<ペルオキシシンナメート誘導体>
本発明のペルオキシシンナメート誘導体は、下記一般式(1)で表すことができる。
(式(1)中、R
1は、水素原子またはフェニル基であって、R
2およびR
3は独立してメチル基またはエチル基、R
4は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6〜9の芳香族炭化水素基を表す。)
前記一般式(1)中、前記R1は、水素原子またはフェニル基を表し、合成が容易である観点から、フェニル基が好ましい。
前記一般式(1)中、R2およびR3は独立してメチル基またはエチル基を表し、前記ペルオキシシンナメート誘導体の分解温度が高くなり、重合性組成物の貯蔵安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
前記一般式(1)中、R4は、炭素数が1〜5の脂肪族炭化水素基、またはアルキル基を有してもよい炭素数6〜9の芳香族炭化水素基である。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。R4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、メチルシクロヘキシル基、フェニル基、イソプロピルフェニル基が挙げられる。これらの中でも、前記ペルオキシシンナメート誘導体の合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、フェニル基が好ましい。
以下に本発明のペルオキシシンナメート誘導体の具体例を示す。
<ペルオキシシンナメート誘導体の製造方法>
前記一般式(1)で表されるペルオキシシンナメート誘導体の製造方法は、特に限定されないが、特開昭51−115411号公報等に記載の公知のペルオキシエステルの合成法に準じて合成することができる。
前記一般式(1)で表されるペルオキシシンナメート誘導体の製造方法は、例えば、下記反応式のように、桂皮酸誘導体と、塩化チオニル、三塩化リン、ホスゲン等の塩素化剤を反応させることにより、桂皮酸クロライド誘導体を得る工程(以下、工程(A)とも称す)と、続いて、得られた桂皮酸クロライド誘導体と、ヒドロペルオキシドを、アルカリの存在下で、反応させる工程(以下、工程(B)とも称す)を含む方法が挙げられる。なお、上記の工程(A)および/または(B)の後には、余剰の塩素化剤等を減圧留去(除去)する工程や、精製工程を含んでもよい。
(上記反応式において、R
1、R
2、R
3およびR
4は前記一般式(1)と同じである。)
前記工程(A)において、前記桂皮酸誘導体は、市販品を利用できる。なお、市販品がない場合、特開2013−520490号公報の段落[0230]等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。塩素化剤は、桂皮酸誘導体1モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、1モル以上反応させることが好ましく、1.1モル以上反応させることがより好ましく、そして、溶媒を兼ねて大過剰量を使用して反応させることもできるが、10モル以下反応させることが好ましく、5モル以下反応させることがより好ましい。
前記工程(A)において、反応温度は、目的物の収率性を高める観点から、0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、そして、150℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
前記工程(A)において、反応時間は、原料や反応温度等によって異なるので一概には決定できないが、通常、目的物の収率性を高める観点から、30分以上20時間以下である。
上記の工程(A)で得られた桂皮酸クロライド誘導体と、ヒドロペルオキシドを、アルカリの存在下で、反応させる工程(B)により、ペルオキシシンナメート誘導体が得られる。ヒドロペルオキシドは、桂皮酸クロライド誘導体1モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、0.8モル以上反応させることが好ましく、1.0モル以上反応させることがより好ましく、そして、3.0モル以下反応させることが好ましく、1.5モル以下反応させることがより好ましい。なお、ヒドロペルオキシドは、市販品を利用でき、市販品がない場合、特開昭58−72557号公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。
前記工程(B)において、反応温度は、目的物の収率性を高める観点から、−10℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、そして、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
前記工程(B)において、反応時間は、原料や反応温度等によって異なるので一概には決定できないが、通常、目的物の収率性を高める観点から、10分以上6時間以下である。
前記工程(B)において、使用するアルカリは、特に制限はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピリジン、α―ピコリン、γ―ピコリン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。アルカリは、ヒドロペルオキシド1モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、0.8モル以上使用することが好ましく、0.9モル以上使用することがより好ましく、そして、2.0モル以下使用することが好ましく、1.5モル以下使用することがより好ましい。
前記工程(B)では、桂皮酸クロライド誘導体が液状である場合は、有機溶媒を用いずに反応を行うことができる。また、桂皮酸クロライドが固体である場合は、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、ペルオキシシンナメート誘導体の種類により溶解度が異なるため、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。前記有機溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記有機溶媒の使用量は、通常、原料の合計量100質量部に対して30〜500質量部程度である。有機溶媒は工程(B)の後に留去することで、ペルオキシシンナメート誘導体を取り出してもよく、取り扱い性の向上や熱分解時の危険性を低減させるため、ペルオキシシンナメート誘導体を有機溶媒の希釈品として使用してもよい。
前記工程(A)および(B)は、常圧下で、空気下で行うことができるが、窒素気流下又は窒素雰囲気下で行ってもよい。
前記精製工程としては、余剰の原料や副生物を除去するために、例えば、イオン交換水や、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液を用いて洗浄し、目的物を精製する工程が挙げられる。
<重合性組成物>
本発明の重合性組成物は、(a)重合開始剤および(b)ラジカル重合性化合物を含有する。さらに、重合性組成物は、(c)アルカリ可溶性樹脂を含有することで現像性を付与することができる。また、重合性組成物は、その他の成分を適宜組み合わせて含有させることができる。
<(a)重合開始剤>
本発明の(a)重合開始剤は、前記一般式(1)で表されるペルオキシシンナメート誘導体を含有する。(a)重合開始剤は、活性エネルギー線または熱により分解し、発生したラジカルが(b)ラジカル重合性化合物の重合(硬化)を開始する働きを有する。ペルオキシシンナメート誘導体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
また、前記(a)重合開始剤は、ペルオキシシンナメート誘導体以外の重合開始剤(以下、他の重合開始剤とも称す)を含有することができる。他の重合開始剤として、例えば、ペルオキシシンナメート誘導体とは異なる吸収帯を有する重合開始剤を使用することで、高圧水銀ランプ等の複数の波長の光が放射されるランプに対し、重合性組成物の高感度化を図ることができる。また、重合性組成物に含まれる(b)ラジカル重合性化合物の重合性、重合性組成物に含まれる光を吸収や散乱する顔料等の種類、硬化物の膜厚等を考慮して、他の重合開始剤を用いることで、重合性組成物の表面硬化性や深部硬化性、透明性等を改良することができる。
前記他の重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒロドキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン等のα―ヒドロキシアセトフェノン誘導体;2−メチル−4’−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等のα―アミノアセトフェノン誘導体;ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(メシチルカルボニル)フェニルホスフィナート等のアシルホスフィンオキサイド誘導体;1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[({1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エチリデン}アミノ)オキシ]エタノン、等のオキシムエステル誘導体;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチルトリアジン誘導体;2,2−ジメトキシ−2−フエニルアセトフエノン等のベンジルケタール誘導体;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、4−(4−メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3−ベンゾイルー7−ジエチルアミノクマリン、3,3‘−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)等のクマリン誘導体;2−(2−クロロフェニル)−1−[2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル]−4,5−ジフェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;3,3‘、4,4’−テトラキス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;カンファーキノン等が挙げられる。他の重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記(a)重合開始剤の含有量は、(b)ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1から40質量部であることが好ましく、0.5から20質量部であることがより好ましく、1から15質量部であることがさらに好ましい。(a)重合開始剤の含有量は、(b)ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部未満では硬化反応が進行しないため好ましくない。また、(a)重合開始剤の含有量は、(b)ラジカル重合性化合物100質量部に対して、40質量部より多い場合、(b)ラジカル重合性化合物への溶解度が飽和に達し、重合性組成物の成膜時に(a)重合開始剤の結晶が析出し、皮膜表面の荒れが問題になる場合や、(a)重合開始剤の分解残渣の増加により、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
なお、前記(a)重合開始剤に、前記他の重合開始剤を含む場合、他の重合開始剤の割合は、(a)重合開始剤中、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
<(b)ラジカル重合性化合物>
本発明の(b)ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。(b)ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、イタコン酸エステル類、桂皮酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、N−置換マレイミド類、N−ビニル化合物類、不飽和ニトリル類、オレフィン類等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。(b)ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、単官能化合物および多官能化合物を使用することができる。単官能化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2―エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー等;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の窒素原子を有するモノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;リン酸2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル等のリン原子を有するモノマー;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有するモノマー;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加ジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、重合性組成物の感度の向上、酸素阻害の低減や、硬化物の塗膜の機械的強度や硬度、耐熱性、耐久性、耐薬品性の向上の観点から、前記多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物が好ましく、特に、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
なお、前記重合性組成物は、前記(b)ラジカル重合性化合物から得られた共重合体を加えることができる。
<(c)アルカリ可溶性樹脂>
前記重合性組成物は、さらに(c)アルカリ可溶性樹脂を配合することにより、ネガ型レジストとして好適に使用することができる。(c)アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に使用されるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶な樹脂であれば特に限定されないが、カルボキシル基を含む樹脂であることが好ましい。(c)アルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
本発明の(c)アルカリ可溶性樹脂には、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂等が好ましく使用される。
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、前述の(メタ)アクリル酸エステル類の単官能化合物から選ばれる少なくとも1種(但し、前記カルボキシル基を有するモノマーを除く)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の二量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸、桂皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、およびそれらの酸無水物等のエチレン性不飽和基含有カルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含む共重合物である。
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物としては、例えば、メチルメタクリレートと、シクロヘキシルメタクリレートと、メタクリル酸の共重合物やベンジルメタクリレートと、メタクリル酸の共重合物等が挙げられる。さらに、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が共重合されても良い。
また、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、ネガ型レジストの現像性と耐熱性、硬度、耐薬品性等の被膜特性を両立させる観点から、エチレン性不飽和基等の反応性基が側鎖に導入されたカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物も好ましく使用される。上記の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法として、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物のカルボキシル基の一部に、グリシジル(メタ)アクリレート等の分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる方法や、エポキシ基およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物に、メタクリル酸等のエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸を付加させる方法や、水酸基およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合物に、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の分子内にイソシアネート基とエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる方法等が挙げられる。
前記カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂としては、エポキシ化合物と前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応物であるエポキシアクリレート樹脂に、更に酸無水物を反応させた化合物が好適である。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビスフェニルフルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレインド酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、無水イタコン酸等が挙げられる。
さらに、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂の合成の際に、必要に応じて、無水トリメリット酸等のトリカルボン酸無水物を用いて、反応後に残った酸無水物基を加水分解することにより、カルボキシル基を増やすことができる。また、エチレン性不飽和基含有の無水マレイン酸を用いて、更にエチレン性二重結合を増やすこともできる。
前記(c)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、20から300mgKOH/gであることが好ましく、40から180mg/KOHであることがさらに好ましい。酸価が20mgKOH/gよりも少ない場合、アルカリ水溶液への溶解性が乏しいため、未露光部の現像が困難となるため好ましくない。また、酸価が300mgKOH/gよりも多い場合、現像時に露光部も基材から脱離しやすい傾向にあるため、好ましくない。
前記(c)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、1,000から100,000であることが好ましく、1,500から30,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000よりも小さい場合、露光部の耐熱性や硬度等が乏しいため、好ましくない。重量平均分子量が100,000よりも大きい場合は、未露光部の現像が困難となる場合があるため、好ましくない。尚、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてHLC-8220GPC(東ソー社製)、カラムとして3本のTSKgelHZM-M(東ソー社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度40℃、流速0.3ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度0.5質量%、注入量10マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
また、(c)アルカリ可溶性樹脂の割合は、重合性組成物の全固形分中、10から70質量%であることが好ましく、15から60質量%であることがより好ましい。前記割合が10質量%よりも少ない場合、現像性が乏しいため、好ましくない。前記割合が70質量%よりも多い場合、パターン形状の再現性や耐熱性が低下するため、好ましくない。
なお、前記(c)アルカリ可溶性樹脂は、合成反応後に有効成分であるアルカリ可溶性樹脂を単離精製したものを用いることができる他、合成反応により得られた反応溶液、その乾燥物等をそのまま用いることもできる。
<その他の成分>
前記その他の成分として、硬化促進剤を用いることで、重合性組成物の加熱による硬化を低温で行なうこともできる。硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、チオ尿素化合物、2−メルカプトベンズイミダゾール系化合物、オルトベンゾイックスルフィミド、第4周期遷移金属化合物等を使用することができる。硬化促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記アミン化合物としては、第三級アミンが好ましく、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
前記チオ尿素としては、例えば、アセチルチオ尿素、N,N’ジブチルチオ尿素等が挙げられる。
前記2−メルカプトベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトメトキシベンズイミダゾール等が挙げられる。
前記第4周期遷移金属化合物合物としては、バナジウム、コバルト、銅等の有機酸塩または金属キレート化合物から選択することができ、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バナジウム、銅アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。
前記硬化促進剤は、重合性組成物を使用する直前に配合することが好ましい。硬化促進剤の含有量は、(b)ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1から20質量部であることが好ましく、0.2から10質量部であることがより好ましい。
前記その他の成分として、重合性組成物には、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、カラーレジストやブラックレジスト等の各種フォトレジスト等の用途で一般的に使用されている添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、増感剤(イソプロピルチオキサントン、9,10−ジブトキシアントラセン、クマリン、ケトクマリン、アクリジンオレンジ、カンファーキノン等)、重合禁止剤(p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン等)、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、接着促進剤、可塑剤、エポキシ化合物、チオール化合物、エチレン性不飽和結合を有する樹脂、飽和樹脂、着色染料、蛍光染料、顔料(有機顔料、無機顔料)、炭素系材料(炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ等)、金属(銀、銅等)、無機化合物(ガラス粉末、層状粘度鉱物、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等)、分散剤、難燃剤等が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量は、使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常、(b)ラジカル重合性化合物100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることより好ましい。
前記重合性組成物には、粘度や塗装性、硬化膜の平滑性の改良のため、更に溶媒を加えることもできる。溶媒は、前記(a)重合開始剤、前記(b)ラジカル重合性化合物、前記(c)アルカリ可溶性樹脂、前記その他の成分を、溶解又は分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶媒であれば、特に制限されるものではない。
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、カルビトール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、セロソルブアセテート系溶媒、カルビトールアセテート系溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は、重合性組成物の固形分100質量部に対して、10から1000質量部であることが好ましく、20から500質量部であることがより好ましい。
<重合性組成物の調製方法>
前記重合性組成物を調整する場合には、収納容器内に前記(a)重合開始剤、前記(b)ラジカル重合性化合物、必要に応じて、前記(c)アルカリ可溶性樹脂や前記その他の成分を投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミル等を用いて、常法に従って溶解又は分散させればよい。また、必要に応じて、メッシュまたはメンブレンフィルター等を通してもろ過してもよい。
なお、前記重合性組成物の調整において、前記(a)重合開始剤は、重合性組成物に最初から添加しておいてもよいが、重合性組成物を比較的長時間保存する場合には、使用直前に(a)重合開始剤を(b)ラジカル重合性を含む組成物中に溶解又は分散させることが好ましい。
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物は、前記重合性組成物から形成されるものである。硬化物の製造方法は、重合性組成物を基板上に塗布後、当該重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程、および当該重合性組成物を加熱する工程のいずれかの工程を含む製造方法である。また、前記活性エネルギー線で照射する工程と前記加熱する工程の両方を含む工程を、デュアルキュア工程ともいう。
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スリットコート法、ドクターブレードコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の種々の方法が挙げられる。また、前記基板は、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチック等のフィルムやシート、および立体形状の成形品等が挙げられ、基板の形状が制限されることは無い。
上記の重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程は、電子線、紫外線、可視光線、放射線等の活性エネルギー線の照射により、(a)重合開始剤を分解させて、(b)ラジカル重合性化合物を重合させることで、硬化物を得ることができるものである。
活性エネルギー線は、活性エネルギー線の波長が250から450nmの光であることが好ましく、硬化を迅速に行うことができる観点から、350から410nmの光であることがより好ましい。
前記光の照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線無電極ランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、太陽光、YAGレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等のガスレーザー等を使用することができる。なお、(a)重合開始剤の吸収が少ない可視光から赤外光の光を用いる場合には、前記添加剤として、その光を吸収する増感剤を使用することにより硬化を行なうことができる。
前記活性エネルギー線の露光量は、活性エネルギー線の波長や強度、重合性組成物の組成に応じて適宜設定すべきである。一例として、UV−A領域での露光量は、10から5,000mJ/cm2であることが好ましく、30から1,000mJ/cm2であることがより好ましい。なお、上記の硬化物の製造方法として、デュアルキュア工程を適用し、かつ前記活性エネルギー線で照射する工程の後に、加熱する工程を行う場合、(a)重合開始剤が、活性エネルギー線により完全に分解してしまわないように、露光量を適宜設定すべきである。
上記の重合性組成物を加熱する工程は、熱により(a)重合開始剤を分解させて、(b)ラジカル重合性化合物を重合させることで、硬化物を得ることができるものである。
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱する手法は、例えば、加熱、通風加熱等が挙げられる。加熱の方式としては、特に制限されることはないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また、通風加熱の方式としては、例えば、送風式乾燥オーブン等が挙げられる。
前記重合性組成物を加熱する工程において、加熱温度は高いほど、(a)重合開始剤の分解速度は加速される。しかし、分解速度が速すぎると、(b)ラジカル重合性化合物の分解残渣が多くなる傾向を示す。一方、加熱温度は低いほど、(a)重合開始剤の分解速度は遅いため、硬化に長時間を必要とする。よって、加熱温度と加熱時間は、前記重合性組成物の組成により適宜設定すべきである。一例として、加熱温度は、50から230℃であることが好ましく、100から160℃であることがより好ましい。また、前記重合性組成物に、前記硬化促進剤を配合する場合には、その種類や配合量により、加熱温度は室温から160℃で任意に調整することができる。一方、加熱時間は1から180分であることが好ましく、5から120分であることがさらに好ましい。
前記硬化物の製造方法として、前記デュアルキュア工程を適用する場合、特に、重合性組成物を活性エネルギー線で照射する工程の後に、加熱する工程を行うことが、光を吸収や散乱する着色顔料を高濃度に含む重合性組成物の塗膜の深部や、光が遮光されて光が届いていない箇所の硬化を効率よく行なうことができるため、好ましい。
また、前記重合組成物に前記溶媒を含む場合、前記硬化物の製造方法は、乾燥工程を含むことができる。特に、重合性組成物を基板上に塗布後に、続いて、前記活性エネルギー線で照射する工程を適用する場合、当該活性エネルギー線で照射する工程の前に、乾燥工程を設けることが好ましい。
前記乾燥工程において、溶媒を乾燥させる手法は、例えば、加熱乾燥、通風加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。加熱乾燥の方式としては、特に制限されることはないが、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また、通風加熱乾燥の方式としては、例えば、送風式乾燥オーブン等が挙げられる。
また、前記乾燥工程において、重合性組成物の温度は、溶媒の蒸発潜熱によって、乾燥の設定温度よりも低くなるため、重合性組成物のゲル化するまでの時間を長く確保することができる。このゲル化するまでの時間は、乾燥手法や膜厚等にも影響されるため、溶媒の選定を含めて乾燥温度と時間は適宜設定すべきである。一例として、乾燥温度は、20から120℃であることが好ましく、40から100℃であることがより好ましい。乾燥時間は1から60分であることが好ましく、1から30分であることがより好ましい。また、前記重合禁止剤を使用することで、ゲル化までの時間を長く確保することもできる。なお、前記ペルオキシシンナメート誘導体は熱により分解するが、80℃で5分の加熱した際の当該化合物の分解率は0.1%程度であるため、この程度の条件であれば重合性組成物が増粘やゲル化することはほとんどない。
重合性組成物の乾燥膜厚(硬化物の膜厚)は、用途に応じて適宜設定されるが、0.05から300μmであることが好ましく、0.1から100μmであることがより好ましい。
<パターン形成方法>
前記重合性組成物が(c)アルカリ可溶性樹脂を含む場合、フォトリソグラフィー法によりパターンを形成することができる。前述と同様にして重合性組成物を基材に塗布し、必要に応じて、乾燥して乾燥被膜を形成する。そして、乾燥被膜にマスクを介して活性エネルギー線を照射することにより、露光部では(b)ラジカル重合性化合物が重合することで硬化膜となる。一方、レーザーを用いた直接描画により、マスクを介さずに高精度なパターン形状を作製することもできる。
上記の露光後、未露光部は、例えば、0.3から3質量%の炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ現像液により現像除去され、パターン化した硬化膜が得られる。さらに、硬化膜と基材との密着性を高めること等を目的に、後乾燥として180から250℃、20から90分でのポストベークが行われる。このようにして、硬化膜に基づく所望のパターンが形成される。
本発明の重合性組成物は、ハードコート剤、光ディスク用コート剤、光ファイバー用コート剤、モバイル端末用塗料、家電用塗料、木工用塗料、化粧品容器用塗料、光学素子用内面反射防止塗料、高・低屈折率コート剤、遮熱コート剤、放熱コート剤、防曇剤等の塗料・コーティング剤;オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェット印刷インキ、導電性インキ、絶縁性インキ、導光板用インキ等の印刷インキ;感光性印刷版;ナノインプリント材料;3Dプリンター用樹脂;ホログラフィー記録材料;歯科用材料;導波路用材料;レンズシート用ブラックストライプ;コンデンサ用グリーンシートおよび電極材料;FPD用接着剤、HDD用接着剤、光ピックアップ用接着剤、イメージセンサー用接着剤、有機EL用シール剤、タッチパネル用OCA、タッチパネル用OCR等の接着剤・シール剤;カラーレジスト、ブラックレジスト、カラーフィルター用保護膜、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、額縁レジスト、TFT配線用フォトレジスト、層間絶縁膜等のFPD用レジスト;液状ソルダーレジスト、ドライフィルムレジスト等のプリント基板用レジスト;半導体レジスト、バッファーコート膜等の半導体用材料等の各種用途に使用でき、その用途に特に制限は無い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1〜2>
(1)ペルオキシシンナメート誘導体の合成
[合成例1:化合物4の合成]
100mLナスフラスコに2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル3.00g(10.82mmol)とイオン交換水17.14g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液4.50g(54.09mmol)、メタノール10.00gを順次加え、30℃に加熱して3時間反応させた。反応後、濃塩酸10mLを滴下して中和し、沈殿物をろ別してジエチルエーテルで洗浄してから減圧下で乾燥させると白色の粉末が0.97g得られた。得られた2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸0.80gを30mLナスフラスコにはかり取り、塩化チオニル10.0mLを加えて撹拌した。80℃に加熱し、そのまま2時間反応させた。室温に冷却後、塩化チオニルを減圧下で留去し、黄色の粉末を得た。次いで、得られた2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸クロライド0.400gを20mLナスフラスコにはかり取り、酢酸エチル10mLを加えて撹拌し、氷浴で10℃に冷却した。10mLビーカーにイオン交換水0.280g、35質量%水酸化カリウム水溶液0.349g(2.24mmol)を加え、30℃以下で69質量%tert−ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.295g(2.24mmol)を加えた混合溶液を別途調整し、この混合溶液を10分かけて滴下し、10℃にて3時間反応させた。反応終了後、析出した無機塩が溶解するまでイオン交換水を添加した後に、水相を分液した。油相を5%水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、0.228gの白色粉末を得た。得られた固体をHPLCで分取し、0.138gの白色固体を得た。融点は98℃、EI−MS:321m/z、1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):1.24(s,9H,−C(CH3)3),7.19−7.21(m,2H,Ar−H),7.37−7.45(m,7H,Ar−H),7.47−7.53(m,1H,Ar−H)
[合成例2:化合物6の合成]
本発明の化合物6は、合成例1に記載の69質量%tert−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を、90質量%tert−ヘキシルヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物6の融点は82℃、EI−MS:349m/z、1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ(ppm):0.93−0.97(t,3H),1.41(s,6H),1.48−1.54(m,2H),1.70−1.75(m,2H),6.67−6.69(m,2H,Ar−H),6.99−7.13(m,7H,Ar−H),7.15−7.21(m,1H,Ar−H)
(2)UV吸収特性の評価
化合物4および化合物6のアセトニトリル溶液について、UV−VISスペクトル測定装置(1.0cm石英セル、島津製作所製、UV−2450)を用いて、波長200から600nmにおけるUV−VISスペクトルを測定した。その結果を表1に示す。
<比較例1〜3>
また、比較例として、化合物R1、化合物R2、化合物R3の結果を表1に示す。
化合物R1およびR2は、合成例1に記載の2−シアノ−3,3−ジフェニルプロペン酸を、それぞれ、3,3−ジフェニルプロペン酸および桂皮酸に変更したこと以外は、合成例1に記載の方法に準じて合成し、EI−MSおよび
1H−NMRによって同定した。化合物R3は特開昭59−197401号公報に記載の製法に準じて合成した。
表1において、λmaxは最大吸収波長(nm)、εmaxは最大吸収波長にけるモル吸光係数(L・mol−1・cm−1)、ε365は波長365nmにおけるモル吸光係数(L・mol−1・cm−1)を示す。
一般に、モル吸光係数が大きいほど光が吸収されやすく、ラジカルの発生が起こりやすい。すなわち、重合開始剤の高感度化には、露光波長におけるモル吸光係数が大きい化合物が好適である。表1の結果より、本発明の化合物4および化合物6は、化合物R1、化合物R2および化合物R3に対して、吸収帯が長波長域にシフトし、高圧水銀ランプの発光波長の1つである波長365nmのモル吸光係数が大きいことが分かる。
<実施例3〜4、比較例4〜6>
<重合性組成物(A)の調整>
表2に示す量の(b)ラジカル重合性化合物、(c)アルカリ可溶性樹脂、その他の成分を混合撹拌し、(a)重合開始剤を添加してよく撹拌し、実施例3〜4および比較例4〜6の重合性組成物(A)を調整した。
上記表2中、DPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(商品名:アロニックスM−402、東亞合成社製);
RD200は、メタクリル酸メチル/メタクリル酸/シクロヘキシルマレイミド(質量%:61/14/25)共重合物、重量平均分子量:17,000、酸価:90(合成品);
F−477は、フッ素系レベリング剤(商品名:メガファックF−477、DIC社製);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;を示す。
(3)感度の評価
上記で得られた重合性組成物(A)を、スピンコーターを用いて、アルミニウム基板上に塗布した。塗布後、アルミニウム基板を90℃のクリーンオーブン中で2.5分間乾燥処理により溶媒を乾燥させ、厚さ1.5μmの均一な塗布膜を作製した。次いで、超高圧水銀灯を光源とするプロキシミティー露光機を用い、マスクパターンを介して10から1000mJ/cm2の範囲で、段階露光を行った。露光後のアルミニウム基板を1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液に23℃で60秒間浸漬して、現像による未露光部の除去を行った。続いて純水にて30秒間洗浄を行い、パターン形状を得た。パターン形状が形成される最低露光量を「感度」として評価した。各(a)重合開始剤の評価結果を、表3に示す。
表3の結果より、本発明の化合物4および化合物6は、化合物R1、化合物R2および化合物R3に対して、感度が高いことが分かる。
<実施例5〜6、比較例7〜9>
<重合性組成物(B)の調整>
表4に示す量の(b)ラジカル重合性化合物、硬化促進剤を混合撹拌し、(a)重合開始剤を添加してよく撹拌し、実施例5〜6および比較例7〜9の重合性組成物(B)を調整した。
表4中、UV−3700Bは、ウレタンアクリレート(商品名:紫光UV−3700B、日本合成化学工業社製);
IBOAは、イソボルニルアクリレート(東京化成工業社製);
THFAは、テトラヒドロフルフリルアクリレート(和光純薬工業社製);
TMPTAは、トリメチロールプロパントリアクリレート(東京化成工業社製);
DMTは、N,N−ジメチルトルイジン(東京化成工業社製);を示す。
(4)デュアルキュア硬化特性の評価
上記で調整した重合性組成物(B)を、厚さ100μmの易接着処理されたPETフィルム(商品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)に、アプリケーターにて50μmに塗布し、表面に黒色コーティングが施されたPETフィルム(波長365nmの透過率は0.1%未満)を被膜の半分の領域に設置した。そして、高圧水銀ランプが設置されたコンベア式UV照射装置を使用して100mJ/cm2の照射を行った。次いで、送風定温恒温機内に静置し、90℃で90分の加熱を行った。
上記の加熱後、黒色コーティングが施されたPETフィルムを取り除いて硬化膜を露出させて、その硬化膜部分を減衰全反射赤外分光法(ATR−IR)にて硬化度(%)を測定した。その際、二重結合基の面内変角振動の吸収スペクトル(1410cm
−1)および露光前後で変化のないカルボニル基の吸収スペクトル(1740cm
−1)のピーク面積を用いて、以下の式に基づいて硬化度(%)を算出した。その結果を表5に示す。
表5の結果より、本発明のペルオキシシンナメート誘導体、および当該化合物を含む重合性組成物は光に対して優れた感度を有し、光硬化性と熱硬化性を有することを特長とすることが明らかである。
(5)熱安定性の評価
<実施例7〜8、比較例10〜11>
ステンレス鋼製密封セルに、表6に示す(a)重合開始剤1〜2mgを入れ、示差走査型熱量計(DSC、セイコーインスツル社製、EXSTAR6200)にセットし、10℃/分の昇温速度で加熱し、測定した。分解熱による発熱曲線において、変曲点における接線とベースラインの交点を分解開始温度(℃)とした。その結果を、表6に示す。
表6の結果より、カルボニル基と共役する位置に電子吸引性基を持たない化合物R1およびR2に対して、化合物4および化合物6はより高い分解開始温度を持ち、良好な熱安定性を示すことを特長とすることが明らかである。
<実施例9〜10、比較例12〜13>
<重合性組成物(C)の調整>
表7に示す量の(b)ラジカル重合性化合物に(a)重合開始剤を添加してよく撹拌し、実施例9〜10および比較例12〜13の重合性組成物(C)を調整した。
上記表7中、TMPTAは、トリメチロールプロパントリアクリレートを示す。
(6)ポットライフの評価
上記で得られた重合性組成物(C)を、サンプル瓶中、50℃の暗室で規定の日数保管し、サンプル瓶を傾けた際のゲル化の有無を目視で評価した。その結果を、表8に示す。
表8の結果より、本発明の化合物4および化合物6を含む重合性組成物は、カルボニル基と共役する位置に電子吸引性基を持たない化合物R1およびR2を含む重合性組成物に対して、ゲル化時間が長く、保管安定性(ポットライフ)が良好であることが明らかである。