は正方形である。
図5(a)、(b)、(c)を参照して上記従来のコンクリート剥落防止材10Aの製造方法について説明すると次の通りである。
図3及び図4を参照して説明したように、FRP格子筋100は、マトリクス樹脂が含浸された縦補強筋101及び横補強筋102を格子状に配置して全体が略平面形状に成形され、次いで、含浸樹脂を硬化してシート状のFRP格子筋100が作製される。
その後、図5(a)に示すように、この樹脂硬化されたFRP格子筋100の一側に固着材5、好ましくは、FRP格子筋100のマトリクス樹脂と同じ樹脂(接着剤)にて網状物3が一体に固着される。このようにして、網状物3がFRP格子筋100に一体に固着されたコンクリート剥落防止材10A(図5(c))を作製することができる。
また、別法としては、図5(b)に示すように、FRP格子筋100と網状物3は、FRP格子筋100の成形時に、即ち、マトリクス樹脂が含浸された縦補強筋101及び横補強筋102を格子状に配置し未だマトリクス樹脂が硬化されていない未硬化状態のFRP格子筋100Aに対して網状物3を重ね合わせて一体化させて成形し、その後、FRP格子筋100Aの含浸樹脂を硬化して、網状物3がFRP格子筋100に一体に固着されたコンクリート剥落防止材10A(図5(c))を作製することができる。
上記にて理解されるように、コンクリート剥落防止材10Aは、FRP格子筋100が繊維強化プラスチック(FRP)とされ、網状物3も合成樹脂繊維製或いはガラス繊維製などとされるので錆びて腐食する心配がなく、施工後のメンテナンスも容易である。
次に、図1及び図10を参照して、本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10について説明する。
上述したように、本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、上記構成とされる従来のコンクリート剥落防止材10Aにて、FRP格子筋100に一体にされた網状物3の、FRP格子筋100側とは反対側の面に一体に導水フィルム4が固着される。導水フィルム4は、導水フィルム4がコンクリート構造物7の壁面7Aに対面するようにして、即ち、導水フィルム4がコンクリート面7Aと網状物3との間に位置するようにして、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10をトンネルなどのコンクリート構造物7の補修面7Aに設置する。これにより、コンクリート構造物7からのコンクリート片の剥落を防止し得ると共に、補修個所からの漏水を壁面7Aに沿って下部まで導水することができる。
従って、本発明にて使用される導水フィルム4には、
(1)可搬性、施工性の点から軽量であること、
(2)耐久性の点から、即ち、コンクリート構造物からのアルカリ性の漏水に対する耐アルカリ性、及び、外気に対する耐紫外線性を有すること、
(3)コンクリート片などの落石により、或いは、施工時のボルト定着の際の穿孔により裂けることを回避するに十分な靭性を有していること、
(4)補修後のコンクリート面におけるひび割れの進展、剥落状況、更には漏水個所や経時変化などの確認のために透明性を有していること、
などが要求される。
上記諸要求を満足する材料としては、フィルム状のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、塩化ビニール樹脂、ウレタン樹脂、などが考えられるが、本発明者らの実験研究の結果によると、後で説明するように、ポリエチレン樹脂フィルムが最適であることが分かった。また、導水フィルム4としてのポリエチレン樹脂フィルムの厚さは、0.01~0.1mmとされる。フィルム厚さが0.01mm未満では、フィルム強度不足で破れやすく、また、貼り合わせの作業性が悪いといった問題があり、また、0.1mmを超えると、万一の着火時に自己消火し難くなるといった問題が起こる。
(導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の製造方法)
次に、図6、図7を参照して、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の製造方法について説明する。
第1の製造例
図6(a)には、図5を参照して説明したような既製のコンクリート剥落防止材10Aを使用して本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を製造する方法を示す。即ち、繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋100の一側に網状物3を一体に固着して作製されたコンクリート剥落防止材10Aに対して、網状物3のFRP格子筋100とは反対側の面に導水フィルム4を固着材5にて一体に固着する。固着材は、網状物3に塗布しても良く、導水フィルム4側に塗布しても良く、導水フィルム4を網状物3に押圧することにより、導水フィルム4がコンクリート剥落防止材10Aに一体に固着され、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10が作製される(図6(b))。
固着材5は、FRP格子筋100と網状物3とを固着した樹脂(接着剤)と同じとすることもでき、また、粘着剤、例えば、アクリル系樹脂粘着剤などを使用することもできる。
なお、導水フィルム4は、その材質によっては固着材5により網状物3に固着することが困難な場合がある。例えば、導水フィルム4として好適に使用し得るポリエチレン樹脂フィルムは、単に、接着剤或いは粘着剤などの固着材5を使用して網状物に固着することは困難である。
そこで、このような場合には、図7(a)、(b)、(c)に示すように、先ず、導水フィルム4の表面に対して表面処理を予め施すのが良い。表面処理法としては、種々の方法を使用し得るが、本実施例では、コロナ放電処理を行った(図7(a))。表面処理を行った導水フィルム4の表面は固着材5の塗布が容易となり、例えば、固着材5としてアクリル系樹脂粘着剤を使用することができる(図7(b))。
このようにして粘着剤5が一様に塗布された導水フィルム4をコンクリート剥落防止部材10Aの網状物3側に重ね合わせて互いに押圧することにより(図7(c))、導水フィルム4がコンクリート剥落防止材10Aに極めて良好に一体に固着され、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10が作製される(図7(d))。
第2の製造例
上記第1の製造例は、既製のコンクリート剥落防止材10Aを使用して本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を製造する方法について説明した。
別法としては、図8(a)、(b)に示すように、FRP格子筋100と網状物3と導水フィルム4は、FRP格子筋100の成形時に、即ち、マトリクス樹脂が含浸された縦補強筋101及び横補強筋102を格子状に配置し未だマトリクス樹脂が硬化されていない未硬化状態のFRP格子筋100Aに対して重ね合わせて押圧して成形し、その後、FRP格子筋100Aの含浸樹脂を硬化して、網状物3及び導水フィルム4がFRP格子筋100に一体に固着された導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を作製することができる(図8(b))。即ち、網状物3及び導水フィルム4は、FRP格子筋100Aのマトリクス樹脂が接着剤として作用することにより一体に接着され、その後樹脂を硬化して、FRP格子筋100、網状物3、導水フィルム4が一体に固着される。
上記製造例に記載するように、本発明の製造方法によれば、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を効率よく、且つ、安価な製造コストにて作製することができる。
また、このようにして作製した本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、上述のように、導水フィルム4として厚さが0.01~0.1mmのポリエチレン樹脂フィルムを使用することにより、透明であり、補修後のコンクリート面におけるひび割れの進展、剥落状況、更には漏水個所や経時変化などの確認が可能である。また、ポリエチレン樹脂フィルムは、耐アルカリ性、耐紫外線性を有しており、耐久性に優れている。更に、ポリエチレン樹脂フィルムは、靭性が高く、アイゾット衝撃試験でも破断しない。また、低温でも固くならない。従って、コンクリート片などの落石により、或いは、施工時のボルト定着の際に裂けることがない。更には、上記構成の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、導水フィルム4自体が軽量であり、剥落防止材10全体の重量が軽量とされ、可搬性、施工性に優れている。更に、安価である。
更に重要なことは、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、例えばトンネルの補修などに使用される場合には、自己消火性があること、及び、有毒ガスを発生しないことが要求され、詳しくは、後述するように、上記構成とされる導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、これらの条件をも満足していることが分かった。これは、使用している導水フィルム4自体は、燃焼性を有しているが、フィルム自体が0.01~0.1mmと薄いため、質量が小さいこと、及び、格子状に一体に成形されているFRP格子筋100が延焼防止障壁の機能をなしていることから、必要とされる自己消火性基準を満足しており、また、発生ガスの安全性の基準をも満足していることが分かった。このように、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10が自己消火性、発生ガスの安全性の基準を有していることにより、万一、トンネル内で火災事故が発生した場合においても、有害ガスの発生を防止し、且つ、延焼を防止する機能を有していることが明らかであり、斯かる点からも極めて重要な特長を有している。
(導水フィルム付きコンクリート剥落防止材の施工方法)
次に、上記構成の本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を使用したコンクリート剥落防止方法について説明する。
導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、例えば、図10(a)、(b)、図11(a)、(b)に示すように、従来と同様に、例えばステンレススチール(SUS)製の拡張式アンカーボルト1、及び、アンカーボルト1の座金としてのワッシャー2によって、所定の間隔にて、本実施例では斜め方向2升おきに固定してコンクリート構造物7に取り付けられる。
つまり、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10をコンクリート構造物7に固定する時、FRP格子筋100の少なくとも1升分に相当する外形状をなし、中央部にコンクリート面7A側へと窪んだ凹部Aを備えたワッシャー2を、コンクリート面7Aに設置した剥落防止材10のFRP格子筋100の外表面に適合し(図11(a))、次いで、ワッシャー2の凹部Aに形成した貫通孔Dを貫通してアンカーボルト1をコンクリート面7Aに打ちこみ、ワッシャー2を介して導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10をコンクリート構造物7に固定する(図11(b))。このとき、図10(b)に示すように、止水パッキン5をワッシャ―2と網状物3との間に設置し、コンクリート面7Aからの漏水が、アンカーボルト1を伝って外部へと漏れ落ちることを防止するのが好ましい。
ワッシャー2の材質としては、一般に、鋼板、ステンレススチール、チタン、真鍮、アルミニウム等の金属が用いられる。また、止水パッキン5としては、伸縮性に優れた合成ゴム発泡体を用いることで十分な止水性が得られる。例えば、三和化工株式会社製の「オプシーラー」(商品名)などが使用される。
また、アンカーボルト1としては、一般に通用されているものなら使用可能であるが、本実施例のように拡張式アンカーボルト1を使用するのが好ましい。拡張式アンカーボルトは、図11(a)に示す足先部分Cのように、アンカーボルト1の足先が割れており、打ちこんだ時に割れた足先Cが開いて拡張するようになっているので、コンクリート7内部でアンカーボルト1の足部先端Cが外側に開く方向に力がかかり、取付力が強力である。特に、アンカーボルト1を打ち込んだ後、更に、アンカーボルト1に螺合した緩み止めナット1aを締めることにより、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、ワッシャー2及び止水パッキン5を介してコンクリート面7Aに止水性良く固定される。
本実施例において、ワッシャー2はFRP格子筋100の1升と略同形状とされ、FRP格子筋1升につき、1個のアンカーボルト、1個のワッシャーで覆っているが、ワッシャー2の面積、1個のワッシャー2で覆う升数、及びアンカーボルト1の数、更には、アンカーボルト1の形態については、これに限定されるものではない。
斯かる構成の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、コンクリート構造物7に対して、補強筋101、102、網状物3、導水フィルム4部分を損傷することなく、容易に、迅速に、しかも極めて安定して設置することができる。
本発明に係る導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、任意の大きさ、形状に作製することができるが、通常、可搬性、取扱い性を考えて、図12(a)に示すように、幅W0が0.5~2m、長さL0が1~3mとされ、通常、幅W0が1m、長さL0が2m程度の長方形とされる。従って、例えば、トンネルの内壁面に取付けてコンクリート片の剥落を防止する際には、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向がトンネルの周方向となるように設置される。そのため、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、周方向に隣接する導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10同志を導水可能に接続することが必要となる。
そこで、図12(a)、(b)、(c)に示すように、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向一側の端部に継手用のフィルム20を予め貼り付けておくことができる。つまり、継手用フィルム20は、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10に使用した導水フィルム4と同様の厚さが0.01~0.1mm程度の樹脂フィルムとすることができ、例えば、ポリエチレン樹脂フィルムなどを使用することができる。この継手用フィルム20は、長さL20が15~20cmとされ、その半分の長さ(L20×1/2)領域が導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向一端部の、且つ、導水フィルム4の側に、固着材(粘着剤或いは接着剤)21を介して固着される。作業性の点から固着材21を有した両面テープを利用するのが好ましい。継手用フィルム20の幅は、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の幅W0とされる。
このように、継手用フィルム20を備えた導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10(10-1、10-2、10-3)を、図12(d)、(e)に示すように、先ず、第1の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1をアンカーボルト1(図示せず)によりコンクリート構造物7の表面7Aに固定し、ついで、第2の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の継手用フィルム20が設けられていない長手方向一端部を固着材21介して第1の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の継手用フィルム20に固着すると共に、第2の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-2をアンカーボルト1(図示せず)によりコンクリート構造物7の表面7Aに固定する。以後、必要に応じて、第3の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-3等を引き続いてコンクリート構造物7の表面に固定する。
上記施工法をトンネルの剥落防止のために施工する際には、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1がトンネルの最も高い、即ち、上流の漏水位置とされ、従って、コンクリート構造物7から導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1へと漏水した水は、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1から、より下流側に設置されている導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-2、10-3を通って下流側へと導水される。
もし、漏水位置が、例えば、トンネルなどの最も高い天井部分にある場合には、天井部分に設置する導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1は、図12(d)に一点鎖線にて示すように、長手方向の他端部にも、即ち、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1の両端部に継手用フィルム20、20を設け、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-1の長手方向両端部から導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10-2、10-3等を接続してトンネル下方端部へと連続して設置することとなる。
本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、例えばトンネルにおけるコンクリート剥落防止においては、上述のように、トンネルの周方向に連続して設置することが必要となる他に、トンネルの周方向に直交する、即ち、トンネルの延長方向に設置することが必要とされことがある。そのため、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、トンネルからの漏水をトンネルの延長方向において止水し、下方へと導水することが必要とされる。
そこで、図13(a)、(b)に示すように、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向の両側縁部に沿って止水パッキン手段30を設けることができる。つまり、止水パッキン手段30は、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向縁部に沿って延在して配置された、ポリウレタンなどの合成樹脂等を発泡成形したスポンジにて作製することができる。本実施例では、止水パッキン手段30は、幅W31、高さH31とされる断面が矩形状の止水スポンジ31を距離G31だけ離間して平行に配置することによって形成される。本実施例では、幅W31は10mm、高さH31が10mmの正方形断面の止水スポンジ31、31を距離G31が10mmだけ離間して固着材(粘着剤或いは接着剤)32にて固着した。作業性の点から固着材32を有した両面テープを利用するのが好ましい。また、このように、平行に2本の止水スポンジ31、31を設けた場合には、止水スポンジの効果を最大に発揮するために、この2本の止水スポンジ31、31の間の空間(G31の領域)を利用してアンカー止めするのが好ましい。
なお、パッキン手段30は、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向縁部から距離G33、例えば5~10mm程度内方に寄って設けることもできるが、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の長手方向縁部に、即ち、距離G3=0、とすることもできる。
上記実施例では、止水パッキン手段30は、2本の止水スポンジ31、31を距離G31だけ離間して平行に配置することによって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、当然1本の止水パッキン31にて構成することもできる。更に、図12を参照して説明した継手用フィルム20を備えることも可能である。
(実験例)
次に、本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10の導水効果の立証、並びに、自己消火性及び発生ガスの安全性について行った実験例について説明する。
(試験体)
本実験例にて使用した試験体は、図2で示すような、FRP格子筋100に網状物3が一体に形成された既存のコンクリート剥落防止材10Aに、図1に示すように、導水フィルム4を固着材5として粘着剤を使用して一体に固着した導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10を使用した。
コンクリート剥落防止材10Aとしては、新日鉄住金マテリアルズ株式会社より市販されている「トウメッシュ「FTM-G4G」」(商品名)を使用した。このコンクリート剥落防止材10Aは、次のような構成とされる。
・FRP格子筋100
FRP格子筋100は、ガラス繊維ロービングを一方向に並べてビニルエステル樹脂を含浸させた縦補強筋101と横補強筋102を複数積層し、硬化して形成したものであり、樹脂含浸量は、50%(体積)である。補強筋幅(w)は10mm、厚さ(t)が3mm、格子間距離(W1)は45mmである。各補強筋101、102は互いに直交して配置したものである。
・網状物3
網状物3としては、ガラス繊維を使用した網目(升目)3aが一辺3mmの正方形とされるガラス繊維ネット3が使用されている。
コンクリート剥落防止材10Aは、FRP格子筋100を成形する際に、ガラス繊維ネットを重ねて一体に接着することによって作製されたものである。
・導水フィルム4
本試験の試験体である導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、図7を参照して説明したように、導水フィルム4として厚さが0.03mmのポリエチレン樹脂フィルムを使用し、表面処理を施した後、フィルム表面に固着材5としてアクリル系樹脂粘着剤を塗布し、上記コンクリート剥落防止材10Aに一体に接着して作製した。粘着剤層の厚さは、0.03mm程度であった。
(ガス有害性試験)
発生ガスの安全性を試験するためのガス有害性試験は、旧建設省告示昭和51年第1231号の第4ガス有害性試験装置及び測定方法に準拠した試験を実施した。
本試験体の加熱試験の結果は、15分であり、「6.8分以上」の基準を満足するものであった。
(延焼性・自己消火性試験)
延焼性・自己消火性を試験するための延焼性・自己消火性試験は、旧建設省告示昭和51年第1231号の試験法738に準拠した試験を実施した。
本試験体の延焼性・自己消火性試験の結果は、「消炎時間が30秒以下、延焼範囲600mm以下」とする基準を満足するものであった。
(導水試験)
試験用トンネル(略半径3m程度)に、図10、図11に示すように、上記構成の試験体をアンカーボルト1、ワッシャー2、止水パッキン5を使用して施工した。なお、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10をトンネルの壁面7Aにアンカーボルト1により密着して固定するに際して、導水フィルム4が裂けるようなことはなく、極めて容易に作業を行うことができた。
次いで、トンネルの天井部に水を注入したところ、水は、トンネルの天井部から下端部へと、途中で漏れることもなく流動して下端部から排水された。
つまり、試験体である導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、トンネルの壁面7Aにアンカーボルト1、ワッシャー2、止水パッキン5、により密着して固定されてはいるが、トンネル壁面7Aには凹凸があり、そのために、トンネル壁面7Aと導水フィルム4との間は、空隙が存在している。従って、トンネル壁面7Aから導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10へと染み出した水は、導水フィルム4とトンネル壁面7Aとの間に形成されている空隙を通ってトンネル下部へと何ら問題なく円滑に流動することが分かった。なお、上述したように、導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10をトンネル壁面7Aにアンカーボルト1などにより密着して固定するに際して、導水フィルム4が裂けるようなことはなく、極めて容易に作業を行うことができた。
本発明の導水フィルム付きコンクリート剥落防止材10は、コンクリート構造物としての、例えばトンネルの壁面からのコンクリート片などの剥落を防止するのみならず、梁、柱、桁、壁、床版、煙突、給水槽等のコンクリート構造物の壁面からのコンクリート片などの剥落防止及び漏水対策のための補修工法に採用して有効である。
1 アンカーボルト
2 ワッシャー
3 網状物
4 導水フィルム
5 止水パッキン
10 導水フィルム付きコンクリート剥落防止材
10A コンクリート剥落防止材
20 継手用フィルム
30 止水パッキン手段
31 止水スポンジ
100 FRP格子筋
101 FRP縦補強筋
102 FRP横補強筋

Claims (6)

  1. 導水フィルム付きコンクリート剥落防止材をコンクリート面に固定してコンクリート面からのコンクリートの剥落を防止すると共に、コンクリート面からの漏水を下方へと導水するコンクリート剥落防止方法であって、
    前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材は、
    繊維強化樹脂である補強筋を格子状に配置して形成されたFRP格子筋と、
    前記FRP格子筋の一側に設けられた、前記FRP格子筋の升目より小さい升目を有した網状物と、
    前記網状物の、前記FRP格子筋とは反対側の面に設けられた厚さが0.01~0.1mmとされるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、塩化ビニール樹脂、ウレタン樹脂から選択される樹脂フィルムである導水フィルムと、
    を有しており、
    前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を前記導水フィルム側が前記コンクリート面に対面するようにしてアンカーボルトを打ち込み、前記コンクリート面に前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を密着して固定し、コンクリート面からの漏水を前記コンクリート面と前記導水フィルムとの間に形成された空隙を通って下方へと導水することを特徴とするコンクリート剥落防止方法。
  2. 前記アンカーボルトは、ワッシャ―及び止水パッキンを介して前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材を前記コンクリート面に固定することを特徴とする請求項に記載のコンクリート剥落防止方法。
  3. 前記導水フィルム付きコンクリート剥落防止材は、長手方向の少なくとも一側の端部に継手用の厚さが0.01~0.1mmとされる樹脂フィルムが固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート剥落防止方法。
  4. 前記補強筋は、幅が3~10mm、厚さが1~5mmとされることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のコンクリート剥落防止方法。
  5. 前記補強筋は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸して形成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ボロン、チタン、スチール等の金属繊維;アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、PBО、高強度ポリプロピレン等の有機繊維;から選択されるいずれかの繊維であるか、或いは、前記繊維を複数種混入したハイブリッドタイプとされ、また、前記マトリクス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、又は、MMA樹脂を少なくとも一種以上含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかの項に記載のコンクリート剥落防止方法。
  6. 前記補強筋の升目は、一辺が30~150mmの長方形又は正方形であり、前記網状物の升目は、一辺が1~25mmの長方形又は正方形であることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載のコンクリート剥落防止方法。
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