以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る収容容器10は、図1に示すように、皮内針(医療用針)12を個別に包装して製品提供する容器に構成されている。収容容器10は、皮内針12の使用前まで皮内針12を密封していることで、無菌状態を形成している。
皮内針12は、針管14及び針ハブ16を有し、注射装置18の一部品を構成している。この皮内針12は、使用時に、皮内針12とは別に提供された注射装置18のシリンジ20に組み付けられる。注射装置18のユーザは、皮内針12とシリンジ20を組み付けた後、皮内針12の針管14を患者に穿刺する。そして穿刺状態で、シリンジ20のプランジャ56を押圧することで、針管14を介してシリンジ20に貯留されている薬液を生体の皮内に注射する。
また、収容容器10は、注射後に、使用した針管14を非露出状態として皮内針12を収容保持することで、針管14の誤刺を防止しつつ、皮内針12と一体的に廃棄される。以下、この収容容器10について詳述するが、発明の理解の容易化のため、まず注射装置18(皮内針12及びシリンジ20)の各構成について説明する。
図1及び図2に示すように、皮内針12の針管14は、軸心部に針孔15を有する硬質な中空管に構成されている。針管14の最先端の針先14aには、刃面が形成されている。針管14の太さは、特に限定されないが、例えば、26〜33ゲージのサイズ(0.2〜0.45mm)であり、より好ましくは30〜33ゲージを適用するとよい。針管14を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、その他の金属、又は硬質樹脂があげられる。
皮内針12の針ハブ16は、針管14を固定する第1部材22と、第1部材22に固定され皮内針12の使用時にシリンジ20に組み付けられる第2部材24と、を備える。これら第1及び第2部材22、24を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂材料があげられる。また、針ハブ16は、第2部材24の内部に弾性部材26を有している。
第1部材22は、針管14を直接保持する軸部28と、軸部28の外周面から径方向外側に拡がる拡径部30と、拡径部30の先端面30aから先端方向に突出するリング突部32と、を有する。軸部28は、略円柱状に形成されており、その軸心部には針管14を収容固定する固定孔29が設けられている。固定孔29には、針管14の挿入状態で接着剤34が注入されることで、針管14と第1部材22の固着がなされる。
また、軸部28は、第2部材24内に収納される収納部位28aと、拡径部30よりも先端側に突出する突出部位28bと、を有する。収納部位28aの外周面には、複数の肉抜き部が形成されている。軸部28の突出部位28bは、リング突部32よりも先端方向に僅かに突出し、生体の体表に接触する先端面28b1を有する。固定孔29に固定された針管14は、先端面28b1から適切な寸法(突出長)だけ突出している。例えば、針管14の突出長は、生体の皮膚の表面から真皮層までの深さに設計され、概ね0.5〜3.0mmの範囲内であるとよい。
拡径部30は、軸部28の外周面から軸部28の軸心と直交する方向に拡がる円板に形成されている。拡径部30は、リング突部32よりもさらに径方向外側に延出している。拡径部30の基端面30b(リング突部32が設けられた先端面30aと反対側の面)には、第2部材24が接合される。また、拡径部30の外周縁には、外方に向かって一対の爪部36が突出形成されている。一対の爪部36は、拡径部30の外周縁上で互いに反対位置(180°異なる位置)に設けられている。
リング突部32は、軸部28から所定間隔離れた位置を周回すると共に、拡径部30の先端面30aから先端方向に短く突出している。皮内針12の使用時には、ユーザの操作下に、リング突部32の突出端全体が患者の皮膚に接触する。これにより、リング突部32は、注射装置18が皮膚に対して垂直になることをガイドし、針管14の皮内への進入量を一定にする。
第2部材24は、軸心部に貫通孔25を有する略円筒状に形成されている。貫通孔25の先端側には、第1部材22の収納部位28aが挿入される一方で、貫通孔25の中間には、弾性部材26が収容される。貫通孔25の基端側には、注射装置18の組立時に、シリンジ20のノズル44が挿入される。貫通孔25の基端側の内周面は、ノズル44の外周面に面接触可能なルアーテーパ状に形成されている。
第2部材24の先端には、径方向外側に拡がる接続用拡径部38が設けられている。接続用拡径部38の外周縁は、第1部材22の拡径部30の外周縁よりも内側に位置する。接続用拡径部38の先端面38aは、振動溶着等の適宜の固着方法により拡径部30の基端面30bに固定される。また、第2部材24の基端側の外周面には、シリンジ20の雌ネジ部47に螺合される雄ネジ部40が設けられている。
すなわち、シリンジ20の先端部42は、薬液の貯留空間61に連通する吐出路45が形成されたノズル44と、ノズル44の周囲で雌ネジ部47が内側に形成されたコネクタ部46と、を有する。ノズル44とコネクタ部46は、別部材で構成され、コネクタ部46がノズル44に対し回転可能に取り付けられている。ノズル44の先端面は、雄ネジ部40と雌ネジ部47の装着状態で、弾性部材26の基端面に接触及び押圧する。
皮内針12の弾性部材26は、針管14の基端を液密に保持して、針孔15をノズル44の吐出路45に対向させる筒状の中継部材である。弾性部材26の内部には、針管用孔部48が設けられ、この針管用孔部48には、挿入された針管14を接触保持する内突部50が形成されている。この弾性部材26は、第2部材24の貫通孔25の内周面に嵌め込まれ、且つ先端側において径方向外側に突出する外方凸部52が第1部材22の基端面と第2部材24の段差部24aに挟み込まれることで、強固に固定される。
一方、注射装置18のシリンジ20は、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジとして構成されている。このシリンジ20は、シリンジ本体54と、シリンジ本体54内に相対移動可能に挿入されるプランジャ56と、シリンジ本体54の外側を覆うホルダ58と、を有する。
シリンジ本体54は、上記の先端部42(ノズル44及びコネクタ部46)と、先端部42に連なり薬液を貯留する貯留空間61を有する胴部60と、を備える。一方、プランジャ56は、貯留空間61内に液密に挿入されるガスケット62を先端に有し、また注射装置18のユーザが押圧操作するための操作部64を基端に有する。なお、シリンジ20は、プレフィルドシリンジで構成される場合に、ガスケット62を貯留空間61に収容して、プランジャ56をこのガスケット62に取り付ける構成でもよい。
ホルダ58は、シリンジ本体54を収容固定する円筒体であり、注射装置18を太くしてユーザの把持操作を容易化するために用いられる。このため、ホルダ58の基端には、プランジャ56の操作部64の押圧時にユーザの指を引っかけるための引っ掛かり部66が設けられている。なお、注射装置18はホルダ58を備えていなくてもよい。
ホルダ58の内部空間を構成する内壁には、シリンジ本体54の胴部60の先端部分を支持する複数の支持片(不図示)が設けられている。また、ホルダ58の外周には、シリンジ本体54の基端のフランジ(不図示)を係止する係止窓68が設けられ、さらにホルダ58の先端付近には、シリンジ本体54の貯留空間61を視認可能とする視認用窓69が設けられている。
次に、注射装置18の皮内針12を収容する収容容器10について説明する。
図1に示すように、収容容器10は、皮内針12を収容する器体70と、皮内針12の提供時に皮内針12を収容している器体70の収容部を閉塞するシール部材72と、を有する。シール部材72は、使用時に、ユーザにより一部又は全部が器体70から剥がされることで、皮内針12を器体70から取り出し可能とする。
器体70は、使用前の皮内針12を収容する収容空間74を有する円筒状に形成されている。また上述したように、器体70の収容空間74には、使用(離脱)後の皮内針12が、ユーザの操作下に再収容される。これにより、器体70は、皮内針12の針管14を非露出状態とし、両方をまとめて廃棄可能とする。なお、以下では、皮内針12の使用前に収容空間74に皮内針12がある状態を初期状態といい、離脱後に皮内針12が収容空間74に再収容された状態を使用後状態という。
図3、図4に示すように、収容容器10の器体70は、収容空間74の底部を構成する底壁76と、底壁76の外周縁部から器体70の軸方向に延在して収容空間74の側部を構成する筒壁78と、を有する。収容空間74の軸方向長さ(筒壁78の延在長さ)は、皮内針12の軸方向長さよりも長く形成されている。収容空間74は、器体70の軸方向の一端部(底壁76と反対側の端部)に設けられた開口部75に連通している。収容空間74は、開口部75を介して初期状態の皮内針12を取り出し可能としている。
そして製品提供時には、皮内針12と共に係合部80が組み付けられて収容空間74に収容される。この係合部80は、器体70とは別部材で構成され、器体70の接触圧により弾性変形する弾性体82となっている。つまり、係合部80は、器体70と協働して、初期状態において皮内針12の針ハブ16に係合しつつ、収容空間74からの皮内針12の離脱を許容する。その一方で、離脱後の皮内針12が収容空間74に挿入された際に針ハブ16に係合して皮内針12の離脱を規制する使用後状態を形成する。
具体的に、器体70の底壁76には、図4及び図5に示すように、複数のリブ84が設けられている。各リブ84は、底壁76から開口部75に向かって所定高さ(リング突部32よりも長い寸法)突出すると共に、径方向に短く延在している。そして初期状態では、複数のリブ84の内側縁84aに皮内針12のリング突部32が収容されると共に、複数のリブ84の上縁84bに皮内針12の拡径部30が接触支持される。
また、各リブ84は、筒壁78に対して所定間隔だけ間を開けて設けられている。各リブ84の外側縁84cと筒壁78の内面との間は、初期状態で、弾性体82(係合部80)を収容する係合部用収容部86となっている。各リブ84は、係合部用収容部86に収容される弾性体82の係合片94に対応して、底壁76の周方向に沿って相互に等間隔で設けられている。
筒壁78の内面は、使用前状態で、針ハブ16の拡径部30(一対の爪部36を含む)の直径よりも若干大きな内径に形成されている。また、筒壁78の内面において複数のリブ84にそれぞれ対向する位置には、筒壁78の上端78aから底壁76まで延在する溝部88が設けられている(図3も参照)。複数の溝部88は、弾性体82の複数の係合片94をガイドする機能を有している。
溝部88は、開口部75側において浅溝88aに形成される一方で、底壁76側(リブ84の形成箇所付近)において浅溝88aから径方向外側に窪む深溝88bに形成されている。深溝88bは、係合部80が配置される上記の係合部用収容部86の一部分を構成している。また、深溝88bの上部には、さらに筒壁78が径方向外側に窪むことで保持空間90が形成されている。
保持空間90は、皮内針12の離脱に伴い弾性体82が移動した際に、係合片94の頭部94aを収容して保持(位置決め固定)する機能を有する。この保持空間90を構成する筒壁78の壁面は、弾性体82の上方への抜けを規制するガイド壁91と、弾性体82の頭部が引っ掛かり可能な係止突起92と、を備える。
ガイド壁91は、浅溝88aと深溝88b(保持空間90)の境界である段差部分を形成し、浅溝88aから保持空間90の底部に向かって延在している。また、ガイド壁91は、保持空間90の底部に向かって下側(底壁76側)に徐々に幅狭となるように傾斜している。
係止突起92は、保持空間90を構成する壁面のうちガイド壁91と対向する壁面に設けられている。係止突起92は、保持空間90の底部に向かって上側(開口部75側)に傾斜し、また底部から所定間隔離れた位置において器体70の軸方向に平行な係止面92aを有している。
一方、図3、図4及び図5に示すように、弾性体82は、適度な弾性力を有する材料(例えば、鉄等の金属材料)により構成され、上述したように、筒壁78と協働して初期状態及び使用後状態で皮内針12に対して適切な形態で係合する。この弾性体82は、複数(本実施形態では3つ)の係合片94と、各係合片94を連結固定する連結部96と、を有する。
係合片94は、溝部88内に摺動自在に配置可能な幅の板バネを適宜折り曲げることで、所定の形状に形成されている。連結部96も、適宜の幅及び厚みを有する板バネにより構成され、また平面視で筒壁78の内周面(係合部用収容部86)に沿って収容可能なC字状に形成されている。複数の係合片94は、1つの連結部96に固定されることで、筒壁78の周方向に沿って等間隔(120°間隔)に配置されている。
係合片94は、初期状態で針ハブ16に引っ掛かり可能な第1引掛部98と、使用後状態で針ハブ16に引っ掛かり可能な第2引掛部100と、皮内針12の離脱時に器体70に引っ掛かり可能な第3引掛部102と、を有する。
第1引掛部98は、係合片94の延在部分における上端部近くから弾性体82の内側に突出する部分である。この第1引掛部98は、初期状態で、皮内針12の拡径部30よりも上方において対向配置される。つまり、第1引掛部98は、皮内針12の上方向(離脱方向)への移動時に、拡径部30の基端面30bに係合する。
第2引掛部100は、係合片94の下端(板バネの折り返し部分)によって構成される。この第2引掛部100は、初期状態において、連結部96が拡張且つ縦向きに待機することで、複数のリブ84よりも外側に配置される。その一方で、使用後状態において、連結部96の弾性復元に伴いリブ84よりも内側に配置されることで、皮内針12の拡径部30に対向する(図8も参照)。
第3引掛部102は、係合片94の上端から折れ曲がって弾性体82の外側且つ斜め下方に突出する部分である。すなわち、係合片94は、相互に反対方向に突出する第1引掛部98と第3引掛部102により頭部94aが形成されている。この第3引掛部102は、初期状態において、溝部88の深溝88bに配置される。その一方で、使用後状態において、連結部96の弾性復元に伴い保持空間90内に配置される(図8も参照)。
また、第3引掛部102の突出端は、下方向に折れ曲がる鉤部103に形成されている。鉤部103は、使用後状態において、保持空間90の係止突起92(係止面92a)に引っ掛かることで、器体70の所定の高さ位置で係合片94を保持する。
また、連結部96は、上述したように、周方向の所定位置に切り欠き96aを有するC字状の板バネに形成されて、係合片94の延在部分の途中位置に面状に接合されている。連結部96は、外力が付与されない(弾性変形していない)通常状態で、下方向に向かって小径となるテーパ形状(断面視で傾斜形状)に形成されている。つまり通常状態で、連結部96は、係合片94の下端部よりも係合片94の頭部94aが外側に拡がるように傾斜して固定している。
そして、連結部96は、初期状態で、リブ84により径方向外側に若干拡張されて係合部用収容部86に収容されている。特に連結部96の下端側は、連結部96の上端側よりも大きく拡がる。これにより、連結部96は、図3中の傾斜形状が弾性的に抑えられて、係合部用収容部86内において係合片94を器体70の軸方向に略平行に配置させる。なお、この連結部96は、C字状に限定されるものではなく、円環状等に形成されてもよい。
本実施形態に係る収容容器10は、基本的には以上のように構成され、以下その作用について説明する。
収容容器10は、製品提供時に、図4及び図5に示すように、器体70の収容空間74に皮内針12を収容した初期状態となっている。また、収容容器10は、器体70の開口部75にシール部材72(図1参照)がシールされることで、皮内針12を密閉状態にしている。
この初期状態において、皮内針12の針ハブ16は、器体70の複数のリブ84に支持されている。つまり、リング突部32が各リブ84の内側縁84aから適度な摩擦力を受けて保持され、拡径部30が各リブ84の上縁84bに接触していることで、皮内針12は、器体70の軸方向に延在する直立姿勢となっている。
また、弾性体82(係合部80)は、係合片94及び連結部96が複数のリブ84の外側縁84cに嵌め込まれている。この際、断面視で傾斜形状の連結部96は、外側縁84cによってその下端側が拡がることで、器体70の軸方向に平行な板面方向となっている。このため連結部96に接合された複数の係合片94も、器体70の軸方向に平行に延在して待機している。またこの状態では、係合片94の第1引掛部98が皮内針12の拡径部30の外周縁よりも内側に突き出て、拡径部30の基端面30bに対向している。
ユーザは、図1に示すように、注射装置18の使用時に、開口部75が上向きとなるように器体70を載置し、器体70からシール部材72を剥がす。その後、収容空間74にシリンジ20の先端を挿入して、皮内針12の基端部とシリンジ20の先端部42との接続を行う。ユーザは、ホルダ58を把持操作して、先端部42のノズル44を第2部材24の貫通孔25に挿入すると共に、先端部42の雌ネジ部47を皮内針12の雄ネジ部40に捻じ込んでいく(図2も参照)。この際、皮内針12は、一対の爪部36が係合片94に引っ掛かることで回転が規制され、シリンジ20との螺合が円滑に実現される。
そして、皮内針12とシリンジ20の接続(注射装置18の組立)が完了すると、ユーザは、シリンジ20を収容容器10から引き離す。これにより拡径部30(針ハブ16)が器体70に対して相対的に上方向に移動する。拡径部30は、上方向の移動時に弾性体82の第1引掛部98を引っ掛けて、弾性体82を一緒に変位させる。
つまり、複数の係合片94は、係合部用収容部86から器体70の深溝88bにガイドされて上方に摺動する。そして図6に示すように、係合片94の下端(第2引掛部100)がリブ84の上縁84bを越えると、リブ84の押さえがなくなり、若干拡径していた連結部96が弾性復元する。
すなわち、係合片94は、頭部94aが径方向外側に傾くように作用し、ちょうど深溝88bの上部に形成されている保持空間90に入り込んでいく。一方、係合片94の第2引掛部100は、頭部94aとは逆に径方向内側に傾く。またこの際、器体70のガイド壁91は、頭部94aの外側への拡開を円滑にガイドすると共に、係合片94がガイド壁91を越えて上方に抜けることを規制する。
そして、第1引掛部98(頭部94a)が外側に拡がることによって、皮内針12の拡径部30は、係合片94との係合が解除される。これにより、皮内針12が開口部75を介して収容空間74から良好に離脱される(取り出される)。
その一方で、図7に示すように、皮内針12の離脱後の収容容器10は、各係合片94の頭部94aが保持空間90に入り込んで、相互に離間した状態となる。これにより弾性体82は、器体70内で所定の高さ位置に固定される。特に、第3引掛部102の鉤部103が係止突起92に引っ掛かることで、弾性体82(係合片94)は、保持空間90への位置決め固定が強固なものとなる。
その後、ユーザは、皮内針12の針管14を生体に穿刺し、穿刺状態でプランジャ56を押圧する。これにより、シリンジ20の貯留空間61に貯留されている薬液が、針管14の針孔15を通って皮内に注射される。
薬液の注射後は使用した皮内針12の廃棄を行う。この際、ユーザは、収容容器10の収容空間74に皮内針12を挿入する。つまり、注射装置18の先端の皮内針12を、開口部75から挿入していく。この挿入時に、皮内針12の拡径部30は、第1引掛部98に引っ掛かることなく下方向に移動して、弾性体82の下端側で内側に突出している第2引掛部100に至る。
そして、ユーザがさらに皮内針12を押し込むことで、拡径部30が係合片94の下端を外側に弾性変形させる。この際、第3引掛部102は、保持空間90の保持状態が継続する。これにより、皮内針12の拡径部30が弾性体82を通過し、また拡径部30の通過後に係合片94の下端が弾性復帰する。その結果、図8に示すように、第2引掛部100が拡径部30の上方で対向位置に配置されて使用後状態が形成される。
使用後状態において、弾性体82は、各係合片94が底壁76に向かって窄まるように傾斜し、且つ第2引掛部100が拡径部30に対向配置される。このため、皮内針12は、弾性体82によって離脱不能となる。
つまり、仮に、皮内針12を上方向に引き上げる外力が付与されても、拡径部30が第2引掛部100に引っ掛かることになる。係合片94は、第3引掛部102が筒壁78に嵌っていることで、使用後状態の位置が弾性的に維持されており、下方向からの力を受けることにより第2引掛部100を内側に積極的に寄せる。従って、皮内針12は、器体70により上方向に再び抜け出ること(離脱)が規制される。つまり収容容器10は、針管14の誤刺を一層確実に防止して、使用後の皮内針12を良好に廃棄することができる。
以上のように、本実施形態に係る収容容器10は、器体70の収容空間74に係合部80を配置することで、離脱前と離脱後の皮内針12を用途に応じて適切に収容することができる。すなわち、係合部80は、初期状態で皮内針12に離脱可能に係合することで収容空間74から皮内針12を容易に取り出させる。その一方で、係合部80は、離脱後に皮内針12が挿入された際に、針ハブ16に係合して皮内針12の再度の離脱を規制する。これにより、収容容器10は、針管14を覆った状態で皮内針12を保持して、針管14の誤刺を防止することができる。つまり、収容容器10は、より確実な誤刺の防止と、皮内針12を収容空間74に戻すという簡単な操作とを実現する。
また、係合部80は、筒壁78と協働して形状が変形することで、針ハブ16に対する係合状態を簡単に変える。よって、皮内針12の離脱の許容と規制とを良好に切り換えることができる。
さらに、収容容器10は、皮内針12の離脱に連れて係合部80を移動させることにより、係合部80の形状を円滑に変形させることができる。このため、皮内針12の離脱の許容と規制とを一層簡単に切り換えることが可能となる。
そして、係合部80は、第1〜第3引掛部98、100、102を有することで、初期状態と使用後状態とで、係合部80が針ハブ16に引っ掛かる部位を変えることができる。これにより、皮内針12の離脱の許容と規制とがより一層簡単に切り換えられる。
この場合、係合部80は、第3引掛部102の保持空間90への移動に伴い位置決め固定される。これにより、第2引掛部100の位置も固定されて、使用後状態の第2引掛部100による針ハブ16の係合を強固なものとすることができる。
収容容器10は、係合部80の第3引掛部102と保持空間90に存在する係止突起92との係止によって、係合部80をより強固に位置決め固定することができる。従って、皮内針12の離脱の規制をより確実に行うことができる。
またさらに、収容容器10は、係合部80(係合片94)の頭部94aを保持空間90の奥部にガイドするガイド壁91を有することで、係合部80の位置決め固定をより円滑に行うことができる。しかも、器体70からの係合部80の脱落を防止することができる。
ここで、係合部80は、複数の係合片94及び連結部96を有することで、皮内針12に対して安定的に係合して、皮内針12の離脱の許容と規制とを切り換えることができる。
上記構成に加えて、係合部80は、第2引掛部100及び第3引掛部102の位置を連結部96によって変位可能に連結することで、より良好に器体70及び皮内針12に係合可能となる。特に、外力が加わらない状態で第3引掛部102が第2引掛部100よりも外側に位置することにより、第2引掛部100による皮内針12の係合と、第3引掛部102による器体70の係合とを無理のない姿勢で行うことができる。
収容容器10は、複数のリブ84によって係合片94及び連結部96の姿勢と待機位置を維持することで、初期状態における皮内針12と係合部80の係合状態を良好に構築することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、器体70のリブ84の形成数は、係合片94に一致していなくてもよく、リブ84は初期状態で連結部96を支持する構成でもよい。
またさらに、第3引掛部102を保持空間90に保持する構成は、ガイド壁91の対向位置に設けられた係止突起92に限定されるものではない。例えば図8中の点線で示すように、ガイド壁91に係止突起104を設けて、頭部94aの上端を引っ掛ける構成とすることもできる。
また例えば、係合部80(弾性体82)は、板バネを用いて構成されるだけでなく、弾性力を有する樹脂材料を用いて同様の形状に成形したものでもよい。さらに例えば、係合部80は、初期状態から皮内針12を引き出す際に、係合片94が保持空間90に挿入されて壁面に引っ掛かればよいため、連結部96を備えない構成でもよい。要するに、器体70と係合部80が係合する構造は、種々の形状を採用してよく、特に皮内針12の移動力に基づき係合状態を変える構造であれば、使用後状態の皮内針12の離脱の規制をスムーズに行うことができる。なお、係合部80は、皮内針12の移動に追従しなくても、皮内針12の非存在(移動後)をトリガに皮内針12に対向するように変形又は変位することで、係合の形態を変える構造としてもよい。
また、シリンジ20はプレフィルドシリンジではなく、使用直前に薬液を充填して使用するものであってもよい。