以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書中、略称として以下を用いる場合がある。
[EMI]+:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン
[DEME]+:N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン
[Py12]+:N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン
[Py13]+:N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン
[PP13]+:N−メチル−N−プロピルピペリジニウムカチオン
[LiG4]+:テトラエチレングリコールジメチルエーテルリチウムカチオン
[FSI]−:ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン
[TFSI]−:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン
[f3C]−:トリス(フルオロスルホニル)カルボアニオン
[BOB]−:ビスオキサレートボラートアニオン
[P(DADMA)][Cl]:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライド
[P(DADMA)][TFSI]:ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
LLT:チタン酸リチウムランタン
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るポリマ二次電池を示す斜視図である。図1に示すように、ポリマ二次電池1は、正極、負極、及び電解質層から構成される電極群2と、電極群2を収容する袋状の電池外装体3とを備えている。正極及び負極には、それぞれ正極集電タブ4及び負極集電タブ5が設けられている。正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、それぞれ正極及び負極がポリマ二次電池1の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体3の内部から外部へ突き出している。
電池外装体3は、例えば、ラミネートフィルムで形成されていてもよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってもよい。
図2は、図1に示したポリマ二次電池1における電極群2の一実施形態を示す分解斜視図である。図3は、図1に示したポリマ二次電池1における電極群2の一実施形態を示す模式断面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態に係る電極群2Aは、正極6と、電解質層7と、負極8とをこの順に備えている。正極6は、正極集電体9と、正極集電体9上に設けられた正極合剤層10とを備えている。正極集電体9には、正極集電タブ4が設けられている。負極8は、負極集電体11と、負極集電体11上に設けられた負極合剤層12とを備えている。負極集電体11には、負極集電タブ5が設けられている。
正極集電体9は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等で形成されていてもよい。正極集電体9は、具体的には、孔径0.1〜10mmの孔を有するアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等であってもよい。正極集電体9は、上記以外にも、電池の使用中に溶解、酸化等の変化を生じないものであれば、任意の材料で形成されていてよく、また、その形状、製造方法等も制限されない。
正極集電体9の厚さは、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってもよい。正極集電体9の厚さは、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってもよい。
正極合剤層10は、一実施形態において、正極活物質と、導電剤と、バインダと、を含有する。
正極活物質は、LiCoO2、Li0.3MnO2、Li4Mn5O12、V2O5、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、Li1.2(Fe0.5Mn0.5)0.8O2、Li1.2(Fe0.4Mn0.4Ti0.2)0.8O2、Li1+x(Ni0.5Mn0.5)1−xO2(ただし、x=0〜1である。)、LiNi0.5Mn1.5O4、Li2MnO3、Li0.76Mn0.51Ti0.49O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Fe2O3、LiCoPO4、LiMnPO4、Li2MPO4F(M=Fe,Mn)、LiMn0.875Fe0.125PO4、Li2FeSiO4、Li2−xMSi1−xPxO4(M=Fe,Mn)(ただし、x=0〜1である。)、LiMBO3(M=Fe,Mn)、FeF3、Li3FeF6、Li2TiF6、Li2FeS2、TiS2、MoS2、FeS等であってもよい。
正極活物質は、造粒されていない一次粒子であってもよく、造粒された二次粒子であってもよい。
正極活物質の粒径は、正極合剤層10の厚さ以下になるように調整される。正極活物質中に正極合剤層10の厚さ以上の粒径を有する粗粒子がある場合、ふるい分級、風流分級等により粗粒子を予め除去し、正極合剤層10の厚さ以下の粒径を有する正極活物質を選別する。
正極活物質の平均粒径は、粒径減少に伴う正極活物質の充填性の悪化を抑制しつつ、かつ、電解質の保持能力を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。正極活物質の平均粒径は、正極活物質全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径(D50)である。正極活物質の平均粒径(D50)は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、レーザー散乱法により水中に正極活物質を懸濁させた懸濁液を測定することで得られる。
正極活物質の含有量は、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。正極活物質の含有量は、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、例えば、99質量%以下であってもよい。
導電剤は、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック等であってもよい。
導電剤の含有量は、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。導電剤の含有量は、正極6の体積の増加及びそれに伴うポリマ二次電池1のエネルギー密度の低下を抑制する観点から、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。
バインダは、正極6の表面で分解しないものであれば制限されないが、例えばポリマである。バインダは、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシル・メチルセルロース、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂;これら樹脂を主骨格として有する共重合体の樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)などであってもよい。
バインダの含有量は、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。バインダの含有量は、正極活物質、導電剤、及びバインダの全量を基準として、15質量%以下、12質量%以下、又は9質量%以下であってもよい。
正極合剤層10は、必要に応じて、柔粘性結晶、イオン液体等の溶融塩などをさらに含有してもよい。溶融塩は、後述の溶融塩と同様のものを例示することができる。溶融塩の含有量は、正極合剤層全量を基準として、0.01〜20質量%であってもよい。
正極合剤層10の厚さは、導電率をさらに向上させる観点から、正極活物質の平均粒径以上の厚さであり、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。正極合剤層10の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。正極合剤層の厚さを100μm以下とすることにより、正極合剤層10の表面近傍及び正極集電体9の表面近傍の正極活物質の充電レベルのばらつきに起因する充放電の偏りを抑制できる。
正極合剤層10の合剤密度は、導電剤と正極活物質とを互いに密着させ、正極合剤層10の電子抵抗を低減する観点から、好ましくは1g/cm3以上である。
負極集電体11は、銅、ステンレス鋼、チタン、ニッケル等で形成されていてもよい。負極集電体11は、具体的には、圧延銅箔、例えば、孔径0.1〜10mmの孔を有する銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等であってもよい。負極集電体11は、上記以外の任意の材料で形成されていてもよく、また、その形状、製造方法等も制限されない。
負極集電体11の厚さは、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってもよい。負極集電体11の厚さは、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってもよい。
負極合剤層12は、一実施形態において、負極活物質と、バインダと、を含有する。
負極活物質は、二次電池等の通常のエネルギーデバイスの分野の負極活物質として使用されるものを使用することができる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属化合物、炭素材料、金属錯体、有機高分子化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。これらの中でも、負極活物質は、炭素材料であることが好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人工黒鉛等の黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、非晶質炭素、炭素繊維などが挙げられる。
負極活物質の平均粒径(D50)は、粒径減少に伴う不可逆容量の増加を抑制しつつ、かつ、電解質の保持能力を高めたバランスの良い負極8を得る観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。負極活物質の平均粒径(D50)は、正極活物質の平均粒径(D50)と同様の方法により測定される。
負極活物質の含有量は、上述した正極合剤層10における正極活物質の含有量と同様であってもよい。
バインダ及びその含有量は、上述した正極合剤層10におけるバインダ及びその含有量と同様であってもよい。
負極合剤層12は、負極8の抵抗をさらに低くする観点から、導電剤をさらに含有してもよい。導電剤及びその含有量は、上述した正極合剤層10における導電剤及びその含有量と同様であってもよい。
負極合剤層12は、必要に応じて、柔粘性結晶、イオン液体等の溶融塩などをさらに含有していてもよい。溶融塩は、後述の溶融塩と同様のものを例示することができる。溶融塩の含有量は、負極合剤層全量を基準として、0.01〜20質量%であってもよい。
負極合剤層12の厚さは、導電率をさらに向上させる観点から、負極活物質の平均粒径以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。負極合剤層12の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。負極合剤層12の厚さを50μm以下とすることにより、負極合剤層12の表面近傍及び負極集電体11の表面近傍の正極活物質の充電レベルのばらつきに起因する充放電の偏りを抑制できる。
負極合剤層12の合剤密度は、導電剤と負極活物質とを互いにを密着させ、負極合剤層12の電子抵抗を低減する観点から、好ましくは1g/cm3以上である。
電解質層7は、ポリマ電解質組成物から形成することができる。ポリマ電解質組成物は、特定の構造単位を有するポリマと、特定の電解質塩と、特定の無機酸化物と、を含有する。
[ポリマ]
ポリマ電解質組成物は、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリマを含有する。
一般式(1)中、X−は対アニオンを示す。ここで、X−としては、例えば、BF4 −(テトラフルオロボラートアニオン)、PF6 −(ヘキサフルオロホスファートアニオン)、N(SO2F)2 −(ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、[FSI]−)、N(SO2CF3)2 −(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、[TFSI]−)、C(SO2F)3 −(トリス(フルオロスルホニル)カルボアニオン、[f3C]−)、B(O2C2O2)2 −(ビスオキサレートボラートアニオン、[BOB]−)、BF3(CF3)−、BF3(C2F5)−、BF3(C3F7)−、BF3(C4F9)−、C(SO2CF3)3 −、CF3SO2O−、CF3COO−、RCOO−(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等が挙げられる。これらの中でも、X−は、好ましくはBF4 −、PF6 −、[FSI]−、[TFSI]−、及び[f3C]−からなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくは[TFSI]−又は[FSI]−である。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマの粘度平均分子量Mv(g・mol−1)は、特に制限されないが、好ましくは1.0×105以上、より好ましくは3.0×105以上である。また、ポリマの粘度平均分子量は、好ましくは5.0×106以下、より好ましくは1.0×106である。粘度平均分子量が1.0×105以上であると、ポリマ電解質シートの自立性がより優れる傾向にある。また、粘度平均分子量が5.0×106以下であると、塗布形成のハンドリング性がより高まる傾向にある。
本明細書において、「粘度平均分子量」とは、一般的な測定方法である粘度法によって評価することができ、例えば、JIS K 7367−3:1999に基づいて測定した極限粘度数[η]から算出することができる。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマは、イオン伝導性の観点から、一般式(1)で表される構造単位のみからなるポリマ、すなわちホモポリマであることが好ましい。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマは、下記一般式(1A)で表されるポリマであってもよい。
一般式(1A)中、nは300〜4000であり、Y−は対アニオンを示す。Y−は、X−で例示したものと同様のものを用いることができる。
nは、300以上、好ましくは400以上、より好ましくは500以上である。また、4000以下、好ましくは3500以下、より好ましくは3000以下である。また、nは、300〜4000、好ましくは400〜3500、より好ましくは500〜3000である。nが300以上であると、ポリマ電解質シートの自立性がより優れる傾向にある。nが4000以下であると、ポリマ電解質シートのイオン伝導度がより向上する傾向にある。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマの製造方法は、特に制限されないが、例えば、Journal of Power Sources 2009,188,558−563に記載の製造方法を用いることができる。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマ(X−=[TFSI]−)は、例えば、以下の製造方法によって、得ることができる。
まず、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライド([P(DADMA)][Cl])を脱イオン水に溶解し、撹拌して[P(DADMA)][Cl]水溶液を作製する。[P(DADMA)][Cl]は、例えば、市販品をそのまま用いることができる。次いで、別途、Li[TFSI]を脱イオン水に溶解し、Li[TFSI]を含む水溶液を作製する。
その後、[P(DADMA)][Cl]に対するLi[TFSI]のモル比(Li[TFSI]のモル量/[P(DADMA)][Cl]のモル量)が1.2〜2.0になるように、2つの水溶液を混合して2〜8時間撹拌し、固体を析出させ、得られた固体をろ過回収する。脱イオン水を用いて固体を洗浄し、12〜48時間真空乾燥することによって、一般式(1)で表される構造単位を有するポリマ([P(DADMA)][TFSI])を得ることができる。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマの含有量は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。また、ポリマの含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。ポリマの含有量が10質量%以上であると、ポリマ電解質シートの強度がより向上する傾向にある。また、ポリマの含有量を80質量%以下とし、他の成分(電解質塩、溶融塩等)の量を増やすことによって、ポリマ電解質シートのイオン伝導度をより向上させることができる。
[電解質塩]
ポリマ電解質組成物は、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の電解質塩を含有する。ここで、電解質塩には、リチウム元素、ランタン元素、及びチタン元素を含む無機酸化物は包含されない。
電解質塩は、通常のイオン電池用の電解液の電解質塩として使用されるものを使用することができる。電解質塩のアニオン成分は、ハロゲン化物イオン(I−、Cl−、Br−等)、SCN−、BF4 −、BF3(CF3)−、BF3(C2F5)−、BF3(C3F7)−、BF3(C4F9)−、PF6 −、ClO4 −、SbF6 −、[FSI]−(N(SO2F)2 −)、[TFSI]−(N(SO2CF3)2 −)、N(SO2C2F5)2 −、BPh4 −、B(O2C2H4)2 −、[f3C]−(C(SO2F)3 −)、C(SO2CF3)3 −、CF3COO−、CF3SO2O−、C6F5SO2O−、[BOB]−(B(O2C2O2)2 −)、RCOO−(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってもよい。これらの中でも、電解質塩のアニオン成分は、好ましくはPF6 −、BF4 −、[FSI]−、[TFSI]−、[BOB]−、及びClO4 −からなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくは[TFSI]−又は[FSI]−である。
リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、Li[FSI]、Li[TFSI]、Li[f3C]、Li[BOB]、LiClO4、LiBF3(CF3)、LiBF3(C2F5)、LiBF3(C3F7)、LiBF3(C4F9)、LiC(SO2CF3)3、CF3SO2OLi、CF3COOLi、RCOOLi(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。
ナトリウム塩は、NaPF6、NaBF4、Na[FSI]、Na[TFSI]、Na[f3C]、Na[BOB]、NaClO4、NaBF3(CF3)、NaBF3(C2F5)、NaBF3(C3F7)、NaBF3(C4F9)、NaC(SO2CF3)3、CF3SO2ONa、CF3COONa、RCOONa(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。
マグネシウム塩は、Mg(PF6)2、Mg(BF4)2、Mg[FSI]2、Mg[TFSI]2、Mg[f3C]2、Mg[BOB]2、Na(ClO4)2、Mg[BF3(CF3)]2、Mg[BF3(C2F5)]2、Mg[BF3(C3F7)]2、Mg[BF3(C4F9)]2、Mg[C(SO2CF3)3]2、(CF3SO3)2Mg、(CF3COO)2Mg、(RCOO)2Mg(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。
カルシウム塩は、Ca(PF6)2、Ca(BF4)2、Ca[FSI]2、Ca[TFSI]2、Ca[f3C]2、Ca[BOB]2、Ca(ClO4)2、Ca[BF3(CF3)]2、Ca[BF3(C2F5)]2、Ca[BF3(C3F7)]2、Ca[BF3(C4F9)]2、Ca[C(SO2CF3)3]2、(CF3SO2O)2Ca、(CF3COO)2Ca、(RCOO)2Ca(Rは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)等であってもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。
これらの中でも、解離性及び電気化学的安定性の観点から、好ましくはリチウム塩、より好ましくはLiPF6、LiBF4、Li[FSI]、Li[TFSI]、Li[f3C]、Li[BOB]、及びLiClO4からなる群より選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくはLi[TFSI]又はLi[FSI]である。
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマに対する電解質塩の質量比(電解質塩の質量/一般式(1)で表される構造単位を有するポリマの質量)は、特に制限されないが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。また、質量比は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。電解質塩の質量比が0.1以上であると、ポリマ電解質シートのイオンキャリア濃度が充分となり、イオン伝導度がより向上する傾向にある。電解質塩の質量比が1.0以下であると、ポリマ電解質シートの機械的強度がより優れる傾向にある。
電解質塩の含有量は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。電解質塩の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。電解質塩の含有量が3質量%以上であると、イオン伝導度がより向上する傾向にある。電解質塩の含有量が30質量%以下であると、ポリマ電解質シートの柔軟性がより向上する傾向にある。
[無機酸化物]
ポリマ電解質組成物は、リチウム元素、ランタン元素、及びチタン元素を含む無機酸化物を含有する。無機酸化物を含有することによって、ポリマ電解質組成物は、組成物の成分保持性に優れたものとなり得る。組成物の成分保持性が向上することによって、電解質と電極との界面が形成され易くなり、電池内の抵抗が低減できるため、電池特性をより向上させることが可能となる。また、これによって、ポリマ電解質組成物のイオン伝導度をより向上させることができる。
無機酸化物は、リチウム元素、ランタン元素、及びチタン元素からなる複合無機酸化物であってもよい。このような複合無機酸化物としては、例えば、La0.51Li0.34TiO2.94等のチタン酸リチウムランタン(LLT)などが挙げられる。
無機酸化物は、チタン元素のモル数をM(Ti)、ランタン元素のモル数をM(La)としたとき、M(Ti)及びM(La)が下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.3≦M(La)/M(Ti)≦0.7 (2)
M(La)/M(Ti)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.4以上である。また、M(La)/M(Ti)は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.67以下、さらに好ましくは0.65以下である。また、M(La)/M(Ti)は、好ましくは0.3〜0.7、より好ましくは0.35〜0.67、さらに好ましくは0.4〜0.65である。M(La)/M(Ti)が上記範囲内にあると、無機酸化物の結晶構造がペロブスカイト型となり易い傾向にある。
無機酸化物の結晶構造は、ペロブスカイト型であってもよい。無機酸化物の結晶構造がペロブスカイト型であると、ポリマ電解質組成物のイオン伝導度が向上する傾向にある。
無機酸化物は、X線回折において、2θ=33±2°、2θ=47±2°、及び2θ=58±2°の回折ピークを示すことが好ましい。このような回折ピークを示す無機酸化物は、結晶構造がペロブスカイト型である傾向にある。
X線回折法(CuKα:波長(λ)=1.5418Å)による測定は、例えば、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、Geigerflex RAD−2X)を用いて測定される。
無機酸化物の含有量は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。無機酸化物の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。無機酸化物の含有量が上記範囲内にあると、組成物の成分保持性により優れる傾向にある。
[その他の成分]
ポリマ電解質組成物は、必要に応じて、溶融塩をさらに含有してもよい。
溶融塩は、カチオン成分とアニオン成分とから構成されるものである。溶融塩は、特に制限されずに、通常のイオン液体又は柔粘性結晶(プラスチッククリスタル)を使用することができる。
なお、本明細書において、「イオン液体」は、30℃で液体である溶融塩、すなわち、融点が30℃以下である溶融塩を意味し、「柔粘性結晶」は30℃で固体である溶融塩、すなわち、融点が30℃より高い溶融塩を意味する。
イオン液体は、30℃で液体である溶融塩であれば、特に制限されることなく、使用することができる。具体的には、カチオン成分として、[EMI]+、[DEME]+、[Py12]+、[Py13]+、又は[PP13]+と、アニオン成分として、PF6 −、BF4 −、[FSI]−、[TFSI]−、又は[f3C]−とを組み合わせたもので、30℃で液体のものが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。また、後述の柔粘性結晶と組み合わせて使用してもよい。
イオン液体として、上述のリチウム塩(例えば、Li[TFSI]等)と下記式(A)で表されるグライムとの錯体を使用することができる。なお、本明細書中、これらの錯体を「グライム錯体」という場合がある。
R1O−(CH2CH2O)m−R2 (A)
[式(A)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基を示し、mは1〜6の整数を示す。]
R1及びR2としてのアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等であってもよい。これらの中でも、アルキル基は、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
グライムは、エチレングリコールジメチルエーテル(「モノグライム」ともいう。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(「ジグライム」ともいう。)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(「トリグライム」ともいう。)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(「テトラグライム」ともいう。)、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル(「ペンタグライム」ともいう。)、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル(「ヘキサグライム」ともいう。)等であってもよい。これらの中でも、グライムは、好ましくはトリグライム又はテトラグライム、より好ましくはテトラグライムである。
グライム錯体は、例えば、上述のリチウム塩と、上述のグライムとを混合することによって得ることができる。グライム錯体は、例えば、グライムの沸点以下の温度で、リチウム塩とグライムとを混合することによって得ることができる。混合する時間、温度は適宜設定することができる。
柔粘性結晶は、30℃で固体である溶融塩であれば、特に制限されることなく、使用することができる。具体的には、カチオン成分として、[EMI]+、[DEME]+、[Py12]+、[Py13]+、又は[PP13]+と、アニオン成分として、PF6 −、BF4 −、[FSI]−、[TFSI]−、又は[f3C]−との組み合わせたもので、30℃で固体のものが挙げられる。より具体的には、[Py12][TFSI](融点:90℃)、[Py12][FSI](融点:205℃)、[DEME][f3C](融点:69℃)、[Py13][f3C](融点:177℃)、[PP13][f3C](融点:146℃)等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。また、前述のイオン液体と組み合わせて使用してもよい。柔粘性結晶は、融点が80℃以上であると、通常の電池使用時に液漏れをより抑制できる傾向にある。したがって、柔粘性結晶を用いることによって、単一セル内に電極が直列に積層されたバイポーラ電極を有する電池を実現することが可能となり得る。柔粘性結晶は、イオン伝導度の観点から、[Py12][TFSI](融点:90℃)であることが好ましい。
ポリマ電解質組成物に溶融塩をさらに含有させる場合、溶融塩の含有量は、組成物全量を基準として、10〜70質量%であってもよい。
ポリマ電解質組成物は、必要に応じて、シリカ、アルミナ等の酸化物の粒子又はファイバー、ホウ酸エステル、アルミン酸エステル等のリチウム塩解離能を有する添加剤などをさらに含有していてもよい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用していてもよい。ポリマ電解質組成物にこれらの成分をさらに含有させる場合、これら成分の含有量は、組成物全量を基準として、0.01〜20質量%であってもよい。
ポリマ電解質組成物は、シート状に形成されていてもよい。
ポリマ電解質シートの厚さは、電池の構成に合わせて、所望の厚みに調整することができるが、1〜200μmであってもよい。ポリマ電解質シートの厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、ポリマ電解質シートの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。厚さが1μm以上であると、電極間同士の短絡をより抑制できる傾向にある。厚さが200μm以下であると、エネルギー密度をより高められる傾向にある。
続いて、上述したポリマ二次電池1の製造方法について説明する。本実施形態に係るポリマ二次電池1の製造方法は、正極集電体9上に正極合剤層10を形成して正極6を得る第1の工程と、負極集電体11上に負極合剤層12を形成して負極8を得る第2の工程と、正極6と負極8との間に電解質層7を設ける第3の工程と、を備える。
第1の工程では、正極6は、例えば、正極合剤層に用いる材料を混練機、分散機等を用いて分散媒に分散させてスラリ状の正極合剤を得た後、この正極合剤をドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等により正極集電体9上に塗布し、その後分散媒を揮発させることにより得られる。分散媒を揮発させた後、必要に応じて、ロールプレスによる圧縮成型工程が設けられてもよい。正極合剤層10は、上述した正極合剤の塗布から分散媒の揮発までの工程を複数回行うことにより、多層構造の正極合剤層として形成されてもよい。
第1の工程において用いられる分散媒は、水、1−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPともいう。)等であってもよい。
第2の工程において、負極集電体11に負極合剤層12を形成する方法は、上述した第1の工程と同様の方法であってもよい。
第3の工程では、一実施形態において、電解質層7は、例えば、基材上に上述のポリマ電解質組成物を含むポリマ電解質シートを作製することにより形成される。図4(a)は、一実施形態に係るポリマ電解質シートを示す模式断面図である。図4(a)に示すように、ポリマ電解質シート13Aは、基材14と、基材14上に設けられた電解質層7とを有する。
ポリマ電解質シート13Aは、例えば、電解質層7に用いるポリマ電解質組成物を分散媒に分散させてスラリを得た後、これを基材14上に塗布してから分散媒を揮発させることにより作製される。電解質層7に用いるポリマ電解質組成物を分散させる分散媒は、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、γ−ブチロラクトン等であってもよい。
基材14は、分散媒を揮発させる際の加熱に耐え得る耐熱性を有するものであって、ポリマ電解質組成物と反応せず、ポリマ電解質組成物により膨潤しないものであれば制限されないが、例えば、金属箔、樹脂からなるフィルム等である。基材14は、具体的には、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔等の金属箔、ポリエチレンテレフタレート、ポリ4フッ化エチレン、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン等の樹脂(汎用のエンジニアプラスチック)からなるフィルムなどであってもよい。
基材14として樹脂からなるフィルムを用いる場合、基材14の耐熱温度は、電解質層7に用いられる分散媒との適応性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上、また、例えば400℃以下であってもよい。上記の耐熱温度を有する基材を使用すれば、上述したような分散媒を好適に使用できる。なお、樹脂からなるフィルムを用いる場合の基材14の耐熱温度は、樹脂の融点又は分解温度を示す。
基材14の厚さは、塗布装置での引張り力に耐え得る強度を維持しつつ、可能な限り薄いことが好ましい。基材14の厚さは、ポリマ電解質シート13全体の体積を小さくしつつ、ポリマ電解質組成物を基材14に塗布する際に強度を確保する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは25μm以上、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
ポリマ電解質シートは、ロール状に巻き取りながら連続的に製造することもできる。その場合には、電解質層7の表面が基材14の背面に接触して電解質層7の一部が基材14に貼りつくことにより、電解質層7が破損することがある。このような事態を防ぐために、ポリマ電解質シートは他の実施形態として、電解質層7の基材14と反対側に保護材を設けたものであってもよい。図4(b)は、他の実施形態に係るポリマ電解質シートを示す模式断面図である。図4(b)に示すように、ポリマ電解質シート13Bは、電解質層7の基材14と反対側に保護材15をさらに備えている。
保護材15は、電解質層7から容易に剥離可能なものであればよく、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4フッ化エチレン等の無極性の樹脂フィルムである。無極性の樹脂フィルムを用いると、電解質層7と保護材15とが互いに貼りつかず、保護材15を容易に剥離することができる。
保護材15の厚さは、ポリマ電解質シート13B全体の体積を小さくしつつ、強度を確保する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
保護材15の耐熱温度は、低温環境での劣化を抑制するとともに、高温環境下での軟化を抑制する観点から、好ましくは−30℃以上、より好ましくは0℃以上、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下である。保護材15を設ける場合、上述した分散媒の揮発工程を必須としないため、耐熱温度を高くする必要がない。
ポリマ電解質シート13Aを用いて正極6と負極8との間に電解質層7を設ける方法は、例えば、ポリマ電解質シート13Aから基材14を剥離し、正極6、電解質層7及び負極8を、ラミネートにより積層することでポリマ二次電池1が得られる。このとき、電解質層7が、正極6の正極合剤層10側かつ負極8の負極合剤層12側に位置するように、すなわち、正極集電体9、正極合剤層10、電解質層7、負極合剤層12、及び負極集電体11がこの順で配置されるように積層する。
第3の工程では、他の実施形態において、電解質層7は、正極6の正極合剤層10側及び負極8の負極合剤層12側の少なくともいずれか一方に塗布により形成され、好ましくは正極6の正極合剤層10側及び負極8の負極合剤層12側の両方に塗布により形成される。この場合、例えば、電解質層7が設けられた正極6と、電解質層7が設けられた負極8とを、電解質層7同士が接するように例えばラミネートにより積層することで、ポリマ二次電池1が得られる。
正極合剤層10上に電解質層7を塗布により形成する方法は、例えば、電解質層7に用いるポリマ電解質組成物を分散媒に分散させてスラリを得た後、ポリマ電解質組成物を正極合剤層10上にアプリケータを用いて塗布する方法である。電解質層7に用いるポリマ電解質組成物を分散させる分散媒は、アセトン、エチルメチルケトン、γ−ブチロラクトン等であってもよい。
負極合剤層12上に電解質層7を塗布により形成する方法は、正極合剤層10上に電解質層7を塗布により形成する方法と同様の方法であってもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るポリマ二次電池について説明する。図5は、第2実施形態に係るポリマ二次電池における電極群の一実施形態を示す模式断面図である。図5に示すように、第2実施形態におけるポリマ二次電池が第1実施形態におけるポリマ二次電池と異なる点は、電極群2Bが、バイポーラ電極16を備えている点である。すなわち、電極群2Bは、正極6と、第1の電解質層7と、バイポーラ電極16と、第2の電解質層7と、負極8とをこの順に備えている。
バイポーラ電極16は、バイポーラ電極集電体17と、バイポーラ電極集電体17の負極8側の面に設けられた正極合剤層10と、バイポーラ電極集電体17の正極6側の面に設けられた負極合剤層12とを備えている。
バイポーラ電極集電体17は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等で形成されていてもよい。バイポーラ電極集電体17は、具体的には、孔径0.1〜10mmの孔を有するアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等であってもよい。バイポーラ電極集電体17は、上記以外にも、電池の使用中に溶解、酸化等の変化を生じないものであれば、任意の材料で形成されていてよく、また、その形状、製造方法等も制限されない。
バイポーラ電極集電体17の厚さは、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上であってもよい。バイポーラ電極集電体17の厚さは、100μm以下、80μm以下、又は60μm以下であってもよい。
続いて、第2実施形態に係る二次電池の製造方法について説明する。本実施形態に係る二次電池の製造方法は、正極集電体9上に正極合剤層10を形成して正極6を得る第1の工程と、負極集電体11上に負極合剤層12を形成して負極8を得る第2の工程と、バイポーラ電極集電体17の一方の面に正極合剤層10を形成し、他方の面に負極合剤層12を形成してバイポーラ電極16を得る第3の工程と、正極6とバイポーラ電極16との間及び負極8とバイポーラ電極16との間に電解質層7を設ける第4の工程と、を有する。
第1の工程及び第2の工程は、第1実施形態における第1の工程及び第2の工程と同様の方法であってもよい。
第3の工程において、バイポーラ電極集電体17の一方の面に正極合剤層10を形成する方法は、第1実施形態における第1の工程と同様の方法であってもよい。バイポーラ電極集電体17の他方の面に負極合剤層12を形成する方法は、第1実施形態における第2の工程と同様の方法であってもよい。
第4の工程のうち正極6とバイポーラ電極16との間に電解質層7を設ける方法としては、一実施形態において、電解質層7は、例えば、基材上にポリマ電解質組成物を含むポリマ電解質シートを製造することにより形成される。ポリマ電解質シートの製造方法は、第1実施形態におけるポリマ電解質シート13A,13Bの製造方法と同様の方法であってもよい。
第4の工程において、負極8とバイポーラ電極16との間に電解質層7を設ける方法は、上述した正極6とバイポーラ電極16との間に電解質層7を設ける方法と同様の方法であってもよい。
正極6の正極合剤層10上及びバイポーラ電極16の負極合剤層12上に電解質層7を塗布により形成する方法は、第1実施形態における第3工程の一実施形態に係る、正極合剤層10上に電解質層7を塗布により形成する方法及び負極合剤層12上に電解質層7を塗布により形成する方法と同様の方法であってもよい。
第4の工程のうち正極6とバイポーラ電極16との間に電解質層7を設ける方法としては、他の実施形態において、電解質層7は、正極6の正極合剤層10側及びバイポーラ電極16の負極合剤層12側の少なくともいずれか一方に塗布により形成され、好ましくは正極6の正極合剤層10側及びバイポーラ電極16の負極合剤層12側の両方に塗布により形成される。この場合、例えば、電解質層7が設けられた正極6と、電解質層7が設けられたバイポーラ電極16とを、電解質層7同士が接するようにラミネートにより積層する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ポリマの合成]
一般式(1)で表される構造単位を有するポリマは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロライドの対アニオンCl−を[TFSI]−に変換することによって合成した。
まず、[P(DADMA)][Cl]水溶液(20質量%水溶液、Aldrich社製)100質量部を、蒸留水500質量部で希釈し、希釈ポリマ水溶液を作製した。次に、Li[TFSI](キシダ化学株式会社製)43質量部を水100質量部に溶解し、Li[TFSI]水溶液を作製した。これを希釈ポリマ水溶液に滴下し、2時間撹拌することによって白色析出物を得た。析出物をろ過によって分離し、400質量部の蒸留水で洗浄後、再度ろ過を行った。洗浄及びろ過は5回繰り返した。その後、105℃の真空乾燥によって水分を蒸発させ、[P(DADMA)][TFSI]を得た。[P(DADMA)][TFSI]の粘度平均分子量は、2.11×106g・mol−1であった。
粘度平均分子量Mvは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を標準物質として用いて、ウベローデ粘度計を使用して25℃におけるポリマの粘度[η]を測定した後、[η]=KMv(ここで、Kは拡張因子を示し、その値は、温度、ポリマ、及び溶媒性質に依存する。)に基づき、算出した。
(実施例1)
[ポリマ電解質シートの調製]
得られたポリマ80質量部に対して、電解質塩としてLi[TFSI]を20質量部、無機酸化物としてLLT(株式会社豊島製作所社製、平均粒径0.12μm)を10質量部、溶融塩として[LiG4][TFSI]を40質量部、及び分散媒としてアセトンを150質量部加えて撹拌し、スラリを調製した。なお、[LiG4][TFSI]は、予めテトラエチレングリコールジメチルエーテル(Sigma−Aldrich社製)及びLi[TFSI](キシダ化学株式会社製)をモル比1:1で混合したものを用いた。スラリをアルミニウム箔上に、ドクターブレード法にて、ギャップ250μmでアルミニウム箔上に塗布し、60℃、1時間乾燥させ、アセトンを揮発させた。その後、60℃、1.0×104Pa以下(0.1気圧以下)の減圧環境下で10時間乾燥し、厚さ60μmのポリマ電解質シートを得た。
ICP発光分光装置(日立製作所社製、P−4010)を用いて、常法により実施例1で使用したLLTの各元素の定量を行った。チタン元素のモル数に対するランタン元素のモル数の比(M(La)/M(Ti))は0.55であった。
粉末X線回折装置(株式会社リガク製、Geigerflex RAD−2X、X線源:CuKα線、回折角範囲15〜60°)を用いて、実施例1で使用したLLTを分析した。X線回折において、2θ=25.7°、32.7°、40.3°、46.9°、及び58.3°にピークを含むことを確認した。これらのピークから、実施例1で使用したLLTの結晶構造がペロブスカイト型であることが確認された。
[成分保持性]
得られたポリマ電解質シートを、φ16mmに打抜き、φ19mmの薬包紙及びφ20mmの鏡面板で挟み込み、フォースゲージで圧力を調整して1.0kg/cm2で加圧した。ポリマ電解質シートに圧力を加える前後の薬包紙の質量変化から、ポリマ電解質シートの成分(溶融塩)の保持性を評価した。成分保持性は下記式に基づき算出した。
成分保持性(%)={1−(薬包紙の質量増加量/ポリマ電解質シートに用いた溶融塩の質量)}×100
実施例1のポリマ電解質シートの成分(溶融塩)の保持性は、87%であった。
[イオン伝導度の測定]
得られたポリマ電解質シートをφ10mmに打ち抜き、イオン伝導度測定用試料を作製した。この試料を、2極式の密閉セル(HSセル、宝泉株式会社製)内に配置し、交流インピーダンス測定装置(Solartron社製、1260型)を用いて測定した。室温(25℃)にて、10mVで1Hz〜10MHzの範囲で交流インピーダンスを測定した。ナイキストプロットの円弧の幅から抵抗値を算出し、抵抗値からイオン伝導度を算出した。なお、密閉セルへの試料の配置は、ドライルーム内で実施した。
実施例1のポリマ電解質シートのイオン伝導度(25℃)は、1.4×10−4S/cm2であった。
(比較例1)
無機酸化物であるLLTを加えなかった以外は実施例1と同様にして、ポリマ電解質シートを作製した。ポリマ電解質シートの厚さは60μmであった。実施例1と同様の評価を行ったところ、成分保持性が79%であり、イオン伝導度(25℃)が1.1×10−5S/cm2であった。
実施例1のポリマ電解質シートは、比較例1と比較して、ポリマ電解質シートの成分保持性に優れていた。また、実施例1のポリマ電解質シートは、さらにイオン伝導性に優れていることが判明した。これらの結果から、本発明のポリマ電解質組成物が、組成物の成分保持性に優れることが確認された。