以下、本発明を適用した浴室洗浄システムを実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
本発明を適用した浴室洗浄システムは、図1、2に示す浴室2に適用される。図1は、浴室2の斜視図であり、図2は、浴室洗浄システム1のブロック構成図である。
浴室2は、浴槽3と、浴槽3に隣接する洗い場7とを備え、浴槽3と洗い場7の上部空間を囲って内空部に浴室2を形成する内壁4と、天井5とが設けられている。また、少なくとも一の内壁4には、シャワー8及び水栓9が設けられている。浴室2外には、更にユーザが浴室洗浄システム1を制御するための操作部10が設けられている。天井5には、浴室洗浄システム1における第1散布部16と、第2散布部20とが形成され、更に浴室2内を乾燥するための乾燥機22が設けられている。
また浴室洗浄システム1は、水道水を給水するための給水源11と、給水源11からの水道水を分岐し、一方をシャワー8及び水栓9へと導くと共に、他方を給水路14へと導く分岐部12と、一端が分岐部12に接続された給水路14の他端に接続された供給水散布ユニット17及びシリカ除去水散布ユニット21と、供給水散布ユニット17、シリカ除去水散布ユニット21、乾燥機22をそれぞれ制御するための制御部23とを備えている。供給水散布ユニット17は、給水路14から水道水が供給される制御弁15を有し、この制御弁15の出口側から上述した第1散布部16に連続することとなる。またシリカ除去水散布ユニット21は、給水路14から水道水が供給される制御弁18と、この制御弁18から連続する溶解物質除去部19とを有し、この溶解物質除去部19の出口側から上述した第2散布部20に連続することとなる。
制御弁15は、制御部23からの制御信号に基づき、給水路14から供給されてくる水道水につき給水又は止水の制御を行うための弁である。
第1散布部16は、制御弁15を通過した水道水を浴室2内に散布するための噴射機構が設けられている。第1散布部16は、水道水が浴室2内の浴槽3、洗い場7、内壁4、更には天井5のそれぞれに広範な範囲で散布されるように噴射式ノズルが設けられていてもよい。
制御弁18は、制御部23からの制御信号に基づき、給水路14から供給されてくる水道水につき給水又は止水の制御を行うための弁である。
溶解物質除去部19は、制御弁15を通過した水道水が供給されてくる。この溶解物質除去部19は、イオン交換樹脂や、逆浸透膜等が設けられ、特定の物質や成分を分離する。この溶解物質除去部19を通じて、例えばシリカ、カルシウム、マグネシウム等の溶解物質を除去することができる。溶解物質除去部19では、例えばシリカ成分の濃度が0.4ppm以下まで低減させるようにしてもよい。このようなシリカ成分の濃度を0.4ppm以下まで低減させた水を、以下、シリカ除去水という。溶解物質除去部19は、シリカ除去水を第2散布部20へ供給する。
溶解物質除去部19を構成するイオン交換樹脂、逆浸透膜は、共に溶解物質の除去方法が異なるため、シリカ除去水に残留する成分も異なる。即ち、イオン交換樹脂は、水中で電離してイオン化している溶解物質を、イオン交換樹脂を用いて吸着するものであるため、電離する溶解物質の除去に適している。一方は、逆浸透膜は、膜を透過できない溶解物質を除去するしくみであるため、サイズの大きな溶解物質や固形物を除去するのに適している。水溶液中のシリカ成分の状態は、イオン化しているものもあるが、コロイド粒子として分散しているものが多い。本発明においては、この溶解物質除去部19を介して主としてシリカ成分を除去することを目的としているため、イオン交換樹脂よりも逆浸透膜の方が適している。
また溶解物質除去部19においてイオン交換樹脂を採用する場合、水道水中の残留塩素がこのイオン交換樹脂を劣化させる場合がある。このため、溶解物質除去部19においてイオン交換樹脂の上流側に活性炭(カーボンフィルター等)を設置し、残留塩素を除去するようにしてもよい。一方、溶解物質除去部19において逆浸透膜を使用する場合、逆浸透膜は塩素によって劣化する素材(ポリアミド)と、耐塩素素材(三酢酸セルロース)の2種があり、耐塩素素材であれば、活性炭の交換が不要になる。このため、システムの初期費用及び運転費用を共に低減できる。
溶解物質除去部19における溶解物質の除去方法としては、供給される水道水を電気分解する方法も含まれる。例えば、陽極にアルミニウムを使用すると、アルミニウムイオンとして溶解し、陰極側から発生する水酸化イオンと結びついて、水酸化アルミニウムが生成されることが知られている。水酸化アルミニウムには強い凝集作用があり、一般的に浄水場において廃液中の微粒子や浮遊物を吸着して、沈澱させる工程で使用されている。溶解物質を吸着・沈澱するので、水道水中から溶解物質が除去される。
第2散布部20は、溶解物質除去部19から供給されてくるシリカ除去水を浴室2内に散布するための噴射機構が設けられている。第2散布部20は、シリカ除去水が浴室2内の浴槽3、洗い場7、内壁4、更には天井5のそれぞれに広範な範囲で散布されるように噴射式ノズルが設けられていてもよい。
乾燥機22は、制御部23による制御の下で、浴室2内に温風を送風する。乾燥機22は、外部空間から空気を吸い込んで熱を溜め込み、その熱を利用して浴室2内に温風を送風するいわゆるヒートポンプ方式、又は内部で熱を作り出して浴室2内に温風を送風する電気ヒーター方式等を採用するものであってもよい。乾燥機22から温風を送風することにより、浴室2内の水分が蒸発することで乾燥させることが可能となる。なお、この乾燥機22は、換気扇により浴室2内から高湿な空気を排出するものも含まれる。
操作部10は、浴室2外に設置された操作パネル又はリモートコントローラ等で構成されており、制御部23に対して操作信号を有線通信又は無線通信を通じて送信可能なデバイスである。操作部10は、ユーザにより浴室2内の洗浄を開始する旨の入力が行われた場合に、これを反映させた操作信号を制御部23に送信する。
制御部23は、制御弁15、制御弁18の開閉及び乾燥機22による乾燥開始又は乾燥停止を制御する。制御部23は、操作部10から操作信号を受信した場合には、当該操作信号に反映されているユーザの意思に基づき、各種制御を行う。制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)による制御の下で、予め記憶させたプログラムに基づいてこれらの制御を行うようにしてもよい。制御部23は、例えば制御弁15、制御弁18の各開弁時間及び乾燥機22による乾燥時間を時系列的に制御するようにしてもよい。
上述した構成からなる浴室洗浄システム1によれば、給水路14から送られてくる水道水を供給水散布ユニット17を介してそのまま浴室2内に散布することができる。また浴室洗浄システム1によれば、更に給水路14から送られてくる水道水からシリカ成分を低減させたシリカ除去水をシリカ除去水散布ユニット21を介して浴室2内に散布することができる。更に浴室洗浄システム1によれば、乾燥機22を介して浴室2内を乾燥させることができる。
次に本発明を適用した浴室洗浄システム1による浴室2内の洗浄動作について説明をする。
ユーザが浴室2内に在室している間などの操作部10を介して洗浄開始の指示を行う前は、操作信号が生成されないため、制御弁15、18は共に閉弁状態となっている。このため、給水源11から供給されてくる水道水は、分岐部12を介してシャワー8及び水栓9のみから出射することとなる。ユーザが浴室2から退出後、操作部10を介して浴室の洗浄開始の指示が行われる。操作部10はかかる洗浄開始の指示を受けた場合に、これを反映させた操作信号を生成し、制御部23へ送信する。なお、ユーザによる操作部10の操作を経ることなく、ユーザが浴室の終了を自動的に検知して上述した操作信号を生成し、これを制御部23へ送信するようにしてもよい。
制御部23は、かかる操作信号を受信し、浴室2内の洗浄処理を開始する。制御部23は、先ず制御弁15を開弁するための制御を行う。その結果、給水源11からの水道水は、給水路14を通過し、制御弁15を通過して第1散布部16へと到達することとなる。ちなみに浴室2内の洗浄処理の開始時は、ユーザによる浴室2の使用後であることから、水道水が分岐部12を介して分岐されてシャワー8等から出射されるケースは少ない。第1散布部16に到達した水道水は、浴室2内に散布される。この水道水は、浴槽3、洗い場7、内壁4、更には天井5等、浴室2全体に亘り散布される。このため、ユーザが浴室2を使用することにより、内壁4や洗い場7等に付着した皮脂や埃、石鹸等が除去される。その結果、この第1散布部16を介した水道水の散布を通じて皮脂や埃、石鹸等の付着による汚れの第1原因を取り除くことが可能となる。
制御部23は、この第1散布部16による水道水の散布を所定時間に亘り継続させた後、制御弁15を閉弁する。これにより第1散布部16による水道水の散布が終了する。
次に制御部23は、制御弁18を開弁するための制御を行う。その結果、給水源11からの水道水は、給水路14を通過し、制御弁18を通過して溶解物質除去部19に到達することとなる。溶解物質除去部19に到達した水道水は、イオン交換樹脂や、逆浸透膜等を介してシリカ等の溶解物質が除去される。このとき、水道水は、シリカ成分の濃度が0.4ppm以下まで低減されたシリカ除去水に変化することとなる。このシリカ除去水は、第2散布部20へと到達することとなる。第2散布部20に到達したシリカ除去水は、浴室2内に散布される。このシリカ除去水は、浴槽3、洗い場7、内壁4、更には天井5等、浴室2全体に亘り散布されることとなる。その結果、このシリカ除去水を通じて浴室2内の内壁4や洗い場7等を洗い流すことができる。
以前に第1散布部16により散布した水道水はシリカ等の溶解物質が含まれているものであるため、当該水道水の散布後に放置しておくとこれが蒸発乾燥し、シリカ等が水垢として付着してしまう。しかし本発明によれば、第1散布部16により散布した水道水が蒸発する前に、第2散布部20を介してシリカ除去水が散布される。その結果、シリカ等の溶解物質を含む水道水がシリカ除去水によって洗い流すことが可能となる。このため、第1散布部16により散布した水道水を洗い流すことで、当該水道水に含まれるシリカ、カルシウム、マグネシウム等の溶解物質の残存量を低減させることができ、水垢汚れの発生を抑えることができる。その結果、この第2散布部20を介したシリカ除去水の散布を通じて水垢による汚れの第2原因をも取り除くことが可能となる。なお、シリカ除去水がそのまま蒸発しても、予めシリカ成分の濃度が0.4ppm以下まで低減されていることから、当該シリカ成分の不揮発分が浴室2内に残存してしまうことも防止することが可能となる。
制御部23は、この第2散布部20によるシリカ除去水の散布を所定時間に亘り継続させた後、制御弁18を閉弁する。これにより第2散布部20によるシリカ除去水の散布が終了する。
次に制御部23は、乾燥機22により浴室2内の乾燥を開始するように制御を行う。乾燥機22により浴室2内に残存しているシリカ除去水の水滴を乾燥させることができる。その結果、自然乾燥させる場合と比較して早期にシリカ除去水を除去することができ、ユーザが浴室2に毎日入浴しても、入室者や空気の流れによって浴室内に運ばれてくる微生物の増殖を抑制する上で十分な時間に亘り乾燥状態を保つことができ、ひいては増殖した微生物によるカビの発生を抑えることが可能となり、汚れの第3原因(水道水に含まれる微生物に基づくカビ等)を取り除くことが可能となる。制御部23は、乾燥機22による乾燥を所定時間に亘り継続させた後、乾燥を停止させるように制御する。
上述した動作に基づいて浴室2内を洗浄する浴室洗浄システム1によれば、浴室の汚れの第1原因(皮脂や埃、石鹸等の付着による一般的な汚れ)、第2原因(水道水中のシリカ等の溶解物質による水垢汚れ)、第3原因(入室者や空気の流れによって浴室内に運ばれてくる微生物に基づくカビ等)の全てを取り除くことによる浴室2内の汚染防止を実現することが可能となる。しかも浴室洗浄システム1によれば、上述した洗浄動作を全てシステム側が自動的に実行することができることから、ユーザによる洗浄労力の負担を軽減することが可能となる。
なお、溶解物質除去部19に使用されるイオン交換樹脂や逆浸透膜等には水から除去した溶解物質が徐々に蓄積していくことになり、ひいては溶解物質除去性能の低下につながる場合もある。しかしながら、本発明は、第1散布部16から水道水を大量に散布して、汚れの第1原因である皮脂や石鹸等を徹底的に洗い流した後、第2散布部20からその水道水を単に洗い流すことができる程度の僅かな量のシリカ除去水を散布して第2原因を取り除けばよい。このため、シリカ除去水の散布量を大幅に削減できることから、溶解物質除去部19におけるイオン交換樹脂や逆浸透膜等に蓄積する溶解物質の量を低減することができる。その結果、溶解物質除去部19による溶解物質除去性能を長時間に亘り維持することができ、またその溶解物質除去性能を回復させるためのイオン交換樹脂や逆浸透膜等の交換するための労力やコスト、並びに浴室の清掃などの、浴室の清浄状態を維持するための労力やコストを低減させることが可能となる。
なお本発明においては、供給水散布ユニット17の構成を省略するようにしてもよい。かかる場合には、供給水散布ユニット17による水道水の散布工程を省略し、シリカ除去水の散布から開始することになる。かかる場合においても上述した効果が得られる。
図3は、浴室洗浄システム1の他の実施の形態を示している。図3に示す形態において、図2に示す形態と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図3に示す形態では、供給水散布ユニット17とシリカ除去水散布ユニット21においてそれぞれ共通の散布部25とし、第1散布部16、第2散布部20の構成を採用しない。即ち、この散布部25は、制御弁15及び溶解物質除去部19の両方から連続する。制御弁15が開弁状態で、かつ制御弁18が閉弁状態の場合には、供給水散布ユニット17から水道水がこの散布部25を介して浴室2内に散布される。また制御弁15が閉弁状態で、かつ制御弁18が開弁状態の場合には、シリカ除去水散布ユニット21からシリカ除去水がこの散布部25を介して浴室2内に散布される。かかる構成においても上述と同様の効果を奏することは勿論である。
図4は、浴室洗浄システム1の他の実施の形態を示している。図4に示す形態において、図2に示す形態と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図4に示す形態では、供給水散布ユニット17とシリカ除去水散布ユニット21においてシャワー8や水栓9をそれぞれ共通の散布手段とし、第1散布部16、第2散布部20の構成を採用しない。シャワー8及び水栓9は、制御弁15及び溶解物質除去部19の両方から連続する。制御弁15が開弁状態で、かつ制御弁18が閉弁状態の場合には、供給水散布ユニット17から水道水がこのシャワー8及び水栓9を介して散布可能となる。この散布によって、ユーザによる入浴時並びに、水道水を介して汚れの第1原因である皮脂や石鹸等を洗い流すことができる。
シャワー8又は水栓9により水道水を介して皮脂や石鹸等を洗い流した後、制御部23は、制御弁15を閉弁状態とし、制御弁18を開弁状態とする。その結果、シリカ除去水散布ユニット21からシリカ除去水がこのシャワー8又は水栓9を介して浴室2内に散布される。このシリカ除去水の散布時は、シャワー8を利用してユーザの手動で浴槽3、洗い場7、内壁4、更には天井5等に対して自ら散布を行うようにしてもよい。
図5は、浴室洗浄システム1の他の実施の形態を示している。図5に示す形態において、図2に示す形態と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図5に示す形態では、溶解物質除去部19の下流側において、微生物除去部24を設けている。この微生物除去部24は、例えば微生物を除去することが可能な精密ろ過膜、或いは微生物を殺菌するための紫外線殺菌灯による殺菌手段、次亜塩素酸発生器による殺菌手段、またはそれらのうちのいくつかの組み合わせにより構成されている。微生物除去部24の下流側に上述した第2散布部20が位置する。微生物除去部24は、溶解物質除去部19から流下してきたシリカ除去水から微生物の含有量を低減させ、これを第2散布部20へと送る。第2散布部20はこの微生物の含有量が低減された状態のシリカ除去水を散布する。或いは、この微生物除去部24は、第2散布部20から溶解物質除去部19に浸入しようとする微生物の含有量を低減させる。これにより、第2散布部20から溶解物質除去部19に微生物が浸入することによる、シリカ除去水の汚染を防止することができる。
溶解物質除去部19によりシリカ成分が低減されたシリカ除去水は、水道水に殺菌用として含まれる塩素成分等も減少している場合が多い。このため、このような微生物殺菌機能が低下したシリカ除去水をそのまま浴室2内に散布した場合、浴室2の内壁4や洗い場7等に付着した水分中の微生物の発生を抑制することができなくなる。
しかしながら、この図5に示す形態では、微生物除去部24を通じてシリカ除去水中の微生物の含有量を低減させている。このため、このような微生物含有量の低いシリカ除去水を散布しても、浴室2内に付着した水分中において微生物が増殖するのを抑制することが可能となる。その結果、汚れの第3原因(水道水に含まれる微生物に基づくカビ等)をより効果的に取り除くことが可能となる。また浴室2内において微生物の増殖を抑えることができれば、例えばレジオネラ肺炎の原因にもなるレジオネラ属菌の発生を抑えることができ、浴室2内に入室者がこれを吸い込むことによる発症を抑えることが可能となる。また微生物除去部24を設けることにより、散布部20から微生物が溶解物質除去部19まで遡ってシリカ除去水を汚染することを食い止めることが可能となる。その結果、これ以降において微生物により汚染されたシリカ除去水を散布することを抑制することが可能となる。
図6に示す形態では、浴室2内において、乾燥した空気を吹き付けるものである。係る場合において乾燥機22において予め除湿させた乾燥空気を作り出し、これを浴室2内に送気する。乾燥機22は、例えば中空糸膜を通して除湿することで乾燥空気を作り出すようにしてもよい。
このような乾燥空気を乾燥機22から浴室2内に送気することにより、浴室2内には図6に示すように乾燥空気が内壁4に沿って循環することとなる。これにより、浴室2内に付着した水滴の周囲の空気が継続的に移動して蒸発乾燥効率も上昇し、通常の換気扇による乾燥に比べて、水滴の乾燥に要する時間が短縮される。特にこの浴室2内において循環させる乾燥空気は、予め湿度が低くなるように調整が行われており、しかも温度が高い。このため、浴室2内の水分の蒸発効率を更に向上させることが可能となる。
また乾燥機22から内壁4や洗い場7等に対して乾燥空気を吹き付ける圧力を高め、吐出量を増加させることにより、付着した水滴を吹き飛ばし、押し流し、或いは振り落とすことが可能となり、さらに水滴の蒸発時間を大幅に短縮することが可能となる。これにより、浴室2内がより乾燥している状態を更に長くすることができ、浴室2内における微生物の更なる増殖抑制につながり、汚れの第3原因(水道水に含まれる微生物に基づくカビ等)をより効果的に取り除くことが可能となる。また、乾燥に要する時間が短縮されるので乾燥に要するコストも低減することができる。
図7は、浴室洗浄システム1の他の実施の形態を示している。図7に示す形態において、図2に示す形態と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図7に示す形態において、浴室洗浄システム1は、シリカ除去水散布ユニット21と、残水散布ユニット29とを備えている。シリカ除去水散布ユニット21は、溶解物質除去部19の下流側に貯水部27が設けられ、更にこの貯水部27の下流側にシリカ除去水散布駆動部28が設けられ、シリカ除去水散布駆動部28の下流側に第2散布部20が設けられている。
また残水散布ユニット29は、溶解物質除去部19により濾し取られたシリカ成分等を溶解することで、がそれらの成分の濃度が増加した残水が供給され、これを浴室2内に散布するための第3散布部30が設けられている。
貯水部27は、溶解物質除去部19によりシリカ成分等が低減されたシリカ除去水を一時的に貯留するためのタンク等により構成されている。
シリカ除去水散布駆動部28は、貯水部27に貯留されているシリカ除去水を第2散布部20から散布させるための駆動を行う。シリカ除去水散布駆動部28は、この散布駆動のタイミングが制御部23により制御される。
この図7に示す形態によれば、溶解物質除去部19においてシリカ等の溶解物質を除去してシリカ除去水とする過程において、溶解物質除去部19における逆浸透膜を介して濾し取られたシリカ成分等を溶解しそれらの成分の濃度が増加した残水を分離する。この残水は、シリカ除去水よりも量が多い場合もある。残水散布ユニット29は、このような大量の残水を有効活用するべく、第3散布部30を介してこれを浴室2内に散布する。この残水を散布することにより、内壁4や洗い場7等に付着した皮脂や埃、石鹸等を除去することができる。その結果、この第3散布部30を介した残水の散布を通じて皮脂や埃、石鹸等の付着による汚れの第1原因を取り除くことが可能となる。即ち、この図7に示す形態では、汚れの第1原因による皮脂や埃、石鹸等の付着を、水道水の代わりに残水を介して除去する。このような残水の散布している間、シリカ除去水は貯水部27に貯留されている。
残水の散布を終了させた後、シリカ除去水散布駆動部28は、貯水部27に貯留されているシリカ除去水を第2散布部20を介して散布する。第3散布部30により散布した残水はシリカ等の溶解物質が含まれているものであるため、放置しておくとこれが蒸発乾燥し、シリカ等が水垢として付着してしまう。しかし、この残水が蒸発する前に、第2散布部20を介してシリカ除去水が散布される。その結果、シリカ等の溶解物質を含む残水をシリカ除去水によって洗い流すことが可能となる。
この図7の形態では、溶解物質除去部19に使用されるイオン交換樹脂や逆浸透膜等において溶解物質が蓄積することは殆ど無く、これを第3散布部30を介して残水により放出することが可能となる。その結果、溶解物質除去部19においてシリカ等が蓄積することによる溶解物質除去性能の低下を抑えることができる。またこの図7の形態では、水道水による第1原因の除去の役割を残水に担わせることにより、水道水の散布工程を省略することができる。これにより、洗浄に使用する水道水の量を低減させることが可能となる。
図8は、浴室洗浄システム1の他の実施の形態を示している。図8に示す形態において、図7に示す形態と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図8に示す形態では、残水散布ユニット29の内部に貯水部31と、残水散布駆動部32を有している。貯水部31は、溶解物質除去部19により濾し取られたシリカ成分等の溶解物質が濃縮された残水が供給される。貯水部31は、供給されてきた残水を一時的に貯留するタンクで構成されている。
残水散布駆動部32は、貯水部31に貯留されている残水を第3散布部30から散布させるための駆動を行う。残水散布駆動部32は、この散布駆動のタイミングが制御部23により制御される。
この図8の形態によれば、貯水部31に残水を一旦貯留しておく。そして、実際の散布のタイミングにおいて残水散布駆動部32による駆動により、この貯留されている残水を第3散布部30を介して散布する。貯水部31に残水を貯留しておくことにより、第3散布部30による散布時にまとまった量の残水を一気に噴出させることができる。その結果、散布する残水の水量を増やすことができ、出水圧力を上げることができる。
以下、本発明を適用した浴室洗浄システム1の実施例について説明をする。上述した構成からなる本発明の作用効果を検証する観点から、以下に示す実験的検証を行った。図9は、この実験的検証のフローチャートである。
実験的検証を行う上で、サイズ500×500×500mmの試験用箱を作成した。この試験用箱の内面の材料は、一般の浴室の内壁として用いられているアクリル樹脂で構成した。試験用箱は、グループA〜グループEの5種類分準備した。
ステップS10において、全グループの試験用箱の内壁及び底面に対して汚染物質の噴霧を行った。汚染物質としては、入浴時の皮脂と石鹸を含む排水を想定し、「手洗いした石鹸水」を1000mlに菌の増殖を促進させるためのグルコース10gを混合したものを使用している。この汚染物質の噴霧量は100mlとしている。なおグループEの試験用箱は、ステップS10終了後、ステップS11に移行してそのまま自然乾燥させた。
次にステップS12に移行し、汚染物質を噴霧したグループA〜グループDの試験用箱に対して1時間放置後、水道水を噴霧した。次にステップS13へ移行し、30分放置後、グループA〜グループDの試験用箱の箱内全面に対して水道水を2l散水した。
グループA、Bの試験用箱については、ステップS14において更に箱内全面に対して水道水を2l散水した。またグループC、Dの試験用箱については、ステップS15において箱内全面に対してイオン交換水2lを散水した。この散水したイオン交換水は、シリカ、およびミネラル等の不純物を除去した水であって、電気伝導度0.2μS/cmのものとしている。
グループAについては、ステップS16に移行し、試験用箱内に除湿した乾燥空気を吹き入れて内部を乾燥させた。グループBについては、ステップS17に移行し、そのまま放置して自然乾燥させた。グループCについては、ステップS18に移行し、試験用箱内に除湿した乾燥空気を吹き入れて内部を乾燥させた。グループDについては、ステップS19に移行し、そのまま放置して自然乾燥させた。
グループA〜Eの各試験用箱について、初回の散水洗浄(ステップS13)、2回目の散水洗浄(ステップS14、S15)、乾燥(ステップS11、S16〜S19)を以下の表1に分類、整理している。
各グループA〜Eの試験用箱について、上述した操作を1日1回、2.5ヶ月繰り返し実行した。その後、各グループの試験用箱の床及び内壁の汚れ度合を目視で評価し、箱内の生菌数(一般細菌数)を測定した。この生菌数の測定方法としては、(株)エルメックス製Pro・media ST-25 PBS(拭き取り検査キット)を使用し、生菌数を測定しようとする任意の箇所5×5cmの縦横往復10回を2回繰り返し拭き取りを行う。拭き取り後は容器に戻し、液中に分散させ、これを検液10倍液とする。検液10倍液、100倍液、1000倍液、10000倍液、100000倍液、1000000倍液のそれぞれについてシャーレに各1mLずつ正確に滅菌ピペットで採り、加温溶解させて50℃程度に保持した栄研化学パールコア製標準寒天培地を加え、静かに混和、冷却凝固させる。検液をシャーレに採ってから培地を加えるまでに20分以内に行う。培養は温度35℃、時間は48時間とする。検出されたコロニーを測定し、1cm2あたりの菌数を算出する。
汚れ度合の評価基準を以下に示す。
6:床及び内壁の1/2以上が汚れで覆われている。
5:床及び内壁の1/4以上1/2未満が汚れで覆われている。
4:床及び内壁の1/4未満が汚れで覆われている。
3:床及び内壁の一部に汚れが確認できる。
2:床及び内壁の一部に水の蒸発痕が確認できる。
1:ステップS10の汚染物質噴霧前の初期状態と変わらない。
以下の表2には、この目視による汚れ度合の評価結果を、また表3には、測定した生菌数を示す。
表2から示唆されることとしては、グループBは、グループEと比較して汚れ度合が格段に改善されていた。このため、散水により汚れ度合が大きく改善できることを確認することができた。またグループAはグループBよりも汚れ度合が改善され、グループCはグループDよりも汚れ度合が改善されている。これにより、単なる自然乾燥よりも乾燥空気を吹き付けることにより、汚れ度合が大きく改善できることを確認することができた。またグループCは、グループAよりも汚れ度合が改善されていた。このため、乾燥空気を吹き付ける場合において、イオン交換水を散布することにより、汚れ度合を改善できることを確認することができた。
表3から示唆されることとしては、グループBは、グループEと比較して生菌数が大幅に減少していたことから、散水により微生物を低減できることを確認することができた。また、またグループAはグループBよりも生菌数が減少し、グループCはグループDよりも生菌数が減少している。これにより、単なる自然乾燥よりも乾燥空気を吹き付けることにより、生菌数が大きく減少することを確認することができた。
以上から、汚れ度合を改善し、生菌数の減少させるためには、水道水を散水した後にイオン交換水を散水し、更に乾燥空気により乾燥させることが効果的であることを実験的に検証することができた。
シリカ除去水による水垢抑制効果を実験的に検証した結果について説明をする。実験では、シリカ除去水をアクリル樹脂に散布した。その後60分にわたり乾燥させ、再度このアクリル樹脂にシリカ除去水を散布と乾燥を繰り返し実行する。このシリカ除去水の散布と乾燥を、試験体の表面に水垢成分が目視できるレベルに堆積するまで繰り返す。この実験を繰り返す過程で目視で水垢が確認できた繰り返し回数をプロットする。かかる実験を、シリカの濃度を互いに異ならせたシリカ除去水についてそれぞれ行った。
表4は、水垢抑制効果の実験結果を示している。
また図10は、表4の実験結果をグラフに表示したものである。横軸がシリカ除去水中のシリカ濃度であり、縦軸は、シリカ除去水の散布と乾燥の繰り返し回数を示している。実験は、シリカ除去水として、逆浸透膜を通すことでCaやMgも除去した水を使用し、比較のためにCaやMgの量が水道水と同じレベルの水についても同様の実験を行っている。図10中のプロットが水垢の発現を確認できた繰り返し回数である。シリカ濃度と、水垢が発現する繰り返し回数の関係はほぼ線形の関係にあることが示されている。またシリカ濃度が高いほど水垢発現の繰り返し回数が少なくなり、シリカ濃度が低いほど水垢発現の繰り返し回数が多くなることが示されている。このため、シリカ除去水中のシリカ濃度を低くするほど水垢抑制効果が高くなることが示唆されていた。中でもシリカ成分の濃度を0.4ppm以下まで低減することができれば、水垢発現の繰り返し回数が25回程度になることから、所期の水垢抑制効果が得られることが分かる。また、シリカ除去水は、シリカ以外の水垢の原因とされるCaやMgの量が水道水と同じレベルであっても水垢抑制効果が向上する点も示唆されていた。