JP6988858B2 - ボルト用鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、建築・土木分野の各種鋼構造物に用いられるボルト用鋼材に関し、特に海岸近傍などの飛来塩分量が多い環境下で耐食性・耐候性が要求される部材として好適な高力ボルト用鋼材に関する。なお、本発明におけるボルトとは、ボルトの他、ナット、座金を含むものとする。本発明のボルト用鋼材が用いられる部品としては、例えば、鋼製橋梁やクレーンなどの鋼構造物の締結ボルト及びナットなどが挙げられる。
鋼構造物を屋外の大気腐食環境で供用する場合、なんらかの防食処理が必要である。従来、塗装、亜鉛メッキ、溶射等の防食技術が用いられてきたが、その中でも耐候性鋼材(JIS G 3114「溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材」)の無塗装使用に注目が集まっている。耐候性鋼材は、適切な大気腐食環境下において、保護性の錆層に表面が覆われることにより著しく腐食速度が低減する鋼材であり、その優れた耐候性により、例えば、耐候性鋼を使用した橋梁は、無塗装のまま数十年間の供用に耐えることが知られている。耐候性鋼を用いることにより、例えば塗装の塗り替え作業などによるメンテナンス費用を削減することが可能となり、ライフサイクルコストを低く抑えることができる。
建築、橋梁等の鋼構造物には、高力ボルトを用いた継手が用いられる。高力ボルトは、大気腐食環境で供用する場合には、鋼板と同様に何らかの防食処理を必要とする。従来、鋼板と同様に、塗装、亜鉛メッキなどの防食技術が用いられてきたが、近年、耐候性鋼材と同等の耐候性を具備させた高力ボルトが実用化されている。
しかしながら、海岸近傍などの飛来塩分量が多い環境では、上記した保護性の高い錆層は生成しにくく、実用的な耐候性が得難いことが知られている。
これまで、高力ボルトの耐候性を向上させる手法としては、例えば、特許文献1には、Cu、Moを添加し、さらに0.80質量%以上のCrを添加した耐候性及び耐火性に優れた高力ボルト用鋼が開示されている。
特許文献2には、Moに加え、2質量%以上のCrと1質量%以上のNiを添加した耐候性、対遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト用鋼が開示されている。
特許文献3には、Moを添加し、さらに1.0質量%以上のNiを添加した海岸耐候性に優れた高強度鋼が開示されている。
特許文献4には、Cuに加え、Niを添加したボルト用鋼が開示されている。
特許文献5には、Cuに加え、さらに2.3質量%以上のNiを添加した耐遅れ破壊特性および海浜耐候性に優れるボルト部品の製造方法が開示されている。
特許文献6には、Cuに加え、1.2質量%以上のNiを添加したボルト用鋼が開示されている。
特許文献7には、1質量%以上のNiを添加した海岸耐候性に優れた高力ボルト・ナット用鋼が開示されている。
特許文献8には、0.5質量%以上のCr+Mnと、Snを添加したボルト用鋼が開示されている。
特許文献9には、0.1質量%以上のCrと、Snを添加した耐候性ボルト用鋼材が開
示されている。
特許文献10には、Cu,Nb,Snを添加した耐食性に優れたボルト用鋼が開示されている。
特開平9-53152号公報 特開2009-249731号公報 特開2000-119814号公報 特開2000-212696号公報 特開2001-107139号公報 特開2003-183780号公報 特開2001-107190号公報 特開2008-274367号公報 特開2014-1442号公報 特開2017-226878号公報
しかしながら、特許文献1に開示されるように、多量のCrを含有した場合は、飛来塩分の多い環境において耐食性が劣化してしまうという問題点がある。
また、特許文献2に開示されるように、Moに加え、多量のCr、Niを含有した場合は、飛来塩分の多い環境において耐食性が劣化してしまうことに加えて、合金コストの上昇により鋼材価格が上昇してしまうという問題点がある。
また、特許文献3に開示されるように、Moを添加し、さらに多量のNiを含有した場合は、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。
また、特許文献4、5および6に開示されるように、Cuに加え、多量のNiを含有した場合は、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。
また、特許文献7に開示されるように多量のNiを含有した場合は、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。
また、特許文献8、9に開示されるようにSnを多量に添加した場合は、合金コストの上昇により鋼材の価格が上昇してしまうという問題点がある。
また、特許文献10に開示されている技術では、ボルト成形における冷間加工性に劣る場合がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、耐食性及び冷間加工性に優れたボルト用鋼材を低コストで提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、発明者らは、耐食性の観点から鋼材の成分組成について鋭意検討した。その結果、Cuを含有し、さらに微量のNbおよびSnを含有することにより、鋼材の耐食性が向上することを見出した。さらに、Niを含有することで、更なる耐食性の向上効果が得られることを見出した。
上記成分組成を含有する鋼材が優れた耐食性を示す詳細な理由は不明であるが、以下のように推定される。すなわち、CuおよびNiは、錆粒子を微細化させることで錆層を緻密化させ、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンが錆層を透過して地鉄に到達するのを防止する。Nbは、地鉄表面近傍に濃化することで鋼材のアノード反応およびカソード反応を抑制する。Snは、Nbと同様に、地鉄表面近傍において濃化することで鋼材のアノード反応およびカソード反応を抑制する。ただし、これらの効果は単独含有では不十分でありCu、NbおよびSnの複合含有により初めて耐食性が著しく向上すると推定される。
さらに、発明者らは、冷間加工性の観点からも鋼材の成分組成について鋭意検討したところ、冷間加工性を向上するにはC、Si、Mn、Al、NbおよびOの上限値を厳密に規定することが有効であるとの知見を得るに到った。
本発明は、上記の新規な知見に基づき、さらに検討を重ねた末に完成されたもので、その要旨構成は、以下の通りである。
1.質量%で、
C:0.15%以上0.25%以下、
Si:0.05%以上0.30%以下、
Mn:0.50%以上1.80%以下、
P:0.002%以上0.030%以下、
S:0.0005%以上0.0200%以下、
Al:0.010%以上0.065%以下、
Cu:0.01%以上0.48%以下、
Nb:0.005%以上0.030%以下、
Sn:0.005%以上0.200%以下、
Ti:0.005%以上0.200%以下、
B:0.0001%以上0.0050%以下、
N:0.0020%以上0.0100%以下および
O:0.0025%以下
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の成分組成を有するボルト用鋼材。
2.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ni:0.01%以上1.00%以下
を含有する前記1に記載のボルト用鋼材。
3.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Cr:0.20%未満
を含有する前記1または2に記載のボルト用鋼材。
4.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Mo:0.001%以上0.420%以下、
V:0.005%以上0.200%以下および
W:0.001%以上2.000%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記1から3のいずれかに記載のボルト用鋼材。
5.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Zr:0.005%以上0.200%以下、
Ca:0.0001%以上0.0050%%以下、
Mg:0.0001%以上0.0050%%以下および
REM:0.0001%以上0.0100%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記1から4のいずれかに記載のボルト用鋼材。
本発明によれば、特定の耐食性向上に有効な元素を複合含有させること及び強化合金元素の適切な制限により、耐食性及び冷間加工性を向上したボルト用鋼材を低コストで提供することができる。
変形抵抗測定用試験片(1号試験片)の形状を示す図である。 限界据え込み率測定用試験片(2号試験片)の形状を示す図である。
以下、本発明の一実施形態によるボルト用鋼材について説明する。まず、ボルト用鋼材の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.15%以上0.25%以下
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、所定の強度を確保するため0.15%以上で含有する必要がある。一方、0.25%を超えるとボルト成形加工時の変形抵抗が増大し加工性が低下する。したがって、C含有量は0.15%以上0.25%以下とする。好ましくは、0.16%以上0.24%以下である。より好ましくは0.18%以上0.24%以下である。
Si:0.05%以上0.30%以下
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、また、焼入れ性の向上に対しても有効な元素である。Si含有量が0.05%未満では、脱酸効果および焼入れ性の向上効果が十分に得られない。一方、0.30%を超えて添加すると、フェライトを硬化させ、冷間加工性が低下する。このため、Si含有量は、0.05%以上0.30%以下とする。好ましくは、0.10%以上0.28%以下である。
Mn:0.50%以上1.80%以下
Mnは、焼入れ性確保の観点から有効な元素であり、0.50%未満の含有量では焼入れ性の向上効果が十分に得られない。一方、1.80%を超えて過剰に含有すると、焼入れ性が過剰となり冷間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.50%以上1.80%以下とする。好ましくは0.60%以上1.60%以下である。
P:0.002%以上0.030%以下
Pは、鋼の耐食性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.002%以上含有する必要がある。一方、0.030%を超えて含有すると、結晶粒界に偏析することで結晶粒の接合強度が低下し、耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、P含有量は、0.002%以上0.030%以下とする。好ましくは、0.004%以上0.025%以下である。
S:0.0005%以上0.0200%以下
Sは、0.0200%を超えて含有すると、介在物の量が多くなり、延性が劣化する。一方、含有量を0.0005%未満まで低下させると、生産コストが増大する。したがって、S含有量は0.0005%以上0.0200%以下とする。
Al:0.010%以上0.065%以下
Alは、製鋼時の脱酸に必要な元素であるとともに、Al系窒化物の微細析出物としてピンニング効果によりオーステナイト粒の粗大化を抑制し、耐遅れ破壊特性を向上させる効果を有する。このような効果を得るため、Alは0.010%以上含有する必要がある。一方、0.065%を超えると、アルミナ酸化物が多量に生成して冷間加工性を低下させる。したがって、Al含有量は0.010%以上0.065%以下とする。
Cu:0.01%以上0.48%以下
Cuは、本発明において重要な成分であり、Nb、Snと共存させることにより、鋼の耐食性を著しく向上させる効果を有する。Cuは錆層の錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、腐食促進因子である塩化物イオンの地鉄への透過を抑制する効果を有する。これらの効果は、含有量が0.01%以上で得られる。一方、0.48%を超えると、熱間延性を低下させる。したがって、Cu含有量は0.01%以上0.48%以下である。より好ましくは、0.06%以上0.46%以下である。
Nb:0.005%以上0.030%以下
Nbは、本発明において重要な構成要件であり、CuおよびSnと共存させることにより、鋼材の耐食性を著しく向上させる効果がある。Nbは、アノード部において錆層と地鉄との界面付近に濃化し、アノード反応およびカソード反応を抑制する。これらの効果を充分に得るためには、0.005%以上含有する必要がある。一方、0.030%を超えると、冷間加工性を低下させる。したがって、Nb含有量は0.005%以上0.030%以下とする。
Sn:0.005%以上0.200%以下
Snは、本発明において重要な構成要件であり、CuおよびNbと共存させることにより、鋼の耐食性を著しく向上させる効果がある。Snは、鋼材表面にSnを含む酸化皮膜を形成し、鋼材のアノード反応およびカソード反応を抑制することにより鋼材の耐候性を向上させる。これらの効果を充分に得るためには、0.005%以上含有する必要がある。一方、0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く。したがって、Sn含有量は、0.005%以上0.200%以下とする。好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。より好ましくは、0.020%以上0.050%未満である。
Ti:0.005%以上0.200%以下
Tiは、フリーNをTi系窒化物として固定することでB系窒化物の生成を抑制し、焼入れ性の向上にフリーBを有効に活用する効果を有する。この効果を充分に得るためには、0.005%以上で含有する必要がある。一方、0.200%を超えると、上記の効果が飽和する。したがって、Ti含有量は0.005%以上0.200%以下とする。好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。より好ましくは、0.015%以上0.050%以下である。
B:0.0001%以上0.0050%以下
Bは、焼入れ性の向上に対して有効な元素である。この効果を充分に得るためには、0.0001%以上含有する必要がある。一方、0.0050%を超えると、効果が飽和する。したがって、B含有量は0.0001%以上0.0050%以下とする。好ましくは、0.0003%以上0.0035%以下である。
N:0.0020%以上0.0100%以下
Nは、Al系窒化物として析出し、オーステナイト粒の粗大化を抑制することにより伸びを向上させる効果を有する。これらの効果は、0.0020%以上含有させることにより得られる。一方、0.0100%を超えて含有すると、固溶Nにより靭性が劣化する。したがって、N含有量は、0.0020%以上0.0100%以下とする。好ましくは、0.0020%以上0.0080%以下である。
O:0.0025%以下
Oは、酸化系介在物として鋼中に残存している。かような酸化物は硬質であるため、変形時の破壊の起点となり冷間加工性を低下させる。よって、O含有量は0.0025%以下とする。好ましくは、0.0020%以下である。なお、Oを0.0006%未満に抑制するには多大な製鋼コストを要するため、コストの観点からは、0.0006%以上とすることが好ましい。
以上、本発明の基本成分について説明した。上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、その他にも必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
まず、本発明では、以下の理由で、さらにNiを含むことができる。
Ni:0.01%以上1.00%以下
Niは、Cu、NbおよびSnと共存させることにより、鋼の耐食性を著しく向上させる効果を有する。Niは、錆粒を微細化することで緻密な錆層を形成し、鋼材の耐食性を向上させる効果を有する。この効果を充分に得るためには、0.01%以上含有することが好ましい。一方、1.00%を超えて含有すると、Ni消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Niを含有する場合は、Ni量を0.01%以上1.00%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.03%以上0.65%以下である。
さらに本発明では、以下の理由で、Crを含むことができる。
Cr:0.20%未満
Crは、スクラップ等の原料から混入することがあるが、飛来塩分の多い環境においては、耐食性を劣化させる、おそれがある。したがって、Crが混入される場合は、0.20%未満とすることが好ましい。より好ましくは、0.16%未満、更には0.14%以下とする。なお、Crは0%であってもよいが、含有量を0.01%未満まで低下させるには生産コストが著しく増大することから、好ましくは、0.01%以上とする。
さらに、本発明では、以下の理由で、Mo:0.001%以上0.420%以下、V:0.005%以上0.200%以下およびW:0.001%以上2.000%以下のうちから選ばれる1種以上を含むことができる。
Mo:0.001%以上0.420%以下
Moは、焼入れ性の向上に対して有効な元素である。また、鋼材のアノード反応に伴ってMoO4 2-が溶出し、錆層中にMoO4 2-が分布することにより、腐食促進因子の塩化物イオンが錆層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、鋼材表面にMoを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。これらの効果を充分に得るためには、0.001%以上で含有することが好ましい。一方、0.420%を超えると、焼入れ性の上昇により冷間加工性が低下する。したがって、Moを添加する場合、Mo添加量は0.001%以上0.420%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.002%以上0.350%以下である。
V:0.005%以上0.200%以下
Vは、焼入れ性の向上に対して有効な元素である。また、鋼材のアノード反応に伴って溶出し、インヒビター作用によりアノード反応およびカソード反応を抑制する効果を有する。これらの効果を充分に得るためには、0.005%以上で含有することが好ましい。一方、0.200%を超えると、上記効果が飽和するとともにV消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、Vを添加する場合、V添加量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。
W:0.001%以上2.000%以下
Wは、焼入れ性の向上に対して有効な元素である。また、鋼材のアノード反応に伴ってWO4 2-が溶出し、錆層中にWO4 2-として分布することによって、腐食促進因子の塩化物イオンが錆層を透過して地鉄に到達するのを防止する。さらに、鋼材表面にWを含む化合物が沈殿することで、鋼材のアノード反応を抑制する。これらの効果を充分に得るためには、0.001%以上で含有することが好ましい。一方、2.000%を超えると、Wの消費量増加に伴うコスト上昇を招く。したがって、W含有量は0.001%以上2.000%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.005%以上1.000%以下である。さらにより好ましくは、0.020%以上0.600%以下である。
さらに本発明では、以下の理由で、Zr:0.005%以上0.200%以下、Ca:0.0001%以上0.0100%以下、Mg:0.0001%以上0.0100%以下およびREM:0.0001%以上0.0100%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことができる。
Zr:0.005%以上0.200%以下
Zrは、Zr系炭窒化物の微細析出物としてピンニング効果によりオーステナイト粒の粗大化を抑制し、耐遅れ破壊特性を向上させる効果を有する。また、フリーNをZr系窒化物として固定することでB系窒化物の生成を抑制し、焼入れ性の向上にフリーBを有効に活用する効果を有する。この効果を充分に得るためには、0.005%以上で含有することが好ましい。一方、0.200%を超えると、その効果が飽和する。したがって、Zrを添加する場合、Zr含有量は0.005%以上0.200%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.010%以上0.100%以下である。さらにより好ましくは、0.015%以上0.050%以下である。
Ca:0.0001%以上0.0050%以下
Caは、鋼中のSを固定し、靭性低下の原因となるMnSの生成を抑制する。この効果を十分に得るためには、0.0001%以上で含有することが好ましい。一方、0.0050%を超えると、鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の低下を招く。したがって、Caを添加する場合、Ca含有量は0.0001%以上0.0050%以下とすることが好ましい。
Mg:0.0001%以上0.0050%以下
Mgは、鋼中のSを固定し、靭性低下の原因となるMnSの生成を抑制する。この効果を十分に得るためには0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.0050%を超えると鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の低下を招く。したがって、Mgを添加する場合、Mg含有量は0.0001%以上0.0050%以下とすることが好ましい。
REM:0.0001%以上0.0100%以下
REMは、鋼中のSを固定し、靭性低下の原因となるMnSの生成を抑制する。この効果を十分に得るためには0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.0100%を超えると鋼中の介在物の量が増加し、かえって靭性の低下を招く。したがって、REMを添加する場合、REM含有量は0.0001%以上0.0100%以下とすることが好ましい。
本発明における成分組成のうち、上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
次に、本発明に係るボルト用鋼材の好適な製造方法について述べる。
上記成分組成を有する溶鋼を、通常の転炉、電気炉等の溶製方法で溶製し、通常の連続鋳造や分塊法により鋼素材とする。次いで、鋼素材を必要に応じ加熱し、鋼片圧延、線棒圧延等の熱間圧延によりボルト用鋼材とする。上記の加熱、圧延条件は特に限定されないが、要求される材質に応じて適宜決定すればよく、例えば、その後のボルト部品成形のための鍛造や機械加工等に有利なように、加熱、圧延条件を決定し組織制御を行えばよい。
本発明に係る鋼材からの高力ボルトの製造方法は、一般的な方法でよく、所望の寸法形状に応じ冷間鍛造、熱間鍛造、機械加工などから選択して成形加工を施し、焼入れ焼戻し処理を施して製造される。なお、焼入れ温度は830℃以上950℃以下が好ましく、焼戻し温度は300℃以上600℃以下の温度とすることが好ましい。
また、各元素の含有量は、スパーク放電発光分光分析法、蛍光X線分析法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、燃焼法等により求めることができる。
その他の製造条件は、鋼材の一般的な製造方法に従えばよい。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
表1および2に示す成分組成を有する鋼を溶製し、熱間圧延により22mmφの丸棒にした。この丸棒、あるいは、この丸棒を730〜780℃で5〜7時間保持した後に徐冷する球状化焼鈍(SA)処理を行ったものについて、冷間加工性を評価した。この評価結果を表3および4に示す。
冷間加工性は、限界据え込み率および変形抵抗の2項目で評価した。すなわち、変形抵抗は、圧延ままの棒鋼の直径の1/4深さ位置から、図1に示す直径d0が15mmおよび高さh0が22.5mmの試験片(1号試験片)を採取し、300tプレス機を用いて、60%据え込み時の圧縮荷重を測定し、日本塑性加工学会が提唱している端面拘束圧縮により、変形抵抗測定方法を用いて求めた。また、限界据え込み率は、上記と同様の位置から、図2に示す直径d0が15mmおよび高さh0が22.5mmかつ側面に深さ0.8mmノッチ底R0.15mmの切欠きを有する試験片(2号試験片)を用い、上記変形抵抗の測定と同様に圧縮加工を行い、端部に割れが入ったときの据え込み率を限界据え込み率とした。
かくして得られる変形抵抗が920MPa以下、限界据え込率が45%以上であれば、冷間加工性に優れているといえる。
また、棒鋼を、830〜950℃の温度に加熱し、焼入れを行い、その後、常温強度が1000〜1200MPaとなるよう焼き戻し処理を行った。機械的特性はJIS4号引張試験片を採取し、引張強さ、降伏強さ、伸びを評価した。これら評価結果を表3および4に示す。降伏強さ900MPa以上、引張強さ1000〜1200MPa、伸び14%以上であれば引張特性に優れているといえる。
次に、無塗装での耐食性の評価について説明する。
前述した方法により得られた焼入れ焼き戻し後の丸棒の中心から、25mm×35mm×3mmの矩形試験片を採取して腐食試験に供した。試験片は、表面を表面粗さRaが1.6μm以下となるよう研削加工し、端面および裏面をテープシールし、表面露出部の面積が20mm×30mmとなるよう表面もテープシールした。
以上により得られた試験片について、乾湿繰返し腐食試験を行い、耐食性を評価した。具体的な腐食試験の条件は以下のとおりである。
温度60℃、相対湿度35%RHの乾燥工程を3時間、その後、移行時間を1時間とった後、温度を40℃、相対湿度を95%RHの湿潤工程を3時間として、その後1時間移行時間をとり、合計8時間で1サイクルとした。また、19サイクルに1回、乾燥工程中に、試験片表面に付着する塩分量が0.10mddとなるよう調整した人工海水溶液を試験片表面に滴下した。この条件にて76サイクルの試験を行った。
上記の腐食試験終了後、試験片を塩酸にヘキサメチレンテトラミンを加えた水溶液に浸漬して脱錆してから重量を測定し、得られた重量と初期重量との差を求め、テープシール部を除く試験片の表面積と鉄の密度から、片面の平均板厚減少量を求め、腐食量とした。この腐食量を表3および4に示す。腐食量(平均板厚減少量)が8.0μm以下であれば、耐食性が優れているといえる。表3および4に腐食量を示す。
次に、塗装での耐食性の評価について説明する。
25mm×35mm×3mmの矩形試験片を採取して腐食試験に供した。この試験片の表面に、JIS Z 0313(2004)に規定される除錆度Saが2.5となるようショットブラストを施し、アセトン中での超音波脱脂を5分間行い、風乾した。ついで、試験片の片面を塗装面とし、防食下地として無機ジンクリッチペイント(関西ペイント株式会社製 SDジンク1500A、厚さ:75μm)を塗布し、ついでミストコートとしてエポキシ樹脂塗料(関西ペイント株式会社製 エポマリン下塗ミストコート用)を塗布し、次いで下塗りとしてエポキシ樹脂塗料(関西ペイント株式会社製 エポマリンHB(K)、厚さ:120μm)を塗布し、ついで中塗りとしてふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料(関西ペイント株式会社製 セラテクトF中塗塗料、厚さ:30μm)を塗布し、次いで上塗りとしてふっ素樹脂塗料上塗り塗料(関西ペイント株式会社製 セラテクトF上塗塗料、厚さ:25μm)を塗布し、防食下地層、下塗り層(ミストコートにより形成された塗膜も含む)、中塗り層および上塗り層からなる塗膜を形成した。なお、試験片の他方の片面と端面は、溶剤型のエポキシ樹脂塗料にてシールし、さらにシリコン系のシール剤にて被覆した。
塗装後、試験片に形成した塗膜の中央部に、地鉄に到達するように幅:1mm、長さ:20mmの直線のカットを入れ、初期欠陥を設けた。ついで、ISO 16539(2013)に準拠し、以下に示す条件にて腐食試験を実施した。
すなわち、試験片表面の人工海塩の付着量が6.0g/m2となるように、人工海塩を純水で所定の濃度に希釈した溶液をスプレーし、試験片に人工海塩を付着させた。ついで、この試験片を用いて、(条件1.温度:60℃、相対湿度:35%、保持時間:3時間)、(条件2.温度:40℃、相対湿度:95%、保持時間:3時間)、条件1から条件2および条件2から条件1への各移行時間を1時間とする、合計8時間のサイクルを1サイクルとして、これを304サイクル繰り返す腐食試験を実施した。なお、人工海塩の付着は、週に1回とした。
そして、腐食試験終了後、塗装における初期欠陥部からの膨れ幅を測定し、塗装耐食性を評価した。初期欠陥の端部から5mmピッチで5点、初期欠陥の両側の膨れ幅を測定し、片側の膨れ幅に換算して評価した。この評価結果を表3および4に示す。なお、膨れ幅が1.5mm以下であれば、塗装耐食性に優れると判断した。
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Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.15%以上0.25%以下、
    Si:0.05%以上0.30%以下、
    Mn:0.50%以上1.80%以下、
    P:0.002%以上0.030%以下、
    S:0.0005%以上0.0200%以下、
    Al:0.010%以上0.065%以下、
    Cu:0.12%以上0.48%以下、
    Nb:0.005%以上0.030%以下、
    Sn:0.005%以上0.200%以下、
    Ti:0.005%以上0.200%以下、
    B:0.0001%以上0.0050%以下、
    N:0.0020%以上0.0100%以下および
    O:0.0025%以下
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の成分組成を有するボルト用鋼材。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Ni:0.01%以上1.00%以下
    を含有する請求項1に記載のボルト用鋼材。
  3. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Cr:0.20%未満
    を含有する請求項1または2に記載のボルト用鋼材。
  4. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Mo:0.001%以上0.420%以下、
    V:0.005%以上0.200%以下および
    W:0.001%以上2.000%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項1から3のいずれかに記載のボルト用鋼材。
  5. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Zr:0.005%以上0.200%以下、
    Ca:0.0001%以上0.0050%以下、
    Mg:0.0001%以上0.0050%以下および
    REM:0.0001%以上0.0100%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項1から4のいずれかに記載のボルト用鋼材。
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