以下、本発明の実施の形態について、ホイール式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、実施の形態では、後述する油圧ショベル1の走行方向を前,後方向とし、油圧ショベル1の走行方向と直交する方向を左,右方向として説明する。
ホイール式の油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なホイール式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。ホイール式の油圧ショベル1は、ホイール式の下部走行体2によって一般道路を走行し、作業現場において作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
ここで、上部旋回体3は、作業装置4が設けられた部位が前側となり、後述のカウンタウエイト14が設けられた部位が後側となっている。また、上部旋回体3は、後述のキャブ21が設けられた部位が左側となり、作業装置4を挟んでキャブ21と反対側が右側となっている。
作業装置4は、後述する旋回フレーム13の前側に上,下方向に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端側に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端側に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fとを含んで構成されている。
油圧ショベル1の下部走行体2は、一般道路を走行可能なホイール式の走行体として構成されている。下部走行体2は、後述のシャーシ5、左,右の前輪6、左,右の後輪7、前部アウトリガ11、後部アウトリガ12を含んで構成されている。
シャーシ5は、下部走行体2のベースを構成している。シャーシ5は、前,後方向に延びる上面板、下面板および左,右の側面板によって囲まれたボックス構造体として形成されている。シャーシ5上には、旋回装置(図示せず)を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。シャーシ5の前側には、左,右方向に延びるフロントアクスル(図示せず)を介して左,右の前輪6がステアリング操作可能に取付けられている。また、シャーシ5の後側には、左,右方向に延びるリヤアクスル(図示せず)を介して左,右の後輪7が取付けられている。
シャーシ5には、左,右の前輪6よりも後側に位置して各前輪6を後部上側から覆う前部フェンダ8と、左,右の後輪7よりも前側に位置して各後輪7を前部上側から覆う後部フェンダ9(右側のみ図示)とが設けられている。左,右の前部フェンダ8と左,右の後部フェンダ9との間には、それぞれ下部走行体2側の乗降ステップ10(右側のみ図示)が設けられている。乗降ステップ10は、前部フェンダ8と後部フェンダ9との間を前,後方向に延びる複数段、例えば3段のステップからなっている。乗降ステップ10は、オペレータが地上と上部旋回体3との間で乗降するときの足場を形成している。
シャーシ5の前端には、左,右の前輪6よりも前側に位置して、アーム部11Aを有する前部アウトリガ11が取付けられている。一方、シャーシ5の後端には、左,右の後輪7よりも後側に位置して、アーム部12Aを有する後部アウトリガ12が取付けられている。油圧ショベル1は、作業装置4を用いた掘削作業時に、前部アウトリガ11のアーム部11A、および後部アウトリガ12のアーム部12Aを地面に押付けることにより、姿勢を安定させることができる。なお、油圧ショベル1を用いて排土作業や整地作業を行う場合には、前部アウトリガ11に代えてシャーシ5の前端に排土板装置を取付けることができる。
油圧ショベル1の上部旋回体3は、後述の旋回フレーム13、カウンタウエイト14、エンジン15、熱交換器18、作動油タンク19、燃料タンク20、キャブ21、建屋カバー22を含んで構成されている。
車体フレームとしての旋回フレーム13は、上部旋回体3のベースを構成し、下部走行体2上に旋回可能に取付けられている。旋回フレーム13は、前,後方向に延びる厚肉な平板状の底板13Aと、底板13A上に立設された左縦板13Bおよび右縦板13Cと、底板13Aの左側に配置された左サイドフレーム13Dと、底板13Aの右側に配置された右サイドフレーム13Eとを含んで構成されている(図6参照)。左縦板13Bと左サイドフレーム13Dとの間は、複数の左張出しビーム13Fによって接続され、右縦板13Cと右サイドフレーム13Eとの間は、複数の右張出しビーム13Gによって接続されている。左縦板13Bおよび右縦板13Cの前側には、作業装置4を構成するブーム4Aのフート部(基端部)が回動可能に取付けられている。また、旋回フレーム13の左後側には、左縦板13Bと左サイドフレーム13Dとの間に位置して熱交換器取付台13Hが設けられている。
カウンタウエイト14は、旋回フレーム13の後側に設けられている。カウンタウエイト14は、作業装置4との重量バランスをとる重量物として形成され、旋回フレーム13の左縦板13Bおよび右縦板13Cの後側に取付けられている。
原動機としてのエンジン15は、カウンタウエイト14よりも前側に位置して旋回フレーム13上に搭載されている。エンジン15は、左,右方向に延びる横置き状態に配置されている(図6参照)。エンジン15の左側には、後述の冷却ファン17が設けられ、エンジン15の右側には、油圧ポンプ16が設けられている。油圧ポンプ16は、エンジン15によって駆動されることにより、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて圧油を供給する。なお、原動機としては、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータとを組合せたハイブリッド式の原動機を用いることができる。
冷却ファン17は、エンジン15の左側に設けられている。冷却ファン17は、エンジン15によって駆動されることにより、図6中の矢印Fで示すように建屋カバー22内(機械室23)に外気を吸込む吸込み式のファンからなっている。冷却ファン17は、建屋カバー22内に吸込んだ外気を冷却風として熱交換器18に供給する。
熱交換器18は、エンジン15よりも左側に位置して旋回フレーム13上に搭載されている。熱交換器18は、冷却ファン17を挟んでエンジン15とは反対側に配置され、エンジン冷却水および作動油等の流体を冷却する。熱交換器18は、旋回フレーム13の熱交換器取付台13Hに取付けられた支持枠体と、この支持枠体によって支持されたラジエータ、オイルクーラ等を含んで構成されている。ラジエータは、冷却ファン17からの冷却風によってエンジン冷却水を冷却することによりエンジン15を冷却する。オイルクーラは、各種の油圧アクチュエータから作動油タンク19内に戻る戻り油(作動油)を、冷却ファン17からの冷却風によって冷却する。
作動油タンク19は、油圧ポンプ16よりも前側に位置して旋回フレーム13の右側(右サイドフレーム13E側)に搭載されている。作動油タンク19には、油圧ショベル1に搭載された各種アクチュエータに供給される作動油が貯留されている。燃料タンク20は、作動油タンク19の前側に隣接して旋回フレーム13の右側に設けられている。燃料タンク20には、エンジン15に供給される燃料が貯留されている。
旋回フレーム13の左前側には、運転室を画成するキャブ21が設けられている。キャブ21内には、運転席、走行用操作レバー、作業用操作レバー等(いずれも図示せず)が設けられている。
建屋カバー22は、カウンタウエイト14よりも前側に位置して旋回フレーム13上に設けられている。建屋カバー22は、旋回フレーム13に設けられたサポート部材(図示せず)に取付けられることにより内部に機械室23を形成し、この機械室23内にエンジン15、油圧ポンプ16、熱交換器18等の搭載機器を収容している。図6等に示すように、建屋カバー22は、左側面カバー24と、右側面カバー25と、上面カバー26と、後述の点検用開口27と、熱交換器カバー29と、原動機カバー30とを含んで構成されている。
建屋カバー22の左側面カバー24は、旋回フレーム13の左サイドフレーム13Dから上方に延びている。建屋カバー22の右側面カバー25は、右サイドフレーム13Eから上方に延びている。建屋カバー22の左側面カバー24および右側面カバー25は、それぞれ旋回フレーム13に設けられたサポート部材にヒンジ機構を介して取付けられている。これにより、左側面カバー24は、機械室23を左側方から開閉可能に覆い、右側面カバー25は、機械室23を右側方から開閉可能に覆っている。左側面カバー24には、機械室23の内部と外部とを連通させる複数の通気孔24Aが形成されている。従って、冷却ファン17が回転すると、通気孔24Aを通じて外気が建屋カバー22内(機械室23)に導入され、この外気が冷却風となって熱交換器18に供給される。
建屋カバー22の上面カバー26は、左側面カバー24の上端と右側面カバー25の上端との間を覆って左,右方向に延びている。上面カバー26の前端は、作動油タンク19の前端位置まで延在している。上面カバー26には、エンジン15の上方に位置して点検用開口27が設けられている。機械室23に収容されたエンジン15等の搭載機器に対する点検作業を行うときには、作業者は、建屋カバー22の上面カバー26上で原動機カバー30を開位置へと移動させ、点検用開口27を通じて点検すべき搭載機器にアクセスする構成となっている。上面カバー26のうち点検用開口27よりも右側(右側面カバー25側)には、前,後方向に延びる長方形状をなす複数(例えば2個)の通気孔26Aが形成されている。これら複数の通気孔26Aは、機械室23の内部と外部とを連通させている。従って、冷却ファン17によって機械室23内に供給された冷却風は、熱交換器18、エンジン15を冷却した後には、通気孔26Aを通じて機械室23の外部に排出される。
上面カバー26の点検用開口27よりも前側(キャブ21側)には、複数の点検作業用の足場28が設けられている。図3および図5に示すように、複数の足場28は、上面側に多数の突起28Aが突設された板体として形成され、ボルト等を用いて上面カバー26に固定されている。この場合、足場28に突設された各突起28Aは、作業者の靴底に対する滑り止めの役目を果たす。一方、足場28に多数の突起28Aが突設されているため、降雪時に足場28に落下した雪は、各突起28A間に付着し易くなっている。
熱交換器カバー29は、熱交換器18の上側で、かつキャブ21よりも後側に位置して上面カバー26上に設けられている。図5および図6に示すように、熱交換器カバー29は、前面板29Aと、後面板29Bと、左側面板29Cおよび上面板29Dとにより、上方から見て前,後方向に延びる長方形の箱状に形成され、熱交換器18を上方から覆っている。前面板29Aと後面板29Bとは、前,後方向で対面した状態で上面カバー26から上方に立上っている。左側面板29Cは、前面板29Aおよび後面板29Bの左端を連結して上面カバー26から上方に立上っている。上面板29Dは、前面板29A、後面板29Bおよび左側面板29Cの上端を閉塞している。熱交換器カバー29の右端は開口端29Eとなり、この開口端29Eは、原動機カバー30によって閉塞されている。
原動機カバー30は、熱交換器カバー29の右側に隣接して上面カバー26上に設けられている。原動機カバー30は、点検用開口27の周囲を取囲んで上面カバー26から立ち上がる周壁面部としての前壁面板30A、後壁面板30B、右側壁面板30Cと、天面部としての天面板30Dとにより、上方から見て正方形の箱状に形成され、エンジン15を含む搭載機器を上方から覆っている。前壁面板30Aと後壁面板30Bとは、前,後方向で対面した状態で上面カバー26から上方に立上っている。右側壁面板30Cは、前壁面板30Aおよび後壁面板30Bの右端を連結して上面カバー26から上方に立上っている。天面板30Dは、前壁面板30A、後壁面板30Bおよび右側壁面板30Cの上端を閉塞している。原動機カバー30の左端は開口端30Eとなり、この開口端30Eは、熱交換器カバー29によって閉塞されている。
図3に示すように、原動機カバー30を構成する後壁面板30Bと上面カバー26との間には、左,右方向に離間して2個のヒンジ部材31が設けられ、原動機カバー30の前側(前壁面板30A側)は自由端となっている。また、原動機カバー30の前壁面板30Aには、複数(例えば2個)のU字型をなす把手30Fが取付けられている。従って、機械室23に収容されたエンジン15等の搭載機器に対する点検作業時に、原動機カバー30を開閉するときには、作業者は、上面カバー26の足場28上に立ち、原動機カバー30の把手30Fを把持した状態で、原動機カバー30の前側(前壁面板30A側)を上方に持ち上げる。これにより、原動機カバー30の前側は、ヒンジ部材31を回動中心として、図2および図3に示す開位置と、図1および図5に示す閉位置との間で前,後方向に回動変位し、原動機カバー30によって点検用開口27を開閉することができる。原動機カバー30が閉位置となったときには、原動機カバー30の内側の空間は、点検用開口27を介して機械室23と連通している。
上面カバー26と原動機カバー30との間には、原動機カバー30を開位置に保持するためのカバー保持機構32が設けられている。図3に示すように、カバー保持機構32は、上面カバー26の上面に固定されたL字型のブラケット32Aと、基端側がブラケット32Aに回動可能に支持された棒状体からなるステー32Bと、原動機カバー30の天面板30Dに固定されたステーガイド32Cとを含んで構成されている。
ステーガイド32Cは、天面板30Dの機械室23側となる内側面30Gに取付けられ、原動機カバー30の前,後方向に延びている。ステーガイド32Cには、ステー32Bの先端が摺動可能に係合するガイド溝32Dが形成され、ステー32Bの先端は、原動機カバー30の開閉操作に応じてガイド溝32D内を摺動する。ガイド溝32Dの後端には、開位置保持部32Eが設けられており、原動機カバー30が開位置に回動したときにステー32Bの先端が開位置保持部32Eに係止されることにより、原動機カバー30を開位置(図3の位置)に保持することができる。一方、原動機カバー30の天面板30Dには、ロック装置33が設けられており、原動機カバー30は、ロック装置33によって閉位置にロック(施錠)することができる。
複数の吹出口34は、原動機カバー30の前壁面板30Aに設けられている。これら複数の吹出口34は、前壁面板30Aの長さ方向(左,右方向)に並んで形成され、上面カバー26に設けられた足場28に向けて開口している。複数の吹出口34は、冷却ファン17によって機械室23に供給される冷却風が、熱交換器18を冷却した後に温度が上昇した温風となったときに、この温風の一部を、図5および図6中の矢印Aで示すように、後述のダクト部材35を介して上面カバー26の足場28に向けて吹出す。
ダクト部材35は、機械室23側に位置して原動機カバー30に設けられている。ダクト部材35は、原動機カバー30を構成する天面板30Dの内側面30Gに取付けられ、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風を、原動機カバー30の吹出口34へと導く。図3ないし図5に示すように、ダクト部材35は、全体としてL字型に屈曲した筒体(パイプ体)として形成されている。即ち、ダクト部材35は、原動機カバー30の開口端30E側に配置された三角形状の温風流入部36と、温風流入部36に接続された温風通路部37と、原動機カバー30の前壁面板30A側に配置され、温風通路部37に接続された三角形状の温風流出部38とにより構成されている。
ダクト部材35の温風流入部36は、原動機カバー30の開口端30E側に開口した温風流入口36Aと、温風通路部37に接続された接続口36Bとを有し、温風流入口36Aから接続口36Bに向けて開口面積が徐々に小さくなる三角形の筒状に形成されている。ここで、温風流入口36Aは、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風の流れ方向(図6中の矢印A方向)に対して熱交換器18よりも下流側に開口している。従って、温風流入部36の温風流入口36Aには、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風が流入し、この温風は、接続口36Bを通じて温風通路部37に導出される。
ダクト部材35の温風通路部37は、原動機カバー30の後壁面板30Bから前壁面板30Aに向けて直線的に延びる筒状に形成され、基端が温風流入部36の接続口36Bに接続されると共に、先端が温風流出部38の接続口38Aに接続されている。そして、温風流入部36の温風流入口36Aに流入した温風は、温風通路部37内を流れることにより温風流出部38へと導かれる。
ダクト部材35の温風流出部38は、温風通路部37に接続された接続口38Aと、原動機カバー30の前壁面板30A側に開口した温風流出口38Bとを有し、接続口38Aから温風流出口38Bに向けて開口面積が徐々に大きくなる三角形の筒状に形成されている。温風流出口38Bは、原動機カバー30の右側壁面板30Cから開口端30E付近に亘って左,右方向に延び、温風流出口38Bの周縁部は、原動機カバー30の前壁面板30Aに当接している。そして、温風流出部38には、温風通路部35Bを流れる温風が接続口38Aを介して導入され、この温風は、温風流出口38Bから原動機カバー30の複数の吹出口34に向けて流出する。
ここで、ダクト部材35の温風流入口36Aは、原動機カバー30の後壁面板30Bから前壁面板30Aに向けて前,後方向に延び、温風流入口36Aの開口面積は、温風通路部37の通路面積よりも大きく形成されている。これにより、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風の多くを、温風流入口36Aを通じてダクト部材35内に導入することができる。一方、ダクト部材35の温風流出口38Bは、原動機カバー30の右側壁面板30Cから開口端30Eの近傍に亘って左,右方向に延び、温風流出口38Bの開口面積は、温風通路部37の通路面積よりも大きく形成されている。これにより、ダクト部材35内に取込まれた温風は、原動機カバー30の前壁面板30Aに形成された複数の吹出口34の全てに分配される。従って、上面カバー26の足場28に対し、広範囲に亘って温風を供給することができる構成となっている。
本実施の形態によるホイール式の油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、ホイール式の油圧ショベル1の動作について説明する。
オペレータは、キャブ21に搭乗して運転席に座り、エンジン15を作動させる。この状態で、キャブ21内に配置された走行用操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、作業用操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
油圧ショベル1の作動時には、図6中の矢印Fで示すように、冷却ファン17によって、左側面カバー24の通気孔24Aを通じて建屋カバー22内に外気が吸込まれ、この外気が冷却風となって熱交換器18に供給される。このように、熱交換器18に供給された冷却風によって、エンジン冷却水、作動油等が冷却されることにより、エンジン15等を円滑に作動させることができる。
ここで、建屋カバー22内(機械室23)に収容されたエンジン15等の搭載機器に対する点検作業を行うときには、作業者は、エンジン15を停止させた状態で建屋カバー22の上面カバー26に上る。そして、閉位置となった原動機カバー30の前側に移動した後、足場28上で原動機カバー30の把手30Fを把持し、この把手30Fを上方に持上げる。
これにより、原動機カバー30の前側は、ヒンジ部材31を回動中心として後方に回動し、図3に示すように、点検用開口27を開く開位置まで移動する。このとき、カバー保持機構32を構成するステー32Bの先端が、ステーガイド32C(ガイド溝32D)に設けられた開位置保持部32Eに係止される。これにより、原動機カバー30を開位置に保持することができ、作業者は、点検用開口27を通じてエンジン15等の搭載機器に対する点検作業を行うことができる。
一方、点検作業が終了した後には、オペレータは、原動機カバー30の把手30Fを把持した状態で、ステー32Bの先端をガイド溝32Dの開位置保持部32Eから離脱させる。そして、原動機カバー30の前側を、ヒンジ部材31を回動中心として前方に回動させることにより、原動機カバー30を、図5に示す閉位置へと移動させ、油圧ショベル1を作動可能な状態とすることができる。
ところで、上述したエンジン15等の搭載機器に対する点検作業を、降雪時に行う場合には、上面カバー26に設けた足場28に雪が付着することにより、足場28上で作業者が足を滑らせる可能性があり、点検作業の作業性が低下してしまう。
これに対し、本実施の形態により油圧ショベル1は、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風を利用して、上面カバー26の足場28に付着した雪を融かすことができる構成となっている。以下、上面カバー26の足場28に付着した雪を融かす作用について説明する。
油圧ショベル1の作動時には、図6中に矢印Fで示すように、冷却ファン17によって建屋カバー22内に外気が吸込まれ、この外気が冷却風となって熱交換器18に供給される。冷却風は、熱交換器18を通過するときにエンジン冷却水、作動油等を冷却(熱交換)することにより、温度が上昇した温風となってエンジン15側へと流れ、上面カバー26の通気孔26Aを通じて建屋カバー22の外部に排出される。
このとき、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風の一部は、図6中の矢印Aで示すように、点検用開口27を通じて機械室23から原動機カバー30の内側の空間へと流れ、原動機カバー30に取付けられたダクト部材35(温風流入部36)の温風流入口36Aに流入する。温風流入口36Aに流入した温風は、温風通路部37を通じて温風流出部38へと導かれた後、温風流出部38の温風流出口38Bから原動機カバー30の複数の吹出口34に向けて流出する。
これにより、図5中に矢印Aで示すように、原動機カバー30の複数の吹出口34から、上面カバー26の足場28に向けて温風を吹出させることができる。従って、上面カバー26の足場28に雪が付着したとしても、温風を吹付けることにより迅速に雪を融かすことができる。また、エンジン15の作動時には、足場28に向けて常に温風が吹出しているため、足場28に対する着雪を防止することができる。この結果、降雪時においてエンジン15等の点検作業を行う場合でも、作業者は、雪が付着していない足場28上で姿勢を安定させることができる。従って、原動機カバー30の開閉作業を迅速かつ安全に行うことができ、点検作業の作業性を高めることができる。
しかも、機械室23から点検用開口27を通じて原動機カバー30の内側の空間へと流れた温風は、ダクト部材35によって原動機カバー30の吹出口34へと導かれ、この吹出口34を通じて建屋カバー22の外部に排出される。このため、冷却ファン17による冷却風の流れ方向(図6中の矢印F方向)に対し、熱交換器18よりも上流側に温風が逆流するのを防止することができる。この結果、熱交換器18に供給される冷却風の温度が上昇することがなく、熱交換器18の冷却効率を適正に維持することができる。
かくして、本実施の形態による油圧ショベル1は、旋回フレーム13と、旋回フレーム13に搭載されたエンジン15と、旋回フレーム13上に設けられエンジン15を収容する機械室23を形成した建屋カバー22と、建屋カバー22内に冷却風を供給する冷却ファン17と、建屋カバー22内に位置して旋回フレーム13に設けられ冷却風によって流体を冷却する熱交換器18とを備え、建屋カバー22は、上,下方向に延びる左側面カバー24および右側面カバー25と、左,右の側面カバー24,25の上端間を覆う上面カバー26と、エンジン15の上方に位置して上面カバー26に設けられた点検用開口27と、点検用開口27を開閉可能に覆う原動機カバー30とを含んで構成されている。そして、原動機カバー30には、上面カバー26に向けて風を吹出す吹出口34と、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風を吹出口34へと導くダクト部材35とが設けられていることを特徴としている。
これにより、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風を、ダクト部材35によって原動機カバー30の吹出口34へと導き、吹出口34を通じて上面カバー26の足場28に吹出させることができる。この結果、上面カバー26の足場28に付着した雪を温風によって融かすことができ、足場28上で原動機カバー30を開閉するときの作業を向上させることができる。
実施の形態によれば、ダクト部材35は、温風が流入する温風流入口36Aと、温風流入口36Aから流入した温風が流れる温風通路部37と、温風通路部37を流れる温風を原動機カバー30の吹出口34に向けて流出させる温風流出口38Bとを有し、温風流入口36Aは、温風の流れ方向に対して熱交換器18よりも下流側に開口する構成としている。これにより、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風を、温風流入口36Aを通じてダクト部材35内に導入することができる。
実施の形態によれば、原動機カバー30は、点検用開口27の周囲を取囲んで上面カバー26から立上る前壁面板30A、後壁面板30B、右側壁面板30Cと、これら前壁面板30A、後壁面板30B、右側壁面板30Cの上端を閉塞する天面板30Dとを有し、吹出口34は前壁面板30Aに形成され、ダクト部材35は、原動機カバー30の機械室23側に位置する内側面30Gに取付けられている。これにより、ダクト部材35に導入された温風は、前壁面板30Aに形成された吹出口34を通じて上面カバー26上へと吹出すことができ、上面カバー26上に付着した雪を融かすことができる。
実施の形態によれば、ダクト部材35の温風流入口36Aおよび温風流出口38Bの開口面積は、温風通路部37の通路面積よりも大きく形成されている。これにより、冷却風が熱交換器18を冷却した後の温風の多くを、温風流入口36Aを通じてダクト部材35内に導入することができる。また、ダクト部材35に導入された温風を、上面カバー26に対して広範囲に亘って供給することができる。
実施の形態によれば、建屋カバー22の上面カバー26には、点検用開口27の前側に位置して点検作業用の足場28が設けられ、原動機カバー30の吹出口34は、足場28に向けて開口している。これにより、降雪時に足場28に雪が付着したとしても、吹出口34から吹出す温風を足場28に供給することにより、迅速に雪を融かすことができる。
なお、実施の形態では、上面カバー26の点検用開口27よりも前側部位に足場28を設け、原動機カバー30の前壁面板30Aに吹出口34を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば上面カバー26の点検用開口27よりも右側部位に足場を設け、原動機カバー30の右側壁面板30Cに吹出口を設ける構成としてもよい。
また、実施の形態では、ダクト部材35を構成する温風流入口36Aおよび温風流出口38Bの開口面積を、温風通路部37の通路面積よりも大きく形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば温風流入口および温風流出口の開口面積と、温風通路部の通路面積とを等しく形成してもよい。
さらに、実施の形態では、ホイール式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。