本発明に係る塵埃分離装置、および電気掃除機の実施形態について、図1から図10を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、いわゆるキャニスタ型である。電気掃除機1は、被掃除面を走行可能な掃除機本体2と、掃除機本体2に着脱可能な管部3と、を備えている。管部3は、掃除機本体2に流体的に接続されている。
掃除機本体2は、本体ケース5と、本体ケース5の左右それぞれの側部に設けられる一対の車輪6と、本体ケース5の前半部に配置される着脱可能な塵埃分離装置7と、本体ケース5の後半部分に収容される電動送風機8と、主に電動送風機8を制御する本体制御部9と、電動送風機8へ電力を導く電源コード11と、を備えている。
掃除機本体2は、電源コード11を通じて供給される電力で電動送風機8を駆動させて、電動送風機8の駆動によって発生する負圧を管部3に作用させる。電気掃除機1は、管部3を通じて被掃除面から塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と呼ぶ。)を吸い込み、含塵空気から塵埃を分離し、分離後の塵埃を捕集し、蓄積するとともに塵埃が除去された清浄な空気を排気する。
本体ケース5の正面部分には、本体接続口12が設けられている。本体接続口12は、掃除機本体2の流体的な入口である。本体接続口12は、管部3を塵埃分離装置7に流体的に接続している。
車輪6は、掃除機本体2を支える大径の走行輪である。掃除機本体2は、車輪6の他に本体ケース5の底面に設けられるキャスター(図示省略)を備えている。
塵埃分離装置7は、掃除機本体2に流れ込む含塵空気から塵埃を分離し、捕集し、蓄積する一方で、塵埃が除去された清浄な空気を電動送風機8へ送る。
また、塵埃分離装置7は、全体として略円筒形の外観を有している。塵埃分離装置7は、底部を掃除機本体2の前方側へ、頂部を掃除機本体2の後方側へ傾け、つまり後傾する姿勢で掃除機本体2に寄り掛かるように着脱可能に装着されている。
電動送風機8は、塵埃分離装置7から空気を吸い込んで負圧(吸込負圧)を発生させる。
本体制御部9は、マイクロプロセッサ(図示省略)、およびマイクロプロセッサが実行する各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する記憶装置(図示省略)を備えている。記憶装置には、予め設定される複数の運転モードが記憶されている。予め設定される複数の運転モードは、管部3で入力を受け付ける使用者の操作に対応している。それぞれの運転モードには相互に異なる入力値(電動送風機8の入力値)が設定されている。本体制御部9は、管部3で入力を受け付ける使用者の操作に応じて、その操作内容に対応する運転モードを予め設定される複数の運転モードから択一的に選択する。また、本体制御部9は、選択した運転モードの設定内容を記憶部から読み出し、読み出した設定内容にしたがって電動送風機8を運転する。
電源コード11は、配線用差込接続器(図示省略、所謂コンセント)から掃除機本体2へ電力を供給する。電源コード11の自由端部には、差込プラグ14が設けられている。
管部3は、掃除機本体2から作用する負圧によって、被掃除面から含塵空気を吸い込む。また、管部3は、吸い込んだ含塵空気を掃除機本体2へ送る。管部3は、掃除機本体2に着脱可能に接続される継手としての接続管19と、接続管19に流体的に接続される集塵ホース21と、集塵ホース21に流体的に接続される手元操作管22と、手元操作管22から突出する把持部23と、把持部23に設けられる操作部24と、手元操作管22に着脱可能に接続される延長管25と、延長管25に着脱可能に接続される吸込口体26と、を備えている。
接続管19は、本体接続口12へ着脱可能な継手である。接続管19は、本体接続口12を通じて塵埃分離装置7に流体的に接続されている。
集塵ホース21は、長尺で可撓な略円筒形のホースである。集塵ホース21の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、接続管19に流体的に接続されている。集塵ホース21は、接続管19を通じて塵埃分離装置7に流体的に接続されている。
手元操作管22は、集塵ホース21と延長管25とを中継している。手元操作管22の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、集塵ホース21の他方の端部(ここでは、前方の端部)に流体的に接続されている。手元操作管22は、集塵ホース21および接続管19を順次に通じて塵埃分離装置7に流体的に接続されている。
把持部23は、電気掃除機1を操作するために使用者が手で把持する部分である。把持部23は、使用者の手で容易に把持できる適宜の形状で手元操作管22から突出している。
操作部24は、それぞれの運転モードの選択操作を受け付けるスイッチを備えている。具体的には、操作部24は、電動送風機8の運転停止操作を受け付ける停止スイッチ24aと、電動送風機8の運転開始操作を受け付ける起動スイッチ24bと、を備えている。停止スイッチ24aおよび起動スイッチ24bは、本体制御部9に電気的に接続されている。電気掃除機1の使用者は、操作部24を操作して電動送風機8の運転モードを択一的に選択できる。電動送風機8の運転中、起動スイッチ24bは、運転モードの選択スイッチとしても機能する。電動送風機8の運転中、本体制御部9は、起動スイッチ24bから操作信号を受信する度に運転モードを強→中→弱→強→………の順に切り換える。なお、操作部24は、単一の起動スイッチ24bに代えて複数のスイッチ、例えば弱運転スイッチ(図示省略)、中運転スイッチ(図示省略)、および強運転スイッチ(図示省略)を備えていても良い。
複数の筒状体を重ね合わせたテレスコピック構造の延長管25は、伸縮可能な細長略円筒形の管である。延長管25の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、手元操作管22の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱可能な継手構造が設けられている。延長管25は、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離装置7に流体的に接続されている。
吸込口体26は、木床やカーペットなどの被掃除面を走行自在あるいは滑走自在である。吸込口体26は、走行状態または滑走状態において被掃除面に対向する底面に吸込口28を有している。また、吸込口体26は、吸込口28に配置されている回転可能な回転清掃体29と、回転清掃体29を駆動させる電動機31と、を備えている。吸込口体26の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、延長管25の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱可能な継手構造が設けられている。この継手構造は、自在継手(ユニバーサルジョイント)である。吸込口体26は、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離装置7に流体的に接続されている。つまり、吸込口体26、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21、接続管19、および塵埃分離装置7は、電動送風機8から吸込口28へ通じる吸込風路である。
電気掃除機1は、電動送風機8が停止しているとき、起動スイッチ24bで使用者の操作を受け付けると電動送風機8を始動させる。例えば、電気掃除機1は、電動送風機8が停止しているとき、起動スイッチ24bが操作されると、先ず電動送風機8を強運転モードで運転し、再び起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を中運転モードで運転し、三度、起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を弱運転モードで運転し、以下同様に繰り返す。強運転モード、中運転モード、および弱運転モードは、予め設定される複数の運転モードである。強運転モード、中運転モード、弱運転モードの順に電動送風機8に対する入力値が小さい。始動した電動送風機8は、塵埃分離装置7から空気を排気してその内部を負圧(吸込負圧)にする。
塵埃分離装置7に作用する負圧は、本体接続口12、接続管19、集塵ホース21、手元操作管22、延長管25、および吸込口体26を順次に通じて吸込口28に作用する。電気掃除機1は、吸込口28に作用した負圧によって、被掃除面の塵埃を空気とともに吸い込んで被掃除面を掃除する。塵埃分離装置7は、電気掃除機1に吸い込まれた含塵空気から塵埃を分離し、蓄積する一方で、塵埃を分離した後の清浄な空気を電動送風機8へ送る。電動送風機8は塵埃分離装置7から吸い込んだ空気を掃除機本体2外へ排気する。
次に、塵埃分離装置7について詳細に説明する。
なお、図1に示す塵埃分離装置7は、後傾する姿勢で掃除機本体2に取り付けられているが、以下、説明を簡単にするために塵埃分離装置7を直立させて図示する。
図2は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の斜視図である。
図3は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の断面図である。
図4は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の第二遠心分離部の断面図である。
図5は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の第二遠心分離部の平面図である。
図2から図5に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の塵埃分離装置7は、含塵空気に含まれる塵埃を段階的に空気から分離する多段式の分離装置である。塵埃分離装置7は、塵埃分離装置7に導かれる含塵空気から粗い塵埃を分離する第一分離部34と、第一分離部34を通過する細かい塵埃を含む含塵空気から細かい塵埃を分離する第二分離部35と、を備えている。
また、塵埃分離装置7は、第二分離部35に覆い被さる頂部カバー36と、頂部カバー36に設けられて手指を差し入れることが可能な空間37を区画する把手部38と、第二分離部35を通過する空気が発生させる音の空間37での騒音を抑制する騒音抑制機構39と、を備えている。
第一分離部34、第二分離部35、および頂部カバー36は、協働して塵埃分離装置7の外観を略円筒形に整えている。
第一分離部34は、塵埃分離装置7の一方側、具体的には下半側に配置されている。第二分離部35および頂部カバー36は、塵埃分離装置7の他方側、具体的には上半側に配置されている。第一分離部34と第二分離部35とは、円筒形の塵埃分離装置7の高さ方向に並び、積み重なっている。
なお、第一分離部34で分離される粗い塵埃とは、もっぱら糸くずや綿埃などの繊維状の塵埃や砂粒のような質量の大きい塵埃である。第二分離部35で分離される細かい塵埃とは、粒子状または粉末状で質量の小さい塵埃である。
第一分離部34は、遠心分離方式(サイクロン方式)で含塵空気から塵埃を分離する。第一分離部34は、第一遠心分離室41の外殻としてのカップ状の集塵容器42と、集塵容器42内に配置される円筒形状の第一フィルタ部43と、集塵容器42内に配置されて第一フィルタ部43に連接される塵埃捕捉カップ45と、を備えている。また、第一分離部34は、集塵容器42の側壁外面に設けられる第二取把手46を備えている。
集塵容器42は、塵埃分離装置7の下半部の外殻であって、第一遠心分離室41および集塵室47の外殻を兼ねている。集塵容器42の側壁には、吸気口48が設けられている。集塵容器42は、集塵容器42の開放端部に配置されている大径部51と、大径部51に連接して小径に窄まる傾斜部52と、傾斜部52に連接して略一様な径寸法で集塵容器42の底壁に達する小径部53と、を備えている。
第一フィルタ部43は、集塵容器42内に納められて実質的に同心に配置されている。第一フィルタ部43と集塵容器42とを隔てる環状の空間は、集塵容器42の吸気口48から第一分離部34に流れ込む含塵空気を旋回させて粗い塵埃を遠心分離する第一遠心分離室41である。
第一フィルタ部43は、第二分離部35に固定され、かつ集塵容器42内部に突出して集塵容器42の底壁へ向かって延びている。第一フィルタ部43は、第一遠心分離室41と第二分離部35とを流体的に接続している。第一フィルタ部43は、円筒形の枠体55と、枠体55を囲む第一メッシュフィルタ56と、を備えている。枠体55の第一開口57は、第一遠心分離室41から第二分離部35へ空気を流出させる。第一フィルタ部43の側面、つまり、第一メッシュフィルタ56は、吸気口48を臨んでいる。
第一メッシュフィルタ56は電動送風機8の始動直後や停止過渡など、第一遠心分離室41内の旋回流が十分に発達していない期間において、また旋回流が発達した後も当然に、第一分離部34から第二分離部35側へ粗い塵埃が流れ込むことを防いでいる。
塵埃捕捉カップ45は、第一フィルタ部43のうち集塵容器42の底壁に近い端部、つまり突出端部、または下端部に設けられている。有底円筒形状の塵埃捕捉カップ45は、第一フィルタ部43に連接する底壁と、集塵容器42の底壁に向かって延びる側壁と、を有している。つまり、塵埃捕捉カップ45は、集塵容器42の底壁に向かって開放されている。塵埃捕捉カップ45の側壁は、隙間を隔てて集塵容器42の内周面に対向している。塵埃捕捉カップ45は、第一フィルタ部43よりも大径であり、第一フィルタ部43に連接する底壁に第二開口58を有している。
塵埃捕捉カップ45と集塵容器42とを隔てる空間は、第一分離部34で分離された塵埃を蓄積する集塵室47である。集塵室47内の空気は、第二開口58を通じて第一遠心分離室41へ戻る。
第二開口58には、第二メッシュフィルタ59が設けられている。第二メッシュフィルタ59は、集塵室47に流れ込んだ粗い(糸くずや綿埃などの繊維状の)塵埃が第一遠心分離室41へ戻らない程度に目の粗いもので良い。
塵埃分離装置7から集塵容器42を取り外すと、第一フィルタ部43および塵埃捕捉カップ45は、第二分離部35に随伴して集塵容器42から抜け出る。
第二分離部35は、遠心分離方式(サイクロン方式)で第一分離部34を通過する含塵空気から細かい塵埃を分離する。第二分離部35は、塵埃を含んだ空気に旋回流を生じさせて塵埃を分離し、かつ旋回流の渦の中心部から清浄な空気を流出させる。第二分離部35は、第一遠心分離室41を通過した空気を導く中継風路61と、中継風路61から流れ込む空気から細かい塵埃を分離する第二遠心分離室63と、第二遠心分離室63から流出する清浄な空気を電動送風機8へ導く排気風路64と、を備えている。
第二分離部35は、集塵容器42に着脱可能に連結されて集塵容器42の開放端42aを塞いでいる。また、第二分離部35は、第一フィルタ部43および塵埃捕捉カップ45を集塵容器42の中心線C上に支持している。
第二分離部35の外殻に相当する第二分離部上カバー65は円筒形状である。第二分離部上カバー65の内側には、複数の第二遠心分離室63が環状に並べられている。また、環状に並ぶ複数の第二遠心分離室63の内側には、環状の中継風路61が配置されている。さらに、環状の中継風路61の内側であって集塵容器42の中心線Cの延長線上、あるいは円筒形状の第二分離部35の中心部には、排気風路64が配置されている。換言すると、第二分離部35は、第二分離部35の径方向外側から径方向内側へ向かって順に、環状に並ぶ複数の第二遠心分離室63、環状の中継風路61および排気風路64が配置される3重構造体である。
中継風路61は、第一フィルタ部43から流入する空気(含塵空気)を集塵容器42から遠ざける方向へ導き、第二遠心分離室63へ案内する。
第二遠心分離室63は複数ある。複数の第二遠心分離室63は、円筒形の第二分離部上カバー65の内周に沿って、あるいは中継風路61を囲んで実質的に環形に並んでいる。それぞれの第二遠心分離室63は、旋回流を生じさせる円筒形状壁66と、螺旋流を生じさせる円錐台形状壁67と、を備えている。
円筒形状壁66および円錐台形状壁67は、実質的に同一線上に並ぶ中心線を有している。この中心線、つまり第二遠心分離室63の中心線は、円筒形の塵埃分離装置7の中心線Cに対して平行に配置されている。複数の第二遠心分離室63全体で見ると、円筒形状壁66および円錐台形状壁67の中心線は、塵埃分離装置7の中心線Cの周囲に環形に配置されている。
なお、第二遠心分離室63の中心線は、第一分離部34に近づくほど塵埃分離装置7の中心線Cに近づき、頂部カバー36に近づくほど塵埃分離装置7の中心線Cから遠ざかるように傾いていても良い。つまり、複数の第二遠心分離室63全体で見ると、第二遠心分離室63の中心線は、第一分離部34側に頂点を有し、頂部カバー36側へ拡がる円錐面を描くように、放射状に傾いていても良い。また、第二遠心分離室63の中心線の延長線は、頂部カバー36を貫いている。
また、円錐台形状壁67は、大径な上底と、上底よりも小径な下底と、を有している。円錐台形状壁67の上底は第一分離部34から遠い側に配置され、下底は第一分離部34に近い側に配置されている。円筒形状壁66は、実質的に円錐台形状壁67の上底と同じ直径を有している。円筒形状壁66は、円錐台形状壁67の上底に連接している。
円筒形状壁66は、円錐台形状壁67よりも第一分離部34から離れている。円筒形状壁66の側壁には、含塵空気の導入口68が設けられている。導入口68は、円筒形状壁66の側面、かつ塵埃分離装置7の中心側に配置されている。導入口68は、中継風路61に接続されている。
また、円筒形状壁66は、第一分離部34から最も遠い部位に底板を有している。円錐台形状壁67の底板には、第二遠心分離室63の中心線に沿って円筒形状壁66内に延びる管状の内筒69が設けられている。内筒69の内側は、第二遠心分離室63で含塵空気から分離された清浄な空気を排気する排気口71である。つまり、排気口71は、第二分離部35が生じさせる旋回流の渦の中心部から清浄な空気を流出させる。排気口71は、排気風路64に接続されている。内筒69の外面は、円筒形状壁66の内面に対向している。内筒69と円筒形状壁66とを隔てる環状の空間は、導入口68から流れ込む含塵空気の流れを旋回させる。
さらに、円筒形状壁66は、第一分離部34に最も近い部位が開放されていて、この部位で円錐台形状壁67の上底の開口に繋がれている。
円錐台形状壁67は、第一分離部34へ近づくほど縮径されている。円錐台形状壁67の上底は、円筒形状壁66内に繋がる開口を有している。円錐台形状壁67は、円筒形状壁66と内筒69との間に発生した旋回流を導き入れて、螺旋流を生じさせる。円錐台形状壁67の下底は、集塵容器42内に繋がる廃棄口72を有している。
第二遠心分離室63は、導入口68から含塵空気を導入する。導入口68から第二遠心分離室63へ流れ込む含塵空気は、円筒形状壁66の内面に沿って旋回し、さらに円錐台形状壁67の内面に沿って廃棄口72へ向かう渦巻き螺旋流を生じて、空気から細かい塵埃を分離する。分離された細かい塵埃は、廃棄口72から集塵容器42側へ排出される。塵埃が分離された清浄な空気は、第二遠心分離室63の中心線、つまり円筒形状壁66および円錐台形状壁67の中心線上を流動し、その後、内筒69内を通って排気口71から排気風路64へ流出する。排気口71は、頂部カバー36へ向けて空気を流出させている。
第二遠心分離室63の廃棄口72の先には、塵埃捕捉傘75が設けられている。塵埃捕捉傘75は、第一分離部34と第二分離部35とを区画する隔壁を兼ねて第一フィルタ部43の根元に設けられている。塵埃捕捉傘75の外径は、第二分離部35よりも小さく、かつ第一フィルタ部43よりも大きい。
また、塵埃捕捉傘75は、集塵容器42の傾斜部52に突き当って集塵容器42を塞いでいる。集塵容器42の大径部51、傾斜部52および塵埃捕捉傘75は、第二遠心分離室63から排出される塵埃を蓄積する細塵集塵室76を区画している。細塵集塵室76は、大径部51の内面、傾斜部52の傾斜面、および塵埃捕捉傘75の一方の面75aに挟まれて第二遠心分離室63から遠ざかるほど、つまり、第二遠心分離室63の廃棄口72から遠ざかるほど狭くなる略楔形の断面を有する環形の空間である。
排気風路64は、第一分離部34から最も遠い部位で、第二遠心分離室63に覆い被さるようにして排気口71に接続されている。排気風路64は、排気口71に接続されている最外周部から縮径しつつ第二分離部35の中心部側へ向かう。排気風路64は、集塵容器42の中心線C上で中継風路61の中心部に入り込んでいる。そして、排気風路64は、複数の第二遠心分離室63に囲まれる部分から集塵容器42の中心線Cの延長線(塵埃分離装置7の中心線)に対して交差する方向へ折れ曲がり、第二分離部35の側壁に設けられる第二排気口77へ至る。排気風路64は、頂部カバー36に隣り合う部分に第一分離部34へ向かって窪む凹部78を備えている。排気風路64は、第二遠心分離室63の排気口71から流出する空気を塵埃分離装置7の中心側へ向けて集合させつつ、凹部78によって一旦、第一分離部34へ指向させ、その後に略直角に流れの向きを変えて第二排気口77へ排気する。
第二分離部上カバー65、第二分離部下カバー79および頂部カバー36は、第二分離部35の外殻である。第二分離部上カバー65および第二分離部下カバー79は、第二遠心分離室63を協働して囲んでいる。
頂部カバー36は、第二分離部上カバー65に一体化されている。頂部カバー36は、排気風路64を区画する壁の一部でもある。
頂部カバー36には、第一分離部34に近づく方向へ向かって窪む凹部81が設けられている。凹部81は、排気風路64の凹部78に対応して窪んでいる。換言すると、頂部カバー36は、把手部38に覆われている部分に、把手部38から離れる方向に窪んだ凹部81を備えている。凹部81の最深部81aは、実質的に複数の第二遠心分離室63が描く環の中心線、つまり塵埃分離装置7の中心線C上に配置されている。
また、頂部カバー36には、把手部38を揺動可能に支える第二ヒンジ機構85が設けられている。第二ヒンジ機構85は、頂部カバー36の外周部に設けられている。第二ヒンジ機構85は、把手部38を揺動させることによって、把手部38と頂部カバー36との間にある空間37の開口高さを拡大させる。つまり、第二ヒンジ機構85は、通常時の空間37の開口高さを平均的な指の厚さよりも低く設定しておくことを可能にする。この場合、第二ヒンジ機構85は、空間37に進入する指で把手部38を揺動させ、空間37の開口高さを拡大させる。
把手部38は、頂部カバー36の頂部(すなわち塵埃分離装置7の頂部)に設けられている。使用者は、把手部38内の空間37に指を差し入れることで塵埃分離装置7をしっかりと把持できる。把手部38は、頂部カバー36の凹部81と協働して空間37を仕切っている。把手部38は、少なくとも凹部81の最深部81aを覆っている。換言すると、把手部38は、凹部81の全体を覆っていても良いし、最深部81aを含む凹部81の一部を覆っていても良い。
頂部カバー36は、塵埃分離装置7と掃除機本体2とを連結するクランプ86を備えている。掃除機本体2には、クランプ86と協働して塵埃分離装置7を掃除機本体2に固定するロック爪87が設けられている。
クランプ86は、空間37の開口高さを拡大させる方向へ揺動する把手部38に追従してロック爪87から外れる一方で、塵埃分離装置7を掃除機本体2に装着する際には単独で揺動してロック爪87に引っ掛かる。
クランプ86は、塵埃分離装置7と掃除機本体2とを連結する一方で、把手部38が揺動する一動作に連動して掃除機本体2と塵埃分離装置7との連結を解除して掃除機本体2から塵埃分離装置7を取り外し可能にする。
騒音抑制機構39は、把手部38に設けられて空間37に繋がる複数の孔89である。孔89は、少なくとも最深部81aに対向するよう配置されている。
なお、それぞれの孔89は、円形の孔の他に、楕円形の孔、多角形の孔、直線状や曲線状のスリットであっても良く、混在していても良い。
塵埃分離装置7が含塵空気から塵埃を分離する過程において、第一分離部34および第二分離部35内の空気流は、音、例えば気流音や風切り音を発生させる。この音は、塵埃分離装置7の外殻、つまり集塵容器42、第二分離部上カバー65、第二分離部下カバー79、および頂部カバー36から電気掃除機1の周囲に放出される。そして、頂部カバー36に設けられる把手部38内の空間37にも、頂部カバー36から音が放出される。このとき、本実施形態に係る塵埃分離装置7は、空間37に放出された音の一部を、空間37へ手指を差し入れる入口37aのみならず騒音抑制機構39の孔89からも空間37外へ放出する。仮に騒音抑制機構39の孔89がない場合には、塵埃分離装置7は、空間37に放出された音を把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射させ、大きな反響を発生させてしまう。そこで、塵埃分離装置7は、空間37に放出された音の一部を、騒音抑制機構39の孔89から空間37外へ放出することによって、空間37に放出された音が把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射することを防ぎ、反響の発生を抑制する。これにより、塵埃分離装置7は、空間37に放出された音の空間37での騒音を抑制する。
次に、本実施形態に係る塵埃分離装置7の他の例を説明する。なお、各例で説明する塵埃分離装置7A、7B、7C、7Dおよび7Eにおいて塵埃分離装置7と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図6は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の他の例の部分的な断面図である。
図6示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の塵埃分離装置7Aは、図2から図5に示す塵埃分離装置7の騒音抑制機構39に代えて、騒音抑制機構39Aを備えている。騒音抑制機構39Aは、把手部38に揺動可能に設けられて空間37を閉鎖し、空間37から放出される音を遮る一方、把手部38が把持される際に、空間37内に倒れ込む騒音遮断蓋91を備えている。
換言すると、塵埃分離装置7Aは、把手部38に孔89を設ける代わりに、空間37を閉じる騒音遮断蓋91を備えている。騒音遮断蓋91は、仮に空間37に放出された音が把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射し、反響したとしても、これが空間37の入口37aから外へ漏れ出ないように閉じ込めている。
騒音抑制機構39Aは、騒音遮断蓋91を把手部38に揺動可能に支持するヒンジ機構92と、騒音遮断蓋91を閉じる力を発生させる捻りばね93と、を備えている。
塵埃分離装置7Aは、空間37に放出された音の一部を、騒音抑制機構39Aの騒音遮断蓋91で空間37内に閉じ込めることによって、空間37に放出された音が把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射することによる反響が、電気掃除機1の周囲に放出されることを防いでいる。これにより、塵埃分離装置7は、空間37に放出された音の空間37での騒音を抑制する。
図7は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の他の例の部分的な側面図である。
図7示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の塵埃分離装置7Bは、把手部38Bに覆われている部分に、平坦部101を有する頂部カバー36Bと、平坦部101を覆って頂部カバー36Bから離れる方向へ膨出している把手部38Bと、を備えている。
この把手部38Bは、塵埃分離装置7の騒音抑制機構39のように孔89(二点鎖線で示される孔89)を有していても良いし、塵埃分離装置7Aの騒音抑制機構39Aのように騒音遮断蓋91(破線で示される騒音遮断蓋91)を有していても良い。
塵埃分離装置7、7Aは、頂部カバー36から放出される音が、お椀形の凹部81の焦点や、把手部38の焦点に集中することを防ぐため、音の一部を騒音抑制機構39の孔89から放出したり、騒音遮断蓋91で反響が漏れ出したりすることを防いでいる。これら騒音抑制機構39、39Aは、頂部カバー36Bが平坦部101を有し、換言すると頂部カバー36Bが焦点を有しない場合であっても、反響を抑制し、または反響を閉じ込める効果を奏する。これにより、塵埃分離装置7Bは、空間37に放出された音の空間37での騒音を抑制する。
図8および図9は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の他の例の平面図である。
図8および図9に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の塵埃分離装置7C、Dは、凹部81を有する頂部カバー36と、把手部38と、騒音抑制機構39C、39Dと、を備えている。
図8に示すように、騒音抑制機構39Cは、凹部81の最深部81aに対向する孔89aである。孔89Cは、把手部38内の空間37に繋がっている。孔89Cは、円形の孔の他に、楕円形の孔、多角形の孔、直線状や曲線状のスリットであっても良い。
また、図9に示すように、騒音抑制機構39Dは、凹部81の最深部81aに対向する切欠き103である。
図10は、本発明の実施形態に係る塵埃分離装置の他の例の平面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の塵埃分離装置7Eは、凹部81を有する頂部カバー36と、把手部38Eと、騒音抑制機構39Eと、を備えている。
騒音抑制機構39Eは、平面視において凹部81の最深部81aを避ける把手部38Eである。
本実施形態に係る塵埃分離装置7、7A、7B、7C、7D、7Eおよび電気掃除機1は、第二分離部35を通過する空気が発生させる音の空間37での騒音を抑制する騒音抑制機構39、39A、39B、39C、39D、39Eを備えている。そのため。塵埃分離装置7、7A、7B、7C、7D、7Eおよび電気掃除機1は、空間37から発せられる音を抑制し、運転音を低下させる。
また、本実施形態に係る塵埃分離装置7、7Bおよび電気掃除機1は、把手部38に設けられて空間37に繋がる孔89を備えている。そのため、塵埃分離装置7、7Bおよび電気掃除機1は、空間37に放出された音が把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射することを防ぎ、反響の発生を抑制する。
さらに、本実施形態に係る塵埃分離装置7A、7Bおよび電気掃除機1は、把手部38に設けられて空間37を閉鎖する騒音遮断蓋91を備えている。そのため、そのため、塵埃分離装置7A、7Bおよび電気掃除機1は、空間37に放出された音が把手部38および頂部カバー36で繰り返し反射し、反響したとしても、これが空間37の入口37aから外へ漏れ出ないように閉じ込める。
さらにまた、本実施形態に係る塵埃分離装置7、7Aおよび電気掃除機1は、凹部81の最深部81aを覆う把手部38に騒音抑制機構39、39Aを備えている。そのため、塵埃分離装置7、7Aおよび電気掃除機1は、空間37での反響を生じやすい一方、反響による騒音を騒音抑制機構39、39Aで効果的に抑制できる。
また、本実施形態に係る塵埃分離装置7および電気掃除機1は、凹部81の最深部81aに対向する孔89を備えている。そのため、塵埃分離装置7および電気掃除機1は、空間37での反響を生じやすい一方、反響による騒音を騒音抑制機構39で効果的に抑制できる。
さらに、本実施形態に係る塵埃分離装置7、7Aおよび電気掃除機1は、実質的に複数の第二遠心分離室63が描く環の中心線上に配置される凹部81の最深部81aを備えている。そのため、塵埃分離装置7、7Aおよび電気掃除機1は、複数の第二遠心分離室63が発する音が集中する空間37での反響を生じやすい一方、反響による騒音を騒音抑制機構39、39Aで効果的に抑制できる。
したがって、本実施形態に係る塵埃分離装置7、7A、7B、7B、7C、7D、7Eおよび電気掃除機1によれば、把持溝としての空間37から発せられる音を抑制し、運転音を低下させることができる。
なお、本実施形態に係る電気掃除機1は、キャニスタ型のものに限らず、アップライト型、スティック型、あるいはハンディ型などのものであってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。