本発明の実施形態の好ましい実施形態を詳細に参照して、その実施例が添付の図面に図示される。
本発明の実施形態は、RTLSを含む、RFに基づく物体の識別、追跡および位置検出のための方法およびシステムに関する。一実施形態によれば、方法およびシステムは、狭帯域幅測距信号を使用する。本実施形態は、VHF帯域において作動するが、HF、LFおよびVLF帯域ならびにUHF帯域以上の周波数においても使うことができる。これは、マルチパス緩和プロセッサを使用している。マルチパス緩和プロセッサを使用することで、システムによって行う追跡および位置検出の精度が向上する。
本実施形態は、ユーザが複数の人間および物体を追跡し、位置検出して監視することができる、小さく非常に携帯性の良い基本ユニットを含む。各ユニットは、それ自身のIDを有する。各ユニットはそのIDとともにRF信号をブロードキャストし、各ユニットは、そのIDならびに音声、データおよび追加情報を含むことができる帰還信号を送り返すことが可能である。各ユニットは、他のユニットから返送された信号を処理して、三角測量または三辺測量および/または使用する他の方法に応じて、連続的にそれらの相対的および/または実際の位置を判定する。好ましい実施例は、GPSデバイス、スマートフォン、双方向ラジオおよびPDAなどの製品に容易に組み込むこともできる。結果として得られる製品はスタンドアロンデバイスの機能の全てを有し、一方で、既存のディスプレイ、センサ(例えば高度計、GPS、加速度計およびコンパス)およびそのホストの処理能力を活用する。例えば、本明細書において記載するデバイステクノロジを有するGPSデバイスは、マップ上のユーザの位置を提示するとともにグループの他のメンバの位置をマッピングすることが可能である。
FPGA実装に基づく好ましい実施形態のサイズは、およそ5.1×10.2×2.5cmから5.1×5.1×1.3cmの間であり、集積回路技術の向上につれてより小さくなる。使用する周波数に応じて、アンテナは、デバイスに組み込まれるかまたはデバイスの筐体から突出する。デバイスのASIC(特定用途向け集積回路)に基づくバージョンは、FPGAおよび大部分の他の電子部品の機能をユニットまたはタグに取り入れることが可能である。製品のASICに基づくスタンドアロンのバージョンは、結果として2.5×1.3×1.3cm以下のデバイスサイズになる。アンテナサイズは使用する周波数によって決定され、アンテナの一部は筐体に組み込むことができる。ASICに基づく実施形態は、チップセットだけから成ることのできる製品に組み込まれるように設計される。マスタユニット間またはタグユニット間のいかなる実質的な物理サイズの違いも無いはずである。
デバイスは、マルチパス緩和アルゴリズムの処理のための複数の周波数範囲(帯域)で作動している標準的なシステムコンポーネント(既成のコンポーネント)を使用することができる。デジタル信号処理およびソフトウェア定義無線のためのソフトウェアを使用することができる。最小のハードウェアと組み合わされた信号処理ソフトウェアは、ソフトウェアによって定義される送信および受信波形を備えた無線機を組立てることを可能にする。
関連の特許文献1は狭帯域幅測距信号システムを開示しており、それによって、狭帯域幅測距信号は、例えばわずか数kHzの広さしかない(低帯域幅チャネルのいくつかは数十kHzに達することができるが)音声チャネルを使用して、低帯域幅チャネルに収まるように設計されている。これは、数百kHzから何十MHzまでもの広さのチャネルを使用する従来の位置探査システムとは対照的である。
この狭帯域幅測距信号方式の利点は、以下の1)〜3)通りである。1)低動作周波数/帯域で、従来の位置探査システム測距信号帯域幅は、搬送波(動作)周波数値を超える。従って、このようなシステムはLF/VLF、およびHFを含む他の低周波数帯域で展開することができない。従来の位置探査システムとは異なり、関連の特許文献1に記載される狭帯域幅測距信号方式は、その測距信号帯域幅が搬送波周波数値よりかなり低いので、LF、VLFおよび他の帯域にうまく展開することができる。2)例えば、UHF帯域までのRFスペクトル(いくつかのVLF、LF、HFおよびVHF帯域)の下端では、FCCが許容帯域幅(12〜25kHz)を厳格に制限しているので、従来の位置探査システムを用いることができず、そのため従来の測距信号を使用することができない。従来の位置探査システムとは異なり、狭帯域幅測距信号方式の測距信号帯域幅は、FCC規則および他の国際的なスペクトル規制団体に完全に準拠する。3)動作周波数/帯域とは独立して、狭帯域幅信号が広帯域幅信号と比較して、本質的により高いSNR(信号対ノイズ比)を有することは良く知られている(非特許文献4を参照)。これは、狭帯域幅測距信号位置探査システムの動作範囲を、それが作動する周波数/帯域とは独立して、UHF帯域を含んで増加させる。
このように、従来の位置探査システムとは異なり、狭帯域幅測距信号位置探査システムは、RFスペクトルの下端、例えば、マルチパス現象がそれほど顕著ではないVHF以下の周波数帯域からLF/VLF帯域まで展開することができる。同時に、狭帯域幅測距位置探査システムはまた、UHF帯域以上に展開することもでき、測距信号SNRを改善し、その結果、位置探査システム動作範囲を増加させる。
マルチパス、例えば、RFエネルギー反射を最小化するために、VLF/LF帯域で動作することが望ましい。しかしながら、これらの周波数では、携帯式/移動式アンテナの効率は、非常に小さい(RF波長に対してアンテナ長(サイズ)が小さいため、約0.1%以下)。加えて、これらの低周波では、自然および人工のソースからのノイズレベルは、より高い周波数/帯域、例えばVHFよりもかなり高い。合わせて、これらの2つの現象は、位置探査システム、例えばその動作範囲および/または移動性/可搬性の適用可能性を制限し得る。従って、動作範囲および/または移動性/可搬性が非常に重要である一定の用途に対しては、高いRF周波数/帯域、例えばHF、VHF、UHFおよびUWBを用いることができる。
VHFおよびUHF帯域では、自然および人工ソースからのノイズレベルは、VLF、LFおよびHF帯域と比較して著しく低く、そして、VHFおよびHF周波数では、マルチパス現象(例えば、RFエネルギー反射)は、UHF以上の周波数におけるほど深刻ではない。また、VHFでは、アンテナ効率はHF以下の周波数に比べて著しく良好であり、VHFでは、RF透過能力はUHFにおいてよりかなり良好である。このように、VHF帯域は、良好な妥協を移動式/携帯式用途に提供する。一方、いくつかの特殊なケース、例えばVHF周波数(またはそれ以下の周波数)が電離層を透過することができない(または、偏向/屈折される)GPSの場合、UHFは、良い選択肢となり得る。しかしながら、いずれの場合でも(そして全ての場合/用途で)、狭帯域幅測距信号システムは、従来の広帯域幅測距信号位置探査システムを上回る利点がある。
実際の用途(複数可)が、正確な技術仕様(例えば電力、放射、帯域幅および動作周波数/帯域)を決定する。狭帯域幅測距によって、ユーザは免許を受けるか、もしくは免許の免除を受けるかのいずれかが可能であり、または、狭帯域幅測距は、最も厳しい狭帯域幅である、FCCに規定される6.25kHz、11.25kHz、12.5kHz、25kHzおよび50kHzを含む多くの異なる帯域幅/周波数上での動作を可能にするので、ユーザはFCCに規定される免許不要帯域を使用することができ、かつ適切なセクションの、対応する技術的要件を遵守することができる。その結果、複数のFCCセクションおよびこのようなセクションの中の免除を適用することができる。適用できる主要なFCC規則は、47 CFR Part 90- Private Land Mobile Radio Services, 47 CFR Part 94 personal Radio Services, 47 CFR Part 15 - Radio Frequency Devices、である。(比較すると、この文脈における広帯域信号は、数百KHzから10〜20MHzである。)
通常、Part90およびPart94については、VHF実装は、特定の免除(Low Power Radio Serviceが例である)下で、100mWまでユーザがデバイスを動作させることを可能にする。特定の用途に対しては、VHF帯域の許容送信電力は、2〜5ワットの間にある。900MHz(UHF帯域)に対しては、それが1Wである。160kHz〜190kHzの周波数(LF帯域)では、許容送信電力は1ワットである。
全ての異なるスペクトル許容ではないが、多くの異なるスペクトル許容を遵守しており、かつ最も厳しい規制要件を遵守する一方で、正確な測距を可能にする。これは、FCCに有効であるだけでなく、欧州、日本、韓国などを含む世界中でスペクトルの使用を規制する他の国際機関にも有効である。
以下は、代表的な電力使用量ならびにタグが実際の世界の環境において別のリーダと通信することができる距離とともに表した、使用されている一般的な周波数のリストである(非特許文献5を参照)。
915MHz 100mW 45.7m
2.4GHz 100mW 30.5m
5.6GHz 100mW 22.9m
提案システムは、VHF周波数で動作し、RF信号を送信し、処理する、所有権のある方法を使用する。より具体的には、本システムは、VHF周波数での狭帯域幅要件の制限を克服するために、DSP技術およびソフトウェア定義無線(SDR)を使用する。
低い(VHF)周波数で作動することで、散乱を低減し、より大幅に良好な壁透過を提供する。最終的な結果は、一般的に用いられる周波数の範囲のおよそ10倍の増加である。例えば、プロトタイプの測定された範囲を上記のRFID技術の範囲と比較する。
216MHz 100mW 213.4m
狭帯域の測距技術を利用して、典型的電力使用における一般的な使用周波数の範囲、およびタグ通信範囲が実世界環境において別のリーダと通信することのできる距離は、著しく増加する。
915MHz 100mW 45.7mから152.4mへ
2.4GHz 100mW 30.5mから137.2mへ
5.6GHz 100mW 22.9mから121.9mへ
バッテリの消費量は、デバイスの設計、送信電力およびデューティサイクル、例えば、2つの連続する距離(位置)の測定の間の時間間隔の関数である。多くの用途においてはデューティサイクルが大きく、10倍から1000倍である。大きい、例えば100倍のデューティサイクルを有する用途において、100mWの電力を送信するFPGAバージョンは、ほぼ3週間のアップ時間を有する。ASICに基づくバージョンは、アップ時間を10倍に増加させると予想される。また、ASICは本質的に低いノイズレベルを有する。従って、ASICに基づくバージョンは、動作範囲を40%増加させることもできる。
当業者は、本実施形態がRFにとって困難な環境(例えば、建物、都市部の通路など)における位置探査精度を著しく向上させながら、システムの長い動作範囲を損なわないことを理解するであろう。
通常、追跡および位置検出システムは、追跡−位置検出−ナビゲート(Track−Locate−Navigate)方法を使用する。これらの方法は、到達時間(Time−Of−Arrival(TOA))、到達時間差(Differential−Time−Of−Arrival(DTOA))、およびTOAとDTOAとの組合せを含む。距離測定技術としての到達時間(TOA)は、概して、特許文献5に記載されている。TOA/DTOAに基づくシステムは、RF測距信号直接見通し線(DLOS)の飛行時間、例えば、時間遅延を測定し、次にそれが距離範囲に変換される。
RF反射(例えば、マルチパス)の場合には、各種の遅延時間を有するRF測距信号の複数のコピーが、DLOSのRF測距信号上に重畳される。狭帯域幅測距信号を使用する追跡−位置検出システムは、マルチパス緩和無しではDLOS信号と反射信号の間の区別をすることができない。その結果、これらの反射信号は、推定される測距信号のDLOS飛行時間における誤差を引き起こし、それが次に、範囲推定精度に影響を与える。
本実施形態はマルチパス緩和プロセッサを都合よく使用して、DLOS信号および反射信号を分離する。このように、本実施形態は、推定された測距信号DLOS飛行時間における誤差を著しく低減する。提案されるマルチパス緩和方法は、全てのRF帯域に用いることができる。本方法は、広帯域幅測距信号位置探査システムとともに用いることもできる。そして、本方法は、DSS(直接スペクトラム拡散)およびFH(周波数ホッピング)などのスペクトラム拡散技術を含む各種の変調/復調技術をサポートすることができる。
加えて、ノイズ低減方法は、本方法の精度を更に改善するために適用することができる。これらのノイズ低減方法は、コヒーレント加算、非コヒーレント加算、整合フィルタリング、時間ダイバーシティ技術などを含むことができるが、これらに限定されない。残りのマルチパス干渉誤差は、最尤推定(例えば、ビタビアルゴリズム)、最小分散推定(カルマンフィルタ)などの後処理技術を適用することによって更に低減することができる。
本実施形態は、単方向、半二重および全二重動作モードを備えるシステムにおいて使用することができる。全二重動作はRFトランシーバの複雑性、コストおよびロジスティックスに関して非常に要求が多く、それが携帯式/移動式デバイス実装においてシステム動作範囲を制限する。半二重動作モードにおいては、リーダ(しばしば「マスタ」と呼ばれる)およびタグ(時々、「スレーブ」または「ターゲット」とも呼ばれる)は、マスタまたはスレーブが所定時間に送信することしかできないプロトコルによって制御される。
送受信を交互に行うことによって、単一の周波数が距離測定において使用されることを可能にする。このような構成は、全二重方式と比較するとシステムのコストおよび複雑さを低減する。単方向通信の動作モードは概念的により単純であるが、測距信号シーケンスの開始を含んで、マスタユニットとターゲットユニットの間にイベントのより厳密な同期を必要とする。
本発明の実施形態において、狭帯域幅測距信号のマルチパス緩和プロセッサは、測距信号帯域幅を増加させない。これは異なる周波数成分を都合よく使用して、狭帯域幅測距信号の伝搬を可能にする。更なる測距信号処理は、周波数領域において、超分解能スペクトルの推定アルゴリズム(MUSIC、rootMUSIC、ESPRIT)および/またはRELAXのような統計アルゴリズムを用いることによって、または、時間領域において、比較的大きな帯域幅で合成測距信号を組み立て、この信号に更なる処理を適用することによって、実行することができる。狭帯域幅測距信号の異なる周波数成分は、疑似ランダムに選択することができき、それはまた、周波数において連続的であり、または、間隔があいていてもよく、周波数において均一および/または不均一な間隔を有し得る。
本実施形態は、マルチパス緩和技術を拡張する。狭帯域測距用の信号モデルは、複素指数関数(本明細書の別の場所で紹介されている)であり、その周波数は、範囲によって定義された遅延と、それに加えて、マルチパスに関連する時間遅延によって定義される遅延を含む同様の項とに正比例する。本モデルは、信号構造、例えば、ステップ周波数、線形周波数変調などの実際の実装から独立している。
直接パスとマルチパス間の周波数分離は名目上極めて小さく、通常の周波数領域処理は直接パス範囲を推定するのには十分でない。例えば、30メートルの範囲において、5MHzにわたって100KHzステップレートのステップ周波数測距信号(100.07ナノ秒の遅延)は、結果として、0.062875ラジアン/秒の周波数を生じる。35メートルのパスの長さでのマルチパス反射は、0.073355の周波数に結果として生じる。分離は、0.0104792である。50個のサンプルの観測量の周波数分解能は、0.12566Hzの固有の周波数分解能を有する。従って、反射パスから直接パスを分離するように従来の周波数推定技術を使用し、そして直接パス範囲を正確に推定することはできない。
この制限を克服するために、本実施形態は、部分空間分解高分解能スペクトル推定方法論および多モードクラスタ解析の実施の独自の組み合わせを使用する。部分空間分解技術は、観測されたデータの推定共分散マトリックスを2つの直交部分空間、ノイズ部分空間および信号部分空間に分解することに依存する。部分空間分解方法論の背後の理論は、ノイズ部分空間上への観測量の投影がノイズだけから成り、信号部分空間上への観測量の投影が信号だけから成るということである。
超分解能スペクトルの推定アルゴリズムおよびRELAXアルゴリズムは、ノイズの存在下において、スペクトルの密に置かれた周波数(正弦波)を区別することができる。周波数は高調波の関係を有する必要はなく、デジタルフーリエ変換(DFT)とは異なり、信号モデルはいかなる人工的な周期性も導入しない。所与の帯域幅に対しては、これらのアルゴリズムは、フーリエ変換より著しく高い分解能を提供する。従って、直接見通し線(DLOS)は、他のマルチパス(MP)から高精度で確実に区別することができる。同様に、以下で記載される閾値方法を人工的に生成された合成の帯域幅がより広い測距信号に適用することにより、他のパスからDLOSを高精度で確実に区別することを可能にする。
本実施形態によれば、デジタル信号処理(DSP)はマルチパス緩和プロセッサによって使用されて、他のMPパスからDLOSを確実に区別することができる。様々な超分解能アルゴリズム/技術は、スペクトル解析(スペクトルの推定)技術の中に存在する。実施例は、部分空間に基づく方法を含み、MUSIC(Multiple Signal Characterization)アルゴリズムまたはroot−MUSICアルゴリズム、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)アルゴリズム、PHD(Pisarenko Harmonic Decomposition)アルゴリズム、RELAXアルゴリズムなどがある。
上述した超分解能アルゴリズムの全てにおいて、入来(すなわち、受信)信号は、周波数の複素指数関数およびそれらの複素振幅の線形結合としてモデル化される。マルチパスの場合には、受信信号は、以下の通りである。
ここで、
は送信された信号であり、fは動作周波数であり、Lはマルチパス成分の個数であり、そして、
およびτ
Kは、それぞれ、K番目のパスの複素減衰および伝播遅延である。伝搬遅延が昇順で考慮されるように、マルチパス成分にはインデックスが付与される。その結果として、このモデルでは、τ
0は、DLOSパスの伝搬遅延を意味する。明らかに、τ
0値は、全てのτ
Kのなかで最小値であるので、最も興味深い値である。位相θ
Kは、均一の確率密度関数U(0,2)を用いて、1つの測定周期から別の測定周期まで通常ランダムに想定される。従って、α
K=const(すなわち、定数値)と仮定する。
パラメータαKおよびτKは、建物内およびその周辺の人々およびデバイスの動きを反映するランダムな時変関数である。しかしながら、測定時間間隔と比較して、それらの変化の速度が非常に遅いので、これらのパラメータは、ある測定周期内の時間不変確率変数と見なすことができる。
それらが透過および反射係数などの無線信号特性に関連があるので、全てのこれらのパラメータは周波数依存である。しかしながら、本実施形態では、動作周波数は、ほとんど変化しない。従って、上述したパラメータは、周波数に依存していないと仮定することができる。
式(1)は、周波数領域において次のように表すことができる。
ここで、A(f)は、受信信号の複素振幅であり、(2π×τK)は超分解能アルゴリズムによって推定される人工的な「周波数」であり、動作周波数fは、独立変数であり、αKは、K番目のパス振幅である。
式(2)において、(2π×τK)の超分解能推定と、そして、τK値とは、連続周波数に基づく。実際には、有限数の測定値がある。このように、変数fは、連続変数でなく、むしろ離散変数となる。従って、複素振幅A(f)は、以下の通りに算出することができる。
ここで、
は離散周波数f
nにおける離散複素振幅推定値(すなわち測定値)である。
式(3)において、
は、マルチパスチャネルを介して伝播した後の周波数f
nの正弦波信号の振幅および位相として理解することができる。全てのスペクトルの推定に基づく超分解能アルゴリズムが複素入力データ(すなわち複素振幅)を必要とすることに留意する。
いくつかの場合では、例えば、実部信号データ、例えば
を複素信号(例えば、解析信号)に変換することができる。例えば、このような変換は、ヒルベルト変換または他の方法を用いて達成することができる。しかしながら、距離が短い場合には、値τ
0が非常に小さく、それにより、非常に低い(2π×τ
K)「周波数」となる。
これらの低「周波数」は、ヒルベルト変換(または他の方法)の実装により、問題を生じさせる。加えて、振幅値(例えば
)が使用される場合にのみ、推定される周波数の数は、(2π×τ
K)「周波数」のみだけでなく、それらの組合せも含む。原則として、既知でない周波数の個数を増加させることは、超分解能アルゴリズムの精度に影響を与える。従って、他のマルチパス(MP)パスからDLOSパスを高信頼かつ正確に分離することは、複素振幅推定を必要とする。
下記は、マルチパスの存在下において、複素振幅
を取得するタスクの間の方法およびマルチパス緩和プロセッサ動作の説明である。なお、記述は、半二重化の動作モードに着目しているが、それが全二重化モード用に容易に拡張することができることに留意する。単方向通信の動作モードは、半二重モードのサブセットであるが、付加的なイベント同期を必要とする。
半二重動作モードにおいて、マスタまたはスレーブが所定時間に伝えることができるだけであるプロトコルによって、リーダ(しばしば「マスタ」と呼ばれる)およびタグ(また、「スレーブ」または「ターゲット」と呼ばれる)は、制御される。この動作モードにおいて、タグ(ターゲット装置)は、トランスポンダとして役立つ。タグは、リーダ(マスタ装置)から測距信号を受信して、それをメモリに保存して、そして、特定の時間(遅延)以後、マスタへ信号を再送信する。
測距信号の一例が図1および図1Aに示されている。例示的な測距信号は、連続する周波数成分であって、異なる周波数成分を用いる。周波数および/または時間において擬似ランダムで間隔をあけた、または直交等する波形を含む他の波形もまた、測距信号帯域幅が狭いままである限り、使用することができる。図1では、全ての周波数成分の持続時間TFは、測距信号の狭帯域幅特性を取得するのに十分に長い。
異なる周波数成分を有する測距信号の別の変形が、図2に示されている。この変形は、長期間にわたり送信された複数の周波数(f1、f2、f3、f4、fn)を含むことにより、個々の周波数を狭帯域にする。このような信号は、より効率的であるが、それは広い帯域幅を占め、また、広帯域幅測距信号は、SNRに影響を与え、それにより、動作範囲を縮小する。また、このような広帯域幅測距信号は、VHF帯以下の周波数帯についてのFCCの要件に反する。しかしながら、いくつかの用途では、この広帯域幅測距信号は、既存の信号および送信プロトコルにより容易に統合することができる。また、このような信号は、追跡−位置検出時間を減少させる。
これらの複数の周波数(f1、f2、f3、f4、fn)バーストはまた、周波数および/または時間において連続的および/または疑似ランダムに間隔をあけ、もしくは直交等していてもよい。
狭帯域幅測距モードは、瞬間広帯域測距の形をとって精度を生成する一方で、広帯域測距と比較してこの精度を実現することができる範囲を増加させる。固定の送信電力において、受信機における(適切な信号帯域幅における)狭帯域幅測距信号のSNRは、受信機における広帯域測距信号のSNRより大きくなので、この性能が実現される。このSNR利得は、広帯域測距信号の全帯域幅の、狭帯域測距信号の各チャネルの帯域幅に対する比率のオーダーである。例えば、静止した目標や、人が歩いているまたは走っているといったゆっくり移動する目標に対して、とても早急な測距が必要とされない場合、これは、よいトレードオフを提供する。
マスタデバイスとタグデバイスとは、同一であり、かつ、マスタまたはトランスポンダモードのいずれかで動作することができる。全てのデバイスは、データ/リモートコントロール通信チャネルを含む。これらのデバイスは、情報を交換することができ、マスタデバイスは、タグデバイスを遠隔に制御することができる。図1に示されるこの例では、マスタ(すなわちリーダ)のマルチパス緩和プロセッサの動作が、測距信号をタグへと発信している間、かつ特定の遅延の後、マスタ/リーダは、タグから繰り返される測距信号を受信する。
その後、マスタのマルチパス緩和プロセッサは、受信測距信号と、マスタからもともと送信されたものとを比較し、全ての周波数成分FNに対して振幅および位相の形をとって
の推定値を判定する。式(3)では、
は、単方向の測距信号の送信に対して定義されていることに留意する。本実施形態では、測距信号は往復する。言い換えれば、測距信号は、両方向を行き来する。すなわち、マスタ/リーダからターゲット/スレーブまで、およびターゲット/スレーブからマスタ/リーダにもどる両方向。従って、マスタによって戻ってきて受信されたこの往復信号の複素振幅は、以下のように計算することができる。
例えば、整合フィルタ
および
を含む複素振幅および位相値を推定するために利用可能な多くの技術が存在する。本実施形態によれば、複素振幅の判定は、マスタおよび/またはタグ受信機RSSI(受信信号強度指標)値に由来した
値に基づく。この位相値
は、リーダ/マスタによって受信された帰還ベース帯域測距信号の位相と、オリジナル(すなわち、リーダ/マスタによって送信された)ベース帯域測距信号の位相とを比較することによって取得される。また、マスタデバイスとタグデバイスとは、独立したクロックシステムを有するので、デバイス動作の詳細な説明は、クロック精度の位相推定誤差に対する影響の分析によって、増補される。上記の記載が示すように、単方向振幅
値は、ターゲット/スレーブデバイスから直接的に取得することができる。しかしながら、単方向位相
値は、直接的に測定することができない。
本実施形態では、測距ベース帯域信号は、図1に示されたものと同一のものである。しかしながら、簡略化のため、本明細書においては、測距ベース帯域信号は、たった2つの周波数成分からなり、この2つの周波数成分は、それぞれが、異なる周波数:F1とF2の余弦波または正弦波の複数の周期を含むものとする。F1=f1、F2=f2であることに留意する。第1の周波数成分の周期の個数は、Lであり、第2の周波数成分の周期の個数は、Pである。Tf=定数について、各周波数成分は、異なる数の周期を有することができるので、LがPと等しいかもしれないし、等しくないかもしれないことに留意する。また、各周波数成分間に時間差はなく、そしてF1、F2は両方とも、初期位相がゼロから始まる。
図3A、3Bおよび3Cは、RFモバイル追跡および位置検出システムのマスタユニットまたはスレーブユニット(タグ)のブロック図を示す。FOSCは、デバイスのシステムクロック(図3Aの水晶発振器20)の周波数を指す。デバイス内で生成された全ての周波数は、このシステムクロックの水晶発振器から生成される。以下の定義が使用される:Mは、マスタデバイス(ユニット)である;AMは、タグ(ターゲット)デバイス(ユニット)である。タグデバイスは、トランスポンダモードで動作しており、トランスポンダ(AM)ユニットと称される。
好適な実施形態では、デバイスは、RFフロントエンドと、RFバックエンドと、ベース帯域と、マルチパス緩和プロセッサとからなる。RFバックエンドと、ベース帯域と、マルチパス緩和プロセッサとは、FPGA150に実装される(図3Bおよび3C参照)。システムクロック発生器20(図3A参照)は、FOSC=20MHz、またはωOSC=2π×20×106で発振する。これは理想的な周波数である。なぜなら、実際のデバイスでは、システムクロック周波数が20MHzと必ずしも等しいとは限らないからである。
20MHz以外のFOSC周波数がシステム性能に対して何の影響も与えることなく使用できることに留意する。
両方のユニット(マスタとタグ)の電子構成は、同一であり、異なる動作モードは、ソフトウェアによってプログラム可能である。ベース帯域測距信号は、マスタのFPGA150ブロック155−180(図2B参照)によって、デジタル形式で生成される。それは、2つの周波数成分からなり、それぞれが異なる周波数の余弦または正弦波の複数の周期を含む。まず、t=0では、マスタデバイス(図3B)のFPGA150は、I/Q DAC120および125を介してアップコンバータ50にデジタルベース帯域測距信号を出力する。FPGA150は、F1周波数で始動し、時間T1の後、T2の期間中F2周波数を生成し始める。
水晶発振器の周波数が20MHzと異なり得るので、FPGAによって生成された実際の周波数は、F1γMとF2γMである。また、時間T1はT1βMであり、時間T2はT2βMである。また、F1γM*T1βM=F1T1およびF1γM*T2βM=F2T2となるように、T1、T2、F1、F2は設定され、ここで、F1T1と、F2T2とは、ともに整数であるとする。これは、F1およびF2の初期位相がゼロに等しいことを意味する。
全ての周波数がシステム水晶発振器20のクロックから生成されるので、マスタのベース帯域I/Q DAC(複数可)120および125の出力は、以下のとおりである。
および
であり、ここで、
および
は、一定の係数である。同様に、周波数シンセサイザ25(ミキサー50および85のためのLO信号)から出力周波数TX_LOおよびRX_LOは、一定の係数によって表することができる。これらの一定の係数は、マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)用のものと同じであり、違いは、各デバイスのシステム水晶発振器20のクロック周波数にある。
マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)は、半二重化モードで動作する。マスタのRFフロントエンドは、直交アップコンバータ(すなわちミキサー)50を使用して、マルチパス緩和プロセッサによって生成されたベース帯域測距信号をアップコンバートし、このアップコンバートされた信号を送信する。ベース帯域信号が送信された後、マスタは、RFフロントエンドのTX/RXスイッチ15を使用して、TXからRFモードへと切り替える。トランスポンダは、信号を受信し、RFフロントエンドのミキサー85(第1のIFを生成する)と、ADC140(第2のIFを生成する)とを使用して、当該受信信号をダウンコンバートする。
その後、この第2のIF信号は、デジタルフィルタ190を用いてトランスポンダのRFバックエンドプロセッサにおいてデジタル的にフィルタ処理され、RFバックエンド直交ミキサー200と、デジタルI/Qフィルタ210および230と、デジタル直交発振器220と、加算器270とを使用して、ベース帯域測距信号に更にダウンコンバートされる。このベース帯域測距信号は、RAMデータバスコントローラ195と、制御ロジック180とを使用して、トランスポンダのメモリ170に格納される。
次に、トランスポンダは、RFフロントエンドスイッチ15を使用して、RXからTXモードへと切り替え、一定の遅延t
RTXの後に、格納されたベース帯域信号を再送信し始める。遅延は、AM(トランスポンダ)システムクロックにおいて測定されることに留意する。従って
である。マスタは、トランスポンダ送信信号を受信し、RFバックエンド直交ミキサー200と、デジタルIQフィルタ210および230と、デジタル直交オシレータ220(図3C参照)とを使用して、受信信号をベース帯域信号にダウンコンバートする。
その後、マスタは、マルチパス緩和プロセッサの逆正接ブロック250と、位相比較ブロック255とを使用して、受信(すなわち回復)ベース帯域信号におけるF1とF2との間の位相差を計算する。振幅値は、RFバックエンドRSSIブロック240から導出される。
推定精度を改善するために、ブロック240からの振幅推定のSNRと、ブロック255からの位相差推定のSNRとを改善することが常に望ましい。好適な実施形態では、マルチパス緩和プロセッサは、測距信号の周波数成分持続時間T
fにわたる多くのタイムインスタンスの振幅推定と位相差推定とを計算する。平均化された場合、これらの値はSNRを改善する。SNRの改善は、
に比例するオーダーであり得る。ここで、Nは、振幅値と位相差値とが取られた(すなわち、測定された)時のインスタンスの個数である。
SNRの改善への別のアプローチは、一期間にわたって整合フィルタ技術を適用することによって、振幅値と位相差値とを判定することである。しかし、別のアプローチは、受信(すなわち回復)ベース帯域測距信号の周波数成分をサンプリングし、I/Q形式で、オリジナル(すなわち、マスタ/リーダによって送信された)ベース帯域測距信号の周波数成分を期間T≦T
fにわたって積分することによって、受信(すなわち繰り返し)ベース帯域測距信号の周波数成分の位相と振幅とを推定する。積分は、I/Q形式で振幅と位相との複数のインスタンスを平均化する効果を有する。その後、位相値と振幅値とは、I/Q形式から
および
形式に変換することができる。
マスタのマルチパスプロセッサ制御下で、t=0において、マスタベース帯域プロセッサ(ともにFPGA150内)は、ベース帯域測距シーケンスを開始するとする。
ここで、Tf≧T1βMである。
マスタのDAC120および125出力の位相は、以下のとおりである。
DAC120および125は、システムクロックに依存しない内部伝播遅延、
を有することに留意する。
同様に、送信機回路コンポーネント15、30、40および50は、システムクロックに依存しない追加遅延、
を導入する。
その結果、マスタによって送信されたRF信号の位相は、以下のように計算することができる。
マスタ(M)からのRF信号は、マスタとタグとの間のマルチパス現象の関数である位相シフトφMULTを経る。
φMULT値は送信周波数、例えばF1、F2に依存する。受信機は、各パスを解消することができず、なぜなら、受信機のRF部分の帯域幅が制限されている(すなわち狭い)からである。従って、一定時間、例えば1マイクロ秒(−300メートルの飛行に相当)後に、全ての反射信号が受信機アンテナに到達したとき、下記の式が適用される。
第1のダウンコンバータ(構成要素85)におけるAM(トランスポンダ)において、出力、例えば第1のIFの信号の位相は、以下のとおりである。
受信機のRF部(要素15および60〜85)内での伝播遅延
は、システムクロックに依存しないことに留意する。RFフロントエンドフィルタとアンプ(構成要素95〜110および125)とを通過した後、第1のIF信号は、RFバックエンドADC140によってサンプリングされる。ADC140は、入力信号(例えば第1のIF)をアンダーサンプリングしているとする。従って、ADCはまた、第2のIFを生成するダウンコンバータのように作用する。第1のIFフィルタと、アンプとADCとは、伝播遅延時間を加える。ADC出力(第2のIF)では:
FPGA150では、(ADC出力からの)第2のIF信号は、RFバックエンドデジタルフィルタ190によってフィルタ処理され、第3のダウンコンバータ(すなわち直交ミキサー200、デジタルフィルタ230および210、ならびデジタル直交オシレータ220)によってベース帯域測距信号にさらにダウンコンバートされ、加算器270にて加算され、そしてメモリ170に格納される。第3のダウンコンバータ出力(すなわち直交ミキサー)では:
FIR部190中の伝播遅延
は、システムクロックに依存しないことに留意する。
RX−>TX遅延の後、マスタ(M)からのベース帯域測距信号であって、(メモリ170に)格納されたベース帯域測距信号が再送信される。RX−>TX遅延は、
であることに留意する。
トランスポンダからの信号がマスタの(M)受信機アンテナに到達するまでに、トランスポンダ(AM)からのRF信号は、マルチパスの関数である別の位相シフトφMULTを経る。上記で考察したように、この位相シフトは、全ての反射信号がマスタの受信アンテナに到達した一定時間後に起こる。
マスタ受信機では、トランスポンダからの信号は、トランスポンダ受信機における場合のように、同一のダウンコンバート処理を経る。結果として得られるのは、マスタによってもともと送信された回復ベース帯域測距信号である。
ここで、TD_M−AMは、マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)回路を介する伝播遅延である。
ここで:φBB_M−AM(0)は、時間t=0における、ADC(複数可)を含むマスタ(M)およびトランスポンダ(AM)周波数ミキサーからのLO位相シフトである。
ここでαは定数である。
その後の、最終的な位相の式は、次のとおりである。
ここで、i=2、3、4……;また、
は
と等しい。
例えば、タイムインスタンスt1およびt2における差
は:
の差を知るために、T
D_M−AMを知る必要がある。
ここで、TLB_MとTLB_AMとは、マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)のTX回路とRX回路とを介する伝搬遅延であり、この遅延は、デバイスをループバックモードに置くことよって測定される。マスタおよびトランスポンダデバイスは、TLB_MとTLB_AMを自動的に測定できることに留意する;そして、tRTX値も既知である。
上記の式およびt
RTX値から、T
D_M_AMを判定することができ、従って、所定のt1およびt2については、
値が、以下の通りであるとわかることができる。
式(6)から、動作周波数において、測距信号の複素振幅値は、帰還ベース帯域測距信号を処理することから見つけることができることが結論付けることができる。
部分空間アルゴリズムは、一定の位相オフセットには敏感ではないので、初期位相値
は、ゼロに等しいと仮定することができる。必要ならば、
値(位相初期値)は、関連の特許文献1(その全体が、参照として本明細書に援用される)に記載されるように狭帯域幅測距信号方法を使用して、TOA(到達時間)を判定することによって、見つけることができる。この方法は、測距信号往復遅延を推定し、この遅延は2×T
FLTβ
Mに等しく、
値は、以下の式から見つけることができる。
好適な実施形態では、帰還ベース帯域測距信号の位相値
は、マルチパスプロセッサの逆正接ブロック250によって算出される。SNRを改善するために、マルチパス緩和プロセッサの位相比較ブロック255は、式(6A)を使用し、複数のインスタンスn(n=2、3、4………)に対して
を計算し、その後、それらの平均化することにより、SNRを改善する。なお、
に留意する。
式(5)および式(6)から、回復(すなわち受信)ベース帯域測距信号は、マスタによって送信されたオリジナルベース帯域信号と同一の周波数を有していることが明らかになる。従って、マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)のシステムクロックが異なり得るという事実にもかかわらず、周波数変換はない。ベース帯域信号は、いくつかの周波数成分からなり、かつ、各成分は、正弦波の複数の周期からなるので、受信ベース帯域信号の個々の成分周波数を、対応するオリジナル(すなわち、マスタによって送信された)ベース帯域信号の個々の周波数成分を用いてサンプリングし、T≦Tfの周期にわたって結果として生じる信号を積分することによって、受信測距信号の位相および振幅を推定することも可能である。
この動作(演算)は、受信測距信号の複素振幅値
をI/Q形式で生成する。マスタによって送られた各ベース帯域信号の個々の周波数成分は、時間においてT
D_M−AM分だけシフトさせられなければならないことに留意する。積分演算は、振幅および位相の複数のインスタンスを平均化するという効果(例えば、SNRを増加させる)をもたらす。位相値と振幅値とは、I/Q形式から
および
形式に変換できることに留意する。
サンプリングし、T≦T
fの周期の間積分し、I/Q形式から
および
形式へ変換するこの方法は、図3Cの位相比較ブロック255で実行することができる。従って、ブロック255の設計および実装に応じて、本明細書に記載される式(5)に基づいた好適な実施形態の方法、または代替の方法のいずれかを使用することができる。
測距信号帯域幅が狭いにもかかわらず、周波数差fn−f1は、例えば、数メガヘルツのオーダーであり、比較的大きくなり得る。その結果、受信機の帯域幅は、f1:fn測距信号の周波数成分を全て通すように十分に広く保たなければならない。この広帯域受信機の帯域幅は、SNRに影響を与える。受信機の有効帯域幅を縮小し、SNRを改善するために、受信測距信号ベース帯域周波数成分は、受信ベース帯域測距信号の個々の周波数成分に調整されたデジタル狭帯域幅フィルタによって、FPGA150においてRFバックエンドプロセッサによってフィルタ処理される。しかしながら、この多量のデジタルフィルタ(個々の周波数成分、nに等しい個数のフィルタ)は、FPGAリソースに追加の負担を負わせ、そのコスト、サイズおよび電力消費を増加させる。
好適な実施形態では、2つの狭帯域幅デジタルフィルタだけが使用される:1つのフィルタは、f1周波数成分に対して常に調整され、別のフィルタは、他の全ての周波数成分:f2:fnに対して調整され得る。測距信号の複数のインスタンスは、マスタによって送信される。各インスタンスは、2つの周波数のみからなる:f1:f2;f1:f3....。同様の方策がまた可能である。
また、周波数シンセサイザを調節する(例えば、KSYNを変更する)ことによって、残りの周波数成分を生成する2つのみ(または1つであっても)に、ベース帯域測距信号成分を保つことが完全に可能であることに留意する。アップコンバータミキサーおよびダウンコンバータミキサー用のLO信号は、ダイレクトデジタル合成(DDS)技術を使用して生成されることが望ましい。これは、高いVHF帯周波数については、トランシーバ/FPGAハードウェアに非所望の負担を提示することになり得る。しかしながら、これは、より低い周波数については、有用なアプローチであり得る。アナログ周波数シンセサイザもまた使用することができるが、周波数が変更された後、安定させるために追加の時間を要するかもしれない。また、アナログシンセサイザーの場合には、アナログシンセサイザーの周波数を変更した後に起きり得る位相オフセットをキャンセルするために、同一周波数において2つの測定がなされなければならない。
上記の式において使用される実際のT
D_M−AMは、マスタ(M)およびトランスポンダ(AM)のシステムクロックの両方において測定され、例えば、T
LB_AMおよびt
RTXは、トランスポンダ(AM)のクロックにおいてカウントされ、T
LB_Mは、マスタ(M)のクロックにおいてカウントされる。しかしながら、
が計算されるとき:T
LB_AMおよびt
RTXの両方は、マスタ(M)のクロックにおいて測定(カウント)される。これは、誤差を導く。
位相推定誤差(7)は、精度に影響を与える。従って、この誤差を最小化することが、必要である。言い換えれば、βM=βAMの場合、全てのマスタおよびトランスポンダ(タグ)のシステムクロックが同期された場合、tRTX時間からの貢献が取り除かれる。
好適な実施形態では、マスタおよびトランスポンダユニット(デバイス)は、任意のデバイスのクロックと同期することが可能である。例えば、マスタデバイスは、基準としての役割をする。クロック同期は、リモートコントロール通信チャネルを使用することによって達成される。ここでは、FPGA150の制御下、温度補償型水晶発振器TCXO20の周波数が調節される。選択されたトランスポンダデバイスが搬送波信号を送信している間、周波数差がマスタデバイスの加算器270の出力において測定される。
その後、マスタデバイスは、TCXO周波数を増加/減少させるように、トランスポンダに命令を送信する。この手順は、加算器270の出力における周波数を最小にすることによって、より高い精度を達成するように数回繰り返され得る。理想的なケースでは、加算器270の出力における周波数がゼロに等しくなるべきであることに留意する。代替の方法は、周波数差を測定し、トランスポンダのTCXO周波数を調節することなく、推定された位相の補正を行うことである。
βM−βAMは、かなり減少し得るが、βM≠1の場合には位相推定誤差が存在する。この場合、誤差のマージンは、基準デバイス(通常、マスタ(M))のクロック発生器の長期安定性に依存する。また、特に本技術分野には多くのユニットが存在するので、クロック同期のプロセスはかなりの時間を要する。同期プロセス中、追跡位置検出システムは、部分的にまたは完全に動作不能となり、これは、システム準備および性能に負の影響を与える。この場合には、トランスポンダのTCXO周波数の調節を必要としない上述の方法が好ましい。
市販の(既成の)TCXOコンポーネントは、精度および安定性が高い。具体的には、GPS商業用途用のTCXOコンポーネントは、非常に精度が高い。これらのデバイスに用いると、頻繁なクロック同期を必要とすることなく、位置検出精度に対する位相誤差影響が1メートル未満となり得る。
狭帯域幅測距信号のマルチパス緩和プロセッサは、帰還狭帯域幅測距信号の複素振幅
を取得した後、さらなる処理(すなわち超分解能アルゴリズムの実行)が、マルチパス緩和プロセッサの一部であるソフトウェアベースのコンポーネントにおいて実行される。このソフトウェアコンポーネントは、マスタ(リーダ)のホストコンピュータのCPUおよび/またはFPGA150(図示せず)に組み込まれているマイクロプロセッサにおいて実行することができる。好適な実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズムのソフトウェアコンポーネントは、マスタのホストコンピュータのCPUによって実行される。
超分解能アルゴリズムは、(2π×τK)「周波数」(例えばτK値)の推定を生成する。最終ステップでは、マルチパス緩和プロセッサは、最も小さな値(すなわちDLOS遅延時間)を有するτを選択する。
測距信号狭帯域幅の要件がいくらか緩和されたいくつかのケースでは、DLOSパスは、(時間的に)連続するチャープを用いることによって、MPパスから分離することができる。好適な実施形態では、この連続するチャープは、線形周波数変調(LFM)である。しかしながら、他のチャープ波形も使用することができる。
マルチパス緩和プロセッサの制御下で、帯域幅Bおよび持続時間Tを有するチャープが送信されるとする。それは、
ラジアン/秒のチャープ速度を与える。複数のチャープが送信され、折り返し受信される。各チャープが同一の位相で開始するように、チャープ信号がデジタル的に生成されることに留意する。
マルチパスプロセッサでは、受信された各シングルチャープは、帰還チャープが目的の領域の中心からのものであるように位置調整される。
チャープ波形の式は、次のとおりである。
ここで、0<t<Tにおいて、ω0は初期周波数である。
単一の遅延往復τ、例えばマルチパスではないものについては、帰還信号(チャープ)は、s(t−τ)である。
その後、マルチパス緩和プロセッサは、もともと送信されたチャープを用いて複素共役ミックスを実行することによって、s(t−τ)を「脱傾斜(deramp)」する。結果として生じる信号は、複素正弦波である。
ここで、
は振幅であり、2βτは周波数であり、0≦t≦Tである。最後の項は位相であり、無視することができることに留意する。
マルチパスの場合、合成脱傾斜信号(composite deramped signal)は、複数の複素正弦波から成る。
ここで、Lは、DLOSパスを含む測距信号パスの個数であり、0≦t≦Tである。
複数のチャープが送信され、処理される。上述したように、各チャープは、個々に扱われ/処理される。その後、マルチパス緩和プロセッサは、個々のチャープ処理の結果を組立てる。
ここで、Nは、チャープの個数であり、
t
deadは、2つの連続するチャープ間の不感時間帯(dead time zone)である;2βτ
Kは、人工的な遅延「周波数」である。は、人工的な遅延「周波数」である。また、最も興味深いものは最低「周波数」であり、それはDLOSパス遅延に対応する。
式(10)では、
は、時に、複素正弦波の合計のN個のサンプルと見なすことができる。
従って、サンプル数は、N(例えばαN;α=1、2、...)の倍数であり得る。
式(10)から、マルチパス緩和プロセッサは、さらなる処理(すなわち超分解能アルゴリズムの実行)において使用される、時間領域のαN個の複素振幅サンプルを生成する。このさらなる処理は、マルチパス緩和プロセッサの一部であるソフトウェアコンポーネントにおいて実行される。このソフトウェアコンポーネントは、マスタ(リーダ)のホストコンピュータのCPUによって、および/または、FPGA150(図示せず)に組み込まれているマイクロプロセッサによって、またはその両方によって、実行することができる。好適な実施形態では、マルチパス緩和アルゴリズムのソフトウェアは、マスタのホストコンピュータのCPUによって実行される。
超分解能アルゴリズムは、2βτK「周波数」(例えばτK値)の推定を生成する。最終ステップでは、マルチパス緩和プロセッサは、最も小さな値(すなわちDLOS遅延時間)を有するτを選択する。
「閾値技術」(THRESHOLD TECHNIQUE)と呼ばれる特別な処理方法について説明される。この閾値技術は、超分解能アルゴリズムの代替としての役目をする。言い換えれば、これは、人工的に生成された合成の帯域幅がより広い測距信号を使用して、他のMPパスからDLOSパスを区別する際の信頼性と精度とを向上させるように使用される。
図1および図1Aに示される周波数領域のベース帯域測距信号は、時間領域のベース帯域信号s(t)に変換することができる。
容易に確認されることであるが、s(t)は、周期1/Δtを有し、周期的であり、任意の整数kについて、s(k/Δt)=2N+1は、信号のピーク値である。ここで、図1および図1Aにおいて、n=Nである。
図4は、N=11およびΔf=250kHzの場合のs(t)の2つの周期を示す。信号は、1/Δf=4マイクロ秒で分離される高さ2N+1=23のパルスシーケンスとして現われる。パルス間では、可変振幅と2N個のゼロとを有する正弦波波形である。信号の広帯域幅は、高いパルスの狭さに起因し得る。帯域幅が、ゼロ周波数からNΔf=2.75MHzまで及ぶこともわかる。
好適な実施形態において使用される閾値方法の基本概念は、他のMPパスからDLOSパスを区別する際に、人工的に生成された合成の帯域幅がより広い測距の信頼性と精度とを向上させることである。閾値方法は、広帯域のパルスの立ち上がりエッジの先頭の部分が受信機に到達する時を検知する。送信機と受信機とにおいてフィルタ処理を行うので、立ち上がりエッジは、瞬間的には上昇しないが、滑らかに増加する傾斜を伴うようにノイズの中から立ち上がる。立ち上がりエッジのTOAは、立ち上がりエッジが所定の閾値Tを越える時を検知することによって測定される。
小さな閾値が望ましい。なぜなら、閾値がより早く越えられ、パルスの正確な開始と閾値越え(THRESHOLD CROSSING)との間の誤差遅延τが小さいからである。従って、レプリカの始まりの部分がτより大きな遅延を有している場合には、マルチパスが原因で到達するパルスレプリカは、何の影響も有さない。しかしながら、ノイズの存在は、閾値Tがどれくらい小さくなりえるかに制限を設ける。遅延τを減少させる1つの方法では、パルス自体の代わりに受信パルスの導関数を使用することである。なぜなら、導関数はより速く上昇するからである。二次導関数は、更に速く上昇する。高位導関数は、使用され得るが、しかしそれらは、実際には、許容できない値にノイズレベルをあげるので、閾値の二次導関数が使用される。
図4に示された2.75MHzの広帯域信号は、適正な広帯域幅を有しているが、それは上述の方法によって範囲を測定するには適していない。この方法は、各々がゼロ信号の先行波(precursor)を有する送信パルスを必要とする。しかしながら、パルス間の正弦波波形が本質的にキャンセルされるように、信号を修正することにより、その目標を達成することができる。好適な実施形態では、それは、高いパルス間の選ばれた区間における信号に密に近似する波形を構築し、その後、それを元の信号から取り去ることによって行われる。
この技術は、図1の信号に適用することによって示すことができる。波形上に示される2つの黒色ドットは、第1の2つのパルス間にある区間Iの端点である。最良の結果を提供するように実験的に判定された区間Iの左右の端点は、それぞれ次のようなものである。
この区間における信号s(t)を本質的にキャンセルするが、区間の外側において害をあまり与えない関数g(t)を生成する試みが行なわれる。式(11)は、s(t)が1/sinπΔftによって変調された正弦波形状のsinπ(2N+1)Δftであることを示すので、まず、区間Iにおける1/sinπΔftに密に近似する関数h(t)が見つけられ、その後、結果物としてのg(t)が形成される。
h(t)は、以下の合計によって生成される。
そして、係数akは、区間Iにわたって次式の最小自乗誤差を最小限にするように選ばれる。
この解は、akに関してJを偏微分し、それらをゼロに等しく設定することによって容易に得られる。結果はM+1個の式を含む線形連立方程式系である。
これは、akについて解くことができ、ここで次式を用いる。
(12)によって与えられる関数φ
k(t)の定義を用いて、
g(t)をs(t)から差し引くことにより、関数r(t)が得られ、関数r(t)は、区間Iにおけるs(t)を実質的にキャンセルするはずである。付録において示されるように、式(20)における総和に対する上限Mの適切な選択は、M=2N+1である。この値および付録からの結果を使用して、
であり、このとき、
である。
式(17)から、所望の信号r(t)を得るために、合計2N+3個の周波数(ゼロ周波数DC項を含む)が必要とされることが分かる。図5は、図1に示されるオリジナル信号s(t)に対して結果として生じる信号のr(t)を示し、このとき、N=11である。この場合、r(t)を構築するには、25個の搬送波(DC項b0を含む)を必要とする。
上のように構築されるr(t)の重要な特性は、以下のとおりである。
1.(14)から分かるように、最低周波数は、0HZであり、最高周波数は、(2N+1)ΔfHZである。従って、全帯域幅は、(2N+1)ΔfHZである。
2.全ての搬送波は、周波数
の正弦関数である1つの搬送波を除いては、Δfの間隔をあけた余弦関数(DCを含む)である。
3.オリジナル信号s(t)は、周期1/Δfを有するが、r(t)は、周期2/Δfを有する。r(t)の各周期の第1の半期は、s(t)の全周期であるが、信号のキャンセルされた部分を含み、r(t)の第2の半期は、大きく振動するセグメントである。従って、プリカーサのキャンセルは、s(t)の1つおきの周期でのみ発生する。
これが発生するのは、キャンセル関数g(t)がs(t)の1つおきの周期で実際にs(t)を強化するからである。その理由は、g(t)がs(t)の全てのピークでその極性を反転させるが、s(t)はそうしないからである。処理利得を3dB増加させるように、s(t)の全ての周期にキャンセルされた部分を含ませる方法が以下に記載される。
4.s(t)のキャンセルされた部分の長さは、1/Δfの約80〜90%である。従って、Δfは、r(t)の前の非ゼロ部分から、マルチパスによる残留信号を削除するのに十分なほどにこの長さを長くするのに十分に小さいものである必要がある。
5.r(t)の各ゼロ部分の直後に来るのは、振動部分の第1のサイクルである。好適な実施形態において、上記のようなTOA測定法では、このサイクルの第1半期は、TOA、特にその上昇の開始を測定するように使用される。この第1半期のサイクルのピーク値(主ピークと呼ばれる)が、時間においてほぼ同じ時点にあるs(t)の対応するピークより幾分大きいことに注目することは興味深い。この第1の半サイクルの幅は、NΔfにおよそ反比例する。
6.大量の処理利得は、以下によって達成することができる。
(a)r(t)は、周期2/Δfを有し、周期的であるので、信号r(t)を繰り返し使用すること。また、追加の3dBの処理利得が、下記される方法によって可能である。
(b)狭帯域フィルタリング。2N+3個の搬送波のそれぞれは狭帯域信号であるので、信号の占有帯域幅は、割り当てられた周波数帯の全体に広がる広帯域信号の占有帯域幅よりもずっと小さい。
図5に示される信号r(t)について、N=11で、Δf=250kHzの場合、s(t)のキャンセルされた部分の長さは、約3.7マイクロ秒、つまり1110メートルである。これは、r(t)の前の非ゼロ部分から、マルチパスによる残留信号を削除するのに十分すぎる。主ピークは、およそ35の値を有し、先行波(すなわち、キャンセル)領域における最大の大きさは、約0.02であり、これは主ピークより65dB低い。これは、上記のようなTOA測定閾値技術を使用して、優れた性能を得るのに所望される。
より少ない搬送波を使用することが図6に示されている。当該図は、合計で2N+3=9個しかない搬送波に対して、Δf=850kHz、N=3、および、M=2N+1=7を用いて生成される信号を示す。この場合、信号の周期は、周期が8マイクロ秒である図5での信号と比較して、わずか2/Δf≒2.35マイクロ秒である。この例は、単位時間当たり、より多くの周期を有するので、より大きな処理利得を達成可能であると予測される。
しかしながら、より少ない搬送波が使用されるので、主ピークの振幅は、以前の約1/3の大きさであり、それは予想される追加の処理利得をキャンセルする傾向がある。また、ゼロ信号の先行波セグメントの長さは、更に短く、約0.8マイクロ秒、つまり240メートルである。これは、依然として、r(t)の前の非ゼロ部分から、マルチパスによる残留信号を削除するのに十分であるはずである。(2N+1)Δf=5.95MHzの全帯域幅は以前とほぼ同じであり、主ピークの半サイクルの幅も大体同じであることに留意されたい。より少ない搬送波が使用されるので、各搬送波が受信機において狭帯域フィルタ処理される際には、いくらかの追加の処理利得があるはずである。更に、先行波(すなわち、キャンセル)領域における最大の大きさは、主ピークより約75dB低く、先の例から10dB改善されている。
RF周波数での送信:この時点まで、r(t)は、簡略化のため、ベース帯域信号として記載されている。しかしながら、r(t)は、RFにまで変換されて、送信され、受信され、その後、受信機においてベース帯域信号として再構築されることが可能である。説明のために、インデックスj(ラジアン/秒周波数は表記上の簡略化のために使用される)を有するマルチパス伝搬路のうちの1つを介して移動するベース帯域信号r(t)の周波数成分ωkの1つに何が起こるかを考える。
ここで、送信機と受信機とが周波数同期されているとする。パラメータbkは、r(t)についての式(21)におけるK番目の係数である。パラメータτJおよびφJはそれぞれ、(反射器の誘電特性による)J番目の伝搬路のパス遅延および位相シフトである。パラメータθは、受信機におけるベース帯域に対するダウンコンバートの際に生じる位相シフトである。同様の一連の関数は、式(21)の正弦波成分に対して提示することができる。
r(t)のゼロ信号の先行波が最も大きい伝搬遅延よりも十分に大きな長さを有する限りは、式(20)における最終的なベース帯域信号は、依然としてゼロ信号の先行波を有するということに留意することが重要である。もちろん、全てのパス(インデックスJ)にわたる全ての周波数成分(インデックスK)が組み合わさる場合には、受信機におけるベース帯域信号は、位相シフトを全て含む、r(t)の歪みのあるバージョンになる。
連続した搬送波伝送及び信号の再構成が図1及び図1Aに示される。送信機と受信機は時間と周波数で同期され、2N+3個の送信される搬送波は同時に送信される必要はない。例として、ベース帯域が図1A及び図6のそれである信号の送信が考えられる。
図6において、N=3であり、1ミリ秒の9つの周波数成分の各々は連続して送信されると想定する。各送信周波数の始まりと終わりの時間は、受信機において既知である。従って、受信機は、各時間において、それぞれの周波数成分の受信を連続的に開始および終了することができる。信号伝播時間が1ミリ秒(対象とする用途では、通常、数マイクロ秒未満である)と比較して非常に短いので、各受信周波数成分の一部は無視されるはずであり、受信機は容易にそれを消すことができる。
9つの周波数成分を受信する全ステップは、処理利得を増加させるために、9ミリ秒ブロックの追加の受信で繰り返されることができる。1秒の総受信時間には、利得の処理に利用可能な約111のそのような9ミリ秒ブロックがあるだろう。さらに、各ブロック内には、0.009/(2/Δf)≒383の主ピークから利用可能な追加の処理利得があるだろう。
一般的に、信号の再構築を非常に経済的に行うことができ、あらゆる可能な処理利得を本質的に可能にするということに注目する価値がある。2N+3個の受信周波数の各々に関して:
1.その周波数に対応する格納されたベクトル(位相ベクトル)のシーケンスを形成するように、その周波数の各1ミリ秒の受信の位相と振幅とを測定する。
2.その周波数の格納されたベクトルを平均化する。
3.最後に、持続時間2/Δfを有するベース帯域信号の1つの周期を再構築するように2N+3個の周波数の2N+3個のベクトルの平均を使用し、信号のTOAを推定するように再構築を使用する。
この方法は、1ミリ秒の送信に制限されず、送信の長さは増加または減少し得る。しかしながら、全ての送信の総時間は、受信機または送信機の動きを止めるのに十分なほど短いものでなければならない。
r(t)の代替の半周期においてキャンセルを得ること:キャンセル関数g(t)の極性を単に逆にすることによって、r(t)が以前振動したところでs(t)のピーク間のキャンセルが可能である。しかしながら、s(t)の全てのピークの間のキャンセルを得るためには、関数g(t)とその極性が逆にされたバージョンが、受信機において適用されなければならず、これは、受信機での係数の重み付けを含む。
受信機における係数の重み付け:所望の際に、式(21)の係数bkは、送信機でr(t)を構築するように使用され、または受信機において導入されてもよい。これは、bkが最初のステップの代わりに最後のステップで導入される際に、最終的な信号が同じである式(20)における信号のシーケンスを考慮することで容易に見ることができる。ノイズを無視すると、値は以下のとおりである。
その後、送信機は、同じ振幅を有する周波数を全て送信することができ、それによって設計を単純化する。この方法はまた、各周波数におけるノイズに重みを加え、その影響が考慮されなければならないということに留意されたい。係数の重み付けは、2倍の使用可能な主ピークを得るようにg(t)の極性反転に影響を与えるために、受信機において行われなければならないということにも留意されたい。
チャネルの中心周波数に対するΔfのスケーリング:VHF以下の周波数でFCCの要件を満たすために、チャネル間隔が一定であるチャネル送信が必要とされる。割り当てられた全帯域と比べて小さな一定のチャネル間隔を有するチャネル伝送帯域(VHF以下の周波数帯域の場合)では、必要に応じて、Δfに対する細かい調整は、元々の設計値から性能を大きく変化させることなく、送信される全ての周波数がチャネルの中心であることを可能にする。先に示されたベース帯域信号の2つの例において、周波数成分は全てΔf/2の倍数であり、従って、チャネル間隔がΔf/2で分けられる場合には、最も低いRF送信周波数が1つのチャンネルの中心に集中し、他の全ての周波数はチャネルの中心に収まる。
距離測定機能を実行することに加えて、いくつかの無線周波数(RF)に基づく識別、追跡、および位置検出を行うシステムにおいて、マスタユニットとタグユニットとの両方はまた、音声、データおよび制御通信機能を実行する。同様に、好適な実施形態において、マスタユニットとタグユニットとの両方は、距離測定機能を実行することに加えて、音声、データ、および制御通信機能を実行する。
好適な実施形態によれば、測距信号は、マルチパス緩和を含む広範囲の高機能な信号処理技術に適用される。しかしながら、これらの技術は、音声、データおよび制御信号には役立つことができない。その結果、提案されるシステム(ならびに他の現存システム)の動作範囲は、距離を信頼性高くかつ正確に測定するその能力によって制限されるのではなく、音声および/またはデータおよび/または制御通信中に範囲外であることによって制限され得る。
他の無線周波数(RF)に基づく識別、追跡、および位置検出システムにおいて、距離測定機能は、音声、データおよび制御通信機能から分離される。これらのシステムでは、分離したRFトランシーバが音声、データおよび制御通信機能を実行するように使用される。このアプローチの欠点は、システムの費用、複雑さ、サイズなどが増えることである。
好適な実施形態において、上述の欠点を回避するために、狭帯域幅測距信号またはベース帯域狭帯域幅測距信号のいくつかの個々の周波数成分は、同一のデータ/制御信号で変調され、音声の場合には、デジタル音声パケットデータで変調される。受信機においては、最も高い信号強度を有する個々の周波数成分が復調され、得られた情報信頼度は、「ヴォーティング(VOTING)」、または情報の冗長を利用する他の信号処理技術によって、更に向上する。
この方法により、「ゼロ」現象を回避することができ、このとき、複数のパスからの入来RF信号は、DLOSパスと打ち消し合うように(破壊的に)結合し、かつRF信号のそれぞれと打ち消し合うように結合し、それにより、受信信号の強度と、それと関連付けられているSNRとを著しく弱める。更に、このような方法は、複数のパスからの入来信号がDLOSパスと強め合うように(建設的に)結合している、かつ入来信号のそれぞれと強め合うように結合している1セットの周波数を見つけることを可能にし、これにより、こうして受信信号の強度と、それと関連付られているSNRとを高める。
上述したように、スペクトル推定に基づく超分解能アルゴリズムは、一般的に、同じモデルを使用する:周波数の複素指数関数とそれらの複素振幅との一次結合。この複素振幅は、上記の式(3)によって与えられる。
スペクトル推定に基づく全ての超分解能アルゴリズムは、複数の複素指数関数、すなわち複数のマルチパスの演繹的な知識を必要とする。この複数の複素指数関数は、モデルサイズと呼ばれ、式(1)から(3)で示されるように、マルチパス成分Lの個数によって決定される。しかしながら、(RF追跡−位置検出用途の場合である)パス遅延を推定する場合、この情報は利用できない。これは、別の次元を、すなわちモデルサイズの推定を超分解能アルゴリズムによるスペクトルの推定プロセスに追加する。
モデルサイズが過小評価された場合には、周波数推定の精度は影響を受け、モデルサイズが過大評価された場合には、アルゴリズムは疑似の周波数、例えば、存在しない周波数を生成するということが示されている(非特許文献6)。AIC(赤池情報量基準)、MDL(最小記述長)などのモデルサイズ推定の既存の方法は、信号(複素指数関数)間の相関に対して高い感度を有する。しかし、RFマルチパスの場合には、これは常にそうである。例えば、フォーワード−バックワード平滑化アルゴリズムが適用された後でさえ、相関残差量が常に存在する。
非特許文献6において、これらの信号電力(振幅)を推定し、非常に低い電力を有する信号を拒絶することによって、過大評価されたモデルを用いてスプリアス周波数(信号)から実際の周波数(信号を)を区別することが示唆されている。この方法は、既存の方法を改善したものであるが、保証されてはいない。本発明者は、非特許文献6の方法を実施し、より大きなモデルサイズを用いる更に複雑なケースのシミュレーションを行った。いくつかの場合には、スプリアス信号が実際の信号振幅に非常に近い振幅を有することもあることが観察された。
スペクトル推定に基づく全ての超分解能アルゴリズムは、入来信号の複素振幅データを2つの部分空間:ノイズの部分空間と信号の部分空間とに分割することによって動作する。これらの部分空間が適切に定義される(分離される)場合には、モデルサイズは、信号の部分空間サイズ(寸法)と等しい。
一実施形態では、モデルサイズの推定は、「F」統計値を用いて達成される。例えば、ESPRITアルゴリズムについて、(フォーワード/バックワードの相関の平滑化による)分散行列の推定の特異値分解は、昇順で並べられる。その後、割り算が行われ、それによって(N+1)番目の固有値がN番目の固有値によって割られる。この比率が「F」確率変数である。最悪のケースは、自由度(1,1)の「F」確率変数である。自由度(1,1)の「F」確率変数についての95%の信頼区間は、161である。その値を閾値として設定することは、モデルサイズを決定する。ノイズの部分空間については、固有値がノイズ電力の推定を表わすことにも留意する。
固有値の比率に「F」統計値を適用するこの方法は、モデルサイズを推定する、より精度の高い方法である。「F」統計値における他の自由度は、閾値計算と、そしてモデルサイズ推定とに使用することができるということに留意する。
それにもかかわらず、いくつかの場合においては、2以上の(時間的に)非常に近接して間隔を置いた信号は、実世界の測定が不完全であるので、1つの信号に縮退することがある。その結果、上記の方法は、信号(すなわち、モデルサイズ)の個数を過小評価する。モデルサイズの過小評価は、周波数の推定精度を低くするので、ある数を加えることによってモデルサイズを増加させることは賢明である。この数は、実験的におよび/またはシミュレーションから決定することができる。しかしながら、信号が近接して間隔を置いていない場合は、モデルサイズが過大評価される。
そのような場合、スプリアス周波数、すなわち存在しない周波数が現われ得る。上述したように、いくつかの場合では、スプリアス信号が実際の信号の振幅に非常に近い振幅を有するように観察されたので、スプリアス信号検出に信号振幅を使用することは、必ずしも機能するとは限らない。それ故、振幅の区別に加えて、スプリアス周波数の消去確率を改善するようにフィルタを実装することができる。
超分解能アルゴリズムによって推定される周波数は、人工周波数(式(2))である。実際に、これらの周波数は、マルチパス環境の個々のパス遅延である。その結果、負の周波数は存在するはずがなく、超分解能アルゴリズムによって生成される負の周波数は全て、拒絶されるべきスプリアス周波数である。
更に、DLOS距離範囲は、超分解能方法とは異なる方法を用いて、測定中に取得された複素振幅
値から推定することができる。これらの方法は、精度が低いが、この手法は、遅延、すなわち周波数を区別するように使用される範囲を確立する。例えば、
の比率がある。
これは信号振幅
が最大、つまりゼロを回避するに近いΔf間隔におけるものであり、DLOS遅延範囲を提供する。実際のDLOS遅延が2倍まで大きくなったり小さくなったりし得るが、これはスプリアス結果を拒否するのを助ける範囲を定義する。
本実施形態において、測距信号は往復する。言い換えれば、それは、両方向に:マスタ/リーダからターゲット/スレーブまで、およびターゲット/スレーブからマスタ/リーダまで移動する。
マスタは、トーン
を送信し、ここで、ωは、動作帯域の動作周波数であり、αは、音信号振幅である。
ターゲットの受信機においては、受信信号(単方向)は以下のとおりである。
ここで:Nは、マルチパス環境における信号パス(パス)の個数であり;K0とτ
0とは、DLOS信号の振幅と飛行時間とである。
であり、K
m≠0は正でも負でもあり得る。
ここで:
は、周波数領域におけるマルチパスRFチャネルの単方向伝達関数であり、A(ω)≧0である。
ターゲットは、受信信号を再送信する。
マスタ受信機で、往復信号は、以下の通りである。
ここで:
は、周波数領域における往復マルチパスRFチャネル伝達関数である。
式(29)から、往復マルチパスチャネルは、単方向のチャネルマルチパスよりも多くのパスを有し、なぜなら、τ
0÷τ
Nパス遅延に加えて、
の式が、これらのパス遅延、例えば、τ
0+τ
1,τ
0+τ
2.....,τ
1+τ
2,τ
1+τ
3....,等の組み合わせを含むからである。
これらの組み合わせは、信号(複素指数関数)の個数を劇的に増加させる。従って、(時間的に)非常に接近して間隔を置いた信号の可能性もまた増加し、モデルサイズの大きな過小評価をもたらし得る。従って、単方向のマルチパスRFチャネル伝達関数を取得することが所望される。
好適な実施形態において、単方向の振幅値、
は、ターゲット/スレーブデバイスから直接的に取得することができる。しかしながら、単方向の位相値
は、直接的に測定することができない。往復位相測定の観察から単方向の位相を決定することが可能である。
しかしながら、ωの各値について、位相α(ω)の2つの値があることで、以下のようになる。
この曖昧さを解決する詳細な記載が以下に示される。測距信号の異なる周波数成分が互いに接近している場合、大半の部分については、単方向の位相は、往復位相を2で割ることによって見つけることができる。例外は、「ゼロ」に接近している領域を含み、当該領域では、位相は小さな周波数ステップでもってさえ、大きな変化を被り得る。注記:「ゼロ」現象は、複数のパスからやって来るRF信号がDLOSパスと打ち消し合うように結合しており、かつRF信号のそれぞれと打ち消し合うように結合している場所であり、これにより、受信信号強度と、それと関連付られているSNRとを著しく弱める。
h(t)を通信チャネルの単方向のインパルス応答とする。周波数領域における対応する伝達関数は、以下の通りである。
ここで、A(ω)≧0が大きさであり、α(ω)は伝達関数の位相である。単方向のインパルス応答が、受信されるときと同じチャネルを戻って再送信される場合には、結果として生じる双方向伝達関数は、以下の通りである。
ここで、β(ω)≧0である。双方向伝達関数G(ω)が、いくつかの周波数開区間(ω1,ω2)の全てのωに対して既知であるとする。G(ω)を生成した(ω1,ω2)において定義される単方向伝達関数H(ω)を決定することは可能であるかを考察する。
双方向伝達関数の大きさは、単方向の大きさの二乗であるので、
ということは明らかである。
しかしながら、G(ω)についての観察から、単方向伝達関数の位相を回復しようとすると、状況は、より微妙である。ωの各値について、位相α(ω)の2つの値があるので、以下のようになる。
複数の異なる解は、異なる周波数ωの各々について、2つの可能な位相値のうちの1つを独立して選択することによって生成されることもある。
以下の定理は、任意の単方向伝達関数が全ての周波数において連続的であると仮定するものであるが、この状況を解決するのを助ける。
定理1:Iを双方向伝達関数:
における、ゼロを含まない周波数ωの開区間とする。
をIにおける連続関数とし、ここで、β(ω)=2γ(ω)である。このとき、J(ω)と−J(ω)のみが、IにおいてG(ω)を生成する単方向伝達関数であり、他のものは存在しない。
証明:単方向伝達関数の解の1つは、Iにおいて連続的な関数
である。なぜなら、それは、Iにおいて微分可能であるからであり、このとき、β(ω)=2α(ω)である。IにおいてG(ω)≠0であるので、H(ω)およびJ(ω)はIにおいて非ゼロである。このとき、
H(ω)とJ(ω)とは、Iにおいて連続的であり、非ゼロであり、それらの比率はIにおいて連続的である。従って、(34)の右辺はIにおいて連続的である。条件β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各々のω∈Iについて、α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆する。しかしながら、α(ω)−γ(ω)は、(34)の右辺で不連続を生じさせることなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。従って、全てのω∈Iについてα(ω)−γ(ω)=0か、または、全てのω∈Iについてα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合は、J(ω)=−H(ω)が得られる。
この定理は、伝達関数
における、ゼロを含まない任意の開区間Iにおいて単方向の解を得るために、関数
を作って、J(ω)を連続的にするようなやり方でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択する。この特性を有する解(すなわち、H(ω))があることは知られているので、これを行うことは常に可能である。
単方向の解を見つけるための代替手順は、以下の定理に基づく。
定理2:
を単方向伝達関数とし、Iを、H(ω)における、ゼロを含まない周波数の開区間とする。このとき、H(ω)の位相関数α(ω)は、Iにおいて連続的でなければならない。
証明:ω
0を区間Iにおける周波数とする。図7において、複素数値H(ω
0)は、複素平面中の点としてプロットされ、仮定では、H(ω
0)≠0である。ε>0を任意に小さな実数とし、図7で示される測定値εの2つの角度、ならびに2つの線OAおよびOBの接線、ならびにH(ω
0)が中心である円を考慮する。仮定では、H(ω)は、全てのωに対して連続的である。従って、ωがω
0に十分に接近している場合には、複素数値H(ω)は、円内にあり、
であることが分かる。ε>0は任意に選択されたので、α(ω)→α(ω
0)をω→ω
0として結論付けると、位相関数α(ω)はω
0において連続的である。
定理3:Iを、双方向伝達関数
における、ゼロを含まない周波数ωの開区間とする。
をIにおける関数とし、ここで、β(ω)=2γ(ω)であり、γ(ω)は、Iにおいて連続的である。このとき、J(ω)と−J(ω)とのみが、IにおいてG(ω)を生成する単方向伝達関数であり、他のものは存在しない。
証明:証明は、定理1の証明に類似する。単方向伝達関数の解の1つが、関数
であり、このとき、β(ω)=2α(ω)であることは既知である。IにおいてG(ω)≠0であるので、H(ω)およびJ(ω)はIにおいて非ゼロである。このとき、
である。
仮定では、γ(ω)は、Iにおいて連続的であり、定理2によって、α(ω)もまた、Iにおいて連続的である。従って、α(ω)−γ(ω)は、Iにおいて連続的である。条件β(ω)=2α(ω)=2γ(ω)は、各ω∈Iについて、α(ω)−γ(ω)が0またはπのいずれかであることを示唆する。しかしながら、α(ω)−γ(ω)は、Iにおいて不連続を生じさせることなく、これらの2つの値を切り替えることはできない。従って、全てのω∈Iについてα(ω)−γ(ω)=0、または、全てのω∈Iについてα(ω)−γ(ω)=πのいずれかである。第1の場合、J(ω)=H(ω)が得られ、第2の場合、J(ω)=−H(ω)が得られる。
定理3は、伝達関数
における、ゼロを含まない任意の開区間において単方向の解を得るためには、関数
を作って、位相関数γ(ω)を連続的にするようなやり方でβ(ω)=2γ(ω)を満たすγ(ω)の値を選択する。この特性を有する解、すなわちH(ω)があることは既知であるので、これを行うことは常に可能である。
上記の定理は、双方向伝達関数G(ω)を生成する2つの単方向伝達関数を再構築するやり方を示しているが、それらは、G(ω)がゼロでない周波数区間Iにおいてのみ有用である。一般的に、G(ω)がゼロでない周波数区間(ω1,ω2)において観察される。以下は、この問題を回避し得る方法であり、わずかな有限数により、(ω1,ω2)においてG(ω)がゼロとなり、単方向伝達関数は、(ω1,ω2)における全ての階数の導関数を有し、その全てが任意の所定の周波数ωにおいて0であるというわけではないとする。
H(ω)を区間(ω1,ω2)においてG(ω)を生成する単方向伝達関数とし、G(ω)は、(ω1,ω2)において少なくとも1つのゼロを有するとする。G(ω)がゼロであると、(ω1,ω2)を有限数の隣接する周波数開区間J1、J2、...JNnに分離する。そのような各々の区間において、定理1または定理3のいずれかを使用して、解H(ω)または−H(ω)が見つけられる。これらの解を「まとめる(stitch together)」必要があり、その結果、まとめられた解が、(ω1,ω2)の全てにわたってH(ω)または−H(ω)のいずれかになる。これを行うためには、1つの部分区間から次の部分区間に移動する際に、H(ω)から−H(ω)に、または、−H(ω)からH(ω)に切り替わらないように、2つの隣接する部分区間における解を対にするやり方を知る必要がある。
第1の2つの隣接した開かれた部分区間J1およびJ2で始まる、まとめる手順を示す。これらの部分区間は、G(ω)がゼロである周波数ω1において隣接する(当然、ω1は、いずれの部分区間にも含まれていない)。単方向伝達関数の特性に関する上記の仮定によって、H(n)(ω1)≠0となるように、最小の正整数Nが存在しなければならず、ここで、上付き文字(n)はn番目の導関数を表示する。このとき、左からω→ω1として、J1における単方向の解のn番目の導関数の極限は、J1における解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、H(n)(ω1)または−H(n)(ω1)のいずれかになる。同様に、右からω→ω1として、J2における単方向の解のn番目の導関数の極限は、J2における解がH(ω)または−H(ω)であるかどうかによって、H(N)(ω1)または−H(n)(ω1)のいずれかになる。H(n)(ω1)≠0であるので、J1およびJ2における解が両方ともH(ω)または両方とも−H(ω)である場合、かつ場合にのみ、2つの極限値は等しくなる。左右の極限値が不等である場合、部分区間J2における解を逆にする。そうでなければ、そのようにはしない。
(必要ならば)部分区間J2における解を逆にした後に、部分区間J2とJ3とに対して同一の手順を実行し、(必要ならば)部分区間J3における解を逆にする。このやり方を継続して、最終的には区間(ω1,ω2)において完全解を作り上げる。
H(ω)の高次導関数が上記の再構築手順では必要ではないことが望ましい。なぜなら、それらはノイズの存在下では正確に計算するのが難しいからである。G(ω)がゼロの場合、H(ω)の一次導関数が非ゼロになる可能性が大変高いので、このような問題が起こる可能性は少なく、もしそうでなければ、二次導関数は非ゼロになる可能性が大変高い。
実際のスキームでは、双方向伝達関数G(ω)は、離散周波数において測定され、当該離散周波数は、G(ω)がゼロに近い導関数を合理的に正確に計算することを可能にするほどに十分にともに接近していなければならない。
RFに基づく距離測定に関して、演繹的な既知の形状を有する測距信号の未知数のエコーであって、近接して間隔を置いたエコー、オーバーラップするエコー、および、ノイズの多いエコーを解決することが必要である。測距信号が狭帯域であるとすると、周波数領域では、このRF現象は、多くの正弦波の和として記載(モデル化)でき、正弦波の各々は、マルチパス成分ごとにあり、パスの複素減衰と伝搬遅延を伴う。
上述の和のフーリエ変換を行うことは、時間領域におけるこのマルチパスモデルを表現する。この時間領域表現において、可変時間と可変周波数との役割を交換すると、このマルチパスモデルは、高調波信号スペクトルとなり、この高調波信号スペクトルにおいて、パスの伝搬遅延は、高調波信号に変形される。
超(高)分解能スペクトル推定法は、スペクトルの密に置かれた周波数を識別するように設計されており、複数の高調波信号(例えば、パス遅延)の個々の周波数を推定するように使用される。その結果、パス遅延は正確に推定することができる。
超分解能スペクトル推定は、ベース帯域測距信号サンプルの分散行列の固有の構造と、分散行列の固有の特性とを利用することにより、個々の周波数の、例えばパス遅延の根本的な推定に解を与える。固有の構造特性のうちの1つは、固有値を組み合わせることができ、その結果として、直交のノイズと信号の固有ベクトル(部分空間ともいう)とに分けることができるということである。別の固有の構造特性は、回転不変量信号の部分空間特性である。
部分空間分解技術(MUSIC、rootMUSIC、ESPRITなど)は、観測データの推定される分散行列を、2つの直交する部分空間と、ノイズの部分空間と、信号の部分空間とに分類することに依存する。部分空間分解の方法論の背後にある理論は、観測量のノイズの部分空間上への投影は、ノイズのみからなり、観測量の信号の部分空間上への投影は、信号のみからなるというものである。
スペクトル推定方法は、信号が狭帯域であり、高調波信号の個数も知られており、すなわち、信号の部分空間のサイズを知る必要があるとする。信号の部分空間のサイズは、モデルサイズと呼ばれる。一般的に、当該サイズを詳細に知ることはできず、環境が変わると、特に屋内において、当該サイズは急速に変わり得る。任意の部分空間分解アルゴリズムを適用する際の最も困難かつ微妙な問題のうちの1つは、存在する周波数成分の個数として得ることができる信号の部分空間の大きさであり、その数は、ダイレクトパスとマルチパス反射との個数である。実世界の測定が不完全であるので、モデルサイズの推定における誤差は常に存在し、当該誤差は、回り回って周波数推定(すなわち、距離)の精度を失う結果をもたらす。
距離測定精度を改善するために、一実施形態は、部分空間分解の高分解能推定の最高水準の方法論を発展させる6つの特徴を含む。含まれるのは、遅延パス判定の曖昧さを更に減らす異なる固有の構造特性を使用することによって、個々の周波数を推定する2つ以上のアルゴリズムを組み合わせることである。
RootMusicは、個々の周波数を見つけ、観測量がノイズの部分空間上に投影される場合、投影のエネルギーを最小化する。Espritアルゴリズムは、回転演算子から個々の周波数を判定する。更に、多くの点において、この演算は、観測量が信号の部分空間上に投影される場合、投影のエネルギーを最大化にする周波数を見つけるという点で、Musicの共役である。
モデルサイズは、これらのアルゴリズム両方の鍵となるもので、実際には、屋内の測距において見られるような複素信号の環境において鍵となるもので、MusicとEspritとに最も優れた性能を提供するモデルサイズは、一般的には等しくない。理由については以下で議論する。
Musicについては、分解の基礎要素を「信号の固有値」として識別する側で誤ること(第1種過誤)が望ましい。これは、ノイズの部分空間上に投影される信号エネルギーの量を最小化し、精度を改善する。Espritについては、逆のことが正しいのだが、分解の基礎要素を「ノイズ固有値」として識別する側で誤ることが望ましい。この場合もやはり、第1種過誤である。これは、信号の部分空間上に投影されたエネルギーへのノイズの影響を最小化する。従って、Musicのモデルサイズは、一般的に、Espritのモデルサイズより幾分多少大きくなる。
第2に、複素信号の環境下では、強い反射が存在し、ダイレクトパスが、事実にはマルチパス反射のうちのいくつかよりはるかに弱いという可能性が存在するので、モデルサイズを十分な統計信頼性を以って推定するのが難しくなる状況が生じる。この問題には、MusicとEspritとの両方の「ベース」モデルサイズを推定し、各々のベースモデルサイズによって定義されたモデルサイズのウィンドウにおいてMusicとEspritとを使用して観測量データを処理することによって対処する。このことは、各測定に対して複数の測定値を生じさせる。
本実施形態の第1の特徴は、F統計値を使用することにより、モデルサイズを推定することである(上記参照)。第2の特徴は、MusicとEspritとのF統計値において異なる第1種過誤率を使用することである。これは、上述したように、MusicとEspritとの間の第1種過誤差を導入する。第3の特徴は、ダイレクトパスを検知する可能性を最大限にするように、ベースモデルサイズとウィンドウとを使用することである。
物理的かつ電子的な環境を潜在的に急に変化するので、全ての測定は、しっかりとした回答を提供するとは限らない。これは、しっかりとした範囲推定を提供するように、複数の測定についてクラスタ分析を使用することによって対処される。本実施形態の第4の特徴は、複数の測定を使用することである。
複数の信号が存在するので、各々がMusicとEspritとの両方の実行からの複数のモデルサイズを使用する複数の測定に由来する複数の回答の確率分布は、マルチモーダルとなる。従来のクラスタ分析は、この用途に十分ではない。第5の特徴は、反射されたマルチパス成分のダイレクト範囲と、同等の範囲とを推定するように、マルチモーダルのクラスタ分析を展開することである。第6の特徴は、クラスタ分析(範囲および標準偏差)によって提供される範囲推定の統計の分析することと、統計的に同一であるこれらの推定を組み合わせることとである。これは更に正確な範囲推定をもたらす。
上述した方法は、広帯域幅測距信号位置探査システムで用いることもできる。
閾値法におけるr(t)の導出について、式(20)から始めると、以下を得る。
a0を除いて、係数akは、偶数Kに対してゼロである。この理由は、区間Iにおいて、h(t)分だけ、我々が近似させようとする関数1/SinπΔftは、Iの中心付近で偶数である。しかし、偶数のk、k≠0の基底関数SinKπΔftは、Iの中心付近で奇数であり、従って、Iにおける1/SinπΔftに直交する。従って、置き換えk=2n+1を作ることができ、Mを奇数の正整数にする。実際には、M=2N+1とする。この選択は、区間Iにおける相当量の振動のキャンセルを提供するように、実験的に判定された。
ここで、第1の和においてk=N−nの置き換えを行い、第2の和においてK=N+nの置き換えを行って、
を得る。
s(t)からg(t)を引くと以下になる。
ここで以下のようにする。
そして、(A4)は以下のように書くことができる。
本発明の実施形態は、従来技術の1つ以上の欠点を実質的に取り除く無線通信および他の無線ネットワークにおける測位/位置検出方法に関する。本実施形態は、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセス、技術およびアルゴリズムを利用することによって、複数のタイプの無線ネットワークにおける追跡し、位置検出する機能の精度を有利に向上させる。これらの無線ネットワークは、ジグビー、Bluetooth(登録商標)といった無線パーソナルエリアネットワーク(WPGAN)と、WiFi、UWBといった無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)と、通常、複数のWLANからなり、WiMaxがその代表的な例である無線メトロポリタンエリアネットワーク(WMAN)と、ホワイトスペースTVバンドといった無線ワイドエリアネットワーク(WAN)と、通常、音声およびデータを送信するように用いられるモバイルデバイスネットワーク(MDN)とを含む。MDNは、通常、グローバル・システム・フォー・モバイル・コミュニケーション(GSM(登録商標))およびパーソナル・コミュニケーションズ・サービス(PCS)規格に基づいている。より最近のMDNは、ロングタームエボリューション(LTE)規格に基づいている。これらの無線ネットワークは、通常、基地局、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドセット、スマートフォン、アクチュエータ、専用のタグ、センサ、ならびに他の通信およびデータデバイス(概して、これらの全てのデバイスは、「無線ネットワークデバイス」と称する)を含むデバイスの組み合わせから構成されている。
既存の位置および測位情報ソリューションは、GPS、AGPS、携帯電話中継塔三角測量やWi−Fiを含む複数の技術およびネットワークを用いる。この位置情報を導出するために用いられる方法のいくつかは、RF指紋、RSSI、およびTDOAを含む。現在のE911の要件についての条件を満たすが、既存の位置検出および測距方法は、次回のE911の要件だけでなく、LBSおよび/またはRTLS用途の要件、特に屋内および都市環境の要件をサポートするのに必要とされる信頼性と精度とを有していない。
関連の特許文献4に記載される方法、単一の無線ネットワークまたは複数の無線ネットワークの組み合わせ内において、対象のデバイスの位置を正確に検出し、追跡する能力を大幅に向上させる。本実施形態は、Enhanced Cell−IDを使用する無線ネットワークにより用いられる追跡および位置方法の既存の実装およびDL−OTDOA(ダウンリンクOTDOA)、U−TDOA、UL−TDOAその他を含むOTDOA(ArrivalのTime Differenceを遵守した)に対する重要な改善である
セルIDの位置検出技術は、特定のセクタのカバレッジエリアの精度でユーザ(UE−ユーザ機器)の位置を推定することができる。従って、達成可能な精度は、スキームおよびアンテナのビーム幅をセクタ化するセル(基地局)に依存する。精度を向上させるために、強化セルID技術は、eNBからRTT(round trip time;往復時間)の測定(測定値)を追加する。注記:ここで、RTTは、ダウンリンクDPCH(専用物理チャネル(DPDCH/DPCCH:専用物理データチャネル/専用物理制御チャネル))のフレームの送信と、対応するアップリンク物理フレームの開始との差を構成する。この例では、上述したフレームが測距信号として作用する。この信号がeNBからUEへ伝播する時間の長さの情報に基づいて、eNBからの距離を計算することができる(図10参照)。
測定到達時間差法(OTDOA)技術では、隣接する基地局(eNB)から来る信号の到達時間を計算する。3つの基地局からの信号が受信されると、UEの位置がハンドセット(UEに基づく方法)、またはネットワーク(NTに基づく、UE支援法)において推定することができる。測定された信号は、CPICH(COMMON PILOT CHANNEL;共通パイロットチャネル)である。信号の伝搬時間は、局所的に生成されたレプリカと相関している。相関のピークは、測定された信号の観察された伝搬時間を示す。2つの基地局間の到達時間差の値が双曲線を決定する。少なくとも3つの基準点が2つの双曲線を定義するために必要とされる。UEの位置は、これら2つの双曲線の交点にある(図11参照)。
アイドル期間ダウンリンク(IDLE PERIOD DOWNLINK:IPDL)は、さらなるOTDOAの強化である。OTDOA−IPDL技術は、通常のOTDOAと同一の測定に基づいている。時間測定はアイドル期間中に行われるが、このアイドル期間中、サービングeNBは、自身の送信を停止し、このセルのカバレッジ内のUEが離れた基地局からやって来るパイロットを聞く(HEAR)ことを可能にする。サービングeNBは、連続またはバーストモードでアイドル期間を提供する。連続モードでは、1つのアイドル期間が、全てのダウンリンク物理フレーム(10MS)に挿入される。バーストモードでは、アイドル期間は、擬似ランダムな方法で生ずる。時間整合IPDL(TIME ALIGNED IPDL:TA−IPDL)を介してさらなる向上が得られる。時間整合は、共通のアイドル期間を作成する。この共通のアイドル期間中、各基地局は、自身の送信を中止するか、または共通パイロットを送信する。パイロット信号の測定が、アイドル期間中に行われる。DL OTDOA−IPDL方法を更に強化し得る他のいくつかの技術があるが、例えば、蓄積仮想ブランキング(CUMULATIVE VIRTUAL BLANKING)、UTDOA(アップリンクTDOA)等がある。全てのこれらの技術は、他の(非サービング)eNBを聞く能力を向上させる。
OTDOAに基づく技術の1つの重大な欠点は、この方法を実行可能にするためには、基地局のタイミング関係が既知であるか、または測定(同期)される必要がある。同期されていないUMTSネットワークに対して、3GPP規格は、このタイミングがどのように回復され得るかの提案を提供する。しかしながら、ネットワーク事業者は、このような解決法を実施していない。その結果、CPICH信号測定の代わりにRTT測定を使用する変形例が提唱された(John Carlsonらによる特許文献6を参照)。
上述した全ての方法/技術は、地上波信号の到達時間の測定および/または到達時間の差の測定(RTT、CPICH等)に基づいている。このような測定の問題は、これらがマルチパスによってひどく影響を受けるということである。そして、これは、上述の方法/技術、位置検出/追跡の精度を著しく低下させる(非特許文献7参照)。
1つのマルチパス緩和技術は、余剰のeNBまたは無線基地局(RBS)からの検出(検出値)/測定(測定値)を用いる。最小数は3であるが、マルチパス緩和のため、必要なRBSの個数は、少なくとも6から8である(特許文献7を参照)。しかしながら、UEがこの多くのeNBから聞く可能性は、3つのeNBからよりもはるかに低い。これはなぜなら、RBS(eNB)が多いと、いくつかのRBS(eNB)は、UEからはるか遠くに存在し、これらのRBS(eNB)からの受信信号はUE受信機の感度レベルを下回っているか、または受信信号はSNが低いかもしれないからである。
RF反射(例えば、マルチパス)の場合には、様々な遅延時間を有するRF信号の複数のコピーが、DLOS(直線見通し線)信号に重畳される。CPICHと、アップリンクDPCCH/DPDCHと、RTTの測定を含む様々なセルIDおよびOTDOA方法/技術において用いられる他の信号とは、帯域幅が制限されているので、DLOS信号と受信信号とは、適切なマルチパス処理/緩和なしには区別することができない。このマルチパス処理なしでは、これらの反射信号は、RTTの測定を含む推定到達時間差(DTOA)値および到達時間(TOA)において誤差を誘発する。
例えば、3G TS 25.515 v.3.0.0(199−10)標準は、RTTを「ダウンリンクDPCHフレーム(信号)の送信と、UEから対応するアップリンクDPCCH/DPDCHフレーム(信号)の開始(第一の重要なパス(パス))の受信との差」として定義する。この規格は、何がこの「第一の重要なパス」を構成するかを定義していない。この規格は続けて、「第一の重要なパスの定義は、さらなる詳細が必要である」と言及している。例えば、重いマルチパス環境では、第一の重要なパスであるDLOS信号が1つ以上の反射信号と比較してひどく減衰(10dB〜20dB)されることがよく生じる。第1の重要なパスが信号強度を測定することによって判定されるのであれば、第一の重要なパスは、DLOS信号ではなく、反射信号のうちの1つであり得る。これにより、結果的に、誤ったTOA/DTOA/RTTの測定と位置検出精度の損失ということになる。
先の無線ネットワークの世代では、位置特性精度はまた、位置検出方法−RTT、CPICHおよびその他の信号によって用いられるフレーム(信号)の低サンプリングレートによっても影響を受けた。現在の第3世代およびそれ以降の無線ネットワークの世代では、それよりはるかに高いサンプリングレートを有する。その結果、これらのネットワークでは、位置検出精度への実際の影響は、地上波RF伝搬現象(マルチパス)からのものである。
本実施形態は、基準信号および/またはパイロット信号、および/または同期信号を用いる全ての無線ネットワークにおいて使用することができ、単方向、半二重化および全二重化の動作モードを含む。例えば、本実施形態は、OFDM変調および/またはその派生を用いる無線ネットワークで動作する。従って、本実施形態はLTEネットワークで動作する。
本実施形態はまた、WiMax、WiFi、ホワイトスペースを含む他の無線ネットワークにも適用することができる。基準信号および/またはパイロット信号、および/または同期信号を使用しない他の無線ネットワークは、同時係属出願第12/502809号に記載されるような以下のタイプの代替の変調態様のうちの1つ以上を用い得る。1)フレームの一部が、関連の特許文献4に記載されるような測距信号/測距信号要素に専用である;2)測距信号要素(関連の特許文献4)が、送信/受信信号のフレームに埋め込まれている;3)測距信号要素(関連の特許文献4)が、データとともに埋め込まれている。
これらの代替の実施形態は、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセッサおよびマルチパス緩和技術/アルゴリズムを用いており、単方向、半二重化、および全二重化の全ての動作モードにおいて使用することができる。
また、複数の無線ネットワークは、同時に、好適なおよび/または代替の実施形態を利用することもあり得る。例としては、スマートフォンは、同時に複数のネットワーク上で動作する能力を有するように、BlueTooth(登録商標)、WiFi、GSM(登録商標)およびLTEの機能を有することができる。アプリケーションの要求および/またはネットワークの可用性に依存して、異なる無線ネットワークが測位/位置検出情報を提供するように利用され得る。
提案される実施形態の方法およびシステムは、無線ネットワークの基準/パイロットおよび/または同期信号を活用する。更に、基準/パイロット信号/同期信号の測定は、RTT(往復時間)の測定、またはシステムタイミングと組み合わせ得る。一実施形態によれば、RFに基づく追跡および位置検出は、3GPP LTEセルラネットワーク上で実施されるが、例えば、WiMax、WiFi、LTE、センサネットワーク等、様々な信号技術を用いる他の無線ネットワーク上で実施することもできる。例示的実施形態および上述の代替の実施形態の双方は、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和方法/技術およびアルゴリズムを用いる。提案されるシステムは、ソフトウェアが実装されたデジタル信号処理を使用することができる。
本実施形態のシステムは、ユーザ機器(UE)、例えば、携帯電話またはスマートフォンのハードウェア/ソフトウェア、ならびに基地局(eNB)/強化基地局(eNB)のハードウェア/ソフトウェアを活用する。基地局は、一般的にフィーダによってアンテナに接続されたキャビンやキャビネット内の送信機と受信機とからなる。これらの基地局は、マイクロセル、ピコセル、マクロセル、アンブレラセル、携帯電話中継塔、ルータ、およびフェムトセルを含む。その結果、UEデバイスおよびシステム全体にほとんど、または全く追加費用がかからない。同時に、位置検出精度が著しく向上する。
向上した精度は、本実施形態および関連の特許文献4によって提供されるマルチパス緩和によるものである。本実施形態(複数)は、マルチパス緩和アルゴリズム、ネットワークの基準/パイロットおよび/または同期信号、ならびにネットワークN(eNB)を使用する。これらの実施形態は、RTT(往復時間)の測定で補完され得る。マルチパス緩和アルゴリズムは、UEおよび/または基地局(eNB)は、あるいはUEとeNBとの両方に実装される。
本実施形態は、1つ以上の反射信号と比較してDLOS信号が著しく減衰される(10dB〜20dB以下)場合であっても、DLOS信号と反射信号とを分離することができるマルチパス緩和プロセッサ/アルゴリズムを有利に使用する(関連の特許文献4参照)。従って、本実施形態は、測距信号の推定DLOS飛行時間における誤差、およびその結果として、TOA、RTTおよびDOTAの測定における誤差を著しく低減する。提案されるマルチパス緩和およびDLOS差別化(認識)方法は、全てのRF帯および無線システム/ネットワーク上で使用することができる。そして、当該方法は、DSS(直接スペクトラム拡散)およびFH(周波数ホッピング)といったスペクトル拡散技術を含む様々な変調/復調技術をサポートすることができる。
また、ノイズ低減方法(複数)は、方法の精度を更に向上させるように適用することができる。これらのノイズ低減方法は、コヒーレント加算、非コヒーレント加算、整合フィルタリング、時間ダイバーシティ技術等を含むことができるが、これらに限定されない。残りのマルチパス干渉誤差は、例えば最尤推定(例えば、ビタビアルゴリズム)、最小分散推定(カルマンフィルタ)等といった後処理技術を適用することによって更に低減することができる。
本実施形態では、マルチパス緩和プロセッサおよびマルチパス緩和技術/アルゴリズムは、RTT、CPICH、他の信号および/またはフレームを変更しない。本実施形態は、チャネル応答/推定を取得するように使用される無線ネットワークの基準、パイロットおよび/または同期信号を活用する。本発明は、UEおよび/またはeNBによって生成されたチャネル推定の統計を使用する(Iwamatsuらによる特許文献8を参照)。
LTEネットワークは、全てのダウンリンクおよびアップリンクサブフレームで送信される特定の(非データ)基準/パイロットおよび/または同期信号(既知信号)を用いており、セルの帯域幅全体にわたり得る。以下、説明を簡単にするために、基準/パイロットおよび同期信号を、基準信号と称する。LTEの基準信号の一例が、図9にある(これらの信号は、LTEのリソース要素間に散在している)。図2から、基準信号(シンボル)は、6つの副搬送波ごとに送信される。更に、基準信号(シンボル)は、時間および周波数の両方において交互に配置される。全部で、基準信号は、3つの副搬送波ごとにカバーする。
これらの基準信号は、UEによる初期セル検索、ダウンリンクの信号強度測定、スケジューリング、ハンドオーバ等において使用される。基準信号に含まれるのは、チャネル推定(応答判定)のためのUE固有の基準信号であり、コヒーレントな復調を行うために用いられる。UE固有の基準信号に加えて、他の基準信号もまたチャネル推定のために用いられ得る(Chenらによる特許文献9を参照)。
LTEは、OFDM(直交周波数分割多重)変調(技術)を用いる。LTEにおいては、マルチパスに起因するISI(シンボル間干渉)は、各OFDMシンボルの先頭にサイクリックプレフィックス(CP)を挿入することによって処理される。前のOFDMシンボルの遅延した反射信号が次のOFDMシンボルに到達する前に消えてしまうように、CPは十分な遅延を提供する
OFDMシンボルは、非常に緊密な間隔の複数の副搬送波からなる。OFDMシンボル内では、(マルチパスに起因する)現在のシンボルのコピーであって、時間が互い違いにされたコピーが、キャリア間干渉(ICI)をもたらす。LTEにおいては、マルチパスチャネル応答を判定し、受信機においてチャネル応答を補正することによって、ICIが処理(緩和)される。
LTEにおいては、マルチパスチャネル応答(推定)は、受信機において、基準シンボルを有する副搬送波から計算される。残りの副搬送波のチャネル応答を推定するために補間が用いられる。チャネル応答は、チャネルの振幅および位相の形をとって計算(推定)される。チャネル応答が、(既知の基準信号の周期的な送信によって)判定されると、マルチパスに起因するチャネルの歪みが副搬送波単位で振幅および位相シフトを適用することによって緩和される(非特許文献8を参照)。
LTEのマルチパス緩和は、(サイクリックプレフィックスを挿入することによって)ISIおよびICIを除去するように設計されているが、反射信号からDLOS信号を分離するようには設計されていない。例えば、現在のシンボルのコピーであって、時間が互い違いされたコピーは、変調された各副搬送波信号を時間において拡散し、これによりICIを引き起こす。上述のLTE技術を使用してマルチパスチャネル応答を修正することは、変調された副搬送波信号を時間方向に縮小するが、このタイプの修正は、(OFDMシンボル内の)結果として得られる変調された搬送波信号がDLOS信号であることを保証するものではない。DLOSの変調された副搬送波信号が、遅延された反射信号と比較して著しく減衰される場合には、結果として得られる出力信号は、遅延された反射信号であり、DLOS信号は失われる。
LTEに準拠した受信機では、さらなる信号処理は、DFT(ディジタルフーリエ変換)を含む。DFT技術は、信号および/またはチャネル帯域幅に反比例する時間以上の時間分だけ遅延された信号のコピーのみを解消(除去)できることがよく知られている。この方法の精度は、効率的なデータ転送に十分であり得るが、重いマルチパス環境における正確な距離測定には十分に正確ではないかもしれない。例えば、30メートルの精度を実現するために、信号および受信機のチャネル帯域幅は、10MHz(1/10MHz=100ns)以上でなければならない。より良い精度のためには、信号および受信機のチャネル帯域幅は、より広く、3メートルで100MHzでなければならない。
しかしながら、CPICHと、アップリンクDPCCH/DPDCHと、RTTの測定を含む様々なセルIDおよびOTDOA方法/技術に用いられるその他の信号と、LETの受信機の信号の副搬送波とは、10MHzより著しく狭い帯域幅を有する。その結果、(LTEにおいて)現在用いられている方法/技術は、100メートル範囲の位置検出誤差を生じる。
上述の制限を克服するために、本実施形態は、部分空間分解高分解能スペクトル推定手法の実施とマルチモーダルクラスタ分析との一意の組み合わせを使用する。この分析と、関連の特許文献4に記載される関連するマルチパス緩和方法/技術およびアルゴリズムとは、他の反射信号パスからDLOSパスを高信頼かつ正確に分離することを可能にする。
LTEにおいて使用される方法/技術と比較すると、重いマルチパス環境においては、この方法/技法およびアルゴリズム(関連の特許文献4)は、他のマルチパス(MP)パスからDLOSパスを高信頼かつ正確に分離することにより、距離測定において20倍〜50倍の精度向上をもたらす。
関連の特許文献4に記載される方法/技術およびアルゴリズムは、測距信号の複素振幅の推定を必要とする。従って、チャネル推定(応答判定)に使用されるLTEの基準信号ならびに他の基準信号(パイロットおよび/または同期信号を含む)はまた、関連の特許文献4に記載される方法/技術およびアルゴリズムにおける測距信号として解釈することもできる。このケースでは、測距信号の複素振幅は、振幅および位相の形をとってLTEの受信機によって計算(推定)されるチャネル応答である。言い換えれば、LTE受信機によって計算(推定)されるチャネル応答の統計は、関連の特許文献4に記載される方法/技術およびアルゴリズムによって必要とされる複素振幅の情報を提供することができる。
マルチパスが存在しない理想的な開けた空間のRF伝搬環境では、受信信号(測距信号)の位相変化、例えばチャネル応答位相は、信号の周波数(直線)に正比例し、このような環境におけるRF信号の飛行時間(伝搬遅延)は、周波数依存性に対する位相の一次導関数を計算することによって、位相VS周波数依存性から直接計算することができる。この結果、伝搬遅延は一定となる。
この理想的な環境では、最初(または任意)の周波数の絶対位相値は、重要ではない。なぜなら、導関数は絶対位相値の影響を受けないからである。
重いマルチパス環境では、受信信号の位相変化VS周波数は、複雑な曲線(非直線)であり、一次導関数は、他の反射信号パスからDLOSパスを正確に分離するために使用することができる情報を提供しない。これが、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセッサ、方法/技術およびアルゴリズムを用いる理由である。
ある無線ネットワーク/システムにおいて実現される位相および周波数同期(位相コヒーレンス)が非常に良い場合には、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセッサ、方法/技術およびアルゴリズムは、他の反射信号パスからDLOSパスを正確に分離し、このDLOSパスの長さ(飛行時間)を判定する。
この位相コヒーレントネットワーク/システムにおいては、追加の測定は必要ない。言い換えれば、単方向の測距(単方向測距)を実現することができる。
しかしながら、ある無線ネットワーク/システムにおいて実現される同期(位相コヒーレンス)の程度が十分に正確ではない場合には、重いマルチパス環境において、受信信号の位相、および振幅変化VS周波数が、2つ以上の異なる場所(距離)で実施された測定と非常に似ているかもしれない。この現象は、受信信号のDLOS距離(飛行時間)の判定における曖昧さにつながり得る。
この曖昧さを解決するために、少なくとも1つの周波数の実際(絶対)位相値を知ることが必要である
しかしながら、LTE受信機によって計算される振幅、および位相VS周波数依存性は、実際の位相値を含まない。なぜなら、全ての振幅および位相値は、ダウンリンク/アップリンク基準信号、例えば、互いに相対する信号から計算される。従って、LTE受信機によって計算(推定)されるチャネル応答の振幅および位相は、少なくとも1つの周波数(搬送波周波数)における実際の位相値を必要とする。
LTEにおいて、この実際の位相値は、1つ以上のRTTの測定、TOAの測定、または、1つ以上の受信された基準信号のタイムスタンプから判定することができる。ただし、1)eNBによってこれらの信号を送信するこれらのタイムスタンプもまた、受信機において既知(その逆も然り);2)受信機およびeNBのクロックは、時間的によく同期されており;および/または3)マルチラテレーション技術を使用することを条件とする。
上述の方法の全ては、1つ以上の基準信号の飛行時間値を提供する。これらの基準信号の飛行時間値および周波数から、1つ以上の周波数における実際の位相値を計算することができる。
本実施形態は、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセッサ、方法/技術およびアルゴリズムと、1)LTEのUEおよび/またはeNBの受信機によって計算される振幅、および位相VS周波数依存性とを組み合わせることによって、または、2)LTEのUEおよび/またはeNBの受信機によって計算される振幅、および位相VS周波数依存性と、RTTおよび/またはTOAを介して取得された1つ以上の周波数の実際の位相値との組み合わせと組み合わせることによって、および/またはタイムスタンプの測定と組み合わせることによって重いマルチパス環境における高精度なDLOS距離の判定/位置検出を実現する。
これらのケースでは、実際の位相値は、マルチパスの影響を受ける。しかしながら、これは、関連の特許文献4に記載される方法/技術およびアルゴリズムの性能に影響を与えない。
DL−OTDOA、U−TDOA、UL−TDOA等を含むLTEのRTT/TOA/TDOA/OTDOAにおいては、5メートルの分解能で測定を行うことができる。RTTの測定は、専用接続中に実行される。従って、UEがハンドオーバ状態かつUEが定期的に測定を収集し、UEに折り返し報告する場合に、複数の同時測定が可能である。ここでは、DPCHフレームがUEと、異なるネットワーク(基地局)との間で交換される。RTTと同様に、TOAの測定は、信号の飛行時間(伝搬遅延)を提供するが、TOAの測定は、同時に行うことはできない(非特許文献7)。
平面上でUEを位置検出するためには、少なくとも3つのeNBから/へのDLOS距離が判定されなければならない。三次元空間においてUEを位置検出するためには、4つのeNBから/への最小4つのDLOS距離が判定されなければならない(少なくとも1つのeNBが同一平面上にないと仮定する)。
UE測位方法の一実施例が図1に示される。
同期が非常に良い場合には、RTTの測定は必要ではない。
同期化の度合いが十分に正確でない場合には、OTDOAと、セルID+RTTと、例えばAOA(到来角)およびAOAと他の方法との組み合わせといった他の方法といった方法が、UEを位置検出するために使用することができる
セルID+のRTT追跡−位置検出方法の精度は、マルチパス(RTTの測定値とeNB(基地局)のアンテナビーム幅との影響を受ける。基地局のアンテナビーム幅は33度と65度との間である。これらの広いビーム幅は、都市部において50〜10メートルの位置検出誤差という結果をもたらす(非特許文献7)。重いマルチパス環境において、現在のLTEのRTT距離測定の平均誤差は約100メートルであることを考慮すると、LTEセルID+RTT方法によって現在用いられている全体の予想平均位置検出誤差は、約150メートルである。
実施形態のうちの1つは、AOA方法に基づくUEの位置検出である。ここでは、UEからの1つ以上の基準信号がUEを位置検出するように用いられる。これは、DLOSのAOAを判定するためにAOA判定デバイスの位置検出を伴う。このデバイスは、基地局と一緒に用いられるか、および/または、当該基地局の場所(位置)から独立した別の1つ以上の場所(位置)に備え付けることができる。これらの位置の座標は、知られているものと思われる。UE側に変更の必要はない。
このデバイスは、小型アンテナアレイを含み、関連の特許文献4に記載されるのと同一のマルチパス緩和プロセッサ、方法/技術およびアルゴリズムの変形に基づいている。この1つの考えられ得る実施形態は、UEユニットからのDLOS RFエネルギーのAOAを正確に判定する(非常に狭いビーム幅)というという利点を有する。
他の1つの選択肢においては、この追加されたデバイスは、受信デバイスでしかない。その結果、その大きさ/重量およびコストが非常に低い。
正確なDLOS距離の測定が得られる実施形態と、正確なDLOSのAOA判定を行うことができる実施形態とを組み合わせることにより、セルID+RTTの追跡位置検出方法の精度を大幅に、10倍以上向上させる。このアプローチの別の利点は、UEの位置が1つの中継塔を用いていつでも判定することができる(UEをソフトハンドオーバモードにすることを必要としない)ことである。正確な位置修正が1つの中継塔を用いて得ることができるので、複数のセル中継塔を同期させる必要はない。DLOSのAOAを判定する別の選択肢は、既存のeNBのアンテナアレイとeNB機器とを使用することである。この選択肢は、強化セルID+RTT方法の実施のコストを更に下げ得る。しかしながら、eNBアンテナは、位置検出用途用に設計されていないので、測位精度が低下することがある。また、ネットワーク事業者は、基地局(ソフトウェア/ハードウェア)における必要な変更を実施したがらないかもしれない。
LTE(Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical channels and modulation; 3GPP TS 36.211 Release 9 technical Specification)では、測位基準信号(PRS)が追加された。これらの信号は、DL−OTDOA(ダウンリンクOTDOA)の測位のためにUEによって使用される。また、このRELEASE9では、eNBを同期させることが必要である。このようにして、OTDOA方法の最後の障害をクリアする(上記の段落0258参照)。PRSは、複数のeNBのUEにおけるUE可聴性を向上させる。注記:Release9は、eNBの同期精度を明記していない(いくつかの提案:100ns)。
U−TDOA/UL−TDOAは、研究段階であり、2011年に標準化される。
DL−OTDOA方法(Release9)は、特許文献2(Chenらによる「Method and Apparatus for UE positioning in LTE networks」)に詳述されている。Release9のDL−OTDOAは、マルチパスの影響を受ける。いくつかのマルチパス緩和は、増加したPRS信号帯域幅を介して実現することができる。しかしながら、このトレードオフにより、スケジューリングの複雑さが増し、UEの位置を修正する間の時間を長くなる。更に、例えば、動作帯域幅が10MHzと限られているネットワークでは、可能な限りの最高の精度は100メートルである(CHENによる表1参照)。
上記の数字は、可能な限り最高のケースである。他のケースにおいて、特に反射信号強度と比較してDLOS信号強度が著しく低い(10〜20dB)場合には、上述の位置検出/測距誤差が著しく大きい(2倍〜4倍)という結果になる。
本明細書に記載される実施形態は、「背景技術」において記載されるChenらのRelease9のDL−OTDOA方法およびUL−PRS方法によって実現される性能の測距/位置検出の精度を、ある信号帯域幅に対して50倍にまで向上させることが可能である。従って、ここに記載される方法の実施形態をRelease9のPRS処理に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下に位置検出誤差を低減する。また、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを低減させる。
本明細書に記載される実施形態を用いることにより、OTDOA方法のさらなる改善が可能である。例えば、サービングセルへの測距は、他のサービングセル信号から判定することができ、これにより、隣接するセルの可聴性を向上させ、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを低減する。
本実施形態はまた、ChenらからのU−TDOA方法およびUL−TDOA方法の精度を50倍にまで向上させることができる(「背景技術」に記載)。実施形態をChenのUL−TDOAの変形に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下に位置検出誤差を低減する。更に、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを更に低減させる。
また、本実施形態を用いることにより、ChenのUL−TDOA方法の精度を50倍にまで向上させることができる。従って、本実施形態をChenのU−TDOAの変形に適用することにより、全ての可能なケースの95%において3メートル以下に位置検出誤差を低減する。更に、この精度利得は、スケジューリングの複雑さと、UEの位置を修正する間の時間とを更に低減させる。
上述のDL−TDOA方法およびU−TDOA/UL−TDOA方法は、単方向測定(測距)に依存する。本実施形態および実質的に他の全ての測距技術は、単方向測距の処理において使用されるPRSおよび/または他の信号の周波数および位相がコヒーレントであることを必要とする。LTEのようなOFDMに基づくシステムでは、周波数がコヒーレントである。しかしながら、UEユニットおよびeNBは、UTCといった共通ソースによって、2〜3ナノ秒に位相および時間が同期されていない、例えば、ランダム位相加算器が存在する。
測距精度への位相コヒーレンスの影響を回避するために、マルチプロセッサの実施形態は、測距信号間、例えば基準信号間、個々の成分(副搬送波)間の位相差を計算する。これにより、ランダム位相項加算器が必要なくなる。
Chenらの考察において上記で特定されるように、ここに記載される実施形態を適用することは、Chenらによって実現される性能と比較して、屋内環境において大幅な精度向上をもたらす。例えば、Chenらによれば、DL−OTDOAおよび/またはU−TDOA/UL−TDOAは、主に屋外環境のためのものであり、屋内(建物、キャンパス等)では、DL−OTDOAおよびU−TDOA技術はうまく機能しないかもしれない。いくつかの理由として、屋内で一般的に用いられる分散アンテナシステム(DAS)を含むことに言及している(Chen、#161〜164参照)。ここで、各アンテナは、一意のIDを有していない。
下記の実施形態は、OFDM変調および/またはその派生を用いる無線ネットワーク、ならびに基準/パイロット/およびまたは同期信号を用いる無線ネットワークで動作する。従って、以下記の実施形態は、LTEネットワークで動作し、当該実施形態はまた、基準/パイロット/および/または同期信号の有無にかかわらず、他のタイプの変調を含む他の無線システムおよび他の無線ネットワークにも適用することができる。
ここに記載されるアプローチは、WiMax、WiFi、ホワイトスペースを含む他の無線ネットワークにも適用することができる。基準/パイロットおよび/または同期信号を使用しない他の無線ネットワークは、関連の特許文献4に記載されるような以下のタイプの1つ以上の代替の変調態様を用い得る:1)フレームの一部が測距信号/測距信号要素専用である;2)測距信号要素は、送信/受信信号フレームに埋め込まれている;3)測距信号要素は、データとともに埋め込まれている。
ここに記載されるマルチパス緩和の範囲推定アルゴリズムの実施形態(特許文献10および特許文献11にも記載)は、マルチパスの反射ならびに信号の直線パス(DLOS)からなる集合(ENSEMBLE)の測距の推定を提供することによって動作する。
LTEのDASシステムは、移動受信機(UE)に、様々な時間オフセットで見られる同一の信号の複数のコピーを生成する。遅延は、アンテナと移動受信機との間の幾何学的関係を一意に判定するように使用される。受信機から見た信号は、マルチパス環境で見られる信号と似ているが、主要な「マルチパス」成分が、複数のDASアンテナからのオフセット信号の合計から生じたものを除く。
受信機から見た信号の集合は、実施形態が利用するように設計された信号の集合のタイプと同じであるが、この場合、主要なマルチパス成分は、従来のマルチパスではないことを除く。本マルチパス緩和プロセッサ(アルゴリズム)は、DLOSおよび各パス、例えば反射の減衰や伝搬遅延を判定することができる(式1〜式3とそれと関連する記載参照)。分散RFチャネル(環境)のせいでマルチパスが存在し得る一方、この信号の集合における主要なマルチパス成分は、複数のアンテナからの送信に関連している。本マルチパスアルゴリズムの実施形態は、これらのマルチパス成分を推定することができ、DASアンテナから受信機への範囲を分離し、位置検出プロセッサ(ソフトウェアで実装)に範囲データを提供する。アンテナの配置に応じて、この解決法は、XおよびYと、X、YおよびZとの双方の位置座標を提供することができる。
その結果、本実施形態は、ハードウェアおよび/または新たなネットワーク信号の追加を必要としない。更に、1)マルチパスを緩和することによって、2)アクティブDASの場合には、測位誤差の下限を、例えば約50メートルから約3メートルに下げるといったように、大幅に下げることができることによって、測位精度を大幅に向上させることができる。
なお、DASの各アンテナの位置(場所)が既知であるとする。各アンテナの(または他のアンテナに相対する)信号伝搬遅延もまた、判定され(知られ)なければならない。
アクティブDASシステムでは、既知信号が往復送信され、この往復時間が測定されるループバック技術を使用して、信号伝搬遅延が自動的に判定され得る。このループバック技術はまた、温度、時間等を用いて信号伝搬遅延の変化(ドリフト)を排除する。
複数のマクロセルおよび関連のアンテナを使用して、ピコセルおよびマイクロセルは、追加の基準点を提供することによって、解決を更に高める。複数のアンテナからの複数のコピーの信号の集合における個々の範囲推定である上述の実施形態は、次の2つのやり方で信号送信構造を変更することによって更に改善することができる。第一のやり方は、各アンテナからの送信の時間多重化である。第2のアプローチは、各々のアンテナの周波数多重化である。双方の改善である時間多重化および周波数多重化を同時に使用することは、システムの測距および位置検出精度を更に向上させる。別のアプローチは、各アンテナに伝播遅延を追加することである。追加の遅延に起因するマルチパスがISI(シンボル間干渉)をもたらさないように、遅延値は、特定のDAS環境(チャネル)において遅延拡散を超えるのに十分大きいが、サイクリックプレフィックス(CP)の長さよりも小さくなるように選択される。
各アンテナに一意のIDまたは一意の識別子を追加することは、結果として得られる解決の効率を向上させる。例えば、プロセッサが各アンテナからの信号から全ての範囲を推定する必要性を排除する。
LTEのダウンリンクを利用する一実施形態では、パイロットおよび/または同期信号の副搬送波を含む1つ以上の基準信号の副搬送波が、副搬送波の位相および振幅を判定するように用いられる。副搬送波の位相および振幅は、次に、マルチパスプロセッサに適用され、マルチラテレーションと位置整合アルゴリズムとを使用して、マルチパス干渉を低減し、範囲に基づく位置観測量と位置推定とを生成することにより、ワイルドポイントを編集する。
別の実施形態は、LTEのアップリンクがまた基準副搬送波を含む基準信号をモバイルデバイスから基地局に送達するという事実を利用する。実際には、周波数帯域をアップリングデバイスに割り当てるようにネットワークによって用いられる完全なサウンディングモードから、アップリンク信号等の変調を補助するためにチャネルインパルス応答を生成するように基準搬送波が用いられるモードへの基準搬送波を含む1つより多いモードが存在する。また、Release9に追加されたDL PRSと同様に、追加のUL基準信号は、次回および将来の標準Releaseに追加されるかもしれない。この実施形態では、アップリンク信号は、同一の範囲を用いて複数の基地ユニット(eNB)によって位相に処理され、マルチパス緩和処理により、範囲に関連した観測量を生成する。この実施形態では、位置整合アルゴリズムが、マルチラテレーションアルゴリズムによって確立されるように使用されることにより、ワイルドポイントの観測量を編集し、位置推定を生成する。
更に別の実施形態は、LTEのダウンリンクおよびLTEアップリンクの両方の副搬送波であって、関連する1つ以上基準(パイロットおよび/または同期を含む)副搬送波が収集され、範囲から位相へのマッピングが適用され、マルチパス緩和が適用され、範囲に関連した観測量が推定される。それから、マルチラテレーションアルゴリズムおよび位置整合アルゴリズムを使用して、位置検出のためにより堅牢な観測量のセットを提供するように、これらのデータは融合される。この利点は、ダウンリンクとアップリンクの2つの異なる周波数帯が存在するために精度が向上する結果となる冗長性であり、またはTDD(時分割二重化)の場合には、システムコヒーレンスが向上する。
複数のアンテナがマイクロセルから同一のダウンリンク信号を送信するDAS(分散アンテナシステム)環境では、位置整合アルゴリズムが拡張されることにより、基準信号(パイロットおよび/または同期を含む)の副搬送波からマルチパス処理によって生成された観測量からDASアンテナの範囲を分離し、複数のDASエミッタ(アンテナ)の範囲からの位置推定を取得する
DASシステム(環境)では、個々のアンテナからの信号パスが高精度で解決できる場合にのみ、正確な位置推定を取得することが可能である。ここで、パス誤差は、アンテナ間の距離のほんの一部である(10メートル以下の精度)。全ての既存の技術/方法が重いマルチパス環境(複数のDASアンテナからの信号は、重いマルチパスを誘発したように見える)においては、このような精度を提供することができないので、既存の技術/方法は、上述の位置整合アルゴリズムの拡張を利用し、DAS環境においてこの位置検出方法/技術を利用することができない。
関連の特許文献4に記載される物体の識別し、位置検出をするInvisiTrackマルチパス緩和方法およびシステムは、LTEのダウンリンク、アップリンクおよび/またはその両方(ダウンリンクおよびアップリンク)の1つ以上の基準信号の副搬送波を利用して、範囲から信号位相へのマッピングに適用され、マルチパス干渉緩和に適用され、範囲に関連した位置観測量を生成する処理に適用され、マルチラテレーションと位置整合性とを用いることにより位置推定を生成する。
上述の全ての実施形態では、三辺測量測位アルゴリズムもまた用いることができる。
DL−OTDOAの位置検出は、LTE Release9「Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical channels and modulation; 3GPP TS 36.211 Release 9 technical Specification」に明記されている。しかしながら、これは、無線通信事業者(キャリア)によって実施されていない。一方、ダウンリンクの位置検出は、既存の物理層測定オペレーションを使用することによって、現在の、例えば修正されていない、LTEネットワーク環境内において実施することができる。
LTEにおいて、UEおよびeNBは、無線特性の物理層測定を行うために必要とされる。測定定義は、3GPP TS 36.214に明記されている。これらの測定は、定期的に実行され、上位層に報告され、様々な目的のために使用される。これらの目的は、周波数内および周波数間ハンドオーバ、無線通信アクセス技術間(inter−RAT)ハンドオーバ、タイミングの測定、およびRRM(無線資源管理;Radio Resource Management)をサポートする他の目的を含む。
例えば、RSRP(基準信号受信電力)は、全帯域幅にわたってセル固有の基準信号を搬送する全ての資源要素の電力の平均である。
別の例は、追加情報を提供するRSRQ(基準信号受信品質)の測定である(RSRQは、信号強度と干渉レベルとを組み合わせる)。
LTEネットワークは、eNB隣接(サービングeNBに対して隣接するeNB)リストをUEに提供する。ネットワーク知識構成に基づいて、(サービング)eNBは、隣接するeNBの識別子等をUEに提供する。その後、UEは、UEが受信することができる隣接するeNBの信号品質を測定する。UEは、結果をeNBに折り返し報告する。注記:UEはまた、サービングeNBの信号品質を測定する。
仕様によれば、RSRPは、考慮された測定周波数帯域内のセル固有の基準信号を搬送する資源要素の電力貢献(単位:W)の線形平均値として定義される。RSRPを判定するためにUEによって使用される測定帯域幅は、対応する測定精度の要件が満たされなければならないという制限付きでUEの実施に委ねられる。
測定帯域幅の精度要件を考慮すると、この帯域幅はかなり大きく、RSRPの測定において使用されるセル固有の基準信号は、更に処理されることにより、これらの基準信号の副搬送波の位相および振幅を判定することができる。これら基準信号の副搬送波の位相および振幅は、その後、マルチパスプロセッサに適用されることにより、マルチパス干渉を低減し、範囲に基づく位置観測量を生成する。また、RSRPの測定において使用される他の基準信号、例えばSSS(二次同期信号)もまた使用され得る。
その後で、3つ以上のセルから範囲観測量に基づいて、位置フィックスは、マルチラテレーションおよび位置整合アルゴリズムを使用して推定することができる。
上記したように、RFフィンガープリントデータベース不安定性のいくつかの要因が存在するが、その主要なものの1つは、マルチパスである(RF署名は、マルチパスに非常に敏感である)。その結果、RFフィンガープリント法/技術の位置検出精度は、マルチパスのダイナミックスに大きく影響され、それは、経時的な変化、環境(例えば、天候)の変化、人々の動きの変化および/またはデバイスのZ高さおよび/またはアンテナの向きに依存して変動性が100%より大きい垂直の不確実性を含む物体の動きの変化を含む(非特許文献3を参照)。
本実施形態は、大幅に減衰したDLOSを含む個々の各パスを見つけ、特徴付ける能力を有する(マルチパスプロセッサ)ので、RFフィンガープリントの位置検出精度を大幅に向上させることができる。その結果、位置修正についてのRFフィンガープリントの判定は、リアルタイムマルチパス分布情報によって補完することができる。
上述したように、位置修正は、位置基準を時間的に同期させる必要がある。無線ネットワークでは、これらの位置基準は、アクセスポイント、マクロ/ミニ/ピコおよびフェムトセル、ならびにいわゆる小さなセル(eNB)を含み得る。しかしながら、無線通信事業者は、正確な位置修正のために必要とされる同期精度を実施しない。例えば、LTEの場合には、規格はFDD(周波数分割二重)ネットワーク用のeNB間で時間的な同期を必要としない。LTEのTDD(時間分割二重)では、この時間的な同期精度の限度は、+/−1.5マイクロ秒である。これは、400メートル以上の位置検出不確実性に相当する。必須ではないが、LTEのFDDネットワークもまた同期されるが、限度は更に大きい(1.5マイクロ秒より大きい)。
無線LTEの事業者は、GPS/GNSS信号を使用して周波数および時間でeNBを同期する。注記:LTEのeNBは、非常に正確なキャリア周波数を維持しなければならない:マクロセル/ミニセルについては、0.05ppm、他のタイプのセルについては、少し精度が低い(0.1〜0.25ppm)。GPS/GNSS信号もまた、10ナノ秒より良い、(位置検出のために)必要とされる時間同期精度を可能する。しかしながら、ネットワーク事業者やネットワーク機器製造業者は、パケットトランスポート、例えばNTP(ネットワーク時間プロトコル)および/またはPTP(高精度時間プロトコル)(例えば、IEEE 1588V2 PTP)を用いるインターネット/イーサネット(登録商標)ネットワーキング時間同期の方を好んで、GPS/GNSSユニットに関連するコストを削減しようとしている。
IPネットワークに基づく同期は、最小周波数および時間的要件を満たす可能性を有しているが、位置修正に必要とされるGPS/GNSS精度を欠いている。
ここに記載されるアプローチは、GPS/GNSS信号、eNBおよび/またはAPによって生成された信号、もしくは他の無線ネットワーク機器によって生成された信号に基づいている。このアプローチはまた、IPネットワーキング同期信号、プロトコル、eNBおよび/またはAPによって生成された信号、もしくは他の無線ネットワーク機器によって生成された信号に基づいている。このアプローチはまた、WiMax、WiFi、ホワイトスペースを含む他の無線ネットワークにも適用することができる。
eNBの信号は、事業者のeNB施設(図12)に設置された時間観測ユニット(TMO)によって受信される。TMOまた、外部同期ソース入力を含む。
eNBの信号がTMOによって処理され、外部同期ソース入力に同期したクロックを使用してタイムスタンプが付与される。
外部同期ソースは、GPS/GNSSおよび/またはインターネット/イーサネット(登録商標)ネットワーキング、例えばPTP、NTP等からであり得る。
タイムスタンプが付与された信号、例えばLTEのフレーム開始(特に、他のネットワークでは、他の信号であってもよい)はまた、eNB(セル)の位置および/またはセルIDを含み、インターネット/イーサネット(登録商標)を介して、全てのeNBのデータベースを作成し、維持し、更新する中央TMOサーバに折り返し送信される。
測距し、位置修正を取得する処理に関与するUEおよび/またはeNBは、TMOサーバを要求し、サーバは、関与したeNB間の時間同期オフセットを返送する。これらの時間同期オフセットは、位置修正を取得する処理に関与するUEおよび/またはeNBによって使用されことにより、位置修正を調整する。
あるいは、測距のプロセスに関係するUE および/またはeNB(複数可)がTMOサーバに取得された測距情報も供給するTMOサーバによって、位置定点算出および調整を行うことができる。それから、TMOサーバは、正確な(調整される)位置(位置を決める)定点を返送する。
複数のセルeNB装置が一緒に同じ位置に配置される場合、単一のTMOは全てのeNB(複数可)からの信号を処理してタイムスタンプを付与することができる。
RTT(往復時間)の測定(測距)が位置検出のために使用され得る。欠点は、RTTの測距が、位置検出精度に大きな影響を与えるマルチパスにさらされることである。
一方、RTTの位置検出は、一般的に位置基準の同期(時間的な同期)を必要とせず、LTEの場合には、特にeNBは必要としない。
また無線ネットワークのパイロット基準信号および/または他の信号で動作する場合には、関連の特許文献4に記載されるマルチパス緩和プロセッサ、方法/技術およびアルゴリズムが、RTT信号のチャネル応答を判定、例えば、RTT信号が通過するマルチパスチャネルを識別することが可能である。これは、実際のDLOS時間が判定されるように、RTTの測定を補正することを可能にする。
DLOS時間が既知である場合には、eNBや位置基準の時間的な同期を必要することなく、三辺測量および/または類似の位置検出方法を使用して、位置修正を取得することが可能である。
TMOおよびTMOサーバが所定の場所にある場合でも、InvisiTrackの技術統合は、マクロセル/ミニセル/ピコセルおよび小さいセル、ならびに/またはUE(携帯電話)における変更を必要とする。これらの変更は、SW/FW(ソフトウェア/ファームウェア)のみに限定されているが、既存のインフラを改造するためには多くの労力を要する。また、場合によってはネットワーク事業者および/またはUE/携帯電話の製造業者/供給業者は、機器の変更に抵抗する。注記:UEは、無線ネットワークのユーザ機器である。
TMOおよびTMOサーバの機能がInvisiTrackの位置検出技術をサポートするように拡張された場合には、このSW/FWの変更を完全に回避することができる。言い換えれば、下記の別の実施形態は、無線ネットワーク信号で動作するが、無線ネットワーク機器/インフラの変更を必要としない。従って、下記の実施形態は、LTEネットワークで動作し、また、Wi−Fiを含む他の無線システム/ネットワークにも適用することができる。
本質的には、この実施形態は、無線ネットワーク信号を用いることにより、位置修正を取得する並列無線位置検出インフラを作成する。
TMOおよびTMOサーバと同様に、InvisiTrackの位置検出インフラは、1つ以上の無線ネットワーク信号取得ユニット(NSAU;Network Signals Acquisition Unit)と、1つ以上の位置検出サーバユニット(LSU;Locate Server Unit)とからなる。位置検出サーバユニットは、NSAUからデータを収集し、それを分析し、範囲および位置を判定し、それを、例えば電話/UEの瞬間的なIDおよび位置のテーブルに変換する。LSUは、ネットワークAPIを介して無線ネットワークにインタフェースする。
複数のこれらのユニットは、大規模なインフラの様々な場所に配置され得る。NSAUは、タイミングがコヒーレントな場合、全ての結果が使用され得、より高い精度が得られる。
コヒーレントなタイミングはGPSクロックおよび/または他の安定したクロックソースから導出することができる。
NSAUは、LAN(ローカルエリアネットワーク)、メトロエリアネットワーク(MAN)および/またはインターネットを介してLSUと通信する。
いくつかの設備/場合においては、NSAUとLSUとは、単一のユニットに組み合わせ/一体化することができる。
LTEまたは他の無線ネットワークを使用して位置検出サービスをサポートするために、送信機が厳しい公差内でクロックおよびイベント同期される必要である。通常、これは、GPSの1PPS信号にロックすることによって達成される。これは、ローカルエリアにおいて、3ナノ秒1−シグマ内の時間同期になる。
しかしながら、このタイプの同期は、実用的ではない場合が多い。本実施形態は、位置検出処理に遅延補償値を提供するために、ダウンリンク送信機間の時間オフセット推定と、時間オフセットの追跡とを提供する。それにより、送信機がクロックおよびイベント同期したように位置検出処理が進行する。これは、(位置検出サービスに必要される)送信アンテナの事前の情報と、既に既知のアンテナの位置を有する受信機とによって実現される。この同期ユニットと呼ばれる受信機は、全てのダウンリンク送信機からデータを収集し、位置の情報が与えられている場合には、事前に選択された基地アンテナからオフセットタイミングを計算する。これらのオフセットは、ダウンリンク送信機に対してクロックドリフトを補償する追跡アルゴリズムの使用を介して、システムによって追跡される。注記:受信したデータから擬似範囲を導出する処理は、InvisiTrackのマルチパス緩和アルゴリズム(関連の特許文献4に記載)を利用する。そのため、同期はマルチパスによる影響を受けない。
これらのオフセットデータは、位置検出プロセッサ(位置検出サーバ、LSU)によって使用されることにより、各ダウンリンク送信機からのデータを適切に位置合わせする。その結果、データは、同期した送信機によって生成されたように見える。時間精度は、最高の1−PPSの追跡に匹敵し、3メートルの位置検出精度(1シグマ)をサポートする。
同期受信機および/または受信機のアンテナは、最高性能のために最適なGDOPに基づいて配置される。大規模な設備では、ネットワーク全体わたって3ナノ秒(1シグマ)に相当する同期オフセットを提供するように複数の同期受信機を利用することができる。同期受信機を利用することによって、ダウンリンク送信機の同期のための要件が排除される。
同期受信機ユニットは、NSAUおよび/またはLSUと通信するスタンドアローンユニットであってもよい。あるいは、この同期受信機はNSAUと一体化することができる。
無線ネットワークの例示的な位置検出機器の図を図13に示す
LTE信号を利用する、カスタマのネットワーク投資を必要としない完全自律システムの実施形態は、以下のモードで動作する。
1.アップリンクモード − 位置検出のために無線ネットワークのアップリンク(UL)信号を使用する(図16および図17)。
2.ダウンリンクモード − 位置検出のために無線ネットワークダウンリンク(DL)信号を使用する(図14および図15)。
3.双方向モード − 位置検出のためにUL信号およびDL信号の両方を使用する。
アップリンクモードでは、複数のアンテナが1つ以上のNSAUに接続されている。これらのアンテナの位置は、無線ネットワークアンテナから独立している。NSAUのアンテナ位置は、GDOP(幾何学的精度劣化度)を最小にするように選択される。
UE/携帯電話デバイスからのネットワークのRF信号は、NSAUのアンテナによって収集され、NSAUよって処理されることにより、時間区間中に、処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを生成する。当該時間区間は、目的の全ての信号の1つ以上のインスタンスをキャプチャするのに適切である。
任意には、NSAUはまた、ダウンリンク信号のサンプルを受信し、処理し、タイムスタンプを付与して、例えばUE/電話IDなどを決定するための追加情報を取得する。
キャプチャされたタイムスタンプを付与されたサンプルから、各UE/携帯電話IDと関連した関心のタイムスタンプを付与された無線ネットワーク信号とUE/セル電話機ID番号(ID)が判定(取得)される。この動作は、NSAUまたは、LSUのいずれかによって実行することができる。
NSAUは、LSUにデータを定期的に供給する。スケジューリングされていないデータが1つ以上のUE/携帯電話IDのために必要とされる場合、LSUは追加データを要請する。
ULモード動作用に無線ネットワーク基盤および/または既存のUE/携帯電話において変更/修正は必要ではない。
ダウンリンク(DL)モードでは、InvisiTrackが有効にしたUEが必要となる。また、携帯電話が位置修正を取得するように使用される場合には、携帯電話のFWが変更されなければならない。
いくつかの場合には、事業者は、BBU(ベース帯域ユニット)からのベース帯域信号を利用可能にできる。このような場合、NSAUはまた、RFの無線ネットワーク信号の代わりに、これらの利用可能なベース帯域の無線ネットワーク信号を処理することもできる。
DLモードでは、UE/携帯電話のIDと1つ以上の無線ネットワーク信号とを関連付けする必要はなく、なぜなら、これらの信号はUE/携帯電話において処理されるか、またはUE/携帯電話は、処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを定期的に生成し、これらをLSUに送信し、LSUは、結果をUE/携帯電話に折り返し送信するからである。
DLモードでは、NSAUは、タイムスタンプが付与されたRFの無線ネットワーク信号、またはベース帯域(利用可能な場合には)の無線ネットワーク信号を処理する。キャプチャされたタイムスタンプが付与されたサンプルから、ネットワークアンテナに関連付けられた無線ネットワーク信号のDLフレーム開始が判定(取得)され、それらのフレーム開始間の差(オフセット)が計算される。この動作は、NSAUまたはLSUのいずれかによって実行することができる。ネットワークアンテナのフレーム開始オフセットは、LSUに格納される。
DLモードでは、UE/電話デバイスがInvisiTrack技術を用いて自身の位置検出修正を処理/判定する場合には、ネットワークアンテナのフレーム開始オフセットがLSUからUE/電話デバイスに送信される。その他の場合には、UE/携帯電話デバイスが処理されたネットワークRF信号のタイムスタンプが付与されたサンプルを定期的にLSUに送信する場合、LSUは、デバイスの位置修正を判定し、そのデバイスに位置修正データを折り返し送信する。
DLモードでは、無線ネットワークのRF信号は、1つ以上無線ネットワークアンテナから来る。結果得られる精度に対するマルチパスの影響を回避するために、RF信号は、アンテナから傍受されるか、または無線ネットワーク機器へのアンテナ接続から傍受されるべきである。
双方向モードは、ULおよびDL動作の両方から、位置定点を判定することを包含する。これにより、位置検出精度を更に向上させることができる。
いくつかの企業のセットアップは、1つ以上のリモート無線ヘッド(RRH)を供給する1つ以上のBBUを使用し、その後、各RRHは、複数のアンテナに同一のIDを供給する。このような環境では、無線ネットワーク構成に依存して、ダウンリンクモードのネットワークアンテナのフレーム開始オフセットを判定することは必要とされないかもしれない。これは、単一のBBUのセットアップならびに複数のBBUを含む。ここで、各BBUのアンテナには、特定のゾーンが割り当てられており、隣接するゾーンカバレッジは、オーバーラップしている。
一方、複数のBBUから供給されるアンテナが同一のゾーンにおいて交互配置される構成は、DLモードのネットワークアンテナのフレーム開始オフセットを判定する必要がある。
DAS環境におけるDLモード動作では、複数のアンテナが同一のIDを共有することができる。
本発明の実施形態では、位置整合アルゴリズムは、基準信号(パイロットおよび/または同期を含む)の副搬送波からマルチパス緩和処理により生成された観測量からDASアンテナの範囲を分離し、複数のDASエミッタ(アンテナ)の範囲から位置推定を得るために拡張/展開される。
しかしながら、これらの整合アルゴリズムでは、同一のIDを発するアンテナの個数に制限がある。以下のことによって同一のIDを発するアンテナの個数を削減することができる:
1.あるカバレッジゾーンでは、セクタ化されたBBUの、異なるセクタから供給されるアンテナを交互に配置する(BBUは6セクタまでサポートすることができる)。
2.あるカバレッジゾーンでは、セクタ化されたBBUの、異なるセクタから供給されるアンテナと、異なるBBUから供給されるアンテナとを交互に配置する。
3.各アンテナに伝搬遅延要素を追加する。追加の遅延に起因するマルチパスがISI(シンボル間干渉)をもたらさないように、遅延値は、特定のDAS環境(チャネル)において遅延拡散を超えるのに十分大きいが、サイクリックプレフィックス(CP)の長さよりも小さくなるように選択される。1つ以上のアンテナに一意の遅延IDを付加することは、同じIDを発するアンテナの個数を更に減少させる。
一実施形態では、カスタマによるネットワーク投資の必要が無い完全自律システムを提供することができる。このような実施形態では、システムは、LTE帯域以外の帯域で動作することができる。例えば、ISM(Industrial Scientific And Medical)帯域および/またはホワイトスペース帯域は、LTEのサービスが利用できない場所において使用することができる。
本実施形態はまた、マクロ/ミニ/ピコ/フェムト基地局および/またはUE(携帯電話)機器と一体化することができる。一体化はカスタマによるネットワーク投資を必要とするかもしれないが、それは諸経費を削減することができ、大幅にTCO(総保有コスト)を改善することができる。
本明細書において上述したように、ダウンリンク観測到来時間差(DL−OTDOA)測位のためにUEによって、PRSを使用することができる。隣接する基地局(eNB)の同期に関して、3GPP TS 36.305(Stage 2 functional specification of User Equipment (UE) positioning in E-UTRAN)は、UEへの転送のタイミングを明記する。このタイミングは、候補セル(例えば、隣接するセル)へのeNBサービスに相対的である。3GPP TS 36.305はまた、測定のために候補セルの物理セルID(PCI)およびグローバルセルID(GCI)を明記する。
3GPP TS 36.305によれば、この情報は、E−MLC(Enhanced Serving Mobile Location Centre)サーバから配信される。TS 36.305が上述したタイミング精度を特定しない点に留意する必要がある。
また、3GPP TS 36.305は、UEが基準信号時間差(RSTD;Reference Signal Time Difference)の測定を含むダウンリンクの測定をE−MLCに返すことを明記する。
RSTDは、一対のeNB間で取られた測定である(TS 36.214 Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E―UTRA);Physical Layer measurement;Release9参照)。この測定は、隣接するセルJから受信されたサブフレームと、サービングセルIの対応するサブフレームとの間の相対的なタイミング差として定義される。測位基準信号は、これらの測定を行うために使用される。結果は、位置を計算する位置検出サーバに折り返し報告される。
一実施形態では、新たに導入されたPRSおよび既存の基準信号の両方を収容するように、ハイブリッド法を定義することができる。言い換えれば、ハイブリッド法は、PRS信号で、他の基準信号(例えば、セル固有の基準信号(CRS))で、または両方のタイプの信号で使用/動作することができる。
このようなハイブリッド法は、ネットワーク事業者が、状況やネットワークパラメータに応じて動作モードを動的に選択することができるという利点を提供する。例えば、PRSは、CRSよりも良好な可聴性を有するが、データスループットが最大7%減少することになり得る。一方、CRS信号は、スループットの減少を引き起こさない。また、CRSの信号は、先の全てのLTEリリースとの下位互換性(例えば、Release8以下)を有する。このように、ハイブリッド法は、トレードオフ、つまり可聴性と、スループットと、および互換性との間のバランスをとる能力をネットワーク事業者に提供する。
更に、ハイブリッド法は、LTEのUE測位アーキテクチャに対して透過的であり得る。例えば、ハイブリッド法は、3GPP TS 36.305フレームワークにおいて動作することができる。
一実施形態では、RSTDを測定することができ、3GPP TS 36.305に従って、UEからE−SMLCに転送することができる。
UL−TDOA(U−TDOA)は、現在研究段階にあって、来るべきリリース11において標準化されると思われる。
UL−TDOA(アップリンク)の実施形態は、本明細書で上述されており、また、図16および図17に示されている。本明細書で下記される図18および図19は、UL−TDOAの代替の実施形態の例を提供する。
図18は、1つ以上のDASおよび/またはフェムト/スモールセルのアンテナを含み得る環境を示している。この例示的な実施形態では、各NSAUは1つのアンテナを備えている。図示したように、少なくとも3つのNSAUが必要である。しかしながら、各UEが少なくとも3つのNSAUによって「聞こえ」なければならないので、可聴性を向上するように追加のNSAUを追加することができる。
更に、NSAUは、受信機として構成することができる。例えば、各NSAUは、空中で情報を受信するが、送信はしない。動作において、各NSAUは、UEからの無線アップリンクネットワーク信号を聞く(リスニングする)ことができる。UEのそれぞれは、携帯電話、タグ、および/または他のUEデバイスであり得る。
更に、NSAUは、有線サービス、LAN等といったインタフェースを介して位置検出サーバユニット(LSU;Locate Server Unit)と通信するように構成することができる。そして、LSUは、無線またはLTEネットワークと通信することができる。通信はネットワークAPIを介して行うことができる。ここで、LSUは、例えば、LTEネットワークのE−SMLCと通信することがで、LANおよび/またはWANといった有線サービスを使用することができる。
選択的に、LSUはまた、DAS基地局および/またはフェムト/スモールセルと直接通信することができる。この通信は、同一または変更されたネットワークAPIを使用することができる。
本実施形態では、位置検出のために、サウンディング基準信号(SRS;Sounding Reference Signal)を使用することができる。しかしながら、他の信号を使用することもできる。
NSAUは、UEのアップリンク送信信号をデジタル形式、例えば、I/Qサンプルに変換することができ、タイムスタンプが付与されたLSUに、変換された複数の信号を定期的に送信することができる。
DAS基地局および/またはフェムト/スモールセルは、以下のデータのうちの1つまたは全てをLSUに渡すことができる。
1)SRS、I/Qサンプル、およびタイムスタンプ;
2)サービング対象中UE IDのリスト;および
3)UE IDを有するUEごとの、SRSスケジュール(当該SRSスケジュールは、SRSスケジューリングリクエスト構成情報およびSRS−UL構成情報を含む)。
LSUに渡される情報は、上述の情報に限定されなくてもよい。この情報は、各UEのUE IDを有する各UEデバイスのアップリンク信号(例えば、UE SRS)を相関させるために必要な任意の情報を含むことができる。
LSUの機能は、UEの測距計算とUEの位置修正を取得することを包含することができる。これらの判定/計算は、NSAU、DAS基地局および/またはフェムト/スモールセルからLSUに渡された情報に基づいて行うことができる。
LSUはまた、NSAUからLSUに渡された、利用可能なダウンリンク伝送情報からタイミングオフセットを判定してもよい。
次に、LSUは、無線またはLTEネットワークにUEの位置修正やその他の計算およびデータを提供することができる。このような情報は、ネットワークAPIを介して通信することができる。
同期の目的で、各NSAUは、ダウンリンク信号のサンプルを受信し、処理し、タイムスタンプを付与することができる。各NSAUはまた、タイムスタンプを含むこのような複数のサンプルをLSUに定期的に送信することができる。
また、各NSAUは、外部信号との同期を行うように構成された入力を含むことができる。
図19は、UL−TDOAの別の実施形態を示す。図18に示したコンポーネントに加えて、この実施形態の環境は、DAS基地局および/またはフェムト/スモールセルの代わりに使用することができる1つ以上のセル中継塔を含み得る。1つ以上のセル中継塔からのデータは、UEの位置修正を取得するように使用することができる。
このように、この実施形態の利点は、1つのセル中継塔(eNB)のみを用いて位置定点を取得することを包含する。また、この実施形態では、1つ以上のeNBがDAS基地局および/またはフェムト/スモールセルを置き換えることができることを除いて、図18で記載したような同様の態様で動作するように構成することができる。
本発明の実施形態は、識別、追跡および、位置検出のための無線通信、無線ネットワークシステムおよび無線周波数(RF)に基づくシステムに関する。開示される方法およびシステムは、到来角(AOA)測位を使用する。一実施形態によれば、RFに基づく追跡および位置検出は、携帯電話ネットワークで行うが、いかなる無線システムならびにRTLS環境においても行うことができる。閉じたシステムはソフトウェアおよび/またはハードウェアにより実装されるデジタル信号処理(DSP)および/またはソフトウェア定義無線技術(SDR)を使用することができる。
本開示は、参照により引用している出願に記載される方法およびシステムを改善する。一実施形態は、AOA測位を使用する。この実施形態は、いかなるハードウェア基盤変更も必要とすること無く、現在の単一中継塔/セクタ位置検出システムおよび/または複数の中継塔/セクタ位置検出システムの位置検出精度の著しい改善を提供する。実施形態において、位置精度は、AOAおよび/またはLOB(方位線)を判定するためにTDOA(到達時間差)測定を用いて改善される。例えば、精度は、単一の中継塔/セクタ用に対して数百メートルから10メートル未満まで改善することができる。
本発明の実施形態は、全ての無線システム/ネットワークでも使うことができて、単方向、半二重および全二重動作モードを含むことができる。後述する実施形態は、OFDM変調および/またはその派生形を含む各種の変調形式を使用する無線ネットワークで動作する。従って、後述する実施形態はLTEネットワークで動作して、WiFiおよび他の無線技術を含む他の無線システム/ネットワークにも適用できる。本明細書に記載したように、LTEセルラネットワークに実装されるRFに基づく追跡および位置検出は、正確なAOA測位から大きな利益を得ることができる。
本開示は、屋内環境で特によく適しているクラスタの複数の受信チャンネルを使用する位置検出システムを更に導入し、測距信号としてDMRS(復調基準信号)の使用を導入し、1つ以上のスペクトルの推定「部分空間」および高分解能のノンパラメトリック・アルゴリズムを使用する。本開示はまた、位置検出を改善するために仰角LOB測定および判定を使用する実施形態を導き、LTEリリース11に基づいたUTDOA方法を用いるネットワークによってUEを位置検出することに関連した問題に対処する。
上記のように、LTE環境においては現在の単一中継塔/セクタ位置検出技術は、位置精度の不足が欠点である。より詳しくは、交差範囲長におけるUE位置検出誤差は非常に大きく、典型的な120度ビーム幅のサービングセクタに対して3,000メートルを超えるかもしれない。また同時に、このようなU−TDOA要件は、LTEネットワーク基盤によく適合していない。
例えば、より最近のU−TDOA位置検出方法(LTEリリース11)は、UEが少なくとも3つの中継塔によって検出可能であることを要求し、セルの明確な位置およびセル間の基準信号のよく同期した相対的タイミングを要求し、または、セルのタイミングオフセットについての正確な知識を20ns未満の精度で要求する。いずれの要件も、通常のネットワーク基盤では保証されない。しかしながら、これらの要件を満たしたとしても成功が保証されるわけではなく、その理由は、a)実際には、4つの中継塔によって検出されることがしばしば必要であり、そしてb)ハンドセットまたはUEがサービングセル/中継塔の近くにあるときには、「無信号円錐域」効果が発生するからである。
「無信号円錐域」効果は、サービングセル/中継塔の近くにあるときに、ハンドセットまたはUEが送信電力を減少することを含む。送信電力の減少は、サービス中ではない隣接した中継塔に対して、ハンドセットの検出可能性をサービス中ではない隣接した中継塔によって低下させるという可聴性課題を生じさせる。従って、上記の全てのために、TDOAの正確な同期を必要としない、そして、無信号「円錐」を緩和するかまたはそれが緩和することができないときに代替策をそれに提供するソリューションが必要である。更にまた、位置検出精度へのマルチパスの影響を緩和する必要がある。
図20は、3つのLTEセクタ(すなわち、第1セクタ2010、第2セクタ2020および第3セクタ2030)を含む無線中継塔2000の実施例を表す。上記のように、所与のLTE帯域のために、代表的なマクロセルMIMOセクタは、一組のアンテナアレイを収容している各アンテナ筐体を有する一対の水平に分離されたアンテナ筐体を使用する。例えば、第1セクタ2010はアンテナ筐体2012および2014を使用し、第2セクタ2020はアンテナ筐体2022および2024を使用し、そして、第3セクタ2030はアンテナ筐体2032および2034を使用する。このように、図20は、代表的二重アンテナアレイ筐体セクタ構成に配置されるこのような6つのアンテナアレイ筐体を表す。
各LTEセクタは、約120度のアンテナ方位角(水平)メインローブビーム幅を有する。仰角(垂直)メインローブビーム幅は、約10〜20度しかない。これらのビーム幅構成は、アンテナ効率を改善することができて、干渉を低減することができる。この構成を達成するために、2つのアンテナアレイ筐体のLTEアンテナセクタの各アンテナアレイ筐体(単一の筐体)は、垂直方向(すなわち、一列)に置かれる複数のアンテナ要素を含むことができる。例えば、代表的LTEアンテナ筐体アレイは、一列につき8つのアンテナ要素を含むことができる。
アンテナ要素のこの構成は、各要素からデータ(信号)にアクセスすることができたならば仰角平面のAOAの判定に役立つであろうが、これらのような現在のLTEアンテナの実装では各要素から受信チャネルまで信号を通過することができない。このように、個々の信号が、仰角平面のAOAの判定のために使用可能である。言い換えれば、各アレイ筐体は、約120度の方位角(水平)メインローブビーム幅および約10〜20度の仰角(垂直)メインローブビーム幅を有するスタンドアロン型アンテナとして動作している(使用されている)。一般的に、MIMOセクタアンテナは上述したアンテナアレイ筐体の2つから成り、各々がスタンドアロン型アンテナとして動作する。LTEアンテナを制御しているネットワーク事業者が個々の信号上に渡されなければならない場合、更に後述するように、それらの信号をAOAの判定のために使うことができる。
LTEネットワークはMIMO技術を使用し、それは、基地局におけるネットワーク性能の能力および他の状況を改善する。UEが主に(仰角的に)比較的狭い方位角平面において分散されているので、各LTEセクタアンテナは上述したアンテナアレイ筐体の(水平に間隔を置いた)2つ以上を含み、それがまだ方位角平面のAOAの判定のために使用可能である。一実施形態は、各セクタに対してeNBセクタ二重MIMOアンテナを使用(活用)する。各LTEアンテナセクタは、約120度のビーム幅を有し、セクタのアンテナアレイ筐体(例えば第1セクタ2010の筐体2012および2014)は、アンテナアレイの間の距離「d」だけ分離され、「d」は概して1.2〜1.8mである。実施形態がアンテナセクタの2つのアンテナの使用を開示しているが、2つ以上のいかなる数のアンテナアレイを使うこともできる。
開示された実施例は、ネットワークに基づくUE追跡および位置検出の既存のU−TDOA技術(LTE 3GPPリリース11)を改善する。このU−TDOAアプローチがアップリンク到達時間差技術に、そして、マルチラテレーション方法に依存することができる点に留意する。U−TDOA技術は、測距信号としてSRS(サウンディング基準信号)を使用することもできる。記載された実施形態はまた、いかなる基盤変更も必要とすることの無く、現在の単一中継塔/セクタ位置検出技術の精度を改善する。現在の単一中継塔/セクタ位置検出技術は、サービングセルのサービングセクタビーム幅とともに、サービングセルで測定される、RTT((往復時間)、タイミングアドバンス(TADV)とも呼ばれる)を利用する位置検出プロセスを使用することができる。図10を参照。
一実施形態において、SRSシンボルは周知のUEによって測距信号として送信され、それは2つのMIMOセクタアンテナからの到来角(AOA)測定のためにマクロ/無線中継塔上の既存の基盤MIMOセクタアンテナ対を活用する。MIMO機能性をサポートするために、各セクタアンテナ対は、MIMO RFトランシーバを含んで、完全に搬送波周波数/位相およびタイミングにコヒーレントである送信/受信チャネルを有する。一実施形態はまた、MIMO機能性をサポートする各セクタアンテナ対受信チャネルの発展NodeB(eNB)を活用する(各セクタアンテナ対受信/送信チャネルのeNBは完全に搬送波周波数/位相およびタイミングにコヒーレントである)。
本明細書において記載されるAOAシステムおよびプロセスは、図21において表される従来の位置方法への独自の適応である。図21は、アンテナアレイの各要素2100からの信号が受信チャネル渡された場合、AOAがどのように判定されるかの、従来のAOA位置検出の概念的な説明を与えるものであり、ここでは各アンテナ要素2100によって収集される測距信号の位相差(θ)に基づいてAOAが判定される。図21においては、6つのアンテナを有するアンテナアレイが示される。しかしながら、本原理は、2つ以上のいかなる数に対しても機能することができ、本開示に基づいた試験結果は2つのアンテナが充分であることを確認している。
到達角は、各アンテナによって収集される信号の位相差を比較する一対の時間、位相および周波数コヒーレント受信側システムを供給している2つ以上の密接に間隔を置いたアンテナを有する狭帯域のエミッタで、非常に効果的に機能する。その位相差は、AOAに変換される。AOA方法は、狭帯域の信号上で最善の機能を果たす;一般に、それらは、SRSのような瞬時広帯域信号ではうまく機能しない。一方で、到達時間差(TDOA)技術は、狭帯域の信号に対してうまく機能しない(そして、単一の非変調搬送波上ではまったく機能しない)が、瞬時広帯域信号に対しては良く機能する。
本明細書において開示されるようにMIMOアンテナセクタおよびSRS(測距用)がAOAの判定のために使われることができる一方で、従来のAOA位置検出概念と比較して、2つのMIMOセクタアンテナおよび測距信号としてSRSを使用することと関連したいくつかの固有の課題が、まだある。これらの固有の課題に対して、本明細書において更に述べられるように、正確なAOA測定を行うために緩和が必要となる。
最初に、SRSシンボル信号が測距のために使われる場合、SRSシンボル信号の帯域幅が非常に広く、20MHzまで達し得るので、課題がある。図21に関して上記のように、従来のAOA技術は、各アンテナアレイ要素2100によって収集される測距信号の位相差を比較して、それらの位相差を電波のAOAに変換する。位相差が測距信号周波数の関数でもあるので、従来のAOA方法は狭帯域幅測距信号によって効果的に機能して、SRS信号のような瞬時広帯域信号に対して良く機能することができない。
第2には、マルチパス効果のため、代表的なAOAソリューション(上記の通りの)は、複数の方位線(LOB)を作り出す。その結果、直接見通し線(DLOS)と関係している望ましいLOBは、複数のLOBの中から判定することができないことが多い。
第3には、セクタのための2つのアンテナアレイで位相差の2πラップアラウンドがある。従来のAOA技術は、図20のように、密接に間隔を置いたアンテナアレイに基づいてもよい。各アンテナアレイは、他のアンテナに対して搬送波周波数の1波長より短く(最適な間隔は2分の1波長である)配置されることを、通常必要とする。しかしながら、これは、セルセクタMIMOアンテナスペーシングのケースではない。例えば、700MHz帯域において作動するLTE帯域12アップリンクのための波長は0.422メートルつまり42.2cmであるが、MIMOセクタアンテナは、一般的に1.2〜1.8mであるdで分離され、それは複数の波長をカバーする。これは、2つのアンテナアレイで位相差の2πラップアラウンドに結果としてなる場合があり、AOA曖昧性を生じ得る。
第4には、より大規模なアンテナアレイ分離または反射によるAOA曖昧性は、望ましい(真の)LOBの鏡像の存在から生じる場合がある。アンテナアレイは、電波入射の実際の角度θ(図21参照)とその鏡像−θの間を区別することができない。従って、2つのLOBが存在し、その1つはハンドセット(UE)が位置する望ましいLOBであるが、他方はLOB鏡像であって望ましくない。
本明細書において記載されるAOAシステムおよび方法は、周知のUEによって送信されるSRSシンボルのベース帯域方式のスペクトルを利用する。一旦周知の位相符号化が取り除かれると、結果として得られるバーストはOFDM波形の複数の直交非変調副搬送波である。このポイントで、(本発明に対する関連出願にて説明したような)マルチパス緩和を用いて、各アンテナへの電波の飛行時間差(TDOA)から生じる副搬送波の間の小さい線形位相シフトを推定することができる。
これらの(全ての副搬送波にわたる)位相シフトの判定は、次に明白なAOA LOBを判定するために用いることができる。本明細書において記載されるシステムおよび方法の実施形態は副搬送波の全ての中の情報の全てを使用し、それは10MHz帯域幅(48リソースブロック)のSRS信号に対して288副搬送波である。
相互参照された出願に記載されるマルチパス緩和は、マルチパスから直接パスを分解することができて、直接見通し線(DLOS)に対する飛行時間差、すなわち、最短パスに対する時間差の推定を提供することができる。この方法は、SRS測距信号の広帯域幅および前述のSRS測距信号マルチパスに関連したAOA曖昧性問題を解決することができる。このアプローチはまた、マルチパスによって生じる複数のLOB問題に対処することができ、直接見通し線(DLOS)パスと関係している望ましいLOBを作り出すことができる。
マルチパス緩和エンジン/アルゴリズムは、高分解能のスペクトルの推定および統計的アルゴリズム(解析)を使用し、例えば、MP(Matrix Pencil)、MUSIC(Multiple Signal Characterization)またはroot−MUSIC、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、MTM(Multitaper Method)、PHD(Pisarenko Harmonic Decomposition)、およびRELAX(Relaxation)アルゴリズム(解析)がある。
MTMは一組の直交テーパを使用して、電力スペクトルの統計的に独立な推定を組み立てることができる。それから、Fテストを用いて、各スペクトルビンの予想される自由度を、個々のマルチテーパスペクトルから計算される推定値と比較する。マルチパス帰還が正反射により付加的な自由度を含む一方で、直接パス帰還は復調の後に単一線成分を有すると予想される。指定された信頼水準でのFテスト比率の閾値処理は、スペクトルの線成分を識別するために用いることができる。それから、識別された線コンポーネント周波数は、直接的なパス遅延のノンパラメトリック推定を計算するために、または、所望の直接パス出力周波数を高分解能スペクトル推定値から選択する際の援助として用いることができる。
マルチパス緩和は、SRS信号ベース帯域で動作し、搬送波周波数では動作しない。これは、ベース帯域方式の信号スペクトルにおいて、最も高い周波数が搬送波周波数の分率(例えば10MHz対700MHz)であるので、位相差AOA曖昧性の上述した2πラップアラウンドを解決することを可能にする。
前述の第4のAOA曖昧性項目(LOB鏡像)の緩和は、サービングセクタの周知の放射パターンに基づく。サービス対象のハンドセット(UE)が常にサービングセクタ放射パターンの中であるので、望ましいLOBは固有識別することができる。サービス中継塔/セクタの真のLOBについてのこの知識は、同じ中継塔の1つ以上の付加的な非サービス中セクタおよび/または1つ以上の非サービス中の隣接した中継塔セクタから、1つ以上の付加的なLOBの判定を可能にする。例えば、正確にUEがサービングセクタの主ビームローブセンターラインに対して存在するところに応じて、追加塔セクタの1つ以上は、UEも見て、ユニークなLOB(複数可)を生成もすることが可能である。異なるセクタから2つ以上のLOBを使用することは、位置精度を更に強化する。大部分の位置ケースは、このシナリオに入る。
本明細書において改善されている方法およびシステムの実施形態は、2台の受信機に対して、TDOA方位線(LOB)が双曲線であり、そして、これらの受信機のアンテナが密接に間隔を置かれるときに、LOBは、直線であるAOA LOBに接近している。本開示は、2つ以上の密接に間隔を置かれたアンテナの間のTDOA測定から始まるが、前の方法およびシステムと異なり、測距信号(SRS)の信号構造に基づいて、実際のAOA LOBを判定する。その結果、位置検出精度は、非常に改善される。また、測距信号検出(別名「トリガリング」)プロセスは、前に開示された関連した方法およびシステムでは開示されなかった。
本開示を実装するためのプロセスフローの一実施例は、ここで図22を参照して説明される。1つ以上の中継塔/セクタのセクタMIMOアンテナ対2210からの信号は、二重コヒーレント受信チャネル2220に渡される。二重コヒーレント受信チャネル2220は、I/Qサンプルを生成し、多くのこれらのサンプルは、位置検出プロセッサ2260の制御によってI/Qサンプルバッファ2230に周期的にバッファリングされる。このように、二重コヒーレント受信チャネル2220およびI/Qサンプルバッファは、例えばアップリンクFDDサブフレームの最後のシンボルでSRSに割り当てられる、LTEサブフレームスロットシンボルからならびにその周辺から、I/Qサンプルをバッファリングするかまたは収集する。測距信号検出プロセッサ2240は、これらのバッファリングされたI/Qサンプルを受信して、SRSを探してSRSシンボルの開始点を確定する。
位置検出プロセッサ2260は測距信号検出プロセッサ2240にSRSパラメータを提供し、測距信号検出プロセッサ2240は各受信チャネルからバッファ付きI/Qサンプル上の整合フィルタリングを実行する。この整合フィルタの出力は、SRSシンボルの開始点に最も近いI/Qサンプルを判定するために検出されるピークである。
復調されたSRSリソース要素を作るための48リソースブロックを有するSRS帯域幅に対して、1024ポイントのFFTが適用される。これは、30.1dBの処理利得による積分プロセスである。この30dB処理利得は、−10dBから−12dBまでのSNRの、信頼性が高い測距信号検出を可能にする。一実施形態において、測距信号検出は、予め定められた閾値、すなわち、所望の検出パフォーマンス、例えば15dBに基づく計算値である閾値SNRを超えると信頼性が高い。当業者は、信号検出プロセッサによるこのような測距またはSRSシンボル信号検出が「トリガリング」としても知られていることを認めるであろう。あるいは、この測距信号検出は、「リンククロージャ」と呼ばれる。信頼性が高いAOA観測量は、リンククロージャ無しで判定することができない。上述した30dB処理利得および整合フィルタリングは、データ/音声通信には利用可能ではない。その結果、信頼性の高い位置検出は、信号がデータ/音声通信には他の場合には不適当な(弱すぎる、および/または状態が悪すぎる)ときでも、達成することができる。
一実施形態において、SRS開始点が各チャネルにおいて同じである場合、最も強い信号の第1のサンプル推定が使われる。これは名目上サービングセルセクタアンテナからのものであるが、必ずしもいつもそうというわけではない。例えば、UEが2つのセクタの方位角方向の間に位置するときに、いずれのセクタも伝搬パスに応じてより強い信号を出力することができる。しかしながら、マルチパス緩和プロセッサ2250は、更に後述するが、存在もするかもしれない各上述したパスおよび他のパスを検出することができる。
それから、SRSシンボル開始点へのポインタは、マルチパス緩和プロセッサ2250に、測距信号検出プロセッサ2240によって渡される。マルチパス緩和プロセッサ2250は、SRS副搬送波データ(ベース帯域)の全てを利用して、各内部セクタアンテナアレイ2210に、DLOS(直接見通し線)飛行時間のサブサンプル推定を提供し、そこからマルチパス緩和プロセッサ2250は明白に、極めて正確に、2つの内部セクタアンテナアレイ2210の間のTDOAを推定する。TDOA推定は、位置検出プロセッサ2260に送信される。
位置検出プロセッサ2260は、到達位相差をTDOA推定から判定する。TDOA推定と結合されたその到達位相差は、明白で極めて正確なAOA推定を作成する。位置検出プロセッサ2260は、それから、アンテナアレイセクタに対するAOA(すなわち、信頼性が高いAOA観測量)を判定し、それが次に(位置検出プロセッサ2260によって)用いられて、そのアンテナアレイセクタ(すなわち、アンテナアレイが取り付けられる中継塔)からUEのLOBを判定する。その後で、位置検出プロセッサ2260は、望ましいLOBを、例えばLOB曖昧性緩和を実行して、判定することができ、そしてそれはUEの位置を判定するために用いる。
追跡および位置検出誤差を更に低減して、微弱な信号および悪い状態にある信号に基づいた位置検出の信頼性を更に改善するために、一実施形態は、位置整合方法、最尤推定(例えば、ビタビアルゴリズム)、および/または最小分散推定(例えば、カルマンフィルタ)を含むことができる1つ以上のノイズ低減および/または後処理技術を実行することができる。ノイズ低減方法は、コヒーレント加算、ノンコヒーレント加算、整合フィルタリングおよび/または時間的ダイバーシティを含むこともできる。
前述したように、開示されるシステムおよび方法はSRS副搬送波データの全て(48リソースブロックの場合には288副搬送波)を利用する。その結果、信頼性が高い位置検出は、それらがあまりに弱いかまたは状態が悪いので、データ/音声通信には不適当である信号を使用して、達成することができる。これは、従って、サービングセルがEs/N0、例えば、SNRおよび他の信号パラメータを高信頼性通信に充分であるように維持するので、「無信号円錐域現象」を除去する。加えて、一実施形態では、コヒーレント加算、ノンコヒーレント加算、整合フィルタリングおよび時間的ダイバーシティなどのノイズ低減方法を使用することにより、微弱な信号および悪い状態にある信号の位置検出信頼性を更に改善することができる。
AOA推定の角度誤差はAOA推定の標準偏差で測定され、それはSNR(Es/N0)に依存する。単一の中継塔/セクタに対して、誤差だ円は、範囲方向(すなわち、UEから無線中継塔までの距離)に沿った1本の軸、および、例えば、範囲方向に対して垂直な交差範囲方向の他の軸を有する。シミュレーションされたデータを使用して実行したテストに基づけば、AOA推定誤差の標準偏差は、より良好なEs/N0によって減少する。例えば、−6dBのEs/N0は、0.375度の標準偏差と相関する。
下記の表1は、Es/N0の関数として、交差範囲AOA推定角度誤差標準偏差に対するシミュレーションされた結果を要約する。この表において、交差範囲乗数(すなわち、乗算係数)は、範囲と交差範囲誤差標準偏差の関係を判定する。交差範囲標準偏差は、
によって判定され、ここでσ
fは表1において与えられる。シミュレーション結果は、30dB処理利得(48リソースブロックのSRS帯域幅)での整合フィルタプロセスに基づく。
表1. 交差範囲誤差に対する乗算係数
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Es/N0(dB) 交差範囲乗数(メートル当たりのメートル):σf
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−9 0.00870
−6 0.00670
−3 0.00440
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表1から、1500メートル範囲(すなわち、UEから無線中継塔までの距離)で、交差範囲(すなわち、UEの位置の範囲に対して垂直な)標準偏差誤差は、−9dBのEs/N0で6.5メートル、あるいは−3dBのEs/N0で3.3メートルである。注記:これらの位置検出精度レベルは、マルチパスが存在する中で達成された。
上記のように、実施形態は、他の場合にはデータ/音声通信には不適当な(弱すぎる、および/または状態が悪すぎる)信号に基づくときでも、例えばEs/N0が低すぎるときでも、信頼性が高い位置判定の生成を可能にする。この能力は、リンククロージャおよび信頼性が高いAOA観測量を2台以上の中継塔から作り出す可能性を増加させることができる。一実施形態において、複数の中継塔からAOA観測量が利用できるときに、独立範囲推定(例えば、RTT)を使用すること無しに強化したUE位置検出精度を作ることができる。精度のこの改善が可能なのは、部分的にはマルチパス緩和のためである。
例えば、2つの中継塔からUE LOBが利用できて幾何学的精度低下率(GDOP)が2を超えない1つのケースでは、2つのLOBに対する合わせた交差範囲誤差標準偏差は、以下の通りである。
別のケースにおいて、UE位置がサービングセクタビームローブセンターラインからいくらかの距離だけ離れている場合、1つ以上の他の中継塔セクタがUEに「遭遇して」、同様にユニークなLOB(複数可)を生成することが可能になる見込みがある。異なるセクタからこれらの2つ以上のLOBを使用することが可能であることで、位置検出精度が更に強化される。ほとんどの位置検出判定はこの後者のシナリオに含まれる可能性があり、それは、単純な確率だけに基づいて、UEが大半の時間ではシナリオセクタビームローブ中心線上にある可能性が低いからである。
信頼性が高いAOA観測量を2台以上のセクタ/中継塔から作り出す能力は、無信号円錐域現象も実質的に低減する。更に、サービングセクタが、Es/N0、例えば、SNRおよび他の信号パラメータを高信頼性通信に充分であるように保つので、この無信号円錐域効果は、サービングセクタAOA+RTT(往復時間)位置検出方法を使用するときには除去される。
現在のLTE基盤は方位角AOA推定をサポートするが、仰角(すなわち、二次元(2D)角度(AOA)を推定することには向かない点に更に留意しなければならない。また同時に、例えば気圧の測定で、UEが地上にあるか、またはその仰角が分かっていると仮定すると、方位角および仰角の両方のAOA角度(LOB)についての知識は独立の(例えば、RTT)範囲推定を必要とせずに、単一のセクタ/塔からUE位置を判定することを可能にすることができる。将来のLTE展開は方位角および仰角通信をサポートするセクタアンテナアレイトポロジを有するかもしれないが、それは現在の実施形態を更に強化するのに役立つ。
更に、非常に狭い垂直放射パターンを達成するために、全ての現在使用されているセクタアンテナアレイ筐体は、例えば8つのアンテナ要素を有する垂直アンテナアレイから成っている。現在、これらの垂直要素は内部的にセクタアンテナユニットに組み込まれており、外部からアクセスできない。しかしながら、このセクタアンテナ構造は将来変化する可能性があり、AOA推定の更なる可能性を開く。例えば、方位角および仰角アンテナアレイの両方から信号にアクセスすることができるようになると、本発明のAOA推定プロセスの実施形態は、方位角および仰角LOBを単一の中継塔および/または複数の中継塔から作り出している両方のアレイ(またはアレイの中のアンテナ要素の任意の組合せ)に、適用することができる。
一実施形態において、本開示のシステムおよび方法は、既存の無線ネットワーク基盤コンポーネントおよび/またはリソース(例えば受信チャネル用の基地局(eNB)および/または位置検出プロセッサ2260が実装されるE−SMLC(Evolved Serving Mobile Location Centre)を使用して実装される。他の実施態様において、本開示のシステムおよび方法は、既存のネットワーク基盤コンポーネントおよび/またはリソースに依存せずに実装される。いくつかの実施形態では、独立している専用コンポーネント、例えば位置検出プロセッササーバは、ネットワーク基盤と通信することができる。更にもう1つの実施形態は、無線ネットワーク基盤コンポーネント/リソースを独立した専用のコンポーネント/リソースと組み合わせる。
一実施形態は、基地局受信チャネルを利用する。別の実施形態は、セクタアンテナアレイ受信信号を基地局受信チャネル(受信機)と共有している独立した受信チャネルを有することができる。これらの受信チャネルは、外部同期入力、例えばGPS、NTP(Network Time Protocol)、IEEE1588−PTP(Precision Time Protocol)などを含むことができる。
また別の実施形態においては、受信チャネルを独立した(ネットワーク基盤から)アンテナアレイに接続して、複数の受信チャネルをクラスタに組み込むことができる。アンテナアレイおよび受信チャネルは、複数のアンテナアレイおよび受信機(受信チャネル)クラスタとして構成することができる。各クラスタの中で、受信機は周波数/タイミング/位相コヒーレントである。しかしながら、各アレイ受信機クラスタの間の同期要件は、コヒーレンシーを必要とはしない。
このような実施例では、1つ以上のクラスタはグループ化してグループユニットを形成することができる。複数のグループユニットを展開することができる。グループユニットは同期することができるが、同期要件は緩和されて、コヒーレンシーは必要とされない。複数のグループユニット同期は外部タイミング入力、例えばGPS、NTP(Network Time Protocol)、IEEE1588−PTP(Precision Time Protocol)などによって達成することが出来る。処理ソフトウェアはネットワーク基盤またはネットワーク基盤と通信する独立サーバで実施することができる。また、各グループユニットは、プロセスソフトウェアのいくつかを収容する追加の計算リソースを含むことができ、例えば、UE位置の判定処理が複数のグループユニットと独立サーバまたはネットワーク基盤の間に分散される。
グループユニット2300の位置実施例は、図23に示される。この実施形態において、グループユニット2300は、4U×19インチ(48.3cm)の筐体2310内に収容される。図23によって表される実施例において、グループユニット2300は2つのコヒーレント受信機カード2320、I/Qサンプルバッファカード2330、同期モジュールカード2340、付加的な計算リソースカード2350、電源2360、および複数の外部タイミング入力2370を含む。
動作中にグループユニット(例えば、図23のグループユニット2300)によって行うプロセスフローの一実施例は、図24に関して以下に説明する。複数のアンテナアレイ2410からの信号は、コヒーレント受信機クラスタ2420に渡される。コヒーレント受信機クラスタ2420は、I/Qサンプルを生成する。同期モジュール2440は多くのこれらのI/Qサンプルを制御し、それらはI/Qサンプルバッファ2430に周期的にバッファリングされる。測距信号検出プロセッサ2460は、SRSを探して、SRSシンボルの開始点を確定する。独立の位置検出プロセッササーバ2480は、付加的な計算リソース2450によってSRSパラメータを測距信号検出プロセッサ2460に提供し、それから、それが各受信チャネルからのI/Qサンプルの整合フィルタリングを実行する。この整合フィルタの出力は、SRSシンボルの開始点に最も近いI/Qサンプルを判定するために検出されるピークである。
I/Qサンプルバッファ(複数可)は、測距信号検出プロセッサ2460およびマルチパス緩和プロセッサ2470によって共有される。測距信号検出プロセッサ2460は、I/Qサンプルバッファ(複数可)をSRSシンボル開始点で検索して、そして、マルチパス緩和プロセッサ2470(相互参照された出願に記載される)に、シンボル開始点バッファ位置(アドレス)を提供する。マルチパス緩和プロセッサ2470はSRS副搬送波データ(ベース帯域)を利用して、UEからアンテナアレイ2410の各アンテナまでのDLOS(直接見通し線)飛行時間のサブサンプル推定を提供する。一実施形態において、マルチパス緩和プロセッサ2470はSRS副搬送波データ(ベース帯域)の全てを利用して、DLOS飛行時間のサブサンプル推定を提供する。これらのDLOS飛行時間推定に基づいて、マルチパス緩和プロセッサ2470または付加的な計算のリソース2450がアンテナアレイ2410の間の明白なTDOA推定を判定する。
このプロセスの一部として、多くの判定が、位置検出プロセッサ2480または付加的な計算リソース2450によって実行することができるか、またはこれらのエンティティ/要素の間に分配される。これらの判定は、以下を含む:(i)TDOA推定から到達位相差を判定すること、(ii)アンテナアレイ2410に対するAOA観測量を判定すること、(iii)判定されたAOA観測量からの情報を用いてアンテナアレイ2410からUEのLOBを判定すること、そして、(iv)例えば、LOB曖昧性を取り除くことによって望ましいLOBを判定すること、である。これらの判定は、マルチパス緩和プロセッサ2470または付加的な計算のリソース2450、またはそれらの組み合わせによって展開されるTDOA推定に基づく。
これらの算出の結果は、位置検出プロセッサ2480によって集めることができる。あるいは、測距信号検出プロセッサ2460およびマルチパス緩和プロセッサ2470の機能性は、付加的な計算リソース2450において実施することができる。
あらゆる残りの追跡および位置検出誤差を低減し、そして微弱な信号および悪い状態にある信号の位置検出信頼性を更に改善するために、一実施形態は、位置整合方法、最尤推定(例えば、ビタビアルゴリズム)、および/または最小分散推定(例えば、カルマンフィルタ)を含む1つ以上のノイズ低減および/または後処理技術を実行することができる。ノイズ低減方法は、コヒーレント加算、ノンコヒーレント加算、整合フィルタリングおよび/または時間的ダイバーシティを含むことができる。
同期モジュール2440によって行うプロセスフローの一実施例は、コヒーレント受信機クラスタ2420およびI/Qサンプルバッファ2430と関連したコントローラに周波数/時間/位相にコヒーレントなクロックおよび他のタイミング信号を提供することができる。同期モジュール2440は、クロックおよび他の同期信号を外部の時間同期2490、例えばGPS/GNSS同期またはイーサネット(登録商標)同期から入力される1つ以上の外部信号と同期させることもできる。同期モジュール2440は、付加的な計算リソース2450および位置検出プロセスサーバ2480と通信することもできる。
一実施形態において、各受信機クラスタ2420からI/Qサンプルバッファ2430に収集された(バッファリングされた)I/Qサンプルは、時間順に整列配置することができる。図25に示すように、この機能はI/Qサンプルバッファ2430の一部であるコントローラ2535によって実行することができる。I/Qサンプルバッファコントローラ2535は、コヒーレント受信機クラスタ2420の各受信機2525からの多くのサンプルを、I/Qサンプルバッファ2430の各バッファに割り当てて格納する。同期モジュール2440は、IおよびQサンプルコマンド/制御信号およびデータ2543によって、収集される(格納される)I/Qサンプルの数を制御することができる。同期モジュール2440は、クロックおよび他のタイミング信号2545によって、I/Qサンプル収集プロセスを有効にする(起動する)信号を発生させることもできる。このプロセスは、指定された数のI/Qサンプルが転送されてしまうと、自動的に停止することができる。
多くのバッファ整列方法/技術を用いることができ、各バッファの先頭の単純なタイムスタンプから標識シーケンスをI/Qサンプルストリームに挿入することまでの範囲にわたる。これらの技術は、リアルタイムに、または(後で)オフラインで、I/Qサンプル整列のために使用可能である。実施形態が整列のために標識シーケンス機構を現在は使用しているが、その各種の修正、適合および別の実施形態も行うことができる。例えば、整列のプロセスは、I/Qサンプルバッファコントローラ2535、測距信号検出プロセッサ2460および/または付加的な計算リソース2450、またはそれらのいくつかの組み合わせによって実行することができる。
例えば、測距信号検出プロセッサ2460は、SRSを探すことができて、SRSシンボルの開始点を判定することができる。検索プロセスは、バッファリングされたフレーム内のSRS信号の位置が検索の前に推定することができる場合、更に加速することができる。従って、一実施形態では、コヒーレント受信機クラスタ2420の1つ以上は、アップリンクモードからダウンリンクモードに、同期モジュール2440コマンドの下で切替えられる。その後で、同期モジュール2440コマンドの下で、各受信機2525から多くのI/QサンプルはI/Qサンプルバッファ2430の個々のバッファに格納することができ、ここでI/Qサンプルバッファコントローラ2535は、I/Qサンプルを個々のバッファに格納することに加えて、各バッファの先頭にタイムスタンプを提供することができる。測距信号検出プロセッサ2460および/またはグループユニットの別の要素は、個々のバッファのダウンリンクフレーム開始時間を判定することができ、その後タイムスタンプに対する各サービングセルフレーム開始時間を推定することができる。
それから、この位置検出ダウンリンクフレーム開始時間情報は、同期モジュール2440に転送される。同期モジュール2440は、I/Qサンプルバッファコントローラ2535のタイマ/カウンタと同期するタイマ/カウンタを有することができる。タイムスタンプおよび位置検出ダウンリンクフレーム開始時間に基づいて、同期モジュール2440は1つ以上のサービングセルに対する近づくダウンリンクフレーム/サブフレーム時間を予測することを可能とすることができる。
あるいは、同期化モジュール2440は、I/Qサンプル収集プロセスを起動することができる。それから、トリガーはタイムスタンプを付与されてもよく、バッファ整列は要求することができ、そして、各サービングセルフレーム開始時間はバッファの開始(トリガー)と関連して推定することができる。それから、同期モジュール2440は、それぞれの個々のバッファのダウンリンクフレーム開始時間を判定することができ、その後タイムスタンプに対する各サービングセルフレーム/サブフレーム開始時間を推定することができる。注記:クラスタにおいては全ての受信機がコヒーレントであるので、各バッファをクラスタ内で別々にタイムスタンプ付与および/またはマーキングすることは必要ないであろう。
アップリンクフレーム/サブフレーム開始時間はタイミングアドバンスを介してダウンリンクフレーム/サブフレーム開始時間と相関しており、それは各UEのためのeNBにとって分かっているものであり、UEにおける、受信ダウンリンクサブフレームの開始と送信されたアップリンクサブフレームの間の負オフセットである。アップリンクフレーム/サブフレーム内のSRS位置が固定でかつ周知の先験的なものであるので、同期モジュール2440は近づくSRS信号時間を推定することが可能であり得て、この情報は測距信号検出プロセッサ2460により用いられる。また、eNB(複数可)は、UE、SFN(システムフレーム数)当たりのSRSパラメータおよび各サービス対象UEに対するタイムアドバンス情報またはRTT(往復時間)を、位置検出プロセッササーバ2480に提供し、そしてそこから同期モジュール2440およびグループユニット内の他のエンティティにそれを渡す。
あるいは、SFN情報は、同期モジュール2440および/またはグループユニット内の他のエンティティによって導出されてもよい。1つ以上のSRSを見つけて、SRSパラメータを使用することからSRSおよびダウンリンクフレーム関係を判定することもできる。位置検出動作の間、実際のSRS位置は、同期モジュール2440および/またはグループユニット内の他のエンティティによって推定された位置/ウィンドウと比較することができ、そして、同期モジュール2440にフィードバックされて、SRS位置推定を調整する。
アップリンクSRSタイミングを推定した後に、同期モジュール2440は、コヒーレント受信機クラスタ2420にアップリンクモードに切り換え復帰するよう命令することができる。このコマンドの後、位置検出プロセッササーバ2480は開始/再起動することができる。上述したSRS信号位置推定プロセスは、位置検出プロセッササーバ2480または付加的な計算リソース2450からのコマンドによって再開することができる。
上記のように、ネットワークに基づく位置検出標準において考察された標準化されたTDOAには、UE可聴性/検出可能性問題および精度に対する厳格なネットワーク同期(20ns未満)という要件を含んだ欠点がある。しかしながら、これらの問題が緩和され得る場合、TDOAおよびAOA共同の追跡位置検出は実行することができる。マルチパス緩和エンジン2470は、複数の中継塔(サービングおよび隣接中継塔)の正確なTDOA推定を作り出すことができ、そして、位置検出プロセッササーバ2480の機能性は、AOAおよびTDOA共同の、または単一のTDOAの位置検出および追跡をサポートすることもできる。
そのような1つの実施例は、クラスタの複数の受信チャンネルを統合する上述した実施形態である。この実施形態では、標準化されたTDOAの欠点を緩和することができ、それは、クラスタ内およびクラスタ間の本来の同期能力、ならびに、より多くのクラスタ、すなわちアンテナアレイを追加して可聴性/検出可能性および無信号円錐域問題を緩和する能力によるものである。
上述した実施形態の1つ以上が測距信号としてSRSを使用するので、これらの実施形態は全てのハンドセットおよびUE電話で機能することができる(そして行うことができる)が、その理由は、SRS送信が無線ネットワーク制御プレーンの一部であり、ハンドセット/UEによってではなくネットワーク基盤によって制御されるからである。
同じように、本明細書において記載されるプロセスは、復調基準信号(DMRS)に直接適用することができ、つまり測距信号として使用される。DMRSが、チャネル推定のために、そして、コヒーレント復調のために使われる。SRSと同様に、DMRSはUE/ハンドセットからのアップリンク送信の一部である。DMRS信号構造はSRSと同一であり、本明細書において記載される同じ方法は、上記のデバイスに対するネットワーク基盤または変更を必要とすることなくDMRSを用いて機能する。DMRS信送がアップリンク送信の一部であり、UEがアイドルモードであるときにも送信されるので、DMRSは全てのハンドセット/UE電話によって送信される。
それでも、SRSまたはDMRS信号を使用することの違いがある。SRSは、多数のリソースブロック、すなわち広帯域幅信号、例えば、10MHz全体にわたるように構成することができ、AOA誤差の標準偏差は、より大きい帯域幅によって減少する。対照的に、DMRSは通常は狭帯域であり、より低い精度に結果としてなる。また、DMRSはSRSの帯域幅依存的な処理利得を有しておらず、隣接した非サービング中継塔から作り出す信頼性が高いAOA観測量がより少ない。従って、SRSが測距信号として使われるときに、中継塔から1500メートルの範囲で3〜5メートルの間の位置検出精度を達成することができる。DMRSについては、位置精度は、中継塔から同じ距離で20〜40メートルに低下する。
しかしながら、SRSとは異なり、DMRSは、いかなるネットワーク帯域も消費せず、それは常にアップリンク送信に含まれて、UEがアイドルモードであるときにも送信される。それはSRSのようにオプションではなく、例えば、位置検出のために有効化/構成/再構成される必要はない。また、DMRSは、チャネル推定のために、そして、コヒーレント復調のために使われる。更にまた、DMRSが悪いかまたは、何らかの理由で基地局によって適切にデコードされない場合、アップリンク送信はデコードされない。
相互参照出願の1つに記載される単一中継塔/セクタのサービングセクタAOA+RTT(往復時間)位置検出方法において、UE位置検出交差範囲誤差は、サービングセクタ放射パターン(一般的には120度)によって判定され、例えば、AOA角度誤差は120度に等しく、結果として、UEから無線中継塔への距離1500メートルで3000メートルを超える交差範囲誤差となる。本開示に基づく実施形態は、この単一中継塔/セクタAOA角度誤差を小数点未満の度数までに(表1を参照)劇的に低減し、結果として(1500メートルの範囲で)3000メートルに対して2、3メートルの交差範囲誤差になり、そして、基盤変更を必要としない。
UEから無線中継塔までの距離は、+/−10メートルの分解能を有するRTT測定値から導出されるが、RTT測定値はマルチパスにより影響を受ける。この影響は、相互参照出願に記載されるマルチパス緩和エンジンを用いて緩和することができる。
各種の修正、適合および代替的な実施形態が本開示の範囲および趣旨の範囲内でなされ得ることも認識すべきである。例えば、別の実施形態では、他の反映された(マルチパス)信号パスからのDLOS(直接見通し線)パス(飛行時間)の信頼性が高く正確な分離のために、1つ以上の超分解能(部分空間)アルゴリズム(方法)および/または1つ以上のマルチテーパ法は、マルチパス緩和プロセッサによって使用することができる。SRSおよびDMRSに加えて、ランダムアクセスプリアンブル信号(複数可)などの他の無線ネットワーク無線信号が、位置判定のための測距信号として使用可能である。
このように、システムおよび方法の、異なる実施形態を記載したが、記載された方法およびデバイスの特定の利点が達成されていることが当業者には明らかなはずである。特に、物体を追跡し、位置検出するためのシステムが、FGPAまたはASICおよび標準信号処理ソフトウェア/ハードウェアの組合せを使用して非常に少ない追加費用で組立て可能であることが当業者によって理解されるべきである。このようなシステムは、様々な用途において、例えば屋内または屋外環境、過酷なおよび厳しい環境等において人々の位置を特定するのに有用である。