JP6973783B2 - レンズ外観検査装置 - Google Patents
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Description
この装置では、[0054]や図1に記載されるように、光源31から出射した光Lがコリメータレンズ36によって平行光L1に変換され、その平行光L1がハーフミラー35とコーナーキューブプリズム49によって被検レンズ1に一往復透過されて、CCD40Aに集光されている。
他方、眼鏡レンズを始めとするレンズの目視検査においては、眩惑を防止して正確に検査するため、照明の透過光は目視せず、外観異常箇所で散乱される散乱光を捉えることで検査されている。例えば眼鏡レンズでは、外観異常は装用者において散乱光として感知され、散乱光による検査は、装用者(レンズのユーザー)による感知に類似するものとなり、この点でユーザーに合った検査と言える。
しかし、特許文献1のものでは、透過光を捉えて画像が撮像されており、目視検査とギャップのある検査となってユーザーに合わない検査となり得るし、外観異常箇所の態様によっては、光束が発散せずに撮像装置に達して、外観異常をうまく捉えられない可能性がある。
そこで、透過光を撮像せずに散乱光を撮像して、目視検査と同様の検査を自動で行うことが考えられる。
しかし、散乱光のみの撮像では、散乱光の光量が僅かであることから、十分な精度の検査のために必要なコントラスト比を得ることが難しく、特に眼鏡レンズのような多様なカーブ値や度数を有するレンズにおいては、全ての場合において散乱光の光量を十分に確保することが困難で、必要なコントラスト比を得ることが困難である。
又、散乱光のみの撮像において、コントラスト比を良好にするために、照明の強度を強くすると、特にカーブの深いレンズや肉厚の大きいレンズにおいて照明の映り込みが発生し、その映り込みを取り込んだ撮像結果によって、良品のレンズが良品として判定されない事態が生じ得て、かえって検査精度が悪化しかねず、照明の強度にも限界があって、検査精度の向上に限界が存在する。
そこで、本発明は、散乱光により撮像した画像において、照明の映り込みにより及ぼされる影響を排除した状態で十分なコントラスト比が確保され、その画像を用いた検査の精度が良好であるレンズ外観検査装置を提供することを主な目的とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、前記照明光は、指向角が30°以下の狭角光であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明にあって、前記照明光照射手段の前記傾斜角に係る前記照射変更手段は、アクチュエータにより形成されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明にあって、前記照明光照射手段における前記囲み線は、前記検査対象レンズを囲む円環又は正多角形であり、前記照明光照射手段における前記照明部分は、前記円環又は前記正多角形を均等に分割した場合の前記円環の部分又は前記正多角形の部分であり、前記制御手段の前記一部消去処理における消去対象部分は、前記検査用画像をその中心から発する放射方向の直線で均等に分割した場合の前記検査用画像の部分であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記カメラは、前記検査対象レンズに向けられたカメラレンズを有しており、前記カメラレンズは、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズであることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、更に、内面が反射防止面とされている箱体を備えており、前記箱体は、孔を有しており、前記検査対象レンズを挟んで前記カメラと反対側に前記孔が位置するように配置されていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、更に、前記検査対象レンズ及び前記照明光照射手段、並びに、前記カメラを覆うエンクロージャを備えており、前記エンクロージャの内面は、前記照明光の反射が防止される反射防止面とされていることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、更に、前記検査対象レンズと前記カメラとの間の距離を調整する距離調整手段を備えていることを特徴とするものである。
≪構成等≫
図1は、本発明の第1形態に係るレンズ外観検査装置1の斜視模式図であり、図2は、レンズ外観検査装置1の縦中央断面模式図である。
レンズ外観検査装置1は、エンクロージャ2と、水平な天板3を有しておりエンクロージャ2の内側下部に配置される箱状のステージ4(箱体)と、天板3の中央部に開けられた孔5の周囲に配置されるレンズ保持機構6と、ステージ4の天板3上に配置される照明光照射手段としての狭角光照射手段7と、エンクロージャ2の内側の上部に設置されるカメラ8と、報知手段9と、これらを制御する制御手段12を備えており、眼鏡レンズLの外観を検査するものである。尚、レンズ外観検査装置1は、カーブの深い(曲率半径の小さい)ものが多く含まれる眼鏡レンズLの検査に適しているが、眼鏡レンズL以外の(カーブの深いあるいは肉厚の大きい)レンズの検査に用いられても良い。又、エンクロージャ2、レンズ保持機構6、及び報知手段9の少なくとも何れかは、省略されても良い。更に、レンズ外観検査装置は、レンズに関する他の検査を行う各種検査装置と組み合わせられても良い。加えて、以下のレンズ外観検査装置1が複数組み合わせられることでレンズ外観検査装置が構成されても良い。
ステージ4の外面は黒色とされており、ステージ4の内面は、黒色のスクリーンが貼られることで黒化処理されている。
尚、フック21の数は、1個でも良いし、3個以上であっても良い。フック21の固定は、孔5の内側以外に対するものであっても良い。又、レンズ保持機構6は、フランジ付きの円筒状部材であっても良く、この場合に内径の大きさ(内側形状)を眼鏡レンズLの外径(外側形状)に合致させる内径調整手段(形状調整手段)を備えるようにしても良い。更に、レンズ保持機構6の材質は、樹脂、セラミックス、ガラス、金属、ゴムあるいはこれらの組合せとされても良い。
ハウジング23の外面は、エンクロージャ2の内面と同様に、黒色とされている。
各狭角光LED24は、白色の略狭角光を発する。狭角光は、指向角が30°以下の光であり、指向角が0°である平行光を含んでいる。略狭角光は、殆ど狭角光であるものの、完全な狭角光に近づけるための微調整の余地が残されている光であり、例えば30°を僅かに超えた指向角で発散する(遠方において広がりが認められる)光や、電圧等の条件によって指向角が変化することでかような発散が見受けられる光である。尚、各狭角光LED24は、白色以外の色の略狭角光を発しても良いし、紫外線や赤外線を含む可視光以外の略狭角光を発しても良いし、これらを組合せた略狭角光を発しても良い。又、狭角光LED24は、平行光又は略平行光を発する平行光LEDであっても良い。略平行光は、殆ど平行光であるものの、完全な平行光に近づけるための微調整の余地が残されている光であり、僅かに集束する(集束点が遠方ではあるが存在する)光や、僅かに発散する(遠方において広がりが認められる)光や、電圧等の条件によって僅かな集束や発散が変化する光である。更に、狭角光LED24に代えて、狭角光あるいは略狭角光ではない光(広角光)を発する光源が用いられても良い。以下、かような広角光及び狭角光は、合わせて照明光と呼ばれることがある。
各狭角光LED24は、発光方向がハウジング23の中央孔部22内(の中心)に向かうように設置されている。
狭角光LED24,24・・は、ハウジング23の周方向に並ぶように配置され、ここでは周方向に等間隔に、合計32個配置されている。
各照明用レンズ26は、対応する狭角光LED24の内方に配置されており、狭角光LED24から発出された略狭角光の光路を微調整して、狭角光とするものである。尚、照明用レンズ26は、略狭角光若しくは狭角光又は略平行光を平行光とするものであっても良い。又、照明用レンズ26は、狭角光LED24と一体としても良いし、複数の狭角光LED24,24・・に共通するものとしても良いし、省略しても良い。又、狭角光を発する手段は狭角光LED24と照明用レンズ26の組合せに限られず、レーザ励起体等であっても良い。
各狭角光LED24から出た略狭角光は、何れもその狭角光LED24の向きに平行であり、対応する照明用レンズ26により狭角光となって、眼鏡レンズLに向かって、大きく広がることなく、又急に集束することなく、略真っ直ぐ進む。各照明用レンズ26から出た狭角光の方向は、眼鏡レンズLの光軸に交わる方向であり、より詳しくはその光軸に直交する水平な方向である。各狭角光LED24の発光部は、所定の大きさ(例えば直径2mm(ミリメートル)の円盤)を有しており、各狭角光LED24ないし照明用レンズ26からの狭角光に係る進行方向に垂直な断面の大きさは、その発光部の大きさから指向角の分だけ広がって行く。
狭角光がレンズ保持機構6に至る場合であっても、少なくともその到達部分(各フック21の起立部分)が透光性を有するから、狭角光はレンズ保持機構6を通過する。
又、狭角光LED24,24・・は、複数の照明部分毎に独立して点消灯可能であるように、制御手段12と電気的に接続されていて、ここでは図3で示されるように上側から下方へ見たときの右上部分である第1照明部分M1,右下部分である第2照明部分M2,左下部分である第3照明部分M3あるいは左上部分である第4照明部分M4の4箇所の部分毎に、オンオフを切替可能に接続されている(部分照明,分割照明)。それら照明部分のそれぞれは、狭角光LED24,24・・を8個含んており、眼鏡レンズLを取り囲む円環全体360°のうちの四半円90°の範囲を照らす。尚、かような照明部分の数、即ちリング状に配置された狭角光LED24,24・・の分割数は、4未満であっても良いし、4を超えていても良い。又、各部分における狭角光LED24,24・・の数や配置される角度は、同一であることが好ましいが(均等分割)、一部あるいは全部において互いに相違していても良い。更に、少なくとも2つの照明部分が互いにオーバーラップしていても良い。加えて、照明部分の集合が眼鏡レンズLを360°取り囲むことが好ましいが、狭角光照射手段7が照明部分の配置されない箇所(隙間等)を有することによって、照明部分の集合が眼鏡レンズLを360°取り囲まなくても良い。又、狭角光LED24,24・・は、多角形や楕円等の、眼鏡レンズLの光軸を囲む円環以外の任意の囲み線に沿うように配置されて良く、照明部分はその一部を占めるようにされて良い。
尚、ハウジング23は、幅広肉厚円弧形状を始めとする他の形状であっても良いし、狭角光LED24,24・・や照明用レンズ26,26・・は、弧状の部分に亘り配置される等、眼鏡レンズLを囲まないように配置されても良い。又、狭角光LED24,24・・に係る略狭角光の進行方向や照明用レンズ26,26・・の光軸方向は、眼鏡レンズLの光軸に直交する方向ではなく、その光軸に90°以外の角度で交わる方向を向いていても良い。
撮像素子30やカメラレンズ36は、狭角光照射手段7や眼鏡レンズLと向かい合うように設置されている。
又、カメラレンズ36は、物体側の主光線がレンズ光軸に対して平行である物体側テレセントリックレンズである。尚、カメラレンズ36は、物体側と像側の双方において主光線がレンズ光軸に対して平行である両側テレセントリックレンズであっても良い。
カメラレンズ36は、物体側テレセントリックレンズであるため、被写界深度が比較的に深く、カーブが深かったり厚さが大きかったりする眼鏡レンズLにおいても、被写界深度はその眼鏡レンズLの全体においてピントが合うようなものとなっている。
カメラレンズ36の実視野は、狭角光のみによる撮像であることや眼鏡レンズL全体を捉えることを考慮して、比較的に広いものされており、好ましくは85mm以上とされている。
又、制御手段12には、眼鏡レンズLを検査位置に置いたり検査位置から取り出したりする搬送手段(図示略)が電気的に接続されており、制御手段12は、搬送手段を制御可能である。搬送手段は、例えば(ノズル移動手段と共通のあるいは別の)ロボットハンド、コンベア、若しくは眼鏡レンズLのリフト、あるいはこれらの組合せである。コンベアの場合、狭角光照射手段7について退避動作(例えば上昇)ないし復帰動作(下降)を可能とし、制御手段12は、狭角光照射手段7を退避させてコンベアにより眼鏡レンズLを検査位置に搬入し、その後狭角光照射手段7を復帰させても良い。眼鏡レンズLのリフトの場合、眼鏡レンズL載置部の退避(下降)位置で眼鏡レンズLが載置された後、当該載置部が検査位置に復帰(上昇)し、検査後に退避位置で眼鏡レンズLが取り出されても良い。尚、搬送手段は、眼鏡レンズLとレンズ保持機構6を搬送しても良い。又、レンズ外観検査装置1はレンズ洗浄装置と組み合わせられて良く、この場合に搬送手段がレンズ洗浄装置に眼鏡レンズLを搬送し、眼鏡レンズLが洗浄されてから、眼鏡レンズLを取り出してレンズ外観検査装置1に搬送しても良い。
記憶手段40には、レンズ外観検査プログラム50と、レンズデータベース52と、第1〜第4検査用画像C1〜C4と、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4と、検査用合成画像Eが記憶されている。
第1〜第4検査用画像C1〜C4は、眼鏡レンズLがマイナスの度数(S−10.00D(ディオプター))を有するプラスチック製のマイナスレンズ(直径70mm(ミリメートル),屈折率1.6,中心厚1mm)であって異物等が混入していない正常な場合について順に図5〜図8において例示され、眼鏡レンズLがプラスチック製のマイナスレンズ(度数や直径等は前記同様)であって異物等が混入している異常な場合について順に図9〜図12において例示され、眼鏡レンズLがプラスの度数(S+6.00D)を有するプラスチック製のプラスレンズ(直径60mm,屈折率1.6,中心厚6mm)であって異物等が混入していない正常な場合について順に図13〜図16において例示される。
又、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4は、上述の正常な場合のマイナスレンズである眼鏡レンズLについて順に図17〜図20において例示され、上述の異常な場合のマイナスレンズである眼鏡レンズLについて順に図21〜図24において例示され、上述のプラスレンズである眼鏡レンズLについて順に図25〜図28において例示される。
更に、検査用合成画像Eは、上述の正常なマイナスレンズについて図29において例示され、上述の異常なマイナスレンズについて図30において例示され、上述の正常なプラスレンズについて図31において例示される。
尚、上述の正常なマイナスレンズにおいて、狭角光照射手段7の狭角光LED24,24・・を全て同時に点灯したとき(第1〜第4照明部分M1〜M4を全て同時に点灯したとき)に取得され得る画像(正常マイナスレンズ全照明画像)が、参考のため図32に例示され、上述の異常なマイナスレンズにおいて、狭角光LED24,24・・を全て同時に点灯したときに取得され得る画像(異常マイナスレンズ全照明画像)が、同様に図33に例示され、上述の正常なプラスレンズにおいて、狭角光LED24,24・・を全て同時に点灯したときに取得され得る画像(正常プラスレンズ全照明画像)が、同様に図34に例示される。
通信手段42は、各種の情報を入出力可能な手段であり、例えばハブ、各種の端子、通信コントローラ、あるいはこれらの組合せである。
尚、内側形状を調整可能なレンズ保持機構6が制御手段12に接続される場合において、制御手段12がレンズ特性値(眼鏡レンズLの直径)に応じてレンズ保持機構6の内側形状を制御するようにしても良い。
ここで、消去(マスク)は、消去対象部分を所定の背景色(例えば黒色)とするものである。消去対象部分としての第1〜第4画像部分N1〜N4は、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の中心から発する放射方向の直線(縦中心線及び横中心線)によって区分されており、それぞれ、第1〜第4検査用画像C1〜C4の丁度4分の1の大きさを有している。第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の中心は、第1〜第4検査用画像C1〜C4の中心と合致し、第1〜第4検査用画像C1〜C4の中心は、眼鏡レンズLの中心(狭角光照射手段7内の検査位置の中心)に合わせられるが、ずれていても良く、これら中心がずれている場合に、第1〜第4画像部分N1〜N4を画する放射方向の直線は、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4上の眼鏡レンズLの中心(狭角光照射手段7内の検査位置の中心)から発せられるようにしても良い。
尚、第1〜第4検査用画像C1〜C4や第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4は、ここでは縦画素数が横画素数と同一の正方形であるが、縦画素数が横画素数と異なる長方形であっても良い。又、消去(マスク)は、対象部分を、背景色とは異なる所定のマスク色(例えば暗い灰色)に塗り潰すものであっても良いし、後述の合成処理の対象にならない旨の情報である非合成対象情報を対象部分に埋め込むものであっても良い。
ここで、合成処理においては、第1画像部分N1,第2画像部分N2,第3画像部分N3,第4画像部分N4が消去された合計4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を対象とする。対象となる第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の縦横の画素数は、互いに同一である。
そして、それら4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4について、対応する画素位置(例えば縦位置と横位置の組合せ)の画素値(例えば256段階の輝度)が合計され、その合計値を3で割ることで平均化される。3で割るのは、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4において第1画像部分N1,第2画像部分N2,第3画像部分N3あるいは第4画像部分N4の何れかが消去されており、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の合計において1度消去部分(マスク部分)が加味されるので、その分合計枚数から引く(4−1=3)からである。第1画像部分N1,第2画像部分N2,第3画像部分N3及び第4画像部分N4は、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を重ね合わせた場合に、互いに重複せず、第1検査用マスク画像D1等と丁度同じ大きさをカバーする。
尚、第1画像部分N1〜第4画像部分N4の少なくとも一部は、互いに重複しても良く、この場合、重複部分に対して更なる平均化等の追加の処理を施しても良い。又、第1〜第4検査用画像C1〜C4や第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の画素値は、赤緑青(RGB)の各輝度値等であっても良い。又更に、検査用合成画像Eは、平均化した輝度ではなく合計値の輝度を有していても良い。更に、合成処理の対象となる第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4は、狭角光照射手段7の分割数(狭角光LED24,24・・の分割数)に応じて増減されても良いし、その分割数が4である場合に8枚とされる等、分割数より多い枚数とされても良い。加えて、単画像処理や複画像処理には、2値化処理やノイズリダクション処理等の他の処理が含まれていても良い。又、施した処理の種類ないし組合せ毎に画像が別々に保存されても良い。
このようになるレンズ外観検査装置1の動作例等が、主に図4に基づいて以下説明される。
レンズ外観検査装置1は、レンズ外観検査プログラム50を実行するCPU44(制御手段12)により、例えば次の通り動作する。
搬送手段は、制御手段12の制御により、検査対象の眼鏡レンズLを狭角光照射手段7内の検査位置に搬入する(ステップS1)。
制御手段12には、通信手段42を介して、搬入に係る眼鏡レンズLのレンズ特性値が入力される。レンズ特性値は、図示されない他のコンピュータから入力されても良いし、図示されない入力手段(例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、あるいはこれらの組合せ)により入力されても良い。
エンクロージャ2には、図示されない扉が設けられており、眼鏡レンズLの搬入時にその扉は開けられて眼鏡レンズLを通過可能とされ、搬入完了後、撮像までに、その扉は閉じられて、エンクロージャ2による閉塞が確保される。
狭角光は、透光性を有する眼鏡レンズLの内部を、眼鏡レンズLの光軸に交わる(直交する)状態で通過し、理想的にはそのまま水平に進んで眼鏡レンズLの外部に出る。かように水平に進んだ狭角光は、指向角が狭くその分拡散が緩やかであるから、眼鏡レンズLの上方に配置されたカメラ8には到達し難く、眼鏡レンズLの表面(空気との界面)における反射や屈折等により、ごく一部分がカメラ8に向かう。かような反射ないし屈折は、カーブの深いレンズ(眼鏡レンズL)ほど、様々な方向に向かうこととなる。又、狭角光が平行光である場合、平行光は水平に進むと集束も拡散もしないから、理想的には眼鏡レンズLの上方に配置されたカメラ8の方向には行かない。但し、実際には、上述した眼鏡レンズLの表面における反射や屈折等により、ごく一部分がカメラ8に向かう。
又、特に眼鏡レンズに多用されるカーブの深いレンズにおいては、狭角光LED24の光源形状が映り込み、カメラ8に向かう。例えば、上述の正常なマイナスレンズの眼鏡レンズLに対して、第1照明部分M1(上側から下方に見て右上の弧状部分)のみで照明を行うと、図5に示されるように、眼鏡レンズLの上側から下方に見て右上部分の中央部や周縁部に、マイナスレンズの輪郭に沿う弧に沿った点群(8点前後)あるいは濃淡帯状の映り込みR1,R2が発生する。又、上述の異常なマイナスレンズの眼鏡レンズLに対して、第1照明部分M1のみで照明を行うと、図9に示されるように、眼鏡レンズLの上側から下方に見て右上部分の中央部に、マイナスレンズの輪郭に沿う弧の上で並ぶ点群の映り込みR1が発生する。他方、プラスレンズの眼鏡レンズLに対して第1照明部分M1のみで照明を行うと、図13に示されるように、眼鏡レンズLの上側から下方に見て右上部分の周縁部に、弧状に並ぶ点群の映り込みR1が発生する。そして、他の照明部分においても、眼鏡レンズLの照明部分に近い部分に、映り込みR1,R2が同様に発生する(図5〜図16参照)。尚、参考として、上述の正常マイナスレンズ全照明画像(図32)や異常マイナスレンズ全照明画像(図33)においては、眼鏡レンズLの中央部あるいは周縁部において、円状に並ぶ点群の映り込みQ1が発生する。又、正常プラスレンズ全照明画像(図34)においては、中央部及び周縁部において円状に並ぶ点群の映り込みQ1,Q2が発生する。
他方、眼鏡レンズLに異物が付着しあるいは混入している場合、その異物に達した狭角光は散乱され、散乱光(異物による反射光)の一部がカメラ8に向かう。かような散乱光の強度は、上述の反射ないし屈折による光の強度より概して大きい。異物は、例えば、眼鏡レンズLの表面や内部に発生した塵や着色ムラ、泡、固着物、欠片、若しくは眼鏡レンズLの表面に形成された膜のムラ、あるいはこれらの組合せである。
又、眼鏡レンズLにキズ・欠けや形成不良部分が発生している場合、そのキズ・欠けや形成不良部分に達した狭角光も異物の場合と同様に散乱され、一部がカメラ8に向かう。以下、異物並びに欠け及び形成不良部分は、まとめて異物等と適宜呼ばれる。
加えて、狭角光照射手段7から発せられた狭角光は、エンクロージャ2の内面に達したとしても、その内面が反射防止面とされていることにより、その内面における反射が防止され、その内面による反射光がカメラ8に向かう事態が防止される。
ここでは、制御手段12は、自然数のループカウンタkが1〜4まで順に変わって合計4回繰り返されるループS3により、まず第1照明部分M1において照明させ、次いで第2照明部分M2,第3照明部分M3,第4照明部分M4の順で照明させる(ステップS4)。但し、制御手段は、眼鏡レンズLがプラスレンズである場合には、まず第3照明部分M3において照明させ、次いで第4照明部分M4,第1照明部分M1,第2照明部分M2の順で照明させる。尚、制御手段12は、これ以外の順番で照明させても良い。
第1〜第4検査用画像C1〜C4は、物体側テレセントリックレンズであるカメラレンズ36によって取得されるため、カーブの深い眼鏡レンズLや厚みの大きい眼鏡レンズLであっても、全ての部分においてピントが合う。よって、ピントが合わない部分において異物や欠け等により散乱光が発生してしまい、鮮明な画像が得られず、第1〜第4検査用画像C1〜C4による検査に支障を来たす事態が防止される。又、非テレセントリックレンズは、異物等により広がるように発生する散乱光について視差の分だけ歪んで捉えてしまい、異物等の実際の大きさや状態が不明確となったり、異物等が複数存在する場合に一部の異物等を隠してしまったりする可能性があるところ、カメラレンズ36ではそのようなことがなく、全ての異物等について実際の大きさや状態で捉えることができる。ここで、厳密には、サイズの変化を完全に防止することは困難であるが、非テレセントリックレンズによる撮像の場合と比べ、サイズの変化は顕著に抑制され、又眼鏡レンズLの中央と外周部のように眼鏡レンズLに高低差が存在する場合において、眼鏡レンズLの撮像部分における形状の変形が抑制される。
レンズデータベース52には、眼鏡レンズLの直径及びカーブ値等に応じた撮像距離が記憶されており、検査用画像Cにおいて、眼鏡レンズLの全体においてピントが合う(眼鏡レンズLの全体が被写界深度内に収まる)ような撮像距離が予め求められ、眼鏡レンズLの直径及びカーブ値と対応付けて記憶されている。上述の通り、制御手段12は、リフト20を制御し、その撮像距離となるように、ステージ4やレンズ保持機構6を介して眼鏡レンズLを移動させる。尚、カメラレンズ36は少なくとも物体側においてテレセントリック効果を有するため、撮像距離にかかわらず実視野は一定である。
例えば、実視野が縦80mm横80mmであり、被写界深度が9mmであり、被写界深度の中心がカメラレンズ36の先端から150mmの位置にある場合において、床高が5mmのプラス強度数の眼鏡レンズL(凸レンズ)に対しては、制御手段12は床高中心(2.5mm)の位置が被写界深度の中心位置と合致するようにリフト20を作動させる。他方、同じ場合において、床高が6mmのマイナス強度数の眼鏡レンズL(凹レンズ)に対しては、制御手段12は床高中心(3mm)の位置が被写界深度の中心位置と合致するようにリフト20を作動させる。ここで、リフト20がない(撮像距離が調整されない)ときを考える。凸レンズはレンズ保持機構6の支持点から下方に位置している一方、凹レンズはレンズ保持機構6の支持点から上方に位置していることから、双方のレンズの占める合計の上下幅(床高方向の幅の合算値)は、支持点から下に5mm(凸レンズ)と上に6mm(凹レンズ)で11mmとなる。この11mmの上下幅は、9mmの被写界深度より大きく、従って、撮像距離が調整されない場合、凸レンズ及び凹レンズの少なくとも一方において部分的にピントが合わないこととなる。これに対し、レンズ外観検査装置1では、リフト20により撮像距離が調整されるため、凸レンズ及び凹レンズの双方において被写界深度内に位置させて、ピントを全体に亘り合わせることができる。
又、眼鏡レンズLは、その周縁を保持するレンズ保持機構6によって、天板3の孔5に上面視で重なる(オーバーラップする)ように保持され、カメラ8(カメラレンズ36)は、孔5と向かい合うように配置されており、孔5の内部(箱状のステージ4の内部)は、黒化処理されている。よって、カメラレンズ36と眼鏡レンズLと孔5は上下方向に並んで、孔5は眼鏡レンズLを挟んでカメラレンズ36と反対側に位置することとなり、かような配置とステージ4内面の黒化処理によって、検査用画像Cにおいて散乱光の生じない部分をより黒くすることができ、異物等による散乱光に対するコントラスト比が向上する。又、ステージ4側へ進む散乱光の反射がステージ4の内部において防止され、異物等によらない散乱光の映り込みが抑制されて、検査用画像Cにおけるコントラスト比の低下が防止される。更に、ステージ4が箱状であり、眼鏡レンズLの下方の部分(カメラレンズ36から見て眼鏡レンズLより向こう側の部分)の一部又は全部が覆われるため、エンクロージャ2内面における反射光等が眼鏡レンズLの下方に向かったとしても、ステージ4により遮断することができ、異物等によらない散乱光の映り込みが抑制されて、検査用画像Cにおけるコントラスト比の低下が防止される。
カメラ8は、このようにして取得した第1〜第4検査用画像C1〜C4を、制御手段12に対して送信し、制御手段12は、通信手段42において受信した第1〜第4検査用画像C1〜C4を、記憶手段40において記憶する。ここでは、カメラ8は、第1〜第4検査用画像C1〜C4をそれぞれ取得した後直ちに送信するが、第1〜第4検査用画像C1〜C4の組が揃ってからこれらの一組をまとめて送信しても良い。
即ち、マイナスレンズ(図5,図9)において、第1照明部分M1(狭角光照射手段7の上から下に見て右上の部分)に係る照明により撮像した第1検査用画像C1中の眼鏡レンズL撮像部分における、第1照明部分M1が映り込んだ部分である一部照明映り込み部分(第1照明部分M1に隣接する眼鏡レンズL撮像部分の右上部分)を含む第1画像部分N1(第1検査用画像C1の右上部分)が消去される。この消去において、消去対象部分は第1画像部分N1であり、眼鏡レンズL撮像部分における一部照明映り込み部分(第1照明部分M1の照射隣接部分)を含んでいる。又、第2画像部分N2〜第4画像部分N4は、それぞれ、第1画像部分N1と同様に消去される。
他方、プラスレンズ(図13)において、第3照明部分M3に係る照明により撮像した第1検査用画像C1中の眼鏡レンズL撮像部分における、第3照明部分M3が映り込んだ部分である一部照明映り込み部分(第3照明部分M3からみて眼鏡レンズL撮像部分の中心を挟んで向こう側の右上部分)を含む第1画像部分N1が消去される。この消去において、消去対象部分は第1画像部分N1であり、眼鏡レンズL撮像部分における一部照明映り込み部分(第3照明部分M3の向こう側の部分)を含んでいる。又、第2画像部分N2〜第4画像部分N4は、それぞれ、第1画像部分N1と同様に消去される。
これらの画像部分内における眼鏡レンズL撮像部分には、点灯している狭角光LED24,24・・の光源形状に応じた映り込みが発生し得るところ(図5〜図16参照)、その映り込みが一部消去処理により第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4において消去される。かような映り込みは、眼鏡レンズLを囲む狭角光LED24,24・・が全て点灯すると、眼鏡レンズLにおいて輪状となる(図32〜図34参照)。しかし、狭角光LED24,24・・が部分的に点灯すると、これに対応して眼鏡レンズLにおいて弧状となる(一部照明映り込み部分)。よって、映り込み部分の一部消去が可能となり、映り込み部分がなく狭角光により適切に照明された部分を残した第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の取得が可能となる。
CPU44は、ここでは第1〜第4検査用画像C1〜C4の何れかを記憶手段40において記憶した後直ちにその検査用画像に対する一部消去処理を行って検査用マスク画像の生成を行う。尚、CPU44は、記憶手段40において第1〜第4検査用画像C1〜C4の組が揃ってから、これらの一組に対してそれぞれ一部消去処理を行っても良い。又、一部消去処理は、カメラ8において行われても良い。更に、一部消去処理において、CPU44は、第1〜第4検査用画像C1〜C4に上書きして第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を記憶しても良いし、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の記憶後に第1〜第4検査用画像C1〜C4を削除しても良い。加えて、一部消去処理に付随して、ノイズリダクション処理等の他の画像処理が行われても良い。
尚、検査用合成画像Eは、複数枚生成されても良いし、検査用合成画像Eの生成に付随して、2値化処理やノイズリダクション処理等の他の画像処理が行われても良い。又、照明部分と一部消去の関係は、上述のマイナスレンズないしプラスレンズに係る関係以外のものであっても良い。複雑な表面形状を有するレンズであっても、照明部分による一部照明によって、その映り込み部分はレンズないしレンズ撮像部分における一部に留まる。そして、映り込み部分が一見分からないような類型のレンズであっても、各照明部分による照射を一度以上試行すれば、一部消去処理において消去する部分に包含されるべき映り込み部分を予め把握することができ、この場合に、試行結果を記憶させて、同じ類型のレンズの検査において当該試行結果を適用することができる。更に、1個の照明部分による一部照明によって、レンズに複数の映り込み部分が生じる場合に、複数の画像部分(例えば2個の矩形部分)を消去しても良い。又、複数の照明部分を照射したうえで、その照射による映り込み部分をマスクするようにしても良い。
制御手段12は、眼鏡レンズL撮像部分において所定値以上の輝度を有する画素が所定範囲以上に亘り存在する場合、異物等による散乱光が存在して異物等が存在するものとして、検査用合成画像Eにおいて異常が発生しているとの判定結果を出す。例えば、上述の正常なマイナスレンズ及びプラスレンズにおいて、検査用合成画像Eには異物等による散乱光は存在しておらず、外観異常は発生していないとの判定結果を出す。他方、上述の異常なマイナスレンズにおいて、検査用合成画像Eには異物による散乱光F,F・・が存在しており、異常が発生しているとの判定結果を出す。
検査用合成画像Eにおいては、狭角光LED24,24・・の映り込みが消去されているので、異常発生の判定において、映り込みを異物等として誤検知し、異物等が存在しないのに異常が発生しているとの判定結果を誤って出してしまう事態が防止される。又、複数枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の平均化により検査用合成画像Eが生成されており、複数枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4の情報を有する検査用合成画像Eを用いて異常発生判定がなされるため、判定の精度が良好である。しかも、第1〜第4検査用画像C1〜C4は、ピント位置や撮影範囲等を変えることなく少ない枚数で取得することができ、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4は所定の部分を消去するだけで生成できるので、処理量や処理時間は少ない。
以上のレンズ外観検査装置1は、検査対象レンズである眼鏡レンズLに対して、その眼鏡レンズLの光軸を囲む円環の四半円にそれぞれ相当する部分を占める4箇所の第1〜第4照明部分M1〜M4から、指向角が30°以下の光である狭角光を切替えて照射可能である狭角光照射手段7と、眼鏡レンズLが含まれる第1〜第4検査用画像C1〜C4を撮像するカメラ8と、第1〜第4検査用画像C1〜C4を処理する制御手段12と、を備えており、カメラ8は、狭角光照射手段7による4個の第1〜第4照明部分M1〜M4における照射(ステップS4)毎に、第1〜第4検査用画像C1〜C4を撮像し(ステップS5)、制御手段12は、第1〜第4照明部分M1〜M4の照射毎に撮像した第1〜第4検査用画像C1〜C4中の眼鏡レンズL撮像部分における、第1〜第4照明部分M1〜M4が映り込んだ部分を含む第1〜第4画像部分N1〜N4をそれぞれ消去して、4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を生成する一部消去処理(ステップS6)と、4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を合成して1枚の検査用合成画像Eを生成する合成処理(ステップS8)と、を行う。
よって、カメラ8は、第1〜第4検査用画像C1〜C4の取得において、異物等のない正常な部分を眼鏡レンズLの光軸交差方向に透過する狭角光を殆ど捉えない一方、異物等のある異常な部分に達して反射された狭角光を鮮明に捉えることとなり、第1〜第4検査用画像C1〜C4におけるコントラスト比が極めて良好になって、その分異物等を発見し易くなる。又、第1〜第4照明部分M1〜M4において狭角光を切替えて照射可能である狭角光照射手段7で眼鏡レンズLが照明されることにより、コントラスト比を良好にするために照明強度を十分なものとしても、眼鏡レンズL中の照明光源の映り込みが部分的なものとなる。そして、制御手段12が、一部消去処理で第1〜第4検査用画像C1〜C4において眼鏡レンズLの映り込み部分を含む画像部分を消去して第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を生成し、これらを合成処理で合成して検査用合成画像Eを生成することにより、眼鏡レンズL撮像部分における映り込みを消去しながら眼鏡レンズL全体をカバーした検査用合成画像Eを取得することができて、適切に照明された部分の結集された検査用合成画像Eを用いた、処理量や処理時間の比較的に少ない正確な外観検査が確保される。
特に、レンズ外観検査装置1による検査を、上述の特許文献1のもののような透過光を用いた検査と比べると、透過光の検査では、異物等に対応する部分が暗くそれ以外の部分が明るい画像を用いることとなってユーザーが異物を感じる状況に合わない検査となるし、異物等に反射された光束がうまく発散しないことでカメラに捉えられず検査の精度に影響を与える可能性があるが、レンズ外観検査装置1の検査では、異物等に対応する部分が明るくそれ以外の部分が暗い検査用画像Cを用いることとなってユーザーの状況に合った検査が行えるし、上述の通り十分なコントラスト比を確保して優れた検査精度を確保することができる。
他方、反射光を用いた直接目視による検査と比べると、直接目視では異物等の拡散光が眼鏡レンズLの作用により拡大されあるいは縮小されて誤判定の原因となるし、かような拡大や縮小の度合は眼鏡レンズLの度数によって相違することとなり、特に種々の度数が存在する眼鏡レンズLのような検査対象レンズでは、その相違が顕著であって、かような相違も誤判定の原因となるが、レンズ外観検査装置1の検査では、少なくとも物体側がテレセントリックであるレンズにより撮像された検査用画像Cにおいて、異物等の拡散光が眼鏡レンズLのどの部分にあっても同様の大きさで撮像され、又どのような度数の眼鏡レンズLであっても同様の大きさで撮像され、よって誤判定が回避されてより正確な検査が行えるものである。
更に、狭角光を照射する狭角光照射手段7に代えて、広角光を照射する広角光照射手段が用いられた場合であっても、比較的に異物等の散乱光ではない光がカメラレンズ36に達し易くなるものの、当該光の輝度は散乱光の輝度に比べて十分に小さいものであり、検査用合成画像Eの2値化を始めとする適切な画像処理を適宜実行することにより、狭角光照射手段7の場合と同様に正確な検査が行える。
更に、カメラ8は、眼鏡レンズLに向けられたカメラレンズ36を有しており、物体側テレセントリックレンズであるカメラレンズ36を通じて第1〜第4検査用画像C1〜C4を取得するので、肉厚やカーブ値の大きい眼鏡レンズLであっても肉厚方向(眼鏡レンズLの光軸方向)の全体に亘り鮮明な第1〜第4検査用画像C1〜C4を得ることができ、ピント位置の異なる複数の画像を取得する必要がないため処理量や検査時間が少なくなるし、眼鏡レンズLのどの部分に異物等が発生したとしても第1〜第4検査用画像C1〜C4から生成した検査用合成画像Eにおいて異物等を適切な位置ないし大きさで検出することができるし、異物等が複数発生したとしても検査用合成画像Eにおいてそれぞれ適切な位置ないし大きさで捉えることができて、検査用合成画像Eを用いた精度の高い外観検査が確保される。
図35は、レンズ外観検査装置1のようにステージ4が箱体である場合における検査用合成画像Eを示す写真であり、図36は、図35の検査用合成画像Eを2値化(輝度しきい値:暗い側から16/256段階中)した画像を示す写真であり、図37は、ステージが箱体でない(眼鏡レンズL下方の面に対する光進入防止手段がない)場合における検査用合成画像Eを示す写真であり、図38は、図37の検査用合成画像Eを同様に2値化した画像を示す写真である。
図37の写真においてもコントラスト比は良好であるものの、狭角光照射手段7のすぐ内側の右上,右下,左上,左下の各部分が、周囲より高い輝度を有する部分Pとなっている。かような部分Pの発生は、狭角光照射手段7が90°の中心角を有する弧毎に4分割で形成されており、その接合面や、接合に用いられている部品(ネジ等)から反射光が出現することによる。これら部分Pの発生は、2値化に係る図38の写真において顕著に表われ、しきい値等の設定によっては、2値化画像で高輝度部分即ち異物等存在部分を解析する場合に、接合面や部品の反射光が異物等存在部分と誤認される可能性がある。
これに対し、図35の写真においては、図37の写真に比べて更にコントラスト比が良好になっていると共に、狭角光照射手段7の構造(接合)による反射光の輝度が抑制されている。かような輝度の抑制は、2値化に係る図36の写真において、図38の写真のように2値化後においても部分Pが出現しないことからも良くみて取れる。
これらの写真から、箱体(ステージ4)の設置による、反射光(狭角光照射手段7からのものを含む)の映り込み防止の効果や、コントラスト比向上の効果がみて取れる。
又更に、レンズ外観検査装置1は、眼鏡レンズLとカメラ8との間の距離である撮像距離を調整するリフト20(ステップS2)を備えているため、互いに相違する特性値を有する眼鏡レンズLを続けて検査する場合であっても、その特性値に合うような撮像距離を確保することができ、何れの特性値に係る眼鏡レンズLにおいても全体に亘り鮮明な第1〜第4検査用画像C1〜C4を少ない枚数(ここでは合計4枚)において取得することができて、処理量や検査時間が少なく且つ正確である検査を実現することができる。
≪構成等≫
図39は、本発明の第2形態に係るレンズ外観検査装置101の図2相当図であり、図40は、レンズ外観検査装置101の図3相当図である。
レンズ外観検査装置101は、狭角光照射手段及びレンズ保持機構を除き、第1形態のレンズ外観検査装置1と同様になる。かように同様に成る部材や部分には、同じ符号が付され、適宜説明が省略される。
尚、照射ユニット123の一部又は全部は、ベース122の上部に配置されていても良いし、ベース122の外側面に配置されていても良いし、ベース122の内側面に配置されていても良い。
ベース122及び8個の照射ユニット123は、眼鏡レンズLを囲む。ベース122及び8個の照射ユニット123の八角形の中心と、眼鏡レンズLの中心とは、ここでは合致している。
8個の照射ユニット123は、ベース122によって上下方向に移動可能とされ、その移動や到達位置の制御のために、制御手段12と電気的に接続されている。これら照射ユニット123は、リフト20とは独立して上下方向に移動可能である。尚、各照射ユニット123は、互いに独立して移動可能とされていても良い。又、各照射ユニット123は、ベース122の正八角形に接する仮想的な円の径方向等の他の方向においても移動可能とされていても良い。更に、各照射ユニット123あるいは第1形態の狭角光照射手段7における1個の狭角光LED24とその照明用レンズ26との組について、他の組に対して互いに独立して位置や傾斜角の変化が可能であるようにされても良い。加えて、狭角光照射手段107は、上下方向の位置及び傾斜角の何れか一方のみについて変更可能とされても良い。
各フック121は、幅(眼鏡レンズLの接線方向の大きさ)がより小さいことを除き、第1形態のフック21と同様になる。
8個のフック121は、狭角光照射手段107のベース122における正八角形の何れかの頂点に相当する位置に配置されている。即ち、8個のフック121は、正八角形の何れかの頂点とその中心とを結ぶ仮想線上に配置されている。
このようになるレンズ外観検査装置101の動作例は、第1形態のレンズ外観検査装置1の動作例(図4参照)と大要同様である。
即ち、眼鏡レンズの検査位置への搬入がなされ(ステップS1)、撮像距離の調整がなされる(ステップS2)。
制御手段12は、レンズデータベース52を参照し、受信したレンズ特性値に対応する各照射ユニット123の上下方向の位置(眼鏡レンズLに対する相対位置)や傾斜角を抽出して、その決定された位置や傾斜角となるように、各照射ユニット123を適宜移動させる。
これらの各照射ユニット123の位置や傾斜角と、レンズ特性値との関係は、位置や傾斜角を様々に変えて予め行われるテストにより決定される。
例えば、マイナスの度数(S−10.00D)を有するプラスチック製のマイナスレンズ(直径70mm,屈折率1.6,中心厚1mm)について、全ての照射ユニット123の上下方向の位置が眼鏡レンズLの上下方向の位置と同じで、水平面に対する傾斜角が0°である水平状態と、全ての照射ユニット123が水平状態から5mm上方の位置で且つ斜め下2°(−2°)の傾斜角を呈する緩傾斜状態と、全ての照射ユニット123が水平状態から10mm上方の位置で且つ−6°の傾斜角を呈する急傾斜状態と、で予めテストされる。尚、ここでは眼鏡レンズLの上下方向の位置は、眼鏡レンズLの幾何学中心(表面上)を基準とし、照射ユニット123の上下方向の位置は、全ての照射ユニット123の傾斜角が0°(水平)である場合の、狭角光LED24を結ぶ仮想的な正八角形の中心点(照明中心)を基準とするところ、他の点を基準としても良い。
図41は、水平状態の照射ユニット123が1個置きに点灯した場合の参考的な画像を示す写真であり、図42は、緩傾斜状態の照射ユニット123が1個置きに点灯した場合の参考的な画像を示す写真であり、図43は、急傾斜状態の照射ユニット123が1個置きに点灯した場合の参考的な画像を示す写真である。何れの場合も、点灯部分と同じ側において円弧状の映り込みR11〜R14が発生しているものの、各場合において、映り込みR11〜R14の輝度や幅が互いに相違している。
そして、制御手段12は、第1〜第4検査画像C1〜C4を順次取得し(ステップS5)、これらに対して、レンズ外観検査プログラム50の一部消去処理を実行し、第1〜第4画像部分N1〜N4に係る消去を行って、第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を生成する(ステップS6)。尚、狭角光照射手段107における8個の照射ユニット123を1個ずつ順次点灯して第1〜第8検査画像を順次取得し、これらに対して、画像の中心を通る放射方向の線で八等分された部分の何れかを消去する一部消去処理を実行し、第1〜第8画像部分に係る消去を行って、第1〜第8検査用マスク画像を生成しても良い。
図47は、水平状態の照明による検査用画像から生成された検査用合成画像Eを2値化したものを示し(ここでのしきい値/各輝度総段階数:77/256)、図48は、緩傾斜状態の照明による検査用画像から生成された検査用合成画像Eを同様に2値化したものを示し、図49は、急傾斜状態の照明による検査用画像から生成された検査用合成画像Eを同様に2値化したものを示す。
これらを比較すると、何れの検査用合成画像Eにおいても捉えられているものの、図49のものにおいて最も大きくはっきりと確認される異物等の散乱光F1,F1が存在したり、図47,図48のものでは捉えられていない異物等の散乱光F2,F2が図49のものにおいて存在したりすることから、上述の眼鏡レンズLにおいては、図49の検査用合成画像Eにつながる急傾斜状態(10mm上方の位置,−6°の傾斜角)の照明が最適であることになる。
即ち、検査の対象となるレンズによっては(特に眼鏡レンズのように比較的に深いカーブを有するレンズでは)、水平方向の照明光の照射では、異物等による散乱光がカメラレンズ36の方向とならないことがある。例えば、検査対象のレンズのカーブに沿って照明光を入射させる等、照明光の角度や位置をレンズの真横から変えた方がより異物等からの散乱光を捉え易い場合がある。そこで、第2形態のレンズ外観検査装置101では、各照射ユニット123の位置や傾斜角が変更可能とされることで、上述の眼鏡レンズLを始めとする様々なレンズにおける異物等の捕捉精度、即ち検査の精度がより一層向上されるものである。
以上のことから、制御装置12は、上述の眼鏡レンズLに係るレンズ特性値を受信した場合には、狭角光照射手段107の各照射ユニット123を急傾斜状態とすることとなる。
尚、第2形態のレンズ外観検査装置101は、適宜、第1形態のレンズ外観検査装置1と同様な変更例を有する。
以上のレンズ外観検査装置101は、検査対象レンズである眼鏡レンズLに対して、その眼鏡レンズLの光軸を囲む正八角形の隣接する2辺にそれぞれ相当する部分を占める4箇所の第1〜第4照明部分M1〜M4から、指向角が30°以下の光である狭角光を切替えて照射可能である狭角光照射手段107と、眼鏡レンズLが含まれる第1〜第4検査用画像C1〜C4を撮像するカメラ8と、第1〜第4検査用画像C1〜C4を処理する制御手段12と、を備えており、カメラ8は、狭角光照射手段7による4個の第1〜第4照明部分M1〜M4における照射(ステップS4)毎に、第1〜第4検査用画像C1〜C4を撮像し(ステップS5)、制御手段12は、第1〜第4照明部分M1〜M4の照射毎に撮像した第1〜第4検査用画像C1〜C4中の眼鏡レンズL撮像部分における、第1〜第4照明部分M1〜M4が映り込んだ部分を含む第1〜第4画像部分N1〜N4をそれぞれ消去して、4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を生成する一部消去処理(ステップS6)と、4枚の第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4を合成して1枚の検査用合成画像Eを生成する合成処理(ステップS8)と、を行う。
よって、処理量が比較的に少なく、検査精度に優れたレンズ外観検査装置101が提供される。
尚、狭角光を照射する狭角光照射手段107に代えて、広角光を照射する広角光照射手段が用いられた場合であっても、広角光の強度は周辺部より中心部の方が高いものであるから、やはり照明の位置や方向に係る調節は、同様の意味を有するものと言える。
よって、分割照明や一部消去処理が均等な部分を対象とすることにより円滑で正確に行われることとなり、合成処理も消去対象部分の重複しない第1〜第4検査用マスク画像D1〜D4が対象となり円滑で正確に行われることとなって、処理量や処理時間の比較的に少ない正確な外観検査が確保される。
よって、レンズ保持機構106は、照射ユニット123からの照明光をより妨げ難くなり、照明光が一層適切に眼鏡レンズLに到達することとなって、検査の精度が更に向上する。
Claims (8)
- 検査対象レンズに対して、当該検査対象レンズの光軸を囲む囲み線の一部にそれぞれ相当する部分を占める複数の照明部分から、照明光を切替えて照射可能である照明光照射手段と、
前記検査対象レンズに対する前記照明光照射手段の、前記光軸の方向における位置、及び傾斜角の少なくとも一方を変更する照射変更手段と、
前記検査対象レンズが含まれる検査用画像を撮像するカメラと、
前記検査用画像を処理する制御手段と、
を備えており、
前記カメラは、前記照明光照射手段による複数の前記照明部分における照射毎に前記検査用画像を撮像し、
前記制御手段は、
前記検査対象レンズの特性値であるレンズ特性値を含むレンズデータベースを記憶する記憶手段を有しており、
前記検査用画像の撮像時に、前記レンズデータベースを参照して得た前記レンズ特性値に対応する前記照明光照射手段の前記位置及び前記傾斜角の少なくとも一方を抽出して、その決定された前記位置及び前記傾斜角の少なくとも一方となるように、前記照射変更手段により前記照明光照射手段の前記位置及び前記傾斜角の少なくとも一方を変更させる照射変更処理と、
複数の前記照明部分の照射毎に撮像した前記検査用画像中の前記検査対象レンズ撮像部分における、前記照明部分が映り込んだ部分をそれぞれ消去して、複数の検査用マスク画像を生成する一部消去処理と、
複数の前記検査用マスク画像を合成して検査用合成画像を生成する合成処理と、
を行う
ことを特徴とするレンズ外観検査装置。 - 前記照明光は、指向角が30°以下の狭角光である
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ外観検査装置。 - 前記照明光照射手段の前記傾斜角に係る前記照射変更手段は、アクチュエータにより形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズ外観検査装置。 - 前記照明光照射手段における前記囲み線は、前記検査対象レンズを囲む円環又は正多角形であり、
前記照明光照射手段における前記照明部分は、前記円環又は前記正多角形を均等に分割した場合の前記円環の部分又は前記正多角形の部分であり、
前記制御手段の前記一部消去処理における消去対象部分は、前記検査用画像をその中心から発する放射方向の直線で均等に分割した場合の前記検査用画像の部分である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のレンズ外観検査装置。 - 前記カメラは、前記検査対象レンズに向けられたカメラレンズを有しており、
前記カメラレンズは、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズである
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のレンズ外観検査装置。 - 更に、内面が反射防止面とされている箱体を備えており、
前記箱体は、孔を有しており、前記検査対象レンズを挟んで前記カメラと反対側に前記孔が位置するように配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のレンズ外観検査装置。 - 更に、前記検査対象レンズ及び前記照明光照射手段、並びに、前記カメラを覆うエンクロージャを備えており、
前記エンクロージャの内面は、前記照明光の反射が防止される反射防止面とされている
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のレンズ外観検査装置。 - 更に、前記検査対象レンズと前記カメラとの間の距離を調整する距離調整手段を備えている
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のレンズ外観検査装置。
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