JP2024093292A - 硬化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下での長期安定性に優れ、かつラジカル重合性化合物を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射することで、前記組成物における前記活性エネルギー線の未照射部分を十分に硬化できる、硬化物の製造方法を提供すること。【解決手段】ラジカル重合性化合物と重合開始剤を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I)、及び前記工程(I)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含み、前記重合開始剤は、下記一般式(1)で表される化合物と、一定量以下の下記一般式(2)で表される化合物を含む硬化物の製造方法。JPEG2024093292000014.jpg25170JPEG2024093292000015.jpg24170【選択図】なし

Description

本発明は、硬化物の製造方法に関する。
光重合開始剤とラジカル重合性化合物を含む光重合性組成物は、光硬化によって短時間で硬化することができ、また、フォトマスクやレーザー照射によってパターン形成することができるという利点をもつ。しかしながら光が到達しづらい厚膜の成形体の深部においては硬化が不十分になるという問題がある。
この問題を解決する方法として、特許文献1では、光硬化性組成物を厚膜シート状に成形した後、シートの両面から光照射することで厚膜の内部まで硬化する方法が提案されている。また、特許文献2では、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用し、光照射によって光重合開始剤から生成したラジカルが重合反応を起こし、その反応熱によって熱重合開始剤からラジカルを生成させ、深部まで硬化させる方法が提案されている。
特開2015-163684号公報 特開2017-8132号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、硬化方法が煩雑であり、かつ硬化できる膜厚が10mm以下に限られていた。また、特許文献2の方法では、深部(光の未照射部分)において光励起されなかった光重合開始剤は、未反応のまま硬化物中に残存することになり、高温高湿環境下では当該開始剤のブリードアウトや、硬化物の白化や黄変を引き起こす懸念があった。
近年では上記の光重合技術分野において、さらに顔料を多く含む重合性組成物の硬化に需要がある。例えば、オフセットインキ等に代表される印刷インキの用途では、高度に着色されたインキが品質向上のために必要であるが、顔料の含有量が増すに従って重合性組成物中の活性エネルギー線の透過性が低下することから、従来の重合開始剤の添加量ではインキの硬化は困難になる。この問題に対しては、重合開始剤の添加量を増量することで、硬化性を確保している。同じことはコーティング剤や塗料、接着剤、各種フォトレジスト等の硬化にも当てはまり、これらも顔料が附加されていることがある。重合性組成物中の重合開始剤の添加量を増量すると、反応性が高くなる半面、組成物の安定性が悪くなる。しかし、上記用途で使用する重合性組成物は、海外への海上輸送時や港湾施設での滞留時における輸送コンテナ内の環境、また印刷インキ用途では印刷作業所の環境が高温となるケースがあり、温度調整が行われない環境での保存時の安定性が求められる。
よって本発明の目的は、上記の実情を鑑みてなされたものであり、高温環境下での長期安定性に優れ、かつラジカル重合性化合物を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射することで、前記組成物における前記活性エネルギー線の未照射部分を十分に硬化できる、硬化物の製造方法を提供するものである。
本発明は、硬化物の製造方法であって、ラジカル重合性化合物と重合開始剤を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I)、及び前記工程(I)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含み、前記重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)と下記一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)を含み、前記重合開始剤100質量部において、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)は、30質量部以下である硬化物の製造方法。
(式(1)中、R、R、R及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
(式(2)中、R、及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
本発明の硬化物の製造方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されない。
本発明の硬化物の製造方法は、ラジカル重合性化合物と一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)と一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I)、及び前記工程(I)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含む。前記組成物は、当該組成物の表面に活性エネルギー線を照射することによって、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)が励起されてラジカルを発生するため、重合反応が開始する。さらに、当該製造方法は、当該重合反応の重合熱の拡散によって、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより、外部から加熱を行うことなく、組成物の硬化反応を継続できるため、組成物の硬化反応を深部(活性エネルギーの未照射部分)に至るまで十分に硬化できる。よって、本発明の硬化物中には、未反応の前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)が残存しないことが期待できる。
また、本発明のチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドとチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドとを特定の比率で含有する重合開始剤において、生成した活性ラジカル種の一部はチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドから水素原子を引き抜くことで不活性化する一方で、チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドは水素原子を引き抜かれることでペルオキシラジカル種へ変化する。他方、チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドと反応しなかった活性ラジカル種は、ラジカル重合性化合物への付加反応又は硬化物等からの水素引き抜き反応によって炭素ラジカル種を生成するが、前記ペルオキシラジカル種と結合することによって熱的に安定なジアルキルペルオキシド化合物となるため、ラジカル重合性化合物の高分子量化を抑制すると考えられる。
チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドを特定量以上含む重合開始剤を用いて光硬化すると硬化不良を招くことから、良好な硬化性を得るにはチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドとチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドとは特定の比率で含有することが望ましいことを見出した。その結果、本発明の重合開始剤を含有する組成物は良好な硬化性を示しながらも、保存安定性に優れる。
本発明の組成物は、ラジカル重合性化合物と重合開始剤を含有し、前記重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)と下記一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)を含有する。
<ラジカル重合性化合物>
前記ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、イタコン酸エステル類桂皮酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルケトン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、N-置換マレイミド類、N-ビニル化合物類、不飽和ニトリル類、オレフィン類等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル類は、単官能化合物および多官能化合物を使用することができる。単官能化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2―エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-アダマンチル(メタ)アクリレート、水酸基末端ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、水酸基末端ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有するモノマー等;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー等;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の窒素原子を有するモノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル等のリン原子を有するモノマー;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子を有するモノマー;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有するモノマー;(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ビス(4-(メタ)アクリロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-(メタ)アクリロイルチオフェニル)スルフィド、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸ジルコニウム、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。
なお、前記組成物は、前記ラジカル重合性化合物から得られた共重合体を加えることができる。
<チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)>
本発明のチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)は、下記一般式(1)で表すことができる。
(式(1)中、R、R、R及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
前記一般式(1)中、R、R、R及びRは独立してメチル基又はエチル基を表す。R、R、R及びRは、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの分解温度が高いため、組成物の保存安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
前記一般式(1)中、Rは、炭素数が1~6のアルキル基、又はフェニル基である。前記アルキル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの合成が容易である観点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましい。前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの分解温度が高いため、組成物の保存安定性が高くなり、さらにランプの光に対する感度が高い点から、メチル基、エチル基、プロピル基であることがより好ましい。
前記一般式(1)中、チオキサントンに対するジアルキルペルオキシドの置換位置は、特に限定されないが、ランプの光に対する感度が高い点から、チオキサントン骨格の2位、3位、又は4位に置換されていることが好ましく、合成が容易である観点から、チオキサントン骨格の2位又は3位に置換されていることがより好ましい。
前記一般式(1)中、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表す。使用するランプの発光波長に対して、これら置換基にかかるプッシュ・プル効果より、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの光の吸収特性を調整することができ、ランプの光を効率よく吸収することができる。
前記一般式(1)中、nは0から2の整数を表す。前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの合成が容易である観点から、nは0から1の整数が好ましく、0がより好ましい。
前記一般式(1)中、nが1から2の整数の場合、前記Rの置換位置は、特に限定されないが、ランプの光に対する感度が高い点から、チオキサントン骨格の6位又は7位に置換されていることが好ましく、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの合成が容易である観点から、チオキサントン骨格の7位に置換されていることがより好ましい。
前記Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基等のアルコキシ基;塩素原子等が挙げられる。ランプの光に対する感度が高い点から、メトキシ基、エトキシ基であることがより好ましい。
以下に本発明のチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)としては、好ましくは化合物1から化合物9が挙げられ、より好ましくは化合物1、化合物2、化合物3、化合物7、化合物8が挙げられる。
<チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)の製造方法>
前記一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)の製造方法は、特に限定されず、例えば、国際公開第2020/067118号を参考にすればよい。
<チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)>
本発明のチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)は、下記一般式(2)で表すことができる。
(式(2)中、R、及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
前記一般式(2)中、R、及びRは独立してメチル基又はエチル基を表す。R、Rは、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドの分解温度が高いため、組成物の保存安定性が高くなる観点から、メチル基が好ましい。
前記一般式(2)中、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表す。使用するランプの発光波長に対して、これら置換基にかかるプッシュ・プル効果より、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドの光の吸収特性を調整することができ、ランプの光を効率よく吸収することができる。
前記一般式(2)中、nは0から2の整数を表す。前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドの合成が容易である観点から、nは0から1の整数が好ましく、0がより好ましい。
前記一般式(2)中、nが1から2の整数の場合、前記Rの置換位置は、特に限定されないが、ランプの光に対する感度が高い点から、チオキサントン骨格の6位又は7位に置換されていることが好ましく、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドの合成が容易である観点から、チオキサントン骨格の7位に置換されていることがより好ましい。
前記Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基等のアルコキシ基;塩素原子等が挙げられる。ランプの光に対する感度が高い点から、メトキシ基、エトキシ基であることがより好ましい。
以下に本発明のチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)としては、好ましくは化合物10から化合物18が挙げられ、より好ましくは化合物10、化合物11が挙げられる。
<チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)の製造方法>
前記一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)の製造方法は、例えば、下記反応式のように、イソアルキル基置換チオキサントン誘導体を、金属錯体の存在下、ヒドロペルオキシドを反応させる工程(以下、工程(A)とも称す)を含む方法が挙げられる。なお、反応後には、余剰の原料等を減圧留去(除去)する工程や、精製工程を含んでも良い。
(上記反応式において、R、R、R及びnは前記一般式(2)と同じであり、R及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
前記工程(A)において、前記イソアルキル基置換チオキサントン誘導体は、市販品を利用できる。なお、市販品がない場合、例えば、J.Chem.Soc.99,645(1911)に記載のように、2,2’-ジチオ二安息香酸を芳香族化合物と硫酸中で反応させることにより合成することができる。
前記工程(A)において、ヒドロペルオキシドは、イソアルキル基置換チオキサントン誘導体1.0モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、0.8モル以上反応させることが好ましく、1.0モル以上反応させることがより好ましく、そして、10.0モル以下反応させることが好ましく、6.0モル以下反応させることがより好ましい。なお、ヒドロペルオキシドは、市販品を利用でき、市販品がない場合、特開昭58-72557号公報等に記載の公知の合成法に準じて合成することができる。
前記工程(A)において、金属錯体は、第4及び第5周期の遷移金属の中から選ばれる金属の金属錯体を用いることができる。金属錯体の金属としては、例えば、銅、コバルト、マンガン、鉄、クロム、亜鉛などであり、配位子としては、例えば、臭素、塩素等のハロゲン、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、ナフテン酸、オクテン酸、グルコン酸等の有機酸、シアン、アセチルアセトナート等が挙げられる。金属錯体は、ヒドロペルオキシド1.0モルに対して、目的物の収率性を高める観点から、0.0001モル以上使用することが好ましく、0.001モル以上使用することがより好ましく、そして、1.0モル以下使用することが好ましく、0.1モル以下使用することがより好ましい。
前記工程(A)において、反応温度は、目的物の収率性を高める観点から、0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、そして、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。反応時間は、原料や反応温度等によって異なるので一概には決定できないが、通常、目的物の収率性を高める観点から、1時間から60時間が好ましい。
前記工程(A)において、媒体として水を使用することが好ましく、水と有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等を使用することができる。前記有機溶媒や水の使用量は、通常、原料の合計量100質量部に対して50~1000質量部程度である。有機溶媒や水は工程(A)の後に留去や分離することで、チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドを取り出してもよい。
前記工程(A)は、常圧、加圧、減圧下の何れの条件化でも実施できるが、窒素等の不活性ガス雰囲気又は大気下で実施することが好ましく、大気下で実施することがより好ましい。
前記精製工程としては、余剰の原料や副生物を除去するために、例えば、有機溶媒やイオン交換水、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液や、塩酸や硫酸等の酸性水溶液を用いて洗浄し、目的物を精製する工程が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、メタノール、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等を使用することができる。なかでも、有機溶剤で洗浄することが好ましく、ヘプタンやメタノールで洗浄することがより好ましい。前記有機溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記有機溶媒の使用量は、通常、原料の合計量100質量部に対して50~1000質量部程度である。
<重合開始剤>
本発明の重合開始剤は、前記一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)と、一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)を含有する。重合開始剤は、活性エネルギー線又は熱により分解し、発生したラジカルがラジカル重合性化合物の重合(硬化)を開始する働きを有する。重合開始剤100質量部において、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)は、ラジカル重合性化合物の高分子量化を抑制する観点から30質量部以下であり、15質量部以下が好ましく、そして、保存安定性の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、前記重合開始剤100質量部において、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)は、硬化性の観点から、30質量部以上が好ましく、50質量部以上が好ましく、そして、保存安定性の観点から、98質量部以下が好ましく、95質量部以下が好ましい。
また、前記重合開始剤は、チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドやチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド以外の重合開始剤(以下、他の重合開始剤とも称す)を含有することができる。チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドとチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシドと吸収帯の異なる他の重合開始剤の2種類以上を使用することで、例えば、高圧水銀ランプ等の複数の波長の光が放射されるランプに対し、組成物の高感度化を図ることができる。また、組成物に含まれるラジカル重合性化合物の重合性、重合性組成物に含まれる光を吸収や散乱する顔料等の種類、硬化物の膜厚等を考慮して、他の重合開始剤を用いることで、組成物の表面硬化性や深部硬化性、透明性等を改良することができる。
前記他の重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒロドキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のα―ヒドロキシアセトフェノン誘導体;2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-(N,N-ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα―アミノアセトフェノン誘導体;ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(メシチルカルボニル)フェニルホスフィナート等のアシルホスフィンオキサイド誘導体;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[({1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エチリデン}アミノ)オキシ]エタノン、[8-[5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾイル]][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メタノン-(O-アセチルオキシム)、1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニル]チオ]フェニル-4-メチル-1-ペンタノン-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)1,3,5-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチルトリアジン誘導体;2,2-ジメトキシ-2-フエニルアセトフエノン等のベンジルケタール誘導体;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、4-(4-メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-ベンゾイルー7-ジエチルアミノクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)等のクマリン誘導体;2-(2-クロロフェニル)-1-[2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニル-1,3-ジアゾール-2-イル]-4,5-ジフェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;3,3’、4,4’-テトラキス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(1-tert-ブチルパーオキシ-1メチルエチル)-9H-チオキサンテン-9-オン、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;カンファーキノン等が挙げられる。これらの中でも、アシルホスフィンオキサイド誘導体、チオキサントン誘導体の2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン及び2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-9H-チオキサン-9-オンから選ばれる1種類以上が好ましい。他の重合開始剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
なお、前記重合開始剤に、前記他の重合開始剤を含む場合、他の重合開始剤の割合は、ランプ等から放射される波長等に応じて適宜設定できるが、例えば、重合開始剤中、80質量%以下、50質量%以下が例示できる。
以下、本発明の組成物の配合量等について説明する。
前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01から20質量部であることが好ましく、0.02から10質量部であることがより好ましく、0.05から5質量部であることがさらに好ましい。前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部未満では硬化反応が進行しないため好ましくない。また、前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、20質量部より多い場合、ラジカル重合性化合物への溶解度が飽和に達し、組成物の成膜時に前記重合開始剤の結晶が析出し、皮膜表面の荒れが問題になる場合や、前記重合開始剤の分解残渣の増加により、硬化物の塗膜の強度が低下する場合があるため、好ましくない。
<その他の成分>
前記組成物には、コーティング剤や塗料、印刷インキ、感光性印刷版、接着剤、カラーレジストやブラックレジスト等の各種フォトレジスト等の用途で一般的に使用されている添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジブトキシアントラセン、クマリン、ケトクマリン、アクリジンオレンジ、カンファーキノン等)、重合禁止剤(p-メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン等)、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、接着促進剤、可塑剤、エポキシ化合物、チオール化合物、エチレン性不飽和結合を有する樹脂、飽和樹脂、着色染料、蛍光染料、顔料(黄色顔料、青色顔料、赤色顔料、白色顔料、黒色顔料等)、炭素系材料(炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化イリジウム、酸化亜鉛、アルミナ等)、金属(銀、銅等)、無機化合物(シリカ、ガラス粉末、層状粘度鉱物、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等)、無機充填剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム等)、分散剤、難燃剤等が挙げられる。添加剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記添加剤は使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、顔料、炭素系材料、金属酸化物、無機化合物、無機充填剤が好ましく、黒色顔料、カーボンブラック、アルミナ、シリカがより好ましい。
前記添加剤の含有量は、使用目的に応じて適宜選択され、特に制限されるものではないが、通常、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。とくに、本発明の組成物は、顔料、炭素系材料、金属酸化物、無機化合物、無機充填剤等を含む場合においても、深部(光の未照射部分)を硬化できるため、例えば、これらの下限値として、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上が例示できる。
前記組成物には、粘度や塗装性、硬化膜の平滑性の改良のため、更に溶媒を加えることもできる。溶媒は、前記ラジカル重合性化合物、前記重合開始剤、前記その他の成分を、溶解または分散することができるものであり、乾燥温度において揮発する溶媒であれば、特に制限されるものではない。
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、カルビトール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒、セロソルブアセテート系溶媒、カルビトールアセテート系溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
前記溶媒を使用する場合、前記溶媒の使用量は、前記組成物の固形分100質量部に対して、10から1000質量部であることが好ましく、20から500質量部であることがより好ましい。
<組成物の調製方法>
前記組成物を調整する場合には、収納容器内に前記ラジカル重合性化合物、前記重合開始剤、必要に応じて、前記その他の成分を投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミル等を用いて、常法に従って溶解または分散させればよい。また、必要に応じて、メッシュまたはメンブレンフィルター等を通してもろ過してもよい。
なお、前記組成物の調整において、前記重合開始剤は、組成物に最初から添加しておいてもよいが、組成物を比較的長時間保存する場合には、使用直前に前記重合開始剤を、ラジカル重合性化合物を含む組成物中に溶解または分散させることが好ましい。
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物の製造方法は、ラジカル重合性化合物と前記重合開始剤を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I)、及び前記工程(I)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含む。
前記組成物は、前記重合開始剤を含むため、活性エネルギー線を照射することによって、固体状の硬化物が形成できる。よって、前記組成物およびその硬化物の形状は、何ら制限されるものではなく、例えば、シート状、板状、バルク状(塊状)などが挙げられる。前記組成物は、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スリットコート法、ドクターブレードコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の種々の塗布方法で基板に塗布してもよく、また、深さのある容器に注型してもよい。また、前記基板及び容器は、例えば、ガラス、シリコンウエハ、金属、プラスチック等のフィルムやシート、および立体形状の成形品等が挙げられ、基板及び容器の形状が制限されることは無い。
前記活性エネルギー線は、電子線、紫外線、可視光線、放射線等の活性エネルギー線が挙げられる。
活性エネルギー線は、活性エネルギー線の波長が250から450nmの光を含むことが好ましく、硬化を迅速に行うことができる観点から、350から410nmの光を含むことがより好ましい。
前記活性エネルギー線の照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線無電極ランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、太陽光、YAGレーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー等のガスレーザー等を使用することができる。なお、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)の吸収が少ない可視光から赤外光の光を用いる場合には、前記添加剤として、その光を吸収する増感剤を使用することにより硬化を行なうことができる。
前記活性エネルギー線の露光量は、前記組成物が、活性エネルギー線を照射することにより開始する重合反応の重合熱の拡散によって、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより硬化できる露光量に適宜設定すべきであり、活性エネルギー線の波長や強度、前記組成物の成分に応じて適宜設定すべきである。一例として、UV-A領域での露光量は、10から5,000mJ/cmであることが好ましく、30から1,000mJ/cmであることがより好ましい。また、前記組成物に遮光成分を含有する場合は、UV-A領域での露光量は、100から500,000mJ/cmであることが好ましく、1,000から200,000mJ/cmであることがより好ましい。
本発明の硬化物の製造方法において、前記組成物の活性エネルギー線の届かない部分を硬化できる利点を活かす観点から、前記硬化物の厚みは、下限値として、例えば、300μm以上、400μm以上、500μm以上が例示できる。当該厚みは、前記硬化物の形状により、その厚さや長さを示すものであり、例えば、前記硬化物の形状が、シート状の場合、その膜厚を示し、また、バルク状の場合、その厚さや長さを示す。前記硬化物の厚みは、前記組成物が、活性エネルギー線を照射することにより開始する重合反応の重合熱の拡散によって、前記チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)及びチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)のペルオキシエステル基の分解が促進されることにより硬化できる範囲であれば、その上限値に何ら制限されるものではないが、例えば、上限値として、例えば、500mm以下、300mm以下が例示できる。
なお、本発明の硬化物の製造方法には、必要に応じ、加熱する工程を含むことができる。
本発明の硬化物の製造方法、および得られる硬化物は、ハードコート剤、光ディスク用コート剤、光ファイバー用コート剤、モバイル端末用塗料、家電用塗料、化粧品容器用塗料、光学素子用内面反射防止塗料、高・低屈折率コート剤、遮熱コート剤、放熱コート剤、防曇剤等の塗料・コーティング剤;オフセット印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェット印刷インキ、導電性インキ、絶縁性インキ、導光板用インキ等の印刷インキ;感光性印刷版;ナノインプリント材料;3Dプリンター用樹脂;ホログラフィー記録材料;歯科用材料;導波路用材料;レンズシート用ブラックストライプ;コンデンサ用グリーンシートおよび電極材料;FPD用接着剤、HDD用接着剤、光ピックアップ用接着剤、イメージセンサー用接着剤、有機EL用シール剤、タッチパネル用OCA、タッチパネル用OCR等の接着剤・シール剤;カラーレジスト、ブラックレジスト、カラーフィルター用保護膜、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、額縁レジスト、TFT配線用フォトレジスト、層間絶縁膜等のFPD用レジスト;液状ソルダーレジスト、ドライフィルムレジスト等のプリント基板用レジスト;半導体レジスト、バッファーコート膜等の半導体用材料等の各種用途に使用でき、その用途に特に制限は無い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
<チオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシドの合成>
[合成例1:化合物1の合成]
200mL四つ口フラスコに、ベンゼン30mL、2-イソプロピルチオキサントン6.10g(24.0mmol)、塩化銅(I)0.0238g(0.24mmol)を入れ、室温下で撹拌した。69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液15.7g(0.12mol)を徐々に加えた。窒素気流下で65℃に加温し、60時間反応させた。反応液を冷却し、酢酸エチル20mLを添加した後に、水相を分液した。油相を5質量%塩酸、5質量%水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、油相を減圧下で濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、2.55g(収率31%)の化合物1を得た。得られた化合物1のEI-MS及びH-NMRによる分析結果を表1に示す。
[合成例2:化合物2の合成]
本発明の化合物2は合成例1に記載の69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液を、85質量%tert-アミルヒドロペルオキシドに変更したこと以外は、合成例1に記載の方法を準じて合成した。得られた化合物2のEI-MS及びH-NMRによる分析結果を表1に示す。
[チオキサントン骨格を有するジアルキルヒドロペルオキシドの合成]
[合成例3:化合物10の合成]
2L四つ口フラスコに、水300.8mL、2-イソプロピルチオキサントン100.3g(0.39mol)、ラピゾールA-80(日油製)1.0g、酢酸銅二水和物0.79g(0.004mol)、69質量%tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液154.4g(1.18mol)を入れ、70℃で9時間撹拌した。反応液にn-ヘプタン444.9g、メタノール444.9g、10質量%水酸化ナトリウム水溶液222.5gを添加後、油相と水相を分離した。水相とヘプタン444.9gを混合し、抽出した油相を減圧下で濃縮し、粗体を得た。粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、11.5g(収率5.4%)の化合物10を得た。得られた化合物10のEI-MS及びH-NMRによる分析結果を表1に示す。
[合成例4:化合物11の合成]
本発明の化合物11は、合成例3に記載の2-イソプロピルチオキサントンを、2-メトキシ-7-イソプロピルチオキサントンに変更したこと以外は、合成例3に記載の方法に準じて合成した。得られた化合物11のEI-MS及びH-NMRによる分析結果を表1に示す。
<実施例1>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)、光重合開始剤を表2に示す配合割合で混合、攪拌し、組成物を得た。
<実施例2~6および比較例1~3>
表3に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例1と同様の方法で組成物を調製した。比較例1では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM RESINS B.V.製))を使用した。
<硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、表2に示す波長のLED光源で、表2で示す積算光量を照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
<保存安定性>
実施例および比較例で調製した組成物を、褐色のガラス瓶中に入れ、アルミホイルで遮光した後に、輸送・保存を想定した60℃の定温恒温機内に静置した。3ヶ月保存後、目視で硬化が確認されなかった場合を「〇」、3ヶ月保存後、目視で硬化が確認された場合を「×」とした。その結果を表2に示す。
<実施例7>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)、黒色顔料として3,7-ビス(2-オキソ-1H-インドール-3(2H)-イリデン)ベンゾ[1,2-b:4,5-b‘]ジフラン-2,6-(3H、7H)-ジオン、光重合開始剤を表3に示す配合割合で混合、攪拌し、組成物を得た。
<実施例8~10および比較例4~6>
表3に示す光重合開始剤に変更した以外は、実施例7と同様の方法で組成物を調製した。比較例2では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM RESINS B.V.製))を使用した。
<黒色硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、試験管上部から385nmLED光源を用いて270mW/cm2で30秒間(=8100mJ/cm2)照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
<保存安定性>
実施例および比較例で調製した組成物を、褐色のガラス瓶中に入れ、アルミホイルで遮光した後に、輸送・保存を想定した60℃の定温恒温機内に静置した。3ヶ月保存後、目視で硬化が確認されなかった場合を「〇」、3ヶ月保存後、目視で硬化が確認された場合を「×」とした。その結果を表3に示す。
<実施例11>
<組成物の調整>
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業製)を100質量部、コロイダルシリカ(扶桑化学工業製)を60質量部、光重合開始剤として化合物25を1質量部混合、攪拌し、組成物を得た。
<実施例12~14および比較例4~6>
表4に示す光重合開始剤、フィラーに変更した以外は、実施例13と同様の方法で組成物を調製した。比較例3では、公知の光重合開始剤として、化合物R1(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM RESINS B.V.製))を使用した。
<無機フィラー配合硬化物の製造>
試験管(直径10mm、高さ90mm)内に、上記の方法で調製した組成物を高さ50mmとなるよう充填した。試験管上部以外をアルミホイルで遮光し、試験管上部から365nmLED光源を用いて650mW/cmで90秒間(=58500mJ/cm)照射し、硬化物を製造した。硬化物(硬化層)の形成は試験管から硬化物を取り出して確認し、硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測した。
<保存安定性>
実施例および比較例で調製した組成物を、褐色のガラス瓶中に入れ、アルミホイルで遮光した後に、輸送・保存を想定した60℃の定温恒温機内に静置した。3ヶ月保存後、目視で硬化が確認されなかった場合を「〇」、3ヶ月保存後、目視で硬化が確認された場合を「×」とした。その結果を表4に示す。
各実施例の組成物は、保存安定性に優れ、活性エネルギー線の照射により、目視での観察において、組成物の上部に硬化物(硬化層)の形成が確認され、活性エネルギー線の照射後も、当該硬化層の界面が徐々に下方に下がることが確認できた。また、試験管から硬化物を取り出して硬化物(硬化層)の厚み(mm)を計測し、厚みが50mmであることが確認できた。よって、各実施例の組成物は、活性エネルギー線を照射する工程のみで、一定以上の厚さを有する硬化物が得られることが明らかである。
また、比較例の組成物は、活性エネルギー線の照射後では、硬化層の界面が変化しなかった。よって、各実施例の組成物は、ラジカル重合性化合物を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射することで、前記組成物における前記活性エネルギー線の未照射部分を十分に硬化できることが明らかである。

Claims (1)

  1. 硬化物の製造方法であって、
    ラジカル重合性化合物と重合開始剤を含む組成物の一部分に活性エネルギー線を照射する工程(I)、及び
    前記工程(I)により生じた重合熱により、前記組成物における前記活性エネルギー線が照射されていない部分を熱重合する工程(II)を含み、
    前記重合開始剤は、下記一般式(1)で表されるチオキサントン骨格を有するジアルキルペルオキシド(a-1)と下記一般式(2)で表されるチオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)を含み、
    前記重合開始剤100質量部において、前記チオキサントン骨格を有するヒドロペルオキシド(a-2)は、30質量部以下であることを特徴とする硬化物の製造方法。
    (式(1)中、R、R、R及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
    (式(2)中、R、及びRは独立してメチル基又はエチル基を表し、Rは独立した置換基であって、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は塩素原子を表し、nは0から2の整数を表す。)
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