以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[鉄筋結束機1Aの断面構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄筋結束機1Aの断面構成の一例を示している。なお、図1の鉄筋結束機1Aにおいて、紙面左側を鉄筋結束機1Aの前側とし、紙面右側を鉄筋結束機1Aの後側とし、紙面上側を鉄筋結束機1Aの上側とし、紙面下側を鉄筋結束機1Aの下側とする。
図1に示すように、鉄筋結束機1Aは、結束機本体10と、ハンドル部11Aと、ワイヤWが収容される収容部であるマガジン2Aと、マガジン2Aに収容されたワイヤWを送るワイヤ送り部3Aと、ワイヤ送り部3Aに送られるワイヤW、及び、ワイヤ送り部3Aから送り出されたワイヤWをガイドするガイド部4Aを備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3Aより送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回すカールガイド部5Aと、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを切断する切断部6Aと、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを把持して捩る捩り機構7Aを備える。
結束機本体10は、前後方向(カールガイド部5Aが設けられる側(前記一端側)を前方向とし、その反対側(他端側)を後方向とした場合における前後方向)に延びる細長の筒状をなすケースにより構成され、鉄筋結束機1Aの左右で分割可能な半割構造となっている。結束機本体10の内部には、捩り機構7A及び捩り機構7Aを駆動する駆動機構8A等が所定位置に組み付けられている。
ハンドル部11Aは、作業者が把持するための部位であり、結束機本体10の中央部よりもやや後部側の下面から略下方(鉛直方向)に向かって延在している。ハンドル部11Aの前部側であって結束機本体10との境界部付近には、作業者が鉄筋結束機1Aを操作するためのトリガー12Aが設けられている。
トリガー12Aの後方側であってハンドル部11Aの内部には、スイッチ13Aが設けられている。スイッチ13Aは、作業者によるトリガー12Aの押圧操作に応じてオンし、送りモータ32(図3参照)及び捩りモータ80等を動作させる。また、ハンドル部11Aの下部には、バッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。
マガジン2Aは、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20を着脱可能に収納する。鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3AでワイヤWを送る動作、及び、手動でワイヤWを送る動作で、マガジン2Aに収納されたリール20が回転しながら、ワイヤWがリール20から繰り出される。
ワイヤ送り部3Aは、ワイヤWを送る一対の送り部材として、回転動作でワイヤWを送る平歯車状の第1の送りギア30Lと、第1の送りギア30Lとの間にワイヤWを挟持する同じく平歯車状の第2の送りギア30Rとを備える。一対の第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、円板状の部材の外周面に歯部が形成された平歯車状である。なお、図1において第1の送りギア30Lは、第1の送りギア30Rの紙面奥側に位置している。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが、ワイヤWの送り経路を挟んで設けられることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの外周面同士が対向するように構成される。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、外周面の対向する部位の間に、ワイヤWを挟持する。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、ワイヤWをワイヤWの延在方向に沿って送る。
ワイヤ送り部3Aは、送りモータ32の回転方向の正逆を切り替えることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを正転させることで、ワイヤWが矢印X1で示す正方向、すなわち、カールガイド部5Aの方向に送られ、カールガイド部5Aで鉄筋Sに巻き回される。また、ワイヤWを鉄筋Sに巻き回した後に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを逆転させることで、ワイヤWは矢印X2で示す逆方向、すなわち、マガジン2Aの方向に送られる(引き戻される)。ワイヤWを鉄筋Sに巻き回した後に引き戻すことで、ワイヤWは鉄筋Sに密着される。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rと、ハンドル部11Aとの間に、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rを互いに近づく方向及び離す方向に変位させる第2の変位部材36が設けられている。第2の変位部材36には、第2の変位部材36を変位させる図示しない操作ボタンが取り付けられている。
ガイド部4Aは、マガジン2Aと第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとの間に設けられ、送られてきた1本または複数本のワイヤWの向きを規制し(複数本のワイヤWが送られる場合にはワイヤWを並列にし)、ワイヤWを送り出す。なお、ガイド部4Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの矢印X1方向の下流側に設けることもできる。
カールガイド部5Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWに巻き癖をつける第1のガイド部50と、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWを捩り機構7Aに誘導する第2のガイド部51を備える。
第1のガイド部50は、ワイヤWの送り経路を構成するガイド溝52と、ガイド溝52との協働でワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材としてのガイドピン53、53bを備える。
ガイド溝52は、ガイド部4Aと共にワイヤWの送り方向に直交するワイヤWの径方向の向きを規制する。
ガイドピン53は、第1のガイド部50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。ガイドピン53は、ガイド溝52に沿って送られるワイヤWが、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に入り込まないように、ワイヤWの送り経路を規制する。
ガイドピン53bは、第1のガイド部50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWは、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の2点と、この2点の間の内側の1点の少なくとも3点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置が規制されることで、ワイヤWに巻き癖が付けられる。
本例では、正方向に送らされるワイヤWの送り方向に対し、ガイドピン53の上流側に設けられるガイド部4Aと、ガイドピン53の下流側に設けられるガイドピン53bの2点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の位置が規制される。また、ガイドピン53で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側の位置が規制される。
カールガイド部5Aは、鉄筋SにワイヤWを巻き付ける動作でワイヤWが移動する経路からガイドピン53を退避させる退避機構53aを備える。退避機構53aは、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、捩り機構7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けるタイミングの前に、ガイドピン53をワイヤWが移動する経路から退避させる。
第2のガイド部51は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置(ループRuの径方向へのワイヤWの動き)を規制する固定ガイド部54と、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った位置(ループRuの軸方向Ru1へのワイヤWの動き)を規制する可動ガイド部55を備える。
可動ガイド部55は、軸を支点とした回転(回動)動作によって、第1のガイド部50から送り出されたワイヤを第2のガイド部51に誘導し得るガイド位置と、鉄筋Sから鉄筋結束機1Aを抜く動作で退避する退避位置との間で開閉する。
切断部6Aは、図示しない固定刃部と、固定刃部との協働でワイヤWを切断する回転刃部61と、捩り機構7Aの動作を回転刃部61に伝達する伝達機構62を備える。回転刃部61は、軸を支点とした回転動作で、固定刃部のガイド部4Aを通るワイヤWを切断する。伝達機構62は、捩り機構7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩るタイミングに合わせて回転刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
捩り機構7Aは、ワイヤWを把持する把持部70と、ワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を鉄筋S側へ曲げる折り曲げ部(曲げ部)71と、ワイヤWの一方の端部WSの位置を規制する長さ規制部74と、捩りモータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を介して捩りモータ80に駆動される回転軸82(図2参照)と、回転軸82の回転動作で変位する可動部材83と、回転軸82の回転動作と連動した可動部材83の回転を規制する回転規制部材84とを備える。
把持部70は、固定把持部材70Cと、第1の可動把持部材70Lと、第2の可動把持部材70Rを備える(図3参照)。第1の可動把持部材70Lと第2の可動把持部材70Rは、固定把持部材70Cを介して左右方向に配置される。具体的には、第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cに対し、巻き回されるワイヤWの軸方向に沿った一方の側に配置され、第2の可動把持部材70Rは、他方の側に配置される。
折り曲げ部71は、鉄筋Sを結束した後のワイヤWの端部が、鉄筋Sから離れる方向に最も突出するワイヤWの頂部よりも結束物側へ位置するようにワイヤWを曲げる。折り曲げ部71は、把持部70でワイヤWを捩る前に、把持部70で把持されたワイヤWを曲げる。
長さ規制部74は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間を通過したワイヤWの送り経路に、ワイヤWの一方の端部WSが突き当てられる部材を設けて構成される。長さ規制部74は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70LによるワイヤWの把持位置から所定の距離を確保するため、本例ではカールガイド部5Aの第1のガイド部50に設けられる。
回転軸82と可動部材83は、回転軸82に設けたネジ部と、可動部材83に設けたナット部により、回転軸82の回転動作が、可動部材83の回転軸82に沿った前後方向への移動に変換される。捩り機構7Aは、可動部材83と一体に設けられ、可動部材83の前後方向への移動で前後方向に移動する。
可動部材83及び折り曲げ部71は、把持部70でワイヤWを把持及び折り曲げ部71でワイヤWを折り曲げる動作域では、回転規制部材84に係止されることで、回転規制部材84により回転動作が規制された状態で前後方向に移動する。また、可動部材83及び折り曲げ部71は、回転規制部材84の係止から抜けることで、回転軸82の回転動作で回転する。
また、鉄筋結束機1Aは、制御部100を備える。制御部100は、捩りモータ80や送りモータ32等に電力を供給したり、捩りモータ80等の各動作を制御したりする。制御部100は、捩り機構7Aの上方側に組み付けられ、各配線が捩り機構7A側に引き出されている。
結束機本体10の後部(背面部)には、操作部16Aが設けられている。操作部16Aは、ワイヤWの締め付けトルクを調整するためのトルク調整ダイヤルと、鉄筋結束機1Aの電源のオン及びオフを切り替えるためのスイッチと、スイッチのオン及びオフ等に基づいて点灯するLEDとを有する。操作部16Aは、制御部100に図示しない配線を介して接続されている。
[鉄筋結束機1Aの動作例]
次に、鉄筋SをワイヤWで結束する場合における鉄筋結束機1Aの動作の一例について図1及び図2を参照して説明する。図2A〜図2Dは、ワイヤWを把持して捩る動作の一例を説明するための図である。
図1及び図2Aに示すように、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rによりマガジン2Aから2本のワイヤWが正方向に送られると、ワイヤWは固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rとの間を通り、カールガイド部5Aの第1のガイド部50のガイド溝52を通過する。これにより、ワイヤWは鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
第1のガイド部50から送り出されたワイヤWは、第2のガイド部51の可動ガイド部55により移動が規制された状態で固定ガイド部54に誘導される。固定ガイド部54に誘導されたワイヤWは、固定ガイド部54でループRuの径方向に沿った移動が規制され、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間に誘導される。そして、ワイヤWの先端が長さ規制部74に突き当てられる。これにより、ワイヤWが、鉄筋Sの周囲にループ状に巻き回される。
図1及び図2Bに示すように、ワイヤWの送りを停止した後、捩りモータ80が正回転方向に駆動されることで、可動部材83を前方向である矢印方向に移動させる。すなわち、可動部材83は、捩りモータ80の回転に連動した回転動作が、回転規制部材84により規制されて、捩りモータ80の回転が直線移動に変換される。これにより、可動部材83は前方向に移動する。可動部材83が前方向に移動する動作に連動して折り曲げ部71が前方向に移動することで、第1の可動把持部材70Lが軸77を支点とした回転動作で固定把持部材70Cに近づく方向に移動する。これにより、ワイヤWの一方の端部WS側が把持される。
また、第2の可動把持部材70Rは、軸77を支点とした回転動作で、固定把持部材70Cに近づく方向に移動する。第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cに近づく方向に移動することで、ワイヤWは延在方向に支持される。
さらに、可動部材83が前方向に移動する動作が退避機構53aに伝達され、ガイドピン53をワイヤWが移動する経路から退避させる。第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間にワイヤWの一方の端部WS側を把持した後、送りモータ32が逆回転方向に駆動されることで、第1の送りギア30Lが逆転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが逆転する。これにより、2本のワイヤWがマガジン2A方向に引き戻され、逆方向に送られる。ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに密着されるようにして巻き付けられる。
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、ワイヤWの送りを停止した後、捩りモータ80が正回転方向に駆動されることで、可動部材83を前方向に移動させる。可動部材83が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達され、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cで把持されたワイヤWの他方の端部WE側が回転刃部61の動作で切断される。
図2Bに示すように、ワイヤWを切断した後、可動部材83を更に前方向に移動させることで、可動部材83と一体で折り曲げ部71が前方向に移動する。
図2Cに示すように、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に所定距離移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側を、曲げ部71b1で鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。また、折り曲げ部71が更に前方向に移動することで、開閉ピン71aが開閉ガイド孔77R内を移動することにより、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間に、ワイヤWの一方の端部WE側が送られる隙間がある。
また、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に所定距離移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WE側を、曲げ部71b2で鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。
図1及び図2Dに示すように、ワイヤWの端部を鉄筋S側に折り曲げた後、捩りモータ80が更に正回転方向に駆動されることで、捩りモータ80は、可動部材83をさらに前方向である矢印F方向に移動させる。可動部材83が矢印F方向の所定の位置まで移動することで、可動部材83は回転規制部材84の係止から抜け、可動部材83の回転規制部材84による回転の規制が解除される。これにより、捩りモータ80が更に正回転方向に駆動されることで、ワイヤWを把持している把持部70が回転し、ワイヤWを捩る。把持部70は、図示しないバネで後方に付勢されており、ワイヤWにテンションを掛けながら捩る。よって、ワイヤWが緩むことなく、鉄筋SがワイヤWで結束される。
[鉄筋結束機1Aのブロック構成例]
図3は、鉄筋結束機1Aの機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、鉄筋結束機1Aは、機械全体の動作を制御する制御部100を備える。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を有しており、ROM等のメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより鉄筋SをワイヤWにより結束する結束処理を実施する。
制御部100には、正逆転駆動回路120、回転数検出回路130及び電流検出回路(駆動情報検出部)140がそれぞれ接続されている。正逆転駆動回路120には、送りモータ(駆動部)32が接続されている。
正逆転駆動回路120は、例えばドライバ回路から構成され、制御部100から供給される制御信号に基づいて送りモータ32を正回転または逆回転させるための駆動信号を生成して送りモータ32に供給する。
送りモータ32は、例えばDCモータ等から構成され、図示しないギアを介して第1の送りギア30Lに接続されている。送りモータ32は、正逆転駆動回路120から供給される駆動信号に基づいて駆動し、第1の送りギア30L及びこれに従動する第2の送りギア30Rを正回転及び逆回転させる。
回転数検出回路130は、例えばエンコーダから構成され、送りモータ32に取り付けられている。回転数検出回路130は、送りモータ32の回転数を検出し、その検出結果(回転パルス)を制御部100に供給する。
電流検出回路140は、正逆転駆動回路120と送りモータ32との間に接続され、正逆転駆動回路120から送りモータ32に供給される駆動情報としての駆動電流を検出し、検出した駆動電流を制御部100に供給する。
制御部100には、回転数検出回路130から送りモータ32の回転数(パルス数)が入力され、電流検出回路140から送りモータ32の駆動電流のそれぞれが入力される。制御部100は、入力される送りモータ32の回転数及び駆動電流と、タイマー110によりカウントされる時間とに基づいて送りモータ32の動作を制御し、ワイヤWの送り動作や引戻し動作、第1の送りギア30L等の空転防止動作を行う。また、制御部100は、空転防止動作において、電流検出回路140で検出された送りモータ32の駆動電流等に基づいて第1の送りギア30L等の空転の発生タイミングを判断し、この判断結果に基づいて送りモータ32の駆動を停止させる制御を実行する。
[送りモータ32の駆動電流について]
次に、ワイヤWにより鉄筋Sを結束する際の送りモータ32の駆動電流の変化について説明する。ワイヤWの正方向への送りが終了し、送りモータ32が正回転から逆回転に切り替えられると、送りモータ32の回転負荷が増大し、駆動電流IREFが第1のピーク値となる。その後、送りモータ32の回転数の上昇に伴って、駆動電流IREFが徐々に低下していく。ワイヤWの引戻しが進み、ワイヤWが鉄筋Sに巻き付けられていくと(密着すると)、送りモータ32の回転負荷が増大し、駆動電流IREFは減少から増加に転じる。
ワイヤWが鉄筋Sに完全に巻き付けられ、ワイヤWが確実に引き戻った状態になると、送りモータ32の回転負荷がさらに増加し、駆動電流IREFが第2のピーク値となる。この状態で、送りモータ32の逆回転が継続すると、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転する。
[ワイヤWの引戻し時における鉄筋結束機1Aの動作例]
図4は、ワイヤWの引戻し時における鉄筋結束機1Aの制御部100の動作の一例を示している。制御部100は、ROM等のメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、以下の図4に示す処理を実現する。
図4に示すように、ステップS100において、制御部100は、作業者によるトリガー12Aの押圧操作によりスイッチ13Aがオンされると、ワイヤWの送り動作を開始し、ステップS110に進む。
ステップS110において、制御部100は、正逆転駆動回路120を介して送りモータ32を正回転させる。これにより、ワイヤWは、正方向(矢印X1)に送られる。また、制御部100は、回転数検出回路130により検出された送りモータ32の回転数に基づいてワイヤWの送り量を計測する。制御部100のタイマー110は、時間のカウントを開始する。ステップS110が終了したら、ステップS120に進む。
ステップS120において、制御部100は、タイマー110によりカウントされる時間T1REFと、予め設定されている基準時間T1とを比較する。制御部100は、時間T1REFが基準時間T1以上であると判断した場合、後述するワイヤWの送り量R1REFが基準送り量R1に達する前のタイミングであるため、何らかの原因でワイヤWの送り不良等の問題が発生したと判断し、ステップS210に進む。ステップS210において、制御部100は、送りモータ32を停止させる。一方、制御部100は、時間T1REFが基準時間T1未満であると判断した場合、ステップS130に進む。
ステップS130において、制御部100は、回転数検出回路130により検出された送りモータ32の回転数から算出されるワイヤWの送り量R1REFと、予め設定されている基準送り量R1とを比較する。制御部100は、送り量R1REFが基準送り量R1未満である場合、ワイヤWの送りが終了していないと判断してステップS120に戻り、ワイヤWの正方向への送りを継続して行う。一方、制御部100は、送り量R1REFが基準送り量R1以上である場合、ワイヤWの送りが正常に終了したと判断してステップS140に進む。
ステップS140において、制御部100は、正逆転駆動回路120を介して送りモータ32を停止させる。これにより、ワイヤWの送りも停止される。また、制御部100はワイヤWの送り量の計測を停止し、タイマー110も時間のカウントを停止する。ステップS140が終了したら、ステップS150に進む。
ステップS150において、制御部100は、送りモータ32の停止後に、ワイヤWの引戻し動作を開始する。具体的には、制御部100は、正逆転駆動回路120を介して送りモータ32を逆回転させる。これにより、ワイヤWは、逆方向(矢印X2)に引き戻される。また、制御部100は、回転数検出回路130で検出された送りモータ32の回転数に基づいてワイヤWの引戻し量R2REFを計測する。タイマー110は、時間のカウントを開始する。また、制御部100は、ワイヤWの引戻し動作の開始に伴い、電流検出回路140から入力される送りモータ32の駆動電流IREFを監視すると共に、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで空転が発生するか否かを監視する。ステップS150が終了したら、ステップS160に進む。
ステップS160において、制御部100は、タイマー110によりカウントされる時間T2REFと、予め設定されている基準時間T2とを比較する。制御部100は、時間T2REFが基準時間T2に達したと判断した場合、ワイヤWの引戻し量R2REFが基準送り量R2に達する前のタイミングであるため、何らかの原因でワイヤWの引戻し不良が発生したと判断し、ステップS210に進む。ステップS210において、制御部100は、送りモータ32を停止させる。一方、ステップS160において、制御部100は、時間T2REFが基準時間T2未満であると判断した場合、ステップS170に進む。
ステップS170において、制御部100は、回転数検出回路130により検出された送りモータ32の回転数から算出されるワイヤWの引戻し量R2REFと、予め設定されている基準引戻し量R2とを比較する。制御部100は、引戻し量R2REFが基準引戻し量R2に達した場合、ステップS210に進む。例えば、送り不良によってワイヤWの先端が把持されていない状態で引戻しが行われた場合であって、駆動電流IREFも上昇せずに、ワイヤWがワイヤ送り部3Aを通り超してしまう場合が考えられる。ステップS210において、制御部100は、送りモータ32を停止させる。一方、制御部100は、引戻し量R2REFが基準引戻し量R2未満であると判断した場合、ステップS180に進む。
ステップS180において、制御部100は、電流検出回路140により検出された送りモータ32の駆動電流IREFと、予め設定されている基準駆動電流Iとを比較する。制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流I未満である場合、ワイヤWが鉄筋Sに巻き付けられていない(密着していない)と判断してステップS160に戻り、ワイヤWの引戻しを継続して行う。一方、制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流I以上であると判断した場合、ワイヤWが鉄筋Sに巻き付けられていると判断し、ステップS190に進む。
ステップS190において、制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流I以上であるときの時間T3REFと、予め設定されている基準時間T3とを比較する。ここで、基準時間T3は、ワイヤWが確実に引き戻っており、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が始まらない時間である。制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流I以上であるときの時間T3REFが基準時間T3未満である場合、ワイヤWの空転が始まる前のタイミングであると判断してステップS160に戻り、ワイヤWの引戻し作業を継続して行う。
一方、制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流I以上であるときの時間T3REFが基準時間T3以上である場合、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が始まると判断してステップS200に進む。ステップS200において、制御部100は、正逆転駆動回路120を介して送りモータ32を停止させ、ワイヤWの引戻し動作を終了する。本実施の形態では、このようなワイヤWの送り動作、引戻し動作及び引戻し時の空転防止処理が繰り返し実行される。
なお、引戻し量R2REF<送り量R1REFであり、時間T2REF<時間T1REFであるので、引戻されたワイヤWの先端が第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rを通過する以前に送りモータ32が停止することはない。
また、上述した実施の形態の変形例として、図4に示したステップS180,S190の処理を別の制御に変更することもできる。具体的には、図4のステップS180において、制御部100は、電流検出回路140により検出された送りモータ32の駆動電流(駆動情報)IREFが予め設定された基準駆動電流I未満であると判断した場合、ステップS160に戻り、ワイヤWの引戻しを継続して行う。一方、制御部100は、駆動電流IREFが基準駆動電流Iと一致する(同一値である)と判断した場合にステップS190に進む。ここで、基準駆動電流Iとは、ワイヤWを引き戻すことができ、かつ、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が発生しない電流値をいう。
ステップS190において、制御部100は、送りモータ32の駆動電流IREFが基準駆動電流Iで維持されるように制御し、その状態での時間T3REFが予め設定された基準時間T3未満である場合、ステップS160に戻り、ワイヤWの引戻し作業を継続して行う。一方、制御部100は、時間T3REFが予め設定された基準時間T3以上となった場合、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が始まる直前のタイミングであると判断してステップS200に進む。ここで、基準時間T3は、ワイヤWを確実に引き戻すことができ、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が始まらない時間をいう。
ステップS200において、制御部100は、正逆転駆動回路120を介して送りモータ32を停止させ、ワイヤWの引戻し動作を終了する。これにより、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転が始まる直前に送りモータ32を停止させることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ワイヤWの引戻し時に第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rが空転すると判断した場合、送りモータ32を停止させて第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの引戻し動作を停止させる。これにより、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rでの空転を未然に防止でき、空転時に出るワイヤWの削れカスの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの空転を抑制できるので、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの余分な駆動を削減することができる。その結果、バッテリ15Aの消費電力を効果的に抑制することができる。さらに、本実施の形態によれば、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rでの空転を抑制できるので、送りモータ32の発熱も抑制することができる。
なお、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。さらに、本明細書において示した装置やプログラムにおける動作及びステップ等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いない限り、任意の順序で実現可能である。
上述した実施の形態では、ワイヤWを2本用いて鉄筋Sを結束する例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ワイヤWを1本用いた場合やワイヤWを3本以上用いて鉄筋Sを結束する鉄筋結束機についても、本発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態では、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転するか否かを送りモータ32の駆動電流や時間に基づいて判断したが、これに限定されることはない。例えば、駆動情報として、送りモータ32の駆動時間や回転数を用いて、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転するか否かを判断することができる。また、送りモータ32の駆動電流、駆動時間及び回転数のうち2以上の情報を用いて、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転するか否かを判断することもできる。
また、上述した実施の形態では、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転する直前のタイミングで送りモータ32を停止させるように制御したが、これに限定されることはない。例えば、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RがワイヤWに対して空転が発生した直後のタイミングで送りモータ32を停止させるように制御しても良い。例えば、図4のステップS190やその変形例において、基準時間T3の経過後の例えば5〜50msの範囲で、より好ましくは10〜30msの範囲で送りモータ32を停止するように制御する。