実施の形態1.
本実施の形態1の冷凍冷蔵庫の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る冷凍冷蔵庫の一構成例を示す外観正面図である。図2は、図1に示した冷凍冷蔵庫の冷媒回路図である。
図1に示すように、冷凍冷蔵庫100は、箱体100Aを備え、貯蔵室として、冷蔵室1、製氷室2、小型冷凍室3、冷凍室4および野菜室5を有する。図1に示す構成例では、冷凍冷蔵庫100の本体の最上部に冷蔵室1が設けられ、冷蔵室1の下方(Z軸矢印の反対方向)に製氷室2および小型冷凍室3が並列に設けられている。製氷室2および小型冷凍室3の下には、冷凍室4が配置され、冷凍室4の下に野菜室5が配置されている。本実施の形態1では、複数の貯蔵室を有する箱体100Aのうち、貯蔵室が冷蔵室1である場合について説明する。
冷凍冷蔵庫100は、冷蔵室1の開口部を覆う両開き扉を有する。両開き扉は、冷蔵室1の開口部を開閉する左扉7および右扉8で構成される。冷蔵室1には、両開き扉が閉じた状態で外気の浸入を防ぐ仕切板9が設けられている。仕切板9の上下方向(Z軸矢印方向)の長さは図1に示した冷蔵室1の上下方向の長さと同等である。冷凍冷蔵庫100は両開き扉を有していればよく、これらの貯蔵室の配置は図1に示す構成に限定されない。
図2に示すように、冷凍冷蔵庫100は、ヒータ18、圧縮機51、凝縮器52、減圧装置53、蒸発器54、ファン55、ダンパ装置56および制御部60を有する。圧縮機51、凝縮器52、減圧装置53および蒸発器54が冷媒配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路57が構成される。
圧縮機51は、冷媒を圧縮して吐出し、冷媒を冷媒回路57に循環させる。圧縮機51は、例えば、容量を可変できるインバータ型圧縮機である。凝縮器52は、冷媒に外気と熱交換させる熱交換器である。凝縮器52は、例えば、冷媒から熱を奪って冷凍冷蔵庫100の外部に放出させる凝縮パイプである。凝縮パイプは、冷凍冷蔵庫100の筐体側面に設けられている。減圧装置53は、冷媒を減圧して膨張させる。減圧装置53は、例えば、キャピラリーチューブである。蒸発器54は、冷媒に庫内の空気と熱交換させる熱交換器である。ファン55は、蒸発器54において冷媒と熱交換することで冷却された空気を冷蔵室1および冷凍室4等に供給する。ファン55は、例えば、プロペラファンである。ダンパ装置56は、バッフルの開度を変えることで、冷蔵室1および冷凍室4等に供給される冷気の供給量を調節する。ヒータ18は、図1に示す仕切板9に設けられ、仕切板9の表面が結露することを防止する。
また、冷凍冷蔵庫100は、冷蔵室1および冷凍室4等の温度制御、ならびにヒータ18の通電制御等のために、複数のセンサを有する。具体的には、冷凍冷蔵庫100は、冷凍室温度センサ71、冷蔵室温度センサ72、外気温度センサ73および外気湿度センサ74を有する。冷凍室温度センサ71は、冷凍室4に設けられ、冷凍室温度Tfを検出する。冷蔵室温度センサ72は、冷蔵室1に設けられ、冷蔵室温度Tiを検出する。外気温度センサ73は、冷凍冷蔵庫100の周囲環境として外気温度Toを検出する。外気湿度センサ74は、冷凍冷蔵庫100の周囲環境として外気湿度Moを検出する。外気温度センサ73および外気湿度センサ74は、例えば、左扉7の図に示さない上側ヒンジ部に設けられている。冷蔵室温度センサ72は、冷蔵室1の温度管理だけでなく、ヒータ18への通電を最適に行うための仕切板9の表面の温度補償の役目を果たす。
なお、冷凍室温度センサ71は、冷凍物の貯蔵室の温度を検出できる位置であればよく、設置位置は限定されない。冷蔵室温度センサ72は、冷蔵物の温度を検出できる位置であればよく、設置位置は限定されない。外気温度センサ73は、周囲環境として外気温度Toを検出できれば、設置場所は限定されない。外気湿度センサ74は、周囲環境として外気湿度Moを検出できれば、設置場所は限定されない。
ただし、外気温度センサ73および外気湿度センサ74の設置場所は、冷凍冷蔵庫100の運転の影響を受けない場所であることが望ましい。例えば、冷凍冷蔵庫100が運転中、筐体側面に固定された凝縮パイプ(不図示)の温度が高くなるため、外気温度センサ73および外気湿度センサ74は、凝縮パイプからの放熱の影響を受けない位置に設置するのが望ましい。例えば、外気温度センサ73および外気湿度センサ74の設置場所が左扉7または右扉8の上側ヒンジ部である場合、凝縮パイプ(不図示)の熱の影響を受けない。
図3は、図1に示すA−A線の断面図である。仕切板9を境界にして、図3の上側(Y軸矢印方向)が庫内側であり、図3の下側(Y軸矢印と反対方向)が庫外側である。仕切板9は、水平面(XY平面)の断面が長方形の直方体である。図1に示した左扉7の庫内側には左扉内板10が設けられ、右扉8の庫内側には右扉内板11が設けられている。左扉内板10には、庫内側に立ち壁15が設けられている。右扉内板11には、庫内側に立ち壁16が設けられている。
冷蔵室1の両開き扉が閉状態である場合、図3に示すように、仕切板9は、立ち壁15と立ち壁16との間に位置する。仕切板9は左扉7にヒンジ機構(不図示)で取り付けられている。仕切板9はヒンジ機構の軸(Z軸矢印方向に平行)に対して回転できる構成である。
仕切板9は、板金部材17、ヒータ18および断熱材19を有する。図3に示すように、仕切板9の庫外側の表面に、両端が庫内側に折り曲げられた板金部材17が取り付けられている。板金部材17の庫内側にヒータ18が配置されている。アルミ箔14がヒータ18を覆って板金部材17に糊付けまたは両面テープで貼り付けられているため、ヒータ18は板金部材17に固定されている。
また、仕切板9において、板金部材17およびヒータ18よりも庫内側に、断熱材19が配置されている。断熱材19はヒータ18の熱が庫内側に伝導することを抑制する。断熱材19は背面(Y軸矢印方向の面)および側面(X軸矢印方向の面およびX軸矢印と反対方向の面)が庫内側樹脂部材20で覆われている。そして、板金部材17と断熱材19との間に嵌め込まれた庫外側樹脂部材28が、庫内側樹脂部材20の側面の一部を覆う構成である。
左扉内板10の溝部24に左扉ガスケット22が嵌め込まれている。右扉内板11の溝部24に右扉ガスケット23が嵌め込まれている。図3に示すように冷蔵室1の両開き扉が閉状態で、左扉ガスケット22および右扉ガスケット23のそれぞれは、仕切板9の板金部材17と対向する位置に磁石25を備えている。冷蔵室1の両開き扉が閉状態において、板金部材17が磁力で磁石25に引きつけられることで、左扉ガスケット22および右扉ガスケット23が仕切板9の板金部材17と密着し、庫外から冷蔵室1への外気の侵入を遮断する。
また、左扉内板10の仕切板9側には、パッキン29が設けられている。右扉内板11の仕切板9側には、右扉ガスケット23の一部が立ち壁16に沿うように庫内側に突出している。パッキン29および右扉ガスケット23の突出部分は、ヒータ18から仕切板9の周囲への熱漏洩を抑制する。
ユーザが左扉7を開けると、仕切板9は、仕切板9の上端に設けられた溝形状に冷蔵室1の天面に設置されたガイド部品の突起が引っ掛かる。そのため、仕切板9は、左扉7のヒンジ機構(不図示)の軸を中心に反時計回りに回転し、立ち壁15に沿って立ち壁15と一体になる。一方、ユーザが左扉7を閉めると、仕切板9は、仕切板9の上端に設けられた溝形状に冷蔵室1の天面に設置されたガイド部品の突起が引っ掛かる。そのため、仕切板9は、立ち壁15から引き離されるように、左扉7のヒンジ機構(不図示)の軸を中心に時計回りに回転する。その結果、仕切板9、左扉内板10および右扉内板11は、図3に示した状態になる。このようにして、仕切板9は、両開き扉が閉状態である場合に、冷蔵室1の左扉7および右扉8の間から外気が冷蔵室1に侵入することを防止する役目を果たす。
次に、制御部60の構成を説明する。図4は、図2に示した制御部の機能ブロック図である。制御部60は、例えば、マイクロコンピュータである。図2に示すように、制御部60は、プログラムを記憶するメモリ61と、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62とを有する。図4に示すように、制御部60は、冷凍サイクル制御手段65と、ヒータ制御手段66とを有する。CPU62がプログラムを実行することで、冷凍サイクル制御手段65およびヒータ制御手段66が冷凍冷蔵庫100に構成される。
冷凍サイクル制御手段65は、冷凍室温度Tf、冷蔵室温度Ti、冷凍室目標温度および冷蔵室目標温度Tsに基づいて冷媒回路57の冷凍サイクルを制御する。具体的には、冷凍サイクル制御手段65は、冷凍室温度Tfが冷凍室目標温度に一致するように、圧縮機51の回転数を制御する。また、冷凍サイクル制御手段65は、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに一致するように、ファン55の回転数とダンパ装置56のバッフルの開度とを制御する。冷蔵室目標温度Tsはメモリ61に記憶されている。
ヒータ制御手段66は、外気温度Toおよび外気湿度Moから算出される基準通電率DRrefに基づいてヒータ18への通電率を制御する。通電率は、ヒータ18に定格電流で通電する時間の割合を示す。例えば、時間10秒のうち、5秒通電する場合の通電率は、(5[s]/10[s])×100%=50%となる。基準通電率DRrefは仕切板9の表面に露が付かない通電率である。基準通電率DRrefは、外気温度Toと外気の相対湿度Mrhとから後述の算出式を用いて算出される。相対湿度Mrhは、決められた空気線図を基に外気温度Toおよび外気湿度Moから求まる。外気温度Toおよび外気湿度Moから相対湿度Mrhを算出する式が、メモリ61が記憶するプログラムに登録されている。
基準通電率DRrefについて説明する。図5および図6は、外気温度および相対湿度から基準通電率を求める算出式を示すグラフである。基準通電率DRrefは、例えば、図5に示すように、外気温度Toをパラメータとする算出式PF1〜PF3が設定されている。図5に示す例では、外気温度To≦20℃以下、20℃<外気温度To≦30℃、30<外気温度To≦40℃の3つの温度帯の場合を示す。基準通電率DRrefは、各算出式PF1〜PF3にしたがって、相対湿度Mrhが上昇すると線形的に上昇する。
また、図6は、基準通電率DRrefについて、別の算出式を示すグラフである。図6に示すように、基準通電率DRrefは、外気温度Toをパラメータとする算出式LF1〜LF3が設定されている。図6についても、図5と同様に、温度帯が3つの場合を示す。基準通電率DRrefは、各算出式LF1〜LF3にしたがって、相対湿度Mrhが上昇すると対数的に上昇する。
図5に示す算出式PF1〜PF3および図6に示すLF1〜LF3は例であり、基準通電率DRrefの算出式は、仕切板9の素材の熱伝導率および仕切板9の厚さ等の構造、ヒータ18の定格ワット数および庫内設定温度などによって決まる。検出される外気温度Toがどの温度帯に属するかによって決定される算出式に、外気温度Toおよび外気湿度Moから算出された相対湿度Mrhが代入されることで、基準通電率DRrefが算出される。どの条件でどの算出式が最適であるかが予め開発試験などで決められており、算出式決定手順はメモリ61が記憶するプログラムに登録されている。
例えば、図5に示す算出式PF1〜PF3は、基準通電率DRref=A×Mrh+Bで表される。この式において、AおよびBの係数は外気温度Toの温度帯毎に設定される。また、図6に示す算出式LF1〜LF3は、自然対数をlnの記号で表すと、基準通電率DRref=C×lnMrh+Dで表される。CおよびDの係数は外気温度Toの温度帯毎に設定される。これらの係数は、予め開発試験などで決定され、メモリ61が記憶するプログラムに登録されている。
なお、本実施の形態1では、図5および図6に示すように、算出式を決めるための温度帯が3つの場合で説明したが、温度帯は3つに限らない。また、本実施の形態1では、温度帯の幅が10℃以上の場合で説明したが、温度帯の幅は10℃に限らず、10℃よりも小さい5℃等の値にして、温度帯の幅を細分化してもよい。
本実施の形態1では、ヒータ制御手段66は、上記のようにして基準通電率DRrerを算出した後、ヒータ18に出力する補正通電率DRaとして、式(1)に示すように、基準通電率DRrefに通電係数ktを乗算して算出する。
式(1)における通電係数ktを説明する前に、仕切板9を通過する、庫外から庫内への入熱について説明する。図7は、図1に示した冷蔵室内への外気からの熱移動を示すモデル図である。図7において、αoは庫外側熱伝達率[W/(m2・K)]であり、αiは庫内側熱伝達率[W/(m2・K)]である。λは仕切板9の熱伝導率[W/(m・K)]であり、dは仕切板9の厚さ[m]である。ここでは、入熱モデルを簡便に考え、仕切板9を通過する単位面積当たりの熱移動量(熱流束)q[W/m2]は、図7が示す熱移動から、式(2)によって算出される。式(2)においては、外気温度Toおよび冷蔵室温度Tiの単位をケルビン[K]としている。
式(2)の右辺のうち、(To−Ti)項の前項は熱通過係数と称されるものである。仕切板9の熱伝導率は、本来、図3に示した板金部材17の熱伝導率、断熱材19の熱伝導率および庫内側樹脂部材20の熱伝導率から算出される。ここでは、簡略的に仕切板9を1つの部材として扱い、仕切板9の熱伝導率をλとしている。
また、入熱モデルを厳密に3次元的に考える場合、仕切板9の側面の外側から冷蔵室1に回り込むヒートブリッジの影響も考慮しなければならない。本実施の形態1では、仕切板9の側面が樹脂で覆われているため、仕切板9の側面の外側のヒートブリッジの影響による熱移動量は熱移動量qに対して小さいと考えられる。そのため、ここでは、入熱モデルを簡便に2次元的な熱移動として考える。また、熱伝導率λは、板金部材17、断熱材19および庫内側樹脂部材20等の各部材の素材によって決まる物性値とみなせる。そのため、熱伝導率λは、冷凍冷蔵庫100の運転の影響、例えば、凝縮パイプによる熱影響およびヒータ18の通電時の熱影響などで変化はしない。
庫外側の熱伝達率αoについては、仕切板9表面の空気流速に依存されると推察されるが、冷凍冷蔵庫100が設置される環境での風速は小さいと想定される。また、仕切板9の表面の一部は外気に露出しているが、仕切板9は、左扉7と右扉8との間の狭い隙間の奥に配置されているため、冷凍冷蔵庫100の周囲の風速の影響も受けにくい。一方、ヒータ18の発熱に起因して仕切板9の表面付近の空気が暖められると、仕切板9の表面付近の空気と外気とに温度差が生じ、温度差で生じる自然対流による空気流れが想定される。しかし、ヒータ18が通電されることで生じる空気流れを考慮しても、熱伝達率αoは3〜4[W/(m2・K)]程度と小さく、冷凍冷蔵庫100が運転中であっても熱伝達率αoの変化は小さいので、熱伝導率αoは固定値と考えることができる。
また、庫内側の熱伝達率αiについては、冷蔵室1における風速がファン55の回転数により変化すると考えられる。しかし、通常、冷蔵室1の吹出口の風速は、冷気の吹出し風路および吹出し口形状にも依存するが、最大でも3[m/s]程度である。また、両開き扉が閉状態では、冷蔵室1内において、仕切板9の側面に立ち壁15および16が配置されている。そのため、立ち壁15および16が吹出し口からの冷気の障害物になって、仕切板9への風当たりが弱くなると想定される。さらに、食品などが冷蔵室1の棚に置かれている場合、食品が吹出し口からの冷気の障害物になって、仕切板9への風当たりがさらに弱くなると想定される。そのため、庫内側の仕切板9への風速は0[m/s]に近似した値となる。
これらの想定事項から、仕切板9における入熱モデルは、式(2)に近似したものになる。
次に、本実施の形態1の冷凍冷蔵庫100における冷蔵室の風速分布の解析結果を説明する。解析に用いた冷蔵室1の内容積は271リットルである。また、ファン55の直径はφ120mmであり、ファン55の回転数は2000rpmである。図8は、図1に示した冷蔵室内部の全体の冷気の流速分布を示す図である。図9は、図8に示した冷蔵室内部のうち、最上段棚における冷気の流速分布を示す拡大図である。
図8および図9において、図の左側(Y軸矢印と反対方向)が冷凍冷蔵庫100の正面側であり、図の右側(Y軸矢印方向)が冷凍冷蔵庫100の背面側である。図8および図9において、図の左端は、図3に示した仕切板9の背面(Y軸矢印方向の側面)に位置している。図8および図9は、冷蔵室1の内部における流速分布の解析結果として、流速の大きさを風速等高線で描画したものである。
図8および図9では、冷凍冷蔵庫100の庫内において、棚13および扉ポケット12を破線で示し、風速等高線35〜38を実線で示している。図8および図9に示す風速等高線35の風速は0.1[m/s]である。図9において、風速等高線36の風速は0.2[m/s]であり、風速等高線37の風速は0.3[m/s]であり、風速等高線38の風速は0.4[m/s]である。図9に示す風速等高線38の内部には、風速が0.4[m/s]より大きい箇所があるが、図9では、風速0.4[m/s]より大きい風速等高線を示すことを省略している。
図8に破線で示すように、冷蔵室1の背面側には、冷気が流通する吹出し風路39と、冷蔵室1の複数の棚13に配置された複数の吹出し口30〜34と、冷蔵室1を流通した冷気が蒸発器54に戻る戻り口40とが設けられている。冷却器として機能する蒸発器54により冷却された冷気は、ファン55により蒸発器54から吹出し風路39を経由し、吹出し口30〜34から冷蔵室1内に流入する。吹出し口30〜34の風速の数値解析結果を、表1に示す。表1では、ファン55の回転数は2000rpmである。
表1を参照すると、吹出し口30〜34のうち、吹出し口30の風速が最も大きい。その理由を説明する。冷蔵室1の最上段の棚13は冷凍冷蔵庫100の最上面からの熱漏洩により、他の棚13に比べて温度が上昇しやすい傾向がある。複数の棚13で区切られる各貯蔵室の温度分布を均等にするために、最上段の棚13での風量が多くなるように吹出し口30の断面積が他の吹出し口31〜34の断面積よりも大きい。また、吹出し口30は、吹出し風路39の末端近くに位置しているため、吹出し風路39の末端で折り返された冷気も加わるため、風速が大きくなる傾向がある。
解析結果から、図8および図9の左端に示す仕切板9の背面付近の風速は、冷蔵室1内のどの高さでも、0[m/s]に近似した値であることがわかる。そのため、式(2)において、庫内側の熱伝導率αiも、庫外側の熱伝導率αoと同様に、3〜4[W/(m2・K)]程度と小さいと考えられる。また、庫内側の熱伝導率αiは、冷凍冷蔵庫100の運転状態、例えば、ファン55の回転数が変化しても、ほとんど変化しないものと考えられる。
上述したことから、外気温度Toおよび外気湿度Moを含む周囲環境が安定し、ヒータ18の通電率が変化しなければ、式(2)における熱通過係数は、冷凍冷蔵庫100の運転中において、固定値、または、ほとんど変化しない値とみなされる。その結果、仕切板9を通過する熱流束qは、庫外の外気温度Toと庫内の冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTに比例する。
仕切板9の表面に露が付かないようにするには、表面温度を露点以上にすればよい。仕切板9を通過する熱流束qが外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTに比例するので、温度差ΔTに比例してヒータ18への通電を制御すれば、仕切板9の表面温度が結露しない温度に保たれることが原理的にわかる。つまり、式(1)における通電係数ktは、外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTに比例する値に設定すればよい。本実施の形態1では、ヒータ制御手段66は、式(3)にしたがって通電係数ktを算出する。
式(3)において、分子が外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTであり、分母は外気温度Toと冷蔵室目標温度Tsとの温度差になっている。冷蔵室目標温度Tsは、例えば、3℃として設定される固定値である。ヒータ制御手段66は、式(3)にしたがって、通電係数ktを設定する。
冷蔵室温度Tiが高い場合、例えば、冷凍冷蔵庫100の設置後、電源投入開始の直後では、冷蔵室温度Tiが外気温度Toと同じなっている。例えば、外気温度Toが30℃と検出され、冷蔵室温度Tiも30℃と検出された場合、仕切板9を通過する熱流束qも0となるので、ヒータ18による仕切板9の加熱は不要となる。この場合、式(3)において外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTが0となり、ヒータ制御手段66は、通電係数ktを0と算出する。その結果、ヒータ制御手段66は、式(1)から、補正通電率DRaを0%と算出する。
冷凍冷蔵庫100への電源投入後、冷凍冷蔵庫100が運転することで、冷蔵室温度Tiが次第に低下する。冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達すると、式(3)の右辺における分子の値と分母の値が同じになり、ヒータ制御手段66は、通電係数ktを1と算出する。その結果、式(1)において、補正通電率DRaは基準通電率DRrefと同じになり、ヒータ制御手段66は、補正通電率DRaとして、基準通電率DRrefを算出する。
その後、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsよりも低くなる場合がある。この場合、通電係数ktが1よりも大きくなり、補正通電率DRaが基準通電率DRrefよりも大きくなる。そのため、補正通電率DRaの上限値として基準通電率DRrefが設定されている。これにより、ヒータ18に必要以上の通電を行うことを防ぐことができる。
式(3)に示すように、通電係数ktは、外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTの関数となっている。そのため、ヒータ制御手段66が温度差ΔTを一定の周期で算出して更新することで、周囲環境が安定し、かつ電源投入から冷蔵室温度Tiが直線的に下がっていくような場合、リニアに補正通電率DRaが変化する。そのため、冷蔵室温度Tiの変化に対して、ヒータ18の通電率を最適に制御することができる。
また、周囲環境が安定しない状況でも、式(3)に示すように、周囲環境に合わせて通電係数ktも変化するため、通電係数ktの変化に対応して補正通電率DRaも変化する。そのため、周囲環境の変化に対して、ヒータ18の通電率を最適に制御することができる。
次に、ヒータ制御手段66が実行するヒータ通電制御の手順を説明する。図10は、図4に示したヒータ制御手段が実行するヒータ通電制御の手順の一例を示すフローチャートである。
ヒータ制御手段66は、外気温度センサ73から外気温度Toを取得すると(ステップS1)、外気温度Toを基に、基準通電率DRrefを算出する算出式を決定する(ステップS2)。図10では、算出式の選択肢として、図5に示した算出式PF1〜PF3の場合を示しているが、算出式の選択肢は、図5に示した算出式PF1〜PF3に限らず、図6に示した算出式LF1〜LF3であってもよい。ヒータ制御手段66は、ステップS3において、算出式を決定すると、外気湿度センサ74から外気湿度Moを取得する(ステップS4)。そして、ヒータ制御手段66は、ステップS3で決定した算出式と、外気温度Toおよび外気湿度Moから算出した相対湿度Mrhとを用いて、基準通電率DRrefを算出する(ステップS5)。
続いて、ヒータ制御手段66は、冷蔵室温度センサ72から冷蔵室温度Tiを取得すると(ステップS6)、式(3)と、外気温度To、冷蔵室温度Tiおよび冷蔵室目標温度Tsとを用いて通電係数ktを算出する(ステップS7)。ヒータ制御手段66は、式(1)にしたがって、基準通電率DRrefに通電係数ktを乗算して補正通電率DRaを算出する(ステップS8)。ヒータ制御手段66は、算出した補正通電率DRaにしたがってヒータ18に通電する(ステップS9)。
なお、図10では、ステップS6で冷蔵室温度Tiを取得し、ステップS7で通電係数ktを算出する場合を示しているが、冷蔵室温度Tiの取得タイミングおよび通電係数ktの算出タイミングは、図10に示す場合に限らない。冷蔵室温度Tiの取得タイミングおよび通電係数ktの算出タイミングは、外気温度Toの取得から補正通電率DRaの算出までの間であれば、いずれのタイミングでもよい。また、図10の手順に示す制御周期は、長すぎると、周囲環境の変化とずれが生じてしまう場合があるため、例えば、1分以内の周期であることが望ましい。
本実施の形態1では、ヒータ制御手段66は、図10に示した手順にしたがって、基準通電率DRrerを算出した後、ヒータ18に出力する通電率として、基準通電率DRrefに通電係数ktを乗算して算出する。冷蔵室温度Tiの低下に合わせて通電係数ktが上昇するため、ヒータ18への通電率が必要以上に大きくなることが抑制される。その結果、冷凍冷蔵庫100の消費電力量を低減できる。
次に、本実施の形態1のヒータ通電制御と比較例のヒータ通電制御とを比較する試験の結果について説明する。
本試験の条件について説明する。外気温度は30℃で一定とし、相対湿度は75%RHで一定とした。試験には、全体の定格内容積が517リットル、冷蔵室1の定格内容積が277リットルの冷凍冷蔵庫を使用した。ヒータ18として電力が11.1Wのヒータを使用した。庫内には食品は置かず、各貯蔵室の扉の開閉も行わない。また、真鍮製の温度マスを冷蔵室1の棚13に設置し、冷凍室4にも温度マスを設置した。
本試験では、2つのヒータ通電制御において、冷蔵室温度Tiの過渡的状態を比較するため、温度マスおよび仕切板9の表面温度が外気温度と同じ30℃の状態で冷凍冷蔵庫に電源を投入し、電源投入時に温度測定を開始した。また、本試験では、基準通電率として、外気温度30℃および相対湿度75%RHから算出される54%を用いた。比較例では、冷凍冷蔵庫の電源投入開始から一定値の基準通電率がヒータに通電される。
図11は、本発明の実施の形態1に係るヒータ通電制御において、外気温度が30℃であり、相対湿度が75%RHである場合に電源投入開始からの温度変化を示すグラフである。図12は、比較例のヒータ通電制御において、外気温度が30℃であり、相対湿度が75%RHである場合に電源投入開始からの温度変化を示すグラフである。図11および図12では、消費電力について目盛りを付すことを省略している。
図11において、波形201は、冷凍冷蔵庫の消費電力の時間変化を示す。波形201の期間TP1では、電源投入開始から初期段階であるため、冷凍サイクル制御手段65が庫内を早く冷やすために、圧縮機51およびファン55の回転数を大きくしている。期間TP1では、冷凍冷蔵庫は、電源が投入されてから圧縮機51およびファン55を稼働して冷却運転を行うため、冷蔵室温度203、冷蔵室マスの温度204、および冷凍室マスの温度205の各温度は時間経過に伴って低下していく。庫内の温度が目標温度まで低下すると、圧縮機51およびファン55が一旦、運転を停止する。期間TP2で、圧縮機51およびファン55が運転を再開し、各温度の波形が乱れる。その後、期間TP3〜TP5にかけて、圧縮機51およびファン55が低い回転数で安定動作し、冷蔵室温度203、冷蔵室マスの温度204、および冷凍室マスの温度205の各温度は安定する。
このように、冷蔵室温度203、冷蔵室マスの温度204、および冷凍室マスの温度205の各温度は、期間TP1では、冷凍冷蔵庫への電源投入開始から過渡的に変化し、期間TP3〜TP5では、安定する。図12の比較例を参照すると、冷凍冷蔵庫の消費電力の時間変化を示す波形301は波形201と同様な変化を示す。また、図12に示す、冷蔵室温度303、冷蔵室マスの温度304、および冷凍室マスの温度305の温度変化は、図11に示した冷蔵室温度203、温度204および温度205の温度変化と同様な傾向がある。
図11に示すグラフを参照し、冷蔵室温度203と冷蔵室マスの温度204とを比較すると、期間TP1において、冷蔵室温度203の方が温度204よりも少し高めに推移している。これは、冷蔵室1の奧側(図8に示したY軸矢印方向)から吹き出される冷気が直接当たらない位置に冷蔵室温度センサ72が設置されているのに対し、冷蔵室マスは冷気が直接当たるからである。これらの温度差が小さいことから、冷蔵室温度センサ72は、冷蔵室1の貯蔵室の温度をより的確に検知できていることがわかる。
図11および図12を参照して、庫内の温度が過渡的に変化する期間TP1において、仕切板9の表面温度を比較してみる。図11では、仕切板9の表面温度202が35℃付近で一定である。これに対し、図12の比較例では、仕切板の表面温度302が47.8℃まで上昇している。これは、比較例では、期間TP1のように冷蔵室が十分に冷えていない状態でも、通電率として一定値の基準通電率でヒータを通電しているからである。図11および図12に示す破線は温度が35℃であることを示す。
本実施の形態1のヒータ通電制御では、ヒータ18への通電率として、外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTを反映した通電係数Ktを基準通電率DRrefに乗算した補正通電率DRaを用いている。そのため、冷凍冷蔵庫100の電源投入開始から少しずつ通電率が大きくなり、上述したように、ヒータ18は、温度差ΔTに比例する通電率で通電される。その結果、図11に示すように、仕切板9の表面温度202と破線とを比較すると、表面温度202は、期間TP1の初期段階から期間TP3〜TP5の安定時と変わらない温度で推移している。また、外気温度が30℃であり、相対湿度が75%RHであるときの露点温度は約25℃であるため、本実施の形態1のヒータ通電制御でも、仕切板9の表面に露が付くことはなかった。
ここで、本実施の形態1のヒータ通電制御について、図11に示した冷蔵室温度203の変化に対する、通電係数kt、基準通電率DRrefおよび補正通電率DRaの変化について説明する。図13は、本発明の実施の形態1に係るヒータ通電制御において、冷蔵室温度、通電係数、基準通電率および補正通電率の時間変化を示す図である。図13では、消費電力および通電率について目盛りを付すことを省略している。
図13に示すように、冷凍冷蔵庫100への電源投入から冷蔵室温度203が低下するにつれて、外気温度Toと冷蔵室温度203との温度差ΔTが0から大きくなっていくため、通電係数ktは電源投入時から右肩上がりに大きくなっていく。一方、基準通電率DRrefは、外気温度Toおよび外気湿度Moで決まるので、期間TP1〜TP5の間、一定の数値で安定している。
補正通電率DRaは、基準通電率DRrefに通電係数ktを乗算したものなので、期間TP1では、直線的に右肩上がりに上昇する。期間TP1が終わるころに、冷蔵室温度203が冷蔵室目標温度Tsに到達するため、基準通電率DRrefと補正通電率DRaとが同じ値になり、ヒータへ18への通電率が基準通電率DRrefで継続される。
次に、冷凍冷蔵庫の消費電力について、本実施の形態1のヒータ通電制御と比較例のヒータ通電制御との試験結果を説明する。表2は、図11および図12に示す期間TP1における、冷凍冷蔵庫の消費電力および消費電力量を示す表である。
表2の消費電力量に注目すると、本実施の形態1が、比較例に比べて、約2%改善していることがわかる。これは、図13において、期間TP1の補正通電率DRaの波形を見てわかるように、ヒータ18への通電率低減によるものである。
また、図11および図12を参照して、冷蔵室マスの温度204および304の冷却スピード、例えば、温度が30℃から3℃に到達するまでの時間を比較すると、本実施の形態1は比較例に比べて、約3分の改善が見られた。
次に、外気温度が30℃であり、相対湿度が55%RHの場合について、本実施の形態1のヒータ通電制御と比較例のヒータ通電制御とを比較した試験結果を説明する。他の試験条件は図11および図12で説明した条件と同じであるため、その詳細な説明を省略する。本試験では、外気温度30℃および相対湿度55%RHから基準通電率は22%と算出された。
図14は、本発明の実施の形態1に係るヒータ通電制御において、外気温度が30℃であり、相対湿度が55%RHの場合に電源投入開始からの温度変化を示すグラフである。図15は、比較例のヒータ通電制御において、外気温度30℃、外気湿度55%RHの場合の電源投入時の各温度波形を示す図である。
図14は、本実施の形態1の冷凍冷蔵庫の消費電力の波形211、仕切板9の表面温度212、冷蔵室温度213、冷蔵室マスの温度214および冷凍室マスの温度215の時間変化を示す。図15は、比較例の冷凍冷蔵庫の消費電力の波形311、仕切板の表面温度312、冷蔵室温度313、冷蔵室マスの温度314および冷凍室マスの温度315の時間変化を示す。図14および図15に示す破線は約24℃の温度を示す線である。
図14および図15において、期間TP1に注目する。図14に示すように、比較例のヒータ通電制御では、仕切板の表面温度312が36.3℃まで上昇した後、低下している。その後の期間TP2においても、仕切板の表面温度312は少し上下している。これに対して、本実施の形態1のヒータ通電制御では、仕切板9の表面温度212は、電源投入後に一時的に30℃を超えるが、少しずつ低下し、期間TP2には、期間TP3以降の安定時と同等の温度になる。また、本試験の条件での露点は約20℃であるが、本実施の形態1のヒータ通電制御において、仕切板9の表面に露が付くことは認められなかった。本試験においても、本実施の形態1のヒータ通電制御の消費電力量について、図11および図12を参照して説明した試験結果と同程度の低減効果が確認できた。
なお、本実施の形態1では、図1および図3を参照して仕切板9の構造を説明したが、仕切板9の構造は本実施の形態1で説明した構造に限定されない。ヒータ18が仕切板9の内部に設けられていなくてもよい。例えば、両開き扉が閉状態で、左扉7および右扉8が対向する面のうち、少なくとも一方の面にヒータ18が設けられていてもよい。また、左扉ガスケット22および右扉ガスケット23のうち、少なくとも一方にヒータ18が設けられていてもよい。これらの場合でも、本実施の形態1のヒータ通電制御を適用することができ、本実施の形態1と同様な効果が得られる。
冷凍冷蔵庫に対する電源投入のタイミングとして、(a)買い替えなどによる据付初期での電源投入、(b)停電から電源供給再開時の電源再投入、(c)ユーザの都合による電源再投入の3通りが想定される。ユーザの都合とは、例えば、冷凍冷蔵庫の移動、および故障した場合の修理対応などである。これらの想定状況のうち、いずれの想定状況においても、本実施の形態1のヒータ通電制御が有効であることを説明する。
想定状況(a)の場合、電源投入前から冷蔵室温度が室温に近い高い温度になっているため、補正通電率DRaが基準通電率DRrefよりも小さい値になる。想定状況(b)の場合において、停電時間が短いと冷蔵室温度の上昇は大きくないので、補正通電率DRaは基準通電率DRrefと同等になる。一方、想定状況(b)の場合において、停電時間が長いと冷蔵室温度の上昇が大きくなるため、補正通電率DRaは、基準通電率DRrefよりも小さい値になるが、冷蔵室温度の低下に伴って基準通電率DRrefに近づく。想定状況(c)の場合、ヒータ18への通電再開時において、想定状況(b)の場合の停電時間と同様に、電源が供給されない時間が長いほど冷蔵室温度の温度が室温に近くなる。そのため、想定状況(c)の場合の補正通電率DRaは、電源が供給されない時間の長さにしたがって、想定状況(b)の場合と同様に制御される。これらの想定状況に応じて通電率が制御されることで、消費電力量の低減を図ることができる。
また、図13を参照して、電源投入から冷蔵室温度が冷蔵室目標温度に到達するまでの期間TP1に、式(3)で算出される通電係数ktを用いる場合を説明したが、電源投入開始から所定時間、式(3)を適用してもよい。この場合、所定時間経過後は、通電係数ktを一定値の1に設定する。例えば、ユーザが冷凍冷蔵庫を買い替えた際、室温近くまで温度が高くなった食品を新しい冷凍冷蔵庫に入れるとき、温度の高くなった食品を冷蔵室温度センサ72の近くに置く場合がある。また、ユーザは、加熱調理した物が入った鍋を、高温のまま冷蔵室1に入れる場合がある。このような場合、冷蔵室温度センサ72が検知する温度が、冷蔵室1の平均的な温度に比べて、下がりにくくなることが考えられる。
そこで、冷却対象物が冷蔵室に収納される時間を含み、冷蔵室の温度が高い状態から冷蔵目標温度に到達するまでの数時間を、所定時間としてメモリ61が記憶する。所定時間はメモリ61に予め登録されていてもよく、メモリ61が記憶する所定時間が更新されるようにしてもよい。ヒータ制御手段66は、冷蔵室の温度が高い状態から所定時間経過するまでは式(3)で算出される通電係数ktを用い、所定時間経過後、通電係数ktを一定値の1に設定する。なお、冷蔵室の温度が高い状態であるか否かを判定する基準温度をメモリ61が記憶しているものとする。
次に、冷凍冷蔵庫を買い替える場合、および高温の冷却対象物が冷蔵室に収納される場合に限らず、冷蔵室1の扉の開放時間が長い場合にも、本実施の形態1のヒータ通電制御が有効であることを説明する。
冷蔵室の左扉および右扉のうち、どちらの扉が開放されるかによって、仕切板の表面温度の変化に差があるが、冷蔵室の扉を長い時間、開放した場合、従来のヒータ通電制御は一定の基準通電率でヒータに通電するため、仕切板の表面温度は上昇する傾向がある。これに対して、本実施の形態1では、食品の出し入れなどで冷蔵室1の左扉7または右扉8が長時間、開放され、冷蔵室温度センサ72が安定時の冷蔵室温度よりも高い温度を検出すると、通電係数ktが安定時よりも小さい値になる。そのため、式(1)に示す補正通電率DRaが基準通電率DRrefよりも小さい値になる。その結果、冷凍冷蔵庫の消費電力量が低減し、省エネルギー化を図ることができる。
例えば、図3を参照して説明したように、左扉7に仕切板9が取り付けられた構成において、左扉7が閉じて右扉8が開放されている場合を考える。冷蔵室1の扉が長時間、開放されると、冷蔵室1に冷気を供給しても無駄になるので、冷凍サイクル制御手段65はファン55の回転を停止することがある。また、庫内の冷気と外気との温度差による自然対流で庫内の温度が上昇する。その結果、仕切板9の背面の表面温度が上昇する。従来、上述したように、ヒータへの通電率は基準通電率のままで変化しないため、仕切板の表面温度はさらに上昇する。これに対して、本実施の形態1のヒータ通電制御では、冷蔵室温度の上昇に合わせて通電係数ktが小さくなるので、補正通電率DRaが低下する。その結果、冷凍冷蔵庫の消費電力量が、従来に比べて改善する。
一方、右扉8が閉じて左扉7が開放されている場合、図3を参照して説明したように、仕切板9が回転して立ち壁15に沿う状態になるが、仕切板9の大部分が外気に露出する。そのため、右扉8が開放される場合に比べて、左扉7が開放される場合の方が、仕切板9の表面温度が上昇すると考えられる。この場合、冷蔵室1内の冷気と外気との入れ替えが発生するので、冷蔵室温度も上昇し、本実施の形態1のヒータ通電制御では、冷蔵室温度の上昇に合わせて補正通電率DRaが低下する。その結果、右扉8が開放される場合と同様に、冷凍冷蔵庫の消費電力量が従来に比べて改善する。左扉7および右扉8の両方の扉が開放された場合にも、冷蔵室温度が上昇し、補正通電率DRaが低下するため、冷凍冷蔵庫の消費電力量が従来に比べて改善する。
ただし、冷蔵室の扉の開放時間が数分程度である場合、ヒータ制御手段66が冷蔵室温度の変化に伴って通電係数ktを変化させても、消費電力量について、電源投入時ほどの大きな低減効果が得られないと考えられる。そこで、冷凍冷蔵庫本体への電源投入から冷蔵室温度が冷蔵室目標温度に到達すると、その後は、冷蔵室温度が大きく変動せず安定するので、通電係数ktを一定値である1に設定してもよい。このことを、図13を参照して説明すると、ヒータ制御手段66は、式(1)について、期間TP1では式(3)を用いて通電係数ktを算出し、期間TP1の経過後では通電係数ktを1に設定してもよい。期間TP1の経過後では、ヒータ制御手段66は基準通電率DRrefでヒータ18に通電することになる。
また、冷蔵室1の扉の開放時間に閾値を設定して、本実施の形態1のヒータ通電制御を行ってもよい。冷蔵室1の扉の開放時間が、例えば、冷蔵室温度Tiが10℃程度上昇する時間を、閾値として設定する。閾値は、例えば、10分である。冷凍冷蔵庫100に冷蔵室1の扉の開閉状態を検知するセンサが設けられ、ヒータ制御手段66がタイマー機能を備えている。ヒータ制御手段66は、扉の開放時間が閾値以上である場合、式(3)で算出される通電係数ktを使用し、扉の開放時間が閾値未満である場合、通電係数ktを一定値の1に設定する。扉の開放時間が閾値未満では、ヒータ制御手段66は基準通電率DRrefでヒータ18に通電することになる。
ただし、扉の開放時の冷蔵室温度Tiの時間変化は外気温度Toにも依存するため、閾値はどの外気温度Toにも対応しているわけではない。そのため、扉の開放時間が閾値を超えた場合、外気温度Toの温度の振り幅を考慮して、式(3)で算出される通電係数ktを強制的に使用する強制時間を設定してもよい。ヒータ制御手段66は、扉の開放時間が閾値以上である場合、扉が閉じてから強制時間が経過するまで式(3)で算出される通電係数ktを使用し、強制時間が経過した後、通電係数ktを一定値の1に設定する。強制時間経過後、ヒータ制御手段66は基準通電率DRrefでヒータ18に通電することになる。
また、扉の開放時間に閾値を設定する場合に限らず、冷蔵室温度Tiに閾値を設定して、ヒータ通電制御を行ってもよい。閾値は、例えば、10℃である。この場合、ヒータ制御手段66は、冷蔵室温度Tiが閾値以上に上昇すると、式(3)で算出される通電係数ktを使用し、冷蔵室温度Tiが閾値未満の値まで下がると、通電係数ktを1に設定する。冷蔵室温度Tiが閾値よりも低くなると、ヒータ制御手段66は基準通電率DRrefでヒータ18に通電することになる。扉の開放時間が長くなっても、仕切板9の表面が結露するのを防ぐとともに、ヒータ18の消費電力量を低減できる。その結果、冷凍冷蔵庫100の省エネルギー化を図ることができる。
なお、冷蔵室目標温度Tsは、ユーザが設定する温度に限らず、複数の温度設定値からユーザが1つの温度設定値を選択できるようにしてもよい。例えば、図に示さない温度操作パネルが冷凍冷蔵庫100に設けられ、ユーザが温度操作パネルを操作して、冷蔵室目標温度Tsとして、弱、中および強の3種類の温度設定値から1つの温度設定値を選択してもよい。
また、本実施の形態1のヒータ通電制御において、最低通電率DRminを設定してもよい。例えば、加熱処理した物が入った鍋など、高温の冷却対象物が冷蔵室温度センサ72の近傍に置かれた場合、外気温度Toと冷蔵室温度Tiとの温度差ΔTが小さくなるため、式(1)および式(3)から算出される補正通電率DRaが低下してしまう。この場合、仕切板9の表面温度が結露温度よりも低い温度まで下がってしまう場合がある。そこで、冷蔵室温度Tiが急激に上昇する場合を想定し、最低通電率DRminを設定する。メモリ61が最低通電率DRminを記憶する。最低通電率DRminは、例えば、基準通電率DRrefの10〜20%程度の値に設定される。ヒータ制御手段66は、式(1)および式(3)から算出される通電率DRが最低通電率DRminより小さくなった場合、最低通電率DRminでヒータ18を通電する。その結果、仕切板9の表面温度が結露温度よりも低い温度まで下がってしまうことを防げる。
本実施の形態1の冷凍冷蔵庫100は、外気温度To、冷蔵室温度Tiおよび冷蔵室目標温度Tsから通電係数ktを算出し、通電係数ktを基準通電率DRrefに乗算した補正通電率DRaで、仕切板9のヒータ18に通電する。
本実施の形態1によれば、外気温度To、冷蔵室温度Tiおよび冷蔵室目標温度Tsを反映した補正通電率DRaがヒータ通電制御に用いられるため、仕切板9の表面温度が結露防止温度よりも必要以上に大きくなることが抑制される。そのため、仕切板9に露が付くことを防ぐとともに、ヒータ18の無駄な電力消費が抑制され、冷凍冷蔵庫100の消費電力量を低減できる。その結果、冷凍冷蔵庫100の省エネルギー化を図ることができる。
本実施の形態1では、ヒータ制御手段66は、式(1)における通電係数ktの算出に式(3)を用いている。冷蔵室温度Tiの低下に合わせて通電係数ktが上昇するため、ヒータ18への通電率が必要以上に大きくなることが抑制される。その結果、冷凍冷蔵庫100の消費電力量を低減できる。
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1で説明した補正通電率DRaの算出に補正係数を追加するものである。本実施の形態2では、実施の形態1で説明した冷凍冷蔵庫と異なる点を詳細に説明し、実施の形態1と同様な構成および動作についての詳細な説明を省略する。
本実施の形態2のヒータ制御手段66は、式(4)から補正通電率DRaを算出する。式(4)に示すように、本実施の形態2の補正通電率DRaは、式(1)に示した算出式の右辺に補正係数kvを乗算したものである。
図1に示したように、仕切板9は、冷蔵室1の左扉7および右扉8の上下方向(Z軸矢印方向)の長さが長く、内部にヒータ18が設けられていても、表面の温度が均等でない場合が考えられる。仕切板9の表面温度が均等にならない要因として、例えば、冷蔵室1の奥行きの長さが小さいことが考えられる。また、別の要因として、ファン55とは別に、冷蔵室1の内部の空気を循環させるファンが冷蔵室1に取り付けられていることが考えられる。
冷蔵室1の奥行きの長さが小さい場合、仕切板9において、冷蔵室1の背面から供給される冷気が直接当たる中央付近の温度が下がり、上端部および下端部の温度は中央付近よりも温度が高くなる傾向がある。冷蔵室1の内部の空気を循環させるファンが冷蔵室1に取り付けられている場合、仕切板9において、ファンが送り出す冷気が直接に当たる部分の温度が他の部分の温度よりも低くなる傾向がある。
このような構成の場合、ヒータ制御手段66は、1より大きい値を持つ補正係数kvを、式(1)の基準通電率DRrefに乗算することで、補正通電率DRaを増大させる。仕切板9の表面温度における最低温度が露点温度以上になる補正係数kvを、メモリ61が記憶している。
なお、本実施の形態2では、冷凍冷蔵庫100の構成に依存して補正係数kvを設定する場合を説明したが、ヒータ制御手段66は、外気温度Toに依存して補正係数kvを選択してもよい。例えば、外気温度Toが複数の温度帯にグループ分けされ、複数の温度帯に対応して複数の補正係数kvが設定された情報を、メモリ61が記憶している。ヒータ制御手段66は、複数の補正係数kvから、外気温度Toに対応する補正係数kvを選択し、式(4)から算出される補正通電率DRaでヒータ18を通電する。
本実施の形態2の冷凍冷蔵庫100は、ヒータ18への通電率として、1より大きい補正係数kvと通電係数ktとを基準通電率DRrefに乗算した補正通電率DRaでヒータ18に通電するものである。本実施の形態2によれば、仕切板9の表面温度が均等でない場合、1より大きい値を持つ補正係数kvが基準通電率DRrefに乗算されることで、仕切板9の表面全体において、平均温度よりも低温の部分が結露温度よりも低くなることが抑制される。その結果、仕切板9の表面が結露することを防げる。
実施の形態3.
本実施の形態3は、冷蔵室目標温度Tsとして、複数の設定温度からユーザが選択した設定温度にしたがって、ヒータ通電制御を行うものである。本実施の形態3では、実施の形態1で説明した冷凍冷蔵庫と異なる点を詳細に説明し、実施の形態1と同様な構成および動作についての詳細な説明を省略する。
図16は、本発明の実施の形態3に係る冷凍冷蔵庫の制御部の一例を示す機能ブロック図である。本実施の形態3の冷凍冷蔵庫100には、ユーザが冷蔵室目標温度Tsを設定する際に用いられる温度操作パネル80が設けられている。ユーザは、温度操作パネル80を操作して、冷蔵室目標温度Tsについて、複数の温度設定ランクから1つの温度設定ランクを選択することができる。ユーザが選択できる温度設定ランクとして、例えば、冷蔵室目標温度Ts=0℃の強設定と、冷蔵室目標温度Ts=3℃の中設定と、冷蔵室目標温度Ts=6℃の弱設定とがある。
本実施の形態3では、ユーザが複数の温度設定ランクから1つの温度設定ランクを選択すると、冷凍サイクル制御手段65は、冷蔵室目標温度に、ユーザが選択した温度設定ランクに対応する冷蔵室目標温度Tsを設定して冷凍サイクルを制御する。また、ヒータ制御手段66は、ユーザが選択した温度設定ランクにしたがって、式(5)から通電係数ktを算出する。固定値は、例えば、強設定の冷蔵室目標温度Tsと弱設定の冷蔵室目標温度Tsとの温度差である。ここでは、固定値は6となる。
実施の形態1では、通電係数ktの分母の項が「外気温度To−冷蔵室目標温度Ts」としていたのに対し、本実施の形態3では、ユーザが複数の温度設定ランクから1つの温度設定ランクを選択すると、式(5)にしたがって、通電係数ktが決定される。また、本実施の形態3では、ヒータ制御手段66は、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達しても、式(5)で算出される通電係数ktを使用する。この場合、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達した後も、補正通電率DRaが、式(1)および式(5)にしたがって、ユーザが選択した温度設定ランクが示す冷蔵室目標温度Tsをパラメータとして設定される。例えば、選択された温度設定ランクが強設定である場合、冷蔵室目標温度Tsは0℃である。
ヒータ制御手段66は、式(3)で算出される通電係数ktを用いてヒータ通電制御を行っているときに、ユーザが温度設定ランクを選択する操作を行った場合、式(1)における通電係数ktを、式(5)で算出される通電係数ktに変更してもよい。
図17は、本発明の実施の形態3に係る冷凍冷蔵庫において、ヒータの通電率の時間推移を示す図である。図17の横軸は時間tであり、縦軸は補正通電率DRaである。図17に示す時間t0は、冷凍冷蔵庫100に電源投入が開始された時間である。時間t1は冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達した時間である。
図17に示すように、温度設定ランク毎に、時間t0から時間経過に伴って、式(5)で示す通電係数ktが変化する。時間t0から時間t1までの補正通電率DRaの傾きは、時間t0から温度設定ランクによって異なる。冷蔵室目標温度Tsが低いほど、時間t0から時間t1までの傾きが大きい。これは、冷蔵室目標温度Tsが低いほど、式(5)の分母が小さくなるためである。
冷蔵室温度Tiが時間t1で冷蔵室目標温度Tsに到達する時間t1以降では、通電係数ktは一定値になり、補正通電率DRaは一定になる。図17を参照すると、いずれの温度設定ランクも、時間t1以降の補正通電率DRaは傾き=0の直線で表されている。時間t1以降において、温度設定ランク間で補正通電率DRaを比較すると、強設定の補正通電率DRaが最も大きく、弱設定の補正通電率DRaが最も小さい。冷蔵室温度Tiの温度が安定した後の補正通電率DRaが温度設定ランク毎に異なっている。図17は、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに一致して安定になると、いずれの温度設定ランクも通電率が一定になるが、温度設定ランク毎に通電率が異なることを示している。
ここで、冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達した後、温度設定ランク毎に通電率が異なる理由を説明する。冷蔵室温度Tiが冷蔵室目標温度Tsに到達した後、中設定の場合、式(5)の分子と分母とが同じになる。つまり、中設定の場合、時間t1以降、補正通電率DRaは基準通電率DRrefとなる。一方、強設定の場合、時間t1以降、式(5)において、分母よりも分子が大きくなるため、補正通電率DRaは基準通電率DRrefよりも大きい値になる。さらに、弱設定の場合、時間t1以降、式(5)において、分子よりも分母が大きくなるため、補正通電率DRaは基準通電率DRrefよりも小さい値になる。
なお、本実施の形態3では、実施の形態1をベースに説明したが、本実施の形態3に実施の形態2を適用してもよい。
本実施の形態3の冷凍冷蔵庫100は、ヒータ18の補正通電率DRaに、式(5)で算出される通電係数ktを使用するものである。本実施の形態3によれば、冷蔵室目標温度Tsが低いほど、冷蔵室温度Tiが安定するまでの通電率の傾きを大きくすることができ、冷蔵室温度Tiが安定した後も通電率を大きい値で維持することができる。冷蔵室温度Tiが急激に低下しても、ヒータ18の通電率の傾きが大きいので、仕切板9の表面に結露が生じてしまうことを防げる。冷蔵室温度Tiが低い温度に設定されていても、ヒータ18の通電率が大きいので、ユーザが冷蔵室1の扉を開閉したときに、仕切板9の表面に結露が生じてしまうことを防げる。