{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るX線撮影装置について説明する。図1はX線撮影装置10を示す概略図である。
X線撮影装置10は、側面頭部X線規格撮影を行う装置である。側面頭部X線規格撮影は、頭部の一部(例えば耳)等を一定位置に固定した状態で、頭部の側方からX線撮影を行う撮影法であり、側面からのセファロ撮影法であるともいえる。以下では、側面頭部X線規格撮影を側面頭部セファロ撮影、この撮影による側面頭部X線規格画像を側面頭部セファロ画像という場合がある。また、同様に、正面頭部X線規格撮影を正面頭部セファロ撮影、この撮影による正面頭部X線規格画像を正面頭部セファロ画像という場合がある。
X線撮影装置10は、X線発生部20と、X線検出部30と、支持部40とを含む。
X線発生部20は、X線発生器22を含む。X線発生器22は、X線を発生させる。
X線検出部30は、X線検出器32を含む。X線検出器32は、X線発生器22から出射されたX線を検出する。
支持部40は、X線発生器22とX線検出器32とを対向状態で支持する。X線発生器22及びX線検出器32が支持部40によって支持された状態で、それらの間に被写体である頭部Pを配設可能な間隔が設けられる。そして、X線発生器22から照射されたX線は、頭部Pを通って、X線検出器32に入射する。X線検出器32に入射したX線は、単位画素毎にX線の強度に応じた電気信号に変換される。この各電気信号に基づいて側面頭部セファロ画像が生成される。
図2は側面頭部セファロ撮影中においてX線検出器32に入射するX線の照射領域Hを示している。図2では参考のため照射領域Hに投影される頭部PのX線透過画像Pxが描かれている。
上記照射領域Hは、側面頭部セファロ撮影中において、X線発生器22から照射されたX線がX線検出器32に入射する全領域によって定義される。この照射領域Hは、X線発生器22から照射されたX線が、頭部Pのうち側面頭部セファロ撮影を行うために必要な撮影部位、例えば、頭部Pのうち頭蓋を含む顎顔面領域を通ってX線検出器32に投影可能な程度の広がりを有している。
ここで、X線発生器22から照射されるX線としては、スリット状である場合と、方形状に広がる場合とが想定される。
X線発生器22から照射されるX線がスリット状である場合、例えば、X線発生器22から照射されるX線は、長尺状のスリットが形成された照射野規制部等によってスリット状のX線に規制されて、頭部Pを通ってX線検出器32に入射することが想定される。この場合、スリット状のX線を、頭部Pに対して前後方向又は上下方向に走査することで、頭部Pのセファロ撮影部位が投影されたX線の照射領域Hとすることができる。この場合、照射領域Hは、スリット状のX線がX線検出器32に入射するスリット状の入射領域の移動跡によって定義される。この場合、X線検出器32としては上記スリット状の検出面を有するものを用い、当該X線検出器を、スリット状のX線に同期して移動させる構成を採用することができる。X線発生器22から照射されるX線がスリット状である場合については、第2実施形態及び第3実施形態においてより具体的に説明する。
X線発生器22から照射されるX線が方形状に広がる場合、X線発生器22から照射されるX線は、頭部Pのセファロ撮影部位を通過できる程度に広がって、X線検出器32に入射する。この場合の照射領域Hは、X線発生器22から照射されるX線が1つのタイミングでX線検出器32に入射する全領域によって定義される。この場合、X線検出器32としては、照射領域Hと同じ又はこれよりも大きい検出面を有するものを用いることができる。X線発生器22から照射されるX線が方形状に広がる場合については、第4実施形態においてより具体的に説明する。
上記照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1は、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されている。
例えば、下側縁HEは、頭部後方側HE1が頭部前方側HE2よりも高くなるように、水平方向に対して傾斜している。なお、水平方向は、重力方向である鉛直方向に対して直交する方向、ここでは、頭部Pの前後方向である。
好ましくは、下側縁HEは、頭部Pの頭部骨格Bの下顎底Baに沿うように傾斜している。このため、照射領域Hには、頭部の下顎Bbが含まれている。また、下顎Bbの後ろ側にある頸椎Bcが存在する箇所では、下側縁HEは、頸椎Bcに対してなるべく上側の位置を通過しており、照射領域Hになるべく頸椎が含まれないようになっている。
また、下側縁の形状は直線的なものとは限らない。例えば、下側縁HEbの頭部後方側HEb1が頭部前方側HEb2よりも高くなるように、段差HEbSを介して連続している形状であってもよい。
この場合、下側縁HEbの頭部前方側HEb2は、下顎底Baよりも下側(僅かに下側)に位置する。また、下側縁HEbの頭部後方側HEb1は、頭部前方側HEb2よりも上側に位置し、頸椎Bcに対してなるべく上側の位置を通過している。段差HEbSは、下顎Bbと頸椎Bcとの間に位置している。
上記のような照射領域Hの下側縁HE、HEbの設定は、例えば、X線発生器22から照射されるスリット状のX線を走査する際の経路を調整すること、或は、X線発生器22から照射されるX線の規制形状を調整すること等によって行うことができる。
図2では比較のため下側縁HEcが水平方向に沿った直線を示している。側面頭部セファロ撮影を行うためには、下側縁HEcが下顎底Baよりも下側を通過する必要がある。このため、下側縁HEcは、頭部Pの後部において、頸椎Bcの中間部を横切るように通過することになる。
これに対して、本実施形態に係るX線撮影装置10のように、X線発生器22から照射されて頭部Pを通過してX線検出器32に入射するX線の照射領域Hの下側縁HE、HEbの頭部後方側HE1、HEb1が、下側縁HE、HEbの頭部前方側HE2、HEb2よりも高く配置されるようにすると、不必要な部位へのX線照射を抑制しつつ、側面頭部セファロ撮影を行える。
つまり、下顎Bbについては、照射領域Hの下側縁HE、HEbのうち下寄りの頭部前方側HE2、HEb2の内側領域でX線撮影を行うことができる。また、照射領域Hの下側縁HE、HEbのうち上寄りの頭部後方側HE1、HEb1を頸椎Bcのなるべく上側に配設することで、不要な部位(甲状腺等)へのX線照射を抑制できる。
また、照射領域Hの下側縁HEが水平方向に対して傾斜すれば、当該下側縁HEを頭部Pの下顎底Baに沿って傾斜させ易いため、必要部位の撮影を行い易い。
{第2実施形態}
第2実施形態に係るX線撮影装置について説明する。
<全体構成について>
図3は、第2実施形態に係るX線撮影装置110の構成を示す全体図であり、図4は第2実施形態に係るX線撮影装置110を斜め上方から見たときの斜視図である。なお、各図において、説明の便宜上、X線撮影装置110が存在する全体の空間においてXYZ座標系を設定することがある。本XYZ座標系において、CT撮影又はパノラマ撮影を行う場合にX線撮影装置110において支持される頭部P(図3において右側に示される頭部P参照)を基準とすると、右方向をX(+)方向、左方向をX(−)方向、前方をY(+)方向、後方をY(−)方向、上方をZ(+)方向、下方をZ(−)方向とする。本XYZ座標系において、セファロ撮影を行う場合にX線撮影装置110において支持される頭部P(図3において左側に示される頭部P参照)を基準とすると、前方向をX(−)方向、後方向をX(+)方向、右方をY(+)方向、左方をY(−)方向、上方をZ(+)方向、下方をZ(−)方向とすることになる。セファロ撮影を行う場合にX線撮影装置110において支持される頭部Pの向きは、前後及び左右が逆になることもあり得る。
X線撮影装置110は、撮影本体部120と画像処理装置180とを備えている。撮影本体部120は、被写体の頭部PについてX線撮影を行うことにより、X線投影データを収集する装置である。撮影本体部120は、例えば、防X線室146に収容されて使用される。画像処理装置180は、撮影本体部120により収集されたX線投影データを処理して、各種X線画像(具体的には、パノラマ画像、CT画像、頭部X線規格画像(セファロ画像)等)を生成する。
もっとも、撮影本体部120は、頭部Pについて頭部X線規格撮影(頭部セファロ撮影)、特に、側面頭部セファロ撮影を行えればよく、また、画像処理装置180は、撮影本体部120により収集されたX線投影データを処理して、頭部X線規格画像(セファロ画像)、特に、側面頭部X線規格画像(側面頭部セファロ画像)を生成するものであればよい。以下では、X線撮影装置110が側面頭部セファロ撮影を行う構成を中心に説明する。
撮影本体部120は、X線発生器126aを含むX線発生部126と、X線検出器128と、旋回支持部124と、本体制御部150とを備える。
X線発生器126aは、例えば、X線を発生させるX線源であるX線管である。X線発生器126aからはX線コーンビームが出射される。
X線発生部126は、X線発生器126aから照射されるX線ビームの形状を調整するX線ビーム形状調整部127を含む。X線ビーム形状調整部127は、X線発生器126aに対してX線コーンビームが照射される側に設けられている。X線発生器126a及びX線ビーム形状調整部127は、旋回支持部124の一端部に支持される。
図5及び図6は、X線ビーム形状調整部127の概略正面図である。X線ビーム形状調整部127は、X線発生器126aから出射されるX線コーンビームの広がりを規制し、撮影目的に応じた形状となるように、また、撮影目的に応じた位置に照射されるように、X線コーンビームを調整する。
より具体的な一例として、X線ビーム形状調整部127は、4枚の遮蔽部材127A、127Bと、遮蔽部材127Aを開閉駆動する遮蔽部材駆動部127Cと、遮蔽部材127Bを開閉駆動する遮蔽部材駆動部127Dとを備える。なお、図5においては、遮蔽部材127A、127B及び遮蔽部材127A、127Bを駆動する部分(モータ、シャフト等)については実線又は隠れ線(破線)で示し、ガイド127C1、127D1については仮想線(2点鎖線)で示している。
遮蔽部材127A、127Bは、X線を吸収する材料(鉛等)で構成されており、長方形の板状に形成されている。
4枚の遮蔽部材127A、127Bのうち2つの遮蔽部材127Aは、X線発生器126aの出射口の正面視上下位置に設けられている。2つの遮蔽部材127Aのうち対向する側の辺は、水平方向に沿っている。
遮蔽部材駆動部127Cは、2つの遮蔽部材127Aを上下方向に移動駆動する。すなわち、遮蔽部材駆動部127Cは、一対のガイド127C1と、シャフト127C2、127C3と、シャフト127C2を駆動するモータ127C4、シャフト127C3を駆動するモータ127C5とを備える。
一対のガイド127C1は、2つの遮蔽部材127Aのそれぞれの両端を上下方向に移動可能に支持している。
一方のシャフト127C2の外周にはねじ溝が形成されており、2つの遮蔽部材127Aのうちの一方のねじ部が当該シャフト127C2に螺合している。そして、一方のモータ127C4の正逆両方向の回転駆動によって、シャフト127C2が正逆両方向に回転する。このシャフト127C2の回転方向に応じて、一方の遮蔽部材127Aが一対のガイド127C1によりガイドされた状態で、上方向又は下方向に移動する。
他方のシャフト127C3の外周にはねじ溝が形成されており、2つの遮蔽部材127Aのうちの他方のねじ部が当該シャフト127C3に螺合している。そして、他方のモータ127C5の正逆両方向の回転駆動によって、シャフト127C3が正逆両方向に回転する。このシャフト127C3の回転方向に応じて、他方の遮蔽部材127Aが上方向又は下方向に移動する。
これにより、2つの遮蔽部材127Aが個別に上下方向に移動駆動される。
4枚の遮蔽部材127A、127Bのうち他の2つの遮蔽部材127Bは、X線発生器126aからのX線の射出方向において上記2つの遮蔽部材127Aとは異なる位置で、X線発生器126aの出射口の正面視左右位置に設けられている。2つの遮蔽部材127Bのうち対向する側の辺は、上下方向に沿っている。
遮蔽部材駆動部127Dは、2つの遮蔽部材127Bを左右方向に移動駆動する。すなわち、遮蔽部材駆動部127Dは、一対のガイド127D1と、シャフト127D2、127D3と、シャフト127D2を駆動するモータ127D4、シャフト127D3を駆動するモータ127D5とを備える。
一対のガイド127D1は、2つの遮蔽部材127Bのそれぞれの両端を左右方向に移動可能に支持している。
一方のシャフト127D2の外周にはねじ溝が形成されており、2つの遮蔽部材127Bのうちの一方のねじ部が当該シャフト127D2に螺合している。そして、一方のモータ127D4の正逆両方向の回転駆動によって、シャフト127D2が正逆両方向に回転する。このシャフト127D2の回転方向に応じて、一方の遮蔽部材127Bが一対のガイド127D1によりガイドされた状態で、左方向又は右方向に移動する。
他方のシャフト127D3の外周にはねじ溝が形成されており、2つの遮蔽部材127Bのうちの他方のねじ部が当該シャフト127D3に螺合している。そして、他方のモータ127D5の正逆両方向の回転駆動によって、シャフト127D3が正逆両方向に回転する。このシャフト127D3の回転方向に応じて、他方の遮蔽部材127Bが左方向又は右方向に移動する。
これにより、2つの遮蔽部材127Bが個別に左右方向に移動駆動される。
遮蔽部材駆動部127C、127Dとしては、その他、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構等が用いられてもよい。
本例では、2つの遮蔽部材127Aのうち対向する上下2つの内側の辺及び2つの遮蔽部材127Bのうち対向する左右2つの内側の辺によって形成される開口127Eに応じて、X線コーンビームの形状、照射先となる位置等が調整される。
例えば、2つの遮蔽部材127Aのうち対向する上下2つの内側の辺が大きく開き、かつ、2つの遮蔽部材127Bのうち対向する左右2つの内側の辺が大きく開いた状態では、方形状の開口127Eが形成される(図5参照)。X線発生器126aから出射されたX線ビームは、この方形状、例えば、正方形状の開口127Eを通過することにより、正四角錐台状に広がるX線コーンビームに形成される。
また、例えば、2つの遮蔽部材127Aのうち対向する上下2つの内側の辺が大きく開き、かつ、2つの遮蔽部材127Bのうち対向する左右2つの内側の辺が小さく開いた状態では、細長い開口127Eが形成される(図6参照、図6においてはX線を遮蔽、遮蔽駆動する要素のみ図示して一部を略している)。X線発生器126aから出射されたX線ビームは、上下に細長いスリット状の開口127Eを通過することにより、上下に長い角錐台状に広がるX線細隙ビームに形成される。この開口127Eの形状を保ったまま、2つの遮蔽部材127Bを同方向、例えば、右方向に移動させることで、X線細隙ビームの照射先を左方向から右方向に走査することができる。また、この開口127Eの形状を保ったまま、2つの遮蔽部材127Aを同方向、例えば、上方向に移動させることで、X線細隙ビームの照射先を下方向から上方向に移動させることができる。
X線発生器126aからX線細隙ビームを照射する際には、上記2つの遮蔽部材127A及び2つの遮蔽部材127Bの移動制御を行うことで、X線検出器128、X線検出器222におけるX線の照射範囲を調整することができる。
図7は、他の例に係るX線ビーム形状調整部327を示す説明図である。X線ビーム形状調整部327は、2つの遮蔽部材327A、327Bを備える。遮蔽部材327A、327Bは、L字状の板状に形成されており、これらの内角部を構成する縁部327A1、327B1が組み合わさることにより、開口327Eを形成する。遮蔽部材各々は、XYテーブル機構等によって、上下方向及び左右方向に移動可能とされている。遮蔽部材327A、327Bがこの移動機構によって調整されることにより、開口327Eの形状が調整される。
上記例では、X線ビーム形状調整部127が複数の遮蔽部材及び移動機構により構成されている。しかしながら、X線ビーム形状調整部は、所定形状の開口が形成された単一の遮蔽部材と、移動機構とによっても構成され得る。
図3及び図4に示すように、X線検出器128は、X線発生器126aから出射されたX線コーンビームを検出する。X線検出器128は、平面状に広がる検出面を有するフラットパネルディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管(I. I.:Image Intensifier)等により構成され得る。
X線検出器128の検出面に配された複数の検出素子は、入射したX線の強度を電気信号に変換する。そして、その電気信号は、出力信号として本体制御部150又は画像処理装置180に入力され、その信号に基づいてX線投影画像が生成される。
X線検出器128は、旋回支持部124の他端部に、X線発生器126aと間隔をあけて対向するように支持されている。X線検出器128の検出面に対して、X線発生器126aから出射されたX線コーンビーム、X線細隙ビームなどのX線ビームが照射される。
このX線検出器128は、X線CT撮影又はパノラマ撮影を行うためのものである。
旋回支持部124は、回転軸部125を介して水平アーム123に吊り下げ状に支持されている。旋回支持部124は、吊り下げ状に支持された状態で水平方向に沿って延在している。旋回支持部124の一端部には筐体124aが取り付けられており、旋回支持部124の他端部には筐体124bが取り付けられている。筐体124a内には、X線発生器126a及びX線ビーム形状調整部127が収容された状態で支持されている。
X線発生器126aは、旋回支持部124の一端部から他端部に向けてX線コーンビーム、X線細隙ビームなどのX線ビームを照射する。筐体124b内には、X線検出面をX線発生器126a側に向けた姿勢でX線検出器128が収容されている。これにより、旋回支持部124は、その一端側にX線発生器126aを支持し、その他端側にX線検出器128を支持する。
上記筐体124aは、内部のX線発生器126a及びX線ビーム形状調整部127と共に旋回支持部124の中間部124cに対して上下方向に沿った軸周りに回転可能である。例えば、筐体124aは旋回支持部124のX線発生器側基端部に対して上下方向に沿った軸周りに回転可能である。筐体124aの回転は手動によってなされてもよいし、モータ等を含む回転機構の駆動によってなされてもよい。筐体124aを回転させることによって、X線発生器126aから照射されたX線がX線検出器128に向う姿勢とする状態と、X線発生器126aから照射されたX線が筐体124bの側方を通過して後述するセファロ撮影用のX線検出器222に向う姿勢とする状態とを切替えることができる。筐体124aの回転は手動によってなされてもよいし、モータ等を含む回転機構の駆動によってなされてもよい。
上記旋回支持部124は、支柱121及び水平アーム123を介して支持されている。
支柱121は、床面等に載置されるベース121B上に垂直姿勢で支持されている。この支柱121に、昇降部122が昇降駆動可能に設けられている。昇降部122は、昇降駆動機構によって昇降駆動される。昇降駆動機構としては、ボールねじ機構及びモータ等を含む移動機構、リニアモータ等のリニアアクチュエータが用いられ、支柱121内に組込まれて昇降部122を昇降駆動する。昇降部122には、水平方向に延びるように水平アーム123が支持されている。この水平アーム123の先端部に旋回駆動機構130が組込まれている。
旋回駆動機構130は、旋回支持部124を旋回させる機構である。本実施形態においては、旋回駆動機構は、旋回軸移動機構134と、当該旋回軸移動機構134によって移動可能に支持された旋回機構132とを備える。
旋回軸移動機構134は、上記回転軸部125を旋回機構132と共に、回転軸部125の旋回軸X1に交差する方向(ここでは、水平方向)に移動させる機構である。旋回軸移動機構134としては、例えば、2つのリニアアクチュエータを互いに直交する方向に組合わせたXYテーブル機構を採用することができる。そして、旋回軸移動機構134が回転軸部125を旋回機構132と共に水平方向に沿って移動させることで、回転軸部125を所望の位置に配設することができ、X線発生器126a及びX線検出器128の旋回軸を任意の位置に設定することができる。
旋回機構132は、旋回駆動部としてのモータを備えており、上記旋回軸移動機構134によって水平方向に移動可能に支持されている。上記旋回支持部124の延在方向中間部より上方に突出する回転軸部125の上端部が、旋回機構132によって回転駆動可能に支持される。旋回機構132に備えられたモータの回転運動が回転軸部125に伝達されることで、旋回支持部124及び当該旋回支持部124に支持されたX線発生器126a及びX線検出器128が旋回する。旋回機構132に備えられたモータの回転運動は、必要に応じて、ギヤ、プーリ等の伝達機構を介して回転軸部125に伝達される。
上記旋回支持部124は、頭部Pの高さに合せて昇降部122によって昇降することができる。また、旋回駆動機構130は、X線発生器126a及びX線検出器128が頭部Pの周りを旋回するように、旋回支持部124を旋回させることができる。
また、支柱121に頭部固定装置用昇降部141Aが昇降駆動可能に設けられている。頭部固定装置用昇降部141Aは、上記昇降部122よりも下側に設けられている。頭部固定装置用昇降部141Aから頭部固定装置用アーム141が水平アーム123と同じ方向に延在するように設けられている。頭部固定装置用アーム141は、水平アーム123の下側を通って、X線発生器126aとX線検出器128との間の下方位置に向けて延在する。この頭部固定装置用アーム141の先端部に頭部固定装置142が設けられている。頭部固定装置142は、X線発生器126aとX線検出器128との間に位置している。頭部固定装置142は、被写体である頭部Pの顎を載置支持可能なチンレスト142aと、被写体である頭部Pをその両外側から挟んで保持する保持部142bとを含む。そして、頭部Pの顎がチンレスト142a上に支持されると共に、頭部Pが保持部142bによって挟込まれることで、頭部PがX線発生器126aとX線検出器128との間の一定位置に保持される。頭部固定装置142を、少なくともチンレスト142a、保持部142bの一方で構成するようにしてもよい。
X線CT撮影又はパノラマ撮影を行う際には、頭部固定装置142によって被写体である頭部Pを固定した状態で、所望の撮影モードに応じて、旋回支持部124を回転させた状態でX線撮影を行う。特に、旋回支持部124を回転させて、被写体P周りにX線発生器126a及びX線検出器128を旋回させることで、X線CT画像等を生成するのに必要なX線画像データを得ることができる。また、旋回支持部124を一定範囲回転させた状態でX線撮影を行うことで、パノラマ撮影画像を得ることができる。対象領域の透視画像の撮影をする撮影モードにおいては、旋回支持部124を停止させた状態でX線撮影を行う。
X線撮影装置110は、セファロ撮影ユニット200を備える。セファロ撮影ユニット200は、頭部X線規格写真を取得するために使用されるユニットである。このセファロ撮影ユニット200については後述する。
頭部固定装置用アーム141の延在方向中間部には、操作パネル装置158を含む本体制御部150が設けられている。
本体制御部150は、コンピュータ等によって構成されており、撮影本体部120に対する各指示を受付け可能に構成されると共に、撮影本体部120の各動作を制御可能に構成されている。本体制御部150は、前記支柱121から水平方向に延びるセファロ撮影用アーム143に固定されている。この本体制御部150には、前記本体制御部150からの各種情報を表示すると共に本体制御部150に対する各種指令を受付けるための操作パネル装置158が設けられている。ここでは、操作パネル装置158は、液晶表示パネル等の表示装置と、表示装置の表示画面に配設されたタッチ検出部とを備えるタッチパネルである。表示画面に対する操作者のタッチ操作をタッチ検出部にて検出することで、本X線撮影装置110に対する操作を受付け可能に構成されている。操作パネル装置158の近く等に、押しボタン等が設けられていてもよい。また、表示装置と、操作者の操作を受付ける入力装置とは別々に設けられていてもよい。
この撮影本体部120を収容する防X線室146の壁の外側には、前記本体制御部150のX線照射制御用の照射制御部150sが設けられ、照射制御部150sにデッドマンスイッチと呼ばれる押しボタンスイッチ147が設けられている。操作者がデッドマンスイッチを押している間だけ、X線照射がなされる。照射制御部150sはX線照射の制御に用いられるが、照射制御部150sの機能の全部又は一部が制御部150によって実現されてもよい。
画像処理装置180は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部183を備えており、通信ケーブルによって前記撮影本体部120との間で各種データを送受信可能に接続されている。但し、撮影本体部120と画像処理装置180との間で、無線通信でデータの送受が行われてもよい。この情報処理本体部183は、撮影本体部120から送信されたデータに基づいて各種画像処理等を実行することができる。
画像処理装置180には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置で構成される表示部184a、および、キーボードやマウス等で構成される操作部184bが接続されている。オペレータは、表示部184aに表示された文字や画像の上で、マウス等を介したポインタ操作等によって、情報処理本体部183に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部184aは、タッチパネルで構成されていてもよい。
本画像処理装置180の処理の一部又は全部が、本体制御部150によって実行されてもよい。あるいは、本体制御部150の処理の一部又は全部が画像処理装置180によって実行されてもよい。つまり、本体制御部150及び画像処理装置180の各処理は、いずれかの場所に設けられた単一のコンピュータによって実行されてもよいし、いずれかの場所に設けられた複数のプロセッサによって分散して処理されてもよい。
<セファロ撮影ユニットについて>
図8はX線撮影装置110がセファロ撮影を行う状態を示す平面図である。図3、図4及び図8に示すように、X線撮影装置110は、セファロ撮影ユニット200を備える。セファロ撮影ユニット200は、頭部X線規格写真を取得するために使用されるユニットである。
支柱121から水平アーム123が延びる側とは反対側に水平方向に延びるようにセファロ撮影用アーム143が設けられ、このセファロ撮影用アーム143の先端部分にセファロ撮影ユニット200が設けられている。より厳密に述べれば、水平アーム123は概ね−Xと−Yとの2つのベクトルを加算したベクトルの方向に、セファロ撮影用アーム143は概ね−Xと+Yとの2つのベクトルを加算したベクトルの方向に延在している。
セファロ撮影ユニット200は、頭部保持具210と、X線検出部(セファロ撮影X線検出部)220と、照射野規制部230とを備える。
頭部保持具210は、被写体である頭部Pを保持する。ここでは、頭部保持具210は、一対のイヤロッド212及び額ロッド214を含む(後出の図9から図11参照)。一対のイヤロッド212は、セファロ撮影用アーム143の先端部において一定位置に支持されたセファロベース202から垂下状に支持されているロッドベース215からさらに垂下状に支持されている。一対のイヤロッド212の先端部が頭部Pの両側の耳内に挿入されることにより両耳部が位置付けされる。また、額ロッド214は、ロッドベース215において一対のイヤロッド212の中央部から当該一対のイヤロッド212を結ぶ方向に対して直交する方向にずれた位置で、ロッドベース215から垂下状に支持されている。額ロッド214の先端部が頭部Pの額等に当接することにより、頭部Pが位置付けられる。頭部保持具210は頭部Pを一定位置及び一定姿勢で支持するものであればよく、上記構成に限定される必要は無い。頭部保持具は、額ロッド214及び一対のイヤロッド212の少なくとも一方を備える構成であってもよい。
ロッドベース215はセファロベース202に対して鉛直方向の回動軸210AXを回動中心として回動可能に構成されている。この回動はモータなどで電動駆動するなど、機械的なアクチュエータで駆動してもよいし、手動で回動可能として、正面、側面で係止可能なように構成してもよい。本頭部保持具210によって、頭部Pは、側面セファロ撮影のときに、その前方が−X側を向くように一定位置及び一定姿勢で保持される。以下、側面頭部セファロ撮影中における前後、左右、上下方向は、本頭部保持具210によって保持された頭部Pに対する前後、左右、上下を基準とする。正面頭部セファロ撮影のときは、頭部Pの前方が−Y側を向くように頭部Pが保持される。
なお、側面頭部セファロ撮影は、日本を含む世界の多くの国で頭部の左側からX線が入射し、頭部の右側で検出するように撮影するのが主流であるが、頭部の右側からX線が入射し、頭部の左側で検出するように撮影する場合もありうる。そこで、頭部保持具210のロッドベース215は、図8に示す状態から180°回動して、頭部の前方が+X側を向くように位置付けすることもできるようになっている。
X線検出部220は、X線検出器222を含む。X線検出部220は、X線発生器126aから出射されたX線を検出するものであり、フラットパネルディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管(I. I.:Image Intensifier)等により構成される。フラットパネルディテクタとしては、CCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサなどを利用可能である。長尺形状のX線検出面を有するX線検出器を用いてもよく、これについてもCCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサなどを利用可能である。図示のX線検出部220は、長尺状のX線検出面222aを有している。初期姿勢では、X線検出面222aは上下方向に沿って延在している。
X線検出器222は、樹脂等で形成された外装ケース224に組込まれている。外装ケース224は、X線検出器222のうち少なくとも下部及び背面側を覆っているので、X線検出部220の外形は、X線検出器222の外形よりも大きい。X線検出器222のX線検出面222aは、頭部保持具210側を向いている。
照射野規制部230は、X線を吸収する材料(鉛等)で構成されており、長方形の板状に形成されている。照射野規制部230には、長尺状のスリット232が形成されている。照射野規制部230は、X線発生器126aとX線検出器222との間であって、X線検出器222に対して頭部保持具210(つまり、頭部保持具210に保持される頭部P)を挟んで反対側の位置に配設される。そして、X線発生器126aから照射されるX線の形状をスリット232によって規制する。スリット232によって形状規制されたX線が頭部Pを通過してX線検出面222aに入射する。従って、スリット232の大きさは、X線検出面222aと同程度であるかこれよりも小さい。X線ビームの形状は、前述のX線ビーム形状調整部127によってある程度規制するのであるが、スリット232によってさらに高い精度で規制する。
セファロ撮影を行う際には、X線発生器126aがX線検出器222に対して頭部保持具210及び照射野規制部230を介して対向し、かつ、X線検出器128を収容した筐体124bがX線発生器126aとX線検出器222とを結ぶラインから外れた位置に配設されるように、旋回支持部124を旋回させる(図8参照)。また、X線発生器126aの照射方向がX線検出器222側を向くように、筐体124aを回転させる。これにより、X線発生器126aから照射されたX線が筐体124bによって遮られることなく、頭部保持具210及び照射野規制部230を介してX線検出器222に入射するようにする。かかる位置関係で、X線発生器126aからX線が出射されることにより、セファロ撮影が実行される。
本実施形態では、旋回支持部124、水平アーム123、セファロ撮影用アーム143及び後述するX線検出器側支持部が、X線発生器126aとX線検出器222とを対向状態で支持する支持部(セファロ撮影支持部)である。
この支持部は、X線検出器222がX線発生器126aに対して対向し、かつ、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域の下側縁の頭部後方側が、下側縁の頭部前方側よりも高く位置するように、X線検出部220を支持するX線検出器側支持部を含む。
本実施形態では、このX線検出器側支持部は、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の移動領域の下側縁が水平方向に対して傾斜するように、X線検出面222aの延在方向に対して交差する方向にX線検出部220を移動させるX線検出部側移動機構240を含む例を説明する。X線検出器側支持部の他の例については、別の実施形態で説明する。
図9はセファロ撮影ユニット200を示す概略正面図であり、図10はセファロ撮影ユニット200を示す概略平面図であり、図11はセファロ撮影ユニット200を示す概略側面図である。セファロ撮影ユニット200のうち、少なくともX線検出器222を支持する機械的要素がX線検出器側支持部である。X線検出器側支持部が照射野規制部230を支持してもよく、さらに、頭部保持具210を支持してもよい。
X線検出部側移動機構240は、走査方向移動機構242と、傾斜支持部250とを含む。
走査方向移動機構242は、X線検出部220をX線検出面222aの延在方向に対して直交する方向に移動させる。
図12及び図13は走査方向移動機構242の一例を示す図である。
走査方向移動機構242は、長尺ベース243と、レール244と、走査方向駆動部246とを含む。
長尺ベース243は、金属板等で形成された長尺状の部材である。レール244は、X線検出部220を直線的に移動可能に支持する部材である。ここでは、レール244は、細長い板状の部材であり、長尺ベース243に対して間隔をあけた位置で当該長尺ベース243に固定されている。レール244は、長尺ベース243の長手方向に沿っている。
X線検出部220の上端部には、複数組(ここでは2組)の従動輪226が回転可能に設けられている。複数組の従動輪226は、レール244を厚み方向両側である上下方向で挟んでいる。この状態で、X線検出部220のX線検出面222aの延在方向は、長尺ベース243に対して直交している。複数組の従動輪226がレール244の上下両面を従動回転することで、X線検出面222aを長尺ベース243に対して直交させた姿勢のままで、X線検出部220がレール244の延在方向に沿って往復移動可能に支持される。
走査方向駆動部246は、X線検出部220を往復駆動する。ここでは、走査方向駆動部246は、モータ247と、一対のプーリ248と、一対のプーリ248に巻掛けられた循環ベルト249とを含む。
一対のプーリ248の一方は、長尺ベース243の一端部に回転可能に支持されている。長尺ベース243の他端部にモータ247が固定されている。一対のプーリ248の他方は、長尺ベース243の他端部に、モータ247から回転駆動力が伝達可能な態様で、回転可能に支持されている。
上記X線検出部220は、一対のプーリ248の間において、ブラケット229を介して循環ベルト249に連結されている。
そして、モータ247の正方向又は逆方向の回転に応じて、循環ベルト249が正方向又は逆方向に回転し、循環ベルト249の回転方向に応じてX線検出部220が往復移動する。
走査方向移動機構242としては、上記構成の他、モータによって正逆両方向に回転可能なネジ軸部に、X線検出器側に設けられたねじ部を螺合させた構成、ラックアンドピニオン機構、リニアモータ機構等の各種構成を採用することができる。
傾斜支持部250は、走査方向移動機構242を水平方向に対して傾けた姿勢で支持することでX線検出部220を傾斜支持する(後出の図14参照)。
ここでは、傾斜支持部250は、モータ252を含む。モータ252としては、回転方向及び回転量の調整が可能なモータ、例えば、ステッピングモータ等を用いることができる。モータ252は、セファロベース202の一側部に固定されている。モータ252の駆動シャフト253は、セファロベース202の一側部から外方に突出しており、駆動シャフト253の端部に上記走査方向移動機構242の延在方向(X線検出部220の移動方向)の一部である端部又は中間部が連結されている。ここでは、走査方向移動機構242の延在方向の一端部に近い部分が駆動シャフト253に連結されている。
そして、モータ252の駆動によって駆動シャフト253を正方向又は逆方向に回転させることで、走査方向移動機構242を水平方向に対して傾けた姿勢で支持することができる。モータ252の回転方向及び回転量の調整により、走査方向移動機構242は水平姿勢と当該水平姿勢から傾いた姿勢との間で姿勢変更可能とされる。特に、モータ252の回転量を微調整することで、走査方向移動機構242は水平姿勢から傾いた複数度合の傾斜姿勢で姿勢変更可能とされる。
上記例では、駆動シャフト253が直接的に走査方向移動機構242に連結されているが、駆動シャフトと走査方向移動機構242を回転可能に支持する支持シャフトとが複数のギヤを含むギヤ機構を介して連結されており、駆動シャフトの回転駆動力が当該ギヤ機構を介して支持シャフトに伝達されてもよい。ギヤ機構は、回転駆動力を大きくして支持シャフトに伝達する減速ギヤ機構を用いることができる。例えば、ギヤ機構としては、駆動シャフトに第1ギヤが固定され、支持シャフトに第1ギヤと噛合い可能でかつ第1ギヤよりも歯数が大きい第2ギヤが固定された構成とすることができる。駆動シャフトの回転駆動力は、その他、プーリ機構等を介して支持シャフトに伝達されてもよい。
本実施形態では、傾斜支持部250は、モータの駆動によって走査方向移動機構242を傾斜駆動する構成であるが、傾斜支持部は、走査方向移動機構242に対する手動操作によって走査方向移動機構242を傾斜可能に支持する構成であってもよい。例えば、傾斜支持部250は、走査方向移動機構242を傾斜可能に支持するシャフトを有する構成であってもよい。走査方向移動機構242を一定傾斜姿勢に支持する構成としては、シャフト周りにラチェット構造を設けること、走査方向移動機構242にネジを設け、そのネジの締付、弛緩に応じてシャフトに対する走査方向移動機構242の傾斜止、傾斜許容状態を切替えること、シャフトから離れた位置で走査方向移動機構242を所定傾き姿勢で保持するロック構造等を設けることで実現可能である。
走査方向移動機構242が水平姿勢とされた状態では、X線検出面222aが走査方向移動機構242の延在方向すなわち水平方向に対して直交する姿勢で、X線検出部220が走査方向移動機構242に対して垂下状に移動可能に支持されている。
図14及び図15は側面頭部セファロ撮影中におけるX線撮影装置110の動作を示す説明図である。
走査方向移動機構242が水平方向に対して角度θ傾くと、X線検出面222aが鉛直方向に対して角度θ傾いた姿勢で、X線検出部220が走査方向移動機構242に対して移動可能に支持されている。この状態で、走査方向移動機構242の駆動によってX線検出部220を走査方向移動機構242の延在方向に沿って移動させるとする。この際のX線検出部220の移動跡の下側縁は、水平方向に対して角度θ傾く。同様に、X線検出面222aの移動軌跡の下側縁は、水平方向に対して角度θ傾く。
上記モータ252の回転角度を調整することで、走査方向移動機構242が水平方向に対して傾く角度θを多段階に調整可能である(図14で2点鎖線参照で示す走査方向移動機構242参照)。
また、X線検出部側移動機構240は、照射野規制部230をX線検出部220の移動方向と同方向に移動させる。ここでは、X線検出部側移動機構240は、走査方向移動機構242と、傾斜支持部250とを2組備えている。
一組の走査方向移動機構242と傾斜支持部250とは、上記したように、X線検出部220を傾斜可能かつ移動可能に支持している。
他の組の走査方向移動機構242と傾斜支持部250とは、セファロベース202の他側に設けられており、上記と同様構成によって、照射野規制部230を傾斜可能かつ移動可能に支持している。
このため、他の組の走査方向移動機構242と傾斜支持部250とによって、照射野規制部230を、X線検出部220と同様に傾斜させた状態で、当該X線検出部220と同方向に移動させることができる。
<X線撮影装置のブロック図について>
図16はX線撮影装置110のブロック図であり、図17は本体制御部150の電気的構成を示すブロック図であり、図18は画像処理装置180の電気的構成を示すブロック図である。
本体制御部150は、撮影本体部120のX線撮影動作を制御するものであり、プロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)150a、RAM(Random Access Memory)150b、記憶部150c、入出力部150d、操作入力部150e、画像出力部150f等が、バスライン150gを介して相互接続されたコンピュータによって構成されている(図17参照)。記憶部150cは、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されており、操作パネル装置158等を通じてX線撮影に関する諸指示を受付けると共に、当該諸指示に従って撮影本体部がX線撮影を行う際の動作を制御する撮影プログラム151等を格納している。撮影プログラム151には、セファロ撮影を行うためのセファロ撮影プログラム151aが含まれている。
RAM150bは、CPU150aが所定の処理を行う際の作業領域として供される。入出力部150dは、本撮影本体部120のX線検出部側移動機構240に含まれるモータ、前記X線発生器126a及び前記X線検出器128、222、X線ビーム形状調整部127等と接続されている。また、操作入力部150eは操作パネル装置158のタッチ検出部に接続されており、画像出力部150fは操作パネル装置158の表示部に接続されている。
この本体制御部150では、撮影プログラム151に記述された手順及び操作パネル装置158等を通じて受付けられた指示に従って、CPU150aが演算処理を行うことにより、操作パネル装置158における表示を制御しつつ、撮影に関する諸設定を受付ける。また、撮影プログラム151に記述された手順及び受付けられた撮影に関する諸指示に従って、CPU150aが演算処理を行うことにより、X線検出部側移動機構240、X線発生器126a及びX線検出器128、222、X線ビーム形状調整部127等を駆動制御する。特に、本実施形態においては、本体制御部150が側面頭部セファロ撮影中においてX線検出部側移動機構240、X線ビーム形状調整部127を制御することによって、X線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域の下側縁の頭部後方側が、当該下側縁の頭部前方側よりも高く配置されるようにする。そして、X線検出器222で検出されたデータに基づいて、X線CT画像を生成することができる。
図16に示すように、本体制御部150は、支持部駆動制御部152a、モード設定受付部152b、傾斜角度設定部152c、傾斜制御部152d、走査方向制御部152e、X線検出部駆動制御部152f、X線ビーム形状制御部152g、X線発生器駆動制御部152hを備えている。これらの各制御部は、CPU150aが撮影プログラム151に従って動作することにより実現される機能である。なお、これらの機能のうち一部又は全部を、専用の回路などで構成することにより、ハードウェア的に実現してもよい。また、上記各機能は、複数のコンピュータによって分散されて処理されてもよい。
支持部駆動制御部152aは、旋回駆動機構130を制御することにより、旋回支持部124の旋回を制御する。
モード設定受付部152bは、操作パネル装置158を通じてセファロ撮影、特に、側面頭部セファロ撮影モードとする設定を受付ける。すなわち、本X線撮影装置110は、X線CT撮影、パノラマ撮影、セファロ撮影を実行可能な装置であるため、いずれの撮影を行うかのモード設定を受付ける。また、セファロ撮影については、正面頭部セファロ撮影と、側面頭部セファロ撮影とが想定されるため、いずれのセファロ撮影を行うかのモード設定を受付ける。
傾斜角度設定部152cは、側面頭部セファロ撮影を行う際に、照射領域の下側縁の傾斜角度(ここでは、走査方向移動機構242の傾斜角度)の設定を行う。傾斜角度の設定は、いくつかの構成が考えられる。例えば、操作パネル装置158に角度入力画面を表示させる等して当該操作パネル装置158に傾斜角度設定操作部158aとしての機能を持たせることが考えられる。この場合、操作者が操作パネル装置158を通じて傾斜角度を操作入力すると、その操作入力に応じた傾斜角度が設定される。また、身長、体重等の体格に関する情報と傾斜角度とを対応付けた参照テーブルが事前に登録されており、被写体である頭部Pを有する患者の体格情報が設定されると、当該体格情報から参照テーブルを参照して傾斜角度を設定するようにしてもよい。また、撮影を行おうとする患者に適した傾斜角度が過去の側面頭部セファロ撮影時等において判明しており、その傾斜角度が患者の履歴情報として登録されている場合、当該履歴情報を参照して傾斜角度を設定してもよい。また、過去に撮影された患者の側面頭部セファロ画像又は側面頭部セファロ画像が存在する場合、当該画像から下顎底又は顎下ラインの境界を画像認識し、その境界の傾斜角度によって傾斜角度を設定してもよい。傾斜角度は、患者の体格等に拘らず、予め一定の値として設定されていてもよい。
傾斜制御部152dは、傾斜角度設定部152cで設定された傾斜角度に応じて傾斜支持部250の動作を制御する。
走査方向制御部152eは、走査方向移動機構242によるX線検出部220及び照射野規制部230の走査方向の移動を制御する。これらの移動速度は、体格に拘らず一定であってもよいし、体格に応じて変更されてもよい。
X線検出部駆動制御部152fは、X線検出器128のオンオフ制御、出力信号読出等を行う。
X線ビーム形状制御部152gは、X線ビーム形状調整部127を制御し、開口127Eの形状調整、開口127Eの位置制御等を行う。特に、セファロ撮影中において、X線の照射先が頭部Pを走査するように、かつ、走査方向に移動するにつれてX線の照射先が上方に移動するように、開口127Eの位置を制御する。
X線発生器駆動制御部152hは、X線発生器126aの管電圧、管電圧の制御、オンオフ制御等を行う。
また、本体制御部150は、上記各処理を実行する際、操作パネル装置158における表示内容を制御すると共に、操作パネル装置158に対するタッチ操作を受付ける。特に、操作パネル装置158を通じて傾斜角度の設定操作を受付けることとした場合、操作パネル装置158は、傾斜角度設定操作部158aとして機能することができる。
本体制御部150は、通信I/F(インターフェース)154を介して画像処理装置180と通信可能に接続されている。
画像処理装置180は、コンピュータ又はワークステーション等により構成される。画像処理装置180は、画像処理部182としての機能を実行可能な制御部181を備えている。
制御部181は、各種演算処理を行うプロセッサの一例としてのCPU181a、RAM(Random Access Memory)181b、記憶部181c、通信I/F185、操作入力部181e、画像出力部181f等が、バスライン181gを介して相互接続されたコンピュータによって構成されている(図18参照)。記憶部181cは、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されており、X線検出器128、222からの出力に基づいてX線撮影画像(特に、側面頭部セファロ画像)を生成する画像処理プログラム182pを格納している。画像処理プログラム182pは、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域の下側縁の傾斜角度θ及びX線検出器222の出力に基づいて、頭部Pの下顎底が水平方向に対して傾斜した状態で写り込んだ側面頭部セファロ画像を生成する処理を実行する。
記憶部181cには、生成されたX線撮影画像等を記憶する。上記画像処理部182は、制御部181のCPU181aが画像処理プログラム182pに従って動作することにより実現される機能である。
制御部181には、画像出力部181fを介して各種情報を示す画像を表示する表示部184aが接続され、操作入力部181eを介して操作者が操作入力を行う操作部184bが接続されている。また、画像処理装置180は、通信I/F185を介して本体制御部150に情報通信可能に接続されている。
<動作について>
X線撮影装置110の動作について、図19を参照して、側面頭部セファロ撮影動作を中心に説明する。
まず、操作パネル装置158等を通じて操作者による撮影モードの設定が受付けられる。撮影モードは、パノラマ撮影モード、セファロ撮影モード、CT撮影モードのいずれかである。CT撮影モードの設定が受付けられると、ステップS9に進み、CT撮影処理が実行され、パノラマ撮影モードの設定が受付けられると、ステップS10に進み、パノラマ撮影処理が実行される。セファロ撮影モードの設定が受付けられると、ステップS2に進む。
ステップS2では、セファロ撮影を行うモードであることが決定される。この場合、旋回支持部124及び筐体124aがセファロ撮影を行うのに適した状態となるように旋回される(図8参照)。
次ステップS3では、操作パネル装置158等を通じて操作者によるセファロ方向の設定が受付けられる。セファロ方向としては、頭部Pを側面から撮影する方向(側面頭部セファロ)と、頭部Pを正面から撮影する方向(正面頭部セファロ)とが含まれる。セファロ方向としては、頭部Pを正面から撮影する方向(正面頭部セファロ)の設定が受付けられると、ステップS11に進み、正面頭部セファロ撮影処理が実行される。
正面頭部セファロ撮影処理は、走査方向移動機構242を水平姿勢にした状態で実行される(図9〜図11参照)。ロッドベース215をセファロベース202に対して電動駆動で回動する構成とした場合は、頭部Pが−Y側を向くようにロッドベース215を回動させる。走査方向移動機構242を水平姿勢にした状態では、X線検出器222のX線検出面222aの延在方向は鉛直方向に沿った姿勢であり、この姿勢のまま、X線検出部220が水平移動して正面頭部セファロ撮影処理を実行する。X線発生器126aから照射されるX線は、X線ビーム形状調整部127及び照射野規制部230により、X線検出面222aの移動位置に追従して当該X線検出面222aに照射されるように、照射範囲及び照射位置が調整される。この点において、正面頭部セファロ撮影処理は、一般的な正面頭部セファロ撮影処理と同様とすることができる。走査方向移動機構242は、傾斜支持部250によって水平姿勢と傾斜姿勢とで姿勢変更可能であり、また、X線発生器126aから照射されるX線は、X線ビーム形状調整部127及び照射野規制部230により、照射範囲及び照射位置を調整可能であるため、上記正面頭部セファロ撮影及び側面頭部セファロ撮影の両方を実行できる。
照射領域の下側縁の頭部後方側が頭部前方側よりも高く配置されるセファロ撮影を傾斜セファロ撮影と呼ぶこととし、照射領域の下側縁の頭部後方側と頭部前方側が同じ高さに配置されるセファロ撮影を非傾斜セファロ撮影と呼ぶこととする。図2に示す段差HEbSを介した撮影も、総合的には頭部後方側が頭部前方側より高くなっており、これも傾斜セファロ撮影の一種と考えてよい。
図15に示すように、照射野規制部230は傾斜支持部250、走査方向移動機構242及び駆動用の機械的要素によって傾斜した状態で移動できる。この構成により、傾斜セファロ撮影においてセファロ撮影のために形成される照射領域は、下側縁の頭部後方側が、下側縁の頭部前方側よりも高く配置されたものとなる。このような配置の照射領域を実現する傾斜支持部250、走査方向移動機構242及び駆動用の機械的要素のような要素を傾斜照射機構と呼ぶこととする。
下側縁の頭部後方側が、下側縁の頭部前方側よりも高く配置された照射領域を形成する要素は、必ずしも動くことによって当該照射領域を形成するものとは限らない。例えば、後述のワンショットセファロ撮影に、傾斜した充分な広さの開口を備える照射野規制部を用いることも考えられ(第4実施形態参照)、この場合の照射野規制部も傾斜照射機構の一例である。照射野規制部は、X線発生器近くで照射野を規制する必要は無く、セファロ用の頭部保持具近くで照射野を規制してもよい。
セファロ撮影中において、動くことによって当該照射領域を形成する機構を駆動型傾斜照射機構と呼ぶこととし、動かなくとも当該照射領域を形成する機構を非駆動型傾斜照射機構と呼ぶこととする。
また、図15に示すように、X線検出部220は傾斜支持部250、走査方向移動機構242及び駆動用の機械的要素によって傾斜した状態で移動できる。この構成により、傾斜セファロ撮影においてセファロ撮影のために形成されるX線検出部220の存在領域は、下側縁の頭部後方側が、下側縁の頭部前方側よりも高く配置されたものとなる。このような配置の照射領域を実現する傾斜支持部250、走査方向移動機構242及び駆動用の機械的要素のような要素を傾斜検出機構と呼ぶこととする。
下側縁の頭部後方側が、下側縁の頭部前方側よりも高く配置された存在領域を形成する要素は、必ずしも動くことによって当該存在領域を形成するものとは限らない。例えば、後述のワンショットセファロ撮影に、充分な広さのX線検出面を備える傾斜したX線検出部を用いることも考えられ(第4実施形態参照)、この場合のX線検出部も傾斜検出機構の一例である。
セファロ撮影中に、動くことによって当該存在領域を形成する機構を駆動型傾斜検出機構と呼ぶこととし、動かなくとも当該存在領域を形成する機構を非駆動型傾斜検出機構と呼ぶこととする。
ステップS4では、側面頭部セファロ撮影を行うことが決定される。
次ステップS5では、傾斜角度θを設定する。上記したように、傾斜角度は、操作者による操作入力を受付けて設定されるものであってもよいし、身長、体重等の体格に基づいて設定されるものであってもよいし、過去の患者の履歴情報等に基づいて設定されるものであってもよいし、予め決定された一定値として設定されるものであってもよい。ここで設定される傾斜角度θとしては、水平方向に対して90度よりも小さく角度を想定することができる。
傾斜角度θはゼロでもよい。すなわち、被験者によっては肩PSが頭部Pに対して充分低いところにあり、セファロ撮影の履歴が少なく、将来的にも撮影回数が少なく見積もれるなどの事情があって、側面頭部セファロ撮影において非傾斜セファロ撮影を行っても差し支えない場合も考えうる。その場合は傾斜角度θをゼロと定めてもよい。
次ステップS6では、設定された傾斜角度に応じて傾斜支持部250を駆動し、走査方向移動機構242が水平方向に対して傾斜角度θ傾くようにする(図14参照)。
なお、走査方向移動機構242が手動で傾斜される場合には、ステップS6は、利用者によって走査されるステップとなる。この場合、ステップS5も省略され、代りにステップS5に続いて、走査方向移動機構242の傾斜角度を取得するステップが実行される。このステップは、例えば、走査方向移動機構242の傾きを検出するポテンショメータ等の角度センサを設けておき、当該角度センサからの出力に基づいて傾斜角度を取得するステップとすることができる。走査方向移動機構242の傾斜角度設定が物理構造的に1つのみである場合には、角度センサを設ける必要は無い。この場合、傾斜角度θは、予め決定された一定値として処理されればよい。
次ステップS7において、撮影開始指示を行う前に、操作者は、被写体である患者の頭部Pを頭部保持具210によって一定位置及び一定姿勢で保持する。ロッドベース215をセファロベース202に対して電動駆動で回動する構成とした場合は、頭部Pが−X側を向くようにロッドベース215を回動させる。この回動処理はステップS4の次に行ってもよい。
ステップS7において、操作者が操作パネル装置158等を利用して撮影開始指示を行う。
ステップS8では、X線照射制御、X線発生器側制御及びX線検出器側制御を行う。
X線照射制御には、側面頭部セファロ撮影を行うために、所定のタイミングでのX線発生器126aのオンオフ、管電圧、管電流等を制御することが含まれる。
X線発生器側制御は、X線発生器126aから照射されるX線が頭部Pを前後方向(X方向)に走査するように照射範囲及び位置を調整するように、X線ビーム形状調整部127を制御することが含まれる。
図21はX線ビーム形状調整部127による開口127Eの形状及び位置制御処理例を示す説明図である。図21の円Cは、X線ビーム形状調整部127に照射されるX線すなわち規制前のX線の範囲を示している。同図に示すように、X線ビーム形状調整部127は、上下方向に長いスリット状の開口127Eを形成するように、遮蔽部材127A、127B(図5及び図6参照)の位置を調整する。そして、側面頭部セファロ撮影が開始されると、スリット状の開口127Eを一定のスリット状の形状に保ったまま、頭部Pの前後方向(X方向)及び上下方向(Z方向)に移動させるように、遮蔽部材127A、127Bを移動させる。
開口127Eは、X線検出器222のX線検出面222aの移動跡を含む面に平行な面(XZ平面)において、頭部Pの後方側が頭部Pの前方側よりも高く配置されるように移動される。ここでは、開口127EをX方向に沿って頭部Pの前方から後方に移動させるのに伴って、開口127EをZ方向に沿って徐々に上方向に移動させる。
この際、設定された傾斜角度θとし、開口127Eの初期位置に対するX方向の移動量をXaとし、開口127Eの初期位置に対するZ方向の移動量をZaとすると、(tanθ=Za/Xa)を満たすように、開口127Eの位置を制御する。
X線検出器側制御としては、X線検出部220及び照射野規制部230を、頭部Pの前後方向(X方向)に移動させるように、走査方向移動機構242を制御することが含まれる。
初期位置では、X線検出部220及び照射野規制部230は、頭部Pに対して前方側に位置している。そして、各走査方向移動機構242を制御して、X線検出部220及び照射野規制部230を頭部Pの後方に向けて移動させる。ここで、X線検出部220を支持する走査方向移動機構242と、照射野規制部230を支持する走査方向移動機構242は、水平方向に対して傾斜角度θ傾いている。このため、X線検出部220及び照射野規制部230は、頭部Pの後方に向うに従って、徐々に上方に移動する(図14及び図15参照)。X線検出部220及び照射野規制部230の頭部Pの後方への移動速度は、開口127Eによって照射範囲及び位置が調整されたX線が、X線検出部220のX線検出面222a及び照射野規制部230のスリット232に照射し得る範囲に設定されている。
このため、X線発生器126aから照射されたX線が頭部Pを前方から後方に向けて走査する。この際、X線は、X線ビーム形状調整部127によって形状調整された後、照射野規制部230のスリット232によって頭部P近くでより細いスリット形状に調整される。そして、頭部Pを通ってX線検出面222aに入射する。
X線ビーム形状調整部127によって形状調整されたX線は、照射野規制部230に対しては上下方向に延在する細長い形状で入射する(図14及び図15の範囲F参照)。照射野規制部230のスリット232は、鉛直方向に対して傾斜角度θ傾いているため、範囲Fに入射したX線は、鉛直方向に対して傾斜角度θ傾くスリット状に調整された後、頭部Pを通過して、X線検出面222aに入射する。スリット232は、当該スリット232を通過したX線がX線検出面222a内に収って入射する程度の大きさに設定されている。X線検出面222aも鉛直方向に対して傾斜角度θ傾いているため、照射野規制部230のスリット232によって形状調整されたX線は、無駄なくX線検出面222aに入射することができる。開口127E、スリット232、X線検出面222aが同方向に同期移動するよう、円滑な制御がなされてもよい。
図22に頭部Pに対するX線の照射領域G及びX線検出面222aが通過する跡を含む面(XZ平面)におけるX線の照射領域Hを示す。検出位置において、X線はHの範囲の広がりがあるのであるが、被写体はそれよりX線発生器寄りに存するので、X線管の焦点からの広がりを考慮すると、被写体の映像として写る範囲はHの範囲よりも若干狭く、Gの範囲の広がりとなることを図22によって示している。
同図に示すように、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1は、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されている。
ここでは、照射領域Hの下側縁HEは、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
また、X線検出部220は、X線検出器222と、当該X線検出器222が組込まれた外装ケース224とを含んでいる。このX線検出部220を側面頭部X線撮影中に上記のように移動させることを想定すると、この場合のX線検出部220の存在領域Iは、下側縁IEが頭部Pの前方から後方に向けて上向き傾斜する方形状を描く(図15参照)。このため、当該下側縁IEの頭部後方側IE1が、下側縁IEの頭部前方側IE2よりも高く位置するように、X線検出部220がX線検出器側支持部によって支持されている。
ここでは、下側縁IEの頭部後方側IE1は、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
また、頭部保持具210によって保持される頭部P及び当該頭部Pを含む患者PWを基準とすると、上記下側縁IEは、患者PWの肩PS上を通過している(図15参照)。また、下側縁IEの最下端部IELは、頭部Pの前方側で肩PSの最上部(図15のラインL1の位置参照)よりも下方に配設される。患者PWは、標準的な成人の体型を基準として考える。
傾斜支持部250が走査方向移動機構242を水平姿勢と傾斜姿勢との間で傾斜可能に支持する構成をもって、X線検出器側支持部が、X線検出部220の存在領域Jの下側縁JEが水平方向に沿う水平状態(図11参照)と、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜する傾斜状態(図15参照)との間で、状態変更可能に前記X線検出部を支持する構成とされる。なお、傾斜支持部250は、走査方向移動機構242を複数の傾斜角度で傾斜させることができるため、この構成は、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜する角度が異なる複数の傾斜状態の間でも状態変更可能にX線検出部220を支持する構成であると捉えることができる。
なお、側面頭部X線撮影中において、照射野規制部230も上記X線検出部220と同様に移動する。照射野規制部230の下端部は、X線検出部220の下端部と同程度の高さ位置又はこれよりも上方の高さ位置に存在する。このため、側面頭部X線撮影中において、照射野規制部230の存在領域Kの下側縁KEも、上記X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEと平行で、当該下側縁IEと同じ位置又はこれよりも上方に位置する(図15参照)。
<側面頭部セファロ画像の生成について>
画像処理装置180における、X線検出器222の出力に基づく側面頭部セファロ画像の生成処理について、図20を参照して説明する。
上記X線検出器222から出力されたX線撮影データは、画像処理装置180に送信される。上記側面頭部セファロ撮影時における傾斜角度θも画像処理装置180に送信される。
ステップS21において、X線撮影データに基づいて初期側面頭部セファロ画像260が生成される。X線撮影データは、X線検出器222が傾斜角度θで傾斜する方向に走査することによって得られるデータであるため、初期側面頭部セファロ画像260は図23に示すように、方形状の画像領域内において、頭部骨格Bが角度θ傾いた状態となっている。初期側面頭部セファロ画像において、頭部骨格Bの下顎底Baは、画像領域の下側縁Eに沿っており、下顎Bbが当該下側縁Eの内側で全体的に写り込んだ状態となっている。
次ステップS22において、傾斜角度θに基づいて、初期側面頭部セファロ画像260を角度θ分傾けて、側面頭部セファロ画像262を生成する。図24に示すように、側面頭部セファロ画像262は、液晶表示装置等の表示画面において、全体的に角度θ傾いた状態で表示され、したがって、表示画面において、頭部骨格Bの下顎底Baが水平方向に対して傾斜した状態で写り込んでいる。このため、頭部保持具210によって保持された頭部Pの姿勢に応じた状態で、頭部骨格Bが写り込んだ側面頭部セファロ画像262を生成することができる。
図25に示すように、液晶表示装置等の表示画面において、方形状の表示領域264内に側面頭部セファロ画像262が映り込んだ修正側面頭部セファロ画像262Aが生成されて表示される。修正側面頭部セファロ画像262Aにおいて、当該方形状の表示領域264と側面頭部セファロ画像262との間の領域266が背景色(例えば黒)等で埋められていてもよい。
<まとめ>
以上のように構成されたX線撮影装置110によると、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1が、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されている。このため、下側縁HEの頭部後方側HE1を脊椎の上方又は甲状腺部位の上方に設定することで、不必要な部位へのX線照射を抑制しつつX線撮影を行える。また、下側縁HEの頭部前方側HE2を下顎Bbの下顎底Baより下方に設定することによって下顎の画像に欠落部分を生じさせない等で、側面頭部セファロ画像として必要な部位をX線撮影することができる。
また、上記照射領域Hの下側縁HEを水平方向に対して傾斜させることで、当該下側縁HEを下顎底Baに沿って傾斜させ易い。これにより、側面頭部セファロ画像として必要な下顎Bb部位等を含み、かつ、不必要部位へのX線照射を可及的に抑制して側面頭部セファロ撮影を行うことができる。
また、X線検出部220は、X線検出器222が含まれた外装ケース224を含んでおり、X線検出部220は、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEの頭部後方側IE1が、下側縁IEの頭部前方側IE2よりも高く位置するように、支持されている。
このため、下顎Bbについては、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域のうち下寄りの部分でX線撮影を行える。また、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEのうち最下端部よりも上側に位置する部分を患者PWの肩PSの上側に配置することで、患者PWの肩PSとX線検出部220との接触を回避することができる。これにより、患者PWの肩PSとX線検出部220との接触を回避しつつ、下顎Bbを含む撮影領域をなるべく全体的に撮影できる。
特に、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜していれば、当該IEを下顎底Baに沿って移動させ易くなり、下側縁が下顎底Baに沿った側面頭部セファロ画像を撮像し易い。
頭部Pを保持する頭部保持具210を備える構成を前提とすると、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として頭部Pの前方に向けて下向き傾斜するようにすると、頭部保持具210によって保持される頭部Pの下顎Bbを撮影するのに適する。
上記傾斜構成を前提とすると、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが、頭部Pが頭部保持具210によって保持される患者PWの肩PS上を通過し、かつ、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEの最下端部が、頭部Pの前方側で肩PSの最上部よりも下方に配設されるようにすると、X線検出部220と肩PSとの接触を回避しつつ、下顎Bbを撮影するのに適する。
例えば、図26に示すように、患者PW1の肩PS1が通常体格よりも上方に位置し、顎PC1の先端部が通常よりも下方に位置しているとする。この場合に、X線検出部220を水平に移動させて、側面頭部セファロ撮影を行おうとすると、X線検出部220の存在領域の下側縁は、顎PC1の先端部よりも下側の水平ラインL2上を移動させる必要が生じる。しかしながら、この場合、X線検出部220が頭部Pの後方に向けて移動する途中で、肩PS1に接触してしまう。
上記のように、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEの頭部後方側IE1が、下側縁IEの頭部前方側IE2よりも高く位置するように支持することで、X線検出部220が顎PC1を撮像可能な条件で移動する際に、肩PSに接触することを抑制できる。
また、上記のような照射領域Hに照射されるX線を検出するための構成として、X線検出器222が長尺状のX線検出面222aを有し、X線検出部側移動機構240によって、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域(移動領域)Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜するように、X線検出面222aの延在方向に対して交差する方向にX線検出部220を移動させるため、長尺状のX線検出面222aを有するX線検出器222によって、側面頭部セファロ画像を得ることができる。長尺状のX線検出面222aを有するX線検出器222は、上記照射領域H全体に広がるX線検出面を有するX線検出器と比較して安価である。
また、照射野規制部230により頭部P近くでX線の照射範囲を規制することができ、被曝量低減により貢献する。
また、X線検出部側移動機構240は、X線検出部220を走査移動させる走査方向移動機構242と、走査方向移動機構242を傾斜させる傾斜支持部250とを含む。このため、走査方向移動機構242を水平方向に傾けた姿勢で支持することで、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域(移動領域)Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜するようにすることができる。
また、走査方向移動機構242の傾斜角度を調整することで、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEは、水平状態と傾斜状態との間で状態変更可能とされている。このため、水平状態では、頭部を正面から撮像する正面頭部セファロ撮影を実行するのに適し、傾斜状態では、側面頭部セファロ撮影等に適する。
なお、正面頭部セファロ撮影を実行する際には、走査方向移動機構242を水平姿勢に保てばよい。また、X線ビーム形状調整部127に形成された開口127Eについては、上下方向(Z方向)において一定位置に保ちつつ、頭部Pの前後方向(X方向)に移動させればよい。
また、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜する角度が異なる複数の傾斜状態の間でも状態変更可能とされている。これは、傾斜支持部250による走査方向移動機構242の傾斜角度を調整することで実現される。
このため、走査方向移動機構242の延在方向を下顎底Baに沿った状態にする等して、患者の体格等に応じて、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜する角度を調整することができる。
また、側面頭部セファロ画像262において、頭部Pの下顎底Baが水平方向に対して傾斜状態で写り込んでいるため、頭部Pが通常姿勢又はそれに近い姿勢で写り込んだ側面頭部セファロ画像262を容易に観察することができる。
また、側面頭部セファロ画像262において、その下側縁が下顎底Baに沿っており、下顎はその内側に写り込んでいる。かかる側面頭部セファロ画像262は、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に対して傾斜する条件下で側面頭部セファロ撮影を行うことによって、容易に得ることができる。
<変形例>
第2実施形態を前提として各種変形例について説明する。
<変形例1>
図27は変形例1に係るセファロ撮影ユニット200Aを示す概略側面図であり、図28はセファロ撮影ユニット200Aを示す概略正面図である。
セファロ撮影ユニット200に対応するセファロ撮影ユニット200Aは、X線検出部側移動機構240に対応するX線検出部側移動機構240Aを備えており、このX線検出部側移動機構240Aは、走査方向移動機構242Aと、傾斜支持部250Aとを備えている。
傾斜支持部250Aは、X線検出部220の存在領域Iの下側縁IEが水平方向に沿う水平状態と、当該下側縁IEが水平方向に対して傾斜する傾斜状態との間で、状態変更可能にX線検出部220を支持している。ここでは、走査方向移動機構242Aは2つ設けられ、一方の走査方向移動機構242AはX線検出部220を移動可能に支持し、他方の走査方向移動機構242Aは、照射野規制部230を移動可能に支持している。
より具体的には、セファロ撮影用アーム143の先端部に傾斜支持部250Aを介してセファロベース202に対応するセファロベース202Aが傾斜可能に支持されている。傾斜支持部250Aとしては、傾斜支持部250と同様に、モータ252Aを含み、当該モータ252Aの駆動力によってセファロベース202Aを水平姿勢と傾斜姿勢との間で姿勢変更駆動する構成を採用することができる。傾斜支持部には、モータ等の駆動機構が組込まれず、手動によって姿勢変更される構成であってもよい。
セファロベース202Aの両側に一対の走査方向移動機構242Aが固定されており、一対の走査方向移動機構242Aの一方にX線検出部220が垂下状に支持され、他方に照射野規制部230が垂下状に支持されている。走査方向移動機構242Aは、上記走査方向移動機構242と同様構成を採用することができる。
この変形例1では、セファロベース202Aを姿勢変更することで、一対の走査方向移動機構242Aを一括して姿勢変更することができる。
頭部保持具210がX線検出部側移動機構240Aに対して姿勢変更可能に支持されている。ここでは、セファロベース202Aの中央部から姿勢変更支持部211Aを介して頭部保持具210が垂下状に支持されている。姿勢変更支持部211Aは、頭部保持具210を上記傾斜支持部250Aの支持軸と同一方向に沿う軸周りに姿勢変更可能に支持する。ここでは、姿勢変更支持部211Aは、セファロベース202Aの中央部から垂設された固定片203Aと頭部保持具210を構成する要素であるロッドベース215から上方に延びる支持片212Aとにシャフト213Aが挿通されており、そのシャフト213Aを中心にして頭部保持具210が姿勢変更できるようになっている。固定片203Aはセファロベース202Aに対して回動可能となっていて、頭部Pの向きを変えられるようになっている。
この変形例によると、上記第2実施形態による作用効果に加えて、セファロベース202Aを姿勢変更することによって、上記傾斜支持部250によりX線検出器222及び照射野規制部230の両方を姿勢変更することができる。そして、頭部保持具210については、セファロベース202Aに対して姿勢変更させて、頭部Pを鉛直姿勢で保持できるように、セファロベース202Aに対して傾ける(図29参照)。そして、側面頭部セファロ撮影を実行することができる。つまり、X線検出器222を水平姿勢にしても傾斜姿勢にしても、また、これらの姿勢変更をセファロベース202A全体として行っても、頭部保持具210をセファロ撮影に適した所定の姿勢に保ち易い。
なお、上記シャフト213Aに回転駆動力を伝達するモータ等を設け、頭部保持具210を当該モータ等の駆動によって傾斜駆動させるようにしてもよい。
このように頭部保持具210をX線検出部側移動機構240Aに対して姿勢変更可能に支持する構成は、後述する第4実施形態に対しても適用することができる。
<変形例2>
図30は変形例2に係るセファロ撮影ユニット200Bを示す概略正面図であり、図31はセファロ撮影ユニット200Bを示す概略平面図であり、図32はセファロ撮影ユニット200Bを示す概略側面図である。
上記実施形態では、X線、X線検出部220及び照射野規制部230の延在方向を水平方向に近い状態で傾斜させて頭部Pの前後方向に走査する構成であったが、変形例2のように、X線、X線検出部220、照射野規制部230の延在方向を上下方向に近い状態で傾斜させて頭部Pの上下方向に走査してもよい。
すなわち、セファロ撮影ユニット200に対応するセファロ撮影ユニット200Bは、X線検出部側移動機構240に対応するX線検出部側移動機構240Bを備えており、X線検出部側移動機構240Bは、走査方向移動機構242と、傾斜支持部250Bとを含む。
変形例2に係るセファロ撮影ユニット200Bにて特徴的なのは、長尺状のX線検出器222、X線検出面222aの延在方向が非傾斜セファロ撮影において水平方向であることである。これに合わせてスリット232も水平方向に長く延在する。非傾斜セファロ撮影におけるX線検出器222、照射野規制部230の移動(走査)方向は、垂直方向である。傾斜セファロ撮影においては、この走査方向を垂直方向に対して角度θ分傾斜させる(図32、図33参照)。
走査方向移動機構242は、上記第2実施形態で説明した走査方向移動機構242と設置の方向は異なるが同様の機械的構成である。
傾斜支持部250Bは、走査方向移動機構242を鉛直方向に対して傾けた姿勢で支持することでX線検出部220を傾斜支持することが可能となっている。
すなわち、傾斜支持部250Bとしては、走査方向移動機構242を傾斜可能に支持する構成として上記傾斜支持部250と同様構成を採用することができるが、当該走査方向移動機構242の支持姿勢が異なっている。
より具体的には、傾斜支持部250Bは、セファロベース202に対して頭部Pの後方側部分に固定されている。傾斜支持部250Bの駆動シャフト253Bの端部には、走査方向移動機構242のうち頭部Pの後方側の端部が連結されている。そして、モータ等の駆動によって駆動シャフト253Bを回転させることによって、走査方向移動機構242を鉛直姿勢と当該鉛直姿勢から傾けた姿勢との間で姿勢変更可能に支持する。
ここでは、上記実施形態と同様に、セファロベース202の両側に傾斜支持部250B及び走査方向移動機構242が設けられている。2つの走査方向移動機構242の一方に当該走査方向移動機構242と直交する姿勢でX線検出部220が移動可能に支持され、他方に照射野規制部230が当該走査方向移動機構242と直交する姿勢で移動可能に支持されている。
もちろん、上記実施形態で説明したように、走査方向移動機構242は、手動によって姿勢変更される構成であってもよい。
走査方向移動機構242が鉛直姿勢とされた状態では、X線検出面222aが走査方向移動機構242の延在方向に対して直交する水平姿勢で、X線検出部220が鉛直方向に移動可能とされる。同様に、照射野規制部230は、その延在方向を走査方向移動機構242の延在方向に対して直交させた水平姿勢で、鉛直方向に移動可能とされる(図32参照)。
この際のX線検出器222のX線検出面222aの移動軌跡は、横縁が水平方向に沿い、縦縁が鉛直方向に沿う方形状となる。このため、正面頭部セファロ撮影等に適する。
また、走査方向移動機構242を鉛直方向に対して角度θ傾けると、X線検出面222aが水平方向に対して角度θ傾いた姿勢で、X線検出部220が走査方向移動機構242に対して移動可能に支持されている(図33及び図34参照)。この状態で、走査方向移動機構242の駆動によってX線検出部220を走査方向移動機構242の延在方向に沿って移動させるとする。この際のX線検出部220の移動跡の下側縁は、水平方向に対して角度θ傾く。同様に、X線検出面222aの移動軌跡の下側縁は、水平方向に対して角度θ傾く。なお、X線発生器126aから照射されX線ビーム形状調整部127によって形状調整されたX線は、水平方向に沿うスリット状となって、照射野規制部230に達する。ここで、X線が照射野規制部230に達する領域F(図33及び図34参照)は、スリット232よりも大きく、従って、X線は、角度θ傾くスリット232によって角度θ傾斜するスリット状に規制されて頭部Pを通過してX線検出器222のX線検出面222aに入射する。
このため、側面頭部セファロ撮影中における、X線検出部220の移動跡の下側縁及びX線検出面222aの移動軌跡の下側縁を、上記第2実施形態と同様に設定することができる。
なお、この変形例の場合、X線ビーム形状調整部127による開口127Eの形状及び位置制御処理は、照射野規制部230のスリット232及びX線検出面222aの動きに追従させて、図35に示すようにするとよい。
すなわち、X線ビーム形状調整部127は、水平方向(頭部Pの前後方向)に長いスリット状の開口127Eを形成するように、遮蔽部材127A、127B(図5及び図6参照)の位置を調整する。そして、側面頭部セファロ撮影が開始されると、スリット状の開口127Eを一定のスリット状の形状に保ったまま、頭部Pの上下方向(Z方向)及び前後方向(X方向)に移動させるように、遮蔽部材127A、127Bを移動させる。
ここでは、開口127EをZ方向に沿って頭部Pの下方から上方に移動させるのに伴って、開口127EをZ方向に沿って徐々に頭部Pの前方向に移動させる。この動きは、上記照射野規制部230のスリット232の移動に追従した動きである。
走査方向移動機構242の傾斜角度θとし、開口127Eの初期位置に対するZ方向の移動量をZbとし、開口127Eの初期位置に対するX方向の移動量をXbとすると、(tanθ=Xb/Zb)を満たすように、開口127Eの位置を制御する。
これにより、X線、X線検出部220及び照射野規制部230の延在方向及び走査方向が異なる点を除いて、上記第2実施形態と同様に(図22参照)、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1が、下側縁の頭部前方側HE2よりも高く配置されるように、X線撮影を行うことが可能となり(図34参照)、当該第2実施形態と同様の作用効果を得ることが可能となる。また、側面頭部セファロ撮影中においてX線検出部220の存在領域も上記第2実施形態と同様となる。
なお、X線検出部220は下方から上方に移動させた方が、肩への当たりが無いことが確認できてからのX線検出部220の移動となるので、肩への当りを効果的に抑制でき好適である。
なお、正面頭部セファロ撮影を行う場合には、走査方向移動機構242を鉛直姿勢とし、X線ビーム形状調整部127によるX線の走査方向を上下方向とする。この場合のX線検出器222におけるX線の照射領域Hは、図32に示すように、上下辺が水平な方形状となり、正面頭部セファロ撮影を行うのに適する。
<その他の変形例>
本実施形態及びその変形例においては、X線ビーム形状調整部127における開口127Eの形状及び位置制御と、照射野規制部230の制御によって、X線の照射領域Hの下側縁HEを調整している。もっとも、照射野規制部230を省略し、X線ビーム形状調整部127における開口127Eの形状及び位置を制御することによっても、X線の照射領域Hの下側縁HEの上記のような構成に調整することができる。この場合において、X線ビーム形状調整部127における開口127Eの延在方向を傾ける構成としては、第4実施形態で説明するように、X線ビーム形状調整部127の遮蔽部材127A、127Bの全体を傾ける構成を採用することができる。また、X線ビーム形状調整部127を省略し、照射野規制部230の位置を制御することによっても、X線の照射領域Hの下側縁HEの上記のような構成に調整することができる。この場合、照射野規制部230をより大きくして、X線発生器126aから照射されるX線の範囲をより大きな範囲で制限できるようにしてもよい。
{第3実施形態}
第3実施形態に係るX線撮影装置310について説明する。なお、本実施の形態の説明において、第2実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図36はセファロ撮影ユニット200に対応するセファロ撮影ユニット300を示す概略正面図であり、図37はセファロ撮影ユニット300を示す概略側面図である。
上記第2実施形態では、走査方向移動機構242自体を傾け、X線検出部220及び照射野規制部230を走査方向移動機構242の傾斜方向に沿って移動させる構成について説明したが、第3実施形態では、X線検出部220及び照射野規制部230を昇降可能に支持し、X線検出部220及び照射野規制部230を頭部Pの前後方向に移動させるときにX線検出部220及び照射野規制部230を昇降移動させている。前後方向の移動と昇降移動とを同期させてもよい。これにより、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域の下側縁の頭部後方側が、前記下側縁の頭部前方側よりも高く配置される。また、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の存在領域の下側縁の頭部後方側が、前記下側縁の頭部前方側よりも高く位置するようにしている。
より具体的には、図36及び図37に示すように、セファロ撮影ユニット300は、X線検出部側移動機構240に対応するX線検出部側移動機構340を備えており、このX線検出部側移動機構340は、走査方向移動機構342と、傾斜用移動機構351とを備える。
走査方向移動機構342は、上記第2実施形態で説明した走査方向移動機構242と同様の構成を備える。走査方向移動機構342は、セファロベース202の側部に頭部Pの前後方向(水平方向)に沿って支持されている。この走査方向移動機構342によって、可動部343が頭部Pの前後方向に沿って移動駆動可能に支持されている。
可動部343に、傾斜用移動機構351を介してX線検出部220が移動可能に支持されている。X線検出部220の支持姿勢は、当該X線検出部220に組込まれたX線検出器222のX線検出面222aの延在方向が走査方向移動機構342の延在方向に対して直交する一定姿勢である。このため、走査方向移動機構342は、X線検出部220をX線検出面222aの延在方向に対して直交する方向に往復移動させる。
傾斜用移動機構351は、走査方向移動機構342によるX線検出部220の移動と同期してX線検出部220をX線検出面222aの延在方向に沿った方向に移動させる。
図38は傾斜用移動機構351を示す概略斜視図である。図36〜図38に示すように、傾斜用移動機構351は、昇降駆動部352と、昇降駆動シャフト353と、ガイドシャフト354とを備える。
昇降駆動部352は、モータ等であり、上記可動部343に固定されている。昇降駆動部352の昇降駆動シャフト353は、可動部343から走査方向移動機構342の延在方向に対して直交する下向けに突出している。この昇降駆動シャフト353にはねじ溝が形成されている。また、X線検出部220の外装ケース224には、昇降駆動シャフト353に螺合可能なネジ孔を有するねじ部325が形成されている。そして、昇降駆動シャフト353が昇降駆動部352の駆動によって正逆両方向に回転駆動されると、その回転方向及び回転速度に応じてX線検出部220が昇降駆動する。
また、ガイドシャフト354は、可動部343から走査方向移動機構342の延在方向に対して直交する下向けに突出している。X線検出部220の外装ケース224には、ガイドシャフト354が移動可能に挿通されるガイド孔326が形成されている。そして、ガイドシャフト354がガイド孔326に挿通された状態で、当該ガイドシャフト354によるガイド下、X線検出部220が昇降移動する。照射野規制部230についても上記と同様構成にて昇降駆動される。
セファロベース202の他側にも、上記と同様構成の走査方向移動機構342及び傾斜用移動機構351が設けられている。
セファロベース202の他側において、走査方向移動機構342及び傾斜用移動機構351によって、照射野規制部230が上記X線検出部220と同様に走査方向移動機構342の延在方向に沿って移動可能、かつ、その移動方向に対して直交する方向に移動可能に支持されている。
図39はX線撮影装置310のブロック図である。本X線撮影装置310のブロック図が第2実施形態のX線撮影装置110のブロック図(図16参照)と異なるのは、傾斜制御部152dが省略され、その代りに、本体制御部350が昇降方向制御部352dを備える点である。
昇降方向制御部352dは、傾斜角度設定部152cで設定された傾斜角度に応じて、X線検出部220が走査方向移動機構342によって走査移動されるのに同期して、傾斜用移動機構351によってX線検出部220を昇降移動させるように制御する。
X線撮影装置310の動作について、図40を参照して、側面頭部セファロ撮影動作を中心に説明する。
本X線撮影装置310の動作が、第2実施形態のX線撮影装置110の動作(図19参照)と異なるのは、ステップS6(走査方向移動機構を傾けるステップ)が省略されること、及び、ステップS8に代るステップS31において、X線照射制御、X線発生器側制御及びX線検出器側制御を行う際、当該X線検出器側制御として、走査方向移動機構342による走査方向の制御に加えて、傾斜用移動機構351による昇降方向の制御を行うことである。
すなわち、上記したようにステップS1〜S7が処理された後、ステップS31においては、上記第2実施形態で説明したのと同様に、X線照射制御及びX線発生器側制御がなされる。
X線検出器側制御としては、X線検出部220及び照射野規制部230を、頭部Pの前後方向(X方向)に移動させるように、走査方向移動機構342を制御すると共に、この移動に同期してX線検出部220及び照射野規制部230を、頭部Pの上下方向(Z方向)に昇降移動させるように、傾斜用移動機構351を制御することが含まれる。ステップS5において、傾斜角度θをゼロに設定する(X線検出部220及び照射野規制部230の上下の移動量がゼロである)場合もありうることは、第2実施形態のX線撮影装置110の動作の場合と同様である。
初期位置では、X線検出部220及び照射野規制部230は、頭部Pに対して前方側でかつ下寄りに位置している(図37参照)。そして、各走査方向移動機構342を制御して、X線検出部220及び照射野規制部230を頭部Pの後方に向けて移動させる。
これに同期して、傾斜用移動機構351を制御して、X線検出部220及び照射野規制部230を頭部Pの上方に向けて移動させる(図41及び図42参照)。
ここで、設定された傾斜角度θ、X線検出部220及び照射野規制部230の初期位置に対するX方向の移動量をXc、X線検出部220及び照射野規制部230の初期位置に対するZ方向の移動量をZcとすると、(tanθ=Zc/Xc)を満たすように、走査方向移動機構342による移動距離に対する傾斜用移動機構351による昇降距離を制御する。
なお、本実施形態においては、走査方向移動機構342による移動速度に対して、傾斜用移動機構351によるX線検出部220及び照射野規制部230の移動速度を変更すれば、上記複数段階又は可変の傾斜角度θに対応することが可能となる。
X線検出部220及び照射野規制部230は、頭部Pの後方に向うに従って、傾斜角度θで徐々に上方に移動する。X線検出部220及び照射野規制部230の頭部Pの後方への移動速度は、開口127Eによって照射範囲及び位置が調整されたX線が、X線検出部220のX線検出面222a及び照射野規制部230のスリット232に照射し得る範囲に設定されている。
このため、X線発生器126aから照射されたX線が頭部Pを前方から後方に向けて走査する。この際、X線は、X線ビーム形状調整部127によって形状調整された後、照射野規制部230のスリット232によって頭部P近くでより細いスリット形状に調整される。そして、頭部Pを通ってX線検出面222aに入射する。
X線ビーム形状調整部127によって形状調整されたX線は、照射野規制部230に対しては上下方向に延在する細長い形状で入射する(図42の範囲F参照)。X線は、照射野規制部230のスリット232によってさらに細いX線ビームとなるように規制された後、頭部Pを通過して、X線検出面222aに入射する。スリット232は、当該スリット232を通過したX線がX線検出面222a内に収って入射する程度の大きさに設定されている。X線検出面222aも鉛直方向に沿っているため、照射野規制部230のスリット232によって形状調整されたX線は、無駄なくX線検出面222aに入射することができる。
図43に頭部Pに対するX線の照射領域G及びX線検出面222aが通過する跡を含む面(XZ平面)におけるX線の照射領域Hを示す。
同図に示すように、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器222に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1は、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されている。
ここでは、照射領域Hの下側縁HEは、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
また、X線検出部220は、X線検出器222と、当該X線検出器222が組込まれた外装ケース224とを含んでいる。このX線検出部220を側面頭部X線撮影中に上記のように移動させることを想定すると、この場合のX線検出部220の存在領域Iは、下側縁IEが頭部Pの前方から後方に向けて上向き傾斜する平行四辺形状を描く(図42参照)。このため、当該下側縁IEの頭部後方側IE1が、下側縁IEの頭部前方側IE2よりも高く位置するように、X線検出部220がX線検出器側支持部によって支持されている。
ここでは、下側縁IEの頭部後方側IE1は、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
つまり、頭部Pに対するX線の照射領域G及びX線検出面222aが通過する跡を含む面(XZ平面)におけるX線の照射領域H、X線検出部220の存在領域Iの各下側縁部は、上記第2実施形態と同様に設定される。
頭部Pに対するX線の照射領域G及びX線検出面222aが通過する跡を含む面(XZ平面)におけるX線の照射領域H、X線検出部220の存在領域Iが上記第2実施形態と異なるのは、その前側縁及び後側縁が傾斜せず、鉛直方向に沿っている点である。
なお、正面頭部セファロ撮影を行う場合には、X線検出部220及び照射野規制部230を、頭部Pの前後方向(X方向)に移動させる際に、X線検出部220及び照射野規制部230を、頭部Pの上下方向(Z方向)において一定位置に保てばよい。また、X線ビーム形状調整部127に形成された開口127Eについては、頭部Pの上下方向(Z方向)において一定位置に保った状態で、頭部Pの前後方向(X方向)に移動させるとよい。
図44は画像処理装置180に対応する画像処理装置380における、X線検出器222の出力に基づく側面頭部セファロ画像の生成処理について、図20を参照して説明する。
上記X線検出器222から出力されたX線撮影データは、画像処理装置380に送信される。上記側面頭部セファロ撮影時における傾斜角度θも画像処理装置380に送信される。
ステップS41において、傾斜角度θに基づく画素データのズレ量が演算される。すなわち、上記のように走査してX線撮影を行うと、水平方向において隣合う画素が上記傾斜角度θ分、上下にずれる。傾斜角度θに基づいて、水平方向における画素データのズレ量を演算する。傾斜角度θが一定である場合等には、ズレ量は、当該傾斜角度θに対して予め設定された値であることもあり得る。
次ステップS42において、X線撮影データに基づいて、上記ズレ量を補正して側面頭部セファロ画像を生成する。側面頭部セファロ画像362は、図45に示すように、液晶表示装置等の表示画面において、下側縁が角度θ傾いた状態で表示され、したがって、表示画面において、頭部骨格Bの下顎底Baが水平方向に対して傾斜した状態で写り込んでいる。このため、頭部保持具210によって保持された頭部Pの姿勢に応じた状態で、頭部骨格Bが写り込んだ側面頭部セファロ画像362が写り込んだ修正側面頭部セファロ画像362Aを生成することができる。
液晶表示装置等の表示画面において、方形状の表示領域364内に修正側面頭部セファロ画像362Aを表示するに際して、側面頭部セファロ画像362が映り込み、当該方形状の表示領域364と側面頭部セファロ画像362との間の領域366が背景色(例えば黒)等で埋められていてもよい。
第2実施形態における変形例2のように、第3実施形態を長尺状のX線検出器222、X線検出面222aの延在方向が非傾斜セファロ撮影において水平方向であるように変形させられることは、容易に想起できるので、詳細説明は省略する。
<まとめ>
第3実施形態に係るX線撮影装置310によると、走査方向移動機構242を傾けることによる作用効果を除いて、上記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
つまり、走査方向移動機構342によるX線検出部220の移動と同期してX線検出部220をX線検出面222aの延在方向に沿った方向に移動させることで、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部220の移動領域の下側縁が水平方向に対して傾斜するようにすることができる。
特に、本実施形態においては、X線検出部220及び照射野規制部230を昇降移動させる構成であるため、X線検出部220及び照射野規制部230の存在領域、特に、下側縁の形状を自由に設定し易い。このため、例えば、X線を頭部Pの前方から後方に走査する途中で、X線ビーム形状調整部127によるX線の照射範囲を、段差を設けるように上下に変位させると共に、X線検出部220及び照射野規制部230を、段差を設けるように上下に昇降移動させることで、図2に示す下側縁HEbのように、頭部後方側HEb1が頭部前方側HEb2よりも高くなるように、段差HEbSを介して連続する構成とすることもできる。
{第4実施形態}
第4実施形態に係るX線撮影装置410について説明する。なお、本実施の形態の説明において、第2実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図46はセファロ撮影ユニット400を示す概略正面図であり、図47はセファロ撮影ユニット400を示す概略平面図であり、図48はセファロ撮影ユニット400を示す概略側面図であり、図48ではX線検出部420が傾いた状態を示している。
上記第2実施形態及び第3実施形態では、X線発生器126aから出射されるX線をX線ビーム形状調整部127によって形状調整して頭部Pを走査し、また、X線検出器側支持部によってX線検出部220を走査する例で説明した。第4実施形態では、X線発生器126aから出射されるX線が頭部Pの所望撮像領域全体を通過するようにし、かつ、X線検出部420のX線検出器422のX線検出面422aが当該X線の照射領域全体を検出できるようにし、1度のX線の照射によってセファロ撮影(ワンショットセファロ撮影)を可能する構成について説明する。すなわち、X線撮影装置410では、X線発生器126aから照射されるX線が方形状に広がって頭部Pのセファロ撮影部位を通過し、1つのタイミングでX線検出器422に入射する例について説明する。
すなわち、X線撮影装置410では、X線発生器126aとX線ビーム形状調整部426とを含むX線発生部126と、X線検出器422を含むX線検出部(セファロ撮影X線検出部)420とが対向して配設される。
X線発生器126aは上記第2実施形態において説明したものと同様構成である。
図49はX線ビーム形状調整部426を示す概略正面図であり、図50は図49のL−L線における概略断面図であり、図51はX線ビーム形状調整部426の開口127Eが傾いた状態を示す概略正面図である。
X線ビーム形状調整部426は、X線発生器126aに対してX線の照射方向側に設けられており、X線発生器126aから照射されるX線の形状を調整する。
X線ビーム形状調整部426は、X線ビーム形状調整機構427と、傾動機構430とを備える。
X線ビーム形状調整機構427の構成は、上記第2実施形態で説明したX線ビーム形状調整部127と同様構成であり、X線発生器126aから照射されるX線の形状を4枚の遮蔽部材127A、127Bによって形成される開口127Eによって方形状に調整する。4枚の遮蔽部材127A、127Bのそれぞれを、遮蔽部材駆動部127C、127Dによって開閉駆動することによって、開口127Eの幅及び高さが調整され、また、その位置も調整される。
傾動機構430は、X線ビーム形状調整機構427を、上記開口127Eの中央周りに傾ける機構である。
傾動機構430は、環状支持部432と、回転プレート434と、傾動駆動部436とを備える。
X線発生器126aの照射方向側にベース板431が設けられており、上記環状支持部432がベース板431に回転可能に支持されている。環状支持部432は、細長い部分が環状に連続する環状部材であり、その内部に後述するベース板431の開口431hよりも大きい環状の孔が形成されている。この回転支持構造としては、例えば、円環状の環状支持部432をベース板431の一方主面に沿って配設し、環状支持部432の周り3箇所以上(図49では4箇所)に、回転支持ローラ433を設けた構成を採用することができる。回転支持ローラ433は、ベース板431の一方主面に突出状態で回転可能に支持されている。そして、各回転支持ローラ433が環状支持部432に外周に複数箇所で接触することにより、環状支持部432を一定位置に支持している。この状態で、環状支持部432は、回転支持ローラ433を従動回転させつつ、一定位置の中心軸周りに回転する。なお、図49の吹出し内に描かれるように、回転支持ローラ433の軸方向中間部の円状胴部が環状支持部432の外周面に接触している。また、回転支持ローラ433の頭部分は、他の部分よりも太くなっており、この頭部分が環状支持部432に対してベース板431の反対側から接触し、環状支持部432をベース板431の一方主面側に接触させた状態に支持している。
回転プレート434は、環状支持部432に対してピン部材434bを介してベース板431の反対側に支持されており、環状支持部432と共に回転可能に支持されている。
なお、ベース板431及び回転プレート434のうち環状支持部432の中央側の領域には、X線ビーム形状調整機構427によって形状調整されたX線の通過を許容する開口431h、434hが形成されている。
回転プレート434の一側部には、弧状のラインに沿って部分歯車434Tが形成されている。部分歯車434Tが沿う弧状のラインの曲率中心は、環状支持部432の中心と一致している。
傾動駆動部436は、モータを含んでおり、その駆動シャフトに歯車436Tが固定されている。傾動駆動部436は、歯車436Tを部分歯車434Tに噛合わせた位置及び姿勢で、ブラケット等を介してベース板431に固定されている。そして、傾動駆動部436の駆動により歯車436Tを正逆両方向に回転させることで、回転プレート434が環状支持部432の中心軸周りに正逆両方向に回転駆動される。傾動駆動部436に含まれるモータは、ステッピングモータ等、回転方向及び回転量を制御可能モータであり、傾動駆動部436の駆動による回転方向及び回転量を制御することによって、回転プレート434の回転方向及び回転量(傾き角度)が制御される。
X線ビーム形状調整機構427は、遮蔽部材127A、127Bによって形成される開口127Eを、上記開口431h、434hに対応する位置に配設した状態で、回転プレート434に固定されている。このため、回転プレート434の回転方向及び回転量(傾き角度)を制御することによって、X線ビーム形状調整機構427に形成される開口127Eの傾斜の向き及び角度が制御される。
X線発生器126aから照射されるX線が、X線検出器422において方形状の照射領域に照射し、かつ、その下側縁が水平姿勢に沿う状態を保つようにしたい場合、開口127Eを方形状に形成すると共に、その開口127Eの下側縁を水平方向に沿わせるように、回転プレート434及びX線ビーム形状調整機構427の回転角度を制御する(図49参照)。
また、X線発生器126aから照射されるX線が、X線検出器422において方形状の照射領域に照射し、かつ、その下側縁が水平姿勢に対して傾斜角度θ傾く状態を保つようにしたい場合、開口127Eを方形状に形成すると共に、その開口127Eの下側縁を傾斜角度θ傾けるように、回転プレート434及びX線ビーム形状調整機構427の回転角度を制御する(図51参照)。これにより、X線ビーム形状調整部426のうちX線ビームの通過を規制する下側縁が、側面頭部X線規格撮影中において水平方向に対して傾斜するようにすることができる。
また、X線検出器側支持部440は、傾斜支持部450を備える(図46〜図49参照)。
セファロベース202の一側部に、傾斜支持部450を介してX線検出部420が傾動可能に支持されている。
ここでは、傾斜支持部450は、モータ452を含む。モータ452としては、回転方向及び回転量の調整が可能なモータ、例えば、ステッピングモータ等を用いることができる。モータ452は、セファロベース202の一側部に固定されている。モータ452の駆動シャフト453は、セファロベース202の一側部から外方に突出しており、駆動シャフト453の端部に支持ロッド456の延在方向の一端部が連結されている。
そして、モータ452の駆動によって駆動シャフト453を正方向又は逆方向に回転させることで、支持ロッド456を水平方向に対して傾けた姿勢で支持することができる。モータ452の回転方向及び回転量の調整により、支持ロッド456は、水平姿勢と当該水平姿勢から傾いた姿勢との間で姿勢変更可能とされる。特に、モータ452の回転量を微調整することで、支持ロッド456は、水平姿勢から傾いた複数度合の傾斜姿勢で姿勢変更可能とされる。
上記例では、駆動シャフト453が直接的に支持ロッド456に連結されているが、駆動シャフトと支持ロッドを回転可能に支持する支持シャフトとが複数のギヤを含むギヤ機構を介して連結されており、駆動シャフトの回転駆動力が当該ギヤ機構を介して支持シャフトに伝達されてもよい。その他、駆動シャフトの回転駆動力は、その他、プーリ機構等を介して支持シャフトに伝達されてもよい。
本実施形態では、傾斜支持部450は、モータの駆動によって支持ロッド456を傾斜駆動する構成であるが、傾斜支持部は、支持ロッド456又はX線検出部420に対する手動操作によって支持ロッド456を傾斜可能に支持する構成であってもよい。例えば、傾斜支持部450は、支持ロッド456を傾斜可能に支持するシャフトを有する構成であってもよい。支持ロッド456を一定傾斜姿勢に支持する構成としては、シャフト周りにラチェット構造を設けること、支持ロッド456にネジを設け、そのネジの締付、弛緩に応じてシャフトに対する支持ロッド456の傾斜止、傾斜許容状態を切替えること、シャフトから離れた位置で支持ロッド456を所定傾き姿勢で保持するロック構造等を設けることで実現可能である。
X線検出部420の上端部が直接的に上記駆動シャフト453に固定されていてもよい。
X線検出部420は、X線検出器422を含む。X線検出器422は、X線発生器126aから出射されたX線を検出するものであり、フラットパネルディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管(I. I.:Image Intensifier)等により構成される。X線検出器422は、方形状のX線検出面422aを有している。ここで、X線発生器126aから照射されたX線は、X線ビーム形状調整機構427によって方形状に調整された後、角錐状に広がって、X線検出面422aを含む平面に照射される。X線検出面422aは、このX線を照射領域と同じかこれよりも大きく設定されている。
X線検出器422は、樹脂等で形成された外装ケース424に組込まれている。外装ケース424は、X線検出器422のうち少なくとも下部及び背面側を覆っているので、X線検出部420の外形は、X線検出器422の外形よりも大きい。X線検出器422のX線検出面422aは、頭部保持具210側を向いている。
傾斜支持部450によるX線検出部420の支持姿勢を傾けることによって、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部420の下側縁が水平方向に対して傾斜する。
本実施形態では、照射野規制部は設けられていない。もっとも、X線検出部420に対して頭部保持具210の反対側の位置に照射野規制部が設けられてもよい。この場合、照射野規制部としては、セファロ撮影部位に向けてX線を通過させることができる程度の大きさの方形状の開口が形成されたものを用いるとよい。また、照射野規制部は、上記傾斜支持部450と同様構成によって、X線検出部420と同じ角度傾けることができる構成とするとよい。
X線検出部420に対して頭部保持具210の反対側の位置に照射野規制部を設け、上記傾斜支持部450と同様構成によって、X線検出部420と同じ角度傾けることができる構成とした場合に、後述の変形例3に示すように、X線検出部420を傾ける機構を省略し、一定姿勢で支持するようにして、照射野規制部を傾けることにより、照射野規制部で規制されたX線が方形状に広がると共に傾斜した状態で、X線検出器422のX線検出面422aに入射するようにしてもよい。
図52はX線撮影装置410のブロック図である。本X線撮影装置410のブロック図が第2実施形態のX線撮影装置110のブロック図(図16参照)と異なるのは、本体制御部449において走査方向制御部152eが省略されている点である。
つまり、本実施形態では、側面頭部セファロ撮影を行う際に、X線検出部420を移動させず静止させた状態とするため、その操作制御は不要となる。
X線撮影装置410の動作について、図53を参照して、側面頭部セファロ撮影動作を中心に説明する。
本X線撮影装置410の動作が、第2実施形態のX線撮影装置110の動作(図19参照)と異なるのは、ステップS8に代るステップS41において、X線照射制御、X線発生器側制御を行う際、X線検出部420の移動制御を行わないことである。
すなわち、上記したようにステップS1〜S5が処理された後、ステップS6においてX線検出部420の傾動の制御が行われ、ステップS41においては、上記第2実施形態で説明したのと同様に、X線照射制御及びX線発生器側制御がなされる。
X線発生器側制御としては、X線発生器126aから照射されるX線が頭部Pのうちセファロ撮影対象部位となる領域を通過できる程度の所定形状及び所定の大きさとなるように、X線ビーム形状調整機構427の開口127Eの形状を制御すると共に、傾動機構430を制御してX線ビーム形状調整機構427の開口127Eの下縁部が傾斜角度θ傾斜するように傾動機構430を制御することが含まれる。
そして、X線発生器126aからX線を照射する。X線は、開口127Eの形状及び傾きに応じて所定の方形状に調整された後、頭部Pのうち側面頭部セファロ撮影部位を通って、X線検出部420のX線検出器422のX線検出面422aに入射する。頭部PにおけるX線の照射領域G及びX線検出面422aにおけるX線の照射領域Hは、図48に示すようになる。
同図に示すように、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器422に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1は、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されている。
ここでは、照射領域Hの下側縁HEは、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
また、X線検出部420は、X線検出器422と、当該X線検出器422が組込まれた外装ケース424とを含んでいる。側面頭部X線撮影中におけるX線検出部420の存在領域Iは、当該X線検出部420の外形縁に沿った方形状を描く(図48参照)。このため、当該下側縁IEの頭部後方側IE1が、下側縁IEの頭部前方側IE2よりも高く位置するように、X線検出部420がX線検出器側支持部によって支持されている。
ここでは、下側縁IEの頭部後方側IE1は、頭部保持具210によって保持される頭部Pの姿勢を基準として前方側に向けて下向きとなるように、水平方向に対して傾斜している。
つまり、頭部Pに対するX線の照射領域G及びX線検出面422aにおけるX線の照射領域H、X線検出部420の存在領域Iの各下側縁部は、上記第2実施形態と同様に設定される。
本画像処理装置180における、X線検出器422の出力に基づく側面頭部セファロ画像の生成処理は、第2実施形態の場合と同様に実施することができる。
なお、正面頭部セファロ撮影を行う場合には、支持ロッド456を水平姿勢として、X線検出器422のX線検出面422aの上下辺を水平方向に沿わせると共に、左右辺を上下方向に沿わせた姿勢とする。また、X線ビーム形状調整機構427の開口127Eの形状を方形状にするよう制御すると共に、傾動機構430を制御してX線ビーム形状調整機構427の開口127Eの下縁部が水平姿勢となるように、傾動機構430を制御する。この状態で、上記と同様にすれば、正面頭部セファロ撮影を行うことができる。
<まとめ>
第4実施形態に係るX線撮影装置410によると、X線検出部220を走査方向に移動させる構成による作用効果を除いて、上記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
つまり、X線発生器126aから照射されるX線を、X線ビーム形状調整部426によって所定形状に形状調整することによって、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器422に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1が、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されるようにすることができる。
また、方形状に広がるX線検出部420を傾けた姿勢とすることによって、側面頭部セファロ撮影中におけるX線検出部420の移動領域の下側縁が水平方向に対して傾斜するようにすることができる。
特に、本実施形態においては、方形状のX線検出面422aを有するX線検出器422を用い、X線発生器126aから照射されるX線が1つのタイミングで頭部Pを通りX線検出器422に入射して側面頭部セファロ撮影を行う構成であるため、ワンショットで側面頭部セファロ撮影を実施できる。
第2実施形態のような走査タイプのセファロ撮影の利点はセファロ撮影中に走査の速度が変えられることにもある。例えば、軟組織の比率の大きな領域は走査速度を高くし、硬組織の比率の大きな領域は走査速度を低くするような制御である。第4実施形態のようなワンショットタイプのセファロ撮影の利点は、撮影にかかる時間が短いことにもある。
<変形例3>
図54は変形例3に係るセファロ撮影ユニット500を示す概略正面図であり、図55はセファロ撮影ユニット500を示す概略側面図である。
第4実施形態では、X線検出部420を傾斜支持部450によって傾ける例を説明したが、本変形例のように、X線検出部420を傾けずに一定姿勢で支持してもよい。
すなわち、セファロ撮影ユニット400に対応するセファロ撮影ユニット500は、X線検出器側支持部440に対応するX線検出器側支持部540を備えている。
この変形例では、X線検出器側支持部540は、セファロベース202の一側部にブラケット541を介してX線検出部420を一定姿勢で支持した構成とされている。X線検出部420の上下辺は、水平方向に沿っており、X線検出部420の左右辺は上下方向に沿っている。
X線発生器126aから照射されたX線は、上記第4実施形態で説明したのと同様に、方形状に広がると共に傾斜した状態で、X線検出器422のX線検出面422aに入射する。このため、X線検出面422aは、そのように傾斜しつつ方形状に入射するX線の照射領域Hよりも大きく設定されている。
この変形例によると、第4実施形態と同様に、側面頭部セファロ撮影中においてX線発生器126aから照射されて頭部Pを通過してX線検出器422に入射するX線の照射領域Hの下側縁HEの頭部後方側HE1が、下側縁HEの頭部前方側HE2よりも高く配置されるようにすることができる。なお、頭部Pの位置でX線が透過する領域Iは、上記照射領域Hよりも一回り小さい。
もっとも、X線検出部420の存在領域の下側縁は、水平方向に沿った状態となっている。
このため、本変形例によると、X線検出部420の存在領域の下側縁が水平方向に対して傾斜していることによる作用効果を除き、上記第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
{変形例}
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
例えば、第4実施形態における傾動機構430を第2実施形態に組込み、X線発生器126aから照射され、X線ビーム形状調整部127によって形状調整されるスリット形状の延在方向を、X線検出面222aの延在方向に沿わせるようにしてもよい。
また、第2実施形態の変形例1で説明した構成を第4実施形態に適用し、セファロベース202及びX線検出部420の全体が傾動可能に支持され、また、頭部保持具210がセファロベース202に対して姿勢変更支持部211Aを介して姿勢変更可能に支持された構成としてもよい。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。