以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。図1および図2に示されるように、本実施形態の歪み検出装置1は、センサ部10、弾性変形部材20、支持部材30、配線部材40、容器50等を備えた構成とされている。
センサ部10は、2つの熱流束センサ11および熱緩衝体12を有し、2つの熱流束センサ11の間に熱緩衝体12が配置された構成とされている。本実施形態では、2つの熱流束センサ11および熱緩衝体12は、共に平板状とされ、それぞれ平面形状が等しくされている。
まず、本実施形態の熱流束センサ11の構成について、図3および図4を参照しつつ説明する。なお、2つの熱流束センサ11は、同じ構成とされている。また、図3では、後述する表面保護部材110を省略して示してある。
熱流束センサ11は、図3および図4に示されるように、絶縁基材100、表面保護部材110、裏面保護部材120が一体化され、この一体化されたものの内部で第1、第2層間接続部材130、140が交互に直列に接続された構造とされている。絶縁基材100、表面保護部材110、裏面保護部材120は、フィルム状であって、熱可塑性樹脂等の可撓性を有する樹脂材料で構成されている。
絶縁基材100は、その厚さ方向に貫通する複数の第1、第2ビアホール101、102が形成されている。そして、第1、第2ビアホール101、102には、互いに異なる金属や半導体等の熱電材料で構成された第1、第2層間接続部材130、140が埋め込まれている。
絶縁基材100の表面100aには、表面導体パターン111が形成されている。絶縁基材100の裏面100bには、裏面導体パターン121が形成されている。そして、各第1、第2層間接続部材130、140は、表面導体パターン111および裏面導体パターン121によって直列に接続されている。つまり、熱流束センサ11は、絶縁基材100の表面100aに配置された表面導体パターン111によって第1、第2層間接続部材130、140の一方の接続部が構成されている。また、熱流束センサ11は、絶縁基材100の裏面100bに配置された裏面導体パターン121によって第1、第2層間接続部材130、140の他方の接続部が構成されている。
そして、熱流束センサ11は、厚さ方向に熱流束が通過すると、第1、第2層間接続部材130、140の一方の接続部と他方の接続部との間に温度差が生じる。これにより、熱流束センサ11は、ゼーベック効果によって第1、第2層間接続部材130、140に熱起電力が発生する。このため、熱流束センサ11は、この熱起電力(例えば、電圧)をセンサ信号として出力する。なお、熱流束は、単位時間に単位面積を横切る熱量であり、単位にはW/m2が用いられる。
以下では、熱流束センサ11において、表面保護部材110における絶縁基材100側と反対側の面を一面110aとし、裏面保護部材120における絶縁基材100側と反対側の面を他面120aとして説明する。また、2つの熱流束センサ11において、一方を第1熱流束センサ11aともいい、他方を第2熱流束センサ11bともいう。なお、図1および図2では、2つの熱流束センサ11において、紙面左側の熱流束センサ11が第1熱流束センサ11aとして示され、紙面右側の熱流束センサ11が第2熱流束センサ11bとして示されている。さらに、第1熱流束センサ11aから出力されるセンサ信号を第1センサ信号ともいい、第2熱流束センサ11bから出力されるセンサ信号を第2センサ信号ともいう。
また、本実施形態の熱流束センサ11は、他面120aから一面110a側に向かって熱流束が通過した際、正のセンサ信号を出力するように構成されている。つまり、本実施形態の熱流束センサ11は、一面110aから他面120aに向かって熱流束が通過した際、負のセンサ信号を出力するように構成されている。以上が本実施形態における熱流束センサ11の構成である。
熱緩衝体12は、所定の熱容量を有するように、金属材料またはポリイミド樹脂材料等で構成されている。なお、具体的には後述するが、本実施形態では、各熱流束センサ11を覆うように弾性変形部材20が配置されており、弾性変形部材20から各熱流束センサ11を通過して熱緩衝体12へ向かう熱流束が発生する場合がある。また、熱緩衝体12は、2つの熱流束センサ11の間に配置される。このため、熱緩衝体12は、一方の熱流束センサ11を通過した熱流束が他方の熱流束センサ11を通過し難くなる所定の熱容量を有するように、材料や厚さ等が設定されている。つまり、熱緩衝体12は、一方の熱流束センサ11を通過した熱流束が他方の熱流束センサ11に影響し難くなるように、材料や厚さ等が設定されている。
そして、センサ部10は、上記のように、2つの熱流束センサ11の間に熱緩衝体12が配置された構成とされている。具体的には、図1および図2に示されるように、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、互いの一面110aが対向するように配置され、各表面導体パターン111同士が内部配線61を介して直列に接続されている。本実施形態では、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、支持部材30と反対側にて内部配線61を介して接続されている。
以上が本実施形態におけるセンサ部10の構成であり、センサ部10は、上記のように、熱流束に応じてセンサ信号を出力する熱流束センサ11を用いて構成されている。このため、センサ部10は、具体的には後述するが、弾性変形部材20の変形量がサブミクロンオーダーであっても、弾性変形部材20の変形に伴う熱流束を検出することにより、弾性変形部材20の変形を検出することが可能となる。つまり、センサ部10は、歪み検出装置1の微小な歪みを検出することが可能となるように構成されている。
弾性変形部材20は、センサ部10の全体を覆うように配置されており、例えば、ゴム、樹脂、弾性変形可能な金属材料等を用いて構成される。なお、弾性変形可能な金属としては、例えば、はんだやアルミニウム(Al)等が採用される。
支持部材30は、センサ部10を支持するものであり、例えば、中空部30aを有する筒状の熱収縮チューブ等が用いられる。本実施形態では、支持部材30は、センサ部10における一部分を中空部30a内に収容することで当該センサ部10を支持している。
配線部材40は、センサ部10と、図示しない外部の制御部等とを接続するものである。本実施形態では、配線部材40は、一端部側が中空部30a内で第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bにおける各裏面導体パターン121と電気的に接続され、他端側が図示しない制御部等と接続される。
容器50は、外力が印加された際に弾性変形可能な材料で構成されている。本実施形態では、ステンレス等の金属材料で構成されるスプリングピンで構成されている。そして、容器50は、弾性変形部材20をほぼ覆うように配置されている。
以上が本実施形態における歪み検出装置1の構成である。次に、上記歪み検出装置1の基本的な作動について、図5A〜図5C、および図6A〜図6Cを参照しつつ説明する。なお、図5A〜図5Cおよび図6A〜図6Cでは、容器50等を省略して示している。
まず、上記歪み検出装置1は、容器50に外力が印加されると、当該容器50が変形することで弾性変形部材20が変形する。つまり、弾性変形部材20は、容器50が歪むことで圧縮する。そして、弾性変形部材20は、圧縮することで発熱する。
このため、図5Aに示されるように、弾性変形部材20のうちの第1熱流束センサ11aを覆う部分が圧縮すると、歪み検出装置1には、圧縮した部分から第1熱流束センサ11aを通過して熱緩衝体12へ向かう第1発熱熱流束HF1aが発生する。つまり、歪み検出装置1には、第1熱流束センサ11aの他面120aから一面110aへ向かう第1発熱熱流束HF1aが発生する。したがって、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号は、正の値となる。
また、図5Bに示されるように、弾性変形部材20のうちの第2熱流束センサ11bを覆う部分が圧縮すると、歪み検出装置1には、圧縮した部分から第2熱流束センサ11bを通過して熱緩衝体12へ向かう第2発熱熱流束HF1bが発生する。つまり、第2熱流束センサ11bの他面120aから一面110aへ向かう第2発熱熱流束HF1bが発生する。したがって、第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、正の値となる。
そして、図5Cに示されるように、弾性変形部材20のうちの第1熱流束センサ11aを覆う部分および第2熱流束センサ11bを覆う部分が圧縮すると、歪み検出装置1には、第1発熱熱流束HF1aおよび第2発熱熱流束HF1bが発生する。したがって、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号、および第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、正の値となる。
また、上記のように、熱緩衝体12は、弾性変形部材20から一方の熱流束センサ11を通過した熱流束が他方の熱流束センサ11を通過し難くなる所定の熱容量を有する構成とされている。このため、例えば、図5Aのように、第1熱流束センサ11aを通過する第1発熱熱流束HF1aが発生した場合、第1発熱熱流束HF1aは熱緩衝体12によって第2熱流束センサ11bを通過し難くなっている。つまり、図5Aの場合には、第2熱流束センサ11bを一面110aから他面120aに向かって通過する熱流束が発生し難くなっている。このため、第1発熱熱流束HF1aが発生したとしても、第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、ほぼ0となる。
同様に、図5Bのように、第2熱流束センサ11bを通過する第2発熱熱流束HF1bが発生した場合、当該第2発熱熱流束HF1bは熱緩衝体12によって第1熱流束センサ11aを通過し難くなっている。つまり、図5Bの場合には、第1熱流束センサ11aを一面110aから他面120aに向かって通過する熱流束が発生し難くなっている。このため、第2発熱熱流束HF1bが発生したとしても、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号は、ほぼ0となる。
また、図5Cのように、第1発熱熱流束HF1aおよび第2発熱熱流束HF1bが発生した場合、熱緩衝体12により、一方の熱流束センサ11を通過した発熱熱流束が他方の熱流束センサ11を通過し難くなっている。したがって、図5Cの場合には、第1熱流束センサ11aから出力センサされる第1センサ信号、および第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、正の値となる。
そして、センサ部10は、上記のように、第1熱流束センサ11aと第2熱流束センサ11bとが直列に接続されている。このため、歪み検出装置1に外力が印加された際、つまり歪み検出装置1が歪んだ際には、センサ部10は、第1センサ信号と第2センサ信号との和であるセンサ信号として、正の値を出力する。
なお、弾性変形部材20は、圧縮することで発熱して温度が高くなるが、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化の大きさは、単位時間当たりの圧縮量に比例する。つまり、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化は、圧縮量および変形速度に依存する。そして、第1、第2発熱熱流束HF1a、HF1bは、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化が大きいほど弾性変形部材20と熱緩衝体12との間の温度差が大きくなるため、大きくなる。つまり、センサ部10は、弾性変形部材20が圧縮する場合、弾性変形部材20の単位時間当たりの圧縮量に基づいたセンサ信号を出力する。
また、上記歪み検出装置1は、容器50に印加されていた外力が解放されると、容器50の形状が復元することで弾性変形部材20が復元する。そして、弾性変形部材20は、復元することで吸熱する。以下では、弾性変形部材20が復元することを弾性変形部材20が伸張するともいう。
このため、図6Aに示されるように、弾性変形部材20のうちの第1熱流束センサ11aを覆う部分が伸張すると、歪み検出装置1には、熱緩衝体12から第1熱流束センサ11aを通過して弾性変形部材20へ向かう第1吸熱熱流束HF2aが発生する。つまり、歪み検出装置1には、第1熱流束センサ11aの一面110aから他面120aへ向かう第1吸熱熱流束HF2aが発生する。したがって、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号は、負の値となる。
同様に、図6Bに示されるように、弾性変形部材20のうちの第2熱流束センサ11bを覆う部分が伸張すると、歪み検出装置1には、熱緩衝体12から第2熱流束センサ11bを通過して弾性変形部材20へ向かう第2吸熱熱流束HF2bが発生する。つまり、第2熱流束センサ11bの一面110aから他面120aへ向かう第2吸熱熱流束HF2bが発生する。したがって、第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、負の値となる。
また、図6Cに示されるように、弾性変形部材20のうちの第1熱流束センサ11aを覆う部分および第2熱流束センサ11bを覆う部分が伸張すると、歪み検出装置1には、第1吸熱熱流束HF2aおよび第2吸熱熱流束HF2bが発生する。したがって、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号、および第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、負の値となる。
なお、弾性変形部材20が伸張していない場合には、熱緩衝体12から弾性変形部材20へ向かう吸熱熱流束は発生しない。このため、図6Aの場合には、第2熱流束センサ11bから出力される第2センサ信号は、ほぼ0となる。同様に、図6Bの場合には、第1熱流束センサ11aから出力される第1センサ信号は、ほぼ0となる。
そして、センサ部10は、上記のように、第1熱流束センサ11aと第2熱流束センサ11bとが直列に接続されている。このため、歪み検出装置1に印加されていた外力が解放された際、センサ部10は、第1センサ信号と第2センサ信号との和であるセンサ信号として、負の値を出力する。
なお、弾性変形部材20は、伸張することで吸熱して温度が低くなるが、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化の大きさは、単位時間当たりの伸張量に比例する。つまり、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化の大きさは、伸張量および変形速度に依存する。そして、第1、第2吸熱熱流束HF2a、HF2bは、弾性変形部材20の単位時間当たりの温度変化が大きいほど弾性変形部材20と熱緩衝体12との間の温度差が大きくなるため、大きくなる。つまり、センサ部10は、弾性変形部材20が伸張する場合、弾性変形部材20の単位時間当たりの伸張量に基づいたセンサ信号を出力する。
以上より、本実施形態の歪み検出装置1では、センサ部10から出力されるセンサ信号の正負の極性に基づき、当該歪み検出装置1に外力が印加されているのか、または歪み検出装置1に印加されていた外力が解放されているのかを検出できる。また、熱流束の大きさは、弾性変形部材20の単位時間当たりの発熱量または吸熱量が大きいほど大きくなる。つまり、熱流束の大きさは、弾性変形部材20の単位時間当たりの変形量が大きいほど大きくなる。言い換えると、熱流束の大きさは、容器50に影響する外力が大きいほど大きくなる。このため、センサ信号の大きさ(すなわち、絶対値)に基づき、歪み検出装置1に影響する外力の大きさも検出される。
なお、熱流束センサ11は、熱流束に応じてセンサ信号を出力するため、熱流束が発生していなければセンサ信号としての値は0となる。例えば、図5A〜図5Cのように弾性変形部材20が圧縮される場合には、弾性変形部材20の圧縮が維持され続けると、熱緩衝体12が徐々に弾性変形部材20の温度に近づき、熱流束センサ11を通過する熱流束が小さくなる。そして、最終的には、熱流束センサ11を通過する熱流束が存在しなくなり、センサ信号が0となる。
つまり、例えば、歪み検出装置1を被設置物に設置する場合等において、歪み検出装置1は、被設置物に設置された際に図5A〜図5Cのように弾性変形部材20が圧縮されたとしても、所定期間経過後にセンサ信号が0となる。このため、本実施形態の歪み検出装置1では、被設置物に設置した後にオフセット調整を行う必要がない。
また、例えば、弾性変形部材20が圧縮する場合、センサ部10から出力されるセンサ信号は、弾性変形部材20が圧縮されてから所定期間後にピーク値となり、その後は徐々に小さくなる。したがって、歪み検出装置1に印加される外力の大きさを検出する場合には、例えば、センサ信号のピーク値を用いて算出される。
以上説明したように、本実施形態の歪み検出装置1は、センサ部10が熱流束センサ11を用いて構成され、熱流束センサ11を覆うように弾性変形部材20が配置されている。そして、歪み検出装置1は、被設置物に設置された際、所定期間経過後にはセンサ信号が0となる。つまり、本実施形態の歪み検出装置1は、被設置物に設置された後にオフセット調整を行わなくても高精度な検出を行うことができ、さらにオフセット調整を行う必要がないために構成の簡略化を図ることができる。
また、歪み検出装置1は、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bを用いてセンサ部10を構成し、弾性変形部材20をセンサ部10を囲むように配置している。このため、センサ部10に外力等の衝撃が直接印加されることがなく、衝撃に対する耐性も向上できる。
また、歪み検出装置1の歪みは、弾性変形部材20の変形によって発生する熱流束HF1a、HF1b、HF2a、HF2bに基づいて検出される。つまり、弾性変形部材20は、センサ部10を保護する機能と共に、熱流束を発生させる熱源としても機能する。このため、例えば、歪みによって熱流束を発生させる部材と、センサ部を保護する部材とを別々に備える場合と比較して、部品点数の削減を図ることができる。
そして、センサ部10は、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bの互いの一面110aを対向して配置すると共に、第1熱流束センサ11aと第2熱流束センサ11bとの間に熱緩衝体12を配置した構成としている。このため、弾性変形部材20が圧縮した際には、センサ信号が正の値となり、弾性変形部材20が伸張した際には、センサ信号が負の値となる。したがって、本実施形態の歪み検出装置1では、センサ信号の正負の極性に基づいて歪み検出装置1の状態が容易に検出される。
さらに、熱流束の大きさは、弾性変形部材20の単位時間当たりの変形量に依存する。つまり、熱流束の大きさは、歪み検出装置1に影響する外力の大きさに依存する。したがって、本実施形態の歪み検出装置1では、センサ信号の大きさ(すなわち、絶対値)に基づき、歪み検出装置1に影響する外力の大きさを容易に検出できる。
また、歪み検出装置1に発生する熱流束HF1a、HF1b、HF2a、HF2bは、弾性変形部材20の単位時間当たりの変形量に依存し、外部温度に依存しない。このため、本実施形態の歪み検出装置1では、外部温度を測定する温度センサや温度補正回路等を備える必要がなく、構成の簡素化を図ることもできる。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、弾性変形部材20の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態では、図7に示されるように、容器50は、一端側に開口部50aが形成された有底筒状とされている。そして、容器50の開口部は、支持部材30によって閉塞されている。つまり、本実施形態では、容器50は、密閉された状態となっている。
弾性変形部材20は、グリスのような流動性を有する材料で構成されており、容器50内に充填されている。
また、センサ部10は、上記第1実施形態と同様の構成とされているが、第1熱流束センサ11a、第2熱流束センサ11b、および熱緩衝体12は、それぞれ第1実施形態より平面形状が小さくされている。
以上説明したように、本実施形態の歪み検出装置1では、弾性変形部材20は、流動性を有する材料で構成されている。このため、歪み検出装置1は、容器50の所定箇所に外力が印加されて弾性変形部材20が圧縮する場合、パスカルの原理により、他の部分でも同様に弾性変形部材20が圧縮し易くなる。例えば、第1熱流束センサ11aを覆う部分の弾性変形部材20が圧縮する場合、第2熱流束センサ11bを覆う部分の弾性変形部材20も圧縮し易くなる。すなわち、上記図5Cのような状態となる。そして、歪み検出装置1は、外力が解放される場合、図6Cのような状態となる。このため、検出感度の向上を図ることができる。
また、このような歪み検出装置1では、弾性変形部材20における各部分が同様に圧縮するため、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bの平面形状を小さくできる。このため、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bを構成する材料の削減を図ることができる。
なお、本実施形態では、グリスのような流動性を有する材料で弾性変形部材20を構成する例について説明したが、弾性変形部材20は、例えば、さらに流動性の高い液体で構成されるようにしてもよい。これによれば、弾性変形部材20における各部分の圧縮量の差が小さくなり、さらに検出感度の向上を図ることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態の歪み検出装置1を用いて締結部品の締結状態を診断する診断装置を構成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の診断装置は、第1被締結部材と第2被締結部材とが締結部によって締結されている締結部品の締結状態を診断するものである。まず、本実施形態の締結部品70は、図8および図9に示されるように、第1被締結部材としての第1ベース部71、第2被締結部材としての第2ベース部72、締結部としてのボルト73等を備えている。なお、図8中の締結部品70は、図9中のVIII−VIII線に沿った断面図である。
第1ベース部71は、例えば、SUS303等の金属等で構成され、一面71aおよび当該一面71aと反対側の他面71bを有している。そして、第1ベース部71には、一面71a側にボルト73が挿入可能なボルト孔711が形成されている。ボルト孔711には、内壁面にネジ溝が形成されている。また、第1ベース部71には、ボルト孔711とは別に、歪み検出装置1を挿入可能な挿入孔712が形成されている。
第2ベース部72は、例えば、SUS303等の金属等で構成され、一面72aおよび当該一面72aと反対側の他面72bを有している。そして、第2ベース部72には、一面72aと他面72bとの間を貫通し、ボルト73が挿入可能な貫通孔721が形成されている。また、第2ベース部72には、貫通孔721とは別に、歪み検出装置1を挿入可能な差込孔722が形成されている。
なお、特に図示しないが、本実施形態では、第2ベース部72には、ロボット等の可動部が搭載されている。そして、第2ベース部72は、ロボット等を搭載するためのフランジ部にて構成されている。
ボルト73は、例えば、ステンレス等の金属で構成され、頭部73aおよび軸部73bを有するものが用いられる。頭部73aは、第2ベース部72の一面72aに当接可能に形成されている。軸部73bは、ボルト孔711および貫通孔721に挿入可能に形成されおり、頭部73a側と反対側の外壁面にボルト孔711の内壁面に形成されたネジ溝とネジ結合可能なネジ溝が形成されている。
そして、締結部品70は、第1ベース部71の一面71a上に第2ベース部72が搭載され、ボルト73によって第1ベース部71と第2ベース部72とが締結されることで構成されている。具体的には、第1ベース部71の一面71a上には、第2ベース部72の他面72bが第1ベース部71の一面71aと対向し、かつボルト孔711と貫通孔721とが連通し、さらに挿入孔712と差込孔722とが連通するように、第2ベース部72が搭載されている。そして、第1ベース部71および第2ベース部72は、貫通孔721を通じてボルト孔711にボルト73が挿入され、ボルト孔711に形成されたネジ溝とボルト73に形成されたネジ溝とがネジ結合されることによって締結されている。
なお、第1ベース部71は、例えば、他面71b側が図示しないテーブルや座面等に当接されて固定される。また、以下では、第1ベース部71に形成された挿入孔712および第2ベース部72に形成された差込孔722を纏めて単に孔部74ともいう。つまり、締結部品70は、第2ベース部72から第1ベース部71に渡る孔部74が形成されているともいえる。
以上が本実施形態における締結部品70の構成である。診断装置80は、上記歪み検出装置1と、制御部2と、表示部3とを備えている。
歪み検出装置1は、上記第1実施形態で説明した構成とされている。そして、歪み検出装置1は、締結部品70に形成された孔部74に挿入されて保持されている。本実施形態では、歪み検出装置1は、容器50がスプリングピンで構成されている。このため、歪み検出装置1は、孔部74に圧入されることにより、容器(すなわち、スプリングピン)50の復元力によって当該孔部74内に保持される。
また、本実施形態では、第2ベース部72は、主に図8および図9中の矢印A方向に沿って可動するロボット等の可動部が備えられている。そして、歪み検出装置1は、センサ部10における熱流束センサ11の面方向が可動部の主な可動方向と交差するように、孔部74に配置される。つまり、歪み検出装置1は、可動部が可動した際、弾性変形部材20のうちの熱流束センサ11を覆う部分が変形し易くなるように孔部74に配置される。このように歪み検出装置1が配置されることにより、第2ベース部72が矢印A方向に沿って可動すると、歪み検出装置1は、図5Aの状態、図6Aの状態、図5Bの状態、図6Bの状態を繰り返す。したがって、歪み検出装置1に印加される外力が高感度に検出される。なお、熱流束センサ11の面方向とは、熱流束センサ11における一面110aまたは他面120aの面方向のことである。
制御部2は、CPU(Central Processing Unitの略)、RAM(Random Access Memoryの略)、ROM(Read Only Memoryの略)、フラッシュメモリ等を有している。そして、制御部2は、CPUがROM、フラッシュメモリに記憶されたプログラムを実行し、その実行の際にRAMを作業領域として使用する。制御部2は、このようなCPUの作動によってプログラムに記述された機能を実現する。なお、RAM、ROM、フラッシュメモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
具体的には、制御部2は、歪み検出装置1におけるセンサ部10と配線部材40を介して接続されており、センサ部10からセンサ信号が入力される。そして、制御部2は、入力されるセンサ信号に基づき、締結部品70の締結状態を診断する。本実施形態では、制御部2は、後述するように、センサ信号と閾値とを比較し、センサ信号が閾値以上であると判定すると締結状態が異常であると判定する。そして、制御部2は、締結部品70の締結状態に異常があると判定すると、表示部3に異常制御信号を出力する。なお、本実施形態では、閾値が判定パラメータに相当する。
表示部3は、報知部を構成するものであり、液晶ディスプレイ等で構成されている。そして、表示部3は、制御部2から異常制御信号が入力されると、締結部品70の締結状態が異常であることを報知する映像等を表示する。
以上が本実施形態における診断装置80の構成である。次に、診断装置80の作動の1例について説明する。
上記のような締結部品70では、第1ベース部71、第2ベース部72、およびボルト73の少なくとも1つに外力が発生すると、当該外力が歪み検出装置1に印加される。例えば、本実施形態では、第2ベース部72に可動部が備えられている。このため、歪み検出装置1には、可動部が可動すると、当該可動部の可動に応じた外力が印加され、また当該可動部の可動に応じて印加されていた外力が解放される。
そして、歪み検出装置1は、上記のように、外力が印加されることで弾性変形部材20が圧縮し、外力が解放されることで弾性変形部材20が伸張する。これにより、歪み検出装置1は、外力に応じたセンサ信号を出力する。そして、制御部2は、センサ信号と閾値とを比較し、締結部品70の締結状態を診断する。
具体的には、本実施形態の締結部品70では、当該締結部品70に外力が発生した際、ボルト73が緩んでいる場合にはボルト73に印加される外力が小さくなって歪み検出装置1に印加される外力が大きくなる。この場合、弾性変形部材20の単位時間当たりの圧縮量が大きくなる。つまり、歪み検出装置1では、第1発熱熱流束FH1aまたは第2発熱熱流束FH1bが大きくなる。したがって、歪み検出装置1から出力されるセンサ信号が大きくなる。
このため、制御部2は、センサ信号が閾値よりも大きいか否かを判定することにより、締結部品70の締結状態が異常であるか否かの診断を行う。本実施形態では、図10に示されるように、閾値として、第1閾値Vaと、第1閾値Vaより大きい第2閾値Vbとが設定されている。なお、第1閾値Vaは、ボルト73が緩みかかっている状態の閾値とされており、第2閾値Vbは、ボルト73が緩んで確認が必要な状態の閾値とされている。
したがって、制御部2は、センサ信号が第1閾値Vaよりも大きいか否かを判定し、センサ信号が第1閾値Vaよりも大きいと判定した場合には、センサ信号が第2閾値Vbよりも大きいか否かを判定する。そして、制御部2は、センサ信号が第1閾値Vaより大きいと判定した場合、例えば、表示部3に、締結部品70の確認を促すことを表示させるための異常制御信号を出力する。また、制御部2は、センサ信号が第2閾値Vbより大きいと判定した場合、例えば、表示部3に、締結部品70の確認が早急に必要であることを表示させるための異常制御信号を出力する。これにより、作業者は、締結部品70の締結状態に異常が発生していることを認識でき、ボルト73を締め直す等の必要な措置を実行することができる。
なお、本実施形態では、第1閾値Vaおよび第2閾値Vbは、締結部品70の締結状態が正常状態である際に得られるセンサ信号に基づいて設定される。歪み検出装置1が締結部品70に備えられた後の弾性変形部材20の圧縮量に基づいて第1閾値Vaおよび第2閾値Vbが設定されることにより、さらに高精度な検出を行うことができるためである。言い換えると、弾性変形部材20の初期の圧縮量が確定した後に1閾値Vaおよび第2閾値Vbが設定されることにより、さらに高精度な検出を行うことができるためである。但し、第1閾値Vaおよび第2閾値Vbは、予め設定された値とされていてもよい。
以上説明したように、歪み検出装置1を用い、締結部品70の締結状態を診断する診断装置80を構成することもできる。また、上記診断装置80は、既存の締結部品70に対しては、孔部74を形成すると共に歪み検出装置1を当該孔部74に配置し、制御部2および表示部3等を別に用意するのみで構成される。このため、上記診断装置80は、既存の締結部品70に対しても容易に適用することができる。
また、歪み検出装置1は、弾性変形部材20のうちの熱流束センサ11を覆う部分が変形し易くなるように孔部74に配置されている。このため、診断装置80の診断精度の向上を図ることができる。
なお、上記第3実施形態では、締結部品70の締結状態を診断する診断装置80について説明した。しかしながら、上記第3実施形態の構成は、診断装置80を有する締結部品70と捉えることもできる。
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態の歪み検出装置1を用いて保持装置の保持状態を診断する診断装置を構成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の診断装置は、被対象物を保持する保持装置の保持状態を診断するものである。まず、本実施形態の保持装置90は、図11および図12に示されるように、ベース部91と、ベース部91に保持された3つの爪部92とを有する構成とされている。つまり、本実施形態の保持装置90は、いわゆる3つ爪チャックである。
ベース部91は、例えば、SUS303等の金属等で構成され、一面91a側に3つのガイド溝91bが形成されている。本実施形態では、3つのガイド溝91bは、一面91aにおける中心の近傍から一面91aにおける外縁に向かって形成されており、互いの隣合うガイド溝91bとの成す角度が等しくされている。
そして、3つの爪部92は、それぞれベース部91の一面91a側からガイド溝91bに挿入され、ガイド溝91bに沿って変位可能となるようにベース部91に保持されている。つまり、3つの爪部92は、それぞれ一面91aの中心近傍と一面91aの外縁との間を変位可能となるようにベース部91に保持されている。そして、本実施形態では、各爪部92は、上記歪み検出装置1にて構成されている。なお、本実施形態では、爪部92が保持部に相当する。
以上が本実施形態における保持装置90の構成である。そして、上記保持装置90は、図13に示されるように、各爪部92がガイド溝91bに沿って図13中の矢印B方向にそれぞれ変位し、各爪部92が被対象物Wと当接することにより、被対象物Wを把持して保持する。
本実施形態の診断装置80は、図11および図12に示されるように、上記歪み検出装置1と、制御部2と、表示部3とを備えている。
歪み検出装置1は、上記第1実施形態で説明した構成とされており、上記のように爪部92を構成している。また、図13に示されるように、各爪部92は、それぞれベース部91の一面91aの中心側に位置する部分が被対象物Wに当接して被対象物Wを保持する。つまり、爪部92には、ベース部91の一面91aの中心側に位置する部分に外力としての反力が印加される。このため、本実施形態では、爪部92を構成する歪み検出装置1は、センサ部10における熱流束センサ11の面方向が爪部92の可動方向と交差するように、ベース部91に備えられている。つまり、爪部92を構成する歪み検出装置1は、弾性変形部材20のうちの熱流束センサ11を覆う部分が変形し易くなるようにベース部91に備えられている。
制御部2および表示部3は、基本的には上記第3実施形態の制御部2および表示部3と同様の構成とされている。但し、本実施形態の制御部2は、具体的には後述するが、センサ信号が所定の閾値より小さいと判定すると、保持装置90の保持状態が異常であると判定する。なお、本実施形態では、閾値が判定パラメータに相当する。
以上が本実施形態における診断装置80の構成である。次に、診断装置80の作動の1例について説明する。
上記のような保持装置90は、各爪部92が被対象物Wと当接し、各爪部92が被対象物Wを把持することで保持する。この際、爪部92には、被対象物Wと当接することによって外力としての反力が印加される。そして、保持装置90は、爪部92が歪み検出装置1で構成されているため、各爪部92が被対象物Wと当接すると弾性変形部材20が圧縮し、各爪部92が被対象物Wから離れると弾性変形部材20が伸張する。これにより、歪み検出装置1は、爪部92の状況に応じたセンサ信号を出力する。そして、制御部2は、センサ信号と閾値とを比較し、保持装置90の保持状態に異常が発生しているか否かの判定を実行する。
具体的には、例えば、1つの爪部92が被対象物Wと適切に当接していない場合、当該爪部92に印加される反力が小さくなる。この場合、被対象物Wと適切に当接していない爪部92では、歪み検出装置1における弾性変形部材20の単位時間当たりの圧縮量が小さくなる。つまり、被対象物Wと適切に当接していない爪部92では、歪み検出装置1において、第1吸熱熱流束FH2aまたは第2吸熱熱流束FH2bが小さくなる。したがって、この歪み検出装置1から出力されるセンサ信号は、小さくなる。
このため、制御部2は、センサ信号が閾値よりも大きいか否かを判定することにより、保持装置90の保持状態が異常であるか否かの判定を行う。本実施形態では、図14に示されるように、各歪み検出装置1から出力される各センサ信号が閾値Vcよりも大きいか否かを判定することにより、保持装置90の保持状態が異常であるか否かの診断を行う。そして、制御部2は、各歪み検出装置1から入力されるセンサ信号の少なくとも1つが閾値Vcより小さいと判定した場合、例えば、表示部3に、被対象物Wが適切に保持されていないことを表示させるための異常制御信号を出力する。これにより、作業者は、被対象物Wが適切に保持されていないことを認識でき、爪部92を交換する等の必要な措置を実行することができる。
なお、本実施形態における保持状態が異常であるか否かとは、保持装置90が被対象物Wを適切に把持したか否かのことである。また、本実施形態では、閾値Vcは、保持装置90の保持状態が正常状態である際に得られるセンサ信号に基づいて設定される。歪み検出装置1が保持装置90に備えられた後の弾性変形部材20の圧縮量に基づいて閾値Vcが設定されることにより、さらに高精度な検出を行うことができるためである。言い換えると、弾性変形部材20の初期の圧縮量が確定した後に閾値Vcが設定されることにより、さらに高精度な検出を行うことができるためである。但し、閾値Vcは、予め設定された値とされていてもよい。
以上説明したように、歪み検出装置1を用い、保持装置90の保持状態を診断する診断装置80を構成することもできる。また、上記診断装置80は、既存の保持装置90に対して、爪部92を歪み検出装置1で構成し、制御部2および表示部3等を別に用意するのみで構成される。このため、上記診断装置80は、既存の保持装置90に対しても容易に適用することができる。
また、歪み検出装置1は、弾性変形部材20のうちの熱流束センサ11を覆う部分が変形し易くなるようにベース部91に備えられている。このため、診断装置80の診断精度の向上を図ることができる。
なお、上記第4実施形態では、保持装置90の保持状態を診断する診断装置80について説明した。しかしながら、上記第4実施形態の構成は、診断装置80を有する保持装置90として捉えることもできる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
例えば、上記各実施形態において、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、一体化されていてもよい。つまり、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、1つの熱流束センサ11を用意し、一面110aが対向するように折り曲げられることで構成されていてもよい。
また、上記各実施形態において、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、互いの他面120aが対向するように配置されていてもよい。この構成では、歪み検出装置1に外力が印加された場合にはセンサ信号が負の値となり、歪み検出装置1に印加されていた外力が解放された場合にはセンサ信号が正の値となる。このため、上記第3、第4実施形態では、適宜閾値の極性を変更すればよい。
さらに、上記各実施形態において、第1熱流束センサ11aと第2熱流束センサ11bは直列に接続されていなくてもよい。つまり、上記第3、第4実施形態では、第1熱流束センサ11aおよび第2熱流束センサ11bは、それぞれ制御部2に対して並列に接続されていてもよい。この場合、制御部2は、例えば、第1センサ信号および第2センサ信号との和を演算してセンサ信号とし、当該センサ信号を用いて上記診断を行うようにすればよい。
そして、上記各実施形態において、熱流束センサ11は、絶縁基材100、表面保護部材110、裏面保護部材120がそれぞれ樹脂材料以外の可撓性を有する絶縁材料で構成されていてもよい。また、熱流束センサ11は、絶縁基材100、表面保護部材110、裏面保護部材120が可撓性を有さない絶縁材料で構成されていてもよい。さらに、熱流束センサ11は、表面保護部材110および裏面保護部材120を有さない構成とされていてもよい。さらに、熱流束センサ11は、熱流束を検出するものであれば、上記構成とは別の構成のものを用いてもよい。
さらに、上記第1、第3、第4実施形態において、容器50が上記第2実施形態のように密封可能な構成とされている場合、弾性変形部材20は、容器50内にセンサ部10を配置して樹脂やゴムを射出成型することで構成されていてもよい。弾性変形部材20をこのように構成することにより、製造過程では、容器50内の圧力によって当該容器50が膨らんだ状態となる。そして、製造後には、容器50の復元力によって弾性変形部材20が圧縮された状態となる。つまり、弾性変形部材20は、初期状態において圧縮された状態となる。これにより、弾性変形部材20は、バネ定数が大きくなり、外力が印加、解放された際の発熱量、吸熱量が増加する。したがって、感度の向上を図ることができる。なお、上記第1、第3、第4実施形態では、容器50から弾性変形部材20に圧縮力が印加されるように当該容器50を弾性変形部材20に取り付けるようにしても、同様の効果を得ることができる。
また、上記第3、第4実施形態では、センサ信号として電圧を用いる例について説明したが、例えば、電圧を電流に変換して異常判定を行うようにしてもよい。
さらに、上記第1、第3、第4実施形態では、容器50は備えられていなくてもよい。例えば、上記第3実施形態では、弾性変形部材20が孔部74の壁面と当接していてもよい。
また、上記第4実施形態では、診断装置80は、センサ信号が閾値より小さくなる場合に保持装置90の保持状態が異常であると判定する例に説明したが、次のようにしてもよい。例えば、1つの爪部92が被対象物Wと適切に当接していない場合、被対象物Wから他の爪部92に印加される反力は大きくなる。このため、上記第3実施形態と同様に、診断装置80は、センサ信号が所定の閾値より大きいか否かを判定することにより、保持装置90の保持状態を診断するようにしてもよい。
さらに、上記第3、第4実施形態では、制御部2は、センサ信号が正の値である際に診断を行う例について説明した。つまり、上記第3、第4実施形態では、制御部2は、歪み検出装置1に外力が印加された際に診断を行う例について説明した。しかしながら、制御部2は、センサ信号が負の値の際に診断を行うようにしてもよい。つまり、制御部2は、歪み検出装置1に印加されている外力が解放される際に診断を行うようにしてもよい。このような構成とする場合には、上記第3、第4実施形態では、適宜閾値の極性を変更すればよい。
また、上記第3実施形態では、制御部2は、センサ信号が第1閾値Vaおよび第2閾値Vbより大きいか否かを判定する例について説明した。しかしながら、制御部2は、センサ信号を1つの閾値のみと比較するようにしてもよい。そして、上記第4実施形態では、制御部2は、センサ信号と異なる2つの閾値とを比較するようにしてもよい。
また、上記第3、第4実施形態では、センサ信号を閾値と比較することによる診断方法を説明したが、診断方法は適宜変更可能である。例えば、上記第3、第4実施形態では、制御部2は、センサ信号のピーク幅を算出し、ピーク幅と所定の参照幅とを比較することによる診断を行うようにしてもよい。なお、この構成では、参照幅が判定パラメータに相当する。
すなわち、上記第3実施形態では、ボルト73が緩むと歪み検出装置1に印加される外力が大きくなる。この場合、弾性変形部材20の単位時間当たりの圧縮量および伸張量が大きくなり、センサ信号は、ピーク幅が大きくなる。したがって、図15に示されるように、制御部2は、センサ信号が参照幅DPX1より小さいピーク幅DP1の際に正常であると判定し、センサ信号が参照幅DPX1より大きいピーク幅DP2である際に異常であると判定するようにしてもよい。
また、上記第4実施形態では、爪部92が適切に被対象物Wに当接していない場合には、被対象物Wと適切に当接していない爪部92に印加される外力が小さくなる。この場合、この爪部92では、弾性変形部材20の単位時間当たりの圧縮量および伸張量が小さくなり、センサ信号は、ピーク幅が小さくなる。したがって、図16に示されるように、制御部2は、センサ信号が参照幅DPX2より大きいピーク幅DP3である際に正常であると判定し、センサ信号が参照幅DPX2より小さいピーク幅DP4である際に異常であると判定するようにしてもよい。
さらに、上記第3、第4実施形態では、制御部2は、特に図示しないが、センサ信号の波形を参照波形と比較し、例えば、参照波形に対する全体のずれが数十%以上である場合に異常であると判断してもよい。この場合、制御部2は、正常状態における複数のセンサ信号に基づいて参照波形を形成し、センサ信号が参照波形の3σの範囲内に属している場合に正常であると判定するようにしてもよい。
また、上記第3実施形態では、第2ベース部72に可動部が備えられた例を説明したが、例えば、第1ベース部71に可動部が備えられていてもよい。このような締結部品70であっても、歪み検出装置1に印加される外力は同様となるため、上記診断方法をそのまま適用できる。さらに、締結部品70は、可動部が備えられない構成とされていてもよい。
さらに、上記第4実施形態では、制御部2は、保持装置90が被対象物Wを適切に保持したか否かを診断する保持状態の診断について説明したが、さらに次の診断を行うようにしてもよい。すなわち、保持装置90は、被対象物Wを所定期間保持し続けると、弾性変形部材20と熱緩衝体12との温度差が無くなる。このため、歪み検出装置1から出力されるセンサ信号は、0となる。そして、この状態で被対象物Wが滑り落ちたり、被対象物Wが何らかの部材に衝突等すると、歪み検出装置1に影響する外力が変化するため、センサ信号は、0と異なる値となる。したがって、制御部2は、保持装置90が被対象物Wを保持してセンサ信号が0となった後は、センサ信号が0であるか否かを判定することにより、保持装置90が適切に被対象物Wを保持し続けているか否かの判定を行うことができる。
なお、この場合は、センサ信号が0であるか否かを判定するため、0が判定パラメータとなる。但し、保持装置90が適切に被対象物Wを保持し続けていたとしても、微小な大きさのセンサ信号が出力され得る。このため、制御部2は、0近傍の範囲を閾値として設定し、センサ信号が当該範囲内を超えているか否かを判定することにより、被対象物Wが適切に保持され続けているか否かを判定することが好ましい。これによれば、保持装置90が被対象物Wを保持している際のセンサ信号が0となるため、異常判定の感度の向上を図ることができる。
また、上記第1実施形態の歪み検出装置1は、弾性変形部材20を構成する材料によっては、弾性変形部材20が主に変形する箇所によって検出感度が変化する可能性がある。例えば、歪み検出装置1は、第1、第2熱流束センサ11a、11bを覆う部分の弾性変形部材20が変形した際の検出感度に対し、第1、第2熱流束センサ11a、11bを覆う部分と異なる部分の弾性変形部材20が変形した際の検出感度が低くなる可能性がある。
このため、例えば、上記第3実施形態では、図17に示されるように、診断装置80は、2つの歪み検出装置1を備えるようにしてもよい。そして、2つの歪み検出装置1は、それぞれのセンサ部10における熱流束センサ11の面方向が交差するように配置されるようにしてもよい。これによれば、各歪み検出装置1における熱流束センサ11の面方向が交差するため、全体として検出感度が低下することを抑制できる。
また、図18に示されるように、歪み検出装置1は、2つのセンサ部10を備え、各センサ部10における熱流束センサ11の面方向が交差する構成とされていてもよい。このような構成では、弾性変形部材20が圧縮または伸張した際、発生する熱流束がいずれかの熱流束センサ11における一面110aと他面120aとの間を通過し易くなる。このため、弾性変形部材20が変形する箇所によって検出感度が変化することを抑制できる。なお、図18では、各センサ部10で熱緩衝体12が共用とされている例を示しているが、各センサ部10の熱緩衝体12は別々に備えられていてもよい。つまり、図2に示すセンサ部10が2つ配置され、各センサ部10における熱流束センサ11の面方向が交差する構成とされていてもよい。
但し、上記歪み検出装置1は、弾性変形部材20が主に変形する箇所によって検出感度が変化する可能性があるものの、歪みの検出を行うことは可能である。つまり、上記歪み検出装置1は、弾性変形部材20が主に変形する箇所が熱流束センサ11を覆う部分と異なる部分であっても、歪みの検出を行うことは可能である。このため、上記第3実施形態において、例えば、歪み検出装置1は、センサ部10における熱流束センサ11の面方向が可動部の主な可動方向と平行となるように、孔部74に配置されていてもよい。同様に、上記第4実施形態において、例えば、歪み検出装置1は、センサ部10における熱流束センサ11の面方向が爪部92の可動方向と平行となるように、ベース部91に備えられていてもよい。
さらに、上記各実施形態を適宜組わせてもよい。例えば、上記第2実施形態を第3、第4実施形態に組み合わせ、弾性変形部材20を流動性を有する材料で構成するようにしてもよい。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、歪み検出装置は、熱流束を検出するセンサ部と、センサ部を覆い、圧縮することで発熱すると共に伸張することで吸熱する弾性変形部材と、を備える。センサ部は、一面と当該一面と反対側の他面を有し、一面から他面に向かって熱流束が通過した際に正負の一方と極性となるセンサ信号を出力し、他面から一面に向かって熱流束が通過した際に正負の他方の極性となるセンサ信号を出力する2つの熱流束センサを有している。また、センサ部は、2つの熱流束センサの間に配置され、所定の熱容量を有する熱緩衝体を有している。そして、2つの熱流束センサは、互いの一面が対向するように配置され、弾性変形部材の変形によって発生する熱流束に応じたセンサ信号を出力する。
また、第2の観点によれば、歪み検出装置は、弾性変形部材を覆う容器を有し、弾性変形部材は、流動性を有する材料で構成され、容器内に充填されている。
これによれば、歪み検出装置は、容器の所定箇所に外力が印加されて弾性変形部材が圧縮する場合、パスカルの原理により、他の部分でも同様に弾性変形部材が圧縮し易くなる。このため、検出感度の向上を図ることができる。
また、第3の観点によれば、第1被締結部材および第2被締結部材が締結部によって締結された締結部品の締結状態を診断する診断装置は、上述の歪み検出装置と、締結部品の締結状態を診断する制御部と、を備える。そして、歪み検出装置は、第1被締結部材から第2被締結部材に渡って形成された孔部に、締結部品に発生する外力が印加されるように配置される。制御部は、歪み検出装置から出力されるセンサ信号と、所定の判定パラ―メータとを比較することによって締結状態を診断するように構成される。
また、第4の観点によれば、被対象物を保持する保持装置の被対象物に対する保持状態を診断する診断装置は、上述の歪み検出装置と、保持装置の保持状態を診断する制御部と、を備える。そして、歪み検出装置は、保持装置における被対象物を保持する保持部を構成するように配置される。制御部は、歪み検出装置から出力されるセンサ信号と、所定の判定パラ―メータとを比較することによって保持状態を診断するように構成される。